JP3811423B2 - 電子部品収納用容器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は半導体素子や圧電振動子等の電子部品を気密に封止して収納するための電子部品収納用容器に関し、特に封止材にガラスを用いて封止を行なう電子部品収納用容器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体集積回路素子をはじめとする半導体素子あるいは水晶振動子・弾性表面波素子といった圧電振動子等の電子部品を収容するための電子部品収納用容器は、例えば酸化アルミニウム質焼結体等の電気絶縁材料から成り、その上面の略中央部に電子部品を搭載するための搭載部およびその周辺から下面にかけて導出されたタングステンやモリブデン等の高融点金属から成る複数個のメタライズ配線層を有する絶縁基体と、それに対向する面の略中央部に電子部品を収容するための凹部を有する蓋体とから構成されている。
【0003】
そして、電子部品が例えば圧電振動子の場合には、絶縁基体の搭載部に圧電振動子の一端を導電性エポキシ樹脂等から成る導電性樹脂を介して接着固定するとともに圧電振動子の各電極をメタライズ配線層に電気的に接続し、しかる後、絶縁基体の上面に蓋体を低融点ガラスから成る封止材を介して接合させ、絶縁基体と蓋体とから成る容器内部に圧電振動子を気密に収容することによって最終製品としての電子装置と成る。
【0004】
なお、絶縁基体に蓋体を接合させる封止材としては、例えば酸化鉛56〜66質量%、酸化ホウ素4〜14質量%、酸化珪素1〜6質量%、酸化亜鉛 0.5〜3質量%および酸化ビスマス0.5〜5質量%を含むガラス成分に、フィラーとしてコージェライト系化合物を10〜20質量%添加した鉛系のガラスが使用されている。
【0005】
しかしながら、この従来の電子部品収納用容器においては、絶縁基体と蓋体を形成する酸化アルミニウム質焼結体等のセラミックスおよび絶縁基体と蓋体とを接合させ電子部品を内部に気密に封止するガラス封止材がいずれも電磁波を透過し易く、そのため外部電気回路基板等に他の電子部品とともに実装した場合、隣接する電子部品間に電磁波の相互干渉が起こり電子部品に誤動作を起こさせるという問題点を有していた。
【0006】
また、蓋体を電磁波が透過し難い金属材料で形成した場合、電子部品を内部に気密に封止する鉛系のガラス封止材の誘電率が12以上と大きい値を持っているために容器が大きな静電容量を有するものとなり、電子部品の特性を損ねるという問題点を有していた。
【0007】
さらに、この従来の電子部品収納用容器においては、絶縁基体に蓋体を接合させるガラス封止材の軟化溶融温度が約 400℃程度と高温であること、近時の電子部品は高密度化・高集積化に伴って耐熱性が低下してきたこと等から、絶縁基体と蓋体とを封止材を介して接合し、絶縁基体と蓋体とから成る絶縁容器の内部に電子部品を気密に収容した場合、封止材を溶融させる熱が内部に収容する電子部品に作用して電子部品の特性に劣化を招来させ、電子装置を正常に作動させることができないという問題点を有していた。
【0008】
また、近年地球環境保護運動の高まりの中で、酸化鉛は環境負荷物質に指定されており、例えば酸化鉛を含む電子装置が屋外に廃棄・放置され風雨に曝された場合、環境中に鉛が溶けだし環境を汚染する可能性があり、人体に対して有害である酸化鉛を用いない封止材の開発が要求されるようになってきた。
【0009】
このような問題点を解決するために、銀燐酸系ガラスや錫燐酸系ガラスを主成分とする酸化鉛を含まない低融点ガラスが検討されている。
【0010】
さらに、近時の携帯電子機器の普及に伴い電子部品収納用容器の小型化・薄型化の要求が日増しに高まっており、ガラスを用いて封止を行なう電子部品収納用容器においても小型化・薄型化を図る目的で上面に電子部品を搭載するための凹部を有する絶縁基体と、絶縁基体の上面に接合され、絶縁基体との間の空間に電子部品をガラス封止材で気密に収容する平板状の金属材料から成る蓋体とで構成された電子部品収納用容器が考案されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この電子部品収納用容器では、蓋体の厚さを薄くすることによって電子部品収納用容器の曲げ強度を保持したままその薄型化が実現可能であるが、電子部品収納用容器の小型化による封止幅の減少に伴い、封止部に加わる単位面積当りの応力が大きくなってきており、平板状の金属材料から成る蓋体とガラス封止材との接合強度が不充分なため気密封止が破れるといった気密封止の信頼性上の問題を誘発していた。
【0012】
本発明は上記問題点に鑑み案出されたもので、その目的は、容器内部に収用する電子部品に電磁波が作用するのを有効に防止するとともに、容器の内部に電子部品を気密に封止し、その特性に劣化を招来することがなく、電子部品を長期間にわたり正常かつ安定に作動させることができる電子部品収納用容器を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の電子部品収納用容器は、上面に電子部品を搭載するための凹部を有する絶縁基体と、該絶縁基体の上面にガラス封止材を介して接合され、前記絶縁基体との間の空間に電子部品を気密に収容する平板状の金属蓋体とから成る電子部品収納用容器であって、前記金属蓋体と前記ガラス封止材との間にチタン、ジルコニウム、ハフニウムの一種以上を含む活性金属ろう材層が形成されており、前記ガラス封止材と前記活性金属ろう材層との間に前記活性金属の酸化物層が形成されており、前記ガラス封止材は五酸化燐30〜40質量%、一酸化錫37〜50質量%、酸化ナトリウム5〜15質量%、酸化亜鉛1〜6質量%、酸化アルミニウム1〜4質量%および酸化珪素1〜3質量%を含むガラス成分にフィラーとしてコージェライト系化合物を外添加で16〜45質量%添加したものから成ることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の電子部品収納用容器によれば、金属蓋体は、そのガラス封止材との接合面にチタン、ジルコニウム、ハフニウムの一種以上を含む活性金属ろう材層が形成されていることから、活性金属ろう材層とガラス封止材との接合面に活性金属の緻密な酸化物層が形成され、活性金属ろう材層とガラス封止材とが強固に接合し、単位面積あたりの両者のせん断強度が大きなものとなり、その結果、金属蓋体とガラス封止材とを活性金属ろう材層を介して強固に接合することが可能となり、気密信頼性が極めて高い小型・薄型の電子部品収納容器とすることができる。
【0015】
また、本発明の電子部品収納用容器によれば、容器の蓋体を金属としたことから電磁波による外部ノイズが蓋体を介して容器内部に入り込むのを有効に防止することができ、その結果、隣接する電子部品間での電磁波の相互干渉が起こり難くなり、容器内部の電子部品を長期間にわたり正常、かつ安定に作動させることが可能となる。
【0016】
さらに、本発明の電子部品収納用容器によれば、絶縁基体と蓋体とを五酸化燐30〜40質量%、一酸化錫37〜50質量%、酸化ナトリウム5〜15質量%、酸化亜鉛1〜6質量%、酸化アルミニウム1〜4質量%および酸化珪素1〜3質量%を含むガラス成分にフィラーとしてコージェライト系化合物を外添加で16〜45質量%添加したものから成るガラス封止材で接合したことから、その軟化溶融温度を350℃以下と低温度とすることができ、絶縁基体と金属蓋体とをガラス封止材を介して接合させ、絶縁基体と金属蓋体とから成る容器内部に電子部品を気密に収容する際、ガラス封止材を溶融させる熱が内部に収容する電子部品に作用しても電子部品の特性に劣化を招来することはなく、その結果、電子部品を長期間にわたり正常、かつ安定に作動させることが可能となる。
【0017】
また、五酸化燐30〜40質量%、一酸化錫37〜50質量%、酸化ナトリウム5〜15質量%、酸化亜鉛1〜6質量%、酸化アルミニウム1〜4質量%および酸化珪素1〜3質量%を含むガラス成分にコージェライト系化合物から成るフィラー粉末を外添加で16〜45質量%添加したものから成るガラス封止材は、誘電率が7程度と低いので容器が大きな静電容量を有することはなく、蓋体を金属材料で形成しても電子部品の特性を損ねることはなく、容器内部の電子部品を長期間にわたり正常、かつ安定に作動させることが可能となる。
【0018】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の電子部品収納用容器を添付の図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の電子部品収納用容器の実施の形態の一例を示す断面図であり、この図では、電子部品が水晶振動子等の圧電振動子であり、電子部品収納用容器が圧電振動子収納用容器である場合の例を示している。
図1において、1は絶縁基体、2は金属蓋体であり、主に絶縁基体1と金属蓋体2とで圧電振動子3を収容するための容器4が構成される。
【0019】
絶縁基体1は、上面に凹部1aを有する略長方形で、その凹部1aの底面には圧電振動子3を搭載するための搭載部が設けてあり、この搭載部には、圧電振動子3が導電性樹脂Jを介して接着固定される。
【0020】
絶縁基体1は、酸化アルミニウム質焼結体やムライト質焼結体・窒化アルミニウム質焼結体・窒化珪素質焼結体・炭化珪素質焼結体等の電気絶縁材料から成り、例えば酸化アルミニウム質焼結体から成る場合であれば、酸化アルミニウム・酸化珪素・酸化マグネシウム・酸化カルシウム等の原料粉末に適当な有機バインダ・溶剤・可塑剤・分散剤等を添加混合して泥漿物を作り、この泥漿物を従来周知のドクターブレード法やカレンダーロール法等のシート成形法を採用しシート状に成形してセラミックグリーンシート(セラミック生シート)を得、しかる後、それらセラミックグリーンシートに適当な打ち抜き加工を施すとともにこれを複数枚積層し、約1600℃の高温で焼成することによって製作される。
【0021】
また、絶縁基体1には凹部1aの搭載部近傍から下面にかけて複数個のメタライズ配線層5が被着形成されている。そして、このメタライズ配線層5の搭載部の近傍に位置する部位には圧電振動子3の各電極が導電性エポキシ樹脂等から成る導電性樹脂Jを介して電気的に接続され、また絶縁基体1の下面に導出された部位には外部電気回路の配線導体(図示せず)が半田等のろう材を介して取着される。
【0022】
なお、メタライズ配線層5はタングステン・モリブデン・マンガン等の高融点金属粉末に適当な有機溶剤・溶媒・可塑剤等を添加混合して得た金属ペーストを従来周知のスクリーン印刷法等の厚膜手法を採用して絶縁基体1となるセラミックグリーンシートにあらかじめ印刷塗布しておき、これをセラミックグリーンシートと同時に焼成することによって絶縁基体1の上面から下面にかけて所定パターンに被着形成される。また、メタライズ配線層5は露出する表面にニッケル・金等の良導電性で耐蝕性およびろう材との濡れ性が良好な金属をめっき法により1〜20μmの厚みに被着させておくと、メタライズ配線層5の酸化腐蝕を有効に防止することができるとともにメタライズ配線層5と圧電振動子3との導電性樹脂Jによる接続およびメタライズ配線層5と外部電極とのろう付けを極めて強固となすことができる。
【0023】
また、導電性樹脂Jは、例えば導電性エポキシ樹脂等から成り、絶縁基体1の搭載部に導電性樹脂Jを介して圧電振動子3を載置し、しかる後、導電性樹脂Jに熱硬化処理を施し熱硬化させることによって、圧電振動子3を絶縁基体1に接着固定させる役目をはたす。
【0024】
さらに、絶縁基体1の上面には金属蓋体2がガラス封止材6を介して接合され、これによって絶縁基体1と金属蓋体2とから成る容器4の内部に圧電振動子3が気密に収容される。
【0025】
金属蓋体2は、鉄−ニッケル−コバルト合金や鉄−ニッケル合金等の金属材料から成り、鉄−ニッケル−コバルト合金等のインゴット(塊)に圧延加工法や打ち抜き加工法等の従来周知の金属加工法を施すことによって所定の形状に成形される。
【0026】
また、金属蓋体2は、少なくともガラス封止材6との接合面にチタン、ジルコニウム、ハフニウムの一種以上を含む活性金属ろう材層7が形成されており、活性金属ろう材層7とガラス封止材6とは活性金属ろう材層7の活性金属酸化物層を介して強固に接合している。そして本発明においてはこのことが重要である。
【0027】
本発明の電子部品収納用容器によれば、金属蓋体2はガラス封止材6との接合面にチタン、ジルコニウム、ハフニウムの一種以上を含む活性金属ろう材層7が形成されていることから、活性金属ろう材層7とガラス封止材6との接合面に活性金属の緻密な酸化物層が形成され、活性金属ろう材層7とガラス封止材6とが強固に接合し、単位面積あたりの両者のせん断強度が大きなものとなり、その結果、金属蓋体2ガラス封止材6とを活性金属ろう材層7を介して強固に接合することが可能となり、気密信頼性が極めて高い小型・薄型の電子部品収納容器とすることができる。
【0028】
このような金属蓋体2への活性金属ろう材層7の形成は、以下に述べる方法により行なわれる。まず、金属蓋体2のガラス封止材6との接合面に、チタン、ジルコニウム、ハフニウムの一種以上の活性金属を含有するペースト状のろう材をスクリーン印刷法やカレンダーロール法等により70μm程度の厚さに印刷塗布する。次いで、印刷塗布した活性金属を含有するペースト状のろう材を乾燥した後、還元雰囲気の熱処理炉にて約800℃の温度で60分間加熱することにより、層厚が55μm程度の活性金属ろう材層7が形成される。なお、その際に活性金属ろう材層7の表面に、膜厚が3μm程度の活性金属の水素化物層が形成される。
【0029】
また、金属蓋体2へのガラス封止材6の被着形成は金属蓋体2に被着した活性金属ろう材層7の活性金属の水素化物層上に、銀−隣酸系ガラスと有機樹脂とから成るバインダーを調製したペースト状のガラス材料をろう材と同様にスクリーン印刷法やカレンダーロール法等により印刷塗布し、酸化雰囲気の熱処理炉にて約350℃の温度で10分間程度加熱することにより形成される。なおこの時、活性金属の水素化物層とガラス成分とが反応することにより、活性金属ろう材層7とガラス封止材6との間に活性金属の緻密な酸化物層が形成され、活性金属ろう材層7とガラス封止材6とを強固に接合することが可能となる。
【0030】
このような絶縁基体1と金属蓋体2との接合封止は、ガラス封止材6を上述のように金属蓋体2の少なくともガラス封止材6との接合面に形成した活性金属ろう材層7および絶縁基体1の接合領域に、従来周知のスクリーン印刷法等を採用してあらかじめ被着させておき、これをガラス封止材6の軟化溶融温度および酸化雰囲気で焼成して絶縁基体1および金属蓋体2の接合領域に溶融被着し、次に、絶縁基体1の搭載部に圧電振動子3を導電性樹脂Jを介して接着固定し、さらに、絶縁基体1の接合面に金属蓋体2をその接合面が重なるように載置し、しかる後、ガラス封止材6の軟化溶融温度で焼成することによって、金属蓋体2の自重により行なわれる。
【0031】
また、本発明の電子部品収納用容器においては、絶縁基体1と金属蓋体2とを接合するガラス封止材6を、五酸化燐30〜40質量%、一酸化錫37〜50質量%、酸化ナトリウム5〜15質量%、酸化亜鉛1〜6質量%、酸化アルミニウム1〜4質量%および酸化珪素1〜3質量%を含むガラス成分にフィラーとしてコージェライト系化合物を外添加で16〜45質量%添加したものとしたことから、そのガラス軟化点を350℃以下と低くすることができ、絶縁基体1と金属蓋体2とをガラス封止材6を介して接合させ、絶縁基体1と金属蓋体2とから成る容器4内部に圧電振動子3を気密に収容する際、ガラス封止材6を溶融させる熱が内部に収容する圧電振動子3に作用しても圧電振動子3の特性に劣化を招来させることはなく、その結果、圧電振動子3を長期間にわたり正常、かつ安定に作動させることが可能となる。
【0032】
なお、ガラス封止材6のガラス成分は、五酸化燐の量が、30質量%未満であるとガラスの軟化溶融温度が高くなって、低温での容器4の気密封止が困難となる傾向があり、他方、40質量%を超えるとガラスの耐薬品性が低下し、容器4の気密封止の信頼性が大きく低下してしまう傾向がある。従って、五酸化燐は30〜40質量%の範囲であることが好ましい。
【0033】
また、一酸化錫の量が、37質量%未満であるとガラスの軟化溶融温度が高くなって、低温での容器4の気密封止が困難となる傾向があり、他方、50質量%を超えるとガラス封止材6の耐薬品性が低下し、容器4の気密封止の信頼性が大きく低下してしまう傾向がある。従って、一酸化錫は37〜50質量%の範囲であることが好ましい。
【0034】
また、酸化ナトリウムの量が、5質量%未満であるとガラスの軟化溶融温度が高くなって、低温での容器4の気密封止が困難となる傾向があり、他方、15質量%を超えるとガラスの耐薬品性が低下し、容器4の気密封止の信頼性が大きく低下してしまう傾向がある。従って、酸化ナトリウムは5〜15重量%の範囲であることが好ましい。
【0035】
また、酸化亜鉛が1質量%未満であるとガラスの耐薬品性が低下し、容器4の気密封止の信頼性が大きく低下してしまう傾向があり、他方、6質量%を超えるとガラスの結晶化が進み低温での容器4の気密封止が困難となる傾向にある。従って、酸化亜鉛の量は1〜6質量%の範囲であることが好ましい。
【0036】
また、酸化アルミニウムの量が、1質量%未満であるとガラスの耐湿性が低下し、ガラス封止材6を介して容器4の気密封止の信頼性が低下する傾向にあり、他方、4質量%を超えるとガラスの軟化溶融温度が高くなり、低温での容器4の気密封止が困難となる傾向がある。従って、酸化アルミニウムは1〜4質量%の範囲であることが好ましい。
【0037】
また、酸化珪素の量が、1質量%未満であるとガラス封止材6の熱膨張係数が大きくなって絶縁基体1および蓋体2の熱膨張係数と大きく異なってしまい、容器4の気密封止の信頼性が大きく低下する傾向にある。他方、3質量%を超えるとガラスの軟化溶融温度が高くなり、低温での容器4の気密封止が困難となる傾向がある。従って、酸化珪素は1〜3質量%の範囲であることが好ましい。
【0038】
また、コージェライト系化合物の量が、16質量%未満であるとガラス封止材6の強度が低下し容器4の気密封止の信頼性が大きく低下する傾向があり、他方、45質量%を超えるとガラス封止材6の低温での流動性が低下し、容器4の気密封止の信頼性が低下する傾向がある。従って、コージェライト系化合物は16〜45質量%の範囲であることが好ましい。
【0039】
なお、ガラス封止材6はガラス成分とフィラーとから成り、耐湿性に優れていることから大気中に含まれる水分がガラス封止材6を介して容器4の内部に浸入しようとしてもその水分の浸入は有効に阻止され、その結果、容器4の内部に収容する圧電振動子3の表面電極が酸化腐蝕されることは殆どなく、圧電振動子3を正常に作動させることも可能となる。
【0040】
また、本発明においては、ガラス封止材6が酸化鉛を含有していないことから、地球環境に負荷を与えることもない。
【0041】
さらに、本発明の電子部品収納用容器によれば、絶縁基体1と金属蓋体2とをガラス封止材6で接合したことから、内部に収用される圧電振動子3は、電磁波を透過し難い金属蓋体2で覆われることとなり、その結果、電磁波による外部ノイズが金属蓋体2を介して入り込むのを有効に防止することができ、容器4内部の圧電振動子3を長期間にわたり正常、かつ安定に作動させることが可能となる。
【0042】
また、本発明の電子部品収納用容器によれば、絶縁基体1と金属蓋体2とを誘電率の低いガラス封止材6で接合したことから、容器4が大きな静電容量を有することはなく、蓋体を金属材料で形成しても圧電振動子3の特性を損ねることはなく、容器内部の圧電振動子3を長期間にわたり正常、かつ安定に作動させることが可能となる。
【0043】
かくして本発明の電子部品収納用容器によれば、絶縁基体1の搭載部に圧電振動子3の一端を導電性エポキシ樹脂等から成る導電性樹脂Jを介して接着固定するとともに圧電振動子3の各電極をメタライズ配線層5に電気的に接続させ、しかる後、絶縁基体1の搭載部を覆うように金属蓋体2をガラス封止材6を介して接合させ、絶縁基体1と蓋体2とから成る容器4の内部に圧電振動子3を気密に収容することによって最終製品としての圧電振動装置となる。
【0044】
【実施例】
効果の確認を行なうため、次の実験を行なった。なお、ここでは、主成分の五酸化燐、一酸化錫および外添加のフィラー添加量について決定した実験例を示す。
まず、各構成要素の質量%を変化させてガラスを作製した。そして、各ガラスを用いた容器の気密信頼性を評価するために、熱衝撃試験1000サイクル後の封止容器のヘリウムガスリークテストを実施した。また、金属蓋体の封着強度を比較するために、容器と金属蓋体とのせん断強度を測定した。なお、評価用容器としては、絶縁基体の縦方向の寸法が5.0mm、横方向の寸法が3.2mm、高さが0.7mmであり、金属蓋体との接合面の幅が0.5mmの容器を用いた。
【0045】
(実験1)
五酸化燐を25〜45質量%の間で変化させ、その他の構成要素を加えて合計が100質量%となるように調合(小数点2桁以下を四捨五入)した。この時の実験結果を表1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
実験結果より、五酸化燐については、30〜40質量%の範囲で良好な気密性信頼性を示すとともに50N(ニュートン)以上の高いせん断強度が得られることがわかった。
【0048】
次に、一酸化錫および五酸化燐について、次の実験を行った。
(実験2)五酸化燐の含有量を30〜40質量%の範囲とし、一酸化錫の含有量を30〜55質量%の間で変化させ、その他の構成要素を加えて合計が100質量%となるように調合(小数点2桁以下を四捨五入)した。結果を表2に示す。
【0049】
【表2】
【0050】
実験結果より、一酸化錫については、37〜50質量%の範囲で良好な気密性信頼性を示すとともに50N(ニュートン)以上の高いせん断強度が得られることがわかった。
【0051】
また、微量元素においても同種の実験を行い、ガラス封止材が五酸化燐30〜40質量%、一酸化錫37〜50質量%、酸化ナトリウム5〜15質量%、酸化亜鉛1〜6質量%、酸化アルミニウム1〜4質量%および酸化珪素1〜3質量%を含むガラスの場合において、良好な気密性信頼性を示すとともに50N(ニュートン)以上の高いせん断強度が得られることがわかり、本発明の効果を確認することができた。
【0052】
(実験3)さらに、ガラス組成を一定にし、フィラー添加量を変化させての同様の実験を行なった。評価結果を表3に示す。
【0053】
【表3】
【0054】
フィラーとしては、コージェライト系化合物を外添加で16〜45質量%添加した場合において良好な気密性信頼性が得られるとともに50N(ニュートン)以上の高いせん断強度が得られることがわかった。
【0055】
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能である。例えば上述の例では圧電振動子を収容するための電子部品収納用容器を示したが、本発明は半導体素子を収容するための半導体素子収容用容器にも適用し得るものでる。
【0056】
【発明の効果】
本発明の電子部品収納用容器によれば、金属蓋体は、そのガラス封止材との接合面にチタン、ジルコニウム、ハフニウムの一種以上を含む活性金属ろう材層が形成されていることから、活性金属ろう材層とガラス封止材との接合面に活性金属の緻密な酸化物層が形成され、活性金属ろう材層とガラス封止材とが強固に接合し、単位面積あたりの両者のせん断強度が大きなものとなり、その結果、金属蓋体とガラス封止材とを活性金属ろう材層を介して強固に接合することが可能となり、気密信頼性が極めて高い小型・薄型の電子部品収納容器とすることができる。
【0057】
また、本発明の電子部品収納用容器によれば、容器の蓋体を金属としたことから電磁波による外部ノイズが蓋体を介して容器内部に入り込むのを有効に防止することができ、その結果、隣接する電子部品間での電磁波の相互干渉が起こり難くなり、容器内部の電子部品を長期間にわたり正常、かつ安定に作動させることが可能となる。
【0058】
さらに、本発明の電子部品収納用容器によれば、絶縁基体と蓋体とを五酸化燐30〜40質量%、一酸化錫37〜50質量%、酸化ナトリウム5〜15質量%、酸化亜鉛1〜6質量%、酸化アルミニウム1〜4質量%および酸化珪素1〜3質量%を含むガラス成分にフィラーとしてコージェライト系化合物を外添加で16〜45質量%添加したものから成るガラス封止材で接合したことから、その軟化溶融温度を350℃以下と低温度とすることができ、絶縁基体と金属蓋体とをガラス封止材を介して接合させ、絶縁基体と金属蓋体とから成る容器内部に電子部品を気密に収容する際、ガラス封止材を溶融させる熱が内部に収容する電子部品に作用しても電子部品の特性に劣化を招来することはなく、その結果、電子部品を長期間にわたり正常、かつ安定に作動させることが可能となる。
【0059】
また、五酸化燐30〜40質量%、一酸化錫37〜50質量%、酸化ナトリウム5〜15質量%、酸化亜鉛1〜6質量%、酸化アルミニウム1〜4質量%および酸化珪素1〜3質量%を含むガラス成分にコージェライト系化合物から成るフィラー粉末を外添加で16〜45質量%添加したものから成るガラス封止材は、誘電率が7程度と低いので容器が大きな静電容量を有することはなく、蓋体を金属材料で形成しても電子部品の特性を損ねることはなく、容器内部の電子部品を長期間にわたり正常、かつ安定に作動させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子部品収納用容器の実施の形態の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1・・・・・・・・・・絶縁基体
1a・・・・・・・・・凹部
2・・・・・・・・・・金属蓋体
3・・・・・・・・・・電子部品(圧電振動子)
4・・・・・・・・・・容器
5・・・・・・・・・・メタライズ配線層
6・・・・・・・・・・ガラス封止材
7・・・・・・・・・・活性金属ろう材層
Claims (1)
- 上面に電子部品を搭載するための凹部を有する絶縁基体と、該絶縁基体の上面にガラス封止材を介して接合され、前記絶縁基体との間の空間に電子部品を気密に収容する平板状の金属蓋体とから成る電子部品収納用容器であって、前記金属蓋体と前記ガラス封止材との間にチタン、ジルコニウム、ハフニウムの一種以上を含む活性金属ろう材層が形成されており、前記ガラス封止材と前記活性金属ろう材層との間に前記活性金属の酸化物層が形成されており、前記ガラス封止材は五酸化燐30〜40質量%、一酸化錫37〜50質量%、酸化ナトリウム5〜15質量%、酸化亜鉛1〜6質量%、酸化アルミニウム1〜4質量%および酸化珪素1〜3質量%を含むガラス成分にフィラーとしてコージェライト系化合物を外添加で16〜45質量%添加したものから成ることを特徴とする電子部品収納用容器。
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