JP4356423B2 - 溶融Al−Zn−Mg系めっき鋼板およびその製造方法 - Google Patents

溶融Al−Zn−Mg系めっき鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、溶融Al−Zn−Mg系めっき鋼板、特に曲げ加工性、端面耐食性および表面外観に優れる溶融Al−Zn−Mg系めっき鋼板とその製造方法に関するものである。
溶融Zn−Al系めっき鋼板は、ZnによるFeの犠牲防食作用とAlによる高い耐食性とを兼ね備えているため、建材分野を中心として広く普及している製品である。なかでも55mass%Al−1.6mass%Si−Znめっき鋼板は、中性およびアルカリ性の環境下においてAlめっき鋼板と同等かそれ以上の高い耐食性を示し、しかも安価であるため、公共建築の屋根や壁材をはじめとして畜舎等へも適用が増加している。
ところで、この種の用途では、現場施工時に曲げ加工を行うことや、めっき鋼板を適当な長さに切断して用いること、が不可避であるから、曲げ加工性並びに切断面における防食性、いわゆる端面耐食性にも優れることが重要である。
ここに、めっき層中のAl含有量がZnに対して相対的に高くなるほど、Znの犠牲防食作用が小さくなるため、55mass%Al−1.6mass%Si−Znめっき鋼板やAl系めっき鋼板では、切断部や傷付部で赤錆が発生しやすくなるという問題があった。これを解決する目的で、高Al含有−Zn系めっき鋼板にMgを添加し切断部や傷付部などの端面での防錆を向上させる技術が多数開示されている。
例えば、特許文献1には、めっき層中に、Mgを1〜15mass%、実際には3、5mass%以上で添加することが開示されているが、このような高濃度のMgは、めっき層中に多量のMg−ZnおよびMg−Si系の金属間化合物相を析出させるため、加工性、とりわけ上記した曲げ加工性が大幅に劣化する不利がある。さらに、ドロスの増加やめっき浴面の酸化によって、めっき表面に湯皺が発生して表面外観を阻害するなど、実操業の観点からも問題が残るものであった。
特開2002−12959号公報
本発明は、曲げ加工性を損なうことなく、表面外観および端面耐食性に優れた溶融Al−Zn−Mg系めっき鋼板を、その製造方法と併せて提供することを目的とする。
発明者らは、上記の課題を達成するべく鋭意検討した結果、以下の知見を得るに到った。
まず、55mass%Al−1.6mass%Si−Znめっき鋼板において、曲げ加工性を阻害するめっき層のクラックは、合金層やインターデンドライトに析出するSiに沿って伝播することが知られている。ここで、めっき層にMgを添加すると、粗大なZn−Mg系およびSi−Mg系の組織が生成し、クラックの発生源と伝播経路とが増えるため、曲げ加工性はさらに劣化することになる。ところが、このZn−Mg系およびSi−Mg系組織を粒状に微細化させると、クラックの発生と伝播は生じなくなり、さらにインターデンドライトのSi、デンドライト中のZn固溶量も幾分減少するため、曲げ加工性は大幅に改善することが新たに判明した。また、Crを添加すると合金層の粒子が微細化し、とくにめっき層中のSiを減らすためにSi含有量を下げた場合でも、合金層の粗大化が起こらず、加工性が劣化しないこともわかった。
次に、Mg添加に伴う湯皺の発生は、めっき浴にMnを添加し、かつめっき層凝固までの冷却速度をめっき浴温に対して規定することによって、ほとんど発生しないことがわかった。また、Mgを含む溶液を、さらに好ましくはMgと、これにAl、Cr、Ti、Sr、Ce、LaおよびYの1種以上を添加した溶液を、めっき浴から引き上げ後めっき層が凝固するまでの間に、めっき層に付着させることにより、湯皺の発生はより効果的に抑制できることもわかった。
すなわち、本発明の要旨構成は、次のとおりである。
(1)Al:40〜90mass%、Mg:0.1〜3mass%、Si:0.5〜2.5mass%、Mn:0.002〜1mass%およびCr:0.002〜0.03mass%を含み、残部がZnおよび不可避不純物からなるめっき浴に、鋼板を浸漬したのち引き上げて鋼板表面にめっき層を形成する、めっき処理を経た鋼板であって、該めっき層におけるSi相、Mg−Zn系相およびMg−Si系相の長径が0.5μm以下であることを特徴とする溶融Al−Zn−Mg系めっき鋼板。
(2)前記めっき浴のMg含有量が0.1〜2mass%であることを特徴とする上記(1)に記載の溶融Al−Zn−Mg系めっき鋼板。
(3)前記めっき層は、めっき処理後にさらに、Mg:0.05〜0.5mol/lを含有する溶液の付着処理を経たものであることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の溶融Al−Zn−Mg系めっき鋼板。
(4)前記めっき層は、めっき処理後にさらに、Mg:0.05〜0.5mol/lを含み、かつAl、Cr、Ti、Sr、Ce、LaおよびYの1種または2種以上を合計で0.01〜0.5mol/lにて含有する溶液の付着処理を経たものであることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の溶融Al−Zn−Mg系めっき鋼板。
(5)Al:40〜90mass%、Mg:0.1〜3mass%、Si:0.5〜2.5mass%、Mn:0.002〜1mass%およびCr:0.002〜0.03mass%を含み残部がZnおよび不可避不純物からなるめっき浴に、鋼板を浸漬し、次いでめっき浴から鋼板を引き上げたのち、めっき層の凝固が終了するまでの間は、下記式(A)を満足する平均速度Vc〔℃/s〕にて冷却することを特徴とする溶融Al−Zn−Mg系めっき鋼板の製造方法。

Vc≧0.1×T−10 …(A)
ここに、T:めっき浴温〔℃〕
(6)めっき浴から引き上げてからめっき層の凝固が終了するまでの間に、Mg:0.05〜0.5mol/lを含有する溶液を、該めっき層の表面に付着させることを特徴とする上記(5)に記載の溶融Al−Zn−Mg系めっき鋼板の製造方法。
(7)めっき浴から引き上げてからめっき層の凝固が終了するまでの間に、Mg:0.05〜0.5mol/lを含み、かつAl、Cr、Ti、Sr、Ce、LaおよびYの1種または2種以上を合計で0.01〜0.5mol/lにて含有する溶液を、該めっき層の表面に付着させることを特徴とする上記(5)に記載の溶融Al−Zn−Mg系めっき鋼板の製造方法。
(8)めっき層が凝固した後、250〜150℃の温度域で3分以上保持するか、または250〜150℃の温度域を0.5℃/s以下の平均速度で冷却することを特徴とする上記(5)〜(7)のいずれかに記載の溶融Al−Zn−Mg系めっき鋼板の製造方法。
本発明によれば、曲げ加工性に優れ、しかも表面外観および端面耐食性に優れた溶融Al−Zn−Mg系めっき鋼板を提供することができる。
本発明の溶融Al−Zn−Mg系めっき鋼板は、以下に示す組成のめっき浴に、鋼板を浸漬したのち引き上げて表面にめっき層を形成する、めっき処理を経た鋼板である。まず、めっき処理にて形成されるめっき層に、めっき浴の組成が及ぼす影響について順に詳細に説明する。
Al:40〜90mass%
Alは、長期に亘り耐食性を得るための、重要な元素である。すなわち、40mass%を境に、これより少ないと耐食性は劣化する。増量するほど耐食性は改善するが、90mass%を超えると、切断部や傷つき部から赤錆が発生しやすくなるので好ましくない。また、めっき浴温も上昇し、操業性の点からも不利である。よって、40mass%以上90mass%以下に限定する。好ましくは、45mass%以上65mass%以下である。
Si:0.5〜2.5mass%
Siは、めっき浴中でのAlと鋼板の合金化反応を抑制するために添加する、必須元素である。この効果を得るには、0.5mass%以上が必要である。この添加量の増加とともに合金化反応は抑制されるが、2.5mass%でほほ飽和し、過剰なSiはインターデンドライトに析出して加工性を劣化させるため、2.5mass%以下とする。好ましくは、0.8mass%以上1.5mass%以下である。
Mg:0.1〜3mass%
Mgは、高Al合有−Zn系めっき鋼板において、端面耐食性の改善および傷つき部の赤錆を抑制するために添加する元素である。添加量が0.1mass%より少ないと、効果がない。一方、3mass%を超えると、Mg−Zn系およびMg−Si系の金属間化合物相が粗大に析出し、加工性が劣化する。さらに、浴の酸化量が多くなり、湯皺が発生しやすくなり、表面外観が劣化する。よって0.1mass%以上3mass%以下とする。曲げ加工性と、表面外観をさらに向上させるためには0.1〜2mass%とすることが好ましい。
Mn:0.002〜1mass%
Mnは、めっき浴の流動性を確保し、湯皺の発生を抑え、めっき層の表面外観を改善し、さらに端面耐食性を改善するために添加する元素である。この効果を得るには、0.002mass%以上の添加が必要である。一方、1mass%を超えると、めっき浴温の上昇を招いて流動性を損ねるため、1mass%以下とする。
Cr:0.002〜0.03mass%
Crは、合金層を微細化して曲げ加工性を改善し、さらに端面耐食性を改善するのに有効である。この効果を得るには、0.002mass%以上が必要である。一方、0.03mass%を超えると、ドロスが多量に生成して操業性が悪化するため、0.03mass%以下に限定する。
Zn:残部
Znは、鋼板に対する犠牲防食作用と腐食生成物の堆積効果とにより、耐食性向上を得るための必須元素である。この効果を得るには、30mass%以上含有させることが好ましい。
次に、上記めっき浴により形成されるめっき層の組織について述べる。
さて、MgはZnおよびSiと化合し、Zn2Mg、Zn11Mg2またはMg2Siなどとして析出しやすいことは、従来よく知られている現象である。そして、これらの相、すなわちMg−Zn系相およびMg−Si系相とSi相とがめっき層中に粗大に存在すると、クラックの起点や伝播経路になりやすいために、曲げ加工性は大幅に劣化する。
ここで、Al:56.7mass%、Mg:1.5mass%、Si:1.3mass%、Mn:0.4mass%およびCr:0.008mass%を含み残部がZnおよび不可避不純物からなるめっき浴(浴温:610℃)に、低炭素アルミニウムキルド鋼板を2秒間浸漬し、鋼板の表面に、めっき層を形成する際、めっき層が凝固するまでの冷却速度を変化させることによって、めっき層の析出相の大きさを変化させた試料を作製し、これら試料の曲げ加工性を評価した。
なお、冷却速度は、窒素ガスまたは純水ミストの吹きつけ流量を調節して変化させた。
また、析出相の大きさの測定および曲げ加工性の評価は、後述の実施例における測定および評価法と同様である。ちなみに、Si相、Zn−Mg系相およびSi−Mg系相の析出相がめっき層中に存在する状況は、走査型電子顕微鏡(SEM)の反射電子像に生じる組成コントラストから容易に判別できる。一般に、組成コントラストは観察対象の平均原子番号が大きくなるほど明るく(白く)なるので、これらが析出するデンドライトの素地に対し、SiおよびMg−Si系粒子は黒く、Zn−Mg系粒子はやや白く観察されるからである。このように本発明では、めっき層断面の反射電子像の組成コントラストから判別できる析出相を一つの粒子とみなして、この粒子の径のうちの最大のものを長径として、この長径に関して曲げ加工性を評価した。
その評価結果を、図1に示すように、Si相、Zn−Mg系相およびSi−Mg系相の析出相の長径を0.5μm以下とすることにより、これら析出粒子はクラックの起点や伝播経路とは無関係となり、曲げ加工性が評点4以上となり改善されることがわかる。好ましくは、0.3μm以下である。
一方、これら析出相の長径について、下限は特に設ける必要はない。
次に、製造方法について述べる。
本発明の溶融Al−Zn−Mg系めっき鋼板は、フラックスめっき設備、連続焼鈍めっき設備のいずれを用いても製造可能である。まず、めっき浴は、前述の組成範囲内になるように予め調整することが肝要であり、つまり、Al:40〜90mass%、Mg:0.1〜3mass%、Si:0.5〜2.5mass%、Mn:0.002〜1mass%およびCr:0.002〜0.03mass%を含み残部がZnおよび不可避不純物からなる。
めっき浴温は550〜680℃の範囲内において、Al濃度に比例して高温とすることが操業性の観点から好ましい。
そして、鋼板を上記のめっき浴に浸漬して引き上げたのち、めっき層が凝固するまでの間の平均の冷却速度Vc〔℃/s〕を、Vc≧0.1T−10を満足する範囲に設定する。ここで、T〔℃〕はめっき浴温である。
すなわち、湯皺による外観不良を抑制し、しかもSi、Mg−Zn系およびMg−Si系の金属間化合物である析出相の長径を上記の大きさの範囲で析出させるためには、冷却速度を浴温によって定められる0.1T−10[℃/s]以上に制御しなければならない。なぜなら、これより徐冷では、湯皺を完全に防止することができないだけでなく、析出相が上記範囲より大きくなるからである。より好ましくはVc≧0.1T+5であり、この範囲とすることにより、析出相の長径をさらに好適な0.3μm以下とすることができる。
なお、Vcを上記範囲とするためには、鋼板をめっき浴から引き上げてからめっき層が凝固するまでの間に、冷却溶液、例えば脱イオン水をミスト状にして噴霧する。特に、めっき浴温、鋼板厚みおよび鋼板搬送速度に応じて、上記範囲となる様に噴霧条件を制御する。
さらに、本発明では、鋼板をめっき浴から引き上げてからめっき層が凝固するまでの間に、前記冷却溶液に、Mgを必須とし、さらに必要に応じてAl,Cr,Ti,Sr、Ce、LaおよびYのうちの1種または2種以上を添加した溶液を、めっき層表面に、例えばミスト状に噴霧して付着させることにより、さらに効果的に湯皺の発生を抑制し、端面耐食性を改善することができる。
このような溶液の付着処理の第一の目的は、無論冷却速度の制御であるが、さらにMgを必須成分として含有させること、すなわち外部からMgを補うことによって、めっき浴中のMg濃度を増量することなく、耐食性の向上、とくに端面耐食性を改善するためである。この効果を得るためには、Mg濃度は0.05mol/l以上とする必要がある。一方、Mg濃度の上限を0.5mol/lとした理由は、これ以上高濃度にしても効果が変わらないからである。なお、Mgは塩化Mgを添加して溶液に含有させることが好ましい。
また、必要に応じて、Mgを必須成分とする溶液に、Al、Cr、Ti、Sr、Ce、LaおよびYのうちの1種または2種以上を0.01mol/l以上0.5mol/l以下まで含有させることができる。これらを添加すると、湯皺による表面欠陥を完全に抑制することができる。この理由は必ずしも明らかではないが、浴中のMgによる酸化を防止しているためではないかと推測している。追加成分の含有量は、0.01mol/lより少ないと効果が得られず、一方0.5mol/lより多くしても効果が変わらないばかりか、ノズル詰まりを起こす危険性がある。なお、Al、Cr、Ti、Sr、Ce、LaおよびYは、これらの塩化物を添加して溶液に含有させることが好ましい。
さらにMg、またはさらにAl、Cr、Ti、Sr、Ce、LaおよびYを含有する溶液は水溶液であることが好ましいが、水以外の溶媒を含んでもよい。
連続めっきラインにおいて、冷却溶液又は上記の濃度に調整した溶液により冷却速度を制御するには、めっき浴温、鋼板厚みおよびライン速度などに応じて噴霧条件や噴射条件を制御する必要があるが、水溶液の場合はおおむね液量を1〜10l/minおよび液圧を100〜300kPaとし、めっき浴から引き上げた後めっき付着を調整するためのワイピングノズルを通過した後に噴霧を1回以上実施することが好ましい。フラックスめっき設備では、上記のミストを噴霧してもよいが、所定の濃度に調整した水溶液槽中に焼き入れてもよい。
なお、上記溶液の付着処理のみで、Vc≧0.1×T−10を満足する冷却速度が得られない場合は、窒素ガス噴霧による冷却を併用し上記冷却速度を満足するようにすることができる。
かかる方法により作製しためっき鋼板は、めっき層が凝固した後さらに、板温が250〜150℃の温度域で3分以上保持するか、または同250〜150℃の温度域を0.5℃/s以下の平均速度で冷却することが好ましい。これは、連続溶融めっき設備内にてコイルに巻き取る前に処理してもよいし、めっき層が凝固した鋼板を250℃超の温度で巻き取った後、再度加熱することなく、250〜150℃の温度域で3分以上保持してもよいし、または同250〜150℃の温度域を0.5℃/s以下の平均速度で冷却することとしてもよい。さらにまた、めっき層が凝固した鋼板をコイルに巻き取った後、一旦室温まで冷却させ、再度250〜150℃の温度域まで加熱後、この範囲に3分間以上保持してもよいし、または同250〜150℃の温度域を0.5℃/s以下の平均速度で冷却することとしてもよい。
250〜150℃の温度域での保持又は同温度域での冷却速度の制御の目的は、めっき層のデンドライト中に過飽和に固溶しているZnを析出させ、曲げ加工性をさらに改善するためである。すなわち、250℃より高温での保持は、めっき層のデンドライト中に準安定なα’−AlZnxが析出し、曲げ加工性が劣化するので好ましくない。一方、150℃より低温では、保持時間を長くしてもほとんどZnの析出が起こらず、曲げ加工性は改善しない。よって保持又は冷却速度を制御する温度範囲は150〜250℃である。保持時間は最低3分必要である。保持の方法は、この温度域のある温度で3分以上保持してもよいし、平均0.5℃/s以下の徐冷を行うこともできる。保持時間の上限は特にないが、おおむね1時間以下、または冷却速度0.03℃/s以上とすることが好ましい。この理由は、これ以上保持しても曲げ加工性の改善効果が認められないからである。
なお、鋼板表面に形成させるめっき層の付着量に、特に制限はないが、付着量が少なすぎると十分な端面耐食性が得られなくなり、多すぎると曲げ加工性劣化の原因となる。よって、鋼板の裏表合わせて40g/m2以上250g/m2以下とすることが好ましい。
さらに、本発明のめっき鋼板の片面または両面に、クロメート処理、りん酸処理などの化成処理を行った後、耐食性、意匠性および機能性の付与を目的として、エポキシ系、ポリエステル系、アクリル系、フッ素樹脂系、塩化ビニル系、ウレタン系等の塗膜層を1または2層設けることができる。
C:0.045mass%、Si:0.01mass%、Mn:0.16mass%、S:0.004mass%、Al:0.022mass%を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる、板厚2.3mmの低炭素アルミニウムキルド熱延鋼板および板厚0.4mmの同組成の低炭素アルミニウムキルド冷延鋼板を、表2に示す組成の溶融Al−Zn−Mgめっき浴に2秒間浸漬し、ガスワイピングでめっき付着量を80g/mm2(両面)に調整した後、表1に示す濃度で各塩化物を脱イオン水に添加した水溶液(Hは脱イオン水)をミストにして噴出する際の圧力を様々に変化させてめっき層が凝固するまで冷却し、めっき層が凝固した後表2に示す熱履歴条件となるような処理を適宜行い、250〜150℃の温度域での熱履歴に変化させた。さらに圧下率(伸び率)0.7%のスキンパス圧延を行い、コイルに巻き取った。このめっき鋼板の一部(No.5,15,21)は、コイルに巻き取った後、一旦室温まで冷却した後表2示す熱処理を施した。ここで、鋼板の引き上げから凝固までの平均冷却速度は、放射温度計で板温を測定し、めっき凝固までの平均値として求めた。
かくして得られた、めっき浴とめっき鋼板について、めっき浴の組成分析、表面外観、曲げ加工性および耐食性の評価を以下の方法で行った。
[めっき浴の組成分析]
Si以外の成分は、ヘキサメチレンテトラミン3.5gを1リットルの純水に溶かし、これに塩酸1リットルを添加したISO溶解液でめっき層を溶解し、この溶液に硝酸を添加し加熱分解した後、ICP発光分析法で定量した。Siは、上記ISO溶解液で同様にめっき層を溶解し、この溶液にふっ硝酸を添加し加熱分解した後、ICP発光分析法で定量した。その結果を、表2に示す。
[Si、Zn−Mg系およびSi−Mg系相の大きさ]
めっき鋼板から、15mm×lOmmの試料をランダムに5箇所から採取し、これを15mm長さ方向の断面が出るようにカーボン樹脂に埋め込んだ後、ダイヤモンドペーストでバフ研磨し、走査型電子顕微鏡(SEM)観察試料とした。この試料1枚からランダムに10箇所、2万倍の反射電子像を、1試料につき合計50視野撮影し、主相であるデンドライトに対する組成コントラストから、Si相,Zn−Mg系相、Si−Mg系相であることの判定を行い、全視野における、これら析出相全粒子の長径を測定し、その最大値を求めた。なお、念のため、これらの析出物がSi,Zn−Mg系、Si−Mg系であることの確認を、電界放射型の透過型電子顕微鏡(TEM)を用いたX線分析と電子線回折法により行った。このTEM用の試料は、代表的な試料を選び、イオンビーム加工法によりめっき層断面を薄膜化したものを用いた。その結果を、表2に示す。
[表面外観]
100mm×lOOmmの試料を採取し、めっき層における湯皺の発生状況を目視評価した。評価基準は、湯皺なしを○、湯皺僅かにあり(筋状の白い部分あり)を△、湯皺あり(全面白濁)を×とした。
[曲げ加工性]
幅100mm、長さ80mmに試料を切断し、JIS Z2248−1996に準拠し、曲げ半径を1t(試料を1枚はさむ)で180°に折曲げ、曲げた外側の部位(1t曲げ加工部)を真上から幅方向に等間隔に10箇所を100倍のスコープで観察し、クラック発生状況を目視評価した。評点は、クラックなしを5、ヘヤクラックがわずかにありを4、ヘヤクラック明瞭にありを3、開口幅の広いクラックがわずかに存在を2、開口幅の広いクラックが全面に存在を1として、10箇所の平均評点を求めた。
[耐食性]
塗装なし試料の平面部、1t曲げ加工部、切断部端面について、JIS K5621−2003 耐複合サイクル防食性に準拠した複合サイクル試験を、それぞれ500サイクル、300サイクル、500サイクル行い、赤錆発生面積率を試験後の試料の写真を画像解析して評価した。試料サイズはいずれも70mm×150mmとし、平面部評価用および1t曲げ加工部用は裏面と4辺をシールした。切断部端両用は左右いずれも下バリが出るように切断し、裏面および上下の2辺のみシールした。
さらに、切断部端面については、JIS Z2371−2000 中性塩水噴霧試験に準拠した塩水噴霧試験を1000時間行い、赤錆発生面積率を試験後の試料切断部端面の100倍の写真を画像解析して評価した。
以上のように、端面耐食性としては、切断部端面について複合サイクル試験と塩水噴霧試験にて評価した。
評点はいずれも、赤錆発生面積率10%以下を◎、10超〜25%を○、25超〜50%を△、50%超を×とし、25%以下までを合格とした。
各評価結果を表3に示す。
同表に示したとおり、本発明に従って得られた溶融Al−Zn−Mg系めっき鋼板はいずれも、曲げ加工性、端面耐食性および表面外観に優れていた。
Figure 0004356423
Figure 0004356423
Figure 0004356423
かくして、本発明によれば、曲げ加工性、端面耐食性および表面外観に優れた溶融Al−Zn−Mg系めっき鋼板を得ることができる。
従って、本発明に従う溶融Al−Zn−Mg系めっき鋼板は、公共建築の屋根や壁材などへ好適に適用できる。
めっき層における析出相の長径の最大値と曲げ加工性との関係を示す図である。

Claims (8)

  1. Al:40〜90mass%、Mg:0.1〜3mass%、Si:0.5〜2.5mass%、Mn:0.002〜1mass%およびCr:0.002〜0.03mass%を含み、残部がZnおよび不可避不純物からなるめっき浴に、鋼板を浸漬したのち引き上げて鋼板表面にめっき層を形成する、めっき処理を経た鋼板であって、該めっき層におけるSi相、Mg−Zn系相およびMg−Si系相の長径が0.5μm以下であることを特徴とする溶融Al−Zn−Mg系めっき鋼板。
  2. 前記めっき浴のMg含有量が0.1〜2mass%であることを特徴とする請求項1に記載の溶融Al−Zn−Mg系めっき鋼板。
  3. 前記めっき層は、めっき処理後にさらに、Mg:0.05〜0.5mol/lを含有する溶液の付着処理を経たものであることを特徴とする請求項1または2に記載の溶融Al−Zn−Mg系めっき鋼板。
  4. 前記めっき層は、めっき処理後にさらに、Mg:0.05〜0.5mol/lを含み、かつAl、Cr、Ti、Sr、Ce、LaおよびYの1種または2種以上を合計で0.01〜0.5mol/lにて含有する溶液の付着処理を経たものであることを特徴とする請求項1または2に記載の溶融Al−Zn−Mg系めっき鋼板。
  5. Al:40〜90mass%、Mg:0.1〜3mass%、Si:0.5〜2.5mass%、Mn:0.002〜1mass%およびCr:0.002〜0.03mass%を含み残部がZnおよび不可避不純物からなるめっき浴に、鋼板を浸漬し、次いでめっき浴から鋼板を引き上げたのち、めっき層の凝固が終了するまでの間は、下記式(A)を満足する平均速度Vc〔℃/s〕にて冷却することを特徴とする溶融Al−Zn−Mg系めっき鋼板の製造方法。

    Vc≧0.1×T−10 …(A)
    ここに、T:めっき浴温〔℃〕
  6. めっき浴から引き上げてからめっき層の凝固が終了するまでの間に、Mg:0.05〜0.5mol/lを含有する溶液を、該めっき層の表面に付着させることを特徴とする請求項5に記載の溶融Al−Zn−Mg系めっき鋼板の製造方法。
  7. めっき浴から引き上げてからめっき層の凝固が終了するまでの間に、Mg:0.05〜0.5mol/lを含み、かつAl、Cr、Ti、Sr、Ce、LaおよびYの1種または2種以上を合計で0.01〜0.5mol/lにて含有する溶液を、該めっき層の表面に付着させることを特徴とする請求項5に記載の溶融Al−Zn−Mg系めっき鋼板の製造方法。
  8. めっき層が凝固した後、250〜150℃の温度域で3分以上保持するか、または250〜150℃の温度域を0.5℃/s以下の平均速度で冷却することを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の溶融Al−Zn−Mg系めっき鋼板の製造方法。
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