以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1,図2は、本実施形態に係る輻射温度検知装置(51)が装着される空気調和装置の室内機(Z)を示している。この室内機(Z)は、室内の天井(50)に埋設配置される天井埋込式の空気調和装置である。
上記室内機(Z)は、天井(50)の上側に埋設配置される矩形箱状のケーシング(1)と、このケーシング(1)の下端開口部に室内側から装着される矩形平板状の室内パネル(2)とを備えている。この室内パネル(2)には、その中央部に位置するようにして矩形開口状の吸込口(3)が形成されている。また、この吸込口(3)の外周には、長矩形状の4つの吹出口(4)が形成されている。この吹出口(4)は、それぞれの吹出口(4)が、室内パネルの外縁に略平行で、上記吸込口(3)を囲繞するように室内パネル(2)に配置されている。
また、ケーシング(1)内には、吸込口(3)の上部に遠心ファン(6)が設置されている。上記遠心ファン(6)の外周側には、この遠心ファン(6)を囲繞するようにして熱交換器(5)が設置されている。さらに、この遠心ファン(6)と吸込口(3)との間には、ベルマウス(7)が配置されている。また、吸込口(3)には、吸込グリル(8)とフィルタ(9)とが装着されている。一方、上記吹出口(4)の上部には、この吹出口(4)より上方へ延びる長矩形断面を有する吹出流路(14)が形成されている。この吹出流路(14)内には、詳細は後述する風量調整機構(10)と、風向調整手段(52)とを構成する第1フラップ(12)(垂直フラップ)及び第2フラップ(13)(水平フラップ)が設けられている。
上記吸込口(3)には、吸込空気の温度を測定する吸込温度センサ(16)が設置されている。一方、吹出口(4)には、室内空間へ給気される吹出空気の温度を測定するための吹出温度センサ(17)が設けられている。また、室内パネル(2)の下面側(室内露出部)の一角部近傍には、室内空間の輻射温度分布を検知するための輻射温度検知装置(51)の固定対象面となる取付部(19)が設けられている。輻射温度検知装置(51)は、固定部材(60)を介して、この取付部(19)に支持されており、室内側より装脱着可能となっている。この輻射温度検知装置(51)は、固定部材(60)に鉛直方向に保持された第1軸(71)を中心として旋回可能な1旋回部(70)を備えている。さらに、この第1旋回部(70)には、この第1軸(71)と直交して水平方向に延びる第2軸(91)が保持されている。そして、この第2軸(91)を中心として旋回可能な第2旋回部(90)が、第1旋回部(70)の下方に設けられている。また、室内空間の輻射温度を検知する検知部(赤外線センサ)(15)は、上記第2旋回部(90)の下部に支持されている。また、上記赤外線センサ(15)の下部には、この赤外線センサ(15)を保護するセンサカバー(57)が設けられている。
上記吸込温度センサ(16)、吹出温度センサ(17)、及び赤外線センサ(15)の検知情報が入力される制御手段(53)である制御部(18)は、吸込口(3)の内周側面に設置されている。この制御部(18)は、上記検知情報に基づいて、風量調整機構(10)、垂直フラップ(12)、及び水平フラップ(13)を制御する。
次に、上述した室内機(Z)の各構成要素について、それぞれ詳細に説明する。
風量調整機構(10)は、吹出口(4)より給気される吹出空気の風量を調整するためのものである。この風量調整機構(10)は、図2〜図4に示すように、1対の分配シャッタ(11,11)を備えている。この一対の分配シャッタ(11,11)は、吹出流路(14)の水平断面の長辺に沿って延びて形成され、この長辺の両壁側寄りにそれぞれ配置されている。この一対の分配シャッタ(11,11)は、図3に示すように、その一端が吹出流路(14)の側壁に沿って上下方向に形成されたガイド溝(25)に係入されている。一方、この分配シャッタ(11,11)の他端は、図3及び図4に示すように、モータ(29)により回転駆動されるギヤ(28)の径方向両側に噛合された一対のラック(27,27)の端部に連結されている。
以上の構成により、風量調整機構(10)は、モータ(29)によって上記ギヤ(28)が正逆両方向に選択的に回転されると、これに噛合した上記一対のラック(27,27)が相互に逆方向へ移動する。この一対のラック(27,27)の移動に伴って、上記一対の分配シャッタ(11,11)は、ガイド溝(25)に沿って、その係入部が上下方向に移動すると共に、それぞれの傾斜角度を変化させる。そして、このシャッタ(11,11)の傾動により、吹出流路(14)の中央側への延出量、即ち吹出流路(14)の開口面積を増減させることができる。
以上の風量調整機構(10)の構成において、例えば最大風量設定時には、上記吹出流路(14)の一対の分配シャッタ(11,11)が共に直立に近い姿勢で吹出流路(14)の長辺側壁寄りに収納される状態となり、上記吹出流路(14)の開口面積が拡大される。したがって、遠心ファン(6)によって、吹出口(4)から給気される吹出空気量が多くなる。一方、例えば最小風量設定時には、上記吹出流路(14)の一対の分配シャッタ(11)が共に水平に近い姿勢となり、上記吹出流路(14)の開口面積が縮小される。したがって、遠心ファン(6)によって、吹出口(4)から給気される吹出空気量が少なくなる。このように、吹出流路(14)の分配シャッタ(11)の傾斜角度を変化させることで、吹出空気量を自由に調整することができる。
なお、上記風量調整機構(10)は上記吹出口(4,4,…)のそれぞれに対応して設けられるものであり、これらの風量調整機構(10)は、独立して個別に作動制御される。また、この風量調整機構(10)の作動制御は、前述の吸込温度センサ(16)、吹出温度センサ(17)、及び赤外線センサ(15)の検知情報に基づいて、上記制御手段(53)である制御部(18)によって行われる。
垂直フラップ(12)は、吹出口(4)より給気される吹出空気の風向を第1の揺動方向(吹出口(4)の開口部における長辺方向(左右方向)に調整するためのものである。上記垂直フラップ(12)は、図2に示すように、吹出流路(14)の鉛直断面に沿った形状の複数のプレート体(55)を有している。このプレート体(55)は、吹出口(4)の開口面と略直角な姿勢で、吹出流路(14)内に所定の間隔で並設されている。また、このプレート体(55)と吹出流路(14)の吸込口(3)寄りの壁面との間には、該プレート体(55)を支持するための第1支軸(23)が設けられている。この構成により、上記プレート体(55)は、第1支軸(23)を中心として左右方向に傾斜角度が可変な状態となっている。また、垂直フラップ(12)には、上記プレート体(55)を連結するためのリンクバー(24)が設けられている。このリンクバー(24)は、吹出口(4)の開口部における長辺と略平行に、上記複数のプレート体(55)を連結して設置されている。また、上記吹出流路(14)内の片側短辺寄りには、このリンクバー(24)の一端と連結する第1モータ(30)が設置されている。この構成により、第1モータ(30)が駆動すると、上記リンクバー(24)が吹出流路(14)内で左右に揺動し、上記プレート体(55)は、第1支軸(23)を中心として左右方向に傾斜角度が変更される。したがって、吹出口(4)からの吹出空気を左右方向に調整することができる。また、第1モータ(30)の正転、逆転を繰り返すことで、プレート体(55)は、連続的に左右に揺動する。この場合、吹出口(4)より給気される吹出空気を左右方向にスイングして排出することができる。
なお、上記垂直フラップ(12)は、上記吹出口(4,4,…)のそれぞれに設けられるものであり、これらの垂直フラップ(12)は、各吹出口(4,4,…)毎に独立して個別に制御される。また、この垂直フラップ(12)の作動制御は、吸込温度センサ(16)、吹出温度センサ(17)、及び赤外線センサ(15)の検知情報に基づいて、上記制御手段(53)である制御部(18)によって行われる。
水平フラップ(13)は、吹出口(4)より給気される吹出空気の風向を第2の揺動方向(吹出口(4)より室内パネル(2)の外周に向かった上下方向)に調整するためのものである。上記水平フラップ(13)は、図2に示すように、一対の両辺が湾曲した形状を持つ帯板材で構成されている。そして、水平フラップ(13)は、この一対の湾曲した両辺が、吹出流路(14)の左右側面と近接するように、横方向に延びて形成されている。この水平フラップの両端上部には、この水平フラップ(13)を支持するための第2支軸(56)が設けられている。そして、水平フラップ(13)は、この第2支軸(56)を中心として上下方向に傾斜角度が可変な状態となっている。また、上記第2支軸(56)の一方には、図5に示すような第2モータ(31)がケーシング(1)内に連結されている。この構成により、第2モータ(31)が駆動すると、水平フラップ(13)は、第2支軸(56)を中心として上下方向に傾斜角度が変更される。したがって、吹出口(4)からの吹出空気を上下方向に調整することができる。
また、第2モータ(31)の正転、逆転を繰り返すことで、水平フラップ(13)は、連続的に上下に揺動する。この場合、吹出口(4)より給気される吹出空気を上下方向にスイングして排出することができる。
なお、上記水平フラップ(13)は、上記吹出口(4,4,…)のそれぞれに対応して設けられるものであり、これらの水平フラップ(13)は、連動して制御される。このため、第2モータ(31)が所定量回転すると、水平フラップ(13,13,…)の傾斜角度は、それぞれ同じ角度に変更され、吹出口(4,4,…)の吹出空気も同じ風向に調整される。また、この水平フラップ(13)の作動制御は、吸込温度センサ(16)、吹出温度センサ(17)、及び赤外線センサ(15)の検知情報に基づいて、上記制御手段(53)である制御部(18)によって行われる。
吸込温度センサ(16)は、遠心ファン(6)によって室内より吸込口(3)へ吸引される吸込空気の温度を測定するためのものである。図2に示すように、この吸込温度センサ(16)は、上記制御部(18)のケーシング壁面に、吸込空気温度が測定可能に取り付けられている。
吹出温度センサ(17)は、遠心ファン(6)によってケーシング(1)内より吹出口(4)を介して室内へ給気される吹出空気の温度を測定するためのものである。この吹出温度センサ(17)は、吹出流路(14)の壁面に、吹出空気温度が測定可能に取り付けられている。
−輻射温度検知装置の構造−
本発明の特徴である輻射温度検知装置(51)は、室内機(Z)が天井に設置された状態において、室内の壁面、床面あるいは人体等の躯体からの輻射熱を輻射温度として検知し、これを現在の室内温度に関する検知情報として、制御部(18)に出力するためのものである。
この輻射温度検知装置(51)の要部構造について、図6に基づいて大略的に説明する。
輻射温度検知装置(51)は、下部が開放された固定部材(60)より、鉛直下方向に向かって順に、第1旋回部(70)、第2旋回部(90)、赤外線センサ(15)、及びセンサカバー(57)を備えている。
上記第1旋回部(70)は、固定部材(60)に保持されて鉛直下方向に延びた第1軸(71)の下端に固定されている。そして、この第1旋回部(70)は、固定部材(60)における後述の固定部材ベース板(65)の下面側(第2の面側)で、上記第1軸(71)の軸周り方向に旋回可能な状態となっている。また、上記第2旋回部(90)は、上記第1旋回部(70)の下部に保持された水平方向に延びる第2軸(91)に支持されている。この第2旋回部(70)は、上記第2軸(91)の軸周り方向に旋回可能な状態となっている。さらに、第2旋回部(90)の下部には、室内空間の輻射温度分布を検知する赤外線センサ(15)が装着されている。この赤外線センサ(15)の下方には、略半球状のセンサカバー(57)が装着されており、このセンサカバー(57)によって赤外線センサ(15)が保護された状態となっている。
また、上記固定部材ベース板(65)の上面側(第1の面側)には、上記第1旋回部(70)を駆動するための第1駆動機構(第1モータ)(72)が配置されている。この第1モータ(72)は、上記第1旋回部(70)を第1軸(71)の軸周り方向に旋回させる。さらに、第1旋回部(70)の中央部には、第2旋回部(90)を駆動するための第2駆動機構(第2モータ)(92)が配置されている。この第2モータ(92)は、第2旋回部(90)を第2軸(91)の軸周り方向に旋回させる。なお、本実施形態において、上記第1,第2モータ(72,92)は、所定のパルス電圧を印加することにより回転するステッピングモータで構成されている。この第1,第2モータ(72,92)には、第1,第2旋回部(70,90)が室内空間を走査する上で必要な最小限の角度範囲(目的角度範囲)で旋回するようにパルス電圧が印加されている。そして、第1,第2旋回部(70,90)は、この目的角度範囲で旋回するように駆動制御されている。
また、本実施形態の輻射温度検知装置(51)には、第1旋回部(70)の回転を所定の角度範囲で抑止する第1位置決め機構(73)と、第2旋回部(90)の回転を所定の角度範囲で抑止する第2位置決め機構(93)とがそれぞれ設けられている。これら第1,第2位置決め機構(73,93)は、第1,第2旋回部(70,90)が目的角度範囲よりもずれて旋回しようとする際に、このずれを解消するストッパーとしての機能を果たす。これら第1,第2位置決め機構(73,93)の詳細構造については、後述するものとする。
次に、この輻射温度検知装置(51)の詳細構造について、図6〜8に基づいて説明する。
なお、図6,図7は、それぞれ、輻射温度検知装置(51)の中央断面図、片側側面図を示したものである。また、図8は、固定部材(60)と第1旋回部(70)の一部とを下側より視た部分下面図である。
固定部材(60)は、図6に示すように、その上部に上記第1モータ(72)が固定支持されるモータ支持台(61)を備え、その下部に第1旋回部(70)を旋回可能に支持する固定支持台(62)を備えている。
モータ支持台(61)は、上部に位置する長方形状の平板部材(85)と、この平板部材(85)の両短辺より鉛直下方に延びた一対の支持部材(86)によって形成されている。そして、この支持部材(86)が、上記固定支持台(62)の上端部に取り付けられることで、モータ支持台(61)が、固定支持台(62)の上面側に支持されている。平板部材(85)の上面には、第1モータ(72)が設置されている。そして、上記平板部材(85)の中央には、第1モータ(72)より下方向に延びる出力軸(第1出力軸)(74)が貫通している。
モータ支持台(61)と上記固定支持台(62)との間の空間には、上記第1出力軸(74)と、この駆動軸である第1駆動軸(75)が鉛直方向に貫通した状態となっている。この第1駆動軸(75)は、第1出力軸(74)よりも大径で、その上部に第1出力軸(75)の下部が嵌合可能な固定溝(87)が形成されている。そして、この固定溝(87)に第1出力軸(74)の下部が連結され、第1出力軸(74)と第1駆動軸(75)とが一体となって回転する第1軸(71)が構成されている。また、モータ支持台(61)と固定支持台(62)との間の空間において、上記第1駆動軸(75)はベアリング(63)及び輪止め(64)によって旋回可能に支持されている。
固定支持台(62)の上端部には、図8に示すように、その外縁が、一対の対向する湾曲縁(図8においては左右側)と、この湾曲縁に介在する直線状の3辺からなる折曲縁と(図8においては上側)と、この湾曲縁に介在する直線縁(図8においては下側)とで構成された平板状の固定部材ベース板(65)が形成されている。そして、図6に示すように、この固定部材ベース板(65)の湾曲縁及び直線縁より、固定部材ケーシング(66)が鉛直下方に延びて形成されている。また、この固定部材ケーシング(66)の下端部には、固定部材(60)を空気調和装置の室内パネル(2)の取付部(19)に取り付けるための一対の固定部材取付板(67)が水平外側方向に延びて形成されている。
固定部材ベース板(65)には、円形状の垂直軸溝(68)が形成されている。そして、上記第1軸(71)の第1駆動軸(75)が、この垂直軸溝(68)に貫通している。さらに、固定部材ベース板(65)の下面側で、第1駆動軸(75)の外周側には、略円筒状のケーブル収納板(84)が構成されている。そして、このケーブル収納板(84)の内周側には、詳細は後述するケーブル収納部(100)が形成されている。
第1旋回部(70)は、上端部に位置する第1ベース板(76)と、この第1ベース板(76)より下方に形成された第1支持台(77)とが設けられている。
第1ベース板(76)は、略正方形面を有する平板状の形状をして水平方向に延びている。そして、第1ベース板(76)の上面中央に上記第1駆動軸(75)が固定されている。また、この第1ベース板(76)の下面中央よりやや片側寄り(図6においては左側寄り)には、締結穴を有するモータ取付板(88)が、下方向に延びて形成されている。このモータ取付板(88)には、第2モータ(92)が締結支持されている。
また、第1ベース板(76)の左右の両辺には、それぞれ下方向に延びて形成される一対の第1支持台(77,77)が一体形成されている。この第1支持台(77,77)の下部には、一対の円形状の水平軸溝(81,81)が形成されている。そして、この水平軸溝(81,81)に、一対の第2軸(91,91)が回転自在に支持されている。
また、左側の第1支持台(77)に支持された第2軸(91)の外周には、第2ギヤ(79)が固定されている。一方、第2モータ(92)の出力軸である第2出力軸(80)の外周には、上記第2ギヤと噛合可能な第1ギヤ(78)が固定されている。そして、図7に示すように、第1ギヤ(78)と第2ギヤ(79)とが互いに噛合している。
第2旋回部(90)は、第1旋回部(70)の下部に構成されている。この第2旋回部(90)は、上記第1支持台(77,77)に挟み込まれて保持された一対の第2支持台(94,94)と、この第2支持台(94,94)に支持された赤外線センサ(15)とを備えている。第2支持台(94,94)は、第1支持台(77,77)に回転自在に支持された第2軸(91,91)に一体形成されており、第2軸(91,91)と一体となって旋回可能な状態となっている。
赤外線センサ(15)は、上記一対の第2支持台(94,94)の間に挟み込まれて固定支持されている。この赤外線センサ(15)は、略円筒状のセンサケーシング(95)の下端部に、室内空間の赤外線を集光するための集光レンズ(97)が固定されている。また、センサケーシング(95)の上端部には、赤外線センサ(15)のセンサ/プリアンプ部(98)が設置されている。さらに、センサケーシング(95)内には、集光レンズ(97)より集光されてセンサ/プリアンプ部(98)に検知される赤外線の焦点距離を確保するための集光空間(96)が形成されている。
赤外線センサ(15)を保護するセンサカバー(57)は、赤外線センサ(15)の下側に設けられている。このセンサカバー(57)は、略半球のドーム型形状をしており、赤外線センサ(15)の先端付近に、このセンサカバー(57)の頂点が位置するように配置されている。このセンサカバー(57)の内側には、鉛直上方に向かって一対のカバー取付部材(58,58)が形成されている。そして、センサカバー(57)は、このカバー取付部材(58,58)を、上述の第1支持台(77,77)の外側に締結することで固定されている。
また、本実施形態において、上記センサカバー(57)は赤外線透過性で、かつ可視光透過性の材料によって構成されている。このため、センサカバー(57)を装着した際には、室内パネル(2)の下面より、赤外線センサ(15)が在室者の目に見えない状態となっている。
<第1,第2位置決め機構の構造>
次に、本実施形態に係る輻射温度検知装置(51)の第1,第2位置決め機構(73,93)について、図6〜図8に基づいて詳細に説明する。
第1位置決め機構(73)は、図8に示すように、固定部材突出部(69)と第1突出部(82)とで構成されている。
固定部材突出部(69)は、固定部材ベース板(65)の下面側に、固定部材ケーシング(66)の内周面と接するように配置されている。この固定部材突出部(69)は、略三角ないし台形柱状の形状をしており、その先端が、固定部材ケーシング(66)より第1軸(71)へ向かって突出するように、固定部材ケーシング(66)に一体形成されている。一方、第1突出部(82)は、第1ベース板(76)の外周面に配置されている。この第1突出部(82)は、上記固定部材突出部(69)とほぼ同様の形状をしており、その先端が、第1ベース板(76)の外側へ向かって突出するように、第1ベース板(76)に一体形成されている。そして、第1旋回部(70)が第1軸(71)の軸周り方向に旋回すると、上記固定部材突出部(69)と第1突出部(82)とが互いに当接して、第1旋回部(70)の旋回動作が抑止される。
第2位置決め構造(93)は、図6,図7に示すように、第2突出部(99)と第2突出受け溝(83)とで構成されている。
第2突出部(99)は、図6の右側に位置する第2支持台(94)の外側面に配置されている。この第2突出部(99)は、略四角柱の形状をしており、上記第2支持台(94)より水平外側方向に向かって突出して形成されている。一方、第2突出受け溝(83)は、上記第2支持台(94)に隣接する第1支持台(77)の最下端部に形成されている。この第2突出受け溝(83)は、図7に示すように、第2軸(91)を中心とした略扇型の形状をしており、上記第2突出部(99)がこの第2突出受け溝(83)の範囲を可動に形成されている。そして、第2旋回部(90)が鉛直方向に旋回すると、上記第2突出部(99)と第2突出受け溝(83)の縁部とが互いに当接して、第2旋回部(90)の旋回動作が抑止される。
<第1,第2旋回部の駆動例>
次に、上述した第1,第2位置決め機構(73,93)を具備した輻射温度検知装置(51)における第1,第2旋回部(70,90)の駆動例について説明する。
第1旋回部(70)は、図6,図8に示すように、第1モータ(72)により第1軸(71)の回転方向に旋回可能な状態となっている。この状態で、第1モータ(72)を駆動すると、この回転力が、第1出力軸(74)、第1駆動軸(75)、第1ベース板(76)へ伝達され、第1旋回部(70)が第1軸(71)の軸周り方向に旋回する。
ところで、本実施形態において、第1モータ(72)は、第1旋回部(70)を室内空間の輻射温度分布の検知に必要な最低限度の目標角度範囲で旋回させるよう、上述したパルス電圧が印加される。したがって、第1旋回部(70)は、この目標角度範囲内で旋回するよう第1モータ(72)で駆動制御されている。そして、第1旋回部(70)がこの目標角度範囲内よりもずれて旋回しようとする際に、第1位置決め機構(73)がこのずれを解消するストッパーとしての機能を果たす。すなわち、第1位置決め機構(73)は、第1旋回部(70)を目標角度範囲内で旋回させるために、補助的に用いられている。この第1位置決め機構(73)のストッパー機能について、第1旋回部(70)の具体的な旋回動作を例示して説明する。
通常運転時において、第1旋回部(70)は、上記目標角度範囲内で旋回動作を行う。なお、この旋回動作は、第1モータ(72)の正転/逆転の駆動によって、図8のa,bの矢印方向への旋回を反復するように制御されている。また、このa,b方向への反復旋回動作においても、第1旋回部(70)が上記目標角度範囲内で制御されるようにパルス電圧が印加されている。ここで、第1旋回部(70)が長期にわたって反復旋回動作を繰り返すと、第1モータ(72)に印加されたパルス電圧の影響などにより、第1旋回部(70)が旋回する実際の角度範囲と目標角度範囲とにずれが生じる可能性がある。そして、このずれが生じると、第1旋回部(70)は、目標角度範囲内で旋回できないようになってしまう。
本実施形態においては、第1位置決め機構(73)による第1旋回部(70)の可動な範囲は、上記目標角度範囲と同様の範囲としている。このため、上述した理由などによって、第1旋回部(70)が目標角度範囲外を旋回しようとすると、第1旋回部(70)の固定部材突出部(69)と第1突出部(82)とが例えば図8に示す位置で当接し、第1旋回部(70)の旋回は抑止される。そして、この第1位置決め機構(73)によって、第1旋回部(70)が実際に旋回する角度範囲と、第1旋回部(70)の目標角度範囲とのずれが機械的に解消される。その後、第1モータ(72)には、第1旋回部(70)を目標角度範囲内でb方向へ旋回させるためのパルス電圧が印加される。そして、第1旋回部(70)は、再び目標角度範囲内での反復旋回動作を繰り返す。
また、第1旋回部(70)は、この反復旋回動作時において、第1旋回部(70)の旋回方向が切り替わる位置(第1モータ(72)の回転方向が逆転する時点)を旋回角度0°(原点位置)として制御されている。すなわち、第1旋回部(70)は、この原点位置を基準とした第1モータ(72)の駆動制御により、図8のa,bの旋回方向において、目的に応じた自由な角度調整を行うことができる。
第2旋回部(90)は、図6,図7に示すように、第2モータ(92)により第2軸(91)の回転方向に旋回可能な状態となっている。この状態で、第2モータ(92)が駆動すると、この回転力が第2出力軸(80)、第1ギヤ(78)、第2ギヤ(79)、第2軸(91)と伝達され、第2旋回部(90)を第2軸(91)の軸周り方向に旋回させることができる。
第2旋回部(90)は、上述した第1旋回部(70)と同様、目標角度範囲内で旋回するよう第2モータ(92)で駆動制御されている。そして、第2旋回部(90)がこの目標角度範囲内よりもずれて旋回しようとする際に、第2位置決め機構(93)がこのずれを解消するストッパーとしての機能を果たす。すなわち、第1位置決め機構(93)は、第2旋回部(90)を目標角度範囲内で旋回させるために、補助的に用いられている。この第2位置決め機構(93)のストッパー機能について、第2旋回部(90)の具体的な旋回動作を例示して説明する。
通常運転時において、第2旋回部(90)は、上記目標角度範囲内で旋回動作を行う。この第2旋回部(90)においても、上述した第1旋回部(70)と同様、第2モータ(92)は、第2旋回部(90)を目標角度範囲内で図7のa,bの矢印で示す反復旋回動作を繰り返すよう駆動制御されている。そして、この目標角度範囲と、第2旋回部(90)が反復旋回する実際の角度範囲とにずれが生じると、第2位置決め機構(93)の第2突出部(99)と第2突出受け溝(83)の縁部とが例えば図7に示す位置で当接し、このずれが解消される。その後、第2モータ(92)には、第2旋回部(90)を目標角度範囲内でb方向へ旋回させるためのパルス電圧が印加される。そして、第2旋回部(90)は、再び目標角度範囲内での反復旋回動作を繰り返す。
また、第2旋回部(90)の反復旋回動作時においても、上述の第1旋回部(70)と同様、第2旋回部(90)の旋回方向が切り替わる位置(第2モータ(92)の回転方向が逆転する時点)を旋回角度0°(原点位置)として制御されている。すなわち、第2旋回部(90)は、この原点位置を基準とした第2モータ(92)の駆動制御により、図7のa,bの旋回方向において、目的に応じた自由な角度調整を行うことができる。
以上のような第1,第2旋回部(70,90)の旋回動作の組み合わせにより、第2旋回部(90)に支持された赤外線センサ(15)は、室内空間を上下左右自由に走査することができる。そして、この走査によって、輻射温度検知装置(51)は、室内空間のほぼ全域の輻射温度分布を自由に検知することができる。
<輻射温度検知装置の電気配線構造>
次に、本実施形態に係る輻射温度検知装置(51)の電気配線構造について、図9に基づいて詳細に説明する。
輻射温度検知装置(51)には、第1,第2フレキシブルフラットケーブル(第1,第2フラットケーブル)(103,104)と、ケーブル収納部(100)と、中継コネクタ(108)とが備えられている。
第1フレキシブルフラットケーブル(103)は、その一端が第1旋回部(70)に配置された第2モータ(92)に接続されている。また、第2フレキシブルフラットケーブル(104)は、その一端が第2旋回部(90)に配置された赤外線センサ(15)のセンサ/プリアンプ部(98)に接続されている。
上記第1,第2フレキシブルフラットケーブル(103,104)の他端は、第1旋回部(70)の第1ベース板(76)に形成された第1ケーブル開口(101)を通過した後に、固定部材(60)と第1旋回部(70)との間に形成された上述のケーブル収納部(100)に収納されている。また、このケーブル収納部(100)に収納された後の第1,第2フレキシブルフラットケーブル(103,104)の他端は、固定部材(60)の固定部材ベース板(65)に形成された第2ケーブル開口(102)を通過して、ケーブル収納部(100)の外側に配線されている。
ケーブル収納部(100)は、ケーブル収納板(84)の内周面と、第1駆動軸(75)の外周面と、固定部材(65)の下面と、第1ベース板(76)の上面とで区画形成されている。第1,第2フレキシブルフラットケーブル(103,104)は、このケーブル収納部(100)の中心に貫通された第1駆動軸(75)の外周に巻き付けられている。そして、この第1駆動軸(75)の外周には、第1,第2フレキシブルフラットケーブル(103,104)の巻き部(105)が構成されている。また、上記第2ケーブル開口(102)を通過して巻き部(105)が構成されるまでの巻き始め位置(106)には折曲部が形成されている。さらに、上記巻き部(105)が構成されて上記第1ケーブル開口(101)を通過するまでの巻き終わり位置(107)にも折曲部が形成されている。
第1ケーブル開口(101)を通過した第1,第2フレキシブルフラットケーブル(103,104)の他端は、中継コネクタ(108)に配線されている。この中継コネクタ(108)は、モータ支持台(61)の上面で、第1モータ(72)に隣接する位置に配置されている。この中継コネクタ(108)は、その上部にセンサ側コネクタ(110)と本体側コネクタ(111)とを備えている。
センサ側コネクタ(110)には、上記第1,第2フレキシブルフラットケーブル(103,104)の他端が接続されている。一方、本体側コネクタ(111)には、空気調和装置の本体に通電する一対の本体側ケーブル(109)が接続されている。この配線により、センサ側の第2モータ(92)及びセンサ/プリアンプ部(98)と空気調和装置の本体側とが通電された状態となっている。
−運転制御−
次に、本実施形態における輻射温度検知装置(51)が装着された空気調和装置における運転制御のうち、特に気流制御について詳細に説明する。
この空気調和装置では、室内パネル(2)に設けられた制御部(18)が、吸込温度と吹出温度の温度差に基づいて、冷房、暖房、冷暖サーモオフ運転(温度調整を休止し、送風のみを行う状態)などの運転モードを検知し、それぞれの運転状態に応じた気流制御を行う。また、上記制御部(18)は、空調対象空間である室内空間(W)の輻射温度を輻射温度検知装置(51)により検知し、検知した輻射温度も用いて気流制御を行う。
<空調対象空間のエリア設定>
まず、具体的な制御の前に、室内空間(W)のエリア設定について説明する。
この実施形態では、図10に示すように、室内空間(W)を、上記室内機(Z)の各吹出口(4)に対応して、仮想的に四つのエリア(A)〜(D)に分割している。そして、各エリア(A)〜(D)について輻射温度検知装置(51)で検出した測定温度に基づいて、室内空間(W)の各エリア(A)〜(D)毎の平均輻射温度や、室内空間(W)の全体の平均輻射温度などを求めるようにしている。また、図10に黒丸(●)で示すように、上記室内空間(W)の各エリア(A)〜(D)のそれぞれに存在する高温部を人体位置として検知し、これも制御に反映させるようにしている。
尚、このエリア設定については、上述のように室内空間(W)を必ず四つのエリア(A)〜(D)に区画する必要はなく、例えば図11に示すように、上記各エリア(A)〜(D)をそれぞれさらに二分して8つのエリア(A)〜(H)に基づく制御を行ってもよい。このようにエリアの数を多くすると、それだけ緻密な制御が可能となる。
<風向調整操作>
次に、室内パネル(2)における風向調整の操作について説明する。
まず、風量調整機構(10)の操作について説明する。
風量調整機構(10)は、気流制御を行うとき、最大負荷となる吹出口(4)の開度を100%、最小負荷となる吹出口(4)の開度を0%として、他の箇所は比例配分により開度を決定することができる。例えば、冷房時の例を示す図12においては、エリア(A)を100%、エリア(B)を67%、エリア(C)を33%、エリア(D)を0%とした例である。ただし、0%の設定でも風量調整機構(10)は全閉ではないため、全開のときの半分程度の風量は流れる。
次に、垂直フラップ(12)の操作について、冷房時の例を示す図13(図中の多数の数値は輻射温度(℃)を示している)を用いて説明する。
垂直フラップ(12)は、例えば、各エリア(A)〜(D)内を多数の小エリアに細分し、各小エリアの輻射温度を比較して、負荷の大きい方向(人体の位置)に気流を向けるようにセットされる。図13の例では、エリア(A)において輻射温度が30℃の方向に風向がセットされる。エリア(B)では、垂直フラップ(12)は28℃と29℃の小エリア間でスイングするようにセットされ、エリア(C)では中央で固定されている。さらに、エリア(D)では高負荷部がエリアの両端に存在するため、エリア全域にわたってスイング(全スイング)するように制御される。
<気流制御の2つのモード>
次に、気流制御の2つのモードについて説明する。一つは温度均一化モード、もう一つはスポット空調モードであり、これらの2つのモードは、空気調和装置の運転状態(冷房、暖房、冷暖サーモオフ運転など)に合わせ、制御部(18)によって自動的に切り換えられる。
温度均一化モードは、室内空間(W)の温度を全域に亙って均一化するような気流制御モードであり、各エリア(A)〜(D)のそれぞれに人が存在するか、吸込温度負荷が大きい場合に実行される。
図14は、冷房時の例であり、エリア(A)〜(D)のそれぞれに人が存在する場合を示している。この例では、エリア(A)に一人、エリア(B)に二人、エリア(C),(D)にそれぞれ一人が存在している。平均輻射温度は、エリア(A)が28℃、エリア(B)が27℃、エリア(C),(D)がそれぞれ26℃になっているが、各エリア(A)〜(D)にいずれも人が存在する場合は、熱負荷に拘わらず、室内空間(W)の温度を均一化するように気流が制御される。
このモードでは、冷房中はエリア内の平均輻射温度が高いほど、そのエリアの風量を多くするように風量調整機構(10)の開度を決定する。また、垂直フラップ(12)は、エリア(A),(B),(C)では全スイング動作を行い、エリア(D)のように高負荷部がある場合は高負荷部を中心として部分的にスイング動作を行う。水平フラップ(13)は、水平吹き出しを基本とする。以上の設定により、温度均一化モードでは、各エリア(A)〜(D)の平均輻射温度に応じた風量を広い範囲に吹き出すことで、室内空間(W)全体の温度を均一化する。
図15は、人がすべてのエリア(A)〜(D)には存在しないが室内空間(W)が高負荷である(吸込温度が高い)場合の例を示している。この場合も、風量調整機構(10)は各エリア(A)〜(D)の平均輻射温度に応じて風量設定され、垂直フラップ(12)は、エリア(A),(B),(C)において全スイングし、エリア(D)のように高負荷部がある場合は高負荷部に対してスイング動作を行う。そして、各エリア(A)〜(D)の平均輻射温度に応じた風量を広い範囲に吹き出すことで、室内空間(W)全体の温度を均一化する。
なお、冷暖サーモオフ時にも温度均一化モードでの運転を行う。このときには室内を温度調整しないため、各吹出口(4)の風量調整機構(10)はすべて100%の開度にセットし、上下風向を水平吹き出しあるいはスイングに、左右風向を全スイングにセットする。
次に、スポット空調モードは、室内空間(W)の一部分を集中的に空調する気流制御モードであり、人の存在しないエリアが有り、しかも吸込温度負荷が小さい場合に実行される。
図16に示す冷房運転のスポット空調モードでは、空気を人の方向へ向けて吹き出すように気流を制御する。具体的には、風量調整機構(10)は、エリア(B),(D)における有人吹出方向の開度が100%、エリア(A),(C)における無人吹出方向の開度が0%にセットされる。また、複数の人が存在するエリア(B)では垂直フラップ(12)が全スイングし、一人だけ存在するエリア(D)では、垂直フラップ(12)は人の居る方向を中心として部分的にスイングする。人の居ないエリア(A),(C)では、垂直フラップ(12)は中央で固定される。さらに、水平フラップ(13)は水平吹出方向にセットされる。この冷房運転のスポット空調モードでは、人の居る方向へ気流を集中させるようにして、冷風を人の周囲に直接的に供給するようにしている。
図17に示す暖房運転のスポット空調モードでは、冷房運転時とは逆に空気を人の居ない方向へ向けて吹き出すように気流を制御する。具体的に、風量調整機構(10)は、エリア(B),(D)における有人吹き出し方向の開度が0%、エリア(A),(C)における無人吹出方向の開度が100%にセットされる。また、垂直フラップ(12)は、人が存在するエリア(B),(D)では人を避けた方向にセットされ、人が存在しないエリア(A),(C)では中央で固定される。水平フラップ(13)は、4つが連動の場合は下吹き出しを基本とする。ただし、4つの水平フラップ(13)が独立して可動である場合は、有人方向は水平吹き出しとする。
この暖房運転のスポット空調モードでは、人の居ない方向に気流を集中させることにより室内空気を撹拌し、温風を人の周囲に間接的に供給できる。これは、暖房運転時にはドラフトによる不快感を在室者に与えないようにするためである。
なお、スポット空調モード時は、冷房運転では設定温度を自動的に2℃高くし、暖房運転では設定温度を自動的に2℃低くして、いずれもその温度を推奨設定温度とする省エネ運転を行う。これは、室内空間(W)の一部分に気流を集中させると、温度を省エネ側に2℃程度変更しても快適性がさほど低下しないと考えられるため、このような操作を採用したものである。
<制御内容>
次に、本実施形態の輻射温度検知装置(51)が装着された空気調和装置の具体的な制御の内容について、図18〜図20に示すフローチャートに沿って説明する。
図18のステップST1では、この空気調和装置の運転開始に伴って自動運転が実行される。自動運転は、装置の電源をオンにしただけのときは前回運転時の設定温度に基づいて行われ、電源オンと同時に新たな温度設定をしたときにはその設定温度に基づいて行われる。
運転中は、空気調和装置の運転状態に応じた気流制御を行うために、ステップST2において、吸込温度センサ(16)により検出した吸込温度と、吹出温度センサ(17)により検出した吹出温度との温度差を判別する。そして、吸込温度と吹出温度の温度差が5℃よりも高いときはステップST3〜ステップST5(冷房気流制御)を実行し、吸込温度と吹出温度の温度差が−5℃よりも低いときはステップST6〜ステップST8(暖房気流制御)を実行する。また、上記温度差がその間(−5℃以上で5℃以下)のときは、ステップST9(サーモオフ気流制御)を実行する。
吸込温度が吹出温度に比べて5℃より高い温度になっているときは、ステップST3で輻射温度検知装置(51)により室内空間(W)の各エリア(A)〜(D)を走査して輻射温度を検知した後、ステップST4で冷房気流制御のサブルーチンを実行する。ステップST5では吸込温度と吹出温度の温度差が3℃以下になったかどうかを判別し、温度差が3℃よりも大きければステップST3〜ステップST5を繰り返す一方、温度差が3℃以下になっているとサーモオフと判断し、ステップST9へ進んでサーモオフ時の気流制御を実行する。
また、ステップST2の判別の結果、吸込温度が吹出温度に比べて−5℃より低い温度になっているときは、ステップST6で輻射温度検知装置(51)により室内空間(W)の各エリア(A)〜(D)を走査して輻射温度を検知した後、ステップST7で暖房気流制御のサブルーチンを実行する。ステップST8では吸込温度と吹出温度の温度差が−3℃以上になったかどうかを判別し、温度差が−3℃よりも小さければステップST6からステップST8を繰り返す一方、温度差が−3℃以上になっているとサーモオフと判断し、ステップST9へ進んでサーモオフ時の気流制御を実行する。
ステップST9で行うサーモオフ時の気流制御は、温度均一化モードの気流制御である。具体的には、全ての吹出口(4)について風量比率(開度)を「大(100%)」に設定し、上下風向を「水平」または「スイング」に設定し、左右風向を「全スイング」に設定する。こうすることにより、室内空間(W)を全域にわたって均一な温度にすることが可能となる。
その後、ステップST10において輻射温度検知装置(51)による輻射温度の検知を停止し、ステップST2へ戻る。サーモオフ時は温度調整をせずに送風のみを行う状態であり、輻射温度を検知する必要がないため、輻射温度検知装置(51)の走査をしないことにしている。その後、ステップST2へ戻って吸込温度と吹出温度の温度差を再度検出し、その温度差に応じた気流制御を繰り返す。
(冷房気流制御)
次に、図18のステップST4に示した冷房気流制御のサブルーチンについて、図19に従って説明する。
このフローでは、まずステップST11において、吸込温度負荷判定として、吸込温度が26℃よりも高いか、26℃以下であるかを判別する。26℃以下である場合は、ステップST12で各エリア(A)〜(D)に人が存在するかどうかの判定を行う。そして、人が偏在しているとき(室内空間(W)に人の存在するエリアと存在しないエリアがあるとき)は、ステップST13〜ステップST20でスポット空調モードの気流制御を行う。また、ステップST11で吸込温度が26℃よりも高いと判別されたときと、ステップST12で人が室内空間(W)に散在している(各エリア(A)〜(D)に人が存在している)と判別されたときは、ステップST21〜ステップST28で温度均一化モードの気流制御を行う。
つまり、制御部(18)は、吹出方向の吸い込み温度負荷が所定レベル(26℃)以下で、しかも人体が存在する割合が所定以下である場合は、気流制御モードをスポット空調モードに切り換える一方、吹き出し方向の吸い込み温度負荷が所定レベル(26℃)より高いか、または人体の存在する割合が所定以上である(各エリア(A)〜(D)に人が存在している)ことを検知すると、気流制御モードを温度均一モードに切り換える制御を行う。このように、制御部(18)は、室内空間(W)の各エリア(A)〜(D)における人体の存在の割合や吸込温度負荷の大きさに応じて温度均一化モードとスポット空調モードを切り換える制御を行う。
スポット空調モードでは、まずステップST13で吹出口(4)の番号を「1」にセットし、第1の吹出口(4)について制御を行う。具体的には、ステップST14で、その吹出口(4)に対応するエリア内の人の有無を判定し、人が存在しない場合はステップST15へ、人が存在する場合はステップST16へ進む。ステップST15では、人が存在しないエリアについて風量比率を「小(0%)」にセットし、上下風向を「水平」に、左右風向を「中央」にセットする。一方、ステップST16では、人が存在するエリアについて、風量比率を「大(100%)」にセットし、上下風向を「水平」にする。左右風向については、エリア内に存在する人が一人の場合は「人の方向」にセットし、エリア内に複数の人が存在する場合は「全スイング」にセットする。
その後、ステップST17では吹出口(4)の番号に「1」を加算し、ステップST18では吹出口(4)の番号が「4」になるまでステップST14〜ステップST17の動作を繰り返す。以上により、気流制御は例えば図16の状態となる。
4つの吹出口(4)のすべてについて制御が終了すると、ステップST19へ進んで推奨設定温度による能力自動制御を行う。この制御は、上述したように、設定温度を自動的に2℃高くして行う省エネ運転制御である。冷房運転のスポット空調モードでは人の存在する方向へ気流を集中させるため、吹出温度を若干高めに設定しても快適性がさほど低下しないと考えられることから、このような操作を採用して省エネ運転を可能にしている。
その後、ステップST20において輻射温度検知装置(51)による輻射温度の検知を連続して行うようにセットし、図18のフローへ戻る。スポット空調モード時は各エリア(A)〜(D)の温度分布や人位置情報の重要度が大きいため、赤外線センサ(15)の走査を連続的に行うようにしている。
一方、温度均一化モードでは、まず、ステップST21で吹出口(4)の番号を「1」にセットし、第1の吹出口(4)について制御を行う。具体的には、ステップST22で風量比率をエリア(A)〜(D)毎の輻射温度に比例してセットし、上下風向を水平にセットする。ステップST23では吹出方向内の輻射温度の差が大きいか小さいかを判別し、小さい場合はステップST24で左右風向を全スイングにセットする。また、吹出方向内の輻射温度の差が大きい(高負荷部が存在する)場合はステップST25へ進み、左右風向を高負荷部を中心として所定範囲でスイングにセットする。
その後、ステップST26では吹出口(4)の番号に「1」を加算し、ステップST27では吹出口(4)の番号が「4」になるまでステップST22〜ステップST26の動作を繰り返す。以上により、気流制御は例えば図14,図15の状態となる。
4つの吹出口(4)のすべてについて気流制御が終了すると、ステップST28へ進んで輻射温度検知装置(51)の走査を間欠的に行うようにセットした後、図18のフローチャートへ戻る。この温度均一化モードで走査を間欠的に行うようにしているのは、このモードでは垂直フラップ(12)をスイングに設定して空気を撹拌することにしており、温度分布や人位置情報の重要度が小さいからである。
(暖房気流制御)
次に、図18のステップST7に示した暖房気流制御のサブルーチンについて、図20に従って説明する。
このフローでは、まずステップST31において、各エリア(A)〜(D)に人が存在するかどうかの判定を行う。そして、人が偏在しているとき(室内空間(W)に人の存在するエリアと存在しないエリアがあるとき)は、ステップST32〜ステップST41でスポット空調モードの気流制御を行う。また、ステップST31で室内空間(W)に人が散在している(各エリア(A)〜(D)に人が存在している)と判別されたときは、ステップST42〜ステップST49で温度均一化モードの気流制御を行う。
スポット空調モードでは、まずステップST32で吹出口(4)の番号を「1」にセットし、第1の吹出口(4)について制御を行う。具体的には、ステップST33で各吹出口(4)に対応するエリア内の人の有無を判定し、人が存在しない場合はステップST34へ、人が存在する場合はステップST35へ進む。ステップST34では、人が存在しないエリアについて、風量比率を「大(100%)」にセットし、上下風向を「下」に、左右風向を「中央」にセットする。一方、ステップST35では、人が存在するエリアについて、風量比率を「小(0%)」にセットし、上下風向を「水平」または「下」にセットする。左右風向については、「人を避けた方向」にセットする。
その後、ステップST36では吹出口(4)の番号に「1」を加算し、ステップST37では吹出口(4)の番号が「4」になるまでステップST33〜ステップST36の動作を繰り返す。以上により、気流制御は例えば図17の状態となる。
4つの吹出口(4)のすべてについて制御が終了すると、ステップST38へ進む。ステップST38では、人が存在する吹出方向の輻射温度が全平均輻射温度よりも低いかどうかを判別する。判別結果が「NO」のときは、人の周囲が相対的に高温になっている。そして、このときはステップST39で吸込温度の負荷判定を行い、負荷が小さいとき(吸込温度が23℃より高いとき)はステップST40へ進んで推奨設定温度による能力自動制御を行い、ステップST41へ進む。なお、ステップST40の能力自動制御は、上述したように、設定温度を自動的に2℃低くして行う省エネ運転制御である。
一方、ステップST38の判別結果が「YES」のとき(人の周囲に窓があるような場合)は、人の周囲が冷えているので、ステップST40をスキップすることで能力を低下させずにステップST41に進む。また、ステップST39で吸込温度負荷が大きい(吸込温度が23℃以下である)と判断したときも、ステップST40をスキップすることで能力を低下させずにステップST41に進む。
そして、ステップST41では、輻射温度検知装置(51)の走査を連続して行うようにセットして、輻射温度分布を認識しながら制御を行えるようにし、図18のフローチャートに戻る。
以上のスポット空調モードでは、人の居ない方向へ気流を集中させ、空気を撹拌して室内空間(W)を全体的に暖めることで、ドラフトによる不快感を人に与えないようにしている。
一方、温度均一化モードでは、まず、ステップST42で吹出口(4)の番号を「1」にセットし、第1の吹出口(4)について制御を行う。具体的には、ステップST43で風量比率を吹出口(4)毎の輻射温度に比例してセットし、上下風向を水平にセットする。ステップST44では、吹出方向内の輻射温度の差が大きいか小さいかを判別し、小さい場合はステップST45で左右風向を全スイングにセットする。また、吹出方向内の輻射温度の差が大きい場合はステップST46へ進み、左右風向を、低温部を中心とするスイング動作にセットする。
その後、ステップST47では吹出口(4)の番号に「1」を加算し、ステップST48では吹出口(4)の番号が「4」になるまでステップST43〜ステップST47の動作を繰り返す。以上により、気流制御は例えば図14,図15の状態となる。
4つの吹出口(4)のすべてについて制御が終了すると、ステップST49へ進む。そして、輻射温度検知装置(51)の走査を間欠的に行うようにセットして、図18のフローチャートへ戻る。
−実施形態の効果−
本実施形態では、以下のような効果が発揮される。
本実施形態において、輻射温度検知装置(51)には、第1モータ(72)によって第1軸(71)の軸周り方向に旋回する第1旋回部(70)と、第2モータ(92)によって第2軸(91)の軸周り方向に旋回する第2旋回部(90)とを設けている。これら第1,第2旋回部(70,90)の旋回動作の組み合わせにより、第2旋回部(90)に支持された赤外線センサ(15)は、上下左右に自由に角度を変えることができる。このため、赤外線センサ(15)は、室内空間のほとんど全てを走査し、この際の人位置情報や輻射温度分布を各エリアに分割して検知することができる。したがって、この赤外線センサ(15)で得られた検知情報に基づいて、例えば上述した温度均一化モードやスポット空調モードのように、室内環境に応じた空気調和を行うことができる。
また、本実施形態においては、固定部材突出部(69)と第1突出部(82)とからなる第1位置決め機構(73)を構成している。そして、この第1位置決め機構(73)によって、第1旋回部(70)の旋回角度が目標角度範囲内となるようにしている。この構成において、例えば第1モータ(72)に印加されるパルス電圧などの影響で、第1旋回部(70)の旋回角度に誤差が生じた場合、第1位置決め機構(73)がストッパーとして機能し、この誤差を解消することができる。
また、上述したように原点位置を基準とした第1旋回部(70)の駆動制御によって、第1旋回部(70)の角度調整を行う際にも、第1位置決め機構(73)により第1旋回部(70)は目標角度範囲外にずれることがないから、より信頼性の高い第1旋回部(70)の角度調整を行うことができる。
また、本実施形態においては、第2突出部(99)と第2突出受け溝(83)とからなる第2位置決め機構(93)を構成している。そして、この第2位置決め機構(93)によって、第2旋回部(90)の旋回角度が目標角度範囲内となるようにしている。この構成においても、第2旋回部(70)の旋回角度に誤差が生じた場合、第2位置決め機構(93)がストッパーとして機能し、この誤差を解消することができる。
また、原点位置を基準とした第2旋回部(90)の駆動制御によって、第2旋回部(90)の角度調整を行う際にも、第2位置決め機構(93)により第2旋回部(90)は目標角度範囲外にずれることがないから、より信頼性の高い第2旋回部(90)の角度調整を行うことができる。
また、本実施形態では、第1モータ(72)を固定部材(60)の上面側に配置し、第1旋回部(70)を固定部材(60)の下面側に配置している。さらに、第2モータ(92)は、第1旋回部(70)の中央部に配置している。この配置により、第1,第2モータ(72,92)の配置スペースを有効に活用することができ、輻射温度検知装置(51)をコンパクトにすることができる。
さらに、固定部材(60)には、円環状のケーブル収納部(100)を形成している。そして、第1,第2フレキシブルフラットケーブル(103,104)を、上記ケーブル収納部(100)内の第1駆動軸(75)に巻き付けて収納している。この構成により、第1,第2フレキシブルフラットケーブル(103,104)を輻射温度検知装置(51)内にコンパクトに収納できる。さらに、旋回軸(75)の外周には、第1,第2フレキシブルフラットケーブル(103,104)の巻き部(105)を構成している。この巻き部(105)は、第1駆動軸(75)を中心として拡縮自在であるため、例えば第1旋回部(70)の旋回運動により、第1,第2フレキシブルフラットケーブル(103,104)に引張力が作用する場合などにおいても、この巻き部(105)による緩衝作用が働く。このため、第1,第2フレキシブルフラットケーブル(103,104)の断線や絡まりを防ぐことができる。
また、上記巻き部(105)の巻き始め位置(106)と巻き終わり位置(107)とには、それぞれ折曲部を構成している。さらに、第1,第2フレキシブルフラットケーブル(103,104)は、第1,第2ケーブル開口(101,102)を通過するように配線されている。この構成により、フレキシブルフラットケーブル(103,104)がケーブル収納部(100)に、より確実に収納されるとともに、上記巻き部(105)が崩れたり、絡まったりすることを防ぐことができる。
さらに、本実施形態では、固定部材(60)のモータ支持台(61)の上面に中継コネクタ(108)を設置している。そして、上記ケーブル収納部(100)より配線されたフレキシブルフラットケーブル(103,104)と、空気調和装置本体側より導線された本体側ケーブル(109)とを中継コネクタ(108)に接続可能に構成している。この構成により、センサ側ケーブル(103,104)と本体側ケーブル(109)とを容易に接続/取り外しができるため、より簡便に輻射温度検知装置(51)を室内パネル(2)の取付部(19)に装脱着することができる。
また、本実施形態では、赤外線センサ(15)を保護するセンサカバー(57)を非可視光透過性としている。このため、輻射温度検知装置(51)を室内パネル(2)に装着した際にも、在室者から赤外線センサ(15)は目に見えない状態となっている。したがって、例えば店舗などの室内空間に存在する人が、上記赤外線センサ(15)のレンズなどを気にすることを抑制できる。
《その他の実施形態》
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
本実施形態において、赤外線センサ(15)の下部に配置されているセンサカバー(57)は、非可視光透過性の材料を用いて構成されている。しかしながら、上記センサカバー(57)は、可視光透過性の材料を用いて構成することもできる。このようにすると、輻射温度検知装置(51)を室内パネル(2)に装着した際にも、赤外線センサ(15)は在室者から目に見える状態となる。この場合、例えば店舗や銀行の室内空間において、在室者が赤外線センサ(15)を防犯カメラと錯覚することが考えられるので、この輻射温度検知装置(51)が装着された室内空間における防犯効果を高めることが期待できる。