JP4349725B2 - 電子部品収納用容器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は半導体素子や圧電振動子等の電子部品を気密に封止して収納するための電子部品収納用容器に関し、特に封止材にガラスを用いて封止を行う電子部品収納用容器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体集積回路素子をはじめとする半導体素子あるいは水晶振動子、弾性表面波素子といった圧電振動子等の電子部品を収容するための電子部品収納用容器は、例えば酸化アルミニウム質焼結体等の電気絶縁材料から成り、その上面の略中央部に電子部品を搭載するための搭載部およびその周辺から下面にかけて導出されたタングステンやモリブデン等の高融点金属から成る複数個のメタライズ配線層を有する絶縁基体と、それに対向する面の略中央部に電子部品を収容するための凹部を有する蓋体とから構成されている。
【0003】
そして、電子部品が例えば圧電振動子の場合には、絶縁基体の搭載部に圧電振動子の一端を導電性エポキシ樹脂等から成る接着材を介して接着固定するとともに圧電振動子の各電極をメタライズ配線層に電気的に接続し、しかる後、絶縁基体の上面に蓋体を低融点ガラスから成る封止材を介して接合させ、絶縁基体と蓋体とから成る容器内部に圧電振動子を気密に収容することによって最終製品としての電子部品装置と成る。
【0004】
なお、絶縁基体に蓋体を接合させる封止材としては、例えば酸化鉛56〜66重量%、酸化ホウ素4〜14重量%、酸化珪素1〜6重量%、酸化亜鉛0.5〜3重量%および酸化ビスマス0.5〜5重量%を含むガラス成分に、フィラーとしてコージェライト系化合物を10〜20重量%添加した鉛系ガラスが使用されている。
【0005】
しかしながら、この従来の電子部品収納用容器においては、絶縁基体に蓋体を接合させる封止材であるガラスの軟化溶融温度が400℃程度と高温であること、近時の電子部品は高密度化・高集積化に伴って耐熱性が低下してきたこと等から、絶縁基体と蓋体とを封止材を介して接合し、絶縁基体と蓋体とから成る容器内部に電子部品を気密に収容した場合、封止材を溶融させる熱が内部に収容する電子部品に作用して電子部品の特性に劣化を招来させ、電子装置を正常に作動させることができないという問題点を有していた。
【0006】
また、近年の地球環境保護運動の高まりの中で、酸化鉛は環境負荷物質に指定されており、例えば酸化鉛を含む電子装置が屋外に廃棄・放置され風雨に曝された場合、環境中に鉛が溶けだし環境を汚染する可能性があり、人体に対して有害である酸化鉛を用いない封止材の開発が要求されるようになってきている。
【0007】
このような問題点を解決するために、銀燐酸系ガラスや錫燐酸系ガラスを主成分とする酸化鉛を含まない低融点ガラスが検討されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、現在検討されている銀燐酸系ガラスは、そのガラス軟化溶融温度が350℃以下で封止工程での電子部品への熱負荷の面では良好な特性を有するものの、室温での体積固有抵抗値が105Ω・cm以下と電気絶縁性が低く、電子部品収納用容器の薄型化を図る目的で、絶縁基体を平板状とし絶縁基体上に配線導体層を配した、配線導体層が蓋体と絶縁基体との接合部をまたがる構造の電子部品収納容器では、配線導体間の絶縁抵抗値が低下してしまい、その結果、封止材として使用できないという問題点を有していた。
【0009】
また、錫燐酸系ガラスは、室温での体積固有抵抗値が1010Ω・cm以上と電気絶縁性は良好であるが、そのガラス軟化溶融温度が400℃以上と高く、近時の耐熱性の低下してきた電子部品には使用できないという問題を有していた。
【0010】
本発明は上記問題点に鑑み案出されたもので、その目的は、絶縁基体と蓋体とから成る容器の内部に電子部品を気密に封止し、その特性に劣化を招来することがなく、電子部品を長期間にわたり正常かつ安定に作動させることができる電子部品収納用容器を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の電子部品収納用容器は、上面に電子部品の搭載部を有する絶縁基体と、その絶縁基体の上面に搭載部を取り囲むように銀燐酸系ガラスを主成分とする封止材を介して接合される蓋体と、絶縁基体表面の搭載部近傍から蓋体との接合領域の外側にかけて形成され、搭載部側の一端に電子部品の電極が、他端に外部電気回路がそれぞれ電気的に接続される配線導体層とから成り、絶縁基体と蓋体とから成る容器内部に電子部品を気密に収容する電子部品収納用容器であって、配線導体層は、蓋体との接合部が錫燐酸系ガラスを主成分とする電気絶縁層で被覆されていることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の電子部品収納用容器は、電気絶縁層が五酸化燐35〜55重量%、一酸化錫20〜40重量%、酸化亜鉛10〜20重量%、酸化アルミニウム2〜4重量%、酸化珪素1〜3重量%および酸化硼素1〜6重量%から成るガラス成分にフィラーとしてコージェライト系化合物を外添加で16〜45重量%添加したものから成ることを特徴とするものである。
【0013】
さらに、本発明の電子部品収納用容器は、封止材が酸化銀20〜40重量%、ヨウ化銀5〜20重量%、五酸化燐20〜30重量%、酸化ホウ素5〜15重量%および酸化亜鉛1〜6重量%から成るガラス成分にフィラーとして燐酸ジルコニウムと酸化ジルコニウムと酸化ニオブとの固溶体を外添加で10〜30重量%添加したものから成ることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の電子部品収納用容器によれば、絶縁基体と蓋体とを銀燐酸系ガラスを主成分とする封止材で接合したことから、その封止温度を350℃以下とすることができ、絶縁基体と蓋体とを封止材を介して接合させ、絶縁基体と蓋体とから成る容器内部に電子部品を気密に収容する際、封止材を溶融させる熱が内部に収容する電子部品に作用しても電子部品の特性に劣化を招来することはなく、その結果、電子部品を長期間にわたり正常、かつ安定に作動させることが可能となる。
【0015】
また、本発明の電子部品収納用容器によれば、配線導体層の封止材との接合部を室温での体積固有抵抗値が1010Ω・cm以上の錫燐酸系ガラスを主成分とする電気絶縁層で覆ったことから、銀燐酸系ガラスを主成分とする封止材での電気絶縁性の問題が発生せず、電子部品を長期間にわたり正常、かつ安定に作動させることが可能となる。
【0016】
さらに、本発明の電子部品収納用容器によれば、電気絶縁層を形成するガラスの軟化溶融温度が430℃以下であり配線導体層を電気絶縁層で被覆する際の熱で配線導体層の熱的な劣化を引き起こすこともなく、電子部品を電気的に良好に接続することが可能であるとともに電子部品を長期間にわたり正常かつ安定に作動させることが可能となる。
【0017】
【発明の実施の形態】
次に、本発明を添付の図面に基づき詳細に説明する。
【0018】
図1は本発明の電子部品収納用容器の実施の形態の一例を示す断面図である。この図においては電子部品が水晶振動子等の圧電振動子であり、電子部品収納用容器が圧電振動子収納用容器である場合の例を示している。
【0019】
この図において1は絶縁基体、2は蓋体であり、主にこれらで圧電振動子3を収容するための容器4が構成される。
【0020】
絶縁基体1は略長方形の平板で、その上面の略中央部に圧電振動子3を搭載するための搭載部1aが設けてある。この搭載部1aには圧電振動子3が樹脂から成る接着材を介してに接着固定される。
【0021】
絶縁基体1は、酸化アルミニウム質焼結体やムライト質焼結体・窒化アルミニウム質焼結体・窒化珪素質焼結体・炭化珪素質焼結体等の電気絶縁材料から成り、例えば酸化アルミニウム質焼結体から成る場合であれば、酸化アルミニウム・酸化珪素・酸化マグネシウム・酸化カルシウム等の原料粉末に適当な有機バインダ・溶剤・可塑剤・分散剤等を添加混合して泥漿物を作り、この泥漿物を従来周知のドクターブレード法やカレンダーロール法等のシート成形法を採用しシート状に成形してセラミックグリーンシート(セラミック生シート)を得、しかる後、それらセラミックグリーンシートに適当な打ち抜き加工を施すとともにこれを複数枚積層し、約1600℃の高温で焼成することによって製作される。
【0022】
接着材は、例えば導電性エポキシ樹脂等から成り、絶縁基体1の搭載部1aに接着材を介して圧電振動子3を載置し、しかる後、接着材に熱硬化処理を施し、熱硬化させることによって圧電振動子3を絶縁基体1に接着固定させる作用を成す。
【0023】
また、絶縁基体1には搭載部1a近傍から側面を経て下面にかけて複数個のメタライズ配線層5が被着形成されている。このメタライズ配線層5の上面搭載部1aに位置する部位には圧電振動子3の各電極が上記の導電性エポキシ樹脂等から成る接着材を介して電気的に接続され、また絶縁基体1の底面に導出された部位には外部電気回路(図示せず)の配線導体が半田等のロウ材を介して取着される。
【0024】
なお、メタライズ配線層5は、タングステン・モリブデン・マンガン等の高融点金属粉末に適当な有機溶剤・溶媒・可塑剤等を添加混合して得た金属ペーストを従来周知のスクリーン印刷法等の厚膜手法を採用して絶縁基体1となるセラミックグリーンシートにあらかじめ印刷塗布しておき、これをセラミックグリーンシートと同時に焼成することによって絶縁基体1の搭載部1a近傍から下面にかけて所定パターンに被着形成される。
【0025】
なお、メタライズ配線層5は、その表面にニッケル・金等の良導電性で耐蝕性およびロウ材との濡れ性が良好な金属をめっき法により1〜20μmの厚みに被着させておくと、メタライズ配線層5の酸化腐蝕を有効に防止することができるとともにメタライズ配線層5と圧電振動子3との導電性樹脂による接続およびメタライズ配線層5と外部電極とのロウ付けを極めて強固となすことができる。
【0026】
さらに、絶縁基体1の上面には蓋体2が封止材6を介して接合され、これによって絶縁基体1と蓋体2とから成る容器4の内部に圧電振動子3が気密に収容される。
【0027】
封止材6は、酸化銀20〜40重量%、ヨウ化銀5〜20重量%、五酸化燐20〜30重量%、酸化ホウ素5〜15重量%および酸化亜鉛1〜6重量%から成るガラス成分にフィラーとして燐酸ジルコニウムと酸化ジルコニウムと酸化ニオブとの固溶体を外添加で10〜30重量%添加したものから成り、そのガラス軟化点が350℃以下と低くことから、絶縁基体1と蓋体2とを封止材6を介して接合させ、絶縁基体1と蓋体2とから成る容器4内部に圧電振動子3を気密に収容する際、封止材6を溶融させる熱が内部に収容する圧電振動子3に作用してもその特性に劣化を招来することはなく、その結果、圧電振動子3を長期間にわたり正常、かつ安定に作動させることが可能となる。
【0028】
なお、封止材6のガラス成分は、酸化銀の量が20重量%未満であるとガラスの軟化溶融温度が高くなって、低温での容器4の気密封止が困難となる傾向があり、他方、40重量%を超えるとガラスの軟化溶融温度が低下して、圧電振動子3を外部電気回路基板に実装する際の熱によって封止材6が軟化溶融して、容器4の気密封止の信頼性が大きく低下してしまう傾向がある。したがって、酸化銀の量は20〜40重量%の範囲であることが好ましい。
【0029】
また、ヨウ化銀の量は5重量%未満であるとガラスの軟化溶融温度が高くなって、低温での容器4の気密封止が困難となる傾向があり、他方、20重量%を超えると、ガラスの耐薬品性が低下し、容器4の気密封止の信頼性が大きく低下してしまう傾向がある。したがって、ヨウ化銀の量は5〜20重量%の範囲であることが好ましい。
【0030】
五酸化燐の量が20重量%未満であるとガラスの軟化溶融温度が高くなって、低温での容器4の気密封止が困難となる傾向があり、他方、30重量%を超えるとガラスの耐薬品性が低下し、容器4の気密封止の信頼性が大きく低下してしまう傾向がある。したがって、五酸化燐の量は20〜30重量%の範囲であることが好ましい。
【0031】
酸化ホウ素が5重量%未満であるとガラスの結晶化が進み低温での容器4の気密封止が困難となる傾向にあり、他方、15重量%を超えるとガラスの耐薬品性が低下し、容器4の気密封止の信頼性が大きく低下してしまう傾向がある。したがって、酸化ホウ素の量は5〜15重量%の範囲であることが好ましい。
【0032】
酸化亜鉛が1重量%未満であるとガラスの耐薬品性が低下し、容器4の気密封止の信頼性が大きく低下してしまう傾向があり、他方、6重量%を超えるとガラスの結晶化が進み低温での容器4の気密封止が困難となる傾向にある。したがって、酸化亜鉛の量は1〜6重量%の範囲であることが好ましい。
【0033】
また、燐酸ジルコニウム・酸化ジルコニウム・酸化ニオブ固溶体のフィラーは封止材6の熱膨張係数を調整し、絶縁基体1および蓋体2に封止材6を強固に接合させ、容器4の気密信頼性を大きく向上させるとともに封止材6の機械的強度を向上させる作用をなす。このフィラーの含有量が10重量%未満であると封止材6の機械的強度が低下するとともに封止材6の熱膨張係数が絶縁基体1および蓋体2の熱膨張係数に対して大きく相違して封止材6を絶縁基体1および蓋体2に強固に接合させることができなくなる傾向がある。他方、30重量%を超えると封止材6の流動性が低下して、低温での気密封止が困難と成る傾向にある。したがって、フィラーの含有量は10〜30重量%の範囲であることが好ましい。
【0034】
また、本発明では、配線導体層5の蓋体2との接合部を電気絶縁層7で被覆することが重要である。
【0035】
電気絶縁層7は、その体積固有抵抗値が1010Ω・cm以上と高く、銀燐酸系ガラスを主成分とする封止材6を使用したとしても電気絶縁性の問題が発生することはなく、電子部品を長期間にわたり正常、かつ安定に作動させることが可能となる。
【0036】
このような電気絶縁層7は、配線導体層5の電気絶縁性を確保するために、配線導体層5の蓋体2との接合部に配線導体層5の各辺よりも少なくとも0.2mmを超える広いものとするとともに電気絶縁層7の上面に被着形成される封止材6の各辺よりも少なくとも0.2mmを超える広いものとすることが好ましく、0.2mm未満であると配線導体層5の電気絶縁性を確保することが困難と成る傾向がある。また、電気絶縁層7の厚みは、10〜100μmの厚みとなるように被覆することが好ましく、10μmよりも薄いと配線導体層5の電気絶縁性を確保することが困難と成る傾向があり、さらに、100μmを超えると電気絶縁層7の強度が低下して、容器4の気密封止の信頼性が低下する傾向がある。従って、電気絶縁層7の厚みは10〜100μmの範囲とすることが好ましい。
【0037】
このような錫燐酸系ガラスを主成分とする電気絶縁層7は、五酸化燐35〜55重量%、一酸化錫20〜40重量%、酸化亜鉛10〜20重量%、酸化アルミニウム2〜4重量%、酸化珪素1〜3重量%および酸化硼素1〜6重量%から成るガラス成分にフィラーとしてコージェライト系化合物を外添加で16〜45重量%添加したものから成ることから、軟化溶融温度が430℃以下と低温であり配線導体層5を錫燐酸系ガラスを主成分とする電気絶縁層7で被覆する際の熱で配線導体層5の熱的な劣化を引き起こすことはなく、圧電振動子3を電気的に良好に接続することが可能となり、電子部品を長期間にわたり正常かつ安定に作動させることが可能となる。
【0038】
なお、錫燐酸系ガラスを主成分とする電気絶縁層7のガラス成分は五酸化燐の量が35重量%未満であるとガラスの軟化溶融温度が高くなり、低温でのガラス溶着が困難になる傾向があり、他方55重量%を超えるとガラスの耐薬品性が劣化し、気密封止の信頼性が低下してしまう傾向がある。したがって、五酸化燐の量は35〜55重量%の範囲であることが好ましい。
【0039】
また、一酸化錫の量が20重量%未満であるとガラスの軟化溶融温度が高くなり、低温でのガラス溶着が困難になる傾向があり、他方40重量%を超えるとガラスの耐薬品性が劣化し、気密封止の信頼性が低下してしまう傾向がある。したがって、一酸化錫の量は20〜40重量%の範囲であることが好ましい。
【0040】
酸化亜鉛の量が10重量%未満であるとガラスの軟化溶融温度が高くなり、低温でのガラス溶着が困難になる傾向があり、他方20重量%を超えるとガラスの結晶化が進み、低温でのガラス溶着が困難になる傾向がある。したがって、酸化亜鉛の量は10〜20重量%の範囲であることが好ましい。
【0041】
酸化アルミニウムの量が2重量%未満であるとガラスの耐薬品性が劣化し、気密封止の信頼性が低下してしまう傾向があり、他方4重量%を超えるとガラスの軟化溶融温度が高くなり、低温でのガラス溶着が困難になる傾向がある。したがって、酸化アルミニウムの量は2〜4重量%の範囲であることが好ましい。
【0042】
酸化珪素の量が1重量%未満であるとガラスの熱膨張係数が大きくなり、絶縁基体および封止材との膨張の不整合により気密封止の信頼性が著しく低下する傾向があり、他方3重量%を超えるとガラスの軟化溶融温度が高くなり、低温でのガラス溶着が困難になる傾向がある。したがって、酸化珪素の量は1〜3重量%の範囲であることが好ましい。
【0043】
酸化硼素の量が1重量%未満であるとガラスの軟化溶融温度が高くなり、低温でのガラス溶着が困難になる傾向があり、他方6重量%を超えるとガラスの耐薬品性が劣化し、気密封止の信頼性が低下してしまう傾向がある。したがって、酸化硼素の量は1〜6重量%の範囲であることが好ましい。
【0044】
また、コージェライト系化合物フィラーは16〜45重量%の範囲で添加することが好ましく、フィラーの含有量が16%未満であると絶縁基体1と封止材6との熱膨張量の不整合により気密封止の信頼性が著しく低下する傾向があり、他方45重量%を超えるとガラスの低温での流動性が悪くなり、低温でのガラス溶着が困難になる傾向がある。したがって、フィラーの含有量は16〜45重量%の範囲であることが好ましい。
【0045】
このような電気絶縁層7は、配線導体層5を絶縁基体1に被着形成後、錫燐酸系ガラスを従来周知のスクリーン印刷法等を採用して配線導体層5の蓋体2との接合部に印刷し、錫燐酸系ガラスの軟化溶融温度で焼成することにより、配線導体層5の蓋体2との接合部に溶融被着させることにより形成される。
【0046】
また、絶縁基体1と蓋体2との接合封止は、上述の電気絶縁層7を溶融被着させた絶縁基体1の蓋体2との接合領域に封止材6を従来周知のスクリーン印刷法等を採用して予め被着させておき、封止材6の軟化溶融温度で焼成し、絶縁基体1の蓋体2との接合領域に溶融被着しておき、次に、絶縁基体1の搭載部1aに圧電振動子3を接着材を介して接着固定し、しかる後、絶縁基体1と蓋体2の接合面を貼り合わせて封止材6の軟化溶融温度で接合することにより行なわれる。
【0047】
なお、蓋体2は、酸化アルミニウム質焼結体・窒化アルミニウム質焼結体・窒化珪素質焼結体・炭化珪素質焼結体・ムライト質焼結体等の電気絶縁材料や鉄−ニッケル−コバルト合金、鉄−ニッケル合金等の金属材料から成り、蓋体2が、例えば酸化アルミニウム質焼結体から成る場合、酸化アルミニウム・酸化珪素・酸化マグネシウム・酸化カルシウム等の原料粉末を所定のプレス金型内に充填するとともに一定圧力で押圧して成形し、しかる後、この成形品を約1500℃の温度で焼成することによって製作される。
【0048】
本発明においては、封止材6および電気絶縁層7は、いずれも酸化鉛を含有していないことから地球環境に負荷を与えることがない。
【0049】
また、封止材6はガラス成分とフィラーとから成り、耐湿性に優れていることから大気中に含まれる水分が封止材6を介して容器4の内部に侵入しようとしてもその水分の侵入は有効に阻止され、その結果、容器4の内部に収容する圧電振動子3の表面電極が酸化腐蝕されることはなく、圧電振動子3を正常に作動させることも可能となる。
【0050】
かくして本発明の電子部品収納用容器によれば、絶縁基体1の搭載部1aに圧電振動子3の一端を導電性エポキシ樹脂等から成る接着材を介して接着固定するとともに圧電振動子3の各電極をメタライズ配線層5に電気的に接続させ、しかる後、絶縁基体1の搭載部1aを覆うように蓋体2を封止材6を介して接合させ、絶縁基体1と蓋体2とからなる容器4の内部に圧電振動子3を気密に収容することによって最終製品としての圧電振動装置が完成する。
【0051】
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能である。例えば上述の例では圧電振動子を収容するための電子部品収納用容器を示したが、本発明は圧電セラミック振動子や弾性表面波素子等を収容するための電子部品収納用容器にも適用し得るものでる。
【0052】
【発明の効果】
本発明の電子部品収納用容器によれば、絶縁基体と蓋体とを銀燐酸系ガラスを主成分とする封止材で接合したことから、その封止温度を350℃以下とすることができ、絶縁基体と蓋体とを封止材を介して接合させ、絶縁基体と蓋体とから成る容器内部に電子部品を気密に収容する際、封止材を溶融させる熱が内部に収容する電子部品に作用しても電子部品の特性に劣化を招来することはなく、その結果、電子部品を長期間にわたり正常、かつ安定に作動させることが可能となる。
【0053】
また、本発明の電子部品収納用容器によれば、配線導体層の封止材との接合部を室温での体積固有抵抗値が1010Ω・cm以上の錫燐酸系ガラスを主成分とする電気絶縁層で覆ったことから、銀燐酸系ガラスを主成分とする封止材での電気絶縁性の問題が発生せず、電子部品を長期間にわたり正常、かつ安定に作動させることが可能となる。
【0054】
さらに、本発明の電子部品収納用容器によれば、電気絶縁層を形成するガラスの軟化溶融温度が430℃以下であり配線導体層を電気絶縁層で被覆する際の熱で配線導体層の熱的な劣化を引き起こすこともなく、電子部品を電気的に良好に接続することが可能であるとともに電子部品を長期間にわたり正常かつ安定に作動させることが可能となる。
【0055】
また、本発明の電子部品収納用容器によれば、絶縁基体と蓋体とを接合させる封止材及び電気絶縁層は、いずれも酸化鉛を含まないガラスで構成したことから、人体に害を与えたり地球環境に負荷を与えることはない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子部品収納用容器の実施の形態の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1・・・・・・絶縁基体
1a・・・・・搭載部
2・・・・・・蓋体
3・・・・・・圧電振動子(電子部品)
4・・・・・・容器
5・・・・・・配線導体層
6・・・・・・封止材
7・・・・・・電気絶縁層
Claims (3)
- 上面に電子部品の搭載部を有する絶縁基体と、該絶縁基体の上面に前記搭載部を取り囲むように銀燐酸系ガラスを主成分とする封止材を介して接合される蓋体と、前記絶縁基体表面の前記搭載部近傍から前記蓋体との接合領域の外側にかけて形成され、前記搭載部側の一端に前記電子部品の電極が、他端に外部電気回路がそれぞれ電気的に接続される配線導体層とから成り、前記絶縁基体と前記蓋体とから成る容器内部に前記電子部品を気密に収容する電子部品収納用容器であって、前記配線導体層は、前記蓋体との接合部が錫燐酸系ガラスを主成分とする電気絶縁層で被覆されていることを特徴とする電子部品収納用容器。
- 前記電気絶縁層は、五酸化燐35〜55重量%、一酸化錫20〜40重量%、酸化亜鉛10〜20重量%、酸化アルミニウム2〜4重量%、酸化珪素1〜3重量%および酸化硼素1〜6重量%から成るガラス成分にフィラーとしてコージェライト系化合物を外添加で16〜45重量%添加したものから成ることを特徴とする請求項1記載の電子部品収納用容器。
- 前記封止材は酸化銀20〜40重量%、ヨウ化銀5〜20重量%、五酸化燐20〜30重量%、酸化ホウ素5〜15重量%および酸化亜鉛1〜6重量%から成るガラス成分にフィラーとして燐酸ジルコニウムと酸化ジルコニウムと酸化ニオブとの固溶体を外添加で10〜30重量%添加したものから成ることを特徴とする請求項1または請求項2記載の電子部品収納用容器。
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