JP4349079B2 - 船舶乗降装置 - Google Patents

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Description

本発明は、岸壁上屋と岸壁に停泊している船舶との間を連絡する船舶乗降装置に関するものである。
岸壁上屋から岸壁に停泊している船舶に乗降するために、従来から、起伏可能な階段通路を備えた船舶乗降装置が使用されている。しかし、従来の船舶乗降装置においては、岸壁に停泊する船舶の大きさ、喫水状態、潮位差等の条件が重なり合って、岸壁から船舶の舷門までの高さが通常の状態に比べて著しく高くなった場合には、階段通路の各階段踏板の段差が大きくなるため、高齢者や足の不自由な人等が通行する際に障害となっている。
そこで、斯かる問題を解決するために、本件出願人は特許文献1に示すごとき船舶乗降装置について提案を行っており、この船舶乗降装置は図16〜図18に示されている。すなわち、走行輪1を有し且つ岸壁2上を走行し得るようにした走行フレーム3の陸側上面には、ブラケット4が立設され、海側上面にはブラケット5が立設されている。ブラケット5には、長手方向が走行フレーム3と平行となるよう、長孔5aが形成されている。
ブラケット4には、水平ピン6を介して、ブラケット5側上方へ向けて斜めに延在する昇降フレーム7が枢支され、ブラケット5には、長孔5aに対し摺動し得るようにした水平ピン8を介して、ブラケット4側上方へ向けて斜めに延在する昇降フレーム9が枢支されている。両ブラケット4,5のクロス部は水平ピン10により連結されている。又、昇降フレーム7,9の上端には、水平ピン11,12を介して水平部材13が枢支されている。
下端を水平ピン14を介して走行フレーム3に枢支された昇降用シリンダ15は、昇降フレーム9に沿い斜め上方へ向くよう配置されており、昇降用シリンダ15のピストンロッド15aの上端は、水平ピン10に連結されている。
水平部材13に水平ピン12よりも上方に位置するよう設けた水平ピン16には、水平部材13内に位置するようにした起伏通路17の基端部が枢支されている。起伏通路17は水平部材13に沿って水平ピン16側から海側へ延在し、その海側端部は水平部材13の海側端部近傍に位置している。水平部材13の海側端部には、縦向きの起伏用シリンダ18が取付けられ、起伏用シリンダ18のピストンロッド18a上端は水平ピン19を介して起伏通路17に連結されている。
起伏通路17の陸側には、陸側可動通路20が、又、海側には船側可動通路21が、夫々矢印方向へ起伏通路17の面に沿い往復移動し得るよう、配置されている。
船側可動通路21の海側端部には、階段通路22を構成する階段フレーム23が、水平ピン24を介し起伏可能に枢支されている。船側可動通路21の水平ピン24設置部よりも下方に固設したブラケット25には、水平ピン26を介し、階段フレーム23よりも下方に配置されたリンク部材27が起伏可能に枢支されている。リンク部材27は階段フレーム23と平行して延在し、階段フレーム23とリンク部材27の先端部は、水平ピン28,29を介して、先端ブラケット30により連結されている。先端ブラケット30には、プラットフォーム31が一体的に固設されている。
階段フレーム23とリンク部材27には、長手方向へ所定の間隔で、複数の階段踏板32が取付けられている。すなわち、階段踏板32は側部において、水平ピン33を介し階段フレーム23に枢支され、階段踏板32の下端に固設されたブラケット34は水平ピン35を介しリンク部材27に枢支されている。
而して、水平ピン24,26の中心を結ぶ線、水平ピン33,35の中心を結ぶ線、水平ピン28,29の中心を結ぶ線は何れも鉛直であり、水平ピン24,33,33,・・・28の中心を結ぶ直線と、水平ピン26,35,35,・・・29の中心を結ぶ直線は平行である。従って、階段フレーム23、リンク部材27、先端ブラケット30、階段踏板32により平行四辺形リンクが形成されており、階段フレーム23及びリンク部材27が起伏しても、各階段踏板32の踏面及びプラットフォーム31の踏面は常に水平を保持し得るようになっている。
船側可動通路21には、ブラケット25固設部よりも更に下方に位置するよう、ブラケット36が固設され、ブラケット36には、水平ピン37を介して、起伏用シリンダ38の後端が連結されている。又、起伏用シリンダ38はリンク部材27と平行に延在し、起伏用シリンダ38のピストンロッド38aの先端は、水平ピン39を介し、階段フレーム23の長手方向中途部下部に固設したブラケット40に連結されている。なお、図16中、41は岸壁上屋である。
例えば、岸壁上屋41と岸壁2に停泊中の船舶(図示せず)との間を乗降者が通行し得るよう、上記船舶乗降装置を設定する際には、昇降用シリンダ15を作動させて水平部材13の高さ方向位置を岸壁上屋41に合わせて適宜調整した後、起伏用シリンダ18により起伏通路17の海側先端部を押上げて、起伏通路17が岸壁上屋41側から上り勾配となるよう調整する。次いで起伏用シリンダ38を伸長させることにより、階段通路22の階段フレーム23及びリンク部材27を上方へ回動させ起立させて、プラットフォーム31の高さを岸壁2に停泊中の船舶の舷門に合わせる。
又、陸側可動通路20を岸壁上屋41側へ移動させ、船側可動通路21を海側へ移動させてプラットフォーム31を舷門の高さに合わせ、起伏用シリンダ38により若干階段フレーム23及びリンク部材27の先端を下降させて、プラットフォーム31を舷門下縁に支持させる。これで、乗降者は岸壁上屋41と船舶との間を通行できるようになる。
上記船舶乗降装置においては、起伏通路17が設けられており、陸側可動通路20から船側可動通路21までを上り勾配にできるため、階段通路22の俯仰角度を従来の装置のごとく急傾斜にしなくても、プラットフォーム31を舷門に対応するよう位置させることができる。
従って、階段通路22の傾斜角度は急傾斜とはならず、その結果、図17に示す階段踏板32の段差Hは過度に大きくならないため、高齢者や足の不自由な人でも容易に階段通路22を通行することができる。
例えば、階段通路22の階段踏板32を段差のない平坦な歩廊として使用する場合には、図17の起伏用シリンダ38を作動させて、図18に示すごとく、階段通路22の傾斜角度を起伏通路17及び船側可動通路21の傾斜角度と同じにする。このため、階段踏板32の踏面には段差が生じず、階段踏板32は平坦な歩廊状になり、階段通路22の傾斜角度が緩い場合にも、乗降者は階段通路22を容易に通行することができる。
特開平3−51404号公報
しかしながら、前述の船舶乗降装置にあっては、下記のごとき問題がある。
i)昇降用シリンダ15により水平部材13を昇降させるようにしていると共に、起伏用シリンダ18により起伏通路17を起伏させるようにしているため、装置構造が複雑化すると共に大型化、重量化を招き、コストアップを招来する。
ii)装置を設定する際には、階段通路22を所定の角度に起伏させる操作以外に、水平部材13を所定高さに昇降させる操作や、起伏通路17を所定の角度に傾斜させる操作が必要となるため、全体に操作が煩雑で準備に時間が掛る。
iii)使用時には、プラットフォーム31の先端を舷門に支持させ、且つ船舶が波により上下に揺れた際には、揺れに合わせて起伏通路17の傾斜角度が変化し得るよう、起伏用シリンダ18には、油が自由に出入りできるようにしておかなくてはならないため、起伏通路17の重量を起伏用シリンダ18により支持することができず、従って、船舶の舷門に掛る重量は大きくなり、船舶の荷重負担が大きくなる。
iv)例えば、階段通路22の階段踏板32を段差のない平坦な歩廊として使用する場合には、iii)と同様な問題がある他、図18に示すごとくプラットフォーム31も傾斜するため、乗降者がプラットフォーム31に対し乗降し難い。
本発明は、上記実情に鑑み、構造簡単で、小型化、軽量化が可能であり、しかも操作が容易で準備に時間が掛らず、更に乗降者の階段通路及び先端プラットフォームに対する通行を容易且つ円滑に行い得るようにした船舶乗降装置を提供することを目的としてなしたものである。
請求項の船舶乗降装置は、起伏可能な階段通路を備えた船舶乗降装置であって、
前記階段通路は、
所定の枠体に起伏可能に枢支された階段フレームと、
該階段フレームの枢支点と略同一軸線上において枢支されて下方へ突出するカムリンクと、
該カムリンクの下部に枢支されて前記階段フレームの長手方向へ延在し、且つ階段フレームと一体的に起伏し得るようにしたリンク部材と、
前記階段フレームの長手方向へ所定の間隔で配置されると共に、上部が階段フレームに枢支され、下部が前記リンク部材に枢支された複数の階段踏板と、
該階段踏板を踏面に段差がある状態で使用する場合には、前記カムリンクに対し係止され、前記階段踏板を踏面に段差のない平坦な通路として使用する場合には、前記カムリンクに対する係止を解除される固定及び固定解除手段を備え、
前記階段フレーム、リンク部材、階段踏板、カムリンクにより平行四辺形リンクが形成されるよう構成したものである。
請求項の船舶乗降装置においては、前記固定及び固定解除手段は、前記枠体に枢支されたレバーと、該レバーに設けられて前記カムリンクに係止し得るようにした係止部材を備えている。
請求項の船舶乗降装置は、前記階段踏板を踏面に段差のない状態で使用する場合には、前記固定及び固定解除手段によりカムリンクに対する係止を解除した状態で階段踏板が枢支されたリンク部材を前記枠体側へ移動させ、階段フレームに固定するためのリンク部材移動兼固定手段を設けたものである。
請求項の船舶乗降装置においては、前記リンク部材移動兼固定手段は、前記リンク部材に固定された被拘束部材を把持し得るようにした開閉可能な把持アームを備えている。
請求項の船舶乗降装置は、プラットフォームの踏面を平坦に保持するための水平保持手段を備えている。
請求項の船舶乗降装置においては、水平保持手段は、
基端部が前記枠体に枢支されて階段フレームの長手方向へ延在し且つ前記リンク部材とは異なる他のリンク部材と、
該他のリンク部材の先端及び前記階段フレームの先端に枢支され且つプラットフォームが取付けられたブラケットとを備え、
前記階段フレーム及び他のリンク部材並びにプラットフォームにより平行四辺形リンクが形成されるよう構成したものである。
請求項の船舶乗降装置は、上部を階段フレームに枢支され且つ下部を前記他のリンク部材に枢支されて該他のリンク部材の座屈を防止し得るようにした座屈防止部材を備えたものである。
本発明によれば、船舶乗降装置が船舶の舷門に対し設定された際に、階段通路の傾斜が所定の角度以上の場合には、乗降者は段差のある階段踏板を通行して船舶に対し乗降し、階段通路の傾斜が所定の角度よりも小さい場合には、乗降者は段差のない平坦な通路状の階段踏板を通行して船舶に対し乗降することができる。
本発明の船舶乗降装置によれば、以下のごとき種々の優れた効果を奏し得る。
I)従来装置のように水平部材を昇降させるための昇降用シリンダ、起伏通路及び起伏通路を起伏させる起伏用シリンダ等が不要となるため、装置構造が簡略化され、従って、装置の小型化、軽量化を図ることができ、コストダウンを図ることができる。
II)装置を設定する際に、前記昇降用シリンダや起伏用シリンダの操作が不要となるため、全体に操作が容易で準備を迅速に行うことができる。
III)起伏通路が不要であり、舷門に支持される重量は起伏可能な階段通路の重量だけであるため、船舶の荷重負担が減少する。
IV)階段通路の傾斜角度が小さい場合は、階段踏板を平坦な斜路として使用できるうえ、プラットフォームは常に水平に保持することができるため、乗降者の乗降は容易であり、乗降を円滑に行うことができる。
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
図1〜図15は本発明を実施する形態の一例である。
図1に示すように、下端に走行可能な車輪51が設けられた左右の柱状部材52の上端には水平部材53が固着されて走行枠体54が形成されており、水平部材53の陸側にはシャトル式の陸側可動通路55が、又、海側には台車式の船側可動通路56が、夫々水平方向へ往復移動し得るよう、配置されている。
船側可動通路56の海側端部において左右両側に固設したブラケット57(図3参照)には、階段通路58を構成する左右の階段フレーム59が、水平ピン60を介し起伏可能に枢支されている。又、船側可動通路56の海側端部において左右中間部に固設したブラケット61(図3等参照)には、水平ピン62を介して、図4、図10、図12に拡大して示すように、下方へ向けて突出するカムリンク63が回動可能に枢支されており、カムリンク63の下端には水平ピン64を介して、左右の階段フレーム59間の略中心部に配置されて陸側から海側へ向かって延在するリンク部材65が、階段通路58を構成する部品として、起伏可能に枢支されている。水平ピン60,62の軸心は側面から見て同一軸線上に位置している。
カムリンク63には、水平ピン62の水平径方向両側に位置するよう、上下方向へ延在する辺63a,63bが形成されている。又、辺63a,63b間の水平ピン62における水平径方向の寸法は、上部側において小さく、下方に行くに従い大きくなっている。すなわち、カムリンク63は下方へ行くにつれて拡大する形状で、しかも、辺63a,63b間の最大間隔部よりも下方は水平ピン64取付部近傍を基準として下側に略円弧状に形成されている。又、リンク部材65は階段フレーム59の上縁に対し略平行に、階段フレーム59先端部近傍まで延在している。
左右の階段フレーム59の間には、階段フレーム59の長手方向へ所定の間隔で、複数の階段踏板66が配設されている。すなわち、階段踏板66は側部において、水平ピン67を介し、階段フレーム59に枢支され、階段踏板66の下端に固設されたブラケット68は水平ピン69を介しリンク部材65に枢支されている。
而して、水平ピン62,64の中心を結ぶ線、水平ピン67,69の中心を結ぶ線は何れも互いに平行な上下方向へ延在する直線であり、水平ピン62,67,67,・・・の中心を結ぶ直線と水平ピン64,69,69,・・・の中心を結ぶ直線は平行である。従って、階段フレーム59、リンク部材65、階段踏板66により平行四辺形リンクが形成されている。
船側可動通路56のブラケット57,61固設側先端に下方へ垂下するよう固設した支持部材56aには、水平ピン64配設部よりも更に下方へ位置するよう、ブラケット70が固設され、ブラケット70には、水平ピン71を介して、起伏用シリンダ72の後端が連結されている。起伏用シリンダ72は、リンク部材65と平行に延在し、起伏用シリンダ72のピストンロッド72aの先端は、水平ピン73を介し、階段フレーム59の長手方向中途部に固設したブラケット74に連結されている。
図4、図10、図12に拡大して示すように、船側可動通路56に固設したブラケット75には、水平ピン76を介して回動可能に側面形状が略L字状のレバー77が枢支されており、レバー77はリンク部材65側へ延在して先端部で上方へ向き、この上方へ向いた部分77aには、水平ピン62を基準としてその水平径方向前後部に、カムリンク63の辺63a,63bに対し係止し得るようにした水平ピン状の係止部材78が固設されている。
船側可動通路56における支持部材56aのブラケット70固設側とは反対側に固設したブラケット79には、水平ピン80を介して縦向きのレバー用シリンダ81の下端が枢支され、レバー用シリンダ81のピストンロッド81aの上端は、水平ピン82を介して、レバー77の略水平に向いた部分の中間部に固設したブラケット83に枢支されている。而して、係止部材78を備えたレバー77やレバー用シリンダ81により、階段踏板66を段差Hがある状態に保持する場合にカムリンク63を固定し(図4参照)、階段踏板66に段差がない状態にする場合にカムリンク63の固定を解除する(図10、図12参照)固定及び固定解除手段が形成されている。
階段フレーム59の長手方向中間部には、リンク部材移動兼固定手段84が設けられている。すなわち、図6に示すように、階段フレーム59の長手方向中途部下面には基板85が固設され、基板85の幅方向左右両側に設けた一対の回動可能な縦ピン86には、先端部がリンク部材65の長手方向へ所定の間隔で離反するようにした把持アーム87が固設されている。又、各縦ピン86には、把持アーム87に対し約90度、水平方向への角度を異ならしめると共に、平面視で各縦ピン86を基準として反対側へ延在するレバー88が、基板85の中心を挟んで対峙するよう、固着されており、各レバー88は、クランプシリンダ89により連結されている。
リンク部材65の長手方向中途部には、図6に示すごとく、縦向きピン状の被拘束部材90が固設されており、被拘束部材90は対向している把持アーム87間に位置するようになっている。図6〜図8中、91は把持アーム87の開度を規制するストッパピンである。
図13〜図15に示すように、階段フレーム59の内側と階段踏板66の外側との間には、下方が広がった扇形状の座屈防止部材92が配置されており、座屈防止部材92の上端部は、階段踏板66を階段フレーム59に枢支するための水平ピン67に枢支されている。座屈防止部材92は、複数の階段踏板66ごとに1個設けられている(図示例では2組)。
船側可動通路56の左右のブラケット57よりも下方に取付けたブラケット93(図13参照)には、水平ピン94を介してリンク部材95が起伏可能に枢支されている。リンク部材95はリンク部材65と平行に階段フレーム59先端側に延在し、その先端部は、階段フレーム59の先端部に水平ピン96を介して上端が枢支されたブラケット97の下端に、水平ピン98を介して枢支されている。リンク部材95の長手方向中間部は、水平ピン99を介して座屈防止部材92に連結されている。
ブラケット97には、踏面が平らなプラットフォーム100が一体的に固設されており、プラットフォーム100とブラケット97により側面形状は略L形に形成されている。又、水平ピン60,94を結んだ線、水平ピン67,99を結んだ線、水平ピン96,98を結んだ線は何れも鉛直であり、水平ピン60,67,・・・96を結んだ直線と水平ピン94,99,・・・98を結んだ直線は平行である。従って、階段フレーム59及びリンク部材95が起伏しても、プラットフォーム100の踏面は常に水平を保持し得るようになっている。
図13〜図15において、101は階段フレーム59の下縁近傍に設けられた、座屈防止部材92用の振止め、102はプラットフォーム100の先端に起伏可能に取付けたフラップである。又、図1中、103は岸壁、104は上面が陸側可動通路55の下面よりも若干下方に位置するようにした岸壁上屋、105は船舶の船側外板に開口した舷門である。更に、図1〜図15中、同一のものには同一の符号が付されている。
次に、上記図示例の作動を説明する。
例えば、岸壁上屋104と岸壁103に停泊中の船舶との間を乗降者が通行可能になるよう、本図示例の船舶乗降装置を設定する際には、階段踏板66ほ踏段として使用するか、或は段差のない平坦な通路(斜路)として使用するかにより、操作の仕方が異なる。
例えば、階段通路58の傾斜角度が約10度よりも大きい場合には、上下の階段踏板66,66間の段差Hは所定の間隔を保持でき、昇降に支障は生じない。このため、上下の階段踏板66は踏段として使用される。従って、この場合は、図4に示すように、カムリンク63の固定及び固定解除手段におけるレバー用シリンダ81によりレバー77を下方へ回動させ、水平ピン状の係止部材78をカムリンク63の辺63a,63bに係止させる。このため、カムリンク63は階段通路58の起伏時に水平ピン62,64を結ぶ線が鉛直となるよう固定される。従って水平ピン64も軸心位置が移動しない固定状態となる。又、図7に示すように、リンク部材移動兼固定手段84のクランプシリンダ89はピストンロッドを後退させておき、把持アーム87によりリンク部材65に固着されている被拘束部材90が把持されない状態にしておく。
又、この場合には水平ピン62,64の中心を結んだ線の他に、水平ピン67,69を結んだ線も鉛直となる。更に、水平ピン60,94を結んだ線、水平ピン67,99を結んだ線、水平ピン96,98を結んだ線は何れも鉛直になっている。
次に、起伏用シリンダ72を伸長若しくは縮小させることにより、階段通路58の階段フレーム59及びリンク部材65,95を、図1に示すように所定の勾配に傾斜させてプラットフォーム100の高さを岸壁103に停泊中の船舶における舷門105に合わせる。
又、陸側可動通路55を岸壁上屋104側へ移動させ、船側可動通路56を海側へ移動させてプラットフォーム100の被支持部を舷門105に対する所定位置に位置させ、起伏用シリンダ72により階段フレーム59及びリンク部材65,95の先端を若干下降させて、プラットフォーム100を被支持部を介し舷門105の下縁に支持させる。これで、乗降者は岸壁上屋104と船舶との間を通行できるようになる。
この場合、階段フレーム59、リンク部材65、カムリンク63、階段踏板66は平行四辺形リンクであり、且つ水平ピン62,64の中心を結んだ線及び水平ピン67,69を結んだ線は何れも鉛直状態を保持して起伏を行うため、階段踏板66の踏面は常に水平状態を維持される。又、階段フレーム59、リンク部材95、ブラケット97、座屈防止部材92により平行四辺形リンクが形成されており、しかも、水平ピン60,94を結んだ線、水平ピン67,99を結んだ線、水平ピン96,98を結んだ線は何れも鉛直であるため、階段フレーム59及びリンク部材95が起伏しても、プラットフォーム100の踏面は常に水平に保持される。従って、乗降者は岸壁上屋104と船舶との間を円滑に通行できる。
階段通路58の傾斜角度が約10度よりも小さい場合には、上下の階段踏板66,66間の段差Hは少なくなり、躓いたりして昇降し難い状態となる。このため、上下の階段踏板66は平坦な通路として使用することになる。従って、この場合は、図10,図12に示すように、カムリンク63の固定及び固定解除手段におけるレバー用シリンダ81を作動させてレバー77を上方へ回動させる。このため、係止部材78はカムリンク63の辺63a,63bから離反して、カムリンク63の固定が解除され、水平ピン64も固定状態を解除され、その結果、カムリンク63は水平ピン62を基準として回動し、リンク部材65は長手方向へ移動し得るようになる。従って、階段踏板66は水平ピン67を支点として、リンク部材65によりリンク部材65の長手方向へ回動し得るようになる。
そこで、リンク部材移動兼固定手段84のクランプシリンダ89をピストンロッドが突出する方向へ作動させると、対をなす把持アーム87が互いに近接するように回動して、一方の把持アーム87がリンク部材65に固設されている被拘束部材90を、船側可動通路56へ移動させる。その結果、リンク部材65は船側可動通路56側へ移動させられて図8に示すように被拘束部材90は平面視で左右の縦ピン86間で把持アーム87により挟持される。
リンク部材65がその船側可動通路56へ向けて長手方向へ移動する際には、リンク部材65の動きにより、階段踏板66が水平ピン67を支点として回動し、図9や図11に示すように、階段踏板66の踏面は段差のない平坦な斜路となる。
この状態で起伏用シリンダ72を作動させると、リンク部材65はリンク部材移動兼固定手段84により階段フレーム59に固定された状態となっているため、階段踏板66及びリンク部材65は階段フレーム59と共に一体的に起伏する。このため、階段踏板66の踏面は階段フレーム59の傾斜角度に追随して斜路状態を維持したまま起伏する。この際、カムリンク63は水平ピン62を基準として回動することになる。
一方、上述のように、階段フレーム59、リンク部材95、ブラケット97、座屈防止部材92により平行四辺形リンクが形成されており、しかも、水平ピン60,94を結んだ線、水平ピン67,99を結んだ線、水平ピン96,98を結んだ線は何れも鉛直であるため、階段フレーム59及びリンク部材95が起伏しても、プラットフォーム100の踏面は水平に保持される。従って、階段踏板66を平坦な斜路として使用する場合にも、プラットフォーム100の踏面は水平状態を保持されて起伏することになる。
従って、以降は階段踏板66を段差のある場合と同様にして、プラットフォーム100を介し舷門105の下縁に支持させ、乗降者の乗降が行われる。この場合、乗降者は段差のない平坦な斜路を通り昇降を行う。
上記図示例によれば、図16〜図18に示す従来装置のように水平部材13を昇降させるための昇降用シリンダ15、起伏通路17及び起伏通路17を起伏させるための起伏用シリンダ18等が不要となるため、装置構造が簡略化され、従って、装置の小型化、軽量化を図ることができ、コストダウンを図ることができる。
又、装置を設定する際に、従来必要であった昇降用シリンダ15や起伏用シリンダ18の操作が不要となるため、全体に操作が容易で準備を迅速に行うことができる。又、従来装置のような起伏通路17が不要であり、舷門105に支持される重量は階段通路58の重量だけであるため、船舶の荷重負担が減少する。
更に、階段通路58の傾斜角度が小さい場合は、階段踏板66を平坦な斜路として使用できるうえ、プラットフォーム100は常に水平に保持することができるため、乗降者の乗降は容易であり、乗降を円滑に行うことができる。
なお、本発明の船舶乗降装置は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
本発明の船舶乗降装置の実施の形態の一例を示す側面図である。 図1に示す階段通路の拡大側面図で、階段踏板に段差を付けた状態を示す側面図である。 図2の簡略化した平面図である 図2のIV部拡大図である。 図4の平面図である。 図2のVI−VI方向矢視図である。 図6のVII−VII矢視図で、被拘束部材が把持されていない状態を示す図である。 図6のVIII−VIII矢視図で、被拘束部材が把持されている状態を示す図である。 図1に示す階段通路の拡大側面図で、階段通路が上り傾斜で且つ階段踏板に段差を付けずに平坦な斜路にした状態を示す側面図である。 図9のX部拡大図である。 図1に示す階段通路の拡大側面図で、階段通路が下り傾斜で且つ階段踏板に段差を付けずに平坦な斜路にした状態を示す側面図である。 図11のXII部拡大図である。 本発明の船舶乗降装置におけるプラットフォームを水平に保持するための水平保持手段の側面図である。 図13に示す座屈ガイド部材の拡大図である。 図14のXV−XV方向矢視図である。 従来の船舶乗降装置の一例を示す側面図である。 図16の船舶乗降装置の階段通路の部分の拡大側面図である。 図16の船舶乗降装置の階段踏板を平坦な斜路の状態で使用する場合の側面図である。
符号の説明
56 船側可動通路(枠体)
58 階段通路
59 階段フレーム
60 水平ピン(枢支点)
63 カムリンク
65 リンク部材
66 階段踏板
77 レバー(固定及び固定解除手段)
78 係止部材(固定及び固定解除手段)
81 レバー用シリンダ(固定及び固定解除手段)
84 リンク部材移動兼固定手段
87 把持アーム(リンク部材移動兼固定手段)
89 クランプシリンダ(リンク部材移動兼固定手段)
90 被拘束部材(リンク部材移動兼固定手段)
92 座屈防止部材(水平保持手段)
95 リンク部材(水平保持手段)
97 ブラケット(水平保持手段)
100 プラットフォーム
H 段差

Claims (7)

  1. 起伏可能な階段通路を備えた船舶乗降装置であって、
    前記階段通路は、
    所定の枠体に起伏可能に枢支された階段フレームと、
    該階段フレームの枢支点と略同一軸線上において枢支されて下方へ突出するカムリンクと、
    該カムリンクの下部に枢支されて前記階段フレームの長手方向へ延在し、且つ階段フレームと一体的に起伏し得るようにしたリンク部材と、
    前記階段フレームの長手方向へ所定の間隔で配置されると共に、上部が階段フレームに枢支され、下部が前記リンク部材に枢支された複数の階段踏板と、
    該階段踏板を踏面に段差がある状態で使用する場合には、前記カムリンクに対し係止され、前記階段踏板を踏面に段差のない平坦な通路として使用する場合には、前記カムリンクに対する係止を解除される固定及び固定解除手段を備え、
    前記階段フレーム、リンク部材、階段踏板、カムリンクにより平行四辺形リンクが形成されるよう構成したことを特徴とする船舶乗降装置。
  2. 前記固定及び固定解除手段は、前記枠体に枢支されたレバーと、該レバーに設けられて前記カムリンクに係止し得るようにした係止部材を備えた請求項1記載の船舶乗降装置。
  3. 前記階段踏板を踏面に段差のない状態で使用する場合には、前記固定及び固定解除手段によりカムリンクに対する係止を解除した状態で階段踏板が枢支されたリンク部材を前記枠体側へ移動させ、階段フレームに固定するためのリンク部材移動兼固定手段を設けた請求項1又は2記載の船舶乗降装置。
  4. 前記リンク部材移動兼固定手段は、前記リンク部材に固定された被拘束部材を把持し得るようにした開閉可能な把持アームを備えた請求項3記載の船舶乗降装置。
  5. プラットフォームの踏面を平坦に保持するための水平保持手段を備えた請求項1、2、3又は4記載の船舶乗降装置。
  6. 水平保持手段は、
    基端部が前記枠体に枢支されて階段フレームの長手方向へ延在し且つ前記リンク部材とは異なる他のリンク部材と、
    該他のリンク部材の先端及び前記階段フレームの先端に枢支され且つプラットフォームが取付けられたブラケットとを備え、
    前記階段フレーム及び他のリンク部材並びにブラケットにより平行四辺形リンクが形成されるよう構成した請求項5記載の船舶乗降装置。
  7. 上部を階段フレームに枢支され且つ下部を前記他のリンク部材に枢支されて該他のリンク部材の座屈を防止し得るようにした座屈防止部材を備えた請求項6記載の船舶乗降装置。
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