JP4360765B2 - 現像廃液の濃縮装置及び濃縮方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶、半導体等の製造時におけるフォトリソグラフィー工程で発生する現像廃液の濃縮技術に関し、詳しくは、高い濃縮倍率を達成することができ、効率的な廃液処理が可能となる濃縮技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体を始めとする薄膜作製や液晶モジュールの作製におけるフォトリソグラフィー工程では、レジスト樹脂の現像工程でレジストを含む現像液が廃液として生じる。この現像廃液には、現像液成分、水の他、レジスト樹脂成分を含んでいる。
現像廃液は、通常、蒸発濃縮装置によって低沸点成分(主として水)を蒸発分離して濃縮して減容後、処理されている。
蒸発濃縮装置としては、濃縮しようとする液を加熱伝達管の表面に接触させる形式のものが多く用いられている。かかる形式の濃縮装置には、加熱伝達管の内面に液を接触させて蒸発させるものと同じく加熱伝達管の外面に液を接触させて蒸発させるものとがある。
【0003】
図3及び図4に、加熱伝達管の外面で蒸発濃縮する形式の蒸発濃縮装置を例示する。この蒸発濃縮装置は、蒸発室と、蒸発室内に水平状に多数本配設された加熱伝達管と、加熱管内に加熱源としての水蒸気を供給し循環させるエゼクターと、加熱伝達管内及び蒸発室内の水蒸気及び凝縮水を回収し冷却して凝縮して排出する凝縮器とを備えている。そして、濃縮しようと現像廃液を蒸発室上部から加熱伝達管に対して落下させる循環ポンプを備えている。
この濃縮装置においては、図4に示すように、加熱伝達管に対して現像廃液が落下され、加熱伝達管の外面で揮発成分が蒸発する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、濃縮倍率を例えば20倍以上に高倍率化しようとすると、長期間の運転が必要となるとともに、加熱伝達管に対して落下する濃縮中の液の濃度や粘度が高くなってくる。このような状況下では、加熱伝達管に対する抗付着性能が低下してきており、スケール(付着物)が形成される場合もありうる。一旦、付着物が形成されると、加熱伝達管による伝熱係数は低下し、濃縮能力の低下を引き起こし、濃縮効率は著しく低下することになる。
なお、このような付着物の形成は、加熱伝達管の内表面で蒸発濃縮させる方式についても同様に発生しうる。
そこで、本発明では、濃縮倍率にかかわらず付着物の形成を効果的に回避して良好な濃縮効率を確保できる現像廃液の濃縮技術を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記した課題を解決するべく検討したところ、加熱伝達管表面におけるスケールはレジスト樹脂が主体であることから、かかるスケールを防止するには、フォトリソグラフィー工程においてレジスト樹脂の剥離に用いた剥離廃液を加熱伝達管表面に供給することにより、付着物を剥離あるいは溶解して、スケールを解消しあるいは回避できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下の濃縮装置を提供する。
【0006】
(1)レジストを含む現像廃液の濃縮装置であって、加熱伝達管を備える蒸発室と、加熱伝達管に対して前記現像廃液を循環供給する現像廃液供給手段と、前記加熱伝達管に加熱源を供給する加熱手段と、前記加熱伝達管の前記現像廃液供給部位に対して前記レジストを含む剥離廃液を供給する剥離廃液供給手段、とを備え、前記加熱伝達管は、前記蒸発室内に略水平状に複数本配置されている現像廃液の濃縮装置。
(2)前記現像廃液循環供給手段は、前記現像廃液を前記加熱伝達管の上方から加熱伝達管の外表面に対して付与するようになっている、(1)記載の現像廃液の濃縮装置。
(3)前記蒸発室は真空吸引されるようになっている、(1)又は(2)記載の現像廃液の濃縮装置。
(4)前記蒸発室内で生成した蒸発画分の一部は、加熱伝達管の加熱源として使用されるようになっている、(1)〜(3)のいずれかに記載の現像廃液の濃縮装置。
【0007】
また、本発明は、以下の濃縮方法も提供する。
(5)レジストを含む現像廃液の濃縮方法であって、蒸発室内に略水平状に複数本配置されている加熱伝達管に対して現像廃液を循環供給して蒸発濃縮するのに際して、前記加熱伝達管の前記現像廃液の供給部位に前記レジストを含む剥離廃液を連続的および/または断続的に供給することを特徴とする、現像廃液の濃縮方法。
(6)レジストを含む現像廃液の濃縮方法であって、蒸発室内に略水平状に複数本配置されている加熱伝達管に対して現像廃液を循環供給して蒸発濃縮するのに際して、前記現像廃液の濃縮能力を監視し、濃縮能力の低下を検出したときに、前記加熱伝達管の前記現像廃液の供給部位に前記レジストを含む剥離廃液を供給することを特徴とする、現像廃液の濃縮方法。
【0008】
これらの発明によれば、加熱伝達管表面(外表面および/または内表面)における付着物の形成が有効に回避ないしあるいは解消される。また、剥離廃液も有効利用しつつ同時に濃縮減容化することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の濃縮装置及び濃縮方法、レジストを含む現像廃液の廃液処理装置及び処理方法の少なくとも一部を構成するものである。したがって、本発明は、当該濃縮装置及び濃縮方法を含むレジストを含む現像廃液の処理装置及び処理方法を包含している。また、レジストを含む現像廃液は、半導体製造、液晶モジュールの製造の他、各種製品の微細加工時にレジストを利用した場合に排出されるレジストの現像廃液を包含する。
【0010】
また、本発明の濃縮装置は、蒸発室と加熱伝達管とを備える従来の蒸発濃縮装置に適用することができる。すなわち、加熱伝達管の設置方式として、水平管式、直立管式のいずれにも適用することができ、前者において、薄膜式、液浸式等の管内蒸気供給形式及び管外蒸気供給形式のいずれにも適用できる。特に、薄膜式の蒸発濃縮装置に好ましく適用できる。
直立管式としては、内部加熱式と外部加熱式のいずれにも適用することができる。前者における標準型及びバスケット型のいずれにも適用でき、後者における自然循環式、非循環式、流下膜式のいずれにも適用することができる。なお、これらの濃縮装置の分類については、「化学装置・機器の基礎知識」(オーム社、1991年5月15日発行)のp.58〜p.61に具体的に記載されている。
なお、レジストを含む剥離廃液には、レジストの剥離に用いた剥離液成分の他、水、およびレジスト樹脂成分を含有している。
【0011】
本発明の一実施形態であるレジスト現像廃液の濃縮装置ないし方法について図1に基づいて説明する。図1には、本発明の濃縮装置ないし方法を含むレジストを含む現像廃液の処理システム全体の概略が示されている。図2には、本システムの詳細が記載されている。本形態の濃縮装置2は、水平管式で管内蒸気供給形式であり、なかでも薄膜式の蒸発濃縮装置である。
【0012】
本形態の濃縮装置2は、図1及び図2に示すように、蒸発室4と、現像廃液循環供給手段6と、加熱手段22と、剥離廃液供給手段32とを備えている。また、図2に示すように、濃縮装置2は、蒸発室4内に加熱伝達管5と、その外部に現像廃液供給手段6を備えている。
【0013】
濃縮装置2の蒸発室4内部には、管状の加熱伝達管5が、略水平状に複数本配置されている。
加熱伝達管5は、多段状に備えられており、下段側の加熱伝達管5から順にその内部に加熱源である水蒸気が供給されるようになっている。
加熱源は、加熱流体であればよく特に限定しないが、通常は、水蒸気を用いる。水蒸気を加熱源とする場合、装置2の外部に設置された水蒸気源に蒸発室4に連絡される管路を接続する構成で足りるが、必要に応じて、エゼクター27等の蒸気圧縮装置を用いることができる。エゼクター27は、蒸発室4内の蒸発画分(水蒸気)の一部を取り込んで圧縮し、加熱源として利用することができるようになっている。
本形態においては、加熱伝達管5に加熱源を供給する加熱手段22としては、水蒸気源24と、それに連結されるエゼクター27と、エゼクター27から蒸発室4を連絡する管路28とから構成されている。
【0014】
また、蒸発室4の下方は、濃縮中の液の貯留部4aとなっている。この貯留部4aは、外部からレジストを含む現像廃液が導入される部位でもある。レジストを含む現像廃液は、工程からそのままあるいは一旦貯留された後、蒸発室4へ導入される。本形態においては、現像廃液の導入手段12として、貯留槽14とこの貯留槽14から貯留部4aに連結される管路16とを備えている。管路16には必要に応じて導入量や導入時間を調整するための開閉バルブを備えるようにすることもできる。
【0015】
貯留部4aは、現像廃液の循環供給手段6の一部でもある。循環供給手段6は、加熱伝達管5に対して現像廃液を循環供給できるような構成であればよい。好ましくは、かかる手段6は、循環用のポンプ7と、貯留部4aから蒸発室4の外方を循環して蒸発室4の上方に現像廃液を導入する管路8と、現像廃液を加熱伝達管5に対して供給する供給手段9とを備えている。
供給手段9は、加熱伝達管5に対して現像廃液を散布できる散布手段を備えていることが好ましい。散布手段としては、例えば、多数個のノズルの他、多孔管や多孔体とすることができる。
【0016】
濃縮装置2には、剥離廃液の供給手段32を備えている。剥離廃液供給手段32は、直接に蒸発室4に対して直接設けられていてもよいし、循環供給手段6の一部(管路8あるいは供給手段9)に接続して、循環供給手段6の管路8や供給手段8を利用する構成とすることもできる。
剥離廃液は、剥離工程からそのまま管路のみを介して蒸発室4あるいは循環供給手段6に接続されていてもよいが、好ましくは、剥離廃液の貯留槽34から管路36を介して蒸発室4あるいは循環供給手段6に接続されるようになっている。また、好ましくは、剥離廃液の導入量、タイミング、期間をコントロールできるような開閉バルブ38が管路36に備えられている。
【0017】
なお、循環供給手段6の管路8の一部には、蒸発室4で最終的に濃縮を終えた濃縮液を貯留部4aから排出するための管路61と濃縮液槽62とを備えることができる。
【0018】
濃縮装置2には、蒸発室4内を吸引可能な真空吸引手段42を備えていることが好ましい。真空吸引手段42は、蒸発室4内の蒸発画分を回収する目的の他、蒸発室4内を減圧状態として蒸発濃縮に好ましい雰囲気をつくることができる。真空吸引手段42は、凝縮手段52の一部として備えることができる。
【0019】
凝縮手段52は、蒸発室4内の蒸発画分を回収し、冷却して凝縮させ、液体として系外へ排出することができるようになっている。凝縮手段52は、真空吸引手段42の吸引力により蒸発室4から凝縮手段52への蒸発画分を搬送する管路53を有している。また、凝縮室52aには、冷却水が導入される冷却配管等の冷却手段を備えている。凝縮室52aの下方には凝縮した液体(水分)の貯留部を有することができる。この貯留部には、蒸発室4の加熱伝達管5内部で凝縮した水分が管路54を介して導入されるようにすることができる。この貯留部には、凝縮液を排出するポンプを備えるようにすることができる。
【0020】
次に、このように構成した濃縮装置2における濃縮工程について説明する。
まず、蒸発室4内の加熱伝達管5に、加熱手段22を介して熱源である水蒸気を導入する。また、真空吸引手段42を含む凝縮手段52も作動させて、蒸発室4内を真空吸引する。
次いで、フォトリソグラフィー工程で発生したレジストを含む現像廃液を、現像廃液貯留槽62及び管路61を介して蒸発室4の貯留部4aに導入する。
所定量が貯留部4a導入後、循環用ポンプ7を駆動させて管路8及び供給手段9を介して、蒸発室4の加熱伝達管5の上方からその外表面に供給する。
【0021】
循環供給手段6の作動開始とほぼ同時に、剥離廃液供給手段32を介して、濃縮しようとするレジスト樹脂成分の剥離に用いた剥離廃液を、循環供給手段6に導入する。
これにより、現像廃液と剥離廃液とは、管路8ないし供給手段9において混合されて、混液として加熱伝達管5に対して供給されることになる。
この状態では、現像廃液の循環供給を継続することにより、同時に、剥離廃液も循環されて、加熱伝達管5の現像廃液の供給部位に剥離廃液も供給されることになる。
【0022】
この濃縮工程によれば、濃縮倍率が高まり、蒸発室4内を流下する現像廃液の濃縮液の濃度が高くなっても、現像廃液中にはそのレジストの剥離液を同時に含有しているために、加熱伝達管5の外表面にレジスト樹脂成分が付着することがない。すなわち、レジスト樹脂成分が析出しても加熱伝達管5の外表面に付着することが回避されるし、析出自体も抑制されるからである。
加熱伝達管5の外表面に、付着物が生成されないことにより、熱効率が確保され、同時に濃縮能力も確保される。これにより、スケールの発生を回避して容易に高倍率に濃縮することができるようになる。
また、同時に、レジスト剥離工程で発生するレジストを含む剥離廃液を処理できるため、レジスト関連廃液処理を効率的に実施することができる。
【0023】
本濃縮工程では、剥離廃液を常時現像廃液循環供給手段6に導入するようにして、連続的に加熱伝達管の現像廃液供給部位に対して供給するようにしたが、剥離廃液の供給は、断続的に行うこともできる。断続的に供給する場合には、一定間隔をおいて規則的に供給することもできる。また、必要に応じて供給するようにすることもできる。剥離廃液の供給の開始及び停止は、剥離廃液供給手段32に設けた開閉バルブ38を開閉制御することによって行うことができる。
【0024】
また、濃縮装置2の濃縮能力を監視し、濃縮能力の低下を検出したときに、剥離廃液を供給するようにすることもできる。濃縮装置の濃縮能力は、例えば、凝縮手段52において得られる時間あたりの蒸発画分の量、あるいは、貯留部4aの設定された液面位を満たすように現像廃液導入手段により貯留部4aに導入される現像廃液の時間当たりの流量等から検出することができる。例えば、検出された濃縮能力が予め設定された値を下回ったときに、剥離廃液の供給を開始するようにしてもよい。また、濃縮能力が回復したときには、剥離廃液の供給を停止するようにすることもできる。このような剥離廃液の供給制御により、必要時において剥離廃液を供給してスケール発生を回避しあるいは解消することができる。
【0025】
さらに、本濃縮装置2においては、剥離廃液供給手段32を循環供給手段6に接続する構成としたがこれに限定するものではない。加熱伝達管の現像廃液供給部位に対して供給できれば他の部位に接続してもよい。例えば、循環供給手段6とは別個に、現像廃液導入手段12の貯留槽14あるいは管路16に剥離液導入手段32を接続することもできる。また、蒸発室4の貯留部4aに接続することもできる。
さらに、蒸発室4の加熱伝達管5に対して、現像廃液の循環供給手段6とは全く独立して、別個に、蒸発室4の上方に接続する管路と供給手段(散布手段を含む)とを備える構成とすることもできる。
【0026】
本形態の濃縮装置2は、水平管式で管内蒸気型、かつ薄膜式の濃縮装置を例に挙げて説明したが、本発明の濃縮装置は本形態に限定するものではなく、他の各形態の管状加熱方式の蒸発濃縮装置に適用することができる。
【0027】
【発明の効果】
本発明によれば、濃縮倍率にかかわらず付着物の形成を効果的に回避あるいは解消して良好な濃縮効率を確保できる現像廃液の濃縮技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の濃縮装置の概略を示す図である。
【図2】本発明の実施形態の濃縮装置の詳細を示す図である。
【図3】従来の濃縮装置の一例を示す図である。
【図4】図3に示す従来の濃縮装置における現像廃液と加熱伝達管との接触状態を示す図である。
【符号の説明】
2 濃縮装置
4 蒸発室
5 加熱伝達管
6 現像廃液循環供給手段
7 循環用ポンプ
8 循環用管路
9 供給手段
Claims (6)
- レジストを含む現像廃液の濃縮装置であって、加熱伝達管を備える蒸発室と、加熱伝達管に対して前記現像廃液を循環供給する現像廃液供給手段と、前記加熱伝達管に加熱源を供給する加熱手段と、前記加熱伝達管の前記現像廃液供給部位に対して前記レジストを含む剥離廃液を供給する剥離廃液供給手段、とを備え、
前記加熱伝達管は、前記蒸発室内に略水平状に複数本配置されている現像廃液の濃縮装置。 - 前記現像廃液循環供給手段は、前記現像廃液を前記加熱伝達管の上方から加熱伝達管の外表面に対して付与するようになっている、請求項1記載の現像廃液の濃縮装置。
- 前記蒸発室は真空吸引されるようになっている、請求項1又は2記載の現像廃液の濃縮装置。
- 前記蒸発室内で生成した蒸発画分の一部は、加熱伝達管の加熱源として使用されるようになっている、請求項1〜3のいずれかに記載の現像廃液の濃縮装置。
- レジストを含む現像廃液の濃縮方法であって、蒸発室内に略水平状に複数本配置されている加熱伝達管に対して現像廃液を循環供給して蒸発濃縮するのに際して、前記加熱伝達管の前記現像廃液の供給部位に前記レジストを含む剥離廃液を連続的および/または断続的に供給することを特徴とする、現像廃液の濃縮方法。
- レジストを含む現像廃液の濃縮方法であって、蒸発室内に略水平状に複数本配置されている加熱伝達管に対して現像廃液を循環供給して蒸発濃縮するのに際して、前記現像廃液の濃縮能力を監視し、濃縮能力の低下を検出したときに、前記加熱伝達管の前記現像廃液の供給部位に前記レジストを含む剥離廃液を供給することを特徴とする、現像廃液の濃縮方法。
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