JP4342195B2 - 分割コア式ステータを備えたモータ - Google Patents

分割コア式ステータを備えたモータ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ステータコアが複数の分割コアを円環状に接合することにより構成される分割コア式ステータを備えたモータに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ブラシレスモータやACモータのステータとして、分割コアを円環状に配列した構成のステータコアを備えた分割コア式ステータが知られている。分割コア方式ステータを備えたモータでは、各分割コアごとにコイルの巻線を行うことができるので、多数の突極が内周面に形成されているリング状のステータコアに比べて、巻線作業が容易である。
【0003】
ここで、各分割コアは、溶接または加締めにより相互に接合されて、一体型のリング状ステータが構成され、各分割コアに巻かれているコイル巻線の結線にはプリント配線基板が用いられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
分割コア式ステータでは、各突極に対する巻き線作業は容易であるが、分割コアを円環状に連結する作業に時間が掛かるという問題点がある。また、各分割コアの連結時に、溶接時に加わる熱や加締め時に加わる力によって、ステータコアに歪みが発生する惧れがあるという問題点がある。
【0005】
さらに、各コイルの結線のためにプリント配線基板を用いると、結線に時間が掛かるという問題点もある。
【0006】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、分割コアの連結を簡単に行うことができるとともに、プリント配線基板を用いることなく各分割コアに巻いたコイルの結線を行うことができる分割コア式ステータを備えたモータを提案することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、ステータコアが複数の分割コアを円環状に配列することにより構成されている分割コア式ステータを備えたモータにおいて、
前記分割コア式ステータは、前記分割コアを円環状に配列された状態に保持している絶縁性のステータカバーを有し、
前記ステータカバーは、
円環状端板部分と、
前記円環状端板部分の外周縁および内周縁からステータカバーの中心軸線の方向に、同心状に延びている円形外周板部分および円形内周板部分と、
前記円形外周板部分の先端に形成された円環状端面と、
前記円環状端面の外周縁から前記中心軸線の方向に延びていると共に当該円環状端面の円周方向に沿って所定の角度間隔で形成され、半径方向に弾性変形可能な複数の分割コア押さえ板ばね部分と、
各分割コア押さえ板ばね部分の先端部から内側に突出している分割コア係合爪部分とを備えており、
円環状に配列された前記分割コアが、前記ステータカバーにおける前記分割コア押さえ板ばね部分の先端側から、前記分割コア押さえ板ばね部分の内側に嵌め込まれ、
各分割コア押さえ板ばね部分のばね力によって、各分割コアが前記中心軸線の側に押されて円環状の配列状態が保持され、
前記分割コア係合爪部分と、前記円環状端面および前記円形内周板部分の円環状先端面との間に、各分割コアが前記中心軸線の方向に移動しないように保持されており、
前記分割コア式ステータが収納されているモータケースの内周面には、円周方向に沿って所定の角度間隔で、各分割コア押さえ板ばね部分を収容するための収容溝が形成されていることを特徴としている。
【0008】
一般的には、前記分割コア押さえ板ばね部分は、円環状に配列された前記分割コアのそれぞれに対応する数だけ形成すればよい。
【0009】
本発明のステータコアは、分割コアを円環状に配列して、ステータカバーの分割コア押さえ板ばね部分の内側に嵌めこむ作業によって、分割コアを円環状に連結固定した状態が形成される。換言すると、円環状に配列した分割コアにステータカバーを被せるだけで、分割コアが円環状に連結固定された状態を形成できる。よって、各分割コアを溶接、加締めなどにより連結固定する場合に比べ、分割コアの連結固定作業を簡単かつ短時間で行うことができる。
【0010】
また、ステータカバーから分割コアを簡単に取り外すこともできる。よって、ステータコアの分解が容易であり、分解したステータカバーおよび分割コアのリサイクルも容易である。
【0011】
ここで、前記ステータカバーの前記円環状板部分の外側端面に、前記分割コアに巻かれたコイル巻線に接続されるリード線を納めるための溝部分を形成しておくことが好ましい。この構成によれば、ステータカバーの外側端面をプリント配線基板の代わりに用いて、コイル巻線の結線に用いたリード線を溝部分に収納することができる。よって、プリント配線基板の取り付け作業を省略でき、結線作業も容易になる。
【0012】
本発明のステータカバーは樹脂成形により形成することができる。
【0014】
本発明のステータコアでは、円環状に連結固定された分割コアの外周をステータカバーの分割コア押さえ板ばね部分が覆っているので、当該分割コア押さえ板ばね部分の厚さの2倍だけステータコアの外径寸法が大きくなってしまう。本発明では、モータケースの内周面に分割コア押さえ板ばね部分を収容するための溝を形成してあるので、ステータカバーを用いない従来の分割コア式ステータを収納可能なモータカバーと同一径のモータカバーを用いることができ、モータカバーの外径寸法の増加を回避できる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した分割コア式ステータを備えたモータの実施例を説明する。
【0016】
図1は本例のモータを示す正面図である。モータ1は、3相交流モータであり、回転軸2を備えたロータ3と、ロータ3を囲むように配置された分割コア式ステータ4と、モータケース5を有している。モータケース5は、前側ケース51と後側ケース52から構成されている。前側ケース51の前側端板部分51aおよび後側ケース52の後側端板部分52aは、それぞれ軸受51b、52bを介して、回転軸2の出力側端部21および反出力側端部22を回転自在の状態で支持している。
【0017】
分割コア式ステータ4はステータコア6とステータカバー8を備えている。ステータコア6は、各相のコイルが巻きつけられている複数個の分割コア7から構成されており、ステータカバー8は、分割コア7を円環状に連結固定した状態で保持している。
【0018】
図2(a)ないし(d)は、図1のモータ1におけるステータ4を示す左側面図、一部を断面で示す正面図、右側面図およびコイル巻線の結線図である。図2(d)に示すように、ステータコア6に巻きつけられているコイル巻線は、U相、V相、W相の3相をスター結線したものである。本例のステータコア6には12の極が形成されており、U相、V相、W相がそれぞれ4極構成となっている。
【0019】
ステータコア6は、図2(c)から分かるように、各極毎に分割された同一形状をした12個の分割コア7を円環状に配列することにより構成されている。各分割コア7は、円弧状本体71と、この円弧状本体71の内周面から、当該内周面の円弧中心に向けて突出している突起72と、樹脂製インシュレータ73を介して突起72に巻かれたコイル巻線74とを備え、これら突起72およびコイル巻線74によって1つの突極が構成されている。
【0020】
図3(a)、(b)および(c)は、図2のステータ4のステータカバー8を示す左側面図、正面図および右側面図である。図2、3を参照して説明すると、ステータカバー8は、円環状端板部分81と、円環状端板部分81の外周縁および内周縁からステータカバー8の中心軸線8aの方向に、同心状に延びている円形外周板部分82および円形内周板部分86とを有している。円形外周板部分82の先端には円環状端面83が形成されており、この円環状端面83の外周縁には、そこから中心軸線8aの方向に延びていると共に当該円環状端面83の円周方向に沿って等角度間隔で形成された複数の分割コア押さえ板ばね部分84が形成されている。本例では、12個の分割コア7に対応した12枚の分割コア押さえ板ばね部分84が形成されている。各分割コア押さえ板ばね部分84は、半径方向に弾性変形可能である。また、各分割コア押さえ板ばね部分84の先端部には内側に突出している分割コア係合爪部分85が形成されている。さらに、円環状端板部81には、分割コア7のコイル巻線の端末を外側に引き出すための複数の引き出し口81aと、コイル巻線の端末に接続したリードを納める溝81bが形成されている。
【0021】
ここで、円環状段面83と分割コア係合爪部分85の間隔は、分割コア7の厚さと同一とされており、円形内周板部分86の先端面87は円環状段面83と同一面上に位置している。また、各分割コア押さえ板ばね部分84の内面に内接する円の直径は、円環状に配列した分割コア7からなるステータコア6の外径と同一か、あるいは僅かに小さな寸法に設定されている。さらに、円環状端板部分81と、円形外周板部分82と、円形内周板部分86によって構成される側方に開いた環状空間は、分割コア7のコイル巻線部分を収納可能な大きさに設定されている。
【0022】
図4は、図2のステータ4が組み込まれるモータケース5の後側ケース52の部分を示す断面図である。この図から分かるように、後側ケース52の内周面52cには、ステータカバー8の分割コア押さえ板ばね部分84を収容するための収容溝52dが形成されている。
である。
【0023】
(モータの組立手順)
この構成のモータ1は次の手順により組み立てられる。まず、円弧状本体71の突起72に絶縁用のインシュレータ73を介してコイル巻線74が巻かれた分割コア7を12個用意する。
【0024】
次に、図5(a)に示すように各分割コア7を円環状に並べ、これをステータカバー8の分割コア押さえ板ばね部分84の内側に嵌め込む。分割コア7を円環状に並べることにより構成されたステータコア6を中心軸線8aの方向に押し込むと、図5(b)に示すように、分割コア押さえ板ばね部分84の先端の分割コア係合爪部分85が外側に押し広げられ、分割コア押さえ板ばね部分84の内側にステータコア6を嵌めこむことができる。ステータコア6の押し込みは、その一端側(各分割コア7の一端側)が、円形外周板部分82の先端に形成した円形段面83と、円形内周板部分86の先端面87に当たるまで行うことができる。
【0025】
この状態になると、分割コア7が分割コア押さえ板ばね部分84を丁度乗り越えた状態になり、各分割コア押さえ板ばね部分84が弾性復帰力によって半径方向の内側に戻る。この結果、各分割コア7の他方の端が、分割コア係合爪部分85に係合する。
【0026】
このように、ステータコア6をはめ込んだ状態では、円環状段面83および先端面87と、分割コア係合爪部分85の間にステータコア6が保持され、その軸線方向の位置が規定される。また、ステータコア6を構成している各分割コア7は、各分割コア押さえ板ばね部分84の弾性力によって中心軸線8aの側に押された状態になり、これにより、各分割コア7は円環状に保持される。
【0027】
しかる後に、ステータカバー8の円環状端板部分81の外側に、引き出し口81aから分割コア7のコイル巻線74の端末を引き出して、U相、V相、W相ごとにスター結線し、接続用のリード線91や接続部分92を溝部分81bに納めてステータ4が組み立てられる。
【0028】
このように組み立てられたステータ4を後側ケース52に組み込んだ後、ロータ3をステータ4の内側に配置して、前側ケース51を取り付けてモータ1が完成する。
【0029】
このように、本例のモータ1は、円環状に配列した分割コア7を樹脂製のステータカバー8に嵌めこむという簡単な作業により、各分割コア7が円環状に固定されたステータコア6を構成することができる。従って、各分割コア7を溶接、加締めなどにより固定する場合に比べると、分割コア7の固定作業が簡単であり、短時間で行うことができる。また、ステータコア6の分解も簡単に行うことができる。
【0030】
さらに、ステータカバー8には、円環状端板部分81の外側に分割コア7に巻かれたコイル巻線74に接続されるリード線91や接続部分92などを納めるための溝部分81bを形成してあるので、プリント配線基板を用いることなく、コイル巻線74の結線を行うことができる。よって、コイル巻線の結線作業が容易になる。
【0031】
一方、ステータ4を嵌め込むモータケース5の後側ケース52の内周面52cには、ステータカバー8の分割コア押さえ板ばね部分84を収容するための溝52dが形成されている。よって、ステータカバー8を使用しない従来のモータケースと同一の外径寸法のモータケースを用いることができ、モータケースの外径寸法の増加を回避できる。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明では、分割コアを円環状に並べて樹脂製などの絶縁性のステータカバーの内側に嵌めこむことにより、各分割コアが円環状に固定されたステータコアを構成している。従って、ステータカバーを取り付けるという簡単な作業により分割コアを円環状に固定できるので、各分割コアを溶接、加締めなどにより固定する場合に比べると、分割コアの固定作業が簡単であり、短時間で行うことができる。また、部品のリサイクルやモータ廃棄時には、ステータカバーを外せば、一体となった分割コアを再び分離させることができる。このため、分割コアからコイル巻線を分離するなどの廃棄部品の分別を容易に行うことができる。
【0033】
ステータカバーには、円環状端板部の外側に分割コアに巻かれたコイル巻線に接続されるリード線を納めるための溝部分を形成してあるので、プリント配線基板を用いることなく、コイル巻線の結線を行い、結線に用いたリード線を溝部分に収納することができる。 本発明では、モータケースの内周面に分割コア押さえ板ばね部分を収容するための溝を形成してあるので、ステータカバーを用いない従来の分割コア式ステータを収納可能なモータカバーと同一径のモータカバーを用いることができ、モータカバーの外径寸法の増加を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用したモータの実施例を一部断面として示す平面図である。
【図2】(a)ないし(d)は、図1のモータにおけるステータを示す左側面図、一部を断面で示す正面図、右側面図およびコイル巻線の結線図である。
【図3】(a)、(b)および(c)は、図2のステータのステータカバーを示す左側面図、正面図および右側面図である。
【図4】図2のステータが組み込まれるモータケースの後側ケースを示す断面図である。
【図5】(a)および(b)は、円環状に並べた分割コアをステータカバーに嵌めこむ動作を示す説明図である。
【符号の説明】
1 モータ
2 回転軸
3 ロータ
4 ステータ
5 モータケース
6 ステータコア
7 分割コア
8 ステータカバー
51 前側ケース
52 後側ケース
52c 内周面
52d 収容溝
71 円弧状本体
72 突起
73 インシュレータ
74 コイル巻線
81 円環状端板部分
81a 引き出し口
81b リード線を納める溝
82 円形外周板部分
83 円環状段面
87 円環状先端面
84 分割コア押さえ板ばね部分
85 分割コア係合爪部分
86 円形内周板部分

Claims (4)

  1. ステータコアが複数の分割コアを円環状に配列することにより構成されている分割コア式ステータを備えたモータにおいて、
    前記分割コア式ステータは、前記分割コアを円環状に配列された状態に保持している絶縁性のステータカバーを有し、
    前記ステータカバーは、
    円環状端板部分と、
    前記円環状端板部分の外周縁および内周縁からステータカバーの中心軸線の方向に、同心状に延びている円形外周板部分および円形内周板部分と、
    前記円形外周板部分の先端に形成された円環状端面と、
    前記円環状端面の外周縁から前記中心軸線の方向に延びていると共に当該円環状端面の円周方向に沿って所定の角度間隔で形成され、半径方向に弾性変形可能な複数の分割コア押さえ板ばね部分と、
    各分割コア押さえ板ばね部分の先端部から内側に突出している分割コア係合爪部分とを備えており、
    円環状に配列された前記分割コアが、前記ステータカバーにおける前記分割コア押さえ板ばね部分の先端側から、前記分割コア押さえ板ばね部分の内側に嵌め込まれ、
    各分割コア押さえ板ばね部分のばね力によって、各分割コアが前記中心軸線の側に押されて円環状の配列状態が保持され、
    前記分割コア係合爪部分と、前記円環状端面および前記円形内周板部分の円環状先端面との間に、各分割コアが前記中心軸線の方向に移動しないように保持されており、
    前記分割コア式ステータが収納されているモータケースの内周面には、円周方向に沿って所定の角度間隔で、各分割コア押さえ板ばね部分を収容するための収容溝が形成されていることを特徴とする分割コア式ステータを備えたモータ。
  2. 請求項1において、
    前記分割コア押さえ板ばね部分は、円環状に配列された前記分割コアのそれぞれに対応する数だけ形成されていることを特徴とする分割コア式ステータを備えたモータ。
  3. 請求項1または2において、
    前記ステータカバーの前記円環状端板部分の外側端面には、前記分割コアに巻かれたコイル巻線に接続されるリード線を納めるための溝部分が形成されていることを特徴とする分割コア式ステータを備えたモータ。
  4. 請求項1、2または3において、
    前記ステータカバーは樹脂成形品であることを特徴とする分割コア式ステータを備えたモータ。
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