JP4348786B2 - 化学増幅ネガ型レジスト組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、紫外線、電子線、X線などの放射線の照射及びアルカリ現像によりパターンを形成し、半導体集積回路の製作などに用いられる化学増幅ネガ型レジスト組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
アルカリ可溶性樹脂をバインダーとし、放射線の作用により酸を発生する活性化合物を感放射線成分とし、その感放射線成分から発生する酸の触媒作用を利用して、放射線照射及びその後の加熱処理(露光後ベーク)により、放射線照射部のアルカリ溶解性を減ずる化学増幅ネガ型レジストは、感度が高いために、ある種の用途で根強い需要がある。
【0003】
ところで、化学増幅ネガ型レジストには、その保存中に活性化合物の分解等によって微量の酸が生ずることがあるため、経時変化を起こしやすいという問題がある。このような経時変化は、特に架橋剤を含有し、酸の触媒作用によりアルカリ可溶性樹脂を架橋させてアルカリ不溶化するタイプのレジストにおいて問題視されている。また、放射線照射から露光後ベークまでの時間が長くなると、発生した酸が失活して性能劣化を起こすことも知られている。そこで、このような保存時の経時変化を抑え、また放射線照射後の引き置きに伴う酸の失活を防止するために、塩基性の有機化合物を添加することが一般に行われている。しかしながら、従来から知られている塩基性化合物の添加では、特に保存時の経時変化について、それを充分に抑えることができなかった。
【0004】
一方、分子の極性変換反応、具体的には、酸の作用により三級アルコールが脱水して非極性化合物に変化する反応を利用して、放射線照射部のアルカリ溶解性を減ずるタイプのレジストも知られている。例えば、特開平 10-268518号公報には、芳香環に直接結合した炭素原子上に水酸基を有する三級アルコールを一成分とする極性変換タイプのネガ型レジストについて、感度に対する露光後ベーク時の加熱温度依存性は小さいものの、依然として感度が加熱温度に依存することから、放射線照射部で発生した酸の拡散を抑制して、パターン寸法の精度を確保するために、ピリジン系の化合物をはじめとする各種の塩基性化合物を配合することが提案されている。このような極性変換タイプのネガ型レジストは、反応の活性化エネルギーが低く、露光後ベーク温度の変化に伴う性能の変化は小さいものの、現状では解像度が必ずしも十分でない。これに対し、架橋剤を含有する架橋タイプのネガ型レジストは、解像度に優れるため、このタイプのレジストに対する需要は依然として根強いものがある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明の目的は、アルカリ可溶性樹脂、放射線の作用により酸を発生する活性化合物及び架橋剤を含有する架橋タイプの化学増幅ネガ型レジスト組成物の経時安定性を向上させることにある。本発明者らは、かかる目的を達成すべく鋭意研究を行った結果、アルカリ可溶性樹脂、放射線の作用により酸を発生する活性化合物、及び架橋剤を含有する架橋タイプの化学増幅ネガ型レジスト組成物に、ある特定の塩基性化合物を含有させることにより、経時安定性が向上することを見出し、さらに種々研究のうえ、本発明を完成した。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、アルカリ可溶性樹脂、放射線の作用により酸を発生する活性化合物、架橋剤、及び下式(I)
【0007】
【0008】
(式中、R1 及びR2 は互いに独立に、炭素数1〜4のアルキルを表す)
で示される2,6−ジアルキルピリジン化合物を含有する化学増幅ネガ型レジスト組成物を提供するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明に係る化学増幅ネガ型レジストは、アルカリ可溶性のバインダー樹脂、放射線の作用により酸を発生する活性化合物及び架橋剤を含有するものである。このような化学増幅ネガ型レジストにおいては、放射線照射部で活性化合物から発生した酸が、その後の熱処理(露光後ベーク)によって拡散し、架橋剤に作用してその放射線照射部のバインダー樹脂を硬化させ、アルカリ不溶化させる。本発明の組成物におけるアルカリ可溶性樹脂、放射線の作用により酸を発生する活性化合物及び架橋剤は、この分野で一般的に用いられているものでよい。
【0010】
アルカリ可溶性樹脂として、具体的には例えば、フェノール骨格を有する樹脂や、(メタ)アクリル酸エステル骨格及びカルボキシル基を有する樹脂などが挙げられる。フェノール骨格を有する樹脂には、ノボラック樹脂、ポリビニルフェノール、ポリイソプロペニルフェノール、これらノボラック樹脂、ポリビニルフェノール又はポリイソプロペニルフェノールの水酸基の一部がアルキルエーテル化された樹脂、ビニルフェノール又はイソプロペニルフェノールと他の重合性不飽和化合物との共重合樹脂などが包含される。また、(メタ)アクリル酸エステル骨格及びカルボキシル基を有する樹脂には、(メタ)アクリル酸の脂環式エステルの重合体であって、その脂環式環にカルボキシル基を有する樹脂、(メタ)アクリル酸の脂環式エステルと(メタ)アクリル酸との共重合樹脂などが挙げられる。
【0011】
ノボラック樹脂についてさらに詳しく説明すると、この樹脂は、フェノール系化合物とアルデヒドとを、酸触媒の存在下で縮合させることにより得られるものである。ノボラック樹脂の製造に用いられるフェノール系化合物としては、例えば、フェノール、o−、m−又はp−クレゾール、2,3−、2,5−、3,4−又は3,5−キシレノール、2,3,5−トリメチルフェノール、2−、3−又は4−tert−ブチルフェノール、2−tert−ブチル−4−又は−5−メチルフェノール、2−、4−又は5−メチルレゾルシノール、2−、3−又は4−メトキシフェノール、2,3−、2,5−又は3,5−ジメトキシフェノール、2−メトキシレゾルシノール、4−tert−ブチルカテコール、2−、3−又は4−エチルフェノール、2,5−又は3,5−ジエチルフェノール、2,3,5−トリエチルフェノール、2−ナフトール、1,3−、1,5−又は1,7−ジヒドロキシナフタレン、キシレノールとヒドロキシベンズアルデヒドとの縮合により得られるポリヒドロキシトリフェニルメタン系化合物などが挙げられる。これらのフェノール系化合物は、それぞれ単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0012】
また、ノボラック樹脂の製造に用いられるアルデヒドとしては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ピバルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、アクロレイン及びクロトンアルデヒドのような脂肪族アルデヒド類、シクロヘキサンアルデヒド、シクロペンタンアルデヒド、フルフラール及びフリルアクロレインのような脂環式アルデヒド類、ベンズアルデヒド、o−、m−又はp−メチルベンズアルデヒド、p−エチルベンズアルデヒド、2,4−、2,5−、3,4−又は3,5−ジメチルベンズアルデヒド、o−、m−又はp−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−、m−又はp−アニスアルデヒド及びバニリンのような芳香族アルデヒド類、フェニルアセトアルデヒド及びケイ皮アルデヒドのような芳香脂肪族アルデヒド類などが挙げられる。これらのアルデヒド類も、それぞれ単独で、又は所望により2種以上組み合わせて用いることができる。これらのなかでは、工業的に入手しやすいことから、ホルムアルデヒドが好ましく用いられる。
【0013】
フェノール系化合物とアルデヒドとの縮合に用いられる酸触媒の例としては、塩酸、硫酸、過塩素酸及び燐酸のような無機酸、蟻酸、酢酸、蓚酸、トリクロロ酢酸及びp−トルエンスルホン酸のような有機酸、酢酸亜鉛、塩化亜鉛及び酢酸マグネシウムのような二価金属塩などが挙げられる。これらの酸触媒も、それぞれ単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。縮合反応は常法に従って行うことができ、例えば、60〜120℃の範囲の温度で2〜30時間程度行われる。
【0014】
また、前述したように、ポリビニルフェノールやその部分アルキルエーテル化物をアルカリ可溶性樹脂とすることもできる。もちろん、これらをノボラック樹脂と併用することもできる。ポリビニルフェノールを構成するビニルフェノールにおけるビニル基と水酸基の位置関係は特に限定されないが、通常はp−ビニルフェノールである。ポリビニルフェノールは、例えば、tert−ブトキシスチレンの重合により得られるポリ(tert−ブトキシスチレン)を加水分解することによって製造できる。もちろん、このようにして製造され、各種の平均分子量や分散度を有するものが市販されているので、市販品をそのまま用いることもできる。
【0015】
水酸基の一部がアルキルエーテル化されたポリビニルフェノールを用いることは、解像度の点で好ましい。ポリビニルフェノールの部分アルキルエーテル化には、例えば、特開平 7-295220 号公報に記載されるような、ポリビニルフェノールとハロゲン化アルキルとを、炭酸カリウムや炭酸ナトリウムのようなアルカリの存在下で反応させる方法が採用できる。アルキルエーテルを構成するアルキルは、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチルなど、炭素数1〜4程度であればよい。ポリビニルフェノールの水酸基のうちアルキルエーテル化されているものの割合(アルキルエーテル化率)は、一般には35モル%程度まででよく、また10モル%以上であるのが有利である。
【0016】
アルカリ可溶性樹脂の一部として、重量平均分子量900以下のノボラック樹脂オリゴマーを含有させることは、レジストの解像度を向上させるうえで好ましい。ここでいう重量平均分子量は、ポリスチレンを標準としてゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定される値であり、本明細書中、以下に現れる重量平均分子量も同様である。このような低分子量ノボラック樹脂オリゴマーも、常法に従って、それぞれ前記したようなフェノール系化合物とアルデヒドとを酸触媒の存在下で縮合させることにより製造でき、その際、低分子量体が生成するような反応条件、例えば、フェノール系化合物に対するアルデヒドの反応モル比を0.05〜0.6程度と低めに設定し、酸触媒の使用量を原料フェノール系化合物に対して0.001〜0.01モル倍程度と少なめにし、反応時間を1〜5時間程度と短めにすればよい。低分子量ノボラック樹脂オリゴマーを用いる場合は、アルカリ可溶性樹脂全体のうち、5〜50重量%程度とするのがよい。
【0017】
低分子量ノボラック樹脂オリゴマーをアルカリ可溶性樹脂の一部として用いる場合は、残りのアルカリ可溶性樹脂は、それより重量平均分子量の大きいもの、例えば、重量平均分子量 2,000以上であるものが適当である。特に、高分子量分主体のノボラック樹脂を併用することは、解像度を向上させるうえで一層好ましい。具体的には、ノボラック樹脂をGPCで分析したときに、分子量900以下の範囲のパターン面積が、未反応の原料フェノール系化合物を除く全パターン面積に対して25%以下、さらには20%以下となるようにしたものが好ましい。ここでパターン面積は、波長254nmのUV検出器を用いて測定したものを意味し、分子量は、先の重量平均分子量と同様、ポリスチレンを標準として測定される値を意味する。
【0018】
このような高分子量分主体のノボラック樹脂は、例えば、縮合反応で得られるノボラック樹脂に分別などの操作を施すことにより、製造できる。分別を行う場合は、ノボラック樹脂を、良溶媒、例えば、メタノールやエタノールのようなアルコール類、アセトンやメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン類、エチルセロソルブのようなグリコールエーテル類、エチルセロソルブアセテートのようなグリコールエーテルエステル類、テトラヒドロフランのようなエーテル類などに溶解し、この溶液を水中に注いで高分子量分を沈殿させる方法、あるいはこの溶液を、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンのような貧溶媒と混合して高分子量分主体の下層を分液する方法などが採用できる。高分子量分主体のノボラック樹脂は、その重量平均分子量が 5,000以上、特に 6,000以上であるのが有利である。
【0019】
次に、放射線の作用により酸を発生する活性化合物について説明する。このような活性化合物は、一般に酸発生剤として知られているものであり、その物質自体に、又はその物質を含むレジスト組成物に、放射線を照射することによって、酸を発生する各種の化合物であることができる。例えば、オニウム塩、特にヨードニウム塩やスルホニウム塩、ハロゲン化アルキルトリアジン系化合物、ジスルホン系化合物、ジアゾメタンスルホニル骨格を有する化合物、スルホン酸エステル系化合物などが挙げられる。このような酸発生剤の具体例を示すと、次のとおりである。
【0020】
オニウム塩:
ジフェニルヨードニウム トリフルオロメタンスルホネート、
4−メトキシフェニルフェニルヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
4−メトキシフェニルフェニルヨードニウム トリフルオロメタンスルホネート、
ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム テトラフルオロボレート、
ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート、
ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム トリフルオロメタンスルホネート、
トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、
トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
トリフェニルスルホニウム トリフルオロメタンスルホネート、
4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウム トリフルオロメタンスルホネート、
p−トリルジフェニルスルホニウム トリフルオロメタンスルホネート、
2,4,6−トリメチルフェニルジフェニルスルホニウム トリフルオロメタンスルホネート、
4−tert−ブチルフェニルジフェニルスルホニウム トリフルオロメタンスルホネート、
4−フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、
4−フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
1−(2−ナフトイルメチル)チオラニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
1−(2−ナフトイルメチル)チオラニウム トリフルオロメタンスルホネート、
4−ヒドロキシ−1−ナフチルジメチルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
4−ヒドロキシ−1−ナフチルジメチルスルホニウム トリフルオロメタンスルホネートなど。
【0021】
ハロゲン化アルキルトリアジン系化合物:
2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−(4−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−(4−メトキシ−1−ナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−(ベンゾ[d][1,3]ジオキソラン−5−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−(4−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−(3,4,5−トリメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−(3,4−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−(2,4−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−(2−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−(4−ブトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−(4−ペンチルオキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジンなど。
【0022】
ジスルホン系化合物:
ジフェニル ジスルホン、
ジ−p−トリル ジスルホン、
フェニル p−トリル ジスルホン、
フェニル p−メトキシフェニル ジスルホンなど。
【0023】
ジアゾメタンスルホニル骨格を有する化合物:
ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、
ビス(4−クロロフェニルスルホニル)ジアゾメタン、
ビス(p−トリルスルホニル)ジアゾメタン、
ビス(4−tert−ブチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、
ビス(2,4−キシリルスルホニル)ジアゾメタン、
ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、
(ベンゾイル)(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、
【0024】
スルホン酸エステル系化合物:
α−(ヘキシルスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシベンジルシアニド、
α−(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシベンジルシアニド、
α−(p−トリルスルホニルオキシイミノ)-4-メトキシベンジルシアニド、
α−(1−ナフチルスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシベンジルシアニド、
α−(2−ナフチルスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシベンジルシアニド、
α−(p−トリルスルホニルオキシイミノ)−4−ジエチルアミノベンジルシアニド、
α−(p−トリルスルホニルオキシイミノ)−3,4−ジメトキシベンジルシアニド、
1−ベンゾイル−1−フェニルメチル p−トルエンスルホネート(通称ベンゾイントシレート)、
2−ベンゾイル−2−ヒドロキシ−2−フェニルエチル p−トルエンスルホネート(通称α−メチロールベンゾイントシレート)、
1,2,3−ベンゼントリイル トリスメタンスルホネート、
2,6−ジニトロベンジル p−トルエンスルホネート、
2−ニトロベンジル p−トルエンスルホネート、
4−ニトロベンジル p−トルエンスルホネート、
N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミド、
N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド、
N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ナフタルイミド、
N−(10−カンファースルホニルオキシ)ナフタルイミドなど。
【0025】
次に架橋剤について説明する。この架橋剤は、放射線照射部で発生した酸の作用を受けてアルカリ可溶性樹脂を架橋させ、硬化させるものであればよく、通常はメチロール基を有する化合物又はそのアルキルエーテル体が用いられる。具体例としては、ヘキサメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、ペンタメトキシメチルメラミン、テトラメトキシメチルメラミン及びヘキサエトキシメチルメラミンのようなメチロール化メラミン又はそのアルキルエーテル体、テトラメチロールベンゾグアナミン、テトラメトキシメチルベンゾグアナミン及びトリメトキシメチルベンゾグアナミンのようなメチロール化ベンゾグアナミン又はそのアルキルエーテル体、2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−4−メチルフェノール又はそのアルキルエーテル体、4−tert−ブチル−2,6−ビス(ヒドロキシメチル)フェノール又はそのアルキルエーテル体、5−エチル−1,3−ビス(ヒドロキシメチル)ペルヒドロ−1,3,5−トリアジン−2−オン(通称N−エチルジメチロールトリアゾン)又はそのアルキルエーテル体、N,N′−ジメチロールトリメチレン尿素又はそのジアルキルエーテル体、3,5−ビス(ヒドロキシメチル)ペルヒドロ−1,3,5−オキサジアジン−4−オン(通称ジメチロールウロン)又はそのアルキルエーテル体、テトラメチロールグリオキザールジウレイン又はそのテトラメチルエーテル体などが挙げられる。
【0026】
以上のようなアルカリ可溶性樹脂、放射線の作用により酸を発生する活性化合物(酸発生剤)、及び架橋剤に加えて、本発明では、塩基性化合物として、前記式(I)で示される2,6−ジアルキルピリジン化合物を含有させる。この2,6−ジアルキルピリジン化合物は、レジスト液の経時安定性を向上させるうえで特に有効である。式(I)の2,6−ジアルキルピリジン化合物として、具体的には例えば、2,6−ルチジン、2−エチル−6−メチルピリジン、2,6−ジエチルピリジン、2,6−ジブチルピリジン、2,6−ジ−tert−ブチルピリジンなどが挙げられる。
【0027】
また所望により、この2,6−ジアルキルピリジン化合物に加えて、従来から一般に使用されている他の塩基性含窒素有機化合物を併用することもできる。併用しうる含窒素塩基性有機化合物の具体的な例としては、以下の各式で示されるものを挙げることができる。
【0028】
【0029】
式中、R11、R12、R13、R14及びR15は互いに独立に、水素、水酸基で置換されていてもよいアルキル、シクロアルキル、アリール又はアルコキシを表し、Aはアルキレン、カルボニル又はイミノを表す。ここで、R11〜R15で表されるアルキル及びアルコキシは、炭素数1〜6程度であることができ、シクロアルキルは、炭素数5〜10程度であることができ、そしてアリールは、炭素数6〜10程度であることができる。また、Aで表されるアルキレンは、炭素数1〜6程度であることができ、直鎖でも分岐していてもよい。
【0030】
さらに本発明においては、以上説明したアルカリ可溶性樹脂、放射線の作用により酸を発生する活性化合物(酸発生剤)、架橋剤及び式(I)の2,6−ジアルキルピリジン化合物に加えて、下式(II)で示されるN−置換スクシンイミド化合物を含有させるのが、解像度を向上させるうえで好ましい。
【0031】
【0032】
式中、Rは、アルキル、脂環式炭化水素残基、アリール、アラルキル又はカンファー基を表し、ここにアルキルは、アルコキシ、ハロゲン若しくはニトロで置換されていてもよい。
【0033】
式(II)で示されるN−置換スクシンイミド化合物は、アルカリ現像液により下式のスキームで加水分解し、非水溶性の状態から水溶性の状態に変わるため、放射線が照射されていない部分の溶解性を促進し、コントラストを上げることにより、解像度を向上させるものと考えられる。
【0034】
【0035】
式(II)において、Rはスルホン酸の残基、すなわち、スルホン酸からスルホン酸基を除去した形の基であり、具体的には、アルキル、脂環式炭化水素残基、アリール、アラルキル又はカンファー基である。ここでのアルキルは、例えば、炭素数1〜10程度であることができ、無置換でも、アルコキシ、ハロゲン及びニトロから選ばれる基で置換されていてもよく、また炭素数3以上の場合は直鎖でも分岐していてもよい。このアルキルに置換しうるアルコキシとしては、例えば、炭素数1〜4程度のものが挙げられ、ハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素などが挙げられる。脂環式炭化水素残基は、脂環式環を含む炭化水素から導かれる1価基であり、具体的にはシクロヘキシルやシクロヘキシルメチルなどが挙げられる。アリールは、例えば、フェニル、ナフチルなどであることができ、これらの芳香環はそれぞれ、無置換でも置換されていてもよい。芳香環に結合しうる置換基としては、例えば、炭素数1〜4程度のアルキル、炭素数1〜4程度のアルコキシ、フッ素や塩素、臭素のようなハロゲン、ニトロなどが挙げられる。アラルキルは、例えば、ベンジルやフェネチルなどであることができ、これらのアラルキルを構成する芳香環も、アルキル、アルコキシ、ハロゲン又はニトロのような置換基を有していてもよい。またカンファー基とは、ショウノウ(camphor )から導かれる1価基を意味し、特に10−カンファー基、すなわち10−カンファースルホン酸からスルホン酸基を除去した形の基が好ましい。
【0036】
式(II)で示されるN−置換スクシンイミド化合物の具体例としては、次のようなものを挙げることができる。
【0037】
N−(エチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、
N−(イソプロピルスルホニルオキシ)スクシンイミド、
N−(ブチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、
N−(ヘキシルスルホニルオキシ)スクシンイミド、
N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、
N−(クロロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、
N−(シクロヘキシルメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、
N−(シクロヘキシルスルホニルオキシ)スクシンイミド、
N−(フェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、
N−(p−又はo−トリルスルホニルオキシ)スクシンイミド、
N−(2,5−キシリルスルホニルオキシ)スクシンイミド、
N−(4−エチルフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、
N−(2,4,6−トリメチルフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、
N−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、
N−(4−メトキシフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、
N−(4−クロロフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、
N−(2,4,5−トリクロロフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、
N−(2−又は4−ニトロフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、
N−(4−メトキシ-2-ニトロフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、
N−(1−ナフチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、
N−(ベンジルスルホニルオキシ)スクシンイミド、
N−(10−カンファースルホニルオキシ)スクシンイミドなど。
【0038】
本発明のネガ型レジスト組成物における好ましい組成割合は、この組成物中の全固形分重量を基準に、アルカリ可溶性樹脂が50〜95重量%程度、より好ましくは70〜95重量%程度であり、放射線の作用により酸を発生する活性化合物、すなわち酸発生剤が0.5〜20重量%程度、架橋剤が0.1〜30重量部程度、そして式(I)で示される2,6−ジアルキルピリジン化合物が0.01〜1重量%程度である。2,6−ジアルキルピリジン化合物とともに、他の含窒素塩基性有機化合物を併用する場合も、2,6−ジアルキルピリジン化合物を含む含窒素塩基性有機化合物の合計量が、上記の0.01〜1重量%程度の範囲となるようにするのが好ましい。さらに、式(II)で示されるN−置換スクシンイミド化合物を含有させる場合は、同じく組成物中の全固形分重量を基準に1〜30重量%程度とするのが好ましい。
【0039】
以上述べたような各成分が溶剤に溶解され、レジスト溶液が調製される。ここで用いる溶剤は、各成分を溶解し、適当な乾燥速度を有し、そして溶剤が蒸発した後に均一で平滑な塗膜を与えるものであればよく、この分野で通常用いられているものであることができる。例えば、エチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートのようなグリコールエーテルエステル類、エチルセロソルブ、メチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル及びプロピレングリコールモノエチルエーテルのようなグリコールエーテル類、乳酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル及びピルビン酸エチルのようなエステル類、2−ヘプタノン及びシクロヘキサノンのようなケトン類、γ−ブチロラクトンのような環状エステル類などが挙げられる。これらの溶剤は、それぞれ単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。溶剤量は、塗布性なども考慮して、例えば、レジスト液中の全固形分濃度が10〜50重量%程度となるようにすればよい。
【0040】
こうして調製されたネガ型レジスト組成物は、シリコンウェハーなどの基体上に、常法に従い、スピンコーティングなどの方法で塗布されてレジスト膜が形成され、次いでパターニング露光される。このパターニング露光には、波長436nmのg線や波長365nmのi線のような低波長の可視光線ないし近紫外線、波長248nmのKrFエキシマレーザー光や波長193nmのArFエキシマレーザー光のような遠紫外線、波長157nmの F2エキシマレーザー光のような真空紫外線、波長13nmの軟X線、電子線、X線などが用いられる。パターニング露光後は、露光後ベークで架橋反応を起こさせ、次にアルカリ現像液で現像される。アルカリ現像液は、この分野で用いられる各種のアルカリ性水溶液であることができるが、一般には、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドや(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウムヒドロキシド(通称コリン)の水溶液が用いられることが多い。
【0041】
【実施例】
次に実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。例中、含有量ないし使用量を表す%及び部は、特にことわらないかぎり重量基準である。
【0042】
合成例1(部分エチルエーテル化ポリビニルフェノールの製造)
冷却管と攪拌装置を備えた1リットルの底抜きコック付きセパラブルフラスコに、丸善石油化学(株)製のポリ(p−ビニルフェノール)(商品名“S2P”)25.0g及びアセトン100gを仕込み、攪拌して溶解させた。そこに、無水炭酸カリウム11.5g及びよう化エチル6.49gを仕込み、還流状態になるまで昇温し、さらに還流状態を13時間維持した。室温まで冷却した後、反応液を濾過し、濾液にメチルイソブチルケトン200gを加えて、0.5%蓚酸水溶液で6回、次にイオン交換水で6回、それぞれ洗浄し、分液する操作を行った。得られた油層をエバポレーターを用いて71.4gまで濃縮し、そこにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート1,500gを加えてさらに濃縮を行い、70.4gの樹脂溶液を得た。この樹脂溶液は、加熱重量減少法により固形分濃度が24.83%と決定され、また核磁気共鳴(NMR)測定により、ポリビニルフェノール中の水酸基のうちのエチルエーテル化率が20.08%と決定された。この樹脂の重量平均分子量は約 4,780であり、これを樹脂ESとする。
【0043】
合成例2(m−クレゾールノボラック樹脂の製造)
還流管、攪拌装置及び温度計を備えた1リットルの四つ口フラスコに、m−クレゾール218.3g、蓚酸二水和物10.1g、90%酢酸水溶液68g及びメチルイソブチルケトン202gを仕込んで80℃まで昇温し、そこに37%ホルムアルデヒド水溶液113.0gを1時間かけて滴下した。その後、還流温度まで昇温し、その状態で12時間保温した。得られた反応液をメチルイソブチルケトンで希釈し、次いで水洗及び脱水を行って、ノボラック樹脂を50.3%含むメチルイソブチルケトン溶液を得た。この樹脂溶液100gを5リットルの底抜きフラスコに仕込み、メチルイソブチルケトン259gで希釈し、さらにヘプタン258gを仕込んで60℃で攪拌し、静置後分液して、下層のノボラック樹脂溶液を分離した。得られた下層のノボラック樹脂溶液を2−ヘプタノンで希釈してから濃縮し、ノボラック樹脂を35.3%含む2−ヘプタノン溶液を得た。このノボラック樹脂は重量平均分子量が約 9,340であり、GPCパターンにおける分子量900以下の範囲の面積比は約3.3%であった。これを樹脂MCとする。
【0044】
合成例3(ノボラック樹脂オリゴマーの製造)
還流管、攪拌装置及び温度計を備えた1リットルの四つ口フラスコに、m−クレゾール1,081g及び蓚酸二水和物2.52gを仕込んで80℃まで昇温し、そこに37%ホルムアルデヒド水溶液242.2gを1時間かけて滴下した。その後還流温度まで昇温し、その状態で3時間保温した。得られた反応液を200torr(約27kPa に相当)の減圧下に110℃まで加熱して濃縮した後、さらに15torr(約2kPa に相当)の減圧下に145℃まで加熱して濃縮した。これを2−ヘプタノンで希釈してから水洗し、さらに濃縮を行って、ノボラック樹脂を36.1%含む2−ヘプタノン溶液を得た。このノボラック樹脂は重量平均分子量が約510であり、これを樹脂Lとする。
【0045】
実施例1
以下の各成分を混合して完溶させた後、孔径0.2μmのフッ素樹脂製フィルターで濾過して、レジスト液を調製した。
【0046】
【0047】
上で得られたレジスト液を二つのガラス瓶に分け、一方は55℃のオーブン中で24時間保存し、その後23℃になるまで数時間放置した。もう一方は、23℃で同じ時間保存した。
【0048】
ヘキサメチルジシラザン(HMDS)で処理したシリコンウェハーに、上記保存後の各レジスト液を乾燥後の膜厚が0.535μmとなるようにスピンコートした。プリベークは、100℃、60秒の条件で、ダイレクトホットプレート上にて行った。こうしてレジスト膜を形成したウェハーに、(株)ニコン製のi線ステッパー“NSR 2005i9C”(NA=0.57、σ=0.60 )を用い、露光量を段階的に変化させて種々の寸法のラインアンドスペースパターンを露光した。その後、ホットプレート上にて、110℃、60秒の条件で露光後ベークを行い、次に2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で60秒間のパドル現像を行った。現像後のパターンを走査型電子顕微鏡で観察し、23℃保存品から得られたレジスト膜について、0.35μmラインアンドスペースパターンが1:1でマスク寸法どおりに現像される露光量(実効感度)を求めたところ、32msecであった。一方、55℃保存品から得られたレジスト膜について、上記実効感度の露光量で露光し、現像した0.35μmラインアンドスペースパターンのライン幅を測定して、23℃保存品から得られたライン幅に対する変化量を表1に示した。
【0049】
比較例1
2,6−ルチジンを配合しなかった以外は、実施例1と同様の組成及び操作でレジスト液を調製し、同様の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0050】
比較例2〜4
実施例1における2,6−ルチジンの代わりに、表1に記載の塩基性添加物を同量用いた以外は、実施例1と同様の組成及び操作でレジスト液を調製し、同様の方法で評価した。結果を併せて表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
【発明の効果】
本発明に従って、アルカリ可溶性樹脂、放射線の作用により酸を発生する活性化合物(酸発生剤)、及び架橋剤に加えて、2,6−ジアルキルピリジン化合物を含有させることにより、レジスト液の保存安定性を顕著に向上させることができる。
Claims (4)
- アルカリ可溶性樹脂が、ポリビニルフェノール又はその部分アルキルエーテル化物を含有する請求項1記載の組成物。
- 2,6−ジアルキルピリジン化合物が、2,6−ルチジンである請求項1又は2記載の組成物。
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