JP4351469B2 - 誘導電動機の制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、速度センサを用いることなく誘導電動機を制御する制御装置に関し、特にフリーラン状態の誘導電動機の周波数検出に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
瞬時停電の発生などによりインバータ装置が停止した後、復電により再起動する場合、またはインバータ装置が停止時に誘導電動機が外力によりフリーに回転している状態から始動する場合、フリーラン状態にある誘導電動機の回転周波数(フリーラン周波数)とインバータ装置の出力周波数とをほぼ一致させて再加速させる必要がある。
従来の誘導電動機のフリーラン状態検出方法は、インバータ外部の3相出力電流を検出して直交する2相座標軸系の電流に変換し、2相電流指令に一致するようにインバータ部の出力電流を制御する制御信号系を備えて、誘導電動機がフリーラン状態にある場合に、電流指令部から一定の指令信号を出力し、上記制御信号系に発生するリップル成分を抽出する。誘導電動機のフリーラン周波数は、上記リップル成分のリップル周波数と比例関係にあり、このリップル周波数を求めることによりフリーラン周波数を求める。また、2相のリップル成分の位相差を検出することで誘導電動機の回転方向を判別する(例えば、特許文献1参照)。
また、従来の別例による誘導電動機の制御装置では、自励発振用の電圧発生手段を設けて、誘導電動機の一次電流を自励発振させ、この自励発振した一次電流の周波数を検出することにより、誘導電動機の回転速度情報を演算する(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平3−3694号公報(第1−8頁)
【特許文献2】
特開平11−346500号公報(第2,6−9頁、第1図)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来の誘導電動機の制御装置によるフリーラン状態検出では、電圧指令値や電流値の脈動信号を抽出後、その脈動信号の周波数を検出してフリーラン周波数を算出している。この脈動信号の周波数の検出は、その符号が反転するタイミングをカウントしすることにより行うが、脈動信号の周波数が小さい場合、所定カウント数に達する時間は長くなるという問題点があった。
例えば、周波数が5[Hz]の場合、7点の符号反転(3周期分)の検知にかかる時間は0.6[sec]である。電流指令値を印加した直後には、過渡振動による誤カウントを避ける目的でカウント待機時間を設けるため、この所要時間はさらに長くなる。また、所定カウント数を減らせば、この時間を短くすることは可能であるが、周波数の検出精度が低下すると共に、回転方向判別のために2相の脈動成分の位相差を検知する回数も減り、回転方向の判別精度も低下する。
【0005】
この発明は、上記のような問題点を解消するために成されたものであって、フリーラン状態にある誘導電動機の回転周波数および回転方向を、検出所要時間を短縮して高精度で速やかに検出することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る誘導電動機の制御装置は、誘導電動機に交流電力を供給する電力変換器と、該電力変換器の出力電流を検出する検出器と、該検出器にて検出された3相の電流を固定子座標上の直交した2軸上に座標変換した電流帰還値が該2軸上で与えられた電流指令値に一致するように電圧指令値を生成して上記電力変換器を制御する電力状態量制御手段とを備えて、上記誘導電動機を電流制御する。そして、上記電流指令値として上記誘導電動機の周波数を検出するための所定の指令値を与えたときに、上記電力状態量制御手段の上記2軸上の制御信号に発生する脈動成分を抽出し第1の電力状態量脈動信号を生成する電力状態量脈動信号検出手段と、上記第1の電力状態量脈動信号を所定の回転周波数を有する回転座標上の第2の電力状態量脈動信号に変換する回転座標変換手段と、上記第2の電力状態量脈動信号の周波数を検出する周波数検出手段とを備え、上記検出周波数と上記回転周波数とに基づいて、フリーラン状態にある上記誘導電動機の周波数及び回転方向を求めるものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1を図について説明する。
図1は、この発明の実施の形態1による誘導電動機の制御装置の構成を示すブロック図である。図に示すように、誘導電動機1の制御装置は、電力変換手段2aおよびフリーラン回転周波数検出手段3aで構成される。
電力変換手段2aは、主回路である電力変換器10、電流検出手段11および電力状態量制御手段12aから構成される。さらに、電力状態量制御手段12aは、電流指令値生成手段31aおよび電流制御手段32aから構成される。また、フリーラン回転周波数検出手段3aは、脈動周波数検出手段21、加減算手段22、および回転座標変換手段としての座標変換手段23から構成される。
【0008】
次に、動作について説明する。
まず、電力変換手段2aの動作、特に電流制御ループによる制御動作について説明する。電力変換手段2aは、電流制御手段32a、電力変換器10、電流検出手段11および誘導電動機1で電流制御ループを構成しており、電流帰還値である誘導電動機1の一次電流値が、電流指令値生成手段31aから出力される電流指令値と一致するように、電流制御手段32aは電圧指令値を出力して電力変換器10を制御する。
ここでは、電流指令値、電圧指令値、電流帰還値を固定子座標上の直交した2軸(αβ軸)で与える。
電流検出手段11では、実際の電流を電流センサなどの電流検出器で検出した3相の電流値iu、iv、iwに対し、次の式(1)(2)によりαβ軸での電流帰還値iα、iβに座標変換して電力状態量制御手段12aに出力する。
iα=(2/3)−1・(iu−(1/2)・iv−(1/2)・iw) …(1)
iβ=(1/2)−(1/2)・iw−(1/2)−(1/2)・iv …(2)
【0009】
電力状態量制御手段12aでは、電流制御手段32aが、電流指令値生成手段31aが出力するαβ軸上の電流指令値iα_ref、iβ_ref、および電流帰還値iα、iβを入力とし、次の式(3)(4)によってαβ軸上の電圧指令値vα_ref、vβ_refを算出する。ただし、Kp、Kiは、電流制御の応答を決定する比例ゲイン定数、積分ゲイン定数であり、sはラプラス演算子である。
vα_ref=(Kp+(Ki/s))・(iα_ref−iα) …(3)
vβ_ref=(Kp+(Ki/s))・(iβ_ref−iβ) …(4)
このαβ軸上の電圧指令値vα_ref、vβ_refは、電力変換器10に出力される。電力変換器10では、入力されたαβ軸上の電圧指令値vα_ref、vβ_refに基づく実際の電圧ベクトルを誘導電動機1へ出力する。例えば電力変換器10に電圧型インバータを用いる場合には、αβ軸上の電圧指令値vα_ref、vβ_refを3相での波形に変換した後、3相のインバータのスイッチングパターンを生成する演算処理を経て、インバータの制御入力にスイッチングパターンを入力することで、誘導電動機1にパルス幅変調された3相電圧が供給される。
このようにして、電流制御ループにより、αβ軸上の電流帰還値iα、iβは、電流指令値生成手段31aが出力するαβ軸電流指令値iα_ref、iβ_refに追従するように制御される。
【0010】
次に、瞬時停電の発生などにより電力変換手段2aから誘導電動機1へ電力を供給していない状態、即ち誘導電動機1がフリーラン状態の場合に誘導電動機1の回転周波数を検出する際の電流制御ループの動作について説明する。
図2、図3は、それぞれ正転、逆転にてフリーラン状態の誘導電動機1の回転周波数を検出する際の、αβ軸上および回転座標(γδ軸)上の信号波形を示すものである。ここでは、誘導電動機1のフリーラン周波数が5[Hz]で正転、あるいは逆転している状況で、電流指令値生成手段31aからフリーラン周波数検出用に、直流の電流指令値をステップ状に出力したときの信号波形を示し、α軸電流指令値iα_ref=I0(直流値)として与え、β軸電流指令値iβ_ref=0として与えている。
図2、図3が示すように、上記の電流制御ループの機能が働くことによって、αβ軸上の電流帰還値iα、iβの平均値は、電流指令値生成手段32aが出力するαβ軸上の電流指令値iα_ref=I0、iβ_ref=0に追従するように制御されるが、電流帰還値iα、iβの信号波形にはフリーラン周波数と一定の比例関係にある周波数の脈動信号が現れる。これは、誘導電動機1が、回転周波数にピークをもつインピーダンス特性を有しているためであり、電流指令値をステップ状に与えるショックが電流制御ループに印加されることによって電流および電圧指令値に振動が誘起される。振動の持続性は、誘導電動機の回路定数が関係しているが、電流制御手段32aのゲインの値によって操作が可能である。なお、便宜上、図2、図3では電流帰還値iα、iβに重畳するαβ軸上の脈動信号の周波数はフリーラン周波数と同じ5[Hz]とする。
【0011】
このように電力状態量制御手段12aのαβ軸上の制御信号である電流帰還値iα、iβに重畳するαβ軸上の脈動信号を、第1の電力状態量脈動信号Xα、Xβとし、以下、この脈動信号Xα、Xβの基づいて誘導電動機1のフリーラン周波数を検出する動作について説明する。
図1に示すように、電力状態量制御手段12aでの電流制御誤差を脈動信号Xα、Xβとして抽出し、フリーラン回転周波数検出手段3aに出力する。この脈動信号Xα、Xβは、次の式(5)(6)により生成される。
Xα=iα_ref−iα …(5)
Xβ=iβ_ref−iβ …(6)
【0012】
フリーラン回転周波数検出手段3aは、電力変換手段2aより入力された固定子αβ軸上の脈動信号Xα、Xβを、座標変換手段23にて所定の座標回転周波数w_ax[rad/sec]で回転する回転座標である直交二軸γδ軸座標上へ座標変換し、第2の電力状態量脈動信号として脈動信号Xγ、Xδを生成する。そして、この脈動信号Xγ、Xδの周波数を脈動周波数検出手段21にて計測する。なお、脈動信号の周波数計測の方法そのものは、従来のものと同様であり、一定期間内の脈動波形の0クロス回数をカウントすることで周波数を算出する。
こうして得られる回転座標上における電力状態量の脈動信号Xγ、Xδの周波数に対し、加減算手段22にて、回転座標系の座標回転周波数w_axを加算することで、固定子座標上の2軸であるαβ軸上の脈動信号Xα、Xβの周波数を算出する。
上述したように、脈動信号Xα、Xβの周波数と誘導電動機1のフリーラン周波数とは一定の比例関係にあるため、検出された脈動信号Xα、Xβの周波数から誘導電動機1のフリーラン周波数が得られる。
【0013】
フリーラン回転周波数検出手段3aの動作の詳細について説明する。
座標変換手段23では、電流制御手段32aから出力された、固定子αβ軸上の脈動信号Xα、Xβの他、座標回転周波数w_axが指令値として入力される。そして、w_ax[rad/sec]で回転する回転座標である直交二軸γδ軸上でとらえた電力状態量の脈動信号Xγ、Xδを以下のように算出する。
θγδ=(1/s)・w_ax …(7)
Xγ=cosθγδ・Xα+sinθγδ・Xβ …(8)
Xδ=−sinθγδ・Xα+cosθγδ・Xβ …(9)
フリーラン状態の誘導電動機1が5[Hz]で正転、あるいは−5[Hz]で逆転している状況で、電流指令値生成手段31aからフリーラン周波数検出用に、α軸電流指令値iα_ref=I0(直流値)、β軸電流指令値iβ_ref=0として与え、座標回転周波数w_axを−30[Hz](−188[rad/sec])で与えたとき、この回転座標上の電力状態量の脈動信号Xγ、Xδは図2、図3に示すような信号波形となる。
【0014】
即ち、図2、図3に示すように、固定子座標上の2軸であるαβ軸上の電流帰還値iα、iβには、フリーラン周波数に比例する周波数w_mの脈動が現れる。この場合、脈動の周波数w_mは5[Hz]である。これに対し、w_ax[Hz]で回転する回転座標である直交二軸γδ軸上でとらえた脈動信号Xγ、Xδの周波数w_γδは、ほぼ(w_m-w_ax)[Hz]として観測される。誘導電動機1が正転している図2の場合は、5−(−30)=35[Hz]となり、誘導電動機1が逆転している図3の場合は、−5−(−30)=25[Hz]となる。
このような回転座標上の脈動信号Xγ、Xδのいずれか一方あるいは双方を脈動周波数検出手段21に入力し、符号が反転する回数をカウントすることで、脈動信号Xγ、Xδの周波数w_γδを算出する。具体的には、脈動計測期間をT[sec]、この期間中の符号反転の回数Nを脈動周波数検出手段21にて計測し、以下の式により算出する。
w_γδ=(N-1)/(2・T)[Hz] …(10)
この後、脈動信号Xγ、Xδの周波数w_γδに対し、加減算手段22にて、以下の式により、固定子座標上の2軸であるαβ軸上の脈動信号Xα、Xβの周波数w_mを算出する。
w_m=w_γδ+w_ax[Hz] …(11)
【0015】
誘導電動機1が正転時で、αβ軸上の脈動信号Xα、Xβの周波数w_mが+5[Hz]である図2の場合、これを座標回転周波数w_axが−30[Hz]である回転座標で計測すると35[Hz]の脈動が計測される。この計測周波数と既知の座標回転周波数w_axとにより、式(11)によって、脈動信号Xα、Xβの周波数w_mである5[Hz]が算出される。
また、誘導電動機が逆転時で、αβ軸上の脈動信号Xα、Xβの周波数w_mが−5[Hz]である図3の場合、これを座標回転周波数w_axが−30[Hz]である回転座標で計測すると25[Hz]の脈動が計測される。この計測周波数と既知の座標回転周波数w_axとにより、式(11)によって、脈動信号Xα、Xβの周波数w_mである−5[Hz]が算出される。この場合、固定子座標上では、図2の場合に対してαβ軸の相順が逆となった脈動波形が現われるものであるが、回転座標上の脈動信号Xγ、Xδの周波数w_γδを計測して該周波数と座標回転周波数w_axとにより脈動信号Xα、Xβの周波数w_mを演算すると、演算された周波数w_mは回転方向情報を含んだ数値(この場合−5)となる。このため、脈動信号の位相差を検出する必要がなく、加減算手段22にて上記の式(11)の演算処理のみによって回転方向判別が可能となるため、容易にフリーラン状態の誘導電動機の回転方向の判別が行える。また、低速域においても、計測時間を短縮しつつ信頼性良く回転方向判別を行える。
【0016】
このように、実際に周波数計測を行う脈動信号Xγ、Xδの周波数w_γδは、αβ軸上の脈動信号Xα、Xβの周波数w_mに(−w_ax)が加算された周波数となるため、座標回転周波数w_axの設定によっては高い周波数領域で計測でき、検出精度を低下することなく周波数検出が大幅に高速化できる。
この場合、αβ軸上の脈動信号Xα、Xβの周波数w_mを5[Hz]とすると、3周期分の検知にかかる時間は0.6[sec]であったが、座標回転周波数w_axを−30[Hz](−188[rad/sec])とした回転座標上の脈動信号Xγ、Xδの周波数は35[Hz]となり、3周期分の計測にかかる時間は、
1/{5-(-30)}×3=85.7[msec] となる。
【0017】
なお、誘導電動機1の回転速度0[Hz]近傍では脈動そのものが発生しないため、式(11)の演算結果はw_m=w_axとなり、不適である。このため、演算結果がw_m<w_ax+α(α:小さな正の数)の場合には例外処理としてw_m=0[Hz]と再設定する。
【0018】
また、この実施の形態によるフリーラン周波数検出は、回転座標系における脈動周波数w_m−w_axの符号が正である領域で利用することが前提である。すなわち方向を判別できる周波数領域は以下の式(12)により制約されるが、誘導電動機1の使用条件に応じてw_axを設定すれば問題は生じない。
w_ax<(方向判別可能な周波数領域) …(12)
例えば、フリーラン周波数検出が必要な周波数領域を、
−|w_MIN|<w_m<+|w_MAX|と表現した場合、
w_ax<−|w_MIN|と設定すれば、回転方向の判別は可能である。
【0019】
さらにまた、正転時、逆転時の双方において周波数検出の高速化効果を得るためには、脈動信号Xγ、Xδの周波数w_γδを、正転、逆転双方のαβ軸上の脈動信号Xα、Xβの周波数w_mの絶対値に対して高くしなければならない。このためには、座標回転周波数w_axの絶対値を、上記w_MINの絶対値に対して2倍以上すなわち、w_ax<−2・|w_MIN|と設定する。
ここで、上記w_MINの絶対値は、必ずしも誘導電動機1の最高運転周波数としなくても良い。例えば、鉄道用途や、大容量送風機用途など、大慣性の負荷を一定の回転方向指令に基づいて駆動する場合においては、フリーラン中における回転方向の反転は、低い周波数域で運転している場合に限られる。すなわち、|w_MIN|を想定される逆転周波数の絶対値上限として、最高運転周波数より極端に低い値に限定してw_ax<−2・|w_MIN|となるようw_axを設定しても、実用上想定される運転領域全体を考慮しつつ、高速なフリーラン周波数検出、および回転方向判別が可能である。
【0020】
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2による誘導電動機の制御装置について説明する。図4は、この発明の実施の形態2による誘導電動機の制御装置の構成を示すブロック図である。
この実施の形態2では、上記図1で示した実施の形態1の構成に対し、電力変換手段2b内の電力状態量制御手段12bの内部に、脈動抽出手段33を設ける。
上記実施の形態1では、第1の電力状態量脈動信号Xα、Xβとして、式(5)(6)で表される電流制御誤差を用いたが、この実施の形態2では、αβ軸上の電圧指令値から抵抗による電圧降下を差し引いた値を、脈動抽出手段33により式(13)(14)のように算出し、これをXα、Xβとしてフリーラン周波数検出手段3aに出力する。
Xα=vα_ref−Rs_n・I0 …(13)
Xβ=vβ_ref …(14)
ここで、I0はα軸電流指令値に印加したステップ指令値のステップ幅であり、Rs_nは一次抵抗値の設定値である。
【0021】
この実施の形態においても、上記実施の形態1と同様に、固定子αβ軸上で得た脈動信号Xα、Xβに対して、所定の座標回転周波数を有する回転座標上への座標変換を施す構成により、回転座標上の脈動信号Xγ、Xδの周波数を計測するため、誘導電動機が低速域においても、高い周波数領域での脈動周波数計測が可能となり、検出精度を低下することなく周波数検出が大幅に高速化できる。また、脈動信号の位相差を検出する必要がなく、加減算手段22にて上記の式(11)の演算処理のみによって回転方向判別が可能となるため、容易にフリーラン状態の誘導電動機の回転方向の判別が行える。また、低速域においても、計測時間を短縮しつつ信頼性良く回転方向判別が行える。
【0022】
実施の形態3.
次に、この発明の実施の形態3による誘導電動機の制御装置について説明する。図5は、この発明の実施の形態3による誘導電動機の制御装置の構成を示すブロック図である。
この実施の形態3では、上記図1で示した実施の形態1の構成に対し、電力変換手段2c内の電力状態量制御手段12cの内部に、固定子αβ軸上での脈動信号Xα、Xβを生成するためのフィルタ手段34を設ける。
上記実施の形態1、2では、電流帰還値iα、iβまたは電圧指令値vα_ref、v_β_refから脈動信号Xα、Xβを抽出したが、この実施の形態3では、電圧指令値と電流帰還値の少なくともどちらか一方の情報に基づいてフィルタ手段34によりフィルタ処理を行う。これによりフリーラン回転周波数検出手段3aの処理に対して外乱となる情報を除去した脈動信号Xα、Xβを生成することができる。
【0023】
フィルタ手段34の一例として、固定子αβ軸上の一次磁束推定値Φα、Φβを算出した上で、推定磁束の脈動信号を第1の電力状態量脈動信号Xα、Xβとして抽出するものについて説明する。
フィルタ手段34では、以下の式(15)〜(18)の演算を行い、磁束推定値Φα、Φβを算出し、続いて脈動信号Xα、Xβを算出する。Rs_nは一次抵抗設定値である。
Φα=(1/s)・(vα_ref−Rs_n・iα) …(15)
Φβ=(1/s)・(vβ_ref−Rs_n・iβ) …(16)
Xα=(s/(s+w_a))・Φα …(17)
Xβ=(s/(s+w_a))・Φβ …(18)
【0024】
電流指令値生成手段31aにおいて、α軸上の電流指令値iα_ref=I0(直流値)、β軸上の電流指令値iβ_ref=0としてステップ電流指令値を与えた場合、上述したように、αβ軸上の電流指令値、電流帰還値には、フリーラン周波数と一定の比例関係にある周波数w_mの脈動信号が重畳される。さらに、式(15)(16)から分かるとおり、磁束推定値Φα、Φβにも同様に、同じ周波数w_mの脈動信号が重畳することになる。この磁束推定値Φα、Φβに重畳する脈動信号を、遮断周波数w_a[rad/sec]のハイパスフィルタ演算式である式(17)(18)に従って抽出し、これを第1の電力状態量脈動信号Xα、Xβとしてフリーラン回転周波数検出手段3aへ出力する。
【0025】
この実施の形態においても、上記実施の形態1と同様に、固定子αβ軸上で得た脈動信号Xα、Xβに対して、所定の座標回転周波数を有する回転座標上への座標変換を施す構成により、回転座標上の脈動信号Xγ、Xδの周波数を計測するため、誘導電動機が低速域においても、高い周波数領域での脈動周波数計測が可能となり、検出精度を低下することなく周波数検出が大幅に高速化できる。また、脈動信号の位相差を検出する必要がなく、加減算手段22にて上記の式(11)の演算処理のみによって回転方向判別が可能となるため、容易にフリーラン状態の誘導電動機の回転方向の判別が行える。また、低速域においても、計測時間を短縮しつつ信頼性良く回転方向判別が行える。
また、式(15)〜(18)で算出される固定子αβ軸上の脈動信号Xα、Xβは、式(15)(16)の積分演算の効果によって、iαやiβ、或いはvα_ref、vβ_refに対してローパス処理を施していることと等価である。このため、高周波ノイズを除去された脈動波形がフリーラン回転周波数検出手段3aに入力されることになり、その後、脈動周波数検出手段21において回転座標上の脈動信号Xγ、Xδの周波数を計測する際に、0クロス検知の精度が向上する効果が得られる。このように、フィルタ手段34によって、脈動信号の周波数計測に外乱となる信号を除去する効果が得られるため、フリーラン周波数の検出精度が向上する。
【0026】
なお、フィルタ手段34で用いた固定子αβ軸上の脈動信号Xα、Xβの演算処理は、上記式(15)〜(18)に限るものではなく、電圧指令値vα_ref、v_β_ref、または電流帰還値iα、iβに重畳する脈動信号の位相差情報が保存される処理であれば、如何なるフィルタ処理でもよい。例えば、フィルタ手段34として、α軸上、β軸上の両方の信号に対してバンドバスフィルタ処理と増幅ゲインを設けて、特定周波数領域の脈動成分を増幅させて、後段のフリーラン回転周波数検出手段3a内の脈動周波数検出手段21における0クロス検知精度の向上を図っても良い。
【0027】
実施の形態4.
次に、この発明の実施の形態4による誘導電動機の制御装置について説明する。図6は、この発明の実施の形態4による誘導電動機の制御装置の構成を示すブロック図である。
この実施の形態4では、上記図1で示した実施の形態1の構成に対し、電力変換手段2d内の電力状態量制御手段12dの内部に、電流脈動発振のために自励発振用の電圧発生手段35a、および加算手段36を設ける。
電流指令値生成手段31aからフリーラン周波数検出用に、電流制御ループに対してインパルス状の電流指令値を印加したときに、電流ループの電流帰還値、電圧指令値に重畳する脈動信号が生じ、その脈動信号が電圧発生手段35aによって発振、増幅させる。この発振、増幅された電流脈動、この場合電流帰還値iα、iβを得てこれをαβ軸上の第1の電力状態量脈動信号Xα、Xβとし、これらをフリーラン回転周波数検出手段3aへ出力する。電圧発生手段35aによって脈動信号のみが増幅されるため、電流帰還値iα、iβをそのまま脈動信号Xα、Xβとして用いることができる。なお、脈動信号Xα、Xβの抽出精度をさらに向上させるため、直流オフセットなどを除去するハイパスフィルタ処理を行う脈動抽出手段を設けても良い。
【0028】
図7、図8は、それぞれ正転、逆転にてフリーラン状態の誘導電動機1の回転周波数を検出する際の、αβ軸上および回転座標(γδ軸)上の信号波形を示すものである。ここでは、誘導電動機1のフリーラン周波数が5[Hz]で正転、あるいは逆転している状況で、電流指令値生成手段31aからフリーラン周波数検出用に、α軸上の電流指令値iα_refにインパルス指令値を、β軸上の電流指令値iβ_ref=0を与えて、電圧発生手段35aによって脈動信号を発振、増幅させた場合の、αβ軸上の電流帰還値iα、iβと回転座標上の脈動信号Xγ、Xδの波形を示す。なお、便宜上、図7、図8では電流帰還値iα、iβで示されるαβ軸上の脈動信号の周波数はフリーラン周波数と同じ5[Hz]とする。
図7、図8に示すように、各脈動信号の波形は、インパルス状の電流指令値が印加されて数百[msec]後でも脈動の振幅が減衰せず持続していることが判る。このように、電圧発生手段35aによって減衰が抑制されて、脈動を持続させる効果が得られているため、脈動周波数検出手段21において回転座標上の脈動信号Xγ、Xδの周波数を計測する際に、0クロス検知の精度が向上する効果が得られる。
【0029】
またこの実施の形態においても、上記実施の形態1と同様に、固定子αβ軸上で得た脈動信号Xα、Xβに対して、所定の座標回転周波数を有する回転座標上への座標変換を施す構成により、回転座標上の脈動信号Xγ、Xδの周波数を計測するため、誘導電動機が低速域であっても高い周波数領域に変換して脈動周波数が計測可能となり、検出精度を低下することなく周波数検出が大幅に高速化できる。また、脈動信号の位相差を検出する必要がなく、加減算手段22にて上記の式(11)の演算処理のみによって回転方向判別が可能となるため、容易にフリーラン状態の誘導電動機の回転方向の判別が行える。また、低速域においても、計測時間を短縮しつつ信頼性良く回転方向判別が行える。
【0030】
実施の形態5.
次に、この発明の実施の形態5による誘導電動機の制御装置について説明する。図9は、この発明の実施の形態5による誘導電動機の制御装置の構成を示すブロック図である。
図に示すように、誘導電動機1の制御装置は、電力変換手段2eおよびフリーラン回転周波数検出手段3bで構成される。
電力変換手段2eは、主回路である電力変換器10、電流検出手段11および電力状態量制御手段12e、電圧座標変換手段13および電流座標変換手段14から構成される。さらに、電力状態量制御手段12eは、電流指令値生成手段31bおよび電流制御手段32bから構成される。また、フリーラン回転周波数検出手段3bは、脈動周波数検出手段21、および加減算手段22から構成される。また、電流制御手段32bは、図10に示すように、電流PI制御手段101、フィードフォワード電圧演算手段102、電流制御誤差算出手段103および加算手段104から構成される。
【0031】
次に、動作について説明する。
まず、電力変換手段2eの動作、特に電流制御ループによる制御動作について説明する。電力変換手段2eは、電流制御手段32b、電圧座標変換手段13、電流座標変換手段14、電力変換器10、電流検出手段11および誘導電動機1で電流制御ループを構成しており、誘導電動機1の一次電流値から得られた電流帰還値が、電流指令値生成手段31bから出力される電流指令値と一致するように、電流制御手段32bは電圧指令値を出力して電力変換器10を制御する。
ここでは、電流指令値、電圧指令値、電流帰還値を所定の座標回転周波数w_ax[rad/sec]で回転する回転座標である直交二軸γδ軸座標上で与え、電流制御ループでは、上記回転座標上で電流帰還値が電流指令値と一致するように制御する。
【0032】
電流検出手段11では、実際の電流を電流センサなどの電流検出器で検出した3相の電流値iu、iv、iwに対し、上記実施の形態1で示した同様の演算式(1)(2)によりαβ軸上の電流帰還値iα、iβに座標変換して電流座標変換手段14に出力する。
iα=(2/3)−1・(iu−(1/2)・iv−(1/2)・iw) …(1)
iβ=(1/2)−(1/2)・iw−(1/2)−(1/2)・iv …(2)
電流座標変換手段14は、αβ軸上の電流帰還値iα、iβの他、座標回転周波数w_axが入力される。そして、w_ax[rad/sec]で回転する回転座標である直交二軸γδ軸上の電流帰還値iγ、iδに、次の式(19)(20)(21)により座標変換して電流制御制御手段32bに出力する。
θγδ=(1/s)・w_ax …(19)
iγ=cosθγδ・iα+sinθγδ・iβ …(20)
iδ=−sinθγδ・iα+cosθγδ・iβ …(21)
【0033】
電流制御手段32bでは、回転座標上の電流帰還値iγ、iδと電流指令値iγ_ref、iδ_refとを電流制御誤差算出手段103に入力して、次の式(22)(23)のように回転座標上の電流制御誤差err_iγ、err_iδを算出し、電流PI制御手段101に出力する。
err_iγ=iγ_ref−iγ …(22)
err_iδ=iδ_ref−iδ …(23)
電流PI制御手段101では、以下の比例積分演算によって制御電圧vγ_PI、vδ_PIを算出し、加算手段104に出力する。ただし、Kp、Kiは、電流制御の応答を決定する比例ゲイン定数、積分ゲイン定数である。
vγ_PI=(Kp+(Ki/s))・err_iγ …(24)
vδ_PI=(Kp+(Ki/s))・err_iδ …(25)
【0034】
また、フィードフォワード電圧演算手段102は、回転座標上で電流制御を行う際に必要な誘起電圧演算を行なう。この手段の必要性について以下に説明する。
座標回転周波数w_ax[Hz]で回転する回転座標上で直流の電流指令値、例えばγ軸上の電流指令値iγ_ref=I0(直流値)、δ軸電流指令値iδ_ref=0のように与えた場合、固定子αβ軸上には漏れインダクタンスによって周波数w_axの誘起電圧が発生する。これによって、電流制御ループには、フリーラン周波数に関係して脈動する信号の他、上記の周波数w_axの誘起電圧によって発生する信号成分が含まれる。フリーラン周波数検知のために、フリーラン周波数に関係して脈動するαβ軸上の脈動信号の周波数のみを検出するのが目的であるため、周波数w_axの脈動成分をキャンセルすることが必要である。
【0035】
具体的には、電流指令値生成手段31bから出力される回転座標上の電流指令値iγ_ref、iδ_refと、座標回転周波数w_axとに基づいて、次の式(26)(27)により誘導電動機1の漏れインダクタンスによる誘起電圧vγ_FF、vδ_FFを演算する。なお、座標回転周波数w_axで回転するγδ軸上では、誘起電圧は直流量で算出できる。このとき、一次抵抗による電圧降下のオフセット成分もまとめて算出すれば、αβ軸上のw_m[Hz]の脈動信号の抽出がより精度良く行える。
vγ_FF=Rs_n・iγ_ref−w_ax・σLs_n・iδ_ref …(26)
vδ_FF=w_ax・σLs_n・iγ_ref+Rs_n・iδ_ref …(27)
ここで、Rs_nは一次抵抗値の設定値であり、σLs_nは漏れインダクタンスの設定値である。
加算手段104は、以下の加算を行い、電圧指令値vγ_ref、vδ_refを算出し、電圧指令座標変換手段13に出力する。
vγ_ref=vγ_PI+vγ_FF …(28)
vδ_ref=vδ_PI+vδ_FF …(29)
上記式(26)〜(29)による演算処理によって、電流制御ループに重畳するw_mとw_axとの2つの周波数の脈動成分を分離できる。具体的には式(28)(29)において、vγ_PI、vδ_PIがフリーラン周波数検出に必要な成分、vγ_FF、vδ_FFが漏れインダクタンスによる誘起電圧成分である。
【0036】
電圧座標変換手段13は、回転座標上の電圧指令値vγ_ref、vδ_refを入力として式(19)で算出した回転座標の基準位相角θγδと、次の式(30)(31)を用いて、電圧指令値vγ_ref、vδ_refを固定子座標のαβ軸上へ座標変換を行う。
vα_ref=cosθγδ・vγ_ref−sinθγδ・vδ_ref …(30)
vβ_ref=sinθγδ・vγ_ref+cosθγδ・vδ_ref …(31)
このように算出されたαβ軸上の電圧指令値vα_ref、vβ_refは、電力変換器10に出力される。電力変換器10では、入力されたαβ軸上の電圧指令値vα_ref、vβ_refに基づく実際の電圧ベクトルを誘導電動機1へ出力する。例えば電力変換器10に電圧型インバータを用いる場合には、αβ軸上の電圧指令値vα_ref、vβ_refを3相での波形に変換した後、3相のインバータのスイッチングパターンを生成する演算処理を経て、インバータの制御入力にスイッチングパターンを入力することで、誘導電動機1にパルス幅変調された3相電圧が供給される。
このようにして、回転座標上で構成された電流制御ループによって、回転座標上の電流帰還値iγ、iδは電流指令値iγ_ref、iδ_refに追従するように制御される。
【0037】
次に、瞬時停電の発生などにより電力変換手段2eから誘導電動機1へ電力を供給していない状態、即ち誘導電動機1がフリーラン状態の場合に誘導電動機1の回転周波数を検出する際の電流制御ループの動作について説明する。
図11、図12は、それぞれ正転、逆転にてフリーラン状態の誘導電動機1の回転周波数を検出する際の、回転座標(γδ軸)上およびαβ軸上の信号波形を示すものである。ここでは、誘導電動機1のフリーラン周波数が5[Hz]で正転、あるいは逆転している状況で、電流指令値生成手段31bからフリーラン周波数検出用に、直流の電流指令値をステップ状に出力したときの信号波形を示し、γ軸電流指令値iγ_ref=I0(直流値)として与え、δ軸電流指令値iδ_ref=0として与えている。
図11、図12が示すように、上記の電流制御ループの機能が働くことによって、回転座標上の電流帰還値iγ、iδの平均値は、電流指令値生成手段32bが出力する回転座標上の電流指令値iγ_ref=I0、iδ_ref=0に追従するように制御される。
【0038】
これによって、固定子αβ軸上で捉えた電流帰還値iα、iβの主成分は、上記式(20)(21)に対する逆変換の関係から、以下の式(32)(33)で表せる。
iα=cosθγδ・iγ−sinθγδ・iδ
≒cosθγδ・iγ_ref−sinθγδ・iδ_ref
=cosθγδ・I0 …(32)
iβ=sinθγδ・iγ+cosθγδ・iδ
≒sinθγδ・iγ_ref+cosθγδ・iδ_ref
=sinθγδ・I0 …(33)
上記式(32)(33)、および図11、図12で示すように、αβ軸上で捉えた電流帰還値iα、iβは、座標回転周波数w_axの正弦波となる主成分が支配的であるが、実際のiα、iβには、フリーラン周波数と一定の比例関係にある周波数w_mで脈動する微小な脈動成分が重畳する。これは、誘導電動機1が回転周波数でピークをもつインピーダンス特性を有しているため、電流指令値をステップ状に与えるショックが電流制御ループに印加されることによって電流および電圧指令値に脈動信号が誘起されるためである。
【0039】
この脈動成分が、上記式(20)(21)によって周波数w_ax(この場合−30[Hz])で回転する回転座標系へ変換される結果、回転座標上の電流帰還値iγ、iδは、図11、図12に示すように、電流指令値iγ_ref、iδ_refに、周波数が(w_m−w_ax)、この場合、正転時35[Hz],逆転時25[Hz]の脈動成分が重畳した波形となる。すなわち、電流制御誤差err_iγ、err_iδが電力状態量脈動信号Xγ、Xδとなり、図に示す波形となる。
なお、この脈動信号Xγ、Xδの収束性は、電流PI制御手段101の比例ゲインKpおよび積分ゲインKiにて操作することが可能である。
【0040】
このようにして発生する、回転座標上の脈動成分Xγ、Xδ、すなわち電流制御誤差err_iγ、err_iδのいずれか一方、あるいは双方をフリーラン回転周波数検出手段3bに出力する。
このような回転座標上の脈動信号Xγ、Xδのいずれか一方あるいは双方を脈動周波数検出手段21に入力し、符号が反転する回数をカウントすることで、脈動信号Xγ、Xδの周波数w_γδを算出する。具体的には、脈動計測期間をT[sec]、この期間中の符号反転の回数Nを脈動周波数検出手段21にて計測し、上記実施の形態と同様の以下の式により算出する。
w_γδ=(N-1)/(2・T)[Hz] …(10)
この後、脈動信号Xγ、Xδの周波数w_γδに対し、加減算手段22にて、以下の式により、固定子座標上の2軸であるαβ軸上の脈動信号Xα、Xβの周波数w_mを算出する。
w_m=w_γδ+w_ax[Hz] …(11)
【0041】
この実施の形態では、回転座標軸上で電流制御ループを構成して、回転座標上の脈動信号Xγ、Xδの周波数w_γδを計測する。脈動信号Xγ、Xδの周波数w_γδは、上記実施の形態1と同様に、フリーラン周波数と一定の比例関係にある固定子αβ軸上の脈動信号Xα、Xβの周波数w_mに対して、座標回転周波数w_axが加算された値となっている。このため、誘導電動機が低速域であっても高い周波数領域に変換して脈動周波数が計測可能となり、検出精度を低下することなく周波数検出が大幅に高速化できる。また、脈動信号の位相差を検出する必要がなく、加減算手段22にて上記の式(11)の演算処理のみによって回転方向判別が可能となるため、容易にフリーラン状態の誘導電動機の回転方向の判別が行える。また、低速域においても、計測時間を短縮しつつ信頼性良く回転方向判別が行える。
さらに、フィードフォワード電圧演算手段102を備えて、座標回転周波数の誘起電圧により発生する信号成分をキャンセルするようにしたため、フリーラン周波数に関係して脈動する信号のみを信頼性良く抽出して周波数を検出できるため、フリーラン周波数の検出が信頼性良く高精度に行える。
【0042】
実施の形態6.
次に、この発明の実施の形態6による誘導電動機の制御装置について説明する。図13は、この発明の実施の形態6による誘導電動機の制御装置の構成を示すブロック図である。
この実施の形態6では、上記図9で示した実施の形態5の構成に対し、電力変換手段2f内の電力状態量制御手段12fの内部に、回転座標上の脈動信号Xγ、Xδを生成するためのフィルタ手段34を設ける。
上記実施の形態5では、回転座標上の脈動成分Xγ、Xδとして電流制御誤差err_iγ、err_iδのいずれか一方、あるいは双方をフリーラン回転周波数検出手段3bに出力したが、この実施の形態では、電圧指令値と電流帰還値の少なくともどちらか一方の情報に基づいてフィルタ手段34によりフィルタ処理を行う。これによりフリーラン回転周波数検出手段3bの処理に対して外乱となる情報を除去した脈動信号Xγ、Xδを生成することができる。
【0043】
フィルタ手段34の一例として、バンドパス処理と増幅処理を挙げる。フィルタ手段34では、以下の式(34)(35)どちらかの演算を行い、回転座標上の脈動成分Xγ、Xδとして、どちらか一方をフリーラン回転周波数検出手段3bに出力する。
Xγ=Kbpf・(s/(s+wa))・(wb/(s+wb))・iγ …(34)
Xδ=Kbpf・(s/(s+wa))・(wb/(s+wb))・iδ …(35)
(ラプラス変換表記)
ただし、Kbpfは脈動増幅ゲイン、waは低域遮断周波数、wbは高域遮断周波数であり、脈動を増幅させたい周波数帯域と増幅利得に応じて設定する。
【0044】
このように得られる脈動成分Xγ、Xδをフリーラン回転周波数検出手段3bに出力することで、上記実施の形態5と同様の効果を得ることができる。即ち、この実施の形態においても、誘導電動機が低速域であっても高い周波数領域に変換して脈動周波数が計測可能となり、検出精度を低下することなく周波数検出が大幅に高速化できる。また、脈動信号の位相差を検出する必要がなく、加減算手段22での演算処理のみによって回転方向判別が可能となるため、容易にフリーラン状態の誘導電動機の回転方向の判別が行える。また、低速域においても、計測時間を短縮しつつ信頼性良く回転方向判別が行える。
また、上記式(34)(35)で算出される脈動成分Xγ、Xδは、回転座標上の電流帰還値iγ、iδに対して直流オフセット、高周波ノイズが除去された脈動波形となっているため、脈動周波数検出手段21における0クロス検知の精度が向上し周波数の検出が高精度に行える。
なお、所望のバンドパス・増幅処理を行えるのであれば、如何なるフィルタ処理を用いても良く、例えばさらに遮断特性が良好な高次数のバンドパスフィルタを用いるなどしても良い。
【0045】
実施の形態7.
次に、この発明の実施の形態7による誘導電動機の制御装置について説明する。図14は、この発明の実施の形態7による誘導電動機の制御装置の構成を示すブロック図である。
この実施の形態7では、上記図9で示した実施の形態5の構成に対し、電力変換手段2g内の電力状態量制御手段12gの内部に、電流脈動発振のために自励発振用の電圧発生手段35b、および加算手段36を設ける。
電流指令値生成手段31bからフリーラン周波数検出用に、電流制御ループに対してインパルス状の電流指令値を印加したときに、上記実施の形態5で説明したように、電流制御ループの制御信号に脈動信号が重畳するが、その脈動信号を電圧発生手段35bによって発振、増幅させる。この発振、増幅された電流脈動を得て電力状態量脈動信号Xγ、Xδとし、これらをフリーラン回転周波数検出手段3bへ出力する。
【0046】
この実施の形態においても、上記実施の形態5と同様の効果を得ることができる。すなわち、誘導電動機が低速域であっても高い周波数領域に変換して脈動周波数が計測可能となり、検出精度を低下することなく周波数検出が大幅に高速化できる。また、脈動信号の位相差を検出する必要がなく、加減算手段22での演算処理のみによって回転方向判別が可能となるため、容易にフリーラン状態の誘導電動機の回転方向の判別が行える。また、低速域においても、計測時間を短縮しつつ信頼性良く回転方向判別が行える。
また、電圧発生手段35bによって脈動信号の減衰が抑制されて、脈動を持続させる効果が得られているため、脈動周波数検出手段21において回転座標上の脈動信号Xγ、Xδの周波数を計測する際に、0クロス検知の精度が向上する効果が得られる。
【0047】
【発明の効果】
以上のように、この発明に係る誘導電動機の制御装置は、誘導電動機に交流電力を供給する電力変換器と、該電力変換器の出力電流を検出する検出器と、該検出器にて検出された3相の電流を固定子座標上の直交した2軸上に座標変換した電流帰還値が該2軸上で与えられた電流指令値に一致するように電圧指令値を生成して上記電力変換器を制御する電力状態量制御手段とを備えて、上記誘導電動機を電流制御する。そして、上記電流指令値として上記誘導電動機の周波数を検出するための所定の指令値を与えたときに、上記電力状態量制御手段の上記2軸上の制御信号に発生する脈動成分を抽出し第1の電力状態量脈動信号を生成する電力状態量脈動信号検出手段と、上記第1の電力状態量脈動信号を所定の回転周波数を有する回転座標上の第2の電力状態量脈動信号に変換する回転座標変換手段と、上記第2の電力状態量脈動信号の周波数を検出する周波数検出手段とを備え、上記検出周波数と上記回転周波数とに基づいて、フリーラン状態にある上記誘導電動機の周波数及び回転方向を求めるものである。このため、誘導電動機が低速域であっても高い周波数領域に変換して脈動周波数の計測が可能となり、検出精度を低下することなく周波数検出が大幅に高速化できる。また、脈動信号の位相差を検出する必要がなく、容易で信頼性良くフリーラン状態の誘導電動機の回転方向の判別が行える。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1による誘導電動機の制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】 この発明の実施の形態1による誘導電動機の制御装置の動作を説明する制御信号波形である。
【図3】 この発明の実施の形態1による誘導電動機の制御装置の動作を説明する制御信号波形である。
【図4】 この発明の実施の形態2による誘導電動機の制御装置の構成を示すブロック図である。
【図5】 この発明の実施の形態3による誘導電動機の制御装置の構成を示すブロック図である。
【図6】 この発明の実施の形態4による誘導電動機の制御装置の構成を示すブロック図である。
【図7】 この発明の実施の形態4による誘導電動機の制御装置の動作を説明する制御信号波形である。
【図8】 この発明の実施の形態4による誘導電動機の制御装置の動作を説明する制御信号波形である。
【図9】 この発明の実施の形態5による誘導電動機の制御装置の構成を示すブロック図である。
【図10】 この発明の実施の形態5による誘導電動機の制御装置の部分構成を示すブロック図である。
【図11】 この発明の実施の形態5による誘導電動機の制御装置の動作を説明する制御信号波形である。
【図12】 この発明の実施の形態5による誘導電動機の制御装置の動作を説明する制御信号波形である。
【図13】 この発明の実施の形態6による誘導電動機の制御装置の構成を示すブロック図である。
【図14】 この発明の実施の形態7による誘導電動機の制御装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 誘導電動機、3a,3b フリーラン回転周波数検出手段、
10 電力変換器、11 電流検出手段、
12a〜12g 電力状態量制御手段、13 電圧座標変換手段、
14 電流座標変換手段、21 脈動周波数検出手段、23 座標変換手段、
31a,31b 電流指令値生成手段、32a,32b 電流制御手段、
33 脈動検出手段、34 脈動信号検出手段としてのフィルタ手段、
35a,35b 電圧発生手段、36 加算手段、αβ 固定子座標上の2軸、
γδ 回転座標上の2軸、Xα,Xβ 固定座標系脈動信号、
Xγ,Xδ 回転座標系脈動信号。

Claims (3)

  1. 誘導電動機に交流電力を供給する電力変換器と、該電力変換器の出力電流を検出する検出器と、該検出器にて検出された3相の電流を固定子座標上の直交した2軸上に座標変換した電流帰還値が該2軸上で与えられた電流指令値に一致するように電圧指令値を生成して上記電力変換器を制御する電力状態量制御手段とを備えて、上記誘導電動機の電流を制御する誘導電動機の制御装置において、上記電流指令値として上記誘導電動機の周波数を検出するための所定の指令値を与えたときに、上記電力状態量制御手段の上記2軸上の制御信号に発生する脈動成分を抽出し第1の電力状態量脈動信号を生成する電力状態量脈動信号検出手段と、上記第1の電力状態量脈動信号を所定の回転周波数を有する回転座標上の第2の電力状態量脈動信号に変換する回転座標変換手段と、上記第2の電力状態量脈動信号の周波数を検出する周波数検出手段とを備え、上記検出周波数と上記回転周波数とに基づいて、フリーラン状態にある上記誘導電動機の周波数及び回転方向を求めることを特徴とする誘導電動機の制御装置。
  2. 上記電力状態量制御手段に、自励発振用の電圧発生手段を備えて該発生電圧を上記電圧指令値に加算し、発生する上記脈動成分を発振増幅させることを特徴とする請求項に記載の誘導電動機の制御装置。
  3. 上記回転座標の回転周波数は、上記誘導電動機の運転中に想定される逆転周波数の絶対値の上限より絶対値が大きくなるように設定することを特徴とする請求項1または2に記載の誘導電動機の制御装置。
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