JP4294129B2 - シクロアルケンの塩素化法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、脂環式共役ジエンの原料である3−クロルシクロへキセンを得る方法に関するものである。特に1,3−シクロヘキサジエンの原料として有用な3−クロルシクロヘキセンを与えるシクロヘキセンの塩素化方法に関するものである。さらに、その3−クロルシクロヘキセンから得られる1,3−シクロヘキサジエン及びその重合体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
1,3−シクロヘキサジエンは、近年、リビングアニオン重合により高耐熱性で、且つ高剛性のポリマーが得られることが知られており、工業的に重要なモノマーである。
この1,3−シクロヘキサジエンから高重合物を得るにあたっては、不純物としてシクロヘキセン、ベンゼン、メチルシクロペンテンが含まれていても重合に支障のないことが知られている(特開平7−196737号公報)。しかし、1,3−シクロヘキサジエンの異性体である1,4−シクロヘキサジエンが不純物として含まれる場合、重合が円滑に進まず、低分子量体のみ得られたり、重合が全く進まなくなることが知られている(例えば、Polym.Prepr.(Am.Chem.Soc.Div.Polym.Chem.)12,P.402(1971))。本発明者らが検討したところ、目的とする高分子量体を得るためには、1,4−シクロヘキサジエンの含有量が少なくとも2モル%以下であることが必要である。
【0003】
1,3−シクロヘキサジエンを製造する方法としては、種々の方法が提案されているが、高収率かつ高純度の1,3−シクロヘキサジエンを得る方法の一つは、3−ヒドロキシシクロヘキセンを硫酸などの鉱酸類や結晶性メタロシリケート等の酸触媒を用いて脱水する方法が知られている(例えば、特開平8−253434号公報等)。
【0004】
この3−ヒドロキシシクロヘキセンは、3−クロルシクロヘキセンの加水分解により容易に得られることが知られている。従って、3−クロルシクロヘキセンは、1,3−シクロヘキサジエンを得る有用な原料である。
3−クロルシクロヘキセンから3−ヒドロキシシクロヘキセンを経由する1,3−シクロヘキサジエンへの製造ルートを下式に示す。
【0005】
【化1】
【0006】
3−クロルシクロヘキセンを得る方法としてはシクロヘキセンの塩素化が考えられるが、シクロヘキセンと塩素の反応は既に報告されており、下に示すtrans−1,2−ジクロルシクロヘキサン(1)、3−クロルシクロヘキセン(2)、4−クロルシクロヘキセン(3)が主に生成することが知られている。
【0007】
【化2】
【0008】
例えば、Poutsmaらは、シクロヘキセンに暗所、25℃で塩素を反応させるとtrans−1,2−ジクロルシクヘキサン(1)、3−クロルシクロヘキセン(2)及び4−クロルシクロヘキセン(3)が1.95:1.00:0.60の比率で生成することを報告している。さらに彼らは、この塩素化反応は、光照射下での塩素化が暗所での塩素化と同じ生成物比を与えると報告している(J.Am.Chem.Soc.,87(10) P.2161(1965))。彼らは、反応速度について詳細な検討を行い、trans−1,2−ジクロルシクロヘキサンがシクロヘキセンの2重結合への塩素の付加反応により生じ、3−クロルシクロヘキセンが2重結合への塩素の協奏的付加・脱離反応及び、ラジカル反応により生じ、4−クロルシクロヘキセンが、塩素のシクロヘキセンへのラジカル反応から生じることを明らかにしている。
【0009】
本発明者らが、この文献条件でシクロヘキセンの塩素化を行った試験結果によれば、原料シクロヘキセンの転化率が約70%以下の場合trans−1,2−ジクロルシクロヘキサン、3−クロルシクロヘキセン、4−クロルシクロヘキセンの比率は、シクロヘキセンの転化率にほぼ無関係に文献に示されている比率で一定であった。4−クロルシクロヘキセンの選択率は、17%であり、3−クロルシクロヘキセンの約1/2量の4−クロルシクロヘキセンが副生した。
【0010】
シクロヘキセンの塩素化生成物の沸点は、trans−1,2−ジクロルシクロヘキサンの沸点が189℃/760mmHgであり、3−クロルシクロヘキセンの沸点は145℃〜147℃/760mmHgである。従ってtrans−1,2−ジクロルシクロヘキサンと3−クロルシクロヘキセンの蒸留分離は一般的蒸留設備により行うことが可能である。ここで4−クロルシクロヘキセンが副生した場合、4−クロルシクロヘキセンの沸点が141℃/720mmHgであり、3−クロルシクロヘキセンの沸点に非常に近いために蒸留分離によって除くことが困難である。
一方、1,3−シクロヘキサジエン合成の原料に4−クロルシクロヘキセン(3)が含まれていると、下記ルートにより生成物として1,3−シクロヘキサジエン(4)とともに1,4−シクロヘキサジエン(5)が副生する。
【0011】
【化3】
【0012】
従って、1,3−シクロヘキサジエンの原料として3−クロルシクロヘキセンを得るために、4−クロルシクロヘキセンが副生しないシクロヘキセンの塩素化方法が求められる。
シクロヘキセンを塩素化している他の例としては、G.F.Bloomfieldが80℃で塩素化を行っている(J.Chem.Soc. P.114(1944))。彼は、シクロヘキセンに対して塩素を過剰量用いて塩素化を行い、生成物として塩素が1個入ったモノクロルシクロヘキセン(収率19%)とtrans−1,2−ジクロロヘキサン(収率28%)、トリクロルシクロヘキサン(収率11%)が得られたと報告している。しかしながら、モノクロルシクロヘキセン中の3−クロルシクロヘキセンと4−クロルシクロヘキセンの比率については、何も述べていない。本発明者らが、この文献条件でシクロヘキセンの塩素化を行った試験結果によれば、原料シクロヘキセンの転化率は、96%で、生成物中のtrans−1,2−ジクロルシクロヘキサン、3−クロルシクロヘキセン、4−クロルシクロヘキセン、トリクロルシクロヘキサンの比率(モル%)は、それぞれ、48%、27%、6%、19%であり、3−クロルシクロヘキセンに対して4−クロルシクロヘキセンが18%含まれており、1,3−シクロヘキサジエンの原料とするには、不適であることがわかった。
【0013】
また、Poutsmaは4−クロルシクロヘキセンを副生しないシクロヘキセンの塩素化方法として、酸素雰囲気下でシクロヘキセンに塩素を作用する方法を報告している。(例えば、J.Am.Chem.Soc.,87(10) P.2161(1965))また、アセトニトリルやアセトンのような極性溶媒中でシクロヘキセンに塩素を作用すると4−クロルシクロヘキセンを副生しないことも同文献中で報告している。しかし、シクロヘキセンを酸素雰囲気下で塩素化することはシクロヘキセンの爆発範囲に入る可能性があり工業的に実現することは難しい。また、溶媒としてアセトニトリルやアセトン中でシクロヘキセンを塩素化を行うと溶媒が何らかの反応をしたと考えられる構造不明の副生物が生成すると同文献中に記されており、塩素を基準とする目的物の収率が低下し、廃棄処理が必要な塩素含有有機廃棄物が大量に発生する事となり工業的に実施するには適当な製造法ではないものと推定される。
【0014】
さらに、シクロヘキセンに一酸化二塩素を共存させて塩素を導入することにより4−クロルシクロヘキセンが副生しないでシクロヘキセンの塩素化物を得る方法も報告されている(Acta Chem.Scand.,24(#2)P.736(1970))。しかしこの方法も一酸化二塩素が爆発する危険性が知られており、工業的に安定して実施することは難しい。
【0015】
3−クロルシクロヘキセンを得る合成法として、tert−ブチルハイポクロリドを塩素化剤に用い、ベンゾイルパーオキシド等のラジカル発生剤存在下でシクロヘキセンを塩素化する方法が報告されている(例えば、HelveticaChemica Acta, P.130(1957))。本方法は、前記の塩素による塩素化に比較すると77%と高収率で3−クロルシクロヘキセンを得ることができ、かつ4−クロルシクロヘキセンの副生が無いが、tert−ブチルハイポクロリドは、tert−ブチルアルコールと苛性ソーダ及び、塩素から実験室的には合成されるが、このtert−ブチルハイポクロリドの製造に際して、tert−ブチルハイポクロリドが爆発することがあることが知られており、工業的に製造されておらず、安定して大量に得ることができない。また、貯蔵等の取り扱いも容易でない。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、4−クロルシクロへキセンの副生が極めて少なく、且つ工業的に実施可能なシクロへキセンの塩素化法を提供することである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決すべく本発明者らが鋭意検討した結果驚くべきことに、酸化防止剤を共存させて塩素化することにより、4−クロルシクロヘキセンの生成量を極めて低く抑えることができることを見出し、本発明に至ったものである。
すなわち本発明は、
[1] シクロへキセンを塩素を用いて塩素化するに際し、フェノール骨格を有する化合物である酸化防止剤を該シクロへキセンに対して0.02重量%以上100重量%以下の量共存させて塩素化することを特徴とするシクロへキセンの塩素化法、
[2] 酸化防止剤が2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールであることを特徴とする[1]に記載のシクロへキセンの塩素化法、
[3] [1]又は[2]に記載のシクロへキセンの塩素化法によって3−クロルシクロヘキセンを製造後、該3−クロルシクロヘキセンを脱塩化水素反応することを特徴とする1,3−シクロヘキサジエンの製造方法、
[4] [3]に記載の1,3−シクロヘキサジエンの製造方法によって1,3−シクロヘキサジエンを製造後、該1,3−シクロヘキサジエンのみ、または他のモノマーと重合することを特徴とする1,3−シクロヘキサジエン重合体の製造方法、である。
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明に於ける酸化防止剤は、フェノール骨格を有する化合物を用いることができる。該酸化防止剤の例としてはフェノール類、チオエーテル類、ホスファイト類、アザシクロヘキシル骨格を有するアミン類(以下、ピペリジル類と称す。)が挙げられる。その中で好ましいものはフェノール骨格を有するフェノール類酸化防止剤である。
【0019】
フェノール類の例としては、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(以下BHTと略す。)、2,4,6−トリ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、ヒドロキノン、レゾルシン、カテコール、p−ベンゾキノン、2,6−ジメチルフェノール、フェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビスフェノールA、ビスフェノールF等があげられる。この中ではBHTが特に好ましい。
【0020】
チオエ−テル類の例としては、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)等が挙げられる。
【0021】
本発明の塩素化反応を行うに際してはフェノール骨格を有する化合物を単独で用いてもよいし、2種以上を併用することも可能である。該酸化防止剤の量は該シクロへキセンに対して0.02重量%以上100重量%以下の量であり、好ましくは0.1重量%以上20重量%以下である。該酸化防止剤の量が0.02重量%未満の場合選択的な塩素化の効果が小さく、100重量%を超える量である場合バッチ当たりの生産性が低下すると同時に酸化防止剤を回収する必要が大となり、製造プロセスが煩雑となる。
【0022】
反応に用いた酸化防止剤は、回収再使用が可能であるが、使用量が少ない場合は、反応混合物から目的物を分離した後に廃棄処理することもできる。本発明では、シクロへキセンに塩素を反応させるに際し、反応温度を所定の範囲内に保つことが好ましい。即ち−50℃以上500℃以下に保つことが好ましい。さらに好ましくは、0℃以上300℃以下である。−50℃未満では、4−クロルシクロヘキセン生成量が増え、塩素化反応により得られた混合物を脱塩化水素反応した場合1,3−シクロヘキサジエン中の1,4−シクロヘキサジエンの含有量が増え、好ましくない。また、500℃を越える温度では、生成した3−クロルシクロヘキセンの分解が顕著となる。
【0023】
反応温度が0℃以上シクロへキセンの沸点以下の場合、シクロへキセンは、液体であるから、液体中に塩素ガスを吹き込んで反応させる。また、反応温度がシクロへキセンの沸点以上の温度の場合には気相で塩素と接触させて、反応させることができる。反応は、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。不活性ガスとしては、窒素、ヘリウム、アルゴン等を用いることができる。不活性ガス雰囲気下に保つ方法としては、塩素ガスを上記不活性ガスで希釈する方法が好ましい。さらに希釈率としては、0℃、常圧において0.01g/リットル以上2.9g/リットル以下の塩素濃度に調整することが好ましい。希釈を行わないと塩素化反応における反応熱のために反応温度が異常に上昇し、分解物が多くなることがある。塩素化反応を安定に行うために不活性ガスで塩素を希釈することが有効である。
【0024】
反応時の圧力に特に制限は無いが、製造設備の大型化が容易である点からゲージ圧が1気圧以上10気圧以下が好ましい。本発明における塩素化法でのシクロへキセンと塩素のモル比は、好ましくは、10:1から10:15であり、さらに好ましくは、10:3から10:12である。モル比が10:1より少ないと十分な転化率を得ることができず、反応混合物からの3−クロルシクロへキセンの単離に多くのエネルギーを要することとなる。またモル比が10:15より多いと3個以上の塩素原子を有する化合物が多量に生成し、目的物の収量が低下する。
【0025】
また、シクロへキセンが液体の条件で塩素化を行う場合、原料のシクロへキセンは、無溶媒で反応させても良いし、塩素に対して不活性の溶媒を用いて希釈しても良い。溶媒としては、例えば四塩化炭素、クロロホルム、テトラクロロエチレン等のハロゲン系溶媒や酢酸、二硫化炭素などを用いることができる。気相で反応を行う場合にも、反応熱の除熱を助ける目的で窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性気体で希釈した塩素を用いることが好ましい。また、上記不活性溶媒を気相に同伴させてもよい。
【0026】
また、本発明においては、例えば鉄、酸化鉄、塩化鉄等の金属及び、金属塩を触媒として用いても構わない。
本発明においては、塩素化において塩化水素が同時に生成するので反応器材質は、高温で耐塩酸性に優れた材質を選定することが好ましく、例えば、グラスライニングを施した鉄系材料や、耐酸性のキュプロニッケルを用いることができる。
【0027】
本発明の塩素化法によってシクロヘキセンを塩素化した場合、3−クロルシクロヘキセンとtrans−1,2−ジクロルシクロヘキサンと少量の4−クロルシクロヘキセンと塩素が3個以上置換したポリ塩化シクロヘキサンの混合物が得られる。この混合物を例えば減圧蒸留することによって4−クロルシクロヘキセンの含有量が極めて少ない3−クロルシクロヘキセンを得ることができる。
【0028】
得られた3−クロルシクロヘキセンを脱塩化水素して1,3−シクロヘキサジエンに変換する方法としては、従来公知の方法を用いることができる。例えば、3−クロルシクロヘキセンを加水分解により3−ヒドロキシシクロヘキセンに変換し、酸触媒を用いて脱水することにより1,3−シクロヘキサジエンを得ることができる。また、3−ヒドロキシシクロヘキセンをγ−アルミナやリン酸マグネシウム等の触媒を用いて気相で脱水反応を行ってもよい。さらには文献(Helv.Chim.Acta,40,P.130(1957))に記載のある3−クロルシクロヘキセンにジメチルアニリン等の塩基を作用させて塩基の塩酸塩として脱塩化水素反応を行わせても1,3−シクロヘキサジエンを得ることができる。
【0029】
さらに、本発明を用いて得ることができる1,4−シクロヘキサジエンの含有量が極めて少ない1,3−シクロヘキサジエンを公知の方法(例えば、WO94/28038等)で重合することによって平均分子量の高い(1,3−シクロヘキサジエン)ホモポリマーを得ることができる。また、他のモノマーと共重合させることにより1,3−シクロヘキサジエンユニットを含む共重合体を得ることができる。
【0030】
本発明の1,3−シクロヘキサジエンと共重合できるモノマーとしては、アニオン重合によって重合可能な従来公知のモノマーを例示することができる。例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等の鎖状共役ジエン系モノマー、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレン、ジフェニルエチレン、ビニルピリジン等のビニル芳香族モノマー、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリロニトリル、メチルビニルケトン、α−シアノアクリル酸メチル等の極性ビニル系モノマー、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、環状ラクトン、環状ラクタム、環状シロキサン等の極性モノマー、あるいはエチレン、α−オレフィン系モノマーを例示することができる。これらのモノマーは必要に応じて一種でも、あるいは二種以上であっても構わない。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0032】
【実施例1】
ジムロート冷却管、ガス導入管、温度計、回転子を備えた200mlガラス反応器にシクロヘキセン82.0g(1mol)と2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)11.0g(0.05mol)を加えた。反応器に塩素ガス0.59g/minを還流温度を維持するように昇温しながら120分間導入した(還流温度83℃〜136℃)。塩素導入量71g(1mol)。塩素導入後反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、シクロヘキセンの転化率は97%であり、生成物中のモル%は3−クロルシクロヘキセンは33%、trans−1,2−ジクロルシクロヘキサンは60%、4−クロルシクロヘキセンは0.5%、その他は塩素が3個以上置換したポリ塩化シクロヘキサンであった。シクロヘキセンを留去した後に3−クロルシクロヘキセンを73℃〜74℃/80mmHgで減圧蒸留した。得られた3−クロルシクロヘキセンの収率は26%であり、4−クロルシクロヘキセンの含有率は0.8モル%であった。
【0033】
【比較例1】
2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)を加えなかったこと以外は実施例1と同様に塩素化反応を行った(還流温度83℃〜134℃)。その結果、シクロヘキセンの転化率は、95%であり、生成物中のモル%は3−クロルシクロヘキセンは26%、trans−1,2−ジクロルシクロヘキサンは51%、4−クロルシクロヘキセンは13%、その他は塩素が3個以上置換したポリ塩化シクロヘキサンであった。実施例1と同様に3−クロルシクロヘキセンの蒸留を行うと、4−クロルシクロヘキセンの含量が32モル%である3−クロルシクロヘキセンと4−クロルシクロヘキセンの混合物が30%の収率で得られただけであり、4−クロルシクロヘキセンを蒸留で除くことはできなかった。
【0034】
【実施例2】
2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)の添加量を1.1g(0.005mol)に変えたこと以外は実施例1と同様に塩素化反応を行った(還流温度83℃〜132℃)。その結果、シクロヘキセンの転化率は、93%であり、生成物中のモル%は、3−クロルシクロヘキセンは30%、trans−1,2−ジクロルシクロヘキサンは56%、4−クロルシクロヘキセンは1.0%、その他は塩素が3個以上置換したポリ塩化シクロヘキサンであった。実施例1と同様に蒸留を行うと、3−クロルシクロヘキセンの収率は25%であり、4−クロルシクロヘキセンが2.0モル%含まれていた。
【0035】
【比較例2】
アルドリッチ社製のシクロヘキセン(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)を0.01重量%含有する。)に変えたこと以外は実施例1と同様に塩素化反応を行った(還流温度83℃〜132℃)。その結果、シクロヘキセンの転化率は、92%であり、生成物中のモル%は3−クロルシクロヘキセンは20%、trans−1,2−ジクロルシクロヘキサンは53%、4−クロルシクロヘキセンは11%、その他は塩素が3個以上置換したポリ塩化シクロヘキサンであった。実施例1と同様に蒸留を行うと、3−クロルシクロヘキセンと4−クロルシクロヘキセンの混合物の収率は26%であり、4−クロルシクロヘキセンが30モル%含まれていた。
【0036】
【実施例3】
ジムロート冷却管、ガス導入管、温度計、回転子を備えた200mlガラス反応器にシクロヘキセン82.0g(1mol)と2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)22.0g(0.1mol)を加えた。反応器に塩素ガス1.3g/minを窒素ガス100ml/minで希釈したガスを還流温度を維持するように昇温しながら60分間導入した(還流温度83℃〜140℃)。塩素導入量78g(1.1mol)。塩素と窒素の混合ガス導入後反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、シクロヘキセンの転化率は100%であり、生成物中のモル%は3−クロルシクロヘキセンは29%、trans−1,2−ジクロルシクロヘキサンは62%、4−クロルシクロヘキセンは0.1%、その他は塩素が3個以上置換したポリ塩化シクロヘキサンであった。実施例1と同様にして3−クロルシクロヘキセンを減圧蒸留した。得られた3−クロルシクロヘキセンの収率は24%であり、4−クロルシクロヘキセンが0.2モル%含まれていた。
【0037】
【比較例3】
2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)を加えなかった以外は実施例3と同様に塩素を窒素で希釈して塩素化反応を行った(還流温度83℃〜131℃)。その結果、シクロヘキセンの転化率は90%であり、生成物中のモル%は3−クロルシクロヘキセンは10%、trans−1,2−ジクロルシクロヘキサンは55%、4−クロルシクロヘキセンは6%、その他は塩素が3個以上置換したポリ塩化シクロヘキサンであった。シクロヘキセンを留去した後に実施例1と同様にして3−クロルシクロヘキセンを減圧蒸留した。得られた3−クロルシクロヘキセンの収率は15%であったが、このものには4−クロルシクロヘキセンが35モル%含まれていた。
【0038】
【実施例4】
2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)をハイドロキノン5.5g(0.05mol)に変えた以外は実施例1と同様に塩素化反応を行った(還流温度83℃〜133℃)。その結果、シクロヘキセンの転化率は93%であり、生成物中のモル%は、3−クロルシクロヘキセンは28%、trans−1,2−ジクロルシクロヘキサンは56%、4−クロルシクロヘキセンは1.0%、その他は塩素が3個以上置換したポリ塩化シクロヘキサンであった。シクロヘキセンを留去した後に実施例1と同様にして3−クロルシクロヘキセンを減圧蒸留した。得られた3−クロルシクロヘキセンの収率は22%であったが、このものには4−クロルシクロヘキセンが2.0モル%含まれていた。
【0039】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の塩素化法、即ちシクロヘキセンに酸化防止剤を添加して塩素により塩素化する方法により、4−クロルシクロヘキセンの含有量が極めて少なく、高純度の1,3−シクロヘキサジエンに誘導可能な3−クロルシクロヘキセンを容易に製造することができる。
Claims (4)
- シクロへキセンを塩素を用いて塩素化するに際し、フェノール骨格を有する化合物である酸化防止剤を該シクロへキセンに対して0.02重量%以上100重量%以下の量共存させて塩素化することを特徴とするシクロへキセンの塩素化法。
- 酸化防止剤が2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールであることを特徴とする請求項1に記載のシクロへキセンの塩素化法。
- 請求項1又は2に記載のシクロへキセンの塩素化法によって3−クロルシクロヘキセンを製造後、該3−クロルシクロヘキセンを脱塩化水素反応することを特徴とする1,3−シクロヘキサジエンの製造方法。
- 請求項3に記載の1,3−シクロヘキサジエンの製造方法によって1,3−シクロヘキサジエンを製造後、該1,3−シクロヘキサジエンのみ、または他のモノマーと重合することを特徴とする1,3−シクロヘキサジエン重合体の製造方法。
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