JP3792612B2 - 圧電振動子用容器および圧電振動子 - Google Patents

圧電振動子用容器および圧電振動子 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は圧電振動子片を収容するための圧電振動子用容器に関し、特に封止材にガラスを用いて封止を行なう圧電振動子用容器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、圧電振動子は、圧電振動子用容器内に圧電振動子片を気密に収容することによって製作されている。
このような圧電振動子片を気密に収容する圧電振動子用容器は、例えば酸化アルミニウム質焼結体等のセラミックスから成り、その上面の略中央部に圧電振動子片を搭載するための凹部を有する絶縁基体と、同じく酸化アルミニウム質焼結体等のセラミックスから成り、絶縁基体の上面に低融点ガラス等の封止材を介して接合されることにより絶縁基体との間の空間に圧電振動子片を収容する蓋体とから構成されている。
【0003】
また、容器内部に収容される圧電振動子片が、例えば周波数特性上1.3×10-2Pa程度の真空封止を必要とする圧電振動子片の場合、絶縁基体には、絶縁基体と蓋体との間の空間を真空に排気するための貫通孔がその上面から下面にかけて形成されている。そして、これら絶縁基体と蓋体とから成る容器の内部に圧電振動子片を導電性の接着材で接着固定し真空中で加熱処理した後、絶縁基体に形成された貫通孔を介して圧電振動子片を収容する空間を真空に排気し、しかる後、この貫通孔内に金−錫合金等のろう材から成る封止部材を充填してこの貫通孔を封止することにより、圧電振動子用容器の内部に圧電振動子片が気密に収容された圧電振動子となる。
【0004】
なお、絶縁基体と蓋体とを封止する封止材は、通常、圧電振動子片を絶縁基体に導電性の接着材で接着固定する前に、あらかじめ絶縁基体に被着されている。また、このような封止材としては、例えば酸化鉛50〜65重量%、酸化硼素2〜10重量%、酸化亜鉛1〜6重量%、フッ化鉛10〜30重量%、酸化ビスマス10〜20重量%を含むガラス成分に、フィラーとしてチタン酸鉛化合物を26〜45重量%添加した鉛系のガラスが使用されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この従来の圧電振動子は、絶縁基体に蓋体を接合させる封止材として、酸化鉛50〜65重量%、酸化硼素2〜10重量%、酸化亜鉛1〜6重量%、フッ化鉛10〜30重量%、酸化ビスマス10〜20重量%を含むガラス成分に、フィラーとしてチタン酸鉛化合物を26〜45重量%添加した鉛系ガラスが使用されていることから、圧電振動子片を導電性の接着材で接着固定した後に真空中で加熱処理する際に、あらかじめ絶縁基体に被着させた封止材中のフッ素成分が揮発し封止材のガラスが結晶化してしまい、絶縁基体と蓋体との強固な接合が困難となり、真空封止した容器内部の真空度の低下を招き、圧電振動子片のQ値を低下させたりその表面電極を酸化腐食させてしまうという問題点を有していた。
【0006】
また、今般携帯電話等の移動体通信機器の小型・薄型化にともない圧電振動子に関しても小型・薄型化の更なる要求があり、従来の絶縁基体の上面から下面にかけて形成された貫通孔で容器内の空間を真空に排気する容器構造では、実装後の機械的強度が低下し移動体通信機器に加わる機械的応力や衝撃力に耐えることができず、絶縁基体もしくは封止材にクラックを招来し、真空封止した容器内部の真空度の低下を招き、圧電振動子片のQ値を低下させたりその表面電極を酸化腐食させてしまうという可能性も有していた。
【0007】
さらに、近年地球環境保護運動の高まりの中で、酸化鉛は環境負荷物質に指定されており、例えば酸化鉛を含む電子装置が屋外に廃棄・放置され風雨に曝された場合、環境中に鉛が溶けだし環境を汚染する可能性があり、人体に対して有害である酸化鉛を用いない封止材の開発が要求されるようになってきた。
【0008】
本発明は上記問題点に鑑み案出されたもので、その目的は、絶縁基体と蓋体とから成る容器の内部に圧電振動子片を真空中で気密に封止し、その特性に劣化を招来することがなく、圧電振動子を長期間にわたり正常かつ安定に作動させることができる圧電振動子用容器を提供することにある。
【0009】
本発明の圧電振動子用容器は、上面に圧電振動子片を搭載するための凹部を有する絶縁基体と、この絶縁基体の上面に凹部を覆うように封止材を介して接合され、絶縁基体との間の空間に圧電振動子片を収容する、上面から下面にかけて貫通孔が設けられた略平板状の蓋体とから成る圧電振動子用容器であって、封止材が五酸化燐30〜40質量%、一酸化錫37〜50質量%、酸化ナトリウム5〜15質量%、酸化亜鉛1〜6質量%、酸化アルミニウム1〜4質量%および酸化珪素1〜3質量%を含むガラス成分にフィラーとしてコージェライト系化合物を外添加で16〜45質量%添加したものから成り、貫通孔は、蓋体の上面側の第1の孔と、この第1の孔よりも開口が小さな下面側の第2の孔とから成るとともに、第1の孔と第2の孔との間に形成された段部の表面に封止用金属部材を取着するための金属層が被着されていることを特徴とするものである。
また、本発明の圧電振動子は、上記本発明の圧電振動子用容器に圧電振動子片を収容し、金属層に封止用金属部材を取着して第2の孔を塞いだことを特徴とするものである。
【0010】
本発明の圧電振動子用容器によれば、絶縁基体と蓋体とを封止する封止材が五酸化燐30〜40質量%、一酸化錫37〜50質量%、酸化ナトリウム5〜15質量%、酸化亜鉛1〜6質量%、酸化アルミニウム1〜4質量%および酸化珪素1〜3質量%を含むガラス成分にフィラーとしてコージェライト系化合物を外添加で16〜45質量%添加したものから成ることから、圧電振動子の特性を向上させるために圧電振動子片を絶縁基体に導電性の接着材で接着固定した後に真空中で加熱処理しても、絶縁基体側にあらかじめ被着させた封止材のガラス成分が揮発してガラスの結晶化が進むことはなく、絶縁基体と蓋体との極めて強固な封着が可能となり、その結果、容器内部の圧電振動子片にそのQ値を低下させたりその表面電極を酸化腐食させてしまうという悪影響を与えるような容器内部の真空度の低下を抑えることが可能になり、圧電振動子をその特性に劣化招来することなく気密に封止し、長期間にわたり安定に作動させることが可能となる。
【0011】
また、本発明の圧電振動子用容器によれば、上面に圧電振動子片を搭載する凹部を有する絶縁基体と、絶縁基体の上面に凹部を覆うように封止材を介して接合され、絶縁基体との間の空間に圧電振動子片を収容するとともに上面から下面にかけて貫通孔が設けられた略平板状の蓋体とから成ることから、携帯電話等の移動体通信機器の小型・薄型化にともない圧電振動子を薄型化したとしても、ボード実装後に応力の集中する絶縁基体側に真空排気用の貫通孔が存在しないため、容器内部の圧電振動子片にそのQ値を低下させたりその表面電極を酸化腐食させてしまうという悪影響を与えるような容器内部の真空度の低下を抑えることが可能になり、その結果、圧電振動子をその特性に劣化招来することなく気密に封止し、長期間にわたり安定に作動させることが可能となる。
【0012】
さらに、本発明の圧電振動子用容器によれば、絶縁基体と蓋体とを接合させる封止材は、酸化鉛を含まないガラスで構成したことから、人体に害を与えたり地球環境に負荷を与えることはない。
【0013】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の圧電振動子用容器を添付の図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の圧電振動子用容器およびこれを用いた圧電振動子の実施の形態の一例を示す断面図であり、この図において1は絶縁基体、2は蓋体、3は圧電振動子片である。そして、絶縁基体1と蓋体2とから成る容器内部に圧電振動子片3を気密に封止することによって圧電振動子が形成される。
【0014】
圧電振動子用容器を構成する絶縁基体1は、酸化アルミニウム質焼結体や窒化アルミニウム質焼結体・炭化珪素質焼結体・窒化珪素質焼結体・ムライト質焼結体・ガラスセラミックス焼結体等の電気絶縁材料から成り、その上面の略中央部に圧電振動子片3を搭載するための凹部1aが形成された略四角平板状であり、凹部1aの底面には圧電振動子片3が接着材5を介して接着固定される。
【0015】
なお、絶縁基体1は、その幅が2〜5mm、長さが5〜10mm、厚みが0.3〜0.6mmであり、凹部1aは、その幅が1〜4mm、長さが4〜9mm、深さが0.2〜0.5mmである。そして圧電振動子片3の小型・薄型化の要求に伴い、その小型化・薄型化がますます進んでいる。
【0016】
このような絶縁基体1は、例えば絶縁基体1が酸化アルミニウム質焼結体から成る場合であれば、酸化アルミニウム・酸化珪素・酸化マグネシウム・酸化カルシウム等の原料粉末に適当な有機バインダ・溶剤・可塑剤・分散剤等を添加混合して泥漿物を作り、この泥漿物を従来周知のドクターブレード法やカレンダーロール法等のシート成形法を採用しシート状に成形してセラミックグリーンシート(セラミック生シート)を得、しかる後、それらセラミックグリーンシートに適当な打ち抜き加工を施すとともにこれを複数枚積層し、約1600℃の高温で焼成することによって製作される。
【0017】
また、絶縁基体1の凹部1aの底面から下面にかけて複数個のメタライズ配線層4が被着形成されている。このメタライズ配線層4の凹部1aの底面に位置する部位には圧電振動子片3の各電極が接着材5を介して電気的に接続され、また絶縁基体1の下面に導出された部位には外部電気回路の配線導体(図示せず)が金−錫合金等のロウ材を介して取着される。
【0018】
メタライズ配線層4はタングステンやモリブデン・マンガン等の高融点金属粉末に適当な有機溶剤・溶媒・可塑剤等を添加混合して得た金属ペーストを従来周知のスクリーン印刷法等の厚膜手法を採用して絶縁基体1となるセラミックグリーンシートにあらかじめ印刷塗布しておき、これをセラミックグリーンシートと同時に焼成することによって絶縁基体1の凹部1aの底面から下面にかけて所定パターンに被着形成される。
【0019】
なお、メタライズ配線層4は、その露出する表面にニッケル・金等の良導電性で耐蝕性およびろう材との濡れ性が良好な金属をめっき法により1〜20μmの厚みに被着させておくと、メタライズ配線層4の酸化腐蝕を有効に防止することができるとともにメタライズ配線層4と圧電振動子片3との接着材5を介しての接続およびメタライズ配線層4と外部電極とのろう付けを極めて強固となすことができる。
【0020】
接着材5は、例えば銀−ポリイミド樹脂等から成り、絶縁基体1の凹部1aの底面に露出するメタライズ配線層4の一端に接着材5を介して圧電振動子片3を載置させ、しかる後、接着材5を約300℃の温度に加熱して熱硬化処理を施し、熱硬化させることによって圧電振動子片3を絶縁基体1に接着固定させる。この際、接着材5を真空中で熱処理することによって、樹脂性の接着材5の耐熱性を向上させることができ、圧電振動子が外部回路基板への実装時に受ける熱履歴による圧電振動子片3の周波数特性の変動を極小に抑えることが可能となる。
【0021】
また、絶縁基体1には、蓋体2が封止材10を介して接合される。蓋体2は、容器内部に圧電振動子片3を気密に収容する機能を有し、例えば酸化アルミニウム質焼結体等のセラミックスから形成されている。そして、蓋体2にはその略中央部に底面から下面にかけて貫通孔6が形成されている。
【0022】
貫通孔6は、絶縁基体1と蓋体2とから成る容器の内部に圧電振動子片3を収容した後、この圧電振動子片3を収容する空間を真空に排気するための排気孔として機能する。この貫通孔6は、蓋体2の上面側の第1の孔6aと、この第1の孔6aよりも開口が小さな下面側の第2の孔6bとから成るとともに、第1の孔6aの第2の孔6b側の開口の周辺、具体的には第1の孔6aと第2の孔6bとの間に形成された段部の表面に後述する封止用金属部材7を取着するための金属層8が被着されている。
【0023】
なお、第1の孔6aおよび第2の孔6bは、好ましくは開口が円形の孔であり、第1の孔6aが0.5mm〜0.9mmの直径を、第2の孔6bが第1の孔6aの直径より0.1mm〜0.4mm小さな直径を有している。ただし、第1の孔6aおよび第2の孔6bは、必ずしも開口が円形である必要はなく、開口が三角形や四角形あるいはその他の形状であってもよい。また、第1の孔6aの第2の孔6b側の開口部の周辺に被着させた金属層8は、蓋体2の上面に達しない範囲であれば、その一部が第1の孔6a内に多少入り込んでいても差し支えない。
【0024】
そして、貫通孔6の金属層8には、絶縁基体1と蓋体2との間の空間に圧電振動子片3を収容し、この圧電振動子片3を収容する空間を真空に排気した後に、封止用金属部材7がろう材9を介して取着される。これにより貫通孔6が封止され、圧電振動子用容器が気密に封止される。
【0025】
なお、貫通孔6を封止するための封止用金属部材7が取着される金属層8は、タングシテンやモリブデン・銀・銅等の金属粉末を用いたメタライズ金属層から成り、ろう材9との塗れ性を良好なものとするためにその表面に必要に応じて図示しないニッケルや金等から成るめっき金属層を被着させている。
【0026】
そして、金属層8は貫通孔6内で第1の孔6aの第2の孔6b側の開口の周辺に被着されていることから、封止用金属部材7を取着するろう材9は金属層8が被着された第1の孔6aの第2の孔6bの開口の周辺にのみ塗れ広がるので、この金属層8に封止用金属部材7をろう材9を介して取着することによって貫通孔6を封止する際にろう材9が蓋体2の上下面に達するようなことはない。
【0027】
また、溶融したろう材9の表面張力により封止用金属部材7は第1の孔6aの第2の孔6bの開口の周辺に保持されるので、ろう材9や封止用金属部材7が蓋体2の下面から突出して圧電振動子片3の振動を妨げたり、あるいは蓋体2の上面から突出して、圧電振動子を外部回路基板に実装する際にその実装を妨げたりすることはない。
【0028】
なお、貫通孔6は、蓋体2となるセラミックグリーンシートに貫通孔6となる孔をあらかじめ所定の大きさ・形状に穿孔しておくことによって、蓋体2の上面から下面にかけて、上面側の第1の孔6aとこの第1の孔6aの開口より小さな下面側の第2の孔6bとから成るように形成される。
【0029】
また、金属層8は、タングステン等の金属粉末に適当な有機バインダおよび溶剤等を添加混合して得た金属ペーストを絶縁基体1となるセラミックグリーンシートとともに焼成することによって、蓋体2に形成された貫通孔6において第1の孔6aの第2の孔6b側の開口の周辺、具体的には第1の孔6aと第2の孔6bとの間に形成された段部の上面に被着される。
【0030】
貫通孔6を封止する封止用金属部材7は、例えば銅等の金属から成る球体であり、また、封止用金属部材7を金属層8に取着しているろう材9は、例えば金−錫合金等の合金から成るろう材である。
【0031】
そして、貫通孔6の金属層8には、絶縁基体1と蓋体2との間の空間に圧電振動子片3を収容し、この圧電振動子片3を収容する空間を真空に排気した後に、封止用金属部材7がろう材9を介して取着される。これにより貫通孔6が封止され、圧電振動子用容器が気密に封止される。
【0032】
蓋体2の絶縁基体1への封止材10を介した接合は、例えば、まず絶縁基体1の上面外周部に封止材10をあらかじめ被着させておき、次に圧電振動子片3を導電性の接着材5で絶縁基体1に接着固定した後に圧電振動子を接着する導電性の接着材を真空中で加熱し、さらにこの封止材10を間に挟んで絶縁基体1の上面に蓋体2を載置し、最後にこの封止材10を加熱して軟化溶融させた後、冷却固化することによって行われる。
【0033】
なお、絶縁基体1の上面に外周部に封止材10あらかじめ被着させるには、絶縁基体1の上面外周部に封止材10となるガラスペーストをスクリーン印刷法で印刷塗布するとともに、このガラスペーストを加熱し軟化溶融させた後、冷却固化させることにより絶縁基体1の上面に封止材10を被着させる方法が採用される。
【0034】
また、本発明の圧電振動子用容器では、封止材10は五酸化燐30〜40質量%、一酸化錫37〜50質量%、酸化ナトリウム5〜15質量%、酸化亜鉛1〜6質量%、酸化アルミニウム1〜4質量%および酸化珪素1〜3質量%を含むガラス成分にフィラーとしてコージェライト系化合物を外添加で16〜45質量%添加したものである。そして、本発明の圧電振動子用容器においては、このことが重要である。
【0035】
本発明の圧電振動子用容器によれば、封止材10を五酸化燐30〜40質量%、一酸化錫37〜50質量%、酸化ナトリウム5〜15質量%、酸化亜鉛1〜6質量%、酸化アルミニウム1〜4質量%および酸化珪素1〜3質量%を含むガラス成分にフィラーとしてコージェライト系化合物を外添加で16〜45質量%添加したものとしたことから、封止材10がフッ素成分を含んでおらず、真空中で軟化点以上の温度に保持した場合でもガラス成分が揮発することはなく、圧電振動子の周波数特性を向上させるために、圧電振動子片3を導電性の接着材5で接着固定した後に真空中で加熱処理しても、絶縁基体1にあらかじめ被着させた封止ガラス中の成分が揮発することはなく、真空加熱による封止ガラスの結晶化は進行せず、蓋体2との極めて強固な封着が可能となり、容器内部の圧電振動子片3にそのQ値を低下させたりその表面電極を酸化腐食させてしまうという悪影響を与えるような容器内部の真空度の低下を抑えることが可能になる。その結果、圧電振動子片3をその特性に劣化招来することなく気密に封止し、長期間にわたり安定に作動させることが可能となる。
【0036】
なお、封止材10のガラス成分は、五酸化燐の量が、30質量%未満であるとガラスの軟化溶融温度が高くなって、低温での容器の気密封止が困難となる傾向があり、他方、40質量%を超えるとガラスの耐薬品性が低下し、容器の気密封止の信頼性が大きく低下してしまう傾向がある。従って、五酸化燐の量は、30〜40質量%の範囲であることが好ましい。
【0037】
また、一酸化錫の量が、37質量%未満であるとガラスの軟化溶融温度が高くなって、低温での容器の気密封止が困難となる傾向があり、他方、50質量%を超えるとガラスの耐薬品性が低下し、容器の気密封止の信頼性が大きく低下してしまう傾向がある。従って、一酸化錫の量は、37〜50質量%の範囲であることが好ましい。
【0038】
また、酸化ナトリウムの量が、5質量%未満であるとガラスの軟化溶融温度が高くなって、低温での容器の気密封止が困難となる傾向があり、他方、15質量%を超えるとガラスの耐薬品性が低下し、容器の気密封止の信頼性が大きく低下してしまう傾向がある。従って、酸化ナトリウムの量は、5〜15重量%の範囲であることが好ましい。
【0039】
また、酸化亜鉛が1質量%未満であるとガラスの耐薬品性が低下し、容器の気密封止の信頼性が大きく低下してしまう傾向があり、他方、6質量%を超えるとガラスの結晶化が進み低温での容器の気密封止が困難となる傾向にある。従って、酸化亜鉛の量は、1〜6質量%の範囲であることが好ましい。
【0040】
また、酸化アルミニウムの量が、1質量%未満であるとガラスの耐湿性が低下し、封止材10を介して容器の気密封止の信頼性が低下する傾向にあり、他方、4質量%を超えるとガラスの軟化溶融温度が高くなり、低温での容器の気密封止が困難となる傾向がある。従って、酸化アルミニウムの量は、1〜4質量%の範囲であることが好ましい。
【0041】
また、酸化珪素の量が、1質量%未満であるとガラスの熱膨張係数が大きくなって絶縁基体1および蓋体2の熱膨張係数と大きく異なってしまい、容器の気密封止の信頼性が大きく低下する傾向にあり、他方、3質量%を超えるとガラスの軟化溶融温度が高くなり、低温での容器の気密封止が困難となる傾向がある。従って、酸化珪素の量は、1〜3質量%の範囲であることが好ましい。
【0042】
また、コージェライト系化合物の量が、16質量%未満であるとガラス封止材10の強度が低下し容器の気密封止の信頼性が大きく低下する傾向があり、他方、45質量%を超えると封止材10の低温での流動性が低下し、容器の気密封止の信頼性が低下する傾向がある。従って、コージェライト系化合物の量は、16〜45質量%の範囲であることが好ましい。
【0043】
なお、本発明の圧電振動子用容器において、ろう材9および封止材10はいずれも酸化鉛を含有していないことから、人体に害を与えたり地球環境に負荷を与えることはない。
【0044】
かくして本発明の圧電振動子用容器によれば、絶縁基体1のメタライズ配線層4の搭載部1aに位置する部位に圧電振動子片3の一端を銀−ポリイミド等から成る接着材5を介して接着固定するとともに圧電振動子片3の各電極をメタライズ配線層4に電気的に接続させ、しかる後、絶縁基体1の搭載部1aを覆うように蓋体2を封止材10を介して接合させることにより、絶縁基体1と蓋体2との間の空間に圧電振動子片3が収容される。また、圧電振動子片3が収容された絶縁基体1と蓋体2との間の空間は、空間内部のガスが圧電振動子片3の振動を妨げないようにするために真空に排気されており、それとともに絶縁基体1に形成された貫通孔6内の金属層8に封止用金属部材7をろう材9を介して取着することにより気密に封止される。このとき、圧電振動子は圧電振動子片3を収容している容器内の空間が真空に排気されていることから高いQを得ることができる。
【0045】
【実施例】
効果の確認を行なうために、次の実験を行なった。なお、ここでは、主成分の五酸化燐、一酸化錫および外添加のフィラー添加量について決定した実験例を示す。
まず、各構成要素の質量%を変化させてガラスを作製した。そして、各ガラスを用いた容器の気密信頼性を評価するために、熱衝撃試験1000サイクル後の封止容器のヘリウムガスリークテストを実施した。また、蓋体の封着強度を比較するために、容器と金体とのせん断強度を測定した。なお、評価用容器としては、絶縁基体の縦方向の寸法が5.0mm、横方向の寸法が3.2mm、高さが0.7mmであり、蓋体との接合面の幅が0.5mmの容器を用いた。
【0046】
(実験1)
五酸化燐を25〜45質量%の間で変化させ、その他の構成要素を加えて合計が100質量%となるように調合(小数点2桁以下を四捨五入)した。この時の実験結果を表1に示す。
【0047】
【表1】
Figure 0003792612
【0048】
実験結果より、五酸化燐については、30〜40質量%の範囲で良好な気密性信頼性を示すとともに50N(ニュートン)以上の高いせん断強度が得られることがわかった。
【0049】
次に、一酸化錫および五酸化燐について、次の実験を行なった。
(実験2)
五酸化燐の含有量を30〜40質量%の範囲とし、一酸化錫の含有量を30〜55質量%の間で変化させ、その他の構成要素を加えて合計が100質量%となるように調合(小数点2桁以下を四捨五入)した。結果を表2に示す。
【0050】
【表2】
Figure 0003792612
【0051】
実験結果より、一酸化錫については、37〜50質量%の範囲で良好な気密性信頼性を示すとともに50N(ニュートン)以上の高いせん断強度が得られることがわかった。
【0052】
また、微量元素においても同種の実験を行い、ガラス封止材が五酸化燐30〜40質量%、一酸化錫37〜50質量%、酸化ナトリウム5〜15質量%、酸化亜鉛1〜6質量%、酸化アルミニウム1〜4質量%および酸化珪素1〜3質量%を含むガラスの場合において、良好な気密性信頼性を示すとともに50N(ニュートン)以上の高いせん断強度が得られることがわかり、本発明の効果を確認することができた。
【0053】
(実験3)
さらに、ガラス組成を一定にし、フィラー添加量を変化させての同様の実験を行なった。評価結果を表3に示す。
【0054】
【表3】
Figure 0003792612
【0055】
フィラーとしては、コージェライト系化合物を外添加で16〜45質量%添加した場合において良好な気密性信頼性が得られるとともに50N(ニュートン)以上の高いせん断強度が得られることがわかった。
【0056】
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更や改良を施すことは何ら差し支えない。貫通孔6は本例では2段としているが1段でもよい。
【0057】
【発明の効果】
本発明の圧電振動子用容器によれば、絶縁基体と蓋体とを封止する封止材が五酸化燐30〜40質量%、一酸化錫37〜50質量%、酸化ナトリウム5〜15質量%、酸化亜鉛1〜6質量%、酸化アルミニウム1〜4質量%および酸化珪素1〜3質量%を含むガラス成分にフィラーとしてコージェライト系化合物を外添加で16〜45質量%添加したものから成ることから、圧電振動子の特性を向上させるために圧電振動子片を絶縁基体に導電性の接着材で接着固定した後に真空中で加熱処理しても、絶縁基体側にあらかじめ被着させた封止材のガラス成分が揮発してガラスの結晶化が進むことはなく、絶縁基体と蓋体との極めて強固な封着が可能となり、その結果、容器内部の圧電振動子片にそのQ値を低下させたりその表面電極を酸化腐食させてしまうという悪影響を与えるような容器内部の真空度の低下を抑えることが可能になり、圧電振動子をその特性に劣化招来することなく気密に封止し、長期間にわたり安定に作動させることが可能となる。
【0058】
また、本発明の圧電振動子用容器によれば、上面に圧電振動子片を搭載する凹部を有する絶縁基体と、絶縁基体の上面に凹部を覆うように封止材を介して接合され、絶縁基体との間の空間に圧電振動子片を収容するとともに上面から下面にかけて貫通孔が設けられた略平板状の蓋体とから成ることから、携帯電話等の移動体通信機器の小型・薄型化にともない圧電振動子を薄型化したとしても、ボード実装後に応力の集中する絶縁基体側に真空排気用の貫通孔が存在しないため、容器内部の圧電振動子片にそのQ値を低下させたりその表面電極を酸化腐食させてしまうという悪影響を与えるような容器内部の真空度の低下を抑えることが可能になり、その結果、圧電振動子をその特性に劣化招来することなく気密に封止し、長期間にわたり安定に作動させることが可能となる。
【0059】
さらに、本発明の圧電振動子用容器によれば、絶縁基体と蓋体とを接合させる封止材は、酸化鉛を含まないガラスで構成したことから、人体に害を与えたり地球環境に負荷を与えることはない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の圧電振動子用容器の実施の形態の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1・・・・・・絶縁基体
1a・・・・・凹部
2・・・・・・蓋体
3・・・・・・圧電振動子片
4・・・・・・メタライズ配線層
6・・・・・・貫通孔
10・・・・・封止材

Claims (2)

  1. 上面に圧電振動子片を搭載するための凹部を有する絶縁基体と、該絶縁基体の上面に前記凹部を覆うように封止材を介して接合され、前記絶縁基体との間の空間に前記圧電振動子片を収容する、上面から下面にかけて貫通孔が設けられた略平板状の蓋体とから成る圧電振動子用容器であって、前記封止材は五酸化燐30〜40質量%、一酸化錫37〜50質量%、酸化ナトリウム5〜15質量%、酸化亜鉛1〜6質量%、酸化アルミニウム1〜4質量%および酸化珪素1〜3質量%を含むガラス成分にフィラーとしてコージェライト系化合物を外添加で16〜45質量%添加したものから成り、前記貫通孔は、前記蓋体の上面側の第1の孔と、この第1の孔よりも開口が小さな下面側の第2の孔とから成るとともに、第1の孔と第2の孔との間に形成された段部の表面に封止用金属部材を取着するための金属層が被着されていることを特徴とする圧電振動子用容器。
  2. 請求項1記載の圧電振動子用容器に圧電振動子片を収容し、前記金属層に封止用金属部材を取着して前記第2の孔を塞いだことを特徴とする圧電振動子。
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