JP4357645B2 - 1,3−シクロアルカジエンの製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術的分野】
本発明は、脂環式共役ジエン化合物である1,3−シクロアルカジエンの製造方法に関するものである。更に詳しくは1,2−ジハロシクロアルカンの脱ハロゲン化水素反応による1,3−シクロアルカジエンの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
1,3−シクロヘキサジエンは、近年、リビングアニオン重合により高耐熱性、高剛性ポリマーが得られることが知られており、工業的に重要なモノマーである。
1,3−シクロヘキサジエンの合成方法として、これまでに種々の方法が提案されているが、1,3−シクロヘキサジエンの異性体である1,4−シクロヘキサジエンが副生物として含まれる。ところで、1,3−シクロヘキサジエンから高重合物を得るにあたっては、該1,4−シクロヘキサジエンが不純物として含まれると、重合が円滑に進まず、低分子量体のみ得られたり、重合が全く進まなくなることが知られている(例えば、Polym.Prepr.(Am.Chem.Soc.Div.Poym.Chem.)12,p.402(1971))。
【0003】
本発明者らが検討したところ、目的とする高分子量体を得るためには、1,4−シクロヘキサジエンの含有量は、少なくとも2%以下であることが必要であることが判った。
1,3−シクロヘキサジエンの合成方法として、1,2−ジブロムシクロヘキサンからの脱臭化水素反応を、トリエチレングリコール中で、1,2−ジブロムシクロヘキサンと水酸化カリウムとを反応させることで行い、1,3−シクロヘキサジエンを得ている(Organikum,5.Aufl.,S.226,VED Deutscher Verlag der Wissenschaften, Berlin 1965)。しかしながら、この方法では1,3−シクロヘキサジエンの他に多量のベンゼンや1,4−シクロヘキサジエンが副生し、1,3−シクロヘキサジエンの純度は低い。1,3−シクロヘキサジエンと1,4−シクロヘキサジエンの沸点はそれぞれ80℃、89℃と近く、また両物質は共沸するために蒸留によって分けることは難しいという問題があった。
【0004】
また、1,2−ジブロムシクロヘキサンをヘキサメチルホスフォリックトリアミド中で、塩化リチウムと炭酸リチウムの混合物を用いて160℃に加熱することにより、1,3−シクロヘキサジエンが82%の収率で得られたことが報告されている(J.Org.Chem.,49,2650(1984))。しかしながら、本発明者らがこの文献に記載の条件で反応を行ったところ、1,3−シクロヘキサジエンが47%の収率で得られたが、同時にシクロヘキセンが30%、ベンゼンが23%と副生物が多量に生成した。ところで、シクロヘキセンとベンゼンは沸点が1,3−シクロヘキサジエンに近いため蒸留によって分離することは難しく、このため高純度の1,3−シクロヘキサジエンを高収率で得ることはできなかった。
【0005】
これらの方法以外にも1,2−ジブロムシクロヘキサンを原料とする1,3−シクロヘキサジエンを合成する方法が各種提案されている。
1,2−ジブロムシクロヘキサンをメタノール中でナトリウムと反応させ、2.2%の1,3−シクロヘキサジエンと70%の3−メトキシシクロヘキセンを得る一段目の反応後、更にこの3−メトキシシクロヘキセンをトリエチレングリコール中で、85%リン酸と反応させて82%の収率で1,3−シクロヘキサジエンを得る方法が提案され、1,2−ジブロムシクロヘキサンから収率57%で1,3−シクロヘキサジエンが得られた事が報告されている(Chem.Ber.,100,P.1764(1967))。
【0006】
また、1,2−ジブロムシクロヘキサンとナトリウムエトキシドとを反応させ、3−エトキシシクロヘキセンを合成した後に脱アルコール反応により高純度の1,3−シクロヘキサジエンが得られることが報告されている(Mitt.Schles.Kohlenforsh.−Inst.Kaiser−Wilheim−Ges.2,97(1925),C.1926,2343)。
【0007】
しかしながら、これらの1,2−ジブロムシクロヘキサンから3−アルコキシ−1−シクロヘキセンを経由し、脱アルコール反応によって1,3−シクロヘキサジエンを得る方法では、反応工程が2段階となるため、より容易に製造することができる1工程での製造方法が求められていた。
【0008】
一方、1,2−ジクロロシクロヘキサンから1,3−シクロヘキサジエンを1工程で合成する方法も報告されている。水酸化ナトリウムとポリグリコールの溶液あるいは懸濁液中で150〜170℃で反応させる事により一段で、高収率でシクロヘキサジエンが得られることが報告している(DE1090202)。しかしながら、得られた1,3−シクロヘキサジエンの純度については何も記載されておらず、1,4−シクロヘキサジエンの副生量の記載はない。本発明者等が、該明細書に記載の条件で行った実験結果によればシクロヘキサジエンの収率は反応温度が高い場合やポリグリコールの分子量が大きくなるにつれて増えるが、同時に1,4−シクロヘキサジエンの含有率も増える傾向を示しており、種々反応条件を変化させても1,3−シクロヘキサジエン中の1,4−シクロヘキサジエンの含有率は、少なくとも2%以上であり、高重合物製造の原料としての1,3−シクロヘキサジエンとしては不適格なものであった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
シクロヘキセンの塩素化によって生成する主生成物の1,2−ジクロロシクロヘキサンから1,4−シクロヘキサジエンの副生が極めて少なく、工業的に実施可能な高収率の1,3−シクロヘキサジエンの製造法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決すべく本発明者らが鋭意検討した結果、驚くべき事に1,2−ジハロシクロアルカンを、双極性非プロトン溶媒及び塩基存在下に脱ハロゲン化水素反応を行わせるに際し、水を存在させて特定の温度条件下に反応を行わせることによって、1,4−シクロアルカジエンの副生が極めて少ない高純度の1,3−シクロアルカジエンを高収率で容易に製造できることを見出し、本発明に至ったものである。
【0011】
すなわち、本発明は、
(1) 1,2−ジハロシクロアルカンを、アセトン、3−ペンタノン、4−ヘプタノン、5−ノナノン、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、フマロニトリル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラメチレングリコールジメチルエーテル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジエチルホルムアミド、ジエチルアセトアミド、テトラメチルウレア、ヘキサメチルリン酸トリアミド、1−メチル−2−ピロリジノン及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリディノンから選ばれる少なくとも一種の双極性非プロトン溶媒、並びにアルカリ金属の水酸化物若しくは炭酸塩又はアルカリ土類金属の水酸化物若しくは炭酸塩の存在下に反応させ1,3−シクロアルカジエンを得る方法に於いて、反応系に水を添加すること及び160℃以上300℃以下の反応温度で反応させることを特徴とする1,3−シクロアルカジエンの製造法、
(2)1,2−ジハロシクロアルカンが1,2−ジクロロシクロヘキサン又は1,2−ジブロムシクロヘキサンであることを特徴とする上記(1)の1,3−シクロアルカジエンの製造法、
(3)双極性非プロトン溶媒が1−メチル−2−ピロリジノンであることを特徴とする上記(1)又は(2)の1,3−シクロアルカジエンの製造法、
(4)反応系に存在する水の量が1,2−ジハロシクロアルカンに対し、0.1倍モル以上1000倍モル以下であることを特徴とする上記(1)から(3)のいずれかに記載の1,3−シクロアルカジエンの製造法、
(5) 水、双極性非プロトン溶媒及び塩基を含有する溶液を160℃以上300℃以下にした後に、1,2−ジハロシクロアルカンを該溶液に添加することを特徴とする請求項1から(4)のいずれかに記載の1,3−シクロアルカジエンの製造法、である。
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に於ける1,2−ジハロシクロアルカンは、好ましくは5員環から12員環の1,2−ジハロシクロアルカンであり、具体的には1,2−ジクロロシクロペンタン、1,2−ジブロモシクロペンタン、1,2−ジヨードシクロペンタン、1,2−ジクロロシクロヘキサン、1,2−ジブロモシクロヘキサン、1,2−ジヨードシクロヘキサン、1,2−ジクロロシクロヘプタン、1,2−ジブロモシクロヘプタン、1,2−ジヨードシクロヘプタン、1,2−ジクロロシクロオクタン、1,2−ジブロモシクロオクタン、1,2−ジヨードシクロオクタン、1,2−ジクロロシクロノナン、1,2−ジブロムシクロノナン、1,2−ジヨードシクロノナン、1,2−ジクロロシクロデカン、1,2−ジブロムシクロデカン、1,2−ジヨードシクロデカン、1,2−ジクロロシクロウンデカン、1,2−ジブロムシクロウンデカン、1,2−ジヨードシクロウンデカン、1,2−ジクロロシクロドデカン、1,2−ジブロムシクロドデカン、1,2−ジヨードシクロドデカンである。好ましくは1,2−ジクロロシクロヘキサンと1,2−ジブロムシクロヘキサンである。1,2−ジハロシクロアルカンはシス体及びトランス体があるが、どちらを原料にしてもかまはない。
【0013】
本発明に於ける1,2−ジハロシクロアルカンに、95mol%以下の3−ハロシクロアルケンが混ざっていてもかまわない。3−ハロシクロアルケンは、本発明の1,2−ジハロシクロアルカンの場合と同様の反応によって容易に塩化水素の脱離反応が進行し、1,3−シクロアルカジエンが生成する。
また、4−ハロシクロアルケンは本発明の反応工程を経て反応すると、1,4−シクロアルカジエンが副生する。このため1,2−ジハロシクロアルカンに対する4−ハロシクロアルケンの含有量は4mol%以下であることが好ましく、さらに好ましくは2mol%以下である。
【0014】
このような1,2−ジハロシクロアルケンは種々の方法により製造することができるが、例えばシクロアルケンのハロゲン化によって1,2−ジハロシクロアルカンは主生成物として得ることができる。この得られたハロゲン化物の混合物は蒸留等の精製方法により分離することができる。
【0015】
本発明において用いられる双極性非プロトン溶媒には、ケトン類、スルホキシド類、ニトリル類、オキシエーテル類、アミド類、リン酸トリアミド類等が挙げられる。具体例として、アセトン、3−ペンタノン、4−ヘプタノン、5−ノナノン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル、フマロニトリル、エチレングリコールジメチルエーテル(DME)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(DIGLYME)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(TRIGLYME)、テトラメチレングリコールジメチルエーテル、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、ジエチルホルムアミド、ジエチルアセトアミド、テトラメチルウレア、ヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPA)、1−メチル−2−ピロリジノン(NMP)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリディノンなどが挙げられる。
【0016】
これらの溶媒は水と有機溶媒の両方に混ざり合う。またこの中でもアミド系やスルホキシド系の溶媒が好ましく、更に好ましくは1−メチル−2−ピロリジノンである。1−メチル−2−ピロリジノンは水及び有機物、特に1,2−ジハロシクロアルカンと任意の割合で混合し、更に無機塩もある程度溶かすことができる。また塩基存在下で、温度を300℃まで上げても溶媒の1−メチル−2−ピロリジノンの分解する割合が低いため好ましい。これらの溶媒は単独で用いてもよいし、2種類以上の混合溶媒として用いてもかまわない。
【0017】
本発明において用いられる塩基は、アルカリ金属の水酸化物若しくは炭酸塩又はアルカリ土類金属の水酸化物若しくは炭酸塩である。具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム等の水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム等の炭酸塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素カルシウム等の炭酸水素塩や水素化ナトリウム、水素化カルシウム等の水素化物が挙げられる。この中でもアルカリ金属の水酸化物やアルカリ金属、アルカリ土類金属の炭酸塩が好ましい。アルカリ金属の水酸化物を用いた場合には1,3−シクロアルカジエンの収率が向上する。
【0018】
またアルカリ金属やアルカリ土類金属の炭酸塩を用いた場合にはアルカリ金属の水酸化物を用いた場合に比べ、副生物の1−クロロシクロアルケンの量が増えるものの、1,4−シクロアルカジエンの副生量は減り、精製後の1,3−シクロアルカジエンの純度を向上させることができる。また、これらの塩基は単独で用いてもよいし、2種類以上の混合物として用いてもかまわない。
【0019】
塩基の使用量は、1,2−ジハロシクロアルカンに対して1.5倍モル以上20倍モル以下が好ましく、更に好ましくは1.8倍モル以上10倍モル以下である。塩基の使用量が少ないと、1,2−ジハロシクロアルカンの反応率が低下し、満足な収量を得ることができない。逆に塩基の量を増やしていくと反応速度は増していき転化率も向上するが、20倍モルより多く使用しても反応を加速させる効果は小さく、大部分の塩基は無駄となる。
【0020】
更に塩化リチウムや塩化カルシウムなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属のハロゲン化物を加えてもかまわない。これらの化合物は通常、1,2−ジハロシクロアルカンに対し2モル当量以下の量を用いる。これらの化合物を加えることによって、副生物の1,4−シクロアルカジエンの生成量は多少減少するものの、コスト及び廃棄物となるこれら化合物の処理の問題が生じる。
【0021】
また、反応を加速させるためには相関移動触媒を加えてもよい。相関移動触媒の例としてはトリカプリルイルメチルアンモニウムクロリド等の4級アンモニウム塩、ヘキサデシルトリ−n−ブチルホスホニウムブロミド等のホスホニウム塩、18−クラウン−6−エーテル等のクラウンエーテルなどが挙げられる。相関移動触媒は反応速度のみに関与し、相関移動触媒を加えることによって原料の1,2−ジハロシクロアルカンの転化速度が向上する。
【0022】
本発明において反応系に添加される水量は1,2−ジハロシクロアルカンに対し、0.1倍モル以上1000倍モル以下が好ましく、1倍モル以上100倍モル以下であることがより好ましく、特に好ましくは5倍モル以上50倍モル以下である。本発明の反応温度において反応溶液は水層と有機層の2層に分離していることが好ましい。水量が0.1倍モル未満では1,4−シクロアルカジエの生成量が増加し好ましくない。また1000倍モルを超える量では1,2−ジハロシクロアルカンの転化速度が遅くなること及び反応基質に対する溶媒量が多くなり無駄となる。
【0023】
1,2−ジハロシクロアルカンに対する双極性非プロトン溶媒の量は特に制限はないが、0.5倍モル以上100倍モル以下が好ましい。更に好ましくは1倍モル以上50倍モル以下である。1,2−ジハロシクロアルカンは水にほとんど溶けないため、水と1,2−ジハロシクロアルカンの両方と任意の割合で混合する双極性非プロトン溶媒の量を増やすことによって1,2−ジハロシクロアルカンの転化速度は上がる。1,2−ジハロシクロアルカンに対する双極性非プロトン溶媒の量が0.5倍モル未満では1,2−ジハロシクロアルカンの転化速度が遅く好ましくない、一方、100倍モルを超えると溶媒量が多くなり過ぎて無駄になる。
【0024】
本発明に於ける反応では1,2−ジハロシクロアルカン、水、双極性非プロトン溶媒及び塩基を一括に仕込んで温度を上げてもよいし、また水、双極性非プロトン溶媒及び塩基を仕込んで、反応温度まで上げた後に、1,2−ジハロシクロアルカンを添加してもよいが、反応温度まで上げた後に、1,2−ジハロシクロアルカンを添加する方が好ましい。一括に仕込んだ場合、反応温度までに上がる前に原料の1,2−ジハロシクロアルカンが転化し、3−ヒドロキシ−1−シクロアルケンが生成することがある。特に、反応温度まで上がる時間が長い場合にはこの傾向が強くなる。
【0025】
本発明に於ける反応温度は160℃以上300℃以下の範囲であることが必要であり、好ましくは165℃以上250℃以下の範囲、より好ましくは170℃以上240℃以下である。反応温度が160℃未満では原料の1,2−ジハロシクロアルカンは転化しても求核置換反応を受けやすく、3−ヒドロキシ−1−シクロアルケンが主生成物となる。反応温度が高くなるにつれて、1,2−ジハロシクロアルカンは求核置換反応を受ける割合が減り、脱離反応による1,3−シクロアルカジエンの生成量が増大する傾向がある。また300℃を超える温度では1,2−ジハロシクロアルカンは転化するものの、1,3−シクロアルカジエン中の1,4−シクロアルカジエンの副生量が増大するため好ましくない。
【0026】
また本発明に於ける反応圧力は1気圧以上100気圧以下の範囲が好ましく、2気圧以上50気圧以下の範囲がより好ましい。反応時に自然に掛かる水等の蒸気圧力のみでもよいし、また更に窒素や空気等で系内の圧力を上げてもかまわない。
本発明の反応によって生成した1,3−シクロアルカジエンは本反応によって副生し、混合溶液に溶けきらず析出した塩基のハロゲン化物を濾過によって取り除いた後、蒸留等の精製操作によって単離することができる。
【0027】
得られた1,3−シクロヘキサジエンは、例えば公知の方法(例えば、WO94/28038等)で重合することで平均分子量の高い(1,3−シクロヘキサジエン)ホモポリマーを得ることができる。また、他のモノマーと共重合させることにより、1,3−シクロヘキサジエンユニットを含む共重合体を得ることができる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0029】
【実施例1】
50mlのハステロイ製のオートクレーブに水11.25g(625mmol)、1−メチル−2−ピロリジノン11.25g(113.5mmol)、水酸化ナトリウム5.6g(140mmol)を仕込み、オートクレーブの温度を180℃まで上げた後、1,2−ジクロロシクロヘキサン10.53g(68.8mmol)をポンプで1ml/分の速度で滴下し、4時間撹拌した。反応終了後、室温まで冷却し析出した塩化ナトリウムを取り除いた。濾液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、1,2−ジクロロシクロヘキサンの転化率は100%であった。得られた反応物の選択率は次の通りである。
1,3−シクロヘキサジエン 89.5mol%
1,4−シクロヘキサジエン 0.2mol%
シクロヘキセン 0.8mol%
ベンゼン 1.6mol%
3−ヒドロキシ−1−シクロヘキセン 3.0mol%
2,2’−ジシクロヘキセニルエーテル 2.1mol%
1−クロロシクロヘキセン 2.8mol%
【0030】
【実施例2】
水酸化ナトリウムを炭酸カルシウムに換えた他は実施例1と同様に実験を行った。炭酸カルシウムの仕込量は14.0g(140mmol)である。反応終了後、濾液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、1,2−ジクロロシクロヘキサンの転化率は100%であった。得られた反応物の選択率は次の通りである。
1,3−シクロヘキサジエン 85.3mol%
1,4−シクロヘキサジエン 0.01mol%
シクロヘキセン 0.5mol%
ベンゼン 1.8mol%
3−ヒドロキシ−1−シクロヘキセン 0.6mol%
1−クロロシクロヘキセン 11.7mol%
【0031】
【実施例3】
50mlのハステロイ製のオートクレーブに水11.25g(625mmol)、1−メチル−2−ピロリジノン11.25g(113.5mmol)、水酸化カリウム4.8g(83mmol)を仕込み、オートクレーブの温度を180℃まで上げた後、1,2−ジクロロシクロヘキサン10.53g(68.8mmol)をポンプで1ml/分の速度で滴下し、2時間撹拌した。反応終了後、室温まで冷却し析出した塩化ナトリウムを取り除いた。濾液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、1,2−ジクロロシクロヘキサンの転化率は46%であった。得られた反応物の選択率は次の通りである。
1,3−シクロヘキサジエン 87.3mol%
1,4−シクロヘキサジエン 0.2mol%
シクロヘキセン 0.9mol%
ベンゼン 1.5mol%
3−ヒドロキシ−1−シクロヘキセン 4.1mol%
2,2’−ジシクロヘキセニルエーテル 1.1mol%
1−クロロシクロヘキセン 5.0mol%
【0032】
【実施例4】
相関移動触媒としてヘキサデシルトリ−n−ブチルホスホニウムブロマイド0.45g(0.89mmol)を加えた他は実施例3と同様な実験を行った。反応終了後、濾液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、1,2−ジクロロシクロヘキサンの転化率は60.0%であった。得られた反応物の選択率は次の通りである。
1,3−シクロヘキサジエン 87.2mol%
1,4−シクロヘキサジエン 0.1mol%
シクロヘキセン 0.3mol%
ベンゼン 1.6mol%
3−ヒドロキシ−1−シクロヘキセン 5.2mol%
2,2’−ジシクロヘキセニルエーテル 0.8mol%
1−クロロシクロヘキセン 4.8mol%
【0033】
【実施例5】
50mlのハステロイ製のオートクレーブに水11.25g(625mmol)、1−メチル−2−ピロリジノン11.25g(113.5mmol)、水酸化ナトリウム6.05g(151.3mmol)を仕込み、オートクレーブの温度を180℃まで上げた後、1,2−ジクロロシクロヘキサン8.57g(56mmol)と3−クロロシクロヘキセン3.27g(28mmol)の混合溶液をポンプで1ml/分の速度で滴下し、4時間撹拌した。反応終了後、室温まで冷却し析出した塩化ナトリウムを濾過によって取り除いた。濾液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、1,2−ジクロロシクロヘキサン及び3−クロロシクロヘキセンを合わせた転化率はほぼ100%であった。得られた反応物の選択率は次の通りである。
1,3−シクロヘキサジエン 85.0mol%
1,4−シクロヘキサジエン 0.1mol%
シクロヘキセン 0.5mol%
ベンゼン 1.6mol%
3−ヒドロキシ−1−シクロヘキセン 7.2mol%
2,2’−ジシクロヘキセニルエーテル 2.8mol%
1−クロロシクロヘキセン 2.8mol%
【0034】
【実施例6】
50mlのハステロイ製のオートクレーブに水11.25g(625mmol)、1−メチル−2−ピロリジノン11.25g(113.5mmol)、水酸化ナトリウム8.26g(203mmol)を仕込み、オートクレーブの温度を180℃まで上げた後、1,2−ジクロロシクロオクタン12.39g(68.8mmol)をポンプで1ml/分の速度で加え、4時間撹拌した。反応終了後、室温まで冷却し析出した塩化ナトリウムを取り除いた。濾液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、1,2−ジクロロシクロヘキサンの転化率は100%であった。得られた反応物の選択率は次の通りである。
1,3−シクロオクタジエン 83.6mol%
3−ヒドロキシ−1−シクロオクテン 10.0mol%
1−クロロシクロオクテン 6.4mol%
【0035】
【比較例1】
50mlのハステロイ製のオートクレーブに1,2−ジクロロシクロヘキサン10.53g(68.8mmol)、水21.25g(1181mmol)、水酸化ナトリウム8.26g(203mmol)を仕込み、オートクレーブの温度を180℃まで上げた後、4時間撹拌した。反応終了後、室温まで冷却したが塩は析出しておらず、2層に分離されたままであった。反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、1,2−ジクロロシクロヘキサンはほとんど転化していなかった。
【0036】
【比較例2】
1−メチル−2−ピロリジノンの代わりに1,4−ジオキサン11.25g(127.7mmol)を用いた他は実施例4と同様な実験を行った。反応終了後、室温まで冷却したが塩は析出しておらず、2層に分離されたままであった。反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、1,2−ジクロロシクロヘキサンはほとんど転化していなかった。
【0037】
【比較例3】
50mlのハステロイ製のオートクレーブに水10.0g(556mmol)、1−メチル−2−ピロリジノン11.25g(113.5mmol)、水酸化ナトリウム8.26g(203mmol)を仕込み、オートクレーブの温度を150℃まで上げた後、1,2−ジクロロシクロヘキサン10.53g(68.8mmol)を液クロポンプで1ml/分の速度でで滴下し、4時間撹拌した。この時のゲージ圧は2.5気圧であった。反応終了後、室温まで冷却し析出した塩化ナトリウムを取り除いた。濾液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、1,2−ジクロロシクロヘキサンの転化率は100%であった。得られた反応物の選択率は次の通りである。
1,3−シクロヘキサジエン 5.1mol%
シクロヘキセン 0.4mol%
ベンゼン 1.6mol%
3−ヒドロキシ−1−シクロヘキセン 89.1mol%
2,2’−ジシクロヘキセニルエーテル 2.1mol%
1−クロロシクロヘキセン 1.7mol%
【0038】
【比較例4】
ジムロート還流管を備え付けた100mlの3つ口フラスコに1,2−ジクロロシクロヘキサン6.89g(45mmol)、1−メチル−2−ピロリジノン15g(151.3mmol)、水酸化ナトリウム3.6g(90mmol)を入れ、180℃で2時間反応させた。室温まで冷却後、析出した塩化ナトリウムを濾過した。反応濾液をガスクロマトグラフィーにより測定したところ、1,2−ジクロロシクロヘキサンの転化率はほぼ100%であった。反応後の水分含有量を水分測定器(三菱化成工業(株)製 MOISTUREMETER)で測定したところ、3.6重量%であった。得られた反応物の選択率は次の通りである。
1,3−シクロヘキサジエン 43.8mol%
1,4−シクロヘキサジエン 10.9mol%
ベンゼン 1.0mol%
1−クロロシクロヘキセン 25.4mol%
3−ヒドロキシ−1−シクロヘキセン 18.1mol%
【0039】
【発明の効果】
本発明によれば、1,4−シクロヘキサジエンの含有量が極めて少ない1,3−シクロアルカジエンを容易に高収率で製造できる。
Claims (5)
- 1,2−ジハロシクロアルカンを、アセトン、3−ペンタノン、4−ヘプタノン、5−ノナノン、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、フマロニトリル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラメチレングリコールジメチルエーテル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジエチルホルムアミド、ジエチルアセトアミド、テトラメチルウレア、ヘキサメチルリン酸トリアミド、1−メチル−2−ピロリジノン及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリディノンから選ばれる少なくとも一種の双極性非プロトン溶媒、並びにアルカリ金属の水酸化物若しくは炭酸塩又はアルカリ土類金属の水酸化物若しくは炭酸塩の存在下に反応させ1,3−シクロアルカジエンを得る方法に於いて、反応系に水を添加すること及び160℃以上300℃以下の反応温度で反応させることを特徴とする1,3−シクロアルカジエンの製造法。
- 1,2−ジハロシクロアルカンが1,2−ジクロロシクロヘキサン又は1,2−ジブロムシクロヘキサンであることを特徴とする請求項1に記載の1,3−シクロアルカジエンの製造法。
- 双極性非プロトン溶媒が1−メチル−2−ピロリジノンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の1,3−シクロアルカジエンの製造法。
- 反応系に存在する水の量が1,2−ジハロシクロアルカンに対し、0.1倍モル以上1000倍モル以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の1,3−シクロアルカジエンの製造法。
- 水、双極性非プロトン溶媒及び塩基を含有する溶液を160℃以上300℃以下にした後に、1,2−ジハロシクロアルカンを該溶液に添加することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の1,3−シクロアルカジエンの製造法。
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