一般に、自動車等の車輌のアンチスキッド制御装置に於いては、アンチスキッド制御中に高い減圧及び増圧が繰り返される制御ハンチングの虞れが生じたときには、制動圧の増圧量を低減して制動圧の増圧を抑制することにより制御ハンチングを防止するようになっている。
しかし車輌が砂利路を走行する場合に制御ハンチングを防止すべく制動圧の増圧が抑制されると、当該車輪の車輪速度が必要以上に回復することにより車輪速度に基づいて推定される車体速度が上昇し、見かけ上車輪の制動スリップ量が過大になり、アンチスキッド制御による減圧量が大きくなるため、実際の制動スリップ量が低下し、そのため車輌の減速度が不必要に低下して車輌の制動性能が悪化する。
上述の如き従来のアンチスキッド制御装置に於いては、車輌が砂利路や砂地路の如き走行抵抗の高い走行路を走行する際に制御ハンチングを防止すべく制動圧の増圧が抑制される場合に生じる上述の制動性能が悪化の問題については対策が講じられておらず、従って従来のアンチスキッド制御装置にはこの点で改善の余地がある。
更に一般に、車輌が砂利路や砂地路を走行する場合には車輌が舗装路の如き通常路を走行する場合に比してアンチスキッド制御のハンチングが生じ易いので、制動圧の増圧を抑制しても制御ハンチングを完全に防止することは困難であり、従って車輌が砂利路や砂地路を走行する場合には制御ハンチングを完全に防止しようとする(車輪スリップ大により車輌の安定性を犠牲にする)ことよりも、車輌の制動性能を確保することの方が重要である。
本発明は、アンチスキッド制御中に制御ハンチングの虞れが生じたときには、制動圧の増圧を抑制するよう構成された従来のアンチスキッド制御装置に於ける上述の如き問題に鑑みてなされたものであり、本発明の主要な課題は、車輌が走行抵抗の高い走行路を走行する場合にはアンチスキッド制御のハンチングを防止するための制動圧の増圧抑制の影響を低減することにより、制動圧の増圧の抑制に起因して車輌の減速度が不必要に低下し車輌の制動性能が悪化することを効果的に防止することである。
上述の主要な課題は、本発明によれば、請求項1の構成、即ち車輪の制動スリップが過大であるときに当該車輪の制動圧を制御するアンチスキッド制御を行うことにより制動スリップを低減し、アンチスキッド制御中にアンチスキッド制御による制動圧の増減ハンチングの虞れが生じたときには制動圧の増圧を抑制する車輌用アンチスキッド制御装置に於いて、走行路が走行抵抗の高い走行路であるか否かを判定し、走行路が走行抵抗の高い走行路であると判定した状況に於いては前記制動圧の増圧の抑制量を低減し、運転者の操舵要求を判定し、運転者の操舵要求があると判定したときには前記制動圧の増圧の抑制量の低減量を低減することを特徴とする車輌用アンチスキッド制御装置によって達成される。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1の構成に於いて、前輪についてのみ前記制動圧の増圧の抑制量を低減するよう構成される(請求項2の構成)。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1又は2の構成に於いて、走行路が走行抵抗の高い走行路であると判定した状況に於いては前記制動圧の増圧の抑制量を0に低減することにより前記制動圧の増圧の抑制を禁止するよう構成される(請求項3の構成)。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1乃至3の何れか一つの構成に於いて、制動圧の増圧中に於ける車輪減速度が車輪減速度基準値よりも高いときに走行路が走行抵抗の高い走行路であると判定するよう構成される(請求項4の構成)。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1乃至3の何れか一つの構成に於いて、制動圧の減圧中に於ける車輪加速度が車輪加速度基準値よりも高いときに走行路が走行抵抗の高い走行路であると判定するよう構成される(請求項5の構成)。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1乃至5の何れか一つの構成に於いて、車輌の加速時に於ける車輌駆動源の回転速度に基づく駆動輪の推定車輪速度と駆動輪の実車輪速度との偏差が車輪速度偏差基準値よりも大きいときに走行路が走行抵抗の高い走行路であると判定するよう構成される(請求項6の構成)。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1乃至6の何れか一つの構成に於いて、車輌の減速時に於ける制動圧に基づく車輌の推定減速度と車輌の実減速度との偏差が車輌減速度偏差基準値よりも大きいときに走行路が走行抵抗の高い走行路であると判定するよう構成される(請求項7の構成)。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1乃至7の何れか一つの構成に於いて、車輌の旋回時に於ける操舵角に基づく車輌の推定横加速度と車輌の実横加速度との偏差が横加速度偏差基準値よりも大きいときに走行路が走行抵抗の高い走行路であると判定するよう構成される(請求項8の構成)。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1乃至8の何れか一つの構成に於いて、運転者の操舵要求があると判定したときには前記制動圧の増圧の抑制量を低減しないよう構成される(請求項9の構成)。
上記請求項1の構成によれば、アンチスキッド制御中に制御ハンチングの虞れが生じたときには制動圧の増圧を抑制する車輌用アンチスキッド制御装置に於いて、走行路が走行抵抗の高い走行路であるか否かが判定され、走行路が走行抵抗の高い走行路であると判定された状況に於いては制動圧の増圧の抑制量が低減されるので、制動圧の増圧の抑制量が低減されない場合に比して確実に車輪速度の必要以上の回復及び推定車体速度の上昇を低減し、見かけ上の車輪の制動スリップ量を低減してアンチスキッド制御による減圧量を低減し、これにより実際の制動スリップ量の低下及び車輌の減速度の低下を低減して車輌の制動性能の悪化を効果的に低減することができる。
また上記請求項1の構成によれば、運転者の操舵要求が判定され、運転者の操舵要求があると判定されたときには制動圧の増圧の抑制量の低減量が低減されることにより、制動圧の増圧の抑制量が増大されるので、運転者の操舵要求があり、車輪の横力を確保する必要があるときには、制動圧の増圧を抑制して車輪の前後力(制動力)を低減し、これにより車輪の横力を確保して車輌の旋回性能を向上させることができる。
また上記請求項2の構成によれば、前輪についてのみ制動圧の増圧の抑制量が低減されるので、前輪について実際の制動スリップ量の低下及び車輌の減速度の低下を低減して車輌の制動性能が悪化を効果的に低減しつつ、後輪についてアンチスキッド制御のハンチングを確実に防止することができる。
また上記請求項3の構成によれば、走行路が走行抵抗の高い走行路であると判定された状況に於いては制動圧の増圧の抑制量が0に低減されるので、車輪速度の必要以上の回復及び推定車体速度の上昇を確実に低減し、見かけ上の車輪の制動スリップ量及びアンチスキッド制御による減圧量を確実に低減することができ、これにより実際の制動スリップ量の低下及び車輌の減速度の低下を確実に低減して車輌の制動性能の悪化を確実に低減することができる。
前述の如く、走行路が走行抵抗の高い走行路であるときのμ−S特性は、車輪のスリップ率Sが高くなるにつれて路面の摩擦係数μが高くなり、車輪のスリップ率Sが或る値以上になると車輪のスリップ率Sが高くなるにつれて路面の摩擦係数μが僅かに漸次高くなるので、制動圧が増圧され車輪のスリップ率Sが高くなるにつれて路面の摩擦係数μが高くなって車輪減速度が小さくならない。従って制動圧が増圧されている状況に於ける車輪減速度が高いか否かにより走行路が走行抵抗の高い走行路であるか否かを判定することができる。
上記請求項4の構成によれば、制動圧の増圧中に於ける車輪減速度が車輪減速度基準値よりも高いときに走行路が走行抵抗の高い走行路であると判定されるので、走行路が走行抵抗の高い走行路であるときにはそのことを確実に判定することができる。
また走行路が走行抵抗の高い走行路であるときのμ−S特性は上述の如き特性であるので、アンチスキッド制御又は運転者の制動操作により制動圧が減圧され、車輪のスリップ率が低下されると、それに伴って路面の摩擦係数が低下し車輪速度が回復することにより、車輪加速度が上昇する。従って制動圧の減圧中に於ける車輪加速度が高いか否かにより走行路が走行抵抗の高い走行路であるか否かを判定することができる。
上記請求項5の構成によれば、制動圧の減圧中に於ける車輪加速度が車輪加速度基準値よりも高いときに走行路が走行抵抗の高い走行路であると判定されるので、走行路が走行抵抗の高い走行路であるときにはそのことを確実に判定することができる。
また車輌が走行抵抗の高い走行路を走行する際には車輪タイヤが路面にもぐり込むことにより、走行抵抗の高い走行路の走行抵抗は通常路(舗装路)の走行抵抗よりも高いので、車輌の非減速時に於ける車輌駆動源の回転速度に基づく駆動輪の推定車輪速度と駆動輪の実車輪速度との偏差は車輌が通常路を走行する場合よりも大きくなる。従って車輌の非減速時に於ける車輌駆動源の回転速度に基づく駆動輪の推定車輪速度と駆動輪の実車輪速度との偏差が大きいか否かにより走行路が走行抵抗の高い走行路であるか否かを判定することができる。
上記請求項6の構成によれば、車輌の非減速時に於ける車輌駆動源の回転速度に基づく駆動輪の推定車輪速度と駆動輪の実車輪速度との偏差が車輪速度偏差基準値よりも大きいときに走行路が走行抵抗の高い走行路であると判定されるので、走行路が走行抵抗の高い走行路であるときにはそのことを確実に判定することができる。
また砂利路や砂地路の走行抵抗は通常路の走行抵抗よりも高いので、車輌の非非発進加速時に於ける制動圧に基づく車輌の推定減速度と車輌の実減速度との偏差は車輌が通常路を走行する場合よりも大きくなる。従って制動圧に基づく車輌の推定減速度と車輌の実減速度との偏差が大きいか否かにより走行路が走行抵抗の高い走行路であるか否かを判定することができる。
上記請求項7の構成によれば、車輌の非発進加速時に於ける制動圧に基づく車輌の推定減速度と車輌の実減速度との偏差が車輌減速度偏差基準値よりも大きいときに走行路が走行抵抗の高い走行路であると判定されるので、走行路が走行抵抗の高い走行路であるときにはそのことを確実に判定することができる。
また砂利路や砂地路の走行抵抗は通常路の走行抵抗よりも高いので、車輌が砂利路や砂地路を走行する場合に操舵輪に作用する横力は車輌が通常路を旋回走行する場合よりも大きくなり、これにより車輌の横加速度は車輌が通常路を旋回走行する場合よりも大きくなり、車輌の旋回時に於ける操舵角に基づく車輌の推定横加速度と車輌の実横加速度との偏差も大きくなる。従って車輌の旋回時に於ける操舵角に基づく車輌の推定横加速度と車輌の実横加速度との偏差が大きいか否かにより走行路が走行抵抗の高い走行路であるか否かを判定することができる。
上記請求項8の構成によれば、車輌の旋回時に於ける操舵角に基づく車輌の推定横加速度と車輌の実横加速度との偏差が横加速度偏差基準値よりも大きいときに走行路が走行抵抗の高い走行路であると判定されるので、走行路が走行抵抗の高い走行路であるときにはそのことを確実に判定することができる。
上記請求項9の構成によれば、運転者の操舵要求があると判定したときには制動圧の増圧の抑制量が低減されないので、運転者の操舵要求があり、車輪の横力を確保する必要があるときには、制動圧の増圧を効果的に抑制して車輪の前後力(制動力)を低減し、これにより車輪の横力を確保して車輌の旋回性能を効果的に向上させることができる。
〔課題解決手段の好ましい態様〕
本発明の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至9の何れか一つの構成に於いて、走行路が走行抵抗の高い走行路であると判定した状況に於いては走行路が通常路であると判定した状況に比してアンチスキッド制御の目標スリップ率を高くするよう構成される(好ましい態様1)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至9の何れか一つの構成に於いて、走行路が走行抵抗の高い走行路であると判定した状況に於いては走行路が通常路であると判定した状況に比して増圧量を大きくし減圧量を小さくするよう構成される(好ましい態様2)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様1の構成に於いて、前輪についてのみアンチスキッド制御の目標スリップ率を高くするよう構成される(好ましい態様3)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様2の構成に於いて、前輪についてのみ増圧量を大きくし減圧量を小さくするよう構成される(好ましい態様4)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1又は2の構成に於いて、運転者の操舵要求の程度が高いほど制動圧の増圧の抑制量の低減量を小さくするよう構成される(好ましい態様5)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項4の構成に於いて、車輪減速度基準値は制動圧の増圧勾配が高いほど大きくなるよう制動圧の増圧勾配に応じて可変設定されるよう構成される(好ましい態様6)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項5の構成に於いて、車輪加速度基準値は制動圧の減圧勾配が高いほど大きくなるよう制動圧の減圧勾配に応じて可変設定されるよう構成される(好ましい態様7)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項6の構成に於いて、車輪速度偏差基準値は駆動輪の推定車輪速度が高いほど大きくなるよう駆動輪の推定車輪速度に応じて可変設定されるよう構成される(好ましい態様8)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項7の構成に於いて、車輌減速度偏差基準値は制動圧に基づく車輌の推定減速度が高いほど大きくなるよう制動圧に基づく車輌の推定減速度に応じて可変設定されるよう構成される(好ましい態様9)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項8の構成に於いて、横加速度偏差基準値は操舵角に基づく車輌の推定横加速度が高いほど大きくなるよう操舵角に基づく車輌の推定横加速度に応じて可変設定されるよう構成される(好ましい態様10)。
図1は後輪駆動車に適用された車輌用アンチスキッド制御装置の参考例を示す概略構成図である。
図1に於いて、10FL及び10FRはそれぞれ車輌12の左右の前輪を示し、10RL及び10RRはそれぞれ車輌の左右の後輪を示している。操舵輪である左右の前輪10FL及び10FRは運転者によるステアリングホイール14の転舵に応答して駆動されるラック・アンド・ピニオン式のパワーステアリング装置16によりタイロッド18L 及び18R を介して操舵される。
各車輪の制動力は制動装置20の油圧回路22によりホイールシリンダ24FR、24FL、24RR、24RLの制動圧が制御されることによって制御されるようになっている。図には示されていないが、油圧回路22はオイルリザーバ、オイルポンプ、種々の弁装置等を含み、各ホイールシリンダの制動圧は通常時には運転者によるブレーキペダル26の踏み込み操作に応じて駆動されるマスタシリンダ28により制御され、また必要に応じて後に詳細に説明する如く制動制御装置30により制御される。
制動制御装置30には、車輪速度センサ32i(i=fl、fr、rl、rr)よりそれぞれ左右前輪及び左右後輪の車輪速度Vwi(i=fl、fr、rl、rr)を示す信号が入力され、前後加速度センサ34及び横加速度センサ36よりそれぞれ車輌の前後加速度Gx及び車輌の横加速度Gyを示す信号が入力され、圧力センサ38よりマスタシリンダ圧力Pmを示す信号が入力され、操舵角センサ40より操舵角θを示す信号が入力される。
また制動制御装置30には、エンジン制御装置42よりエンジン回転数Neを示す信号が入力され、変速制御装置44より図に示されていない自動変速機のギヤ比Rgを示す信号が入力される。尚図には詳細に示されていないが、制動制御装置30はそれぞれ例えばCPUとROMとRAMと入出力ポート装置とを有し、これらが双方向性のコモンバスにより互いに接続された一般的な構成のマイクロコンピュータを含んでいる。また横加速度センサ36及び操舵角センサ40はそれぞれ車輌の左旋回方向への操舵の場合を正として車輌の横加速度Gy及び操舵角θを検出する。
制動制御装置30は、図2及び図3に示されたフローチャートに従い、後述の如く各車輪速度Vwiに基づき当技術分野に於いて公知の要領にて車体速度Vbを推定すると共に、各車輪について推定車体速度Vbと車輪速度Vwiとの偏差として制動スリップ量SLi(i=fl、fr、rl、rr)を演算し、推定車体速度Vbが制御開始閾値Vbs(正の定数)以上であり且つ制動スリップ量SLiが予め設定された閾値SLo以上であるときには、当該車輪の制動圧を増減制御することにより制動スリップ量を低減するアンチスキッド制御(図に於いてはABS制御と略称する)を行う。
特に制動制御装置30は、図2及び図3に示されたフローチャートに従い、後述の如くアンチスキッド制御の制御対象車輪が前輪であり且つ走行路が砂利路であるときには、制御対象車輪が後輪である場合又は走行路が通常路である場合よりも当該車輪の目標スリップ量SLtを大きくし、増圧時の制動圧の目標増減圧量ΔPtiを大きくし、制御モードが減圧モードであるときには特定の増減圧パターンにて制動圧を制御し、これにより走行路が砂利路である場合にはそれに適したアンチスキッド制御を行う。
また制動制御装置30は、図2及び図3に示されたフローチャートに従い、後述の如く制御対象車輪が後輪である場合又は走行路が通常路である場合に於いて、アンチスキッド制御のハンチングの虞れがあるときには、アンチスキッド制御のハンチングの虞れがないときに比して制動圧の増圧量を低減し、アンチスキッド制御のハンチングの虞れを低減するが、制御対象車輪が前輪であり且つ走行路が砂利路であるときには、アンチスキッド制御のハンチングの虞れがあるか否かに拘らず制動圧の増圧量の低減を行わず、これにより制動圧の増圧量の低減による車輪速度の必要以上の回復及び推定車体速度の上昇を防止し、見かけ上の車輪の制動スリップ量が増大してアンチスキッド制御による減圧量が増大することを防止し、これにより実際の制動スリップ量の低下及び車輌の減速度の低下を防止して車輌の制動性能の悪化を効果的に防止する。
また制動制御装置30は、図3に示されたフローチャートに従い、後述の如く走行路が砂利路であるときのμ−S特性に着目して種々のパラメータに基づいて走行路が砂利路であるか否かを判定する。
次に図2及び図3に示されたフローチャートを参照して参考例に於けるアンチスキッド制御ルーチンについて説明する。尚図2に示されたフローチャートによる制御は図には示されていないイグニッションスイッチの閉成により開始され、所定の時間毎に繰返し実行される。
まずステップ10に於いては車輪速度Vwiを示す信号等の読み込みが行われ、ステップ20に於いては図3に示されたルーチンに従って当該車輪が前輪であり且つ走行路が砂利路であるか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ240へ進み、否定判別が行われたときには、即ち当該車輪が後輪である又は走行路が通常路であると判定されたときにはステップ40へ進む。
ステップ40に於いては車輌の状況及び車輌の駆動型式等に応じて各車輪の車輪速度Vwiのうち実際の車体速度に最も近いと思われる値が推定車体速度Vwbとして選択されると共に、Vbfを前回の推定車体速度とし、α1及びα2を正の定数としてそれぞれ下記の式1及び2に従って推定車体速度の増加率を抑制するための推定車体速度Vbn1及び推定車体速度の低下率を抑制するための推定車体速度Vbn2が演算され、更に推定車体速度Vwb、Vbn1、Vbn2のうちの中間の値が今回の推定車体速度Vbとして演算される。
Vbn1=Vbf−α1 ……(1)
Vbn2=Vbf+α2 ……(2)
ステップ50に於いては推定車体速度Vb及び各車輪の車輪速度Vwiに基づきこれらの偏差として制動スリップ量SLi(i=fl、fr、rl、rr)が演算され、ステップ60に於いてはアンチスキッド制御の目標スリップ率SLtが通常路用の値SLtn(正の定数)に設定され、後述のステップ80に於けるアンチスキッド制御の開始条件成立判別の推定車体速度の基準値Vbs及び制動スリップ量の基準値SLoがそれぞれ通常路用の基準値Vbsn(正の値)及びSLon(正の値)に設定され、後述のステップ100に於けるアンチスキッド制御の終了条件成立判別の推定車体速度の基準値が通常路用の基準値Vbfn(正の定数)に設定される。
ステップ70に於いては当該車輪についてアンチスキッド制御が行われているか否かの判別、即ちアンチスキッド制御の開始条件(ステップ80)が成立し且つアンチスキッド制御の終了条件(ステップ100)が成立していない状況であるか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ90へ進み、否定判別が行われたときにはステップ80へ進む。
ステップ80に於いては当該車輪についてアンチスキッド制御の開始条件が成立しているか否かの判別、例えば推定車体速度Vbが制御開始基準値Vbsn以上であり且つ車輪の制動スリップ量SLiが基準値SLon以上であるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときには図2に示されたルーチンによる制御が一旦終了され、肯定判別が行われたときにはステップ110へ進む。
ステップ90は前輪についてのみ実行され、このステップに於いてはアンチスキッド制御中に於ける砂利路判定により、走行路が砂利路であるか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ240へ進み、否定判別が行われたときにはステップ100へ進む。尚このステップ90に於ける砂利路判定は、制動圧の増圧及び減圧がアンチスキッド制御によるものである点を除き、後述のステップ22〜25と同様の判定により行われてよい。
ステップ100に於いては当該車輪についてアンチスキッド制御の終了条件が成立しているか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはそのまま図2に示されたルーチンによる制御が一旦終了され、否定判別が行われたときにはステップ110へ進む。尚この場合、(1)運転者による制動又は自動制動制御装置による制動が終了、又は(2)推定車体速度Vbが制御終了基準値Vbfn以下の条件が成立する場合にアンチスキッド制御の終了条件が成立していると判定されてよい。
ステップ110に於いては例えば当該車輪の車輪速度Vwiの時間微分値として演算される車輪加速度及び当該車輪の目標スリップ量SLt及び制動スリップ量SLiに基づき当技術分野に於いて公知の要領にて制御モードが増圧モード、保持モード、減圧モードの何れかに決定される。
ステップ120に於いては例えば当技術分野に於いて公知の要領にて各車輪加速度に基づき推定される車輌の減速度、ステップ110に於いて決定された制御モード、当該車輪の目標スリップ量SLt及び制動スリップ量SLiに基づき当該車輪の制動圧の目標増減圧量ΔPti(i=fl、fr、rl、rr)が演算される。
ステップ130に於いてはアンチスキッド制御の制御モードが増圧モードであるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはそのままステップ400へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ140へ進む。
ステップ140に於いてはアンチスキッド制御による制動圧の増減圧パターンにより、制御ハンチングの虞れがあり増圧量を抑制する必要があるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ400へ進み、肯定判別が行われたときには補正係数Kaを0よりも大きく1よりも小さい正の定数として、目標増減圧量ΔPti(>0)がKa倍に低減補正された後ステップ400へ進む。
ステップ240に於いては上記ステップ40の場合と同様車輌の状況及び車輌の駆動型式等に応じて各車輪の車輪速度Vwiのうち実際の車体速度に最も近いと思われる値が推定車体速度Vwbとして選択されると共に、Vbfを前回の推定車体速度とし、β1及びβ2を正の定数(β1>α1、β2<α2)としてそれぞれ下記の式3及び4に従って推定車体速度の増加率を抑制するための推定車体速度Vbs1及び推定車体速度の低下率を抑制するための推定車体速度Vbs2が演算され、更に推定車体速度Vwb、Vbs1、Vbs2のうちの中間の値が今回の推定車体速度Vbとして演算される。
Vbs1=Vbf−β1 ……(3)
Vbs2=Vbf+β2 ……(4)
ステップ250に於いては推定車体速度Vb及び各車輪の車輪速度Vwiに基づきこれらの偏差として制動スリップ量SLi(i=fl、fr、rl、rr)が演算され、ステップ260に於いてはアンチスキッド制御の目標スリップ率SLtが砂利路用の値SLts(通常路用の目標スリップ率SLtnよりも大きい正の定数)に設定され、後述のステップ280に於けるアンチスキッド制御の開始条件成立判別の推定車体速度の基準値Vbs及び制動スリップ量の基準値SLoがそれぞれ砂利路用の基準値Vbss(正の値)及びSLos(正の値)に設定され、後述のステップ300に於けるアンチスキッド制御の終了条件成立判別の推定車体速度の基準値が砂利路用の基準値Vbfs(正の定数)に設定される。
ステップ270に於いては当該車輪についてアンチスキッド制御が行われているか否かの判別、即ちアンチスキッド制御の開始条件(ステップ280)が成立し且つアンチスキッド制御の終了条件(ステップ300)が成立していない状況であるか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ290へ進み、否定判別が行われたときにはステップ280へ進む。
ステップ280に於いては当該車輪についてアンチスキッド制御の開始条件が成立しているか否かの判別、例えば推定車体速度Vbが制御開始基準値Vbss以上であり且つ車輪の制動スリップ量SLiが基準値SLos以上であるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときには図2に示されたルーチンによる制御が一旦終了され、肯定判別が行われたときにはステップ310へ進む。
ステップ300に於いては当該車輪についてアンチスキッド制御の終了条件が成立しているか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはそのまま図2に示されたルーチンによる制御が一旦終了され、否定判別が行われたときにはステップ310へ進む。尚この場合、(1)運転者による制動又は自動制動制御装置による制動が終了、又は(2)推定車体速度Vbが制御終了基準値Vbfs以下の条件が成立する場合にアンチスキッド制御の終了条件が成立していると判定されてよい。
ステップ310に於いては例えば当該車輪の車輪速度Vwiの時間微分値として演算される車輪加速度及び当該車輪の目標スリップ量SLt及び制動スリップ量SLiに基づき当技術分野に於いて公知の要領にて制御モードが増圧モード、保持モード、減圧モードの何れかに決定される。
ステップ320に於いては例えば当技術分野に於いて公知の要領にて各車輪加速度に基づき推定される車輌の減速度、ステップ310に於いて決定された制御モード、当該車輪の目標スリップ量SLt及び制動スリップ量SLiに基づき同一の条件について見て当該車輪の制動圧の目標増減圧量ΔPti(i=fl、fr、rl、rr)が演算される。この場合同一の条件についてステップ120の場合と比較して、制動圧の目標増減圧量ΔPtiは増圧(正の値)の場合には大きく設定され、減圧(負の値)の場合には大きさが小さく設定される。
ステップ360に於いてはアンチスキッド制御の制御モードが減圧モードであるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ400へ進み、肯定判別が行われたきにはステップ370に於いて増減圧制御の出力パターンが図4に示された特定のパターンに設定された後ステップ400へ進む。
ステップ400に於いては制動圧の増減圧量が目標増減圧量ΔPtiになるよう制動圧の増減圧制御が実行され、或いはステップ370に於いて増減圧の出力パターンが特定のパターンに設定された場合には該特定のパターンにて制動圧の増減圧制御が実行される。
次に図3に示されたフローチャートを参照して上述のステップ20に於いて実行される前輪及び砂利路判定について説明する。
まずステップ21に於いては当該車輪が前輪であるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはそのままステップ35へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ22へ進む。
ステップ22に於いては運転者の制動操作又はアンチスキッド制御により制動圧が増圧されている状況であるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ24へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ23へ進む。
ステップ23に於いては車輪速度Vwiの微分値として車輪加速度Vwdiが演算され、車輪減速度Vwdbi(=−Vwdi)が基準値Vwdbo(正の定数)よりも大きいか否かの判別、即ち制動圧の増圧に伴う制動スリップ量の増大につれて車輪減速度が基準値以下にならない状況であるか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ36へ進み、否定判別が行われたときにはステップ24へ進む。
ステップ24に於いては運転者の制動操作又はアンチスキッド制御により制動圧が減圧されている状況であるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ26へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ25へ進む。
ステップ25に於いては車輪速度Vwiの微分値として車輪加速度Vwdiが演算され、車輪加速度Vwdiが基準値Vwdo(正の定数)よりも大きいか否かの判別、即ち制動圧の減圧に伴う制動スリップ量の減少につれて車輪加速度が高くなる状況であるか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ36へ進み、否定判別が行われたときにはステップ26へ進む。
ステップ26に於いては前後加速度センサGx等に基づき車輌が発進加速状態にあるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ29へ進み、肯定判別が行われてときにはステップ27へ進む。
ステップ27に於いてはエンジン回転数Ne及び自動変速機のギヤ比Rgに基づき駆動輪である左右後輪の推定車輪速度Vwaj(j=rl、rr)が演算されると共に、推定車輪速度Vwajに基づき図5に示されたグラフに対応するマップより後述のステップ28の判別に於ける基準値Vwo(正の値)が演算される。
ステップ28に於いては左右後輪の車輪速度Vwjが基準値Vwoよりも小さいか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ36へ進み、否定判別が行われたときにはステップ29へ進む。
ステップ29に於いては推定車体速度Vbの微分値として推定車体加速度Vbdが演算され、推定車体加速度Vbdに基づき車輌が減速制動状態にあるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ32へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ30へ進む。
ステップ30に於いてはマスタシリンダ圧力Pmに基づき図6に示されたグラフに対応するマップより後述のステップ31に於ける判別の基準値Vbdbo(正の値)が演算され、ステップ31に於いては車輌の減速度Vbdb(=−Vbd)が基準値Vbdboよりも大きいか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ36へ進み、否定判別が行われたときにはステップ32へ進む。
ステップ32に於いては操舵角θに基づき車輌が旋回状態にあるか否か(運転者の操舵要求があるか否か)の判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ35へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ33に於いて車速V及び操舵角θに基づき当技術分野に於いて公知の要領にて車輌の推定横加速度Gyhが演算されると共に、車輌の推定横加速度Gyhに基づき図7に示されたグラフに対応するマップより後述のステップ34に於ける判別の基準値Gyho(正の値)が演算される。
ステップ34に於いては車輌の横加速度Gyの絶対値が基準値Vbdboよりも大きいか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ35に於いて走行路が通常路であると判定され、肯定判別が行われたときにはステップ36に於いて走行路が砂利路であると判定される。
かくして図示の参考例によれば、ステップ20に於いて当該車輪が前輪であり且つ走行路が砂利路であるか否かの判別が行われ、当該車輪が後輪である又は走行路が通常路であると判定されたときにはステップ40〜150及びステップ400によりアンチスキッド制御が行われ、当該車輪が前輪であり且つ走行路が砂利路であると判定されたときにはステップ240〜370及びステップ400によりアンチスキッド制御が行われる。
特に当該車輪が前輪であり且つ走行路が砂利路であると判定されたときには、ステップ260に於いてアンチスキッド制御の目標スリップ率SLtが砂利路用の値SLts(通常路用の目標スリップ率SLtnよりも大きい正の定数)に設定され、ステップ320に於いて通常路の場合に比して増圧量が大きく減圧量が小さくなるよう制動圧の目標増減圧量ΔPtiが設定されると共に、アンチスキッド制御のハンチングが生じる虞れがあるか否かの判別及びアンチスキッド制御のハンチングが生じる虞れがある場合の制動圧の増圧の抑制、即ちステップ130〜150に対応する処理は行われない。
従って走行路が砂利路である場合には、アンチスキッド制御のハンチングが生じる虞れがある場合にも、制御ハンチングの虞れを低減すべく行われる制動圧の増圧量の低減は行われないので、制動圧の増圧量の低減による車輪速度の必要以上の回復及び推定車体速度の上昇を防止し、見かけ上の車輪の制動スリップ量が増大してアンチスキッド制御による減圧量が増大することを防止し、これにより実際の制動スリップ量の低下及び車輌の減速度の低下を防止して車輌の制動性能の悪化を効果的に防止することができる。
特に図示の参考例によれば、アンチスキッド制御のハンチングが生じる虞れがある場合にも制動圧の増圧量の低減が行われないのは前輪についてのみであり、後輪については制動圧の増圧量の低減が行われ、制御ハンチングが防止されるので、後輪の前後力が過大になり後輪の横力が低下することに起因する車輌の不安定化を効果的に防止することができる。
[実施例]
図8は後輪駆動車に適用された本発明による車輌用アンチスキッド制御装置の実施例に於けるアンチスキッド制御ルーチンの要部を示すフローチャートである。尚図8に於いて図2に示されたステップと同一のステップには図2に於いて付されたステップ番号と同一のステップ番号が付されている。
この実施例に於いては、ステップ320が完了するとステップ330へ進み、ステップ330及び340はそれぞれ上述の参考例と同様に実行される。ステップ330に於いて否定判別が行われたときにはステップ360へ進み、ステップ360及び370もそれぞれ上述の参考例と同様に実行され、ステップ340に於いて否定判別が行われたときにはステップ400へ進む。
またステップ340に於いて肯定判別が行われたときにはステップ345に於いて操舵角θの絶対値に基づき図9に示されたグラフに対応するマップより補正係数Kb(Kaよりも大きい1以下の正の値)が演算され、ステップ350に於いて当該車輪の制動圧の目標増減圧量ΔPtがKb倍に低減補正される。尚図9に示されている如く、補正係数Kbは操舵角θの絶対値が大きいほど小さくなるよう演算される。
かくして図示の実施例によれば、アンチスキッド制御の制御対象車輪が前輪であり且つ走行路が砂利路である場合にも、上述の実施例1に於けるそれぞれステップ130〜150に対応するステップ330〜350が実行されるが、補正係数Kbは参考例に於ける補正係数Kaよりも大きく1以下の正の値に演算されるので、アンチスキッド制御のハンチングの虞れがないときに比して制動圧の増圧量を確実に低減することができ、これにより上述の参考例の場合と同様の作用効果を得ることができる。
また図示の実施例によれば、補正係数Kbは運転者の操舵要求(旋回要求)を示す操舵角θの絶対値が大きいほど小さくなるよう操舵角θの絶対値に応じて可変設定されるので、運転者の操舵要求が高いほど制動圧の増圧の抑制量の低減量を小さくし、左右前輪の横力を効果的に確保して運転者の操舵要求を効果的に充足させることができる。
尚図示の参考例及び実施例によれば、走行路が砂利路であるときには、前輪の目標スリップ量SLtが走行路が通常路であるときの目標スリップ量SLtnよりも大きい値SLtsに設定され、増圧時の制動圧の目標増減圧量ΔPtiが大きくされ、制御モードが減圧モードであるときには特定の増減圧パターンにて制動圧が制御されるので、図10に示されている如く、前輪のスリップ量SLfl及びSLfrを目標スリップ量SLtsの近傍、即ちスリップ量SLが目標スリップ量SLtnの近傍である場合よりも路面の摩擦係数μが高い領域に制御し、このことによっても車輌の良好な制動性能を確保することができる。
また図示の参考例及び実施例によれば、走行路が砂利路であるときにも、後輪については走行路が通常路である場合と同様のアンチスキッド制御が行われるので、後輪についても前輪と同様のアンチスキッド制御が行われ、後輪のスリップ量SLrl及びSLrrも高い値になるよう制御される場合に比して、後輪の車輪速度を車輌の実際の車体速度に近い値にすることができ、これにより車輪速度Vwiに基づく推定車体速度Vbの推定精度を高くすることができ、これにより各車輪のスリップ量を正確に演算してアンチスキッド制御を正確に行うことができる。
また図示の参考例及び実施例によれば、図3に示されたフローチャートのステップ22〜36により、制動圧が増圧又は減圧されている状況及び車輌の種々の走行状態にあるときについて、図10に示された砂利路のμ−S特性を利用して走行路が砂利路であるか否かが判別されるので、走行路が砂利路であるか否かを的確に且つタイムリーに判定することができる。
特にステップ22及び23に於いては、走行路が砂利路であるときには、制動圧が増圧されスリップ量が増大されると、路面の摩擦係数μが高くなり、そのため車輪減速度が小さくならない(車輪速度が急激に低下しない)ことを利用して砂利路が判定され、ステップ24及び25に於いては、走行路が砂利路であるときには、制動圧が減圧されスリップ量が低下されると、路面の摩擦係数μが低下し、そのため車輪加速度が高くなることを利用して砂利路が判定される。
またステップ26〜28に於いては、走行路が砂利路であり、路面の走行抵抗が高いときには、駆動輪の車輪速度がエンジン回転数Ne及び自動変速機のギヤ比Rgに基づいて推定される車輪速度よりも小さくなることを利用して砂利路が判定され、またステップ29〜31に於いては、走行路が砂利路であり、路面の走行抵抗が高いときには、車輪減速度がマスタシリンダ圧力Pmに基づいて推定される車輪減速度よりも大きくなることを利用して砂利路が判定される。
更にステップ32〜34に於いては、走行路が砂利路であり、路面の走行抵抗が高いときには、操舵輪である左右前輪が路面より受ける横力が大きくなるので、同一の操舵角の大きさ、従って同一の車輪スリップ角の大きさについて見て、走行路が通常路である場合に比して車輌の横力及び横加速度の大きさが大きくなることを利用して砂利路が判定される。
以上に於いては本発明を特定の実施例について詳細に説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施例が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
例えば上述の参考例に於いては、走行路が砂利路であると判定されたときには前輪についてアンチスキッド制御のハンチングが生じる虞れがある場合の制動圧の増圧の抑制処理が行われないようになっており、上述の実施例に於いては、走行路が砂利路であると判定されたときには車輌が実質的に直進状態にある限り、前輪についてアンチスキッド制御のハンチングが生じる虞れがある場合の制動圧の増圧の抑制処理が行われないようになっているが、例えば図8に示されたフローチャートのステップ345に於いて操舵角θの大きさに関係なく補正係数Kbが参考例に於ける補正係数Kaよりも大きく1以下の正の定数に設定されることにより、或いは図8に示されたフローチャートのステップ345に於いて補正係数Kbが図9の破線にて示されたグラフに対応するマップより演算されることにより、前輪についてアンチスキッド制御のハンチングが生じる虞れがある場合の制動圧の増圧の抑制量(低減量)が低減されるよう修正されてもよい。
また上述の参考例及び実施例に於いては、図3に示されたフローチャートのステップ23及び25の判別の基準値Vwdbo及びVwdoは定数であるが、基準値Vwdboは制動圧の増圧勾配が高いほど大きくなるよう制動圧の増圧勾配に応じて可変設定されるよう修正されてもよく、また基準値Vwdoは制動圧の減圧勾配が高いほど大きくなるよう制動圧の減圧勾配に応じて可変設定されるよう修正されてもよい。
また上述の参考例及び実施例に於いては、図3に示されたフローチャートのステップ22〜36により、制動圧が増圧又は減圧されている状況及び車輌の種々の走行状態にある場合について走行路が砂利路であるか否かが判別されるようになっているが、ステップ22及び23による判別、ステップ24及び25による判別、ステップ26〜28による判別、ステップ29〜31による判別、ステップ32〜34による判別の何れかの判別が省略されてもよい。
更に上述の参考例及び実施例に於いては、車輌は後輪駆動車であるが、本発明が適用される車輌は前輪駆動車や四輪駆動車であってもよい。