JP3254975B2 - 車両の挙動制御装置 - Google Patents

車両の挙動制御装置

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JP3254975B2
JP3254975B2 JP21859295A JP21859295A JP3254975B2 JP 3254975 B2 JP3254975 B2 JP 3254975B2 JP 21859295 A JP21859295 A JP 21859295A JP 21859295 A JP21859295 A JP 21859295A JP 3254975 B2 JP3254975 B2 JP 3254975B2
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瑞穂 杉山
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両の挙動制御装
置に係り、特に、車両の走行状態に応じて各車輪の制動
力を制御することにより車両挙動の安定化を図る車両の
挙動制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、例えば特開昭62−2535
59号公報に開示される如く、タイヤのグリップ状態が
限界に達したと判断された際に車両を減速して車両挙動
の安定化を図る装置が知られている。上記従来の装置
は、タイヤのスリップ角(タイヤの中心面とタイヤの進
行方向とがなす角)と、コーナリングフォースとを検出
し、スリップ角の増加量に対するコーナリングフォース
の増加量が非線型となった時点で、タイヤのグリップ状
態が限界に到達したものと判断する。
【0003】タイヤのコーナリングフォースは、そのス
リップ角が小さい領域では、ほぼスリップ角に比例した
値となる。そして、スリップ角がタイヤの性能等によっ
て決まる限界スリップ角を超える領域では、コーナリン
グフォースがほぼ飽和値に収束し、スリップ角の変化量
とコーナリングフォースの変化量との間に線型関係が成
立しない状態となる 上記従来の装置によれば、ステアリング操作に伴って車
輪のスリップ角が増した際に、その増加量に対して比例
的にコーナリングフォースが増加する領域では、タイヤ
が適正なグリップ状態にあると判断される。一方、車輪
のスリップ角の増加量に対してコーナリングフォースが
比例的に増加しない状態、すなわち、ステアリング操舵
量と、コーナリングフォースの変化量とが対応しない領
域では、タイヤが適正なグリップ状態を逸脱したと判断
されて車両が減速される。かかる制御によれば、旋回走
行中にタイヤのグリップが失われることがなく、安定し
た旋回挙動を得ることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、車輪のスリ
ップ角は、車体のスリップ角β(車体の軸線と車体重心
Cの進行方向とがなす角)を検出し、更に、車体のスリ
ップ角βに、重心Cと前輪または後輪の位置の相違に対
応する幾何学的な補正を施すことで求めることができ
る。車体のスリップ角βは、車両の横方向速度Vyを車
両の前後方向速度Vxで除することにより求めることが
できる。また、横方向速度Vyは、車両に作用する並進
方向加速度を積分することで求めることができる。更
に、並進方向加速度は、前後方向速度Vxと、車両に作
用する横方向加速度Gyと、重心C回りのヨーレートγ
を用いて、Gy−Vx・γと表すことができる。
【0005】従って、車体のスリップ角βは、β=∫
{(Gy/Vx)−γ}dtと表すことができる。Gy
およびγは、それぞれ横加速度センサおよびヨーレート
センサにより、検出することができる。また、Vxは車
速Vで近似することができる。このため、車体のスリッ
プ角βは、すなわち、車輪のスリップ角は、横加速度セ
ンサ、ヨーレートセンサ、および車速センサが搭載され
る車両においては、容易に演算することができる。
【0006】しかしながら、上述の如く、Gy,γ,V
x等に基づいてβを演算するためには、その演算過程で
積分演算を行うことが必要である。このため、Gy,
γ,Vx等の検出値に誤差が重畳されていると、βの演
算値にはそれらの誤差が蓄積される。このため、車体ス
リップ角βを精度良く検出するためには、すなわち、車
輪のスリップ角を精度良く検出するためには、Gy,
γ,Vx等を検出する各センサに高い精度を付与するこ
とが必要である。
【0007】また、上述の如く、車体のスリップ角β
は、車両の横方向速度Vyを車両の前後方向速度Vxで
除することにより求めることができる。従って、例え
ば、対地車速センサ等を用いてVy、Vxを精度良く検
出すれば、それらの検出値から直接車体スリップ角βを
演算し、その演算値に基づいて精度良く車輪のスリップ
角を求めることができる。しかしながら、対地車速セン
サ等、車体スリップ角βを直接検出するためのセンサ
は、横加速度センサ、ヨーレートセンサ等に比して、更
に高価である。
【0008】上述の如く、車輪のスリップ角を検出する
ためには、高価なセンサを用いる必要がある。この点、
車輪のスリップ角を基に車両の挙動を制御する上記従来
の装置は、低コストでの実現が困難であるという問題を
有するものであった。本発明は、上述の点に鑑みてなさ
れたものであり、精度良く車両の旋回挙動を検出して、
安定な旋回挙動を実現するために必要な反旋回モーメン
トを発生する車両の挙動制御装置を、高価なセンサを用
いることなく実現することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記の目的は、請求項1
に記載する如く、車両の走行時に各車輪の制動力を制御
して車両挙動の安定化を図る車両の挙動制御装置におい
て、車両に生ずる前後方向加速度、横方向加速度、ヨー
レート、及び車速に基づいて、車体スリップ角に対する
ヨーモーメントの変化割合を検出するヨーモーメント変
化割合検出手段と、該ヨーモーメント変化割合検出手段
の検出結果に基づいて、車両に付与すべき反旋回モーメ
ントを演算する反旋回モーメント演算手段と、前記反旋
回モーメントが発生するように、前記各車輪の制動力を
制御する制動力制御手段と、を備える車両の挙動制御装
置により達成される。また、上記の目的は、請求項2に
記載する如く、請求項1記載の車両の挙動制御装置にお
いて、前記ヨーモーメント変化割合検出手段は、車両に
生ずる前後方向加速度に応じた信号を出力する前後方向
加速度センサ、横方向加速度に応じた信号を出力する横
方向加速度センサ、ヨーレートに応じた信号を出力する
ヨーレートセンサ、及び車速に応じた信号を出力する車
輪速センサの出力信号に基づいて、前記変化割合を検出
する車両の挙動制御装置によっても達成される。更に、
上記の目的は、請求項3に記載する如く、請求項1又は
2記載の車両の挙動制御装置において、前記ヨーモーメ
ント変化割合検出手段は、車両に生ずる前後方向加速
度、横方向加速度、ヨーレート、及び車速に基づいて、
次式により前記変化割合を検出することを特徴とする車
両の挙動制御装置によっても達成される。 dM/dβ=−(I・d γ/dt )・V ・γ /{V・(Gy−dV/dt)+V・γ・(Gx−dV/dt)} 但し、Mはヨーモーメント、βは車体スリップ角、dM
/dβは車体スリップ角に対するヨーモーメントの変化
割合、Iは車両のヨー慣性モーメント、γはヨーレー
ト、Vは車速、Gyは横方向加速度、Gxは前後方向加
速度である。
【0010】本発明において、ヨーモーメント変化割合
検出手段は、車体スリップ角の変化に伴うヨーモーメン
トの変化の割合を検出する。タイヤのグリップ状態が適
正である場合には、車体のスリップ角が増すに連れて、
車体を直進状態とする方向のヨーモーメント(以下、復
元ヨーモーメントと称す)が大きくなる。一方、タイヤ
のグリップ状態が限界を超えると、車体のスリップ角が
増すに連れて、復元ヨーモーメントは小さくなる。
【0011】前記反旋回モーメント演算手段は、ヨーモ
ーメントの変化割合に基づいて、車両に付与すべき反旋
回モーメントを演算する。復元ヨーモーメントが車体ス
リップ角に対して負の傾きを示す領域では、車体スリッ
プ角が増すほど車体を直進方向とする向きのモーメント
が減少し、車両はスピン傾向となる。前記反旋回モーメ
ント演算手段は、かかる状況下で車両を安定旋回状態と
するために、反旋回方向に付与すべきモーメント、すな
わち、反旋回モーメントを演算する。
【0012】前記制動力制御手段は、上記の如く演算さ
れる反旋回モーメントが発生するように、各車輪の制動
力を制御する。制動職制御手段により各車輪の制動力が
制御されると、タイヤの復元ヨーモーメントが負の傾き
を示す領域でも、車両を直進状態とする方向のモーメン
トの合力が適正な値となり、車両のスピン傾向が抑制さ
れる。
【0013】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の一実施例のシス
テム構成図を示す。本実施例のシステムは、後述する電
子制御ユニット(ECU)10によって制御されてい
る。図1において12FL,12FR,12RL,12
RRは、それぞれ車両の左前輪、右前輪、左後輪、右後
輪を示す。4つの車輪12FL,12FR,12RL,
12RRには、それぞれ図示しないホイルシリンダが組
み込まれている。それぞれのホイルシリンダは、油圧が
供給された際に、その油圧に応じた制動力を発生する。
【0014】車輪12FL,12FR,12RL,12
RRのホイルシリンダには、それぞれ油圧制御弁14F
L,14FR,14RL,14RR(以下、これらを総
称する場合には、符号14を付して表す)が接続されて
いる。また、油圧制御弁14には、油圧通路16、およ
び図1中に一点鎖線で示す経路を介してリザーバタンク
18が連通している。油圧制御弁14は、外部から供給
される信号に応じて作動する2位置弁であり、ホイルシ
リンダと油圧通路16とを連通する増圧位置と、ホイル
シリンダとリザーバタンク18とを連通する減圧位置と
を実現する。
【0015】油圧通路16には、油圧源切り換え弁20
が連通している。油圧源切り換え弁20には、また、油
圧ポンプ22およびアキュムレータ24からなる高圧源
と、マスタシリンダ26とが連通している。油圧源切り
換え弁20は、外部から供給される信号に応じて作動す
る2位置弁であり、油圧通路16と油圧ポンプ22とを
連通する制御実行位置と、油圧通路16とマスタシリン
ダ26とを連通する通常位置とを実現する。
【0016】油圧ポンプ22は、油圧切り換え弁20が
制御実行位置とされる状況下で、ブレーキフルードをリ
ザーバタンク18から汲み上げてアキュムレータ24側
に圧送する。アキュムレータ24は、その際に生ずる油
圧を蓄えて脈動の少ない安定した油圧を油圧切り換え弁
20に供給する。このため、油圧切り換え弁20が制御
実行位置である場合、油圧通路16には、油圧ポンプ2
2の吐出能力に応じた所定の油圧が導かれる。マスタシ
リンダ26は、ブレーキペダル28に加えられたブレー
キ踏力に応じた油圧を発生する。従って、油圧切り換え
弁20が通常位置である場合、油圧通路16には、ブレ
ーキ踏力に応じた油圧が導かれる。
【0017】本実施例において、上述した油圧制御弁1
4、および油圧源切り換え弁20は、ECU10によっ
て制御される。ECU10には、各車輪12FL,12
FR,12RL,12RRそれぞれの車輪速VWFL,
WFR,WRL,WRR (以下、これらを総称する場合には、
車輪速VW と称す)を検出する車輪速センサ30FL,
30FR,30RL,30RR(以下、これらを総称す
る場合には、符号30を付すして表す)、ステアリング
ホイル32の操舵角δを検出する操舵角センサ34、車
両に作用する前後方向加速度Gxおよび横方向加速度G
yを検出するGセンサ36、および車両の重心回りに生
ずる旋回角速度、すなわち、車両のヨーレートγを検出
するヨーレートセンサ38が接続されている。
【0018】次に、図2乃至図7を参照して、本実施例
のシステムにおいて実行される、車両挙動の安定化を目
的とした制動力制御の内容について説明する。図2は、
左旋回中の車両を平面視で表した図を示す。図2におい
て“C”は、車両の重心を表す。同図に示す如く、車両
が左旋回を行っている場合、車両の重心C回りには、反
時計回り方向にヨーレートγが生ずる。車輪12FL,
12FR,12RL,12RRが適正なグリップ状態を
維持して車両が走行している場合、車両には車速Vや操
舵角δに応じた適切なヨレートγが発生する。これに対
して、前輪12FL,12FRがグリップを失った状態
では、車両を旋回させる方向に作用する旋回モーメント
が不足するため車両はドリフト傾向となり、一方、後輪
12RL,12RRがグリップを失った状態では、車両
の旋回を阻止する方向に作用する反旋回モーメントが不
足するため車両はスピン傾向となる。
【0019】ところで、車両の旋回中に、図2中に実線
矢線で示す如く、旋回外輪側に位置する前輪(図2にお
いて右前輪FR)が制動力FBRK を発生すると、その制
動力FBRK は、重心Cに対して車両の旋回を妨げる方向
のモーメントとして作用する。従って、車両の旋回中に
旋回外輪側に位置する前輪FL又はFRに制動力を発生
させれば、車両のスピン傾向を抑制することができる。
【0020】一方、車両の旋回中に、図2中に破線矢線
で示す如く、後輪12RL,12RRが制動力FBRK
発生すると、車両の荷重が前輪12FL,12FR側へ
移行して前輪のグリップが回復する。その結果、車両の
求心力が増加され、旋回モーメントが増大される。従っ
て、車両の旋回中に後輪12RL,12RRに制動力F
BRK を発生させれば、車両のドリフト傾向を抑制するこ
とができる。
【0021】このため、本実施例のシステムでは、車両
の旋回走行中に車両挙動を推定し、その推定結果に応じ
て車両がスピン傾向である場合には、旋回外輪側の前輪
12FL又は12FRのホイルシリンダに適当な油圧を
供給することにより、また、車両がドリフト傾向である
と判断される場合には、旋回内輪側の前輪12FL又は
12FRのホイルシリンダに適当な油圧を供給すること
により、車両挙動の安定化を図ることとしている。
【0022】上述した機能を実現するためには、車両の
挙動を精度良く推定すると共に、車両を安定した状態に
維持するために必要な旋回モーメント、または、反旋回
モーメントを検出し、それらのモーメントが発生するよ
うに各車輪の制動力を制御することが必要である。本実
施例のシステムは、車両がスピン傾向である場合に、そ
のスピン傾向を打ち消して安定した旋回状態を実現する
ために必要な反旋回モーメントを、簡単な構成で、精度
良く実現し得る点に特徴を有している。
【0023】ところで、車両がスピン傾向にあるか否か
は、後輪12RL,12RRのスリップ角(以下、後輪
スリップ角と称す)βrと、後輪12RL,12RRの
コーナリグフォース(以下、後輪コーナリングフォース
と称す)CFrとの関係から判断することができる。す
なわち、後輪コーナリングフォースCFrは、後輪スリ
ップ角βrが生ずることで発生する。CFrは、βrが
小さい領域ではβrに対して線型な関係を示し、タイヤ
のグリップ状態が限界を超える領域ではβrに対して非
線型な関係を示す。従って、CFrとβrとの関係が線
型な関係にあるか否かを判断することで、後輪12R
L,12RRが適正なグリップ状態にあるか否かを判断
することができる。
【0024】しかしながら、スリップ角βrを求めるた
めには、以下に示す如く、各種センサの出力値を積分す
る必要がある。以下、図3を参照して、後輪スリップ角
βrを演算する手法について説明する。図3は、車両の
旋回時における挙動を推定するために用いる4輪車の等
価的な2輪車モデルを示す。図3において、Cは車両の
重心、Vは車体速度、βは車体のスリップ角(図3にお
いて反時計回り方向を正とする)、2CFfは前輪12
FL,12FRのコーナリングフォースCFfの合力、
2CFrは後輪12RL,12RRのコーナリングフォ
ースの合力、δは操舵角(図3において反時計回り方向
を正とする)を示す。
【0025】図3に示す2輪車モデルにおいて、車両重
量をmとすると、重心Cを通るY軸上で、次式に示す運
動方程式が成立する。 mV( dβ/dt +γ)=2CFf+2CFr ・・・(1) 上記(1)式中左辺第1項(mV・ dβ/dt )は、車両
の重心Cに作用する並進方向の加速度 dVy/dt の近似
値(V・ dβ/dt )と車両重量(m)との乗算値であ
る。また、(1)式中左辺第2項(mVγ)は、車両に
作用する遠心力である。それらの合計値は車両に作用す
る横力の合計値となり、右辺に表される2CFf+2C
Frと均衡する。
【0026】車両に作用する横力の合計値が2CFf+
2CFrであると、車両に作用する横方向加速度Gyは
次式の如く表すことができる。 Gy=(2CFf+2CFr)/m ・・・(2) 上記(1)式、及び(2)式を整理すると、並進加速度
dVy/dt =(V・ dβ/dt )は、次式の如く表すこと
ができる。
【0027】 dVy/dt =V・ dβ/dt =Gy−V・γ ・・・(3) 従って、車両のスリップ角βの変化率 dβ/dt 、及びス
リップ角βは、それぞれ以下の如く表すことができる。 dβ/dt =(Gy/V)−γ ・・・(4) β=∫{(Gy/V)−γ)}dt ・・・(5) 上記(5)式に示す如く、車体スリップ角βは、車両に
作用する横方向加速度Gy、車速V、及びヨーレートγ
を、積分式に代入することで演算される。また、重心C
と後輪車輪軸との距離をaとすると、車両が重心C回り
にヨーレートγを発生させながら旋回している場合の後
輪の速度ベクトルVrは、旋回外方へ向かう大きさa・
γのベクトルと車速Vのベクトルとの合成ベクトルと把
握することができる。
【0028】この場合、車速Vの方向と後輪の進行方向
とがなす角は、“b・γ/V”と表すことができる。従
って、後輪のスリップ角βf は、車体スリップ角βを用
いて、次式の如く表すことができる。 βr=β−b・γ/V ・・・(6) このように、後輪スリップ角βrは、車体スリップ角β
に、重心Cと後輪車輪軸との距離に起因する幾何学的な
補正を施すことにより算出される。車体スリップ角β
は、横方向加速度Gy、車速V、およびヨーレートγを
上記(5)式に示す積分式に代入することで演算され
る。従って、後輪スリップ角βrを演算するためには、
上述の如く、積分計算を行うことが必要である。
【0029】積分計算により演算される関数値には、セ
ンサの出力誤差が累積される。従って、上記の如く積分
過程を含む演算式に従って求められる後輪スリップ角β
rを精度良く求めるためには、横方向加速度Gyを検出
するセンサ、車速Vを検出するセンサ、ヨーレートγを
演算するためのセンサに高い演算精度を付与することが
必要である。このため、後輪スリップ角βrと後輪コー
ナリングフォースCFrとに基づいて車両の挙動を求め
るシステムは、安価に実現することができない。
【0030】次に、図4を参照して、本実施例のシステ
ムが、車両のスピン傾向の程度を検出すべく実行する手
法について説明する。図4は、車両の重心C回りに作用
する復元ヨーモーメントMと、車体スリップ角βとの関
係を、操舵角δをパラメータとして表した特性図を示
す。復元ヨーモーメントMは、前輪コーナリングフォー
スCFfおよび後輪コーナリングフォースCFrに起因
して車両の重心C回りに発生するヨーモーメントであ
る。本実施例では、時計回り方向を復元ヨーモーメント
Mの正方向としている。尚、ヨーレートγ、及び車体ス
リップ角βは、上述の如く、本実施例では反時計回り方
向が正方向である。
【0031】車両がヨーレートγ(>0)で左旋回して
いる場合に、車両が直進状態に近づけば、ヨーレートγ
の微分値(ヨー角加速度) dγ/dt は負の値となる。こ
の際車両には、右旋回方向に、大きさ|I・ dγ/dt |
の復元ヨーモーメントMが作用しているはずであり、そ
の符号は正となる。また、車両がヨーレートγ(<0)
で右旋回している場合に、車両が直進状態に近づけば、
dγ/dt は正の値となる。この際車両には、左旋回方向
に、大きさ|I・ dγ/dt |の復元ヨーモーメントMが
作用しているはずであり、その符号は負となる。従っ
て、復元ヨーモーメントMは、車両のヨー慣性モーメン
トI、及びヨー角加速度 dγ/dt を用いて、次式の如く
表すことができる。
【0032】 M=−I・ dγ/dt ・・・(7) 図4に示すβ−M座標の第1象限及び第4象限(β>0
の領域)は、車両が左旋回方向に進行している場合を表
している。また、第2象限及び第3象限(β<0の領
域)は、車両が右旋回方向に進行している場合を表して
いる。更に、M軸上の領域(β=0)の領域は、車両が
直進状態である場合を表している。
【0033】車両が直進走行(β=0)している場合
に、操舵角δが反時計回り方向に操舵されると(δ>
0)、前輪コーナリングフォースCFfおよび後輪コー
ナリングフォースCFrの合力は、車両を左回り方向に
旋回させるヨーモーメントを発生させる。一方、車両が
直進走行している場合に、操舵角δが時計回り方向に操
舵されると(δ<0)、前輪コーナリングフォースCF
fおよび後輪コーナリングフォースCFrの合力は、車
両を右回り方向に旋回させるヨーモーメントを発生させ
る。従って、β=0の近傍では、復元ヨーモーメントM
は、図4に示す如くδ>0の場合に負の値、δ<0の場
合に正の値となる。
【0034】操舵角δが正(δ>0)の所定値に固定さ
れると、車両の重心C回りに、車両を左回り方向に回転
させるヨーモーメントが発生する。このヨーモーメント
は、車両が左旋回に移行して、車体スリップ角βが増加
するに連れて小さくなる。そして、そのヨーモーメント
が“0”となる状況下で、車両は定常円旋回状態とな
る。また、例えばステアリングホイルを切り戻す際等
に、車体スリップ角βが定常円旋回状態を実現する車体
スリップ角β0 を超える状況が形成されると、車両には
右回転方向のヨーモーメントが作用し、車両が直進状態
に近づけられる。従って、車両が左回り方向に旋回して
おり、かつ、δ>0である場合には、図4における第4
象限及び第1象限に示す如く、車体スリップ角βに対し
て、復元ヨーモーメントMが、βの小さい領域ではほぼ
線型の関係を維持して増加する傾向を示し、また、βが
大きい領域では非線型の関係に従って増加する傾向を示
す。
【0035】次に、車両が左回り方向に旋回している状
況下で、操舵角δが右回り方向に操舵されている場合
(δ<0である場合)について説明する。かかる状況下
では、タイヤが適正なグリップ状態を維持している場合
には、車体スリップ角βが大きいほど、車両に対して右
回転方向に大きなヨーモーメントが作用する。この場
合、βと車両に作用するヨーモーメントとはほぼ線型関
係となる。しかしながら、車体スリップ角βが、タイヤ
が適正なグリップ状態を維持できる限界値を超える領域
では、βと車両に作用するヨーモーメントとの関係が非
線形となる。かかる状況下では、βが大きいほど、車両
に対して右回転方向に小さなヨーモーメントが作用す
る。従って、車両が左回り方向に旋回しており、かつ、
δ<0である場合には、図4における第1象限に示す如
く、車体スリップ角βに対して、復元ヨーモーメントM
が、βが小さい領域では正の傾きでほぼ線型の関係を維
持して変化し、βが大きい領域では負の傾きで、線型な
関係を維持することなく変化する。
【0036】上述の如く、復元ヨーモーメントMは、操
舵角δの方向に関わらず、車体スリップ角βが小さく、
タイヤが適正なグリップ状態を維持し得る領域では、車
体スリップ角βに対して線型な関係を示し、車体スリッ
プ角βが大きく、タイヤが適正なグリップ状態を維持し
得ない領域では、車体スリップ角βに対して非線型な関
係を示す。復元ヨーモーメントMが車体スリップ角βに
対して線型な関係を示す領域では、車体スリップ角βが
増加するように車両の旋回状態が変化した際に、βの変
化に対応して復元ヨーモーメントMも増加する。このた
め、かかる状況下では、車両は安定した旋回挙動を示
す。一方、復元ヨーモーメントMが車体スリップ角βに
対して非線型な関係を示す領域では、車体スリップ角β
が増加するように車両の旋回状態が変化した際に、増加
したβに対して均衡し得る復元ヨーモーメントMを得る
ことができず、一層βが増加し易い状態となる。このた
め、かかる状況下では、車両はスピン傾向となる。
【0037】上述した左旋回領域(図4に示す第1象限
及び第4象限)での車体スリップ角βと復元ヨーモーメ
ントMとの関係は、同様に右旋回領域(図4に示す第1
象限及び第4象限)においても成立する。すなわち、図
4に示す如く、車両が右旋回方向に進行している場合
(β<0の場合)の復元ヨーモーメントMは、βの絶対
値|β|が小さく、タイヤが適正なグリップ状態を維持
し得る維持し得る領域では車体スリップ角βに対して線
型な関係で増加する傾向を示し、|β|が大きく、タイ
ヤが適正なグリップ状態を維持し得ない領域では、車体
スリップ角βに対して非線型な関係で増加または減少す
る傾向を示す。
【0038】従って、車両がスピン傾向にあるか否か
は、車両の旋回方向に関わらず、車体スリップ角βに対
して復元ヨーモーメントMが線型な関係を維持して変化
しているか否かに基づいて、すなわち、βの変化量に対
するMの変化割合 dM/dβが、所定の傾きを維持してい
るか否かに基づいて判断することができる。図4中に示
すハッチングの領域は、かかる観点からスピン領域と判
断される領域を表している。
【0039】復元ヨーモーメントMは、上述の如く、M
=−I・ dγ/dt で表すことができる。従って、復元ヨ
ーモーメントMの微分値 dM/dt は、次式の如く表すこ
とができる。 dM/dt =−I・d2γ/dt2 ・・・(8) 車体スリップ角βは、車両の前後方向速度Vxと横方向
速度Vyとの比である。従って、車体スリップ角βの微
分値 dβ/dt は、次式の如く表すことができる。
【0040】 dβ/dt = d(Vy/Vx)/dt ={( dVy/dt )/Vx}−{Vy・( dVx/dt )/Vx2 } ・・・(9) 上記(9)式に用いられる dVy/dt は、上記(3)式
に示す如く、“Gy−V・γ”で近似することができ
る。また、車両の横方向速度Vyは、車両の前後方向速
度Vxと、Gセンサ36で検出される前後方向加速度G
xとを用いて、次式の如く表すことができる。
【0041】 Vy=(1/γ)・( dVx/dt −Gx) ・・・(10) 更に、車両の前後方向速度Vxは、車速Vで近似するこ
とができる。従って、上記(9)式に示す関係は、次式
の如く書き直すことができる。 dβ/dt ={(Gy−V・γ)/V} +{( dV/dt )/(V2 ・γ)}・(Gx− dV/dt ) ・・・(11) 上記(8)式および(11)式より、βの変化量に対す
るMの変化割合 dM/dβは、次式の如く表すことができ
る。
【0042】 dM/dβ=−(I・d2γ/dt2)・V2 ・γ /{V・(Gy− dV/dt )+V・γ・(Gx− dV/dt )} ・・・(12) 本実施例のシステムにおいて、上記(12)式に示すヨ
ーレートγ、車速V、横方向加速度Gy、及び前後方向
加速度Gxは、それぞれヨーレートセンサ38、車輪速
センサ30、Gセンサ36を用いて検出することができ
る。従って、本実施例のシステムによれば、上記(1
2)式の演算を行うことができる。また、上記(12)
式には、上記(5)式に示す如き積分項が含まれていな
い。従って、上記(12)式の演算は、各種センサの誤
差に影響されることなく精度良く行うことができる。
【0043】このため、本実施例のシステムにおいて
は、各種センサの検出値に基づいて上記(12)式の演
算を行い、その演算値 dM/dβが所定値より小さい場合
に車両がスピン傾向であると判断し、かつ、演算値 dM
/dβに基づいて、スピン傾向を相殺するために必要な反
旋回モーメントの大きさを求めることとしている。
【0044】図5は、上記の手法を用いて反旋回モーメ
ントを演算し、左右前輪12FL,12FRの制動力を
制御することで、その反旋回モーメントを発生させるた
めにECU10が実行する制御ルーチンの一例のフロー
チャートを示す。尚、本ルーチンは、定時時間毎に起動
される定時割り込みルーチンである。
【0045】図5に示すルーチンが起動されると、先ず
ステップ100において、本ルーチンの実行に必要とさ
れる各種パラメータが読み込まれる。具体的には、前後
方向加速度Gx、横方向加速度Gy、ヨーレートγ、車
輪速Vw、及び操舵角δが読み込まれる。
【0046】次に、ステップ102では、推定車体速V
が演算される。本実施例においては、4輪の車輪速Vw
FL,VwFR,VwRL,VwRRの平均値を推定車体速とす
ることとしている。尚、推定車体速Vの演算手法は、こ
れに限定されるものではなく、例えば、対地車速センサ
を用いて実測する手法等を用いることも可能である。
【0047】ステップ104では、前回の処理時に算出
された推定車体速Vと今回算出された推定車体速とに基
づいて、推定車体速Vの微分値 dV/dt が演算されると
共に、前々回の処理時から今回の処理時にかけて検出さ
れたヨーレートγに基づいて、ヨーレートγの2回微分
値d2γ/dt2が演算される。
【0048】そして、ステップ106では、上記ステッ
プ100で読み込まれた各種パラメータ、および上記ス
テップ102および104で演算された各種パラメータ
が上記(12)式に代入され、 dM/dβが演算される。
上記の処理が終了したら、次にステップ108におい
て、車両のスピン傾向を相殺するために必要な反旋回モ
ーメントMVSCが演算される。上述の如く、車両のス
ピン傾向の度合い(以下、スピン度と称す)は、 dM/d
βに基づいて判断することができる。具体的には、 dM
/dβが適切な正の値であれば、車両は安定した挙動で走
行していると判断することができ、M/dβが小さいほ
ど、車両のスピン度が大きいと判断することができる。
【0049】このため、本実施例においては、予め図6
に示す如きマップをECU10に記憶させておき、この
マップを dM/dβで検索することにより、必要な反旋回
モーメントMVSCを求めることとしている。尚、MV
SCのマップは、図6に示す如く、 dM/dβがしきい値
αを超える領域(車両挙動が安定していると判断できる
領域)ではMVSCが“0”となるように、 dM/dβが
しきい値α以下となる領域では dM/dβが小さいほどM
VSCが大きくなるように設定されている。
【0050】ところで、上記図4に示す如く、スリップ
領域と安定領域との境界点におけるdM/dβの値は、操
舵角δによって変動する。このため、ECU10には、
操舵角δをパラメータとして、複数のMVSCマップが
記憶されている。ECU10は、上記ステップ100で
読み込んだ操舵角δに基づいて、それらのマップ中から
δに対応するマップを読み出して、上記ステップ108
の処理を実行する。
【0051】車両がスピン傾向である場合に、そのスピ
ン傾向を相殺するためには、発生し得る反旋回モーメン
トが大きいほど有利である。従って、本実施例のシステ
ムの如く、各車輪の制動力差を利用して反旋回モーメン
トを発生させる構成においては、路面μが高いほどスピ
ン傾向の抑制が容易である。言い換えれば、路面μが小
さい道路では、スピン領域を比較的大きく設定し、早期
に反旋回モーメントを発生することが好ましく、一方、
路面μが大きい道路では、スピン領域を比較的小さく設
定し、不要な反旋回モーメントを抑制することが好まし
い。このため、路面μを推定する機能を備えるシステム
においては、路面μに応じてMVSCを補正することに
より、一層優れた車両挙動制御を実現することができ
る。MVSCの補正は、例えば、路面μが大きい場合に
は、図6に示すしきい値αを小さく、路面μが小さい場
合には図6に示すしきい値αを大きくすることで、実現
することができる。
【0052】上記の処理が終了したら、次にステップ1
10において、車両の旋回方向が特定される。ヨーレー
トセンサ38は、上述の如く、車両の旋回方向に応じて
符号の異なるヨーレート信号を出力する。本ステップで
は、その符号に基づいて車両の旋回方向が特定されると
共に、その結果に基づいて、左右前輪12FL,12F
Rの一方が旋回外輪fout として、他方が旋回内輪fin
として特定される。
【0053】本実施例のシステムでは、上述の如く、旋
回外輪側の前輪12FL又は12FRに制動力を発生さ
せることにより反旋回モーメントを発生させる。ここ
で、各車輪には、制動操作によってその車輪に生じたス
リップ率に応じた制動力が生ずる。すなわち、車輪の制
動力は、車輪にブレーキトルクが作用することによりタ
イヤと路面との間にスリップが生ずることにより発生さ
れる。そして、その制動力は、タイヤの特性に応じた所
定のスリップ率(以下、限界スリップ率と称す)で最大
値を示し、限界スリップ率以下の領域では、ほぼスリッ
プ率に比例した値となる。従って、制動力制御を行う場
合、スリップ率が限界スリップ率を超えないようにブレ
ーキ油圧の制御を行うことで、常に車輪のグリップ状態
を適正に維持することができる。また、スリップ率が限
界スリップ率を超えない領域では、スリップ率が目標値
となるようにブレーキ油圧を制御することで、タイヤと
路面との間に発生する制動力を精度良く制御することが
できる。
【0054】このため、本実施例においては、車輪のス
リップ率に基づいて制動力制御を実行することとしてい
る。上記の理由より、ステップ112では、上記ステッ
プ108で求めた反旋回モーメントMVSCを発生させ
るために、旋回外輪側の前輪12FL又は12FRにお
いて実現すべき目標スリップ率S0fout が算出される。
本ステップ112では、具体的には、図7に示すマップ
をMVSCで検索することで、目標スリップ率S0fout
が算出される。具体的には、MVSC>0の領域で
は、左前輪のスリップ率S0 fLがマップに設定された
値に(正の値)、右前輪のスリップ率S0 fRが“0”
にそれぞれ設定される。目標スリップ率のマップは、図
7に示す如く、S0fout がタイヤの限界スリップ率を超
えることがないように、MVSC>M1 の領域ではS0f
out が所定値に飽和するように設定されている。また、
MVSC≦M1 の領域では、目標スリップ率S0fout に
対して旋回外輪側の前輪で発生される制動力FBRK と、
車両重心Cと前輪車輪軸との距離bとの乗算値“a・F
BRK ”が、MVSCと等しくなるように設定されてい
る。
【0055】上記の処理が終了したら、次にステップ1
14において、旋回外輪側の前輪12FL又は12FR
の目標スリップ率S0fout について、S0fout >0が成
立するか否かが判別される。本ステップの条件は、上述
の如く、 dM/dβがしきい値αに比して小さく、車両が
スピン状態であると判断される場合に成立する。上記の
条件が成立する場合は、以後、ステップ116へ進み、
MVSCを発生させるための処理が実行される。一方、
上記の条件が不成立である場合は、車両挙動が安定して
いると判断して、今回のルーチンを終了する。
【0056】ステップ116では、旋回外輪側の前輪1
2FL又は12FRの理想車輪速V 0fout が演算され
る。理想車輪速V0fout は、車両が推定車体速Vで旋回
走行している場合に、旋回外輪側の前輪12FL又は1
2FRが、スリップ率“0”で回転した際に得られる車
輪速である。理想車輪速V0fout は、推定車体速Vに、
旋回外輪の位置に応じた幾何学的な補正を施すことによ
り演算される。
【0057】ステップ118では、旋回外輪側の前輪1
2FL又は12FRの制動力を制御するための処理が実
行される。具体的には、先ず旋回外輪側の前輪12FL
又は12FRの理想車輪速V0fout と実車輪速Vfoutと
に基づいて、旋回外輪側の前輪12FL又は12FRの
スリップ率Sfout=(1−V0fout /Vfout)×100
が演算される。次いで、そのスリップ率Sfoutが目標ス
リップ率S0fout と一致するように、旋回外輪側の前輪
12FLまたは12FRのホイルシリンダに供給するブ
レーキ油圧が制御される。かかる制御が実行されると、
旋回外輪側の前輪12FL又は12FRにおいて、目標
スリップ率S0fout を伴う制動状態が実現される。上記
の処理が終了すると、本ルーチンの今回の処理が終了さ
れる。
【0058】ECU10によって本ルーチンが実行され
ると、車体スリップ角βに対する復元ヨーモーメントM
の変化割合に基づいて、正確に車両のスピン度が検出さ
れると共に、左右前輪12FL,12FRの制動力差に
よって、車両のスピン傾向を相殺するための反旋回モー
メントを発生させることができる。従って、本実施例の
システムによれば、タイヤのグリップ状態が限界を超え
る領域においても、安定した旋回挙動を得ることができ
る。
【0059】ところで、上述した実施例においては、左
右前輪12FL,12FRの一方に制動力を発生させ、
かつ、他方に制動力を発生させないことにより必要な反
旋回モーメントを発生させているが、本発明はこれに限
定されるものではなく、左右後輪12RL,12RR
に、必要な反旋回モーメントを発生させるに十分な制動
力差を付与することで、車両挙動の安定化を図ることと
しても良い。
【0060】尚、上記の実施例においては、ECU10
が、上記ステップ100〜106の処理を実行すること
により前記したヨーモーメント変化割合検出手段が、上
記ステップ108の処理を実行することにより前記した
反旋回モーメント演算手段が、また、上記ステップ11
0〜118の処理を実行することにより前記した制動力
制御手段が、それぞれ実現される。
【0061】
【発明の効果】上述の如く、本発明に係る車両の挙動制
御装置によれば、車体スリップ角の変化に伴うヨーモー
メントの変化割合に基づいて各車輪の制動力を制御する
ことにより、タイヤの復元ヨーモーメントが負の傾きを
示す領域でも、車両に対して、車両を直進状態とする方
向に適正な反旋回ヨーモーメントを作用させることがで
きる。従って、本発明に係る車両の挙動制御装置によれ
ば、旋回時における車両の挙動を安定に維持することが
できる。また、車体スリップ各の変化に伴うヨーモーメ
ントの変化割合は、車体スリップ角と異なり、高価なセ
ンサを用いることなく、容易かつ高精度に検出すること
ができる。従って、本発明によれば、高精度に車両挙動
を制御し得る挙動制御装置を、安価に実現することがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例のシステム構成図である。
【図2】左旋回中の車両を平面視で表した図である。
【図3】車両の挙動解析に用いる2輪モデルを表す図で
ある。
【図4】車体スリップ角βと復元ヨーモーメントMとの
関係を操舵角δをパラメータとして表した特性図であ
る。
【図5】本発明の一実施例において実行される制動力制
御ルーチンの一例のフローチャートである。
【図6】本発明の一実施例において実行される制動力制
御ルーチン中で用いられるマップの一例である。
【図7】本発明の一実施例において実行される制動力制
御ルーチン中で用いられるマップの他の例である。
【符号の説明】
10 電子制御ユニット(ECU) 12FL,12FR,12RL,12RR 車輪 14(14FL,14FR,14RL,14RR) 油
圧制御弁 20 油圧源切り換え弁 30(30FL,30FR,30RL,30RR) 車
輪速センサ 32 ステアリングホイル 34 操舵角センサ 36 Gセンサ 38 ヨーレートセンサ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B60T 8/58 B62D 6/00 B60K 23/04

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 車両の走行時に各車輪の制動力を制御し
    て車両挙動の安定化を図る車両の挙動制御装置におい
    て、車両に生ずる前後方向加速度、横方向加速度、ヨーレー
    ト、及び車速に基づいて、 車体スリップ角に対するヨー
    モーメントの変化割合を検出するヨーモーメント変化割
    合検出手段と、 該ヨーモーメント変化割合検出手段の検出結果に基づい
    て、車両に付与すべき反旋回モーメントを演算する反旋
    回モーメント演算手段と、 前記反旋回モーメントが発生するように、前記各車輪の
    制動力を制御する制動力制御手段と、 を備えることを特徴とする車両の挙動制御装置。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の車両の挙動制御装置にお
    いて、 前記ヨーモーメント変化割合検出手段は、車両に生ずる
    前後方向加速度に応じた信号を出力する前後方向加速度
    センサ、横方向加速度に応じた信号を出力する横方向加
    速度センサ、ヨーレートに応じた信号を出力するヨーレ
    ートセンサ、及び車速に応じた信号を出力する車輪速セ
    ンサの出力信号に基づいて、前記変化割合を検出するこ
    とを特徴とする車両の挙動制御装置。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2記載の車両の挙動制御装
    置において、 前記ヨーモーメント変化割合検出手段は、車両に生ずる
    前後方向加速度、横方向加速度、ヨーレート、及び車速
    に基づいて、次式により前記変化割合を検出することを
    特徴とする車両の挙動制御装置。 dM/dβ=−(I・d γ/dt )・V ・γ /{V・(Gy−dV/dt)+V・γ・(Gx−dV/dt)} 但し、Mはヨーモーメント、βは車体スリップ角、dM
    /dβは車体スリップ角に対するヨーモーメントの変化
    割合、Iは車両のヨー慣性モーメント、γはヨーレー
    ト、Vは車速、Gyは横方向加速度、Gxは前後方向加
    速度である。
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