JP3456336B2 - 車両用制御装置 - Google Patents

車両用制御装置

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JP3456336B2
JP3456336B2 JP06138396A JP6138396A JP3456336B2 JP 3456336 B2 JP3456336 B2 JP 3456336B2 JP 06138396 A JP06138396 A JP 06138396A JP 6138396 A JP6138396 A JP 6138396A JP 3456336 B2 JP3456336 B2 JP 3456336B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両用制御装置に
係り、特に、左右の車輪速度の差に基づいて横加速度を
演算し、かつ、その横加速度に基づいて車両制御を行う
車両用制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、例えば特開平1−24725
5号に開示される如く、車両の左右輪の速度(以下、左
右の車輪速度と称す)VWL,VWRの差に基づいて車両の
横加速度Gyを推定し、推定された横加速度Gyに基づ
いて制動力の配分制御を行う装置が知られている。左右
輪の車輪速度VWL,VWRは、車両の直進時には互いに等
しい値となる。また、車両の旋回時には、左右輪の車輪
速度VWL,VWRに、旋回半径Rに応じた比率で差が生ず
る。このように、左右輪の車輪速度VWL,VWRの差は、
車両の横加速度Gyと同様に、車両の旋回半径Rに対応
した値である。このため、横加速度Gyは、上記従来の
装置において、左右の車輪の車輪速度差に基づいて精度
良く推定される。従って、上記従来の装置によれば、横
加速度Gyをパラメータとして用いる必要のある車両制
御を、横加速度Gyを検出するセンサを設けることなく
実現することができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記従来の装置におい
て、左右輪の車輪速度VWL,VWRは、それぞれ左右輪の
回転速度ωL ,ωR に基づいて検出される。左右輪の車
輪速度VWL,VWRは、それらの回転速度ωL ,ωR と、
それらの外径とによって決定される。上記従来の装置
は、車輪の外径を所定値に想定して、回転速度ωL ,ω
R に定数を乗算することにより車輪速度VWL,VWRを演
算している。
【0004】上記従来の装置において、左右輪の外径
が、偏摩耗等により異なっている場合は、現実には左右
の車輪速度VWL,VWRが同一である場合にも、左右輪の
回転速度ωL ,ωR に差異が生ずる。従って、上記従来
の装置の如く、回転速度ωL ,ωR に定数を乗算するこ
とにより左右の車輪速度VWL,VWRを求め、それらの偏
差に基づいて横加速度Gyを算出する手法では、かかる
状況下で誤った横加速度Gyを算出する可能性がある。
この点、上記従来の装置は、左右輪の外径が異なってい
る場合に高精度な車両制御を実現することが困難である
という問題を有するものであった。
【0005】左右輪の外径が異なる場合において、左右
の車輪速度VWL,VWRの差に基づいて、高精度に横加速
度Gyを演算するためには、回転速度ωL ,ωR を車輪
速度VWL,VWRに変換する際に、車輪の外径に対する補
正を施す必要がある。かかる補正は、例えば、車両の直
進時に、左右輪の回転速度ωL ,ωR 、および、車両が
備える全ての車輪の回転速度の平均値ωAVを検出し、ω
L とωAVとの偏差、および、ωR とωAVとの偏差から、
それぞれ回転速度ωL ,ωR に乗算する係数KSを補正
することで実現することができる。
【0006】すなわち、車両の直進時には、現実の左右
の車輪速度VWL,VWRは等速となる。このため、例えば
回転速度ωL が平均値ωAVに比して大きい場合は、左車
輪の外径が小さいと推定することができる。この場合、
ωL に、ωL とωAVとの偏差に応じて減少補正した係数
KSを乗算することにより、現実の車輪速度VWLと一致
する演算値を得ることができる。また、例えば回転速度
ωR が平均値ωAVに比して小さい場合は、右車輪の外径
が大きいと推定することができる。この場合、ωR に、
ωR とωAVとの偏差に応じて増加補正した係数KSを乗
算することにより、現実の車輪速度VWRと一致する演算
値を得ることができる。従って、上記従来の装置に、か
かる補正機能を追加すれば、左右輪の外径が異なる場合
においても、左右輪が共に正規の外径を有する場合と同
様に、高精度な車両制御を実現することができる。
【0007】ところで、上述した補正を実現するために
は、補正係数KSの補正を行うに先立って、車両が直進
状態にある場合に、左右の車輪速度VWL,VWRを検出す
る必要がある。車両が直進状態とみなせる状態にあるか
否かは、例えばステアリング操舵角θS や、全ての車輪
の回転速度等に基づいて推定することはできる。
【0008】しかしながら、車両が直進状態であるか否
かを厳密に判別することは必ずしも容易ではない。ま
た、補正係数KSの補正を、車両が厳密な意味で直進状
態にある場合にのみ行うこととすると、現実にKSを補
正できる機会が希少となり、実用的でない。このため、
上述した補正を行うにあたっては、車両が直進状態にあ
るとみなせる状況下で車輪速度VWL,VWRを検出し、そ
の検出値を車両の直進時における車輪速度VWL,VWR
近似することが必要である。
【0009】ところで、上述した係数KSの補正が、厳
密な意味で車両が直進状態にない状況下で行われた場
合、左右の車輪速度VWL,VWRに基づいて演算される横
加速度Gyには誤差が重畳される。そして、このように
横加速度Gyに重畳される誤差は、車速Vに応じて変動
し、車速Vが大きい領域では車両制御に悪影響を及ぼす
程度に大きくなる場合がある。
【0010】このため、車両状態が直進状態であると近
似できる状況下で係数KSを補正し、その係数KSを用
いて横加速度Gyを算出し、更にその横加速度Gyに基
づいて車両制御を行う場合、車速Vが大きい領域では、
係数KSの補正に伴ってGyに誤差が重畳されているこ
とを認識したうえで、車両制御を行うことが必要とな
る。
【0011】本発明は、上述の点に鑑みてなされたもの
であり、左右輪の外径が同一でない場合にも、左右の車
輪速度の差に基づいて精度良く横加速度を検出すること
ができ、かつ、横加速度に重畳する誤差の影響を考慮し
て車両制御を実行することのできる車両用制御装置を提
供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記の目的は、請求項1
に記載する如く、左右の車輪速度の差に基づいて車両の
横加速度を演算し、前記横加速度に基づいて車両制御を
行う車両制御装置において、少なくとも左右一対の車
輪の回転速度を検出する回転速度検出手段と、前記回転
速度検出手段が検出する複数の回転速度の平均値を求め
る平均回転速度検出手段と、車両の直進時における、前
記回転速度検出手段の検出値および前記平均回転速度検
出手段の検出値に基づいて、少なくとも前記左右一対の
車輪に対する車輪速度補正値を演算する車輪速度補正値
演算手段と、 前記車輪速度補正値演算手段の演算値と、
前記回転速度検出手段の検出値とに基づいて前記左右
一対の車輪速度の差を演算する車輪速度演算手段と、
速に基づいて前記車両制御の実行可否を判定する実行可
否判定手段と、を備え、 前記実行可否判定手段が、 車両
の横加速度が所定のしきい値を超える場合に前記車両制
御の実行を許可する実行許可手段と、 車速の増大に応じ
て前記しきい値を大きくするしきい値変更手段と、を備
える車両用制御装置によって達成される。また、上記課
題は請求項2に記載される如く、請求項1記載の車両用
制御装置において、前記しきい値変更手段は、所定の車
速以下では前記しきい値を一定値とする車両用制御装置
によって達成される
【0013】請求項1の発明において、回転速度検出手
段は、少なくとも左右一対の車輪の回転速度を検出す
る。車輪の外径が所期の値に比して小さい場合は、その
回転速度が平均回転速度検出手段の検出値(以下、平均
回転速度と称す)に比して高速となる。車輪速度補正値
演算手段は、車両が直進していると推認される場合に得
られた回転速度と平均回転速度とに基づいて、少なくと
も左右一対の車輪について車輪速度補正値を演算する。
車輪速度補正値は、車輪の回転速度を車輪速度に変換す
る際に用いられる係数である。車輪速度補正値は、車両
が直進状態であると推認できる場合に、その状態を直進
状態と近似して演算される値である。このため、車両速
度補正値には、車両状態を近似することに起因する誤差
が重畳される。車輪速度演算手段は、車輪速度補正値を
用いて左右一対の車輪速度の差を演算する。車輪速度演
算手段の演算値(車輪速度の差)は、車輪速度補正値の
誤差に起因する誤差を含む値である。そして、車輪速度
の差に含まれる誤差は、車速が高速であるほど大きな値
となる。本発明においては、この誤差を考慮して、実行
可否判定手段が、車輪速度の差に含まれる誤差の影響
で、不適切な車両制御が行われないように、車速に基づ
いて車両制御の実行可否を判定する。 具体的には、実行
許可手段は、車両の横加速度が前記しきい値を超える場
合に車両制御の実行を許可する。横加速度の基礎とされ
る左右の車輪速度には、上述の如く、車速に応じて増大
される誤差が含まれている。従って、確実に横加速度が
生じていると認識できる領域は、車速が高速であるほど
高加速度側に変化する。しきい値変更手段は、車両に対
して確実に横加速度が生じていると認識できる領域にお
いてのみ車両制御が実行されるように、車速の増大に応
じて前記しきい値を大きくする。
【0014】
【0015】また、請求項の発明において、しきい値
変更手段は、所定の車速以下では前記しきい値を一定値
とし、旋回安定性が問題とならない緩やかな旋回走行中
には車両制御を実行しないようにする。
【0016】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の一実施例のシス
テム構成図を示す。本実施例の車両用制御装置は、車両
10に搭載されている。車両10には、電子制御ユニッ
ト12(以下、ECU12と称す)が搭載されている。
本実施例の車両用制御装置は、ECU12によって制御
されている。
【0017】車両10は、左右前輪FL,FRおよび左
右後輪RL,RRを備えている。車両10においては、
左右前輪FL,FRが駆動輪として、また、左右後輪R
L,RRが従動輪として用いられている。左右前輪F
L,FRおよび左右後輪RL,RRには、それぞれブレ
ーキ装置14FL,14FR,14RL,14RR(以
下、これらを総称する場合には符号14**を付して表
す)が配設されている。ブレーキ装置14**には、油圧
回路16が接続されている。油圧回路16は、ブレーキ
装置14**のそれぞれに対して、所定値に制御したブレ
ーキ油圧を供給する。ブレーキ装置14**は、油圧回路
16から供給されるブレーキ油圧に応じた制動力を発生
する。
【0018】油圧回路16は、図示しないマスタシリン
ダ、および、ポンプおよびアキュムレータからなる高圧
源を液圧源として液圧を発生する回路である。油圧回路
16は、ブレーキペダル(図示せず)に作用するブレー
キ踏力、または、車両10の運動状態等に応じて、ブレ
ーキ装置14**のそれぞれに対して、適切なブレーキ油
圧を供給する。
【0019】本実施例において、油圧回路16は、ブ
レーキペダルにブレーキ踏力が作用している場合に、ブ
レーキ装置14**のそれぞれに供給されるブレーキ液圧
を、ブレーキ踏力に対して所定の倍力比を有する液圧に
制御する通常ブレーキモード、ブレーキペダルにブレ
ーキ踏力が作用している場合に、車輪FL,FR,R
L,RRがロック状態に移行しないように、ブレーキ装
置14**のそれぞれに供給されるブレーキ液圧を適当に
減圧制御するアンチロック・ブレーキ制御モード(以
下、ABSモードと称す)、および、ブレーキペダル
にブレーキ踏力が作用している場合および作用していな
い場合に、車両10の挙動が安定するように、ブレーキ
装置14**のそれぞれに、適当な配分比でブレーキ油圧
を供給する配分制御モードを実現する。
【0020】油圧回路16は、車両10の挙動が安定し
ており、かつ、何れの車輪FL,FR,RL,RRにつ
いてもロック状態に移行する可能性がない場合には、上
述した通常ブレーキモードを実現する。また、ブレー
キ操作中に、何れかの車輪FL,FR,RL,RRにつ
いてロック状態に移行する可能性が生じた場合に、上述
したABSモードを実現する。そして、旋回走行中
に、車両10に対して所定のしきい値を超える横加速度
Gyが作用する場合に、上述した配分制御を実現す
る。
【0021】本実施例のシステムにおいて、油圧回路1
6は、配分制御モードの実行中は、後輪RL,RRに
配設されるブレーキ装置14RLまたは14RRのう
ち、旋回内側に位置するものに供給されるブレーキ油圧
が、旋回外側に位置するものに供給されるブレーキ油圧
に比して低圧となるように、ブレーキ装置14RL,1
4RRに対するブレーキ油圧を制御する。以下、後輪R
L,RRのうち旋回内側に位置するものを旋回内側後輪
INと、後輪RL,RRのうち旋回外側に位置するもの
を旋回外側後輪ROUT と称す。また、旋回内側後輪RIN
および旋回外側後輪ROUT に配設されるブレーキ装置1
4RLまたは14RRを、それぞれ符号14RINまたは
14ROUT を付して表す。
【0022】車両10の旋回中に、ブレーキ装置14R
INに供給されるブレーキ油圧が減圧制御されると、旋回
内側後輪RINで発揮される制動力が減少し、車両に対し
て、旋回方向に作用するモーメントが減少する。このた
め、上述した配分制御モードの実行中は、車両10の
操舵特性がアンダーステア傾向となり、高速旋回時にお
ける車両挙動の安定化に有利な状況が形成される。
【0023】車両10は、各車輪FL,FR,RL,R
Rの近傍に、車輪速センサ18FL,18FR,18R
L,18RR(以下、これらを総称する場合は、符号1
**を付して表す)を備えている。車輪速センサ18**
は、それぞれ車輪FL,FR,RL,RRが所定角回転
する毎にパルス信号を発生する。車輪速センサ18**
出力信号は、ECU12に供給されている。ECU12
は、車輪速センサ18 **の出力信号に基づいて、車輪F
L,FR,RL,RRの回転速度ωFL,ωFR,ωRL,ω
RR(以下、これらを総称する場合には回転速度ω**と称
す)を検出する。
【0024】ECU12には、ブレーキスイッチ20お
よびアクセル開度センサ22が接続されている。ブレー
キスイッチ20は、ブレーキペダルが踏み込まれること
によりオン出力を発生するスイッチである。ECU12
は、ブレーキスイッチ20の状態に基づいてブレーキペ
ダルが踏み込まれているか否かを判断する。また、アク
セル開度センサ22は、アクセル開度に応じた電気信号
を出力するセンサである。ECU12は、アクセル開度
センサ22に基づいてアクセル開度の増加が検出された
場合に、車両10が加速状態にあると判断する。
【0025】上述の如く、油圧回路16は車両10に作
用する横加速度Gyが所定のしきい値を超える場合に配
分制御モードの処理を実行する。従って、本実施例のシ
ステムにおいては、車両10に作用する横加速度Gyを
検出する必要がある。ECU12は、従動輪である左右
後輪RL,RRの車輪速度VWRL,WRR に基づいて車両
10に作用する横加速度Gyを推定することとしてい
る。尚、車輪速度VWRL,WRR は、車両10の走行中
に、左右後輪RL,RRがスリップ率=0で回転した場
合に、左右後輪RL,RRの中心軸に生ずる速度であ
る。
【0026】すなわち、車両10が直進走行中である場
合は、左右後輪RL,RRの車輪速度VWRL,WRR は等
速となる。これに対して、車両10が時計回り方向に旋
回している場合は、左後輪RLの車輪速度VWRL が右後
輪RRの車輪速度VWRR に比して大きくなり、一方、車
両10が反時計回り方向に旋回している場合は、右後輪
RRの車輪速度VWRR が左後輪RLの車輪速度VWRL
比して大きくなる。
【0027】このように、左右後輪RL,RRの車輪速
度VWRL,WRR には、車両10の旋回状態に応じた偏差
が生ずる。そして、車両10に作用する横加速度Gy
は、その偏差ΔVWR=|VWRL −VWRR |、車速V、お
よび定数KGを用いて次式の如く表せることが知られて
いる。尚、定数KGは、左右後輪RL,RRのトレッド
に基づいて設定される値である。
【0028】 Gy=KG・V・ΔVWR ・・・(1) 図2は、上記(1)式に示す関係を用いて車両10に作
用する横加速度Gyを検出すべくECU12が実行する
制御ルーチンの一例のフローチャートを示す。尚、図2
に示すルーチンは、所定時間毎に起動される定時割り込
みルーチンである。
【0029】図2に示すルーチンが起動されると、先ず
ステップ100において、車両10の推定車体速度VS0
が入力される。推定車体速度VS0は、車輪速センサ18
**の出力信号に基づいて演算される左右前輪FL,FR
の車輪速度VWFL,WFR および左右後輪RL,RRの車
輪速度VWRL,WRR から推定される車速Vの推定値であ
る。
【0030】車両10において、車輪FL,FR,R
L,RRが制動力を発揮している場合は、車輪FL,F
R,RL,RLにスリップが生ずることにより、車輪速
センサ18**の出力信号に基づいて演算される車輪速度
WFL,WFR,WRL,WRR (以下、これらを総称する場
合には車輪速度VW** と称す)が現実の車輪速度VRWF
L,VRWFR,VRWRL,VRWRR (以下、これらを総称する
場合には実車輪速度VR W** と称す)に比して低速とな
る。このため、ECU12は、かかる状況下では、原則
として4つの車輪速度VW** のうち、最も大きな車輪速
度を推定車体速度VS0とする。
【0031】また、車両10において、車輪FL,FR
が駆動力を発生している場合は、車輪FL,FRにスリ
ップが生ずることにより、車輪速センサ18FL,18
FRの出力信号に基づいて演算される車輪速度VWFL,
WFR が現実の車輪速度VRWF L,VRWFR に比して高速と
なる。一方、従動輪であるRL,RRには、かかる状況
下では殆どスリップが生じないため、車輪速センサ18
RL,18RRの出力信号に基づいて演算される車輪速
度VWRL,WRR は、ほぼ現実の車輪速度VRWF L,VR
WFR に一致する。このため、ECU12は、車両10に
おいて制動操作がなされていない場合には、原則とし
て、従動輪である左右後輪RL,RRの車輪速度VWRL,
WRR の平均値を推定車体速度VS0とする。
【0032】ところで、ECU12は、各車輪FL,F
R,RL,RRの車輪速度VW** を、各車輪FL,F
R,RL,RRの回転速度ω**に基づいて演算する。車
輪FL,FR,RL,RRの回転速度ω**には、例え
ば、低摩擦係数路で制動操作がなされた場合や、車輪F
L,FR,RL,RRが段差を乗り越える前後等におい
て、急激な変化が生ずる場合がある。
【0033】回転速度ω**に、かかる急激な変化が生ず
ると、その影響で推定車体速度VS0に不当な変化が生ず
る場合がある。ECU12は、回転速度ω**の急変に伴
うかかるVSOの不当な変動を抑制すべく、推定車体速度
SOの変化率に上限および下限のガードを設定し、それ
らのガード範囲内でのみVSOの変化を許容することとし
ている。このため、ECU12によれば、車輪FL,F
R,RL,RRが異常な挙動を示す場合においても、精
度良く現実の車速Vと一致する推定車体速度V S0を演算
することができる。
【0034】図2に示すルーチンにおいて、ステップ1
02では、左右後輪RL,RRの車輪速度VWRL,WRR
の偏差ΔVWR=|VWRL −VWRR |が演算される。左右
後輪RL,RRの車輪速度VWRL,WRR は、後述の如
く、左右後輪RL,RRの回転速度ωRL,ωRRに係数を
乗算することにより演算される。
【0035】ステップ104では、ステップ100で入
力された推定車体速度VSOとステップ102で演算され
た偏差ΔVWRとを上記(1)式に代入することにより、
横加速度Gyが演算される。ステップ104の処理が終
了すると、今回のルーチンが終了される。
【0036】上述の如く、本実施例のシステムにおいて
は、左右後輪RL,RRの回転速度ωRL,ωRRに係数を
乗算することにより、それらの車輪速度VWRL,WRR
求めることとしている。車輪速度VWRL,WRR は、後輪
RL,RRの半径と回転速度ωRL,ωRRとを乗算するこ
とにより得ることができる。従って、後輪RL,RRの
半径が常に一定であれば、回転速度ωRL,ωRRに乗じら
れる係数は、定数とすることができる。
【0037】しかしながら、車輪の半径は、タイヤの摩
耗やエア圧が変化等に起因して変化する。また、左右後
輪RL,RRにテンパータイヤが用いられている場合
や、パンクが生じている場合には、現実の車輪外径が、
当初予定した車輪外径に比して大幅に小さくなる場合が
ある。回転速度ωRL,ωRRに乗算される係数が定数に固
定されていると、このように車輪の外径が変化する場合
に、適切な車輪速度VWR L,WRR が得られない事態を生
ずる。
【0038】従って、回転速度ωRL,ωRRに基づいて正
確な車輪速度VWRL,WRR を求めるためには、左右後輪
RL,RRの外径変化に対して適切な配慮を払う必要が
ある。図3は、かかる機能を実現すべくECU12が実
行する制御ルーチンの一例のフローチャートを示す。
尚、図3に示すルーチンは、所定時間毎に起動される定
時割り込みルーチンである。
【0039】図3に示すルーチンが起動されると、先ず
ステップ200において、XSTOPフラグが“1”で
あるか否かが判別される。XSTOPフラグは、車両1
0が停止する毎、すなわち、全ての車輪FL,FR,R
L,RRの回転速度ω**が“0”となる毎に“1”がセ
ットされるフラグである。上記の判別の結果、ASTO
Pフラグに“1”がセットされていないと判別された場
合は、以後、何ら処理が進められることなく今回のルー
チンが終了される。一方、ASTOPフラグに“1”が
セットされていると判別される場合は、次にステップ2
02の処理が実行される。
【0040】ステップ202では、XADJフラグが
“0”にリセットされる。XADJフラグは、車輪速度
WFL,WFR,WRL,WRR を算出する際に、それぞれ回
転速度ω**に乗算される補正係数KSFL,KSFR,KS
RLおよびKSRR(以下、これらを総称する場合はKS**
と称す)の補正が完了しているか否かを表すフラグであ
る。すなわち、XADJフラグには、後述の如く、補正
係数KS**の補正が完了した時点で“1”がセットされ
る。
【0041】ステップ204では、車両が停止状態とな
る以前に用いられていた補正係数KS**がクリアされ
る。ステップ206では、補正係数KS**の補正条件が
成立しているか否かが判別される。補正係数KS**は、
車輪FL,FR,RL,RRの外径が、車輪速度V WFL,
WFR,WRL,WRR に与える影響を補正するために用い
られる係数である。このため、補正係数KS**の補正
は、車輪FL,FR,RL,RRが、大きなスリップ率
を伴わずに、適当な速度で回転している状況下で行うこ
とが適切である。そこで、本ルーチンでは、推定車体速
度VS0が10km/h以上であること、車両10が制動中で
ないこと、および、車両10が加速中でないこと、が補
正条件として設定されている。上記の補正条件が成立し
ないと判別される場合は、その条件が成立すると判別さ
れるまで繰り返しステップ206の処理が実行される。
一方、上記の補正条件が成立すると判別されると、次に
ステップ208の処理が実行される。
【0042】ステップ208では、車輪速センサ18**
から発せられるパルス信号の数PFL,PFR,PRL,PRR
(以下、これらを総称する場合はパルス数P**と称す)
がカウントされる。ステップ210では、所定時間が経
過したか否かが判別される。その結果、未だ所定時間が
経過していないと判別される場合は、所定時間が経過し
たと判別されるまで、繰り返し上記ステップ208およ
び210の処理が実行される。
【0043】ステップ212では、上記所定時間中にカ
ウントされたパルス数P**の平均値PM=(PFL+PFR
+PRL+PRR)/4が演算される。ステップ214で
は、P**とPMとを次式に代入することにより補正係数
KS **が演算される。
【0044】 KS**=PM/P** ・・・(2) 図4は、PMに対するP**の値と、補正係数KS**との
関係を示す。図4に示す如く、補正係数KS**は、パル
ス数P**が平均値PMと等しい場合に1.0となり、パ
ルス数P**が平均値PMに比して大きい領域では1.0
より小さな値に、また、パルス数P**が平均値PMに比
して小さい領域では1.0より大きな値となる。
【0045】本実施例において、車輪速度VW** は、パ
ルス数P**に、車輪FL,FR,RL,RRの基準外径
に基づいて設定された定数αと、補正係数KS**とを乗
算することにより、次式の如く演算される。 VW** =α・KS**・P** ・・・(3) 4つの車輪の外径の平均値に比して大きな外径を有する
車輪については、そのパルス数P**が、平均値PMに比
して小さな値となる。この場合、補正係数は1.0より
大きな値に設定される。その結果、車輪速度VW** は、
車輪の外径が4つの車輪の平均値であり、かつ、パルス
数P**が平均値PMである場合と等しい速度となる。
【0046】同様に、4つの車輪の外径の平均値に比し
て小さな外径を有する車輪については、そのパルス数P
**が、平均値PMに比して大きな値となる。この場合、
補正係数は1.0より小さな値に設定される。その結
果、車輪速度VW** は、車輪の外径が4つの車輪の平均
値であり、かつ、パルス数P**が平均値PMである場合
と等しい速度となる。
【0047】このように、上述した補正係数KS**と、
車輪速度VW** の演算手法とを用いると、車輪の外径の
大小に関わらず、パルス数P**に基づいて、すなわち、
車輪速センサ18**から発せられるパルス信号に基づい
て、車輪の外径が4つの車輪の外径の平均値である場合
に得られると同等の車輪速度VW** を求めることができ
る。従って、本実施例のシステムによれば、車輪の外径
の影響を考慮した適切な車輪速度VW** を得ることがで
きる。
【0048】ステップ216では、補正係数KS**を補
正する過程で一次的にKS**の値をストアするメモリα
**2 〜α**nに記憶されているメモリ値を、α**1 〜α
** -1に入れ換える処理が実行される。ステップ218
では、上記ステップ214で求めた補正係数KS**が、
メモリα**nに記憶される。
【0049】ステップ220では、α**1 〜α**nに記
憶されている値が、適当な値に収束しているか否かが判
別される。その結果、α**1 〜α**nに記憶されている
補正係数KS**が適当な値に収束していると判別される
場合は、以後、ステップ222の処理が実行される。一
方、α**1 〜α**nに記憶されている補正係数KS**
適当な値に収束していないと判別される場合は、KS**
が適当な値に収束していると判別されるまで、上記ステ
ップ208〜220の処理が繰り返し実行される。
【0050】車両10が悪路を走行している場合等にお
いては、車輪FL,FR,RL,RRに空転等が生じ、
パルス数P**の値が安定しない事態が生ずる。補正係数
KS **の補正は、このように不安定は状況下で検出され
たパルス数P**に基づいて実行すべきではない。本ルー
チンによれば、パルス数P**が不安定である場合には、
α1 〜αnに記憶されている補正係数KS**が適当な値
に収束していないと判別され、補正係数KS**の補正が
完了されない。このため、本実施例のシステムによれ
ば、悪路走行中等、実車輪速度VRW** に対応するパル
ス数P**が得られない状況下で、不適切な補正係数KS
**が演算されるのを防ぐことができる。
【0051】ステップ222では、補正係数KS**の補
正完了条件が成立しているか否かが判別される。本ルー
チンでは、左前輪FLについての補正係数KSFLと右前
輪FRについての補正係数KSFRとの偏差|KSFL−K
FR|が所定値K1 に比して小さく、かつ、左後輪RL
についての補正係数KSRLと右後輪RRについての補正
係数KSRRとの偏差|KSRL−KSRR|が所定値K2
比して小さい場合に、補正完了条件が成立していると判
別される。尚、本実施例においては、所定値K 1 および
2 が共に0.0042に設定されている。以下、K1
およびK2 を共に所定値KEと称す。
【0052】上述の如く、各車輪FL,FR,RL,R
Rに対する補正係数KS**は、車輪速センサ18**から
出力されるパルス信号のパルス数P**と、それらの平均
値PMとの比較に基づいて演算される。ところで、車両
10が反時計回り方向に旋回している場合は、車輪F
L,FR,RL,RRの外径が同一であっても、左前輪
FLのパルス数PFLおよび左後輪RLのパルス数PRL
平均値PMに比して小さくなり、かつ、右前輪FRのパ
ルス数PFRおよび右後輪RRのパルス数PRRが平均値P
Mに比して大きくなる。同様に、車両10が時計回り方
向に旋回している場合は、車輪FL,FR,RL,RR
の外径が同一であっても、左前輪FLのパルス数PFL
よび左後輪RLのパルス数PRLが平均値PMに比して大
きくなり、かつ、右前輪FRのパルス数PFRおよび右後
輪RRのパルス数PRRが平均値PMに比して小さくな
る。
【0053】このように、パルス数P**と、それらの平
均値PMとの間には、車輪の外径が全ての車輪の外径の
平均値と異なる場合に加え、車両10が旋回中である場
合にも差異が生ずる。従って、補正係数KS**の補正が
車両10の旋回中に完了されるとすれば、各車輪FL,
FR,RL,RRについての補正係数KS**に、車両1
0の旋回に伴う影響が重畳されることになる。
【0054】摩耗や空気圧変動に起因して車輪FL,F
R,RL,RRの外径に変化が生じた場合に、その変化
に起因して左右前輪FL,FRの補正係数KSFL,KS
FR間に生ずる偏差、および、左右後輪RL,RRの補正
係数KSRL,KSRR間に生ずる偏差は、比較的小さな値
である。これに対して、車両10の旋回時にはその旋回
に起因して、補正係数KSFL,KSFR間、および補正係
数KSRL,KSRR間に、比較的大きな偏差が発生する場
合がある。
【0055】本実施例において、上記ステップ222で
用いられる所定値KE=0.0042は、摩耗や空気圧
変動に起因して車輪FL,FR,RL,RRの外径に変
化が生じており、かつ、車両10が直進状態にある場合
に、補正係数KSFL,KSFR間および補正係数KSRL
KSRR間に発生する偏差の最大値に設定されている。従
って、上記ステップ222の完了条件は、車両10がほ
ぼ直進状態にある場合にのみ成立する。このため、本実
施例によれば、車両10が明らかに旋回中である場合
に、補正係数KS**の補正が完了されることがない。
【0056】ステップ224では、XSTOPフラグが
“0”にリセットされると共に、XADJフラグに
“1”がセットされる。上記の処理が終了すると、今回
のルーチンが終了される。以後、本ルーチンが起動され
ると、上記ステップ200でXSTOPフラグが“1”
であると判別され、ステップ202〜224の処理が実
行されることなく本ルーチンが終了される。
【0057】ところで、本実施例のシステムにおいて
は、上記ステップ222の補正完了条件が成立する場
合、車両10が直進状態であると見做される。補正係数
KS**の値から車両10の旋回に起因する影響を排除す
るためには、補正完了条件のしきい値として用いられる
所定値KEは小さいほど望ましい。
【0058】しかしながら、所定値KEを小さな値に設
定すると、左右の車輪の外径が僅かに異なるだけで補正
が完了しない事態に陥る可能性がある。そこで、本実施
例においては、所定値KEに、偏摩耗や空気圧変化に起
因する外径変化を吸収し得る値“0.0042”を与え
ている。このため、本実施例のシステムによれば、左右
の車輪の外径変化が偏摩耗や空気圧変動に起因している
場合には、確実に補正を完了させることができる。
【0059】左右輪の一方がパンクしている場合、およ
び、左右輪の一方にテンパータイヤが装着されている場
合等は、偏摩耗や空気圧変動に起因する外径差に比して
大きな外径差が左右輪に生ずる。上述した所定値KE
は、かかる状況下では補正完了条件を成立させ得ない値
である。このため、車両10において何れかの車輪F
L,FR,RL,RRがパンクしている場合、および、
何れかの車輪FL,FR,RL,RRにテンパータイヤ
が装着されている場合は、補正係数KS**の補正が完了
されることはない。後述の如く、補正係数KS**の補正
が完了されていない間は、油圧回路16において配分制
御が実行されることはない。従って、本実施例のシステ
ムによれば、かかる状況下で、不適正なKS**に基づく
不適正な配分制御が実行されることはない。
【0060】ところで、上記の如く、所定値KEを、偏
摩耗や空気圧変動に起因する左右輪の外径差を吸収し得
る値に設定すると、厳密な意味では車両10が直進状態
にない場合であっても補正完了条件が成立する場合があ
る。すなわち、左右輪の補正係数KS*LとKS*Rとの偏
差がKEより小さい値に収まる範囲内では、車両10が
旋回中であっても補正完了条件は成立すると判断され
る。
【0061】左右後輪RL,RRの外径が同一である場
合、それらの補正係数KSRL,KS RRは、本来同一の値
とされるべきである。しかしながら、補正完了条件が、
上記の如く厳密な意味で車両10が直進状態にない場合
であっても成立することから、左右後輪RL,RRの外
径が同一であっても、それらの補正係数KSRL,KS RR
には、最大KEの差が生じ得る。
【0062】上述の如く、本実施例においては“VW**
=α・KS**・P**”なる演算式(上記(3)式)に従
って車輪速度VW** が演算される。左右後輪RL,RR
の外径が同一である場合、車両10の直進時にはPRL
RRが成立する。この場合に、α・PRL=α・PRRを車
速Vで近似とすると、車両10の直進時における車輪速
度VWRL,WRR は、それぞれ次式の如く表すことができ
る。
【0063】 VWRL =KSRL・V ・・・(4) VWRR =KSRR・V ・・・(5) そして、KSRLとKSRRとの間にKEの差が存在すると
すれば、車両10の直進時において、本来実車輪速度V
WRL,VRWRR が等しいにも関わらず、上記(3)式に
従って算出される車輪速度VWRL,WRR の間には、次式
で表される偏差ΔVWRが生ずる。
【0064】 ΔVWR=KE・V ・・・(6) 上述の如く、本実施例においては、“Gy=KG・V・
ΔVWR”なる演算式(上記(1)式)に従って横加速度
Gyが演算される。このため、車両10の直進時に、上
記(6)式で表される偏差ΔVWRが検出されると、車両
10の直進時に、すなわち、車両10に横加速度Gyが
作用していない場合に、次式で表される横加速度ΔGy
が誤検出される。
【0065】 ΔGy=KG・V・KE・V =KG・KE・V2 ・・・(7) このように、本実施例のシステムにおいて演算される横
加速度Gyには、車速Vの2次関数で表される誤差ΔG
yが含まれる可能性がある。図5は、誤差ΔGyに包含
される可能性のある領域を誤差領域(I)として表した
車速Vと横加速度Gyとの2次元座標を示す。すなわ
ち、本実施例のシステムにおいては、図5に示す如く、
車速Vの2次関数f(V2 )で表される曲線より下方の
領域を横加速度Gyの誤差領域(I)と認識することが
できる。
【0066】ところで、図5に示す横加速度Gyの誤差
領域(I)は、現実に車両10に作用している横加速度
Gyとは逆向きの横加速度Gyが生じていると誤認識さ
れる可能性のある領域である。上述の如く、本実施例の
システムにおいては、横加速度Gyが所定のしきい値を
超える場合に、車両10の旋回安定性を高めるべく旋回
内輪側の制動力を減少させる制御が実行される。かかる
制御は、現実に車両10に作用している横加速度Gy
と、検出された横加速度Gyとの向きが異なる可能性の
ある場合、すなわち、現実の車両10の旋回方向と、推
定される車両10の旋回方向とが異なる可能性のある領
域では実行されないことが望ましい。
【0067】図5中に示す(II) 領域は、本実施例のシ
ステムにおいて配分制御が実行される領域を示す。この
ように、本実施例のシステムにおいては、制御実行領域
(II) が、誤差領域(I)と重ならないように設定され
ている。以下、制御実行領域(II) においてのみ制動力
配分制御の実行を許容すべくECU12が実行する制御
の内容について説明する。
【0068】図6は、上記の機能を実現すべくECU1
2が実行する制御ルーチンの一例のフローチャートを示
す。尚、図6に示すルーチンは、所定時間毎に起動され
る定時割り込みルーチンである。図6に示すルーチンが
起動されると、先ずステップ300においてXADJフ
ラグに“1”がセットされているか否か、すなわち、補
正係数KS**の補正が完了しているか否かが判別され
る。その結果、XADJ=1が成立すると判別される場
合は次にステップ302の処理が実行される。一方、X
ADJ=1が不成立であると判別される場合は、以後何
ら処理が進行されることなく今回のルーチンが終了され
る。
【0069】ステップ302では、ABS制御の開始条
件が成立しているか、すなわち、何れかの車輪FL,F
R,RL,RRについてロック状態に移行する可能性が
検出されているか否かが判別される。その結果、ABS
制御の開始条件が成立していると判別された場合は、次
にステップ304以降の処理が実行される。
【0070】ステップ304では、ABS制御の実行が
開始される。具体的には、ロック状態に移行する可能性
があると判断された車輪のブレーキ装置14**に供給す
るブレーキ油圧を、減圧・保持・または増圧する処理が
実行される。ステップ306では、ABS制御の終了条
件が成立しているか、すなわち、全ての車輪FL,F
R,RL,RRについて、ロック状態に移行する可能性
が消滅したか否かが判別される。その結果、ABS制御
の終了条件が成立していないと判別される場合は、終了
条件が成立すると判別されるまで、上記ステップ304
および306の処理が繰り返し実行される。一方、AB
S制御の終了条件が成立していると判別された場合は、
今回のルーチンが終了される。
【0071】上記ステップ302で、ABS制御の開始
条件が成立していないと判別された場合は、次にステッ
プ308以降の処理が実行される。ステップ308で
は、制動力配分制御の制御開始条件が成立しているか否
か、すなわち、運転者によって制動操作がなされてお
り、かつ、推定車体速度VSOと、左右の車輪速度差ΔV
WRに基づいて演算された横加速度Gyとが、上記図5に
示す制御実行領域(II) の関係を満たしているか否かが
判別される。制動力の配分制御は、車両10の旋回安定
性を高めるために実行される制御である。従って、旋回
安定性が問題とならない低速走行中および緩やかな旋回
走行中は、配分制御を実行する必要がない。このため、
本実施例においては、誤差領域(I)近傍の領域に加
え、推定車体速度VSOが10km/h以下の領域、および、
横加速度Gyが0.3G以下の領域で配分制御を実行し
ないこととしている。
【0072】上記ステップ308では、具体的には、ブ
レーキスイッチ20からオン出力が発せられており、か
つ、以下の何れかの条件が成立する場合に制御開始条件
が成立すると判別される。 10km/h<VS0≦100km/h、かつ、Gy≧0.3G 100km/h<VS0、かつ、Gy≧f(V2 )+α 尚、上記の条件中で用いられているαは、誤差領域
(I)の近傍での誤作動を防止すべく、安全のため導入
された定数である。
【0073】上記ステップ308において制御開始条件
が成立すると判別された場合は、次にステップ310の
処理が実行される。一方、制御開始条件が成立しないと
判別された場合は、以後、何ら処理が進行されることな
く今回のルーチンが終了される。
【0074】ステップ310では、制動力の配分制御が
実行される。具体的には、横加速度Gyの方向に基づい
て車両10の旋回方向を特定し、旋回内輪側後輪RIN
ブレーキ装置14RINに供給されるブレーキ油圧を、旋
回外輪側後輪ROUT のブレーキ装置14ROUT に供給さ
れるブレーキ油圧に対して減圧する処理が実行される。
【0075】ステップ312では、配分制御の終了条件
が成立しているか否かが判別される。具体的には、以下
の何れかの条件が成立する場合に制御の終了条件が成立
すると判断される。 少なくとも1輪についてABS制御が開始 VS0≦6km/h ブレーキスイッチがオフ 制御開始後15秒以上の時間が経過 その結果、制御終了条件が成立していないと判別された
場合は、その条件が成立すると判別されるまで、上記ス
テップ310および312の処理が繰り返し実行され
る。一方、制御終了条件が成立すると判別された場合
は、今回のルーチンが終了される。尚、上記の如く、
制御の継続時間に制限を加えると、制御装置の異常に対
して優れたフェールセーフ性を得ることができる。
【0076】上記の処理によれば、左右後輪RL,RR
の車輪速度VWRL,WRR の差ΔVWRに基づいて演算され
る横加速度Gyが、現実に車両10に作用している横加
速度Gyの方向と異なる状況下で、制動力の配分制御が
実行される不都合を回避することができる。従って、本
実施例の車両用制御装置によれば、制動力配分制御を実
行することにより、常に有効に車両10の旋回挙動を安
定化させることができる。
【0077】尚、上記の実施例においては、左右後輪R
L,RRの車輪速センサ18**が前記請求項1記載の
「回転速度検出手段」に相当している。また、ECU1
2が上記ステップ208〜212の処理を実行すること
により前記請求項1記載の「平均回転速度検出手段」
が、ステップ214〜222の処理を実行することによ
り前記請求項1記載の「車輪速度補正値演算手段」が、
上記ステップ102の処理を実行することにより前記請
求項1記載の「車輪速度演算手段」が、また、上記ステ
ップ308の処理を実行することにより前記請求項1記
載の「実行可否判定手段」、および、前記請求項記載
の「実行許可手段」および「しきい値変更手段」が、そ
れぞれ実現される。
【0078】ところで、上記の実施例においては、後輪
RL,RRの車輪速度VWRL,WRRの差から「左右の車
輪速度の差」を求めることとしているが、本発明はこれ
に限定されるものではなく、前輪FL,FRの車輪速度
WFL,WFR の差から「左右の車輪速度の差」を求める
こととしてもよい。
【0079】また、上記の実施例においては、横加速度
Gyを用いた車両制御を制動力の配分制御に限定してい
るが、本発明はこれに限定されるものではなく、横加速
度Gyを他の車両制御に用いることとしてもよい。
【0080】
【発明の効果】上述の如く、請求項1記載の発明によれ
ば、車両制御の実行可否の判断に用いられるしきい値
を、車速に応じて変更することができる。具体的には、
車速の増大に応じて該しきい値を大きくすることができ
る。従って、本発明に係る車両用制御装置によれば、
両制御の実行領域を、車両に対して確実に横加速度が生
じていると認識できる領域にのみ限定することができ
る。
【0081】また、請求項の発明によれば、車両制御
の実行可否の判断に用いられるしきい値を所定の車速以
下では一定値とすることができる。従って、本発明に係
る車両用制御装置によれば、旋回安定性が問題とならな
い緩やかな旋回走行中には車両制御を実行しないように
することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例のシステム構成図である。
【図2】図1に示す車両用制御装置において実行される
横加速度演算ルーチンの一例のフローチャートである。
【図3】図1に示す車両用制御装置において実行される
補正係数演算ルーチンの一例のフローチャートである。
【図4】図3に示すルーチンにより演算される補正係数
と所定時間内に車輪速センサから出力れるパルス信号の
数との関係を示す図である。
【図5】図2に示すルーチンによって演算される横加速
度の誤差領域と図1に示す車両用制御装置において配分
制御が実行される領域とを示す図である。
【図6】図1に示す車両用制御装置において実行される
制御ルーチンの一例のフローチャートである。
【符号の説明】
10 車両 12 電子制御ユニット 14FL,14FR,14RL,14RR,14**
レーキ装置 16 油圧回路 18FL,18FR,18RL,18RR,18**
輪速センサ 20 ブレーキスイッチ 22 アクセル開度センサ VWFL ,VWFR ,VWRL ,VWRR 車輪速度 KSFL,KSFR,KSRL,KSRR,KS** 補正係数 VS0 推定車体速度 Gy 横加速度 ΔVWR 左右後輪車輪速度差
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平1−247255(JP,A) 特開 平3−112757(JP,A) 特開 平7−318584(JP,A) 特開 平4−232469(JP,A) 特表 平7−501298(JP,A) 特表 平3−501054(JP,A) 特表 平3−500331(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B60T 8/32 - 8/96

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 左右の車輪速度の差に基づいて車両の横
    加速度を演算し、前記横加速度に基づいて車両制御を行
    う車両制御装置において、 少なくとも左右一対の車輪の回転速度を検出する回転速
    度検出手段と、 前記回転速度検出手段が検出する複数の回転速度の平均
    値を求める平均回転速度検出手段と、 車両の直進時における、前記回転速度検出手段の検出値
    および前記平均回転速度検出手段の検出値に基づいて、
    少なくとも前記左右一対の車輪に対する車輪速度補正値
    を演算する車輪速度補正値演算手段と、 前記車輪速度補正値演算手段 の演算値と、前記回転速度
    検出手段の検出値とに基づいて前記左右一対の車輪速
    度の差を演算する車輪速度演算手段と、 車速に基づいて前記車両制御の実行可否を判定する実行
    可否判定手段と、を備え、 前記実行可否判定手段が、 車両の横加速度が所定のしきい値を超える場合に前記車
    両制御の実行を許可する実行許可手段と、 車速の増大に応じて前記しきい値を大きくするしきい値
    変更手段と、 を備えることを特徴とする車両用制御装
    置。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の車両用制御装置におい
    て、 前記しきい値変更手段は、所定の車速以下では前記しき
    い値を一定値とする、ことを特徴とする車両用制御装
    置。
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