JP4335493B2 - 乳化分散液の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、分散液が分散媒中に微粒子状に分散した乳化分散液の製造方法に関し、さらに詳しくは単分散のシャープな粒度分布を有する微粒子状に分散した均一な乳化分散液を製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の乳化方法はバッチ式で行われるのが一般的であり、分散液と分散媒および界面活性剤を高速撹拌機(ディゾルバー)、ホモジナイザー、ホモミクサー等の撹拌乳化混合機へ供給し分散滴を粉砕、衝突、せん断作用等を利用し微細化し、界面活性剤によりそれらの微粒子を安定化させて安定な乳化液を得ている。また近年では、バッチ式に代わって、流体を連続的に供給しながら乳化処理する連続式乳化装置も開発されている。
【0003】
バッチ式乳化装置の一例として、特開平6−182175号公報には、水平方向に回転可能に配置された乳化用撹拌翼とその上部に設置された液滴を解砕する解砕翼を備えた乳化装置により、始めに非水系物質を加え、撹拌しながらその後水系媒体を加えて水中油滴型の乳化液を作製する方法が開示されている。
【0004】
また、特開平11−57437号公報には、内部に高速で回転する撹拌羽根を備えたライン乳化装置を通じて水相を循環し、油相をライン乳化装置手前に連続的に供給する事により転相を伴わない乳化液の製造方法が開示されている。
【0005】
一方連続式乳化装置の一例として、特許第2515983号公報に、穿設孔を有する1枚の板よりなるオリフィスミキサーを用いて液状サイズ剤を乳化装置が開示されている。
【0006】
また、実開平6−24732号公報には、右捻りエレメントと左捻りエレメントを軸方向に交互にかつ隣接するエレメントの端部を交叉させて配列した静止型混合器を用いてエマルジョン型サイズ剤を製造する乳化装置が開示されている。
【0007】
さらに、その他連続式乳化装置としては、マントンゴーリン社のコロイドミル、マイクロフルイデックス社製のマイクロフルイダイザー等がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の乳化装置または乳化方法にはいずれも次のような問題点があった。
【0009】
特開平6−182175号公報に記載された方法では、平均粒子径が約1μmの微粒子状に分散した水中油滴型の乳化液を作製することは可能であるが、乳化室の底面並びに側面との間隔をできる限り狭くした乳化撹拌羽根を用いることが必要であり、大量処理が可能な大型の装置を製造することは困難である。さらに本装置による微粒子状に分散した乳化液の調整に際しては、始めに非水系物質を加え、撹拌しながらその後徐々に水系媒体を加えて水中油滴型の乳化液を作製するという転相乳化法が必要である。この方法ではバッチ方式が必須となると共に途中添加物の供給速度が制限されるため1バッチの調合に長時間を要するため生産性が劣るという欠点がある。またさらに転相時には液粘度が急激に上昇するため高トルク型の撹拌装置が必要であり装置が高価となる欠点を有する。その上、バッチ式転相乳化法における最大の問題は常に粒度分布が同じ微粒子状に分散した乳化液を調整することが難しい点にあり、品質の安定した乳化液の製造が困難である。
【0010】
特開平11−57437号公報に記載された技術は、ライン乳化装置が機械回転式であり、故障頻度が高く信頼性に欠けるという欠点を有している。ライン乳化装置を用いてはいるが、乳化処理はバッチ式であり生産性に劣る欠点を有している。
【0011】
特許第2515983号公報に記載された装置では、穿設孔を有する1枚の板よりなるオリフィスミキサーは広く生産現場において使用されているが、高濃度の微分散化した乳化液の作製は困難である。
【0012】
また、実開平6−24732号公報に記載された位置変更型の静止型混合器では、高濃度の微分散化した乳化液の作製は困難である。
【0013】
さらに、その他の連続式乳化装置は、微粒子化分散の効果はあるが、一般に500〜10,000kg/cm2といった超高圧力が必要となるため装置が高価となる。しかしその割に能力が少なく経済性に劣る欠点を有する。また貫通孔が極めて細いため運転途中で詰まる等のトラブルが発生し易く、極めて限定された対象に対してのみ使用されており、連続して大量処理する乳化分散液の製造には適していない。
【0014】
この発明は、上述した技術背景に鑑み、簡略化された工程で粒径が微細で高濃度の均一な乳化液を効率良く製造し、かつ大量連続処理が可能となる乳化分散液の製造方法の提供を目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
この発明の乳化分散液の製造方法は、前記目的を達成するために、流通管内部に、それぞれ板厚方向に複数の孔部が穿設された2枚の板体を、一方の板体の孔部が他方の板体の孔部と重なる部分の面積率が90%以下となるように組み合わせた静止型乳化分散エレメントが、1組以上配設されてなる流通管式管型乳化装置を用い、前記流通管式管型乳化装置に、乳化粒子相となる分散液、連続相となる分散媒および界面活性剤を供給し、これらの流体を前記静止型乳化分散エレメントの孔部を高速で流通させることを基本要旨とする。
【0016】
この発明において、前記板体の孔部は、断面形状が円形であるとともに、板厚方向の中間部に縮径部が形成されたテーパー状となされていることが好ましい。
【0017】
前記流体を、前記孔部の最小断面積部において5m/秒以上の速度で通過させることが好ましい。
【0018】
前記2枚の板体は、板厚方向に所定距離を隔てて組み合わされているか、あるいは板厚方向に接触状態に組み合わされている。
【0019】
また、この発明において、前記分散液が液状非水系物質であり、前記分散媒が液状水系物質であり、かつ前記界面活性剤が非イオン界面活性剤および陰イオン界面活性剤のうちの1種以上である。あるいは、前記分散液が液状水系物質であり、前記分散媒が液状非水系物質であり、かつ前記界面活性剤が非イオン界面活性剤および陰イオン界面活性剤のうちの1種以上である。
【0020】
前記分散媒の容量が分散液の容量以上であることが好ましい。
【0021】
さらに、分散液、分散媒および界面活性剤の少なくとも一つを大気圧下の沸点を超える温度に加熱し、前記流通管式管型乳化装置に供給することが好ましい。
【0022】
さらにまた、前記通流管式管型乳化装置を通過した流体を再度通流管式管型乳化装置に供給することもできる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について、図1〜図3を参照つつ詳細に説明する。
【0024】
図1に示すように、本発明に用いる流通管式管型乳化装置(1)は、流通管(2)内部に流れを遮る方向に静止型乳化分散エレメント(3)を配設したものであり、この乳化装置(1)を用いて連続的に乳化分散処理を行う。
【0025】
前記静止型乳化分散エレメント(3)は、それぞれ板厚方向に複数の孔部(4a)(4b)が穿設された2枚の板体(3a)(3b)により構成され、一方の板体(3a)の孔部(4a)が他方の板体(3b)の孔部(4b)と重なる部分の面積率が90%以下となるように組み合わされている。即ち、2枚の板体(3a)(3b)は孔部(4a)(4b)の位置や大きさが完全に一致するのではなく、一方の板体の孔部の開口部の一部を他方の板体の表面が塞ぐように組み合わされている。図1において、(5)は分散液、分散媒、界面活性剤を流通管式管型乳化装置(1)に導入するための供給路であり、(6)は流通管式管型乳化装置(1)で処理された乳化分散液を送出するための送出路である。
【0026】
この発明において、2枚の板体(3a)(3b)の孔部(4a)(4b)の重なる部分とは、上流側の板体(3a)の孔部(4a)の出側開口部が下流側の板体(3b)の孔部(4b)の入側開口部と重なる部分と定義し、開口面積に対する重なる部分の面積の占める割合を%で表す。以下、「重なり面積率」と省略して称する。なお、2枚の板体(3a)(3b)は、組合せ状態において接触していることも距離(l)を隔てていることもあるので、「重なる」とは接触状態のみを示すのではなく、同一平面上に投影したときに重なる状態をも示している。
【0027】
このような静止型乳化分散エレメント(3)に分散液、分散媒および界面活性剤を高速度で供給すると、これらの流体(F)は、上流側の板体(3a)において、板面へ衝突するとともに、孔部(4a)(4a)…で分流される。そして、上流側孔部(4a)と下流側孔部(4b)との位置のずれによって、流れが乱されながら下流側孔部(4b)に分流される。下流側の板体(3b)においても衝突、分流し、その後流体は集合する。このとき、2枚の板体(3a)(3b)に適切に穿設された孔部(4a)(4b)と板面との作用により発生する液衝突に伴う液滴破壊力と、2枚の板体(3a)(3b)のそれぞれの孔部(4a)(4b)を高速度で流体が通過する際生じる噴流によるキャビテーション作用と、孔部(3a)(3b)で分流される際の強いせん断力とによる分散力および攪拌力により、連続的な乳化分散処理がなされる。さらに、2枚の板体(3a)(3b)が距離(l)を隔てて組み合わされる場合は、2枚の板体(3a)(3b)間の狭い隙間を高速度で流れる事により強いせん断力が生じて、一層強力な分散力および攪拌力が作用する。
【0028】
2枚の板体(3a)(3b)の重なり面積率を90%以下とするのは、上流側の板体(3a)の孔部(4a)を通過した流体(F)を下流側の板体(3b)の表面に確実に衝突させて液滴破壊力を発生させるとともに、流れを複雑化することにより分散効果を高めるためである。上流側の孔部(4a)と下流側の孔部(4b)が完全に一致していると、その分散効果は大幅に低下する。特に好ましい重なり面積率は80%以下である。また、両孔部が全く重ならない重なり面積率が0%の場合も本発明に含まれる。
【0029】
前記板体(3a)(3b)の外周形状については特に制限はないが、均質な流れを得るために、厚みが一定で、表面が平滑な流通管(2)の形状に一致した形状のものが望ましい。流通管(2)として円形直管を使用する場合は、円形の形状の板体を使用することが望ましい。また、板体(3a)(3b)の厚さについては乳化分散器としての機械強度を保持するに十分な厚さ以上であれば特に制限はないが、通常1mm以上20mm以下の厚さの板を使用する事が望ましい。1mm未満では孔部(4a)(4b)を設けた場合、機械強度が不足する危険性があり、20mmを超えると過大な装置重量のため装置費が高価となる。
【0030】
また前記孔部についても、立体的な形状等に特に制限はなく適宜用いることができる。図2および図3に、2枚の板体を組み合わせた静止型乳化分散エレメントを例示する。
【0031】
図2(A)(B)(C)に示すように、静止型乳化分散エレメント(10)は、前記流通管(2)の内径(D)に対応する直径(D)の2枚の円形板体(10a)(10b)を組み合わせたものである。一方の板体(10a)は、中心から均等位置に断面形状円形の4個の孔部(11a)…が板体の表面に対して直角に穿設されている。前記孔部(11a)は、いずれも板体(10a)の板厚方向で孔径(d1)が一定の同一形状であって、孔間隔(X1)で形成されている。他方の板体(10b)は、一方の板体(10a)とは、孔部(11b)が中心から45°回転した位置に穿設されていることのみが異なる。従って、図2(C)に示すように、これら2枚の板体(10a)(10b)を重ねるように組み合わせると、両方の孔部(11a)(11b)は位置がずれているために全く重ならない。即ち、前記孔部(11a)の重なり面積率は0%である。
【0032】
また、図3(A)(B)(C)に示す静止型乳化分散エレメント(20)は、2枚の円形板体(20a)(20b)に穿設された孔部の形状と位置が、先の静止型乳化分散エレメント(10)と異なる。
【0033】
即ち、一方の板体(20a)には、中心に1個の孔部(21a)と、この孔部(21a)の周囲の均等位置に外接する4個の孔部(21a')との合計5個の孔部が穿設されている。他方の板体(20b)には、中心の周囲均等位置に互いに外接する4個の孔部(21b)が穿設されている。従って、孔間隔(X2)はいずれも開口直径(d3)に等しい。
【0034】
前記各孔部(21a)(21a')(21b)は、断面形状が円形であり、板厚方向の中央に直径(d2)の縮径部(22a)(22b)が形成されて、開口直径(d3)の開口部に向かって径大となるテーパー状となされた、いわゆる杵型構造の孔部である。前記孔部(21a)(21a')(22b)において、入側および出側のテーパー部(符号なし)の板厚方向の長さは等しく(y1)であり、縮径部(22a)(22b)の板厚方向の長さは(y2)である。また、開口直径は入側、出側ともに等しく(d3)である。
【0035】
そして、図3(C)に示すように、これら2枚の板体(20a)(20b)を組み合わせると、それぞれの孔部(21a)(21b)が孔部(21b)(21a)の中心で囲まれた正四角形の重心点となるように互いに配置され、両方の孔部(21a)(21b)は部分的に重なる。これらの孔部(21a)(21a')の重なり面積率は、中心に位置して下流側の4つの孔部(21b)に対して重なり部分を有する孔部(21a)は72.8%、2つの孔部(21b)に対して重なり部分を有する孔部(21a')は36.4%である。なお、本実施形態では、中央の孔部(21a')のみが重なり面積率が72.8%となっている。しかし、同心円を描くように外側に孔部を適宜増設していけば、板体の中央部に重なり面積率の等しい孔部を数多く形成することができる。もとより、この発明は孔部数を限定するものではない。
【0036】
この発明は、孔部形状や孔部数を上記例に限定するものではないが、分散効率および攪拌効率が優れている点で、図3に示した杵型構造のものが好ましい。即ち、杵型構造の孔部(21a)(21b)では流体が高速度で流れる時、その構造により急激な縮小流れと拡大流れが与えられることにより、通常の衝突・せん断・噴流による分散力に加え、さらにより激しい乱流による混合を受けるため一層細かい微粒子分散体を得ることができる。さらにまた、穿設孔部の構造とその配置により圧力損失を最小に抑えることができる。
【0037】
その他の孔部の形状としては、流通方向に縮径されるテーパー形状、板厚方向に対して斜行する形状等を例示できる。また、断面形状も円形、三角形、四角形、多角形、星形、スリット状等いずれの形状であっても可能である。但し、狭い粒度分布の微粒子分散体を得るためには、円形または正多角形が望ましい。特に均等な流れを得る事ができる円形が望ましい。さらに流路断面全体にできる限り均等に配置した、同一寸法の複数個の穿設孔部を設けることが望ましい。
【0038】
また、前記孔部の寸法について穿設可能であれば特に制限はないが、狭い粒度分布の微粒子分散体を得るためには、複数個の同一形状、同一寸法の孔部を流れ断面に均等に穿設する事が望ましい。また、孔部における最小断面積部の寸法が小さくなりすぎると、流体の詰まりが生じるおそれがある。このような観点から、例えば断面形状円形孔部の場合は直径が0.5mm以上が望ましい。また、断面形状が三角形以上の多角形、あるいは星形、スリット状、その他の異形断面形状の孔部の場合は、内部に直径0.5mm以上の円を形成できる寸法であることが望ましい。なお、孔部の最大寸法については制限されない。
【0039】
また上述したように、1組の2枚の板体(3a)(3b)は、接触させて組み合わせることも、所定距離(l)を隔てて組み合わせることもできる。後者の場合、前記距離(l)は通常20mm以下であることが望ましい。20mmを超えると各々の板体(3a)(3b)が独立して作用するため2枚の板体(3a)(3b)間の流れにより生じる液衝突に伴う液滴破壊力とせん断力による分散力を十分に利用する事ができないため、狭い粒度分布の微粒子分散体を得る事が出来ない。さらに2枚の板体(3a)(3b)の間隔(l)は5mm以下であることが特に好ましい。2枚の板体(3a)(3b)を設置する角度は流れを遮る事ができる角度であれば特に制限はないが、通常板面が流れに直角となる角度に設置することが望ましい。また2枚の板体の角度は一致させる事が望ましい。
【0040】
前記流通管(2)の形状やサイズについて特に制限はない。曲管でも直管でも使用できるが、通常直管を使用する事が望ましい。管の断面形状は円形、四角形、多角形のいずれでもよいが、均等な流れを得る事ができる円形の断面構造が望ましく、内径5mm以上の円形直管を使用することが望ましい。内径5mm未満では、均等に孔部を配置することが困難であり、かつ孔部の面積が少ないため処理能力が不十分である。
【0041】
前記流通管(2)の寸法の変化に対して、孔部(3a)(3b)の寸法を特に変更する必要はない。流通管(2)の寸法が大きくなった場合でも、小スケール実験で得られた最適条件の寸法、形状、配置の孔部(3a)(3b)を使用することができる。従って、処理量を増加させたた場合でも同一の粒度分布を有する微粒子分散体を得ることができる。
【0042】
また、前記流通管(2)および板体(3a)(3b)の材質についても特に制限はない。各種鉄鋼材料やプラスチック材料やその他材料の中より、流体の化学的性質、摩耗性、操作温度や圧力、製作コスト等を考慮して選定することが望ましい。
【0043】
前記流通管式管型乳化装置(1)において、2組以上の静止型乳化分散エレメント(3)を使用する場合は、各組間の間隔について特に制限はなく、接触させても、隙間を設けても良い。また、複数の流通管式管型乳化装置(1)を直列または並列に接続することも可能であるし、前記流通管式管型乳化装置(1)間にさらに混合を主目的としたケニックス型等の混合方式の異なるの静止型混合器を設置することも可能である。さらに、前記通流管式管型乳化装置(1)を通過した流体を再度通流管式管型乳化装置(1)に供給して、同じ装置で処理を重ねることも可能である。
【0044】
この発明において、流体が孔部の最小断面積部を通過する速度は5m/秒以上であることが望ましい。さらに15m/秒以上であることが望ましい。本装置は衝突・せん断・噴流による分散力を利用することにより微粒子分散体を生成することが可能となるため、流体を高速度で流すことが望ましい。従って、5m/秒未満の流速では微粒子分散体を生成するに十分な乳化分散力を得ることができない。一方、流速を上げるに従って、より微細な乳化分散体を得ることができるが、100m/秒を超える流速になると過大な圧力損失が発生するため、100m/秒以下が好ましい。
【0045】
本発明に適用する液状非水系物質としては、低粘度液状物、高粘度液状物、半固形物、ホットメルト素材等、乳化に用いる液状水系物質に溶解しないものであればいずれの物質も用いることができる。例えば炭化水素系油状物、炭化水素の変性物等の天然若しくは合成オイル、大豆油等の植物油、スチレン、(メタ)アクリル酸エステル等のモノマー類、フタル酸エステル等の可塑剤、フェノール類等の酸化防止剤、液状ゴム、液状樹脂等およびそれらの混合物が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0046】
これらの液状非水系物質の粘度について特に制限はないが、乳化粒子相である分散液として使用される場合、安定な微粒子分散体を得るために、10,000mPa・s以下である事が望ましい。また連続相である分散媒として使用される場合、5,000mPa・s以下である事が望ましい。5,000mPa・s以上では通常使用される運転圧力内で本静止型乳化分散エレメントに所望の流速で液を供給する事が困難となる。
【0047】
一方、本発明に適用する液状水系物質としては、工業用水、イオン交換水等の各種水および水を主成分とする塩類、塩基類、無機酸類、有機酸類、アルコール類等が溶解した水溶液等が挙げられる。乳化に用いる液状非水系物質と相互に溶解しない水を主成分とする液状物質であれば、いずれの物質も使用することができる。
【0048】
本発明に適用する界面活性剤のうち、非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンアルキルエステル類、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル類等およびそれらの混合物が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。また、陰イオン界面活性剤としては、脂肪酸塩類、高級アルコール硫酸エステル塩類、液体脂肪油硫酸エステル塩類、脂肪族アミンおよび脂肪族アマイドの硫酸塩類、脂肪アルコールリン酸エステル塩類、二塩基性脂肪族エステルのスルホン塩類、脂肪酸アミドスルホン酸塩類、アルキルアリルスルホン酸塩類、ホルマリン縮合のナフタリンスルホン酸塩類等およびそれらの混合物が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0049】
さらに、複数種の界面活性剤の併用、非イオン界面活性剤および陰イオン界面活性剤の併用も可能である。
【0050】
分散液が液状非水系物質であり、分散媒が液状水系物質である場合、水中油滴型(O/W型)乳化分散液の作製の場合は、界面活性剤として非イオン界面活性剤および陰イオン界面活性剤うちの1種以上を使用する。非イオン界面活性剤の場合は、特にHLB値が8以上のものを使用する事が望ましい。反対に、分散液が液状水系物質であり、分散媒が液状非水系物質である場合、即ち油中水滴型(W/O型)乳化分散液の作製の場合は、界面活性剤として非イオン界面活性剤および陰イオン界面活性剤うちの1種以上を使用する。非イオン界面活性剤の場合は、HLB値が6以下のものを使用する事が望ましい。また、何れの組合せの場合も、分散効率が良い点で、前記分散媒の容量が分散液の容量以上であることが好ましい。
【0051】
本乳化分散操作においては、分散媒、分散液、および界面活性剤の混合方法について特に制限されるものではない。例えば、分散媒中へ分散液と界面活性剤を乳化分散させる方法、分散液と界面活性剤の混合液中へ分散媒を徐徐に加えて転相乳化させる方法等各種の乳化方法を使用する事ができる。
【0052】
さらに消泡剤、重合禁止剤、充填剤等乳化操作に悪影響を及ぼさないものであれば、前記記載の液状非水系物質、液状水系物質並びに界面活性剤に加えて、必要に応じて適宜添加する事ができる。
【0053】
また、分散液、分散媒および界面活性剤の少なくとも一つを大気圧下の沸点を超える温度に加熱した後、前記流通管式管型乳化装置に供給することが好ましく、分散効率を高めることができる。
【0054】
【実施例】
次に、本発明を実施例により詳細に説明する。各種の物性の測定は、下記の方法に従って行った。また、部および%は特に記述がない場合は重量部および重量%を意味する。
〔1〕体積平均粒子径(メディアン径)の測定;
堀場製作所製 粒度分布測定装置 LA−300で透過率85〜95%、循環速度5,データ取り込み回数10回の条件にて体積基準粒度分布を測定し、体積平均粒子径および標準偏差を求めた。実施例中特に測定法について記述がない場合は本測定法により求めた値を意味する。
〔2〕HLB値;メーカ記載の数値を使用した。
〔3〕粘度;B型粘度計による測定データによる。
(実施例1)
図4に示す製造プロセス例−1の構成において、流通管式管型乳化装置として、図1に示す流通管(2)の中部に、図3に示した杵型構造の孔部(21a)(21b)が穿設された2枚の板体(20a)(20b)を組み合わせた静止型乳化分散エレメント(20)を1組設置した。使用した各装置の寸法は以下の通りである。
【0055】
流通管(2)の長さ(L);150mm
流通管の内径(D);18mm
板体の間隔(l);0(接触状態)
孔部(21a)(21b)の縮径部(22a)(22b)の直径(d2);2mm
孔部(21a)(21b)の開口直径(d3);6mm
板体(20a)(20b)の板厚(t2);5mm
孔間隔(X2);6mm
孔部(21a)(21b)のテーパー部の長さ(y1);2mm
縮径部(22a)(22b)の長さ(y2);1mm
孔部の最小断面積(縮径部(22a)(22b)の断面積);0.126cm2
孔部の重なり面積率;72.8%(21a)、36.4%(21a')
静止型乳化分散エレメント(20)の角度;流通方向に対して直角
タンクT1に分散媒として液状水系物質の25℃イオン交換水17Lを投入し、タンクT2に分散液として液状非水系物質の25℃白絞油(粘度 50mPa・s)10kgを投入した後、25℃の非イオン界面活性剤;ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート(花王社製;レオドールスーパTW−O120、HLB値;15)3kgを加え、十分にかき混ぜ混合した。
【0056】
ポンプP1により7.9L/minの流量でイオン交換水を上記乳化装置へ供給すると共にポンプP2により6.1L/minの流量で該白絞油と界面活性剤混合液を同じく上記乳化装置へ供給し、O/W型乳化分散液を作製した。この際の孔部の最小断面積部(縮径部(22a)(22b))を通過する流速は18.5m/sec,差圧は0.5MPaであった。
【0057】
作製した乳化分散液において、乳化分散粒子の体積平均粒子径は4.1μm、標準偏差は3.1μmであった。
(実施例2)
実施例1のポンプP1の供給流量を15.8L/min,ポンプP2の供給流量を12.2L/min,に変更し、その他は同一条件にて乳化分散液の作製を行った。この時、孔部の最小断面積部における流速は37m/sec、差圧は2MPaであった。
【0058】
得られた乳化分散液の体積平均粒子径は2.5μm、標準偏差は1.7μmであった。
(実施例3)
実施例1のポンプP1の供給流量を31.6L/min,ポンプP2の供給流量を24.4L/min,に変更し、その他は同一条件にて乳化分散液の作製を行った。この時、孔部の最小断面積部における流速は74m/sec、差圧は6.5MPaであった。
【0059】
得られた乳化分散液の体積平均粒子径は1.4μm、標準偏差は1.0μmであった。
【0060】
最小断面積部における流速を上げることにより、より微細な粒子を得ることができた。
(実施例4、5、6)
実施例1の液状非水系物質の白絞油に代え、25℃ヒマシ油(粘度700mPa・s)を使用し、その他は実施例1、2、3各々と同一条件で乳化分散液を作製した。各乳化分散液の体積平均粒子径および標準偏差を表1に実施例1〜3の結果と併せ示す。
【0061】
白絞油の場合と同じく最小断面積部における流速を上げるに従って粒子径は小さくなり、体積平均粒子径が2μm以下の標準偏差が小さい、シャープな粒度分布を示す安定な乳化分散液を得ることができた。
(実施例7)
実施例1で使用した静止型分散エレメント(20)に代え、図2に示した一定直径の孔部(11a)(11b)を有する2枚の板体(10a)(10b)を組み合わせた静止型乳化分散エレメント(10)を1組設置した。各部寸法は以下のごとくである。
【0062】
孔間隔(x1);6mm
孔部(11a)(11b)の直径(d1);2mm
板体(10a)(10b)の板厚(t1);5mm
板体(10a)(10b)の間隔(l);2mm
静止型乳化分散エレメント(10)の角度;流通方向に対して直角
孔部(11a)の重なり面積率;0%
その他は実施例1と同一の条件で乳化分散テストを実施した。その際の最小断面積部における流速は18.5m/sec、差圧は1MPaであった。得られた乳化分散液の体積平均粒子径は5.2μm、標準偏差は4.3μmであった。
(実施例8)
図5に示す製造プロセス例−2の構成になる設備を用いてテストを行った。流通管式乳化装置として流通管(2)およびと静止型分散エレメント(20)は実施例1と同一のものを使用した。
【0063】
タンクT1へ分散媒として90℃イオン交換水60Lを投入し、KOH300g加え、十分に混合した。タンクT2へ分散液として120℃に加熱し溶解させた、グッドイヤー社製ウイングステイL(WSL)10kgを投入し、陰イオン界面活性剤であるオレイン酸0.5kgを加え十分に混合した(粘度1,000mPa・s)。ポンプP1により9.2L/minの流量で該イオン交換水を上記乳化装置へ供給すると共に、M1スチームミキサーにより該イオン交換水を120℃まで加熱し、さらにC1冷却器にて90℃まで冷却した状態で運転を継続し、その後ポンプP2により4.8L/minの流量で120℃の該ウイングステイL(WSL)−オレイン酸混合液を供給し、O/W型の乳化液を作製した。最小断面積部における流速は18.5m/sec、差圧は0.5MPaであった。その結果、得られた乳化分散液の体積平均粒子径は1.8μm、標準偏差は1.0μmであった。結果を表2へ記載する。
【0064】
非水系物質の融点が水系物質の大気圧下の沸点100℃より高い場合においても、本乳化装置とスチーム加熱器および冷却器を組み合わせることにより、経済的に有利で、大量生産が可能な方法により乳化分散液を作製する事ができた。
(実施例9)
図6に示す製造プロセス例−3の構成になる設備を用いて、流通管式管型乳化装置として実施例1と同一の流通管(2)と静止型分散エレメント(20)を使用し、タンクT1,T2へは実施例1と同液種、同液量の分散媒と分散液を投入した。
【0065】
ポンプP1により該イオン交換水を31.6L/minの流量で乳化装置を経由した後、T1へ戻る循環運転を開始した。その後P2により該白絞油ー界面活性剤混合液を24.4L/minの流量で乳化装置へ供給し、乳化分散液の作製を開始した。タンクT2内の分散液がなくなった時、P2を停止すると共にP1の流量を56L/minへ増加し、さらに5分間T1→P1→乳化装置→T1と循環運転を継続した後、P1を停止し乳化分散操作を終了した。最小断面積部における流速は74m/sec、差圧は6.5MPaであった。その結果、得られた乳化分散液の体積平均粒子径は0.7μm、標準偏差は0.24μmであった。結果を表2へ記載する。
【0066】
繰り返し本乳化装置に通して乳化させた事により、非常に微細な、安定な乳化液を作製することができた。
(実施例10)
実施例1において、流通管式管型乳化装置として流通管(2)の中央部に図3の構造の静止型乳化分散エレメント(20)を2組互いの間隔を空けないで設置し、その他の条件は実施例1と同一にて、乳化分散テストを行った。最小断面積部における流速は18.5m/sec、差圧は0.8MPaであった。その結果、得られた乳化分散液の体積平均粒子径は3.5μm、標準偏差は2.9μmであった。結果を表2へ記載する。
(実施例11)
図7に示す製造プロセス例−4の構成の設備において、流通管式管型乳化装置として実施例1と同一の流通管(2)および静止型乳化分散エレメント(20)を使用して乳化分散テストを行った。
【0067】
タンクT1へ分散媒として60℃のイオン交換水5Lを投入し、タンクT2へ分散液として60℃のヒマシ油3kg(粘度60mPa・s)と60℃の非イオン界面活性剤;ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート(花王社製;レオドールスーパTW−O120、HLB値;15)0.9kgを投入し、十分にかき混ぜ混合した。ポンプP2を起動し、タンクT2内の分散液を14L/minの流量で乳化装置を経由してタンクT2へ戻す循環を開始した。タンクT1の下部コックを僅かに開け、T1内のイオン交換水1.5kgを約5分間かけタンクT2へ添加した。途中で分散液の粘度が上昇した後、転相が起こり、O/W型の乳化液となった。さらに循環運転を継続しながら、残りのイオン交換水3.5kgを添加し乳化分散液の作製を完了した。その際の最小断面積部における流速は18.5m/sec、差圧は1MPaであった。その結果、得られた乳化分散液の体積平均粒子径は1.2μm、標準偏差は0.62μmであった。結果を表2へ記載する。
【0068】
なお、差圧はヒマシ油のみの循環運転時は1MPaであったが、転相前には上昇し、転相完了後再び1MPa前後になった。
(実施例12)
実施例1と同一の設備を用いて乳化分散テストを行った。タンクT1に分散媒として液状非水系物質の40℃のC重油(180mPa.sec)を9Lを投入した後、非イオン界面活性剤(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、EO付加モル数が3)200gを加え、十分にかき混ぜ、溶解させた。一方タンクT2へは分散液として液状水系物質の40℃イオン交換水1kgを投入した。ポンプP1により12.6L/minの流量でC重油と非イオン界面活性剤の混合液を乳化装置へ供給すると共に、ポンプP2により1.4L/minの流量でイオン交換水を乳化装置へ供給し、W/O型の乳化分散液を作製した。その際の最小断面積部における流速は18.5m/sec、差圧は1.2MPaであった。顕微鏡写真より求めた乳化分散液の体積平均粒子径は4.8μm、標準偏差は3.5μmであった。結果を表2へ記載する。
(比較例1)
図8に示す撹拌装置(40)を用いて乳化分散液の作製を行った。使用した攪拌装置(40)の各寸法を以下に示す。
【0069】
撹拌槽(41)の内径(r1);100mm
撹拌槽(41)の高さ(h1);250mm
撹拌翼(42)の種類;6枚ディスクタービン翼1段
翼径(r2):50mm、翼板寸法;長さ12mm×巾8mm
翼セット高さ(h2);底部より12mm
バッフル条件;6mm平板バッフル×4枚
分散媒の25℃イオン交換水300mLを上記撹拌槽(41)に添加し、500rpmの回転速度で撹拌を開始した。予め分散液の白絞油180gに非イオン界面活性剤 ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート(花王社製;レオドールスーパTW−O120、HLB値;15)54gを添加混合した25℃の液をゆっくりと添加し、添加完了後700rpmに回転数を上げ、5分間撹拌を継続した後、テストを終了した。その結果、得られた乳化分散液の体積平均粒子径は15.8μm、標準偏差は26.4μmであった。結果を表3へ記載する。
得られた乳化液は不安定で、放置しておくと短期間の間に相分離が発生した。
(比較例2)
比較例1における白絞油をヒマシ油に変更し、他は比較例1と同一条件にて乳化分散テストを実施した。その結果、得られた乳化分散液の体積平均粒子径は38.3μm、標準偏差は55μmであった。結果を表3へ記載する。
【0070】
得られた乳化液は不安定で、放置しておくと短期間の間に相分離が発生した。
(比較例3)
比較例1と同一の撹拌槽(41)を用いて、以下のごとく転相乳化法による実験を行った。
【0071】
撹拌槽(41に25℃白絞油200gを添加した後、25℃の非イオン界面活性剤 レオドールスーパTW−O120 60gを添加し、500rpmで撹拌を開始した。25℃イオン交換水340gの内80gをゆっくりと添加した後、回転数を700rpmへ上げ、5分間撹拌を継続した。
【0072】
その後残りのイオン交換水260gを添加し、添加完了後5分間撹拌を継続し、実験を終了した。その結果、得られた乳化分散液の体積平均粒子径は18.3μm、標準偏差は10.9μmであった。結果を表3へ記載する。
【0073】
得られた乳化液は不安定で、放置しておくと短期間の間に相分離が発生した。
(比較例4)
比較例3における白絞油をヒマシ油に変更した以外は比較例3と同一条件で乳化分散テストを行った。その結果、得られた乳化分散液の体積平均粒子径は3.1μm、標準偏差は1.7μmであった。結果を表3へ記載する。
(比較例5)
実施例1における流通管式管型乳化装置として、孔部(21a)(21a')(21b)の位置の異なる板体(20a)(20b)からなる1組の静止型乳化分散エレメント(20)に代えて、同一構造の2枚の板体(20a)(20a)からなる静止型乳化分散エレメントを使用し。即ち、孔部の重なり面積率は100%である。その他は全て実施例1と同一条件で乳化分散テストを実施した。
【0074】
その結果、得られた乳化分散液の体積平均粒子径は6.5μm、標準偏差は5.7μmであった。本例では、重なり面積率が100%であるため、標準偏差が大きい。即ち大きな粒子を含む分散液となった。そのため放置しておくと短期間で少量であったが、相分離が発生した。結果を表3へ記載する。なお、この時の孔部の最小断面積部における流速は18.5m/sec、差圧は0.3MPaであった。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
【表3】
【0078】
【発明の効果】
以上の次第で、この発明の乳化分散液の製造方法は、流通管内部に、それぞれ板厚方向に複数の孔部が穿設された2枚の板体を、一方の板体の孔部が他方の板体の孔部と重なる部分の面積率が90%以下となるように組み合わせた静止型乳化分散エレメントが、1組以上配設されてなる流通管式管型乳化装置を用い、前記流通管式管型乳化装置に、乳化粒子相となる分散液、連続相となる分散媒および界面活性剤を供給し、これらの流体を前記静止型乳化分散エレメントの孔部を高速で流通させるものであるから、液衝突に伴う液滴破壊力、噴流によるキャビテーション作用、孔部に分流される際のせん断力による優れた分散力および攪拌力により、乳化分散処理を行い、粒径が微細で高濃度の均一な乳化分散液を製造することができる。しかも、処理に要する装置は流通管内に静止型乳化分散エレメントを配設した簡単な構造であり、かつ材料流体を高速度で流通させるだけの簡単な工程であるから、上記乳化分散液の大量生産が可能である。
【0079】
また、前記板体の孔部が、断面形状が円形であるとともに、板厚方向の中間部に縮径部が形成されたテーパー状となされている場合は、流体をより激しく乱流させ、一層細かく微粒子を分散させることができる。
【0080】
流体が前記孔部の最小断面積部を通過する速度が5m/秒以上である場合は、上述した衝突・せん断・噴流による、特に高い分散力が得られる。
【0081】
前記2枚の板体は、板厚方向に所定距離を隔てて組み合わされている場合は、上述した衝突・せん断・噴流による分散力に、隙間を流れる時の強いせん断力が加わり、分散力を高めることができる。また板厚方向に接触状態に組み合わされていても良い。
【0082】
また、この発明に好適に使用できる流体例として、前記分散液が液状非水系物質であり、前記分散媒が液状水系物質であり、かつ前記界面活性剤が非イオン界面活性剤および陰イオン界面活性剤のうちの1種以上を例示できる。あるいは、前記分散液が液状水系物質であり、前記分散媒が液状非水系物質であり、かつ前記界面活性剤が非イオン界面活性剤および陰イオン界面活性剤のうちの1種以上を例示できる。これらの組合せにより、粒径が微細で高濃度の均一な乳化分散液を製造することができる。
【0083】
前記分散媒の容量が分散液の容量以上である場合には、特に粒径が微細で高濃度の均一な乳化分散液を製造することができる。
【0084】
さらに、分散液、分散媒および界面活性剤の少なくとも一つを大気圧下の沸点を超える温度に加熱した後、前記流通管式管型乳化装置に供給する場合は、高い分散性を得て特に粒径が微細で高濃度の均一な乳化分散液を製造することができる。
【0085】
さらにまた、前記通流管式管型乳化装置を通過した流体を再度通流管式管型乳化装置に供給する場合も、特に粒径が微細で高濃度の均一な乳化分散液を製造す
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の乳化分散液の製造方法に用いる流通管式管型乳化装置の一例を示す、一部切欠斜視図である。
【図2】静止型乳化分散エレメントの一例を示す図であり、(A)は上流側の板体の平面図および2A−2A線断面図、(B)は下流側の板体の平面図および2B−2B線断面図、(C)は2枚の組合せ状態を示す平面図および2C−2C線断面図図である。
【図3】静止型乳化分散エレメントの他の例を示す図であり、(A)は上流側の板体の平面図および3A−3A線断面図、(B)は下流側の板体の平面図および3B−23線断面図、(C)は2枚の組合せ状態を示す平面図および3C−3C線断面図図である。
【図4】この発明の乳化分散液の製造方法の製造プロセスの例−1を示すブロック図である。
【図5】この発明の乳化分散液の製造方法の製造プロセスの例−2を示すブロック図である。
【図6】この発明の乳化分散液の製造方法の製造プロセスの例−3を示すブロック図である。
【図7】この発明の乳化分散液の製造方法の製造プロセスの例−4を示すブロック図である。
【図8】乳化分散用撹拌槽を模式的に示す図である。
【符号の説明】
1…流通管式管型乳化装置
2…流通管
3,10,20…静止型乳化分散エレメント
3a,3b,10a,10b,20a,20b…板体
4a,4b,11a,11b,21a,21a',21b…孔部
22a,22b…縮径部
Claims (11)
- 流通管内部に、それぞれ板厚方向に複数の孔部が穿設された2枚の板体を、一方の板体の孔部が他方の板体の孔部と重なる部分の面積率が90%以下となるように組み合わせた静止型乳化分散エレメントが、1組以上配設されてなる流通管式管型乳化装置を用い、
前記流通管式管型乳化装置に、乳化粒子相となる分散液、連続相となる分散媒および界面活性剤を供給し、これらの流体を前記静止型乳化分散エレメントの孔部を高速で流通させ、かつ前記孔部の最小断面積部において5〜100m/秒の速度で通過させることを特徴とする乳化分散液の製造方法。 - 前記板体の孔部は、断面形状が円形であるとともに、板厚方向の中間部に縮径部が形成されたテーパー状となされている請求項1に記載の乳化分散液の製造方法。
- 前記2枚の板体は、板厚方向に所定距離を隔てて組み合わされている請求項1または2に記載の乳化分散液の製造方法。
- 前記2枚の板体は、板厚方向に接触状態に組み合わされている請求項1〜3のいずれかに記載の乳化分散液の製造方法。
- 前記分散液が液状非水系物質であり、前記分散媒が液状水系物質であり、かつ前記界面活性剤が非イオン界面活性剤および陰イオン界面活性剤のうちの1種以上である請求項1〜4のいずれかに記載の乳化分散液の製造方法。
- 前記分散液が液状水系物質であり、前記分散媒が液状非水系物質であり、かつ前記界面活性剤が非イオン界面活性剤および陰イオン界面活性剤のうちの1種以上である請求項1〜5のいずれかに記載の乳化分散液の製造方法。
- 前記分散媒の容量が分散液の容量以上である請求項1〜6のいずれかに記載の乳化分散液の製造方法。
- 分散液、分散媒および界面活性剤の少なくとも一つを大気圧下の沸点を超える温度に加熱し、前記流通管式管型乳化装置に供給する請求項1〜7のいずれかに記載の乳化分散液の製造方法。
- 前記流通管式管型乳化装置を通過した流体を再度その流通管式管型乳化装置に供給する請求項1〜8のいずれかに記載の乳化分散液の製造方法。
- 前記流通管式管型乳化装置に流体を導入する供給路の断面積が前記静止型乳化分散エレメントの断面積よりも小さく設定されている請求項1〜9のいずれかに記載の乳化分散液の製造方法。
- 流通管内部に、それぞれ板厚方向に複数の孔部が穿設された2枚の板体を、一方の板体の孔部が他方の板体の孔部と重なる部分の面積率が90%以下となるように組み合わせた静止型乳化分散エレメントが、1組以上配設されてなる流通管式管型乳化装置を用い、
前記流通管式管型乳化装置に、乳化粒子相となる分散液、連続相となる水系分散媒および界面活性剤を供給し、これらの流体を前記静止型乳化分散エレメントの孔部を高速で流通させ、かつ前記水系分散媒をスチームミキサーにより大気圧下の沸点を超える温度に加熱して供給し、かつ前記孔部の最小断面積部において5〜100m/秒の速度で通過させることを特徴とする乳化分散液の製造方法。
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