JP3729727B2 - 路面の摩擦係数推定装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、路面の摩擦係数推定装置に係り、更に詳細には所定の制動力又は所定のスリップ状態になるまで車輪に制動力を付与し、その際の制動力に基づき路面の摩擦係数を推定する路面の摩擦係数推定装置に係る。
【0002】
【従来の技術】
自動車等の車輌に於いて路面の摩擦係数を推定する装置の一つとして、例えば本願出願人のうちの一の出願人の出願にかかる特開平7−132787号公報に記載されている如く、所定の制動力又は所定のスリップ状態になるまで左右一対の車輪に制動力を付与し、その際の車輪の接地荷重に対する制動力の比に基づき路面の摩擦係数を推定するよう構成された摩擦係数推定装置が従来より知られている。
【0003】
一般に、車輪の制動力は制動圧等より推定可能であり、また車輪の接地荷重も車輌の走行状態に基づき推定可能であるので、上述の先の提案にかかる摩擦係数推定装置によれば、所定の制動力又は所定のスリップ状態になるまで左右一対の車輪に制動力を付与し、その際の車輪の制動力及び接地荷重を推定することにより路面の摩擦係数を推定することができる。
【0004】
また上述の先の提案にかかる摩擦係数推定装置によれば、左右一対の車輪に制動力が付与されるので、何れか一つの車輪に制動力が付与されたり、対角線に位置する一対の車輪に制動力が付与される場合に比して、付与される制動力に起因して車輌に余分なヨーモーメントが付与される虞れを低減し、車輌の走行安定性が低下する虞れを低減することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、車輌の旋回時には車輌に旋回外方への慣性力が作用し、該慣性力は車輪の横力により担持され、車輪が路面に対し発生し得る力には限界があるので、摩擦係数推定の目的で車輪に自動的に制動力が付与されると、運転者による通常の制動の場合と同様、車輪の横力が相対的に減少する。
【0006】
しかるに上述の如き従来の摩擦係数推定装置に於いては、摩擦係数推定のための制動力の付与は車輌が不必要に減速されないよう比較的高い制動力の増減率にて運転者の意図に関係なく瞬間的に行われるので、車輌が旋回状態にある場合には摩擦係数推定のための制動力の付与により車輪横力が比較的急激に減少し、これに起因して車輌の走行安定性が悪化する虞れがあり、この問題は特に路面の摩擦係数が低い場合に顕著である。
【0007】
本発明は、所定の制動力又は所定のスリップ状態になるまで左右一対の車輪に制動力を付与し、その際の車輪の接地荷重に対する制動力の比に基づき路面の摩擦係数を推定するよう構成された従来の摩擦係数推定装置に於ける上述の如き問題に鑑みてなされたものであり、本発明の主要な課題は、車輌が旋回状態にある状況に於いて摩擦係数推定のための制動力の付与に伴う車輪横力の急激な減少を防止することにより、摩擦係数推定のための制動力の付与に起因して車輌の旋回時の走行安定性が急激に悪化する虞れを低減することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上述の主要な課題は、本発明によれば、所定の制動力又は所定のスリップ状態になるまで左右一対の車輪に制動力を付与し、その際の制動力に基づき路面の摩擦係数を推定する路面の摩擦係数推定装置にして、車輌の旋回状態を判定する手段と、路面の摩擦係数を推定する他の推定手段とを有し、車輌が旋回状態にあるときには、前記他の推定手段により推定される路面の摩擦係数が基準値以下である場合に、少なくとも前記一対の車輪が所定の制動力又は所定のスリップ状態になるまで全ての車輪に制動力を付与することを特徴とする路面の摩擦係数推定装置(請求項1の構成)、又は所定の制動力又は所定のスリップ状態になるまで左右一対の車輪に制動力を付与し、その際の制動力に基づき路面の摩擦係数を推定する路面の摩擦係数推定装置にして、車輌の旋回状態を判定する手段と、路面の摩擦係数を推定する他の推定手段とを有し、車輌が旋回状態にあるときには、前記他の推定手段により推定される路面の摩擦係数が基準値以下である場合に、車輌が旋回状態にない場合に比して前記一対の車輪に付与される制動力の変化率を低減することを特徴とする路面の摩擦係数推定装置(請求項2の構成)、又はアンチスキッド制御が行われる車輌に適用され、所定の制動力又は所定のスリップ状態になるまで左右一対の車輪に制動力を付与し、その際の制動力に基づき路面の摩擦係数を推定する路面の摩擦係数推定装置にして、車輌の旋回状態を判定する手段と、路面の摩擦係数を推定する他の推定手段とを有し、車輌が旋回状態にあるときには、前記他の推定手段により推定される路面の摩擦係数が基準値以下である場合に、車輌が旋回状態にない場合に比してアンチスキッド制御の開始閾値を低く設定することを特徴とする路面の摩擦係数推定装置(請求項3の構成)、又は所定の制動力又は所定のスリップ状態になるまで左右前輪に制動力を付与し、その際の制動力に基づき路面の摩擦係数を推定する路面の摩擦係数推定装置にして、車輌の旋回状態を判定する手段と、路面の摩擦係数を推定する他の推定手段とを有し、車輌が旋回状態にあるときには、前記他の推定手段により推定される路面の摩擦係数が基準値以下である場合に、所定の制動力又は所定のスリップ状態になるまで旋回内輪に制動力を付与し、前記旋回内輪の制動力に基づき路面の摩擦係数を推定することを特徴とする路面の摩擦係数推定装置(請求項4の構成)、又は所定の制動力又は所定のスリップ状態になるまで左右前輪に制動力を付与し、その際の制動力に基づき路面の摩擦係数を推定する路面の摩擦係数推定装置にして、車輌の旋回状態を判定する手段と、路面の摩擦係数を推定する他の推定手段とを有し、車輌が旋回状態にあるときには、前記他の推定手段により推定される路面の摩擦係数が基準値以下である場合に、少なくとも左右前輪が所定の制動力又は所定のスリップ状態になるまで左右前輪及び旋回内側後輪に制動力を付与し、少なくとも左右前輪の制動力に基づき路面の摩擦係数を推定することを特徴とする路面の摩擦係数推定装置(請求項5の構成)、又は所定の制動力又は所定のスリップ状態になるまで左右後輪に制動力を付与し、その際の制動力に基づき路面の摩擦係数を推定する路面の摩擦係数推定装置にして、車輌の旋回状態を判定する手段と、路面の摩擦係数を推定する他の推定手段とを有し、車輌が旋回状態にあるときには、前記他の推定手段により推定される路面の摩擦係数が基準値以下である場合に、少なくとも左右後輪が所定の制動力又は所定のスリップ状態になるまで左右後輪及び旋回外側前輪に制動力を付与し、少なくとも左右後輪の制動力に基づき路面の摩擦係数を推定することを特徴とする路面の摩擦係数推定装置(請求項6の構成)、又は所定の制動力又は所定のスリップ状態になるまで制動力の所定の増加勾配及び所定の低下勾配にて左右一対の車輪に制動力を付与し、その際の制動力に基づき路面の摩擦係数を推定する路面の摩擦係数推定装置にして、車輌の旋回状態を判定する手段と、路面の摩擦係数を推定する他の推定手段とを有し、車輌が旋回状態にあるときには、前記他の推定手段により推定される路面の摩擦係数が基準値以下である場合に、前記所定の増加勾配よりも小さい増加勾配にて左右一対の車輪に制動力を付与すると共に、前記所定の低下勾配にて制動力を低下させることを特徴とする路面の摩擦係数推定装置(請求項7の構成)、又はアンチスキッド制御が行われる車輌に適用され、所定の制動力又は所定のスリップ状態になるまで左右一対の車輪に制動力を付与し、その際の制動力に基づき路面の摩擦係数を推定する路面の摩擦係数推定装置にして、車輌の旋回状態を判定する手段と、路面の摩擦係数を推定する他の推定手段とを有し、車輌が旋回状態にあるときには、前記他の推定手段により推定される路面の摩擦係数が基準値以下である場合に、車輌が旋回状態にない場合に比してアンチスキッド制御の開始閾値を低く設定し、前記他の推定手段により推定される路面の摩擦係数が低いほど前記開始閾値の低下量を大きくすることを特徴とする路面の摩擦係数推定装置(請求項8の構成)によって達成される。
【0009】
上記請求項1の構成によれば、車輌が旋回状態にあるときには、他の推定手段により推定される路面の摩擦係数が基準値以下である場合に、少なくとも一対の車輪が所定の制動力又は所定のスリップ状態になるまで全ての車輪に制動力が付与されるので、路面の摩擦係数推定の目的で左右の前輪にのみ制動力が付与されることに起因して前輪の横力が低下し、これにより車輌がドリフトアウト状態になったり、逆に路面の摩擦係数推定の目的で左右後輪にのみ制動力が付与されることに起因して後輪の横力が低下し、これにより車輌がスピン状態になったりする虞れが確実に低減され、また路面の摩擦係数が高く路面の摩擦係数推定の目的で左右一対の車輪にのみ制動力が付与されても車輌の走行安定性が大きく低下することがない状況に於いては、全ての車輪に制動力が付与されるのではなく、左右一対の車輪にのみ制動力が付与されるので、車輌が過剰に減速されたり路面の摩擦係数の推定に要する時間が長くなったりすることが回避される。
【0010】
また上記請求項2の構成によれば、車輌が旋回状態にあるときには、他の推定手段により推定される路面の摩擦係数が基準値以下である場合に、左右一対の車輪に制動力が付与され、車輌が旋回状態にあるときには車輌が旋回状態にない場合に比して一対の車輪に付与される制動力の変化率が低減されるので、路面の摩擦係数推定の目的で一対の車輪に急激に制動力が付与され一対の車輪の横力が急激に減少すること及びこれに起因して旋回状態にある車輌の走行安定性が急激に悪化することが確実に防止され、また路面の摩擦係数が高く路面の摩擦係数推定の目的で左右一対の車輪に制動力が付与されても車輌の走行安定性が大きく低下することがない状況に於いては、左右一対の車輪に付与される制動力の変化率は低減されないので、車輌が過剰に長く減速されたり路面の摩擦係数の推定に要する時間が長くなったりすることが回避される。
【0011】
また上記請求項3の構成によれば、車輌が旋回状態にあるときには、他の推定手段により推定される路面の摩擦係数が基準値以下である場合に、左右一対の車輪に制動力が付与され、車輌が旋回状態にあるときには車輌が旋回状態にない場合に比してアンチスキッド制御の開始閾値が低く設定されるので、車輌が旋回状態にあるときには車輌が旋回状態にない場合に比してアンチスキッド制御が早く開始され、従って路面の摩擦係数推定の目的で制動力が付与される一対の車輪の制動力が急激に増大し一対の車輪の横力が急激に減少すること及びこれに起因して車輌の走行安定性が急激に悪化することが確実に防止され、また路面の摩擦係数が高く路面の摩擦係数推定の目的で左右一対の車輪に制動力が付与されても車輌の走行安定性が大きく低下することがない状況に於いては、アンチスキッド制御の開始閾値は低く設定されないので、車輪に付与される制動力が不十分になったり路面の摩擦係数の推定に要する時間が長くなったりすることが回避される。
【0012】
また一般に、車輌が旋回状態にある状況に於いて車輪に制動力が付与されると、車輪の横力が減少し、特に路面の摩擦係数推定の目的で左右前輪に制動力か付与される場合には、前輪の横力が低下し車輌のヨーモーメントが低下することにより車輌がドリフトアウト状態になり易い。
【0013】
上記請求項4の構成によれば、車輌が旋回状態にあるときには、他の推定手段により推定される路面の摩擦係数が基準値以下である場合に、所定の制動力又は所定のスリップ状態になるまで旋回内輪に制動力が付与され、旋回内輪の制動力に基づき路面の摩擦係数が推定されるので、車輪に対する制動力の付与による車輪横力の減少に起因する車輌のヨーモーメントの低下が、旋回内輪に制動力が付与され旋回内外輪の制動力差によるヨーモーメントの増大により相殺され、これにより車輌の旋回時の走行安定性が悪化し車輌がドリフトアウト状態になる虞れが低減され、また路面の摩擦係数が高く路面の摩擦係数推定の目的で左右前輪に制動力が付与されても車輌の走行安定性が大きく低下することがない状況に於いては、旋回内輪に制動力が付与され旋回内輪について路面の摩擦係数が推定されるのではなく、左右前輪に制動力が付与され左右前輪について路面の摩擦係数が推定されるので、左右前輪についての路面の摩擦係数の推定に長時間を要することが回避される。
【0014】
また上記請求項5の構成によれば、車輌が旋回状態にあるときには、他の推定手段により推定される路面の摩擦係数が基準値以下である場合に、少なくとも左右前輪が所定の制動力又は所定のスリップ状態になるまで左右前輪及び旋回内側後輪に制動力が付与され、少なくとも左右前輪の制動力に基づき路面の摩擦係数が推定されるので、左右前輪に対する制動力の付与による前輪横力の減少に起因する車輌のヨーモーメントの低下が、旋回内側後輪に制動力が付与され左右後輪の制動力差によるヨーモーメントの増大により相殺され、これにより車輌の旋回時の走行安定性が悪化し車輌がドリフトアウト状態になる虞れが低減され、また路面の摩擦係数が高く路面の摩擦係数推定の目的で左右前輪にのみ制動力が付与されても車輌の走行安定性が大きく低下することがない状況に於いては、旋回内側後輪に制動力が付与されないので、車輌全体の制動力が過剰になったり路面の摩擦係数の推定に要する時間が長くなったりすることが回避される。
【0015】
また上述の如く、車輌が旋回状態にある状況に於いて車輪に制動力が付与されると、車輪の横力が減少するので、特に路面の摩擦係数推定の目的で左右後輪に制動力が付与される場合には、後輪の横力が低下し車輌のヨーモーメントが過大になることにより車輌がスピン状態になり易い。
【0016】
上記請求項6の構成によれば、車輌が旋回状態にあるときには、他の推定手段により推定される路面の摩擦係数が基準値以下である場合に、少なくとも左右後輪が所定の制動力又は所定のスリップ状態になるまで左右後輪及び旋回外側前輪に制動力が付与され、少なくとも左右後輪の制動力に基づき路面の摩擦係数が推定されるので、左右後輪に対する制動力の付与による後輪横力の減少に起因する車輌のヨーモーメントの増大が、旋回外側前輪に制動力が付与され左右前輪の制動力差によるヨーモーメントの低減により相殺され、これにより車輌の旋回時の走行安定性が悪化し車輌がスピン状態になる虞れが低減され、また路面の摩擦係数が高く路面の摩擦係数推定の目的で左右後輪にのみ制動力が付与されても車輌の走行安定性が大きく低下することがない状況に於いては、旋回外側前輪に制動力が付与されないので、車輌全体の制動力が過剰になったり路面の摩擦係数の推定に要する時間が長くなったりすることが回避される。
【0019】
【課題解決手段の好ましい態様】
本発明の一つの好ましい態様によれば、車輌が旋回状態にあるときには前記左右一対の車輪が所定の制動力又は所定のスリップ状態になるまで全ての車輪に制動力が付与されるよう構成される(好ましい態様1)。
【0020】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様1の構成に於いて、前記左右一対の車輪の制動力に基づき路面の摩擦係数が推定されるよう構成される(好ましい態様2)。
【0021】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、車輌が旋回状態にあるときには全ての車輪が所定の制動力又は所定のスリップ状態になるまで全ての車輪に制動力が付与されるよう構成される(好ましい態様3)。
【0022】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様3の構成に於いて、全ての車輪の制動力に基づき路面の摩擦係数が推定されるよう構成される(好ましい態様4)。
【0023】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項2の構成に於いて、車輌が旋回状態にあるときには車輌が旋回状態にない場合に比して一対の車輪に付与される制動力の増大率が低減されるよう構成される(好ましい態様5)。
【0024】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様5の構成に於いて、車輌が旋回状態にあるときには車輌が旋回状態にない場合に比して一対の車輪に付与される制動力の増大率及び減少率が低減されるよう構成される(好ましい態様6)。
【0025】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項3の構成に於いて、アンチスキッド制御の開始閾値は車輪の制動スリップの程度に関する閾値であるよう構成される(好ましい態様7)。
【0026】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項4の構成に於いて、車輌が旋回状態にあるときには所定の制動力又は所定のスリップ状態になるまで旋回内側前輪に制動力が付与され、旋回内側前輪の制動力に基づき路面の摩擦係数が推定されるよう構成される(好ましい態様8)。
【0027】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項4の構成に於いて、車輌が旋回状態にあるときには所定の制動力又は所定のスリップ状態になるまで旋回内側前後輪に制動力が付与され、旋回内側前後輪の制動力に基づき路面の摩擦係数が推定されるよう構成される(好ましい態様9)。
【0028】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項5の構成に於いて、車輌が旋回状態にあるときには左右前輪が所定の制動力又は所定のスリップ状態になるまで左右前輪及び旋回内側後輪に制動力が付与され、左右前輪の制動力に基づき路面の摩擦係数が推定されるよう構成される(好ましい態様10)。
【0029】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項5の構成に於いて、車輌が旋回状態にあるときには左右前輪及び旋回内側後輪が所定の制動力又は所定のスリップ状態になるまで左右前輪及び旋回内側後輪に制動力が付与され、左右前輪及び旋回内側後輪の制動力に基づき路面の摩擦係数が推定されるよう構成される(好ましい態様11)。
【0030】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項6の構成に於いて、車輌が旋回状態にあるときには左右後輪が所定の制動力又は所定のスリップ状態になるまで左右後輪及び旋回外側前輪に制動力が付与され、左右後輪の制動力に基づき路面の摩擦係数が推定されるよう構成される(好ましい態様12)。
【0031】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項6の構成に於いて、車輌が旋回状態にあるときには左右後輪及び旋回外側前輪が所定の制動力又は所定のスリップ状態になるまで左右後輪及び旋回外側前輪に制動力が付与され、左右後輪及び旋回外側前輪の制動力に基づき路面の摩擦係数が推定されるよう構成される(好ましい態様13)。
【0032】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至8の構成に於いて、他の推定手段は車輪速度に基づき路面の摩擦係数の概略値を推定するよう構成される(好ましい態様14)。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下に添付の図を参照しつつ、本発明を幾つかの好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0034】
第一の実施形態
図1は本発明による路面の摩擦係数推定装置の第一の実施形態を示す概略構成図である。
【0035】
図1に於て、10FL及び10FRはそれぞれ車輌12の左右の前輪を示し、10RL及び10RRはそれぞれ車輌の左右の後輪を示している。操舵輪である左右の前輪10FL及び10FRは運転者によるステアリングホイール14の転舵に応答して駆動されるラック・アンド・ピニオン式のパワーステアリング装置16によりタイロッド18L 及び18R を介して操舵される。
【0036】
各車輪の制動力は制動装置20の油圧回路22によりホイールシリンダ24FR、24FL、24RR、24RLの制動圧が制御されることによって制御されるようになっている。図には示されていないが、油圧回路22はオイルリザーバ、オイルポンプ、種々の弁装置等を含み、各ホイールシリンダの制動圧は通常時には運転者によるブレーキペダル26の踏み込み操作に応じて駆動されるマスタシリンダ28により制御され、また必要に応じて後に詳細に説明する如く路面の摩擦係数を推定する自動制動制御装置30若しくはABS制御装置32により制御される。
【0037】
自動制動制御装置30には圧力センサ34i(i=fl、fr、rl、rr)よりそれぞれ左右前輪及び左右後輪の制動圧Pi(i=fl、fr、rl、rr)(ホイールシリンダ24FR、24FL、24RL、24RR内の圧力)を示す信号、ヨーレートセンサ36より車輌のヨーレートγを示す信号、横加速度センサ38より車輌の横加速度Gyを示す信号が入力される。一方ABS制御装置32にはストップランプスイッチ(STPSW)40がオン状態にあるか否かを示す信号及び車輪速度センサ42i(i=fl、fr、rl、rr)より対応する左右前輪及び左右後輪の車輪速度Vwi(i=fl、fr、rl、rr)を示す信号が入力される。更に自動制動制御装置30及びABS制御装置32は相互に必要な信号の送受信を行う。
【0038】
尚図には詳細に示されていないが、自動制動制御装置30及びABS制御装置32はそれぞれ例えばCPUとROMとRAMと入出力ポート装置とを有し、これらが双方向性のコモンバスにより互いに接続された一般的な構成のマイクロコンピュータを含んでいる。
【0039】
自動制動制御装置30は、図2に示されたフローチャートに従い、路面の最大摩擦係数μmaxを推定すべきときには、車輌が旋回状態にあるか否かを判定し、車輌が旋回状態にないときには左右前輪が所定の制動力又は所定のスリップ状態になるまで、例えば左右前輪の制動圧Pfl、Pfrが所定値Po(正の定数)を越えるか又は左右前輪についてアンチスキッド制御が開始されるまで、左右前輪の制動圧を所定の増圧勾配にて増圧しつつ、左右前輪の前後力Fxj及び支持荷重Fzj(j=fl、fr)を演算し、Fxj/Fzjとして路面の摩擦係数μj1〜μjn(nは正の整数)を演算し、各摩擦係数の左右前輪の平均値μja1〜μjanを演算し、それらの平均値の最大値を最大摩擦係数μmaxとして選択し、しかる後左右前輪の制動圧を減圧する。
【0040】
また自動制動制御装置30は、車輌が旋回状態にあるときには少なくとも左右前輪が所定の制動力又は所定のスリップ状態になるまで、左右前輪及び左右後輪の制動圧を所定の増圧勾配よりも低い増圧勾配にて増圧しつつ、左右前輪の前後力Fxj及び支持荷重Fzj(j=fl、fr)を演算し、Fxj/Fzjとして路面の摩擦係数μj1〜μjn(nは正の整数)を演算し、各摩擦係数の左右前輪の平均値μja1〜μjanを演算し、それらの平均値の最大値を最大摩擦係数μmaxとして選択し、しかる後左右前輪及び左右後輪の制動圧を減圧する。
【0041】
一方ABS制御装置32は、図3に示されたフローチャートに従い、後述の如く各車輪速度Vwiに基づき当技術分野に於いて公知の要領にて車体速度Vbを推定すると共に、各車輪について推定車体速度Vbと車輪速度Vwiとの偏差として制動スリップ量SLi(i=fl、fr、rl、rr)を演算し、推定車体速度Vbが制御開始閾値Vbs(正の定数)以上であり且つ制動スリップ量SLiが予め設定された閾値SLo以上であるときには、当該車輪の制動圧を増減制御することにより制動スリップ量を低減するアンチスキッド制御を行い、また車輌に過剰のヨーモーメントが作用しないよう必要に応じてアンチスキッド制御が行われる車輪とは左右反対側の車輪の制動力の増大率を制限するヨーコントロール制御を行う。
【0042】
特に図示の実施形態に於いては、自動制動制御装置30は、例えば本願出願のうちの一の出願人の出願にかかる特開平11−788435号公報に記載されている如く、各車輪の車輪速度Vwiに基づき左右輪に対応する路面の摩擦係数の勾配Doi(i=fl、fr、rl、rr)を演算し、勾配Doiに基づき路面の最大摩擦係数の概略値μoi(i=fl、fr、rl、rr)を演算し、これらの概略値の平均値μaを演算し、平均値μaが基準値μo(正の定数)以下であるときには上述の車輌が旋回状態にあるか否かの判定以降の制御を行うが、平均値μaが基準値μo以下でないときには車輌が旋回状態にあるか否かの判定を行うことなく上述の所定の増圧勾配による左右前輪の制動圧の増圧及び路面の最大摩擦係数μmaxの演算制御を行う。
【0043】
次に図2に示されたフローチャートを参照して第一の実施形態に於ける路面の摩擦係数推定制御について説明する。尚図2に示されたフローチャートによる制御は図には示されていないイグニッションスイッチの閉成により開始され、所定の時間毎に繰返し実行される。
【0044】
まずステップ10に於いては路面の最大摩擦係数μmaxの推定が行われるべきタイミングであるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ10が繰り返し実行され、肯定判別が行われたときにはステップ20に於いて路面の最大摩擦係数μmaxの推定が可能であるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ10へ戻り、肯定判別が行われたときにはステップ30へ進む。
【0045】
この場合、例えばABS制御装置32より入力される各車輪の車輪速度Vwiに基づき推定される車体速度Vbが基準値以上であり且つ運転者の制動操作による制動が行われていない場合に路面の最大摩擦係数μmaxの推定が可能であると判別されてよい。
【0046】
ステップ30に於いては車輪速度センサ42iにより検出された車輪速度Vwiを示す信号等の読み込みが行われると共に、前述の特開平11−788435号公報に記載された要領にて路面の摩擦係数の勾配Doiが演算され、勾配Doiに基づき路面の最大摩擦係数の概略値μoiが演算され、これらの概略値の平均値μaが演算される。
【0047】
ステップ40に於いては平均値μaが基準値μo以下であるか否かの判別、即ち路面の摩擦係数が低く路面の摩擦係数推定の目的で車輪に制動力が付与されると車輌の挙動が悪化し易い状況であるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはそのままステップ60へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ50へ進む。
【0048】
ステップ50に於いては車輌のヨーレートγ若しくは横加速度Gyに基づき当技術分野に於いて公知の要領にて車輌が旋回状態にあるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ60に於いて所定の増圧勾配による左右前輪の制動圧の増圧が開始され、肯定判別が行われたときにはステップ70に於いて所定の増圧勾配よりも低い増圧勾配による左右前輪及び左右後輪の制動圧の増圧が開始される。
【0049】
ステップ100に於いては圧力センサ34iにより検出された各車輪の制動圧Pi等の信号の読み込みが行われ、またABS制御装置32より入力される左右前輪の車輪速度Vwfl、Vwfrの時間微分値としてそれぞれ車輪加速度Vwdfl、Vwdfrが演算されると共に、制動圧を車輪の接地点に於ける前後力へ変換する係数をKp(正の定数)とし、車輪の慣性モーメントをJwとし、車輪の回転半径をRとして下記の式1に従って左右前輪の前後力Fxj(j=fl、fr)が演算される。
Fxj=KpPj+JwVwdj/R ……(1)
【0050】
ステップ110に於いてはABS制御装置32より入力される各車輪の車輪速度Vwiに基づき推定車体速度Vbが演算されると共に、推定車体速度Vbの時間微分値として車輌の推定前後加速度Vbdが演算され、左右前輪の静的支持荷重をそれぞれFzsj(j=fl、fr)とし、車輌の質量をWとし、車輌の重心高さをHとし、車輌のホイールベースをLとして下記の式2に従って左右前輪の支持荷重Fzj(j=fl、fr)が演算される。
Fzj=Fzsj+WHVbd/(2L) ……(2)
【0051】
尚上記式2に於いて、車輌横方向の荷重移動が考慮されないのは、後述の如く左右前輪に対応する路面の摩擦係数の平均値が路面の摩擦係数とされることにより、車輌横方向の荷重移動が左右前輪の支持荷重に与える影響が相殺されるからである。
【0052】
ステップ120に於いては前後力Fxj及び支持荷重Fzjに基づき下記の式3に従って左右前輪について路面の摩擦係数μj(j=fl、fr)が演算される。
μj=Fxj/Fzj ……(3)
【0053】
ステップ130に於いては左右前輪が所定の制動力又は所定のスリップ状態にあるか否かの判別、即ち左右前輪の制動圧Pj(j=fl、fr)の何れも基準値Poを越えているか若しくは左右前輪の何れについてもアンチスキッド制御が開始されたか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ100へ戻り、肯定判別が行われたときにはステップ140へ進む。
【0054】
ステップ140に於いては各サイクル毎にステップ120に於いて演算された左右前輪の摩擦係数μj1〜μjnの平均値μja1〜μjanが各サイクル毎に演算され、平均値μja1〜μjanのうちの最大値が最大摩擦係数μmaxとして選択され、ステップ150に於いては左右前輪の制動圧が所定の減圧勾配にて非制動時の圧力まで減圧され、各車輪の制動圧がマスタシリンダ28の圧力により制御される状態に戻される。
【0055】
ステップ200〜250はそれぞれステップ100〜150と同様に実行されるがステップ250に於いては所定の減圧勾配よりも低い勾配にて左右前輪及び左右後輪の制動圧が非制動時の圧力まで減圧され、各車輪の制動圧がマスタシリンダ28の圧力により制御される状態に戻される。
【0056】
尚図2には示されていないが、ステップ100〜130又はステップ200〜230が実行される過程に於いて運転者の制動操作による制動が開始されると、図2に示されたルーチンによる制御を終了し、各車輪の制動圧がマスタシリンダ28の圧力により制御される状態に戻される。
【0057】
次に図3に示されたフローチャートを参照して図示の実施形態に於けるアンチスキッド制御について説明する。尚図3に示されたフローチャートによる制御も図には示されていないイグニッションスイッチの閉成により開始され、所定の時間毎に例えば左前輪、右前輪、左後輪、右後輪の順に各車輪について繰返し実行される。またステップ330は左右後輪については省略され、ステップ320に於いて否定判別が行われたときにはステップ350へ進む。
【0058】
まずステップ310に於いてはストップランプスイッチ40がオン状態にあるか否かを示す信号等の読み込みが行われ、ステップ320に於いてはストップランプスイッチ40がオン状態にあるか否かの判別、即ち運転者よる制動操作が行われているか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ340へ進み、否定判別が行われたときにはステップ330へ進む。
【0059】
ステップ330に於いては図2に示されたルーチンに従って自動制動制御装置30による路面の摩擦係数推定のための自動制動が行われているか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ340に於いて制動時のアンチスキッド制御の開始条件が選択され、否定判別が行われたときにはステップ350に於いて非制動時のアンチスキッド制御の開始条件が選択される。具体的にはステップ340に於いてアンチスキッド制御のスリップ量についての閾値SLoがSLob(正の定数)に設定され、ステップ350に於いては閾値SLoがSLobよりも大きい非制動時の閾値SLoh(正の定数)に設定される。
【0060】
ステップ360に於いてはアンチスキッド制御中であるか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ380へ進み、否定判別が行われたときにはステップ370へ進む。
【0061】
ステップ370に於いてはアンチスキッド制御の開始条件が成立しているか否かの判別、例えば推定車体速度Vbが制御開始閾値Vbs以上であり且つ車輪の制動スリップ量SLiが閾値SLo以上であるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ310へ戻り、肯定判別が行われたときにはステップ390へ進む。
【0062】
ステップ380に於いてはアンチスキッド制御の終了条件が成立しているか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ310へ戻り、否定判別が行われたときにはステップ390に於いて制動スリップ量SLiに応じて車輪の制動圧を増減制御することにより制動スリップ量を低減するアンチスキッド制御が実行される。
【0063】
尚ステップ380に於いては、
(1)運転者による制動又は自動制動制御装置による制動が終了
(2)推定車体速度Vbが制御終了閾値Vbf(正の定数)以下
の何れかの条件が成立する場合にアンチスキッド制御の終了条件が成立していると判定されてよい。
【0064】
ステップ400に於いては左右輪の一方がアンチスキッド制御されているときにはアンチスキッド制御されていない左右反対側の車輪についてヨーコントロール制御が実行され、これにより左右の制動力差が過剰になることに起因して車輌の走行安定性が低下することが防止され、しかる後ステップ310へ戻る。
【0065】
かくして図示の第一の実施形態によれば、路面の最大摩擦係数μmaxの推定が行われるべきタイミングであり、また路面の最大摩擦係数μmaxの推定が可能であるときには、ステップ10及び20に於いて肯定判別が行われ、ステップ30に於いて車輪速度Vwiに基づき路面の摩擦係数の概略値μaが演算され、ステップ40に於いて概略値μaが基準値μo以下であるか否かの判別が行われる。
【0066】
ステップ40に於いて路面の摩擦係数が高いと推定されると、或いはステップ40に於いて路面の摩擦係数が低いと推定されてもステップ50に於いて車輌が旋回状態にはないと推定されると、ステップ60に於いて左右前輪の制動圧の増圧が所定の増圧勾配にて開始され、ステップ100に於いて左右前輪の前後力Fxjが演算され、ステップ110に於いて左右前輪の支持荷重Fzjが演算され、ステップ120〜140に於いて左右前輪の前後力Fxj及び支持荷重Fzjに基づき路面の最大摩擦係数μmaxが演算される。
【0067】
これに対しステップ40に於いて路面の摩擦係数が低いと推定され且つステップ50に於いて車輌が旋回状態にあると推定されると、ステップ70に於いて左右前輪及び左右後輪の制動圧の増圧が所定の増圧勾配よりも低い勾配にて開始され、ステップ200〜240がそれぞれステップ100〜140と同様の要領にて実行され、これにより路面の最大摩擦係数μmaxが演算される。
【0068】
従って図示の第一の実施形態によれば、車輌が摩擦係数の低い路面を旋回する状況に於いて路面の最大摩擦係数の推定が行われる場合には、路面の最大摩擦係数の推定時の制動圧の増圧勾配が所定の増圧勾配よりも低い勾配に低減されるので、例えば左右前輪に急激に制動力が付与され前輪の横力が急激に低下することに起因して車輌の走行安定性が悪化する虞れを確実に低減することができる。
【0069】
また図示の第一の実施形態によれば、車輌が旋回する状況に於いて路面の最大摩擦係数の推定が行われる場合であっても、路面の摩擦係数が高く車輌の走行安定性が悪化する虞れが低いときには、制動圧が所定の増圧勾配にて増圧されるので、制動圧の付与の時間が長くなること及びこれに起因して車輌が不必要に減速される虞れを低減することができる。
【0070】
特に図示の第一の実施形態によれば、車輌が摩擦係数の低い路面を旋回する状況に於いて路面の最大摩擦係数の推定が行われる場合には、左右前輪に加えて左右後輪にも制動力が付与されるので、前輪の横力のみが低下することを防止し、これにより路面の最大摩擦係数を推定する際に車輌がドリフトアウト状態になる虞れを確実に低減することができる。
【0071】
また図示の第一の実施形態によれば、車輌が摩擦係数の低い路面を旋回する状況に於いて路面の最大摩擦係数の推定が行われた場合には、推定完了後に於ける制動力の減圧勾配も所定の減圧勾配よりも低下されるので、推定完了後に於ける制動力が所定の減圧勾配にて減圧される場合に比して、推定完了後に車輪横力の急変に起因して車輌の走行安定性が悪化する虞れを低減することができる。
【0072】
また図示の第一の実施形態によれば、車輌が摩擦係数の低い路面を旋回する状況に於いて路面の最大摩擦係数の推定が行われる場合には、全ての車輪に制動力が付与されるが、路面の最大摩擦係数の推定演算は左右前輪が所定の制動力又は所定のスリップ状態になった時点に於いて行われるので、路面の最大摩擦係数の推定演算が全ての車輪が所定の制動力又は所定のスリップ状態になった時点に於いて行われる場合に比して車輌全体の横力が低下する虞れを低減することができる。
【0073】
尚上述の第一の実施形態に於いては、車輌が摩擦係数の低い路面を旋回する状況に於いて路面の最大摩擦係数の推定が行われる場合には、全ての車輪に制動力が付与されると共に制動圧の増圧が所定の増圧勾配よりも低い勾配に低減されるようになっているが、所定の増圧勾配にて全ての車輪に制動力が付与されてもよく(修正例1−1)、その場合には上述の第一の実施形態の場合よりも車輌に制動力が付与される時間を低減して車輌が不必要に減速される虞れを低減することができ、また左右前輪にのみ制動力が付与され、その際の制動圧の増圧が所定の増圧勾配よりも低い勾配に低減されてもよく(修正例1−2)、その場合には図示の実施形態の場合よりも車輌全体の制動力を低減して車輌が不必要に減速される虞れを低減することができる。
【0074】
また上述の第一の実施形態に於いては、車輌が摩擦係数の低い路面を旋回する状況に於いて路面の最大摩擦係数の推定が行われる場合には、制動圧の増圧勾配及び減圧勾配の両者がそれぞれ所定の増圧勾配及び減圧勾配よりも低い勾配に低減されるようになっているが、減圧勾配の低減は省略されてもよく(修正例1−3)、その場合にも車輌に制動力が付与される時間を低減して車輌が不必要に減速される虞れを低減することができる。
【0075】
また上述の第一の実施形態に於いては、全ての車輪に制動力が付与されるにも拘わらず、路面の最大摩擦係数の推定は左右前輪の制動力に基づいて行われるようになっているが、路面の最大摩擦係数の推定は各サイクル毎に全ての車輪についての摩擦係数の平均値が演算され、それらのうちの最大値が路面の最大摩擦係数とされてもよく(修正例1−4)、その場合には上述の第一の実施形態の場合よりも路面の最大摩擦係数の推定精度を向上させることができる。
【0076】
第二の実施形態
図4は本発明による路面の摩擦係数推定装置の第二の実施形態に於ける路面の摩擦係数推定制御ルーチンを示すフローチャート、図5は第二の実施形態に於けるアンチスキッド制御ルーチンを示すフローチャートである。
【0077】
尚図4及び図5に示されたフローチャートによる制御も図には示されていないイグニッションスイッチの閉成により開始され、所定の時間毎に繰返し実行される。また図4及び図5に於いて、それぞれ図2及び図3に示されたステップに対応するステップにはそれぞれ図2及び図3に於いて付されたステップ番号と同一のステップ番号が付されている。これらのことは後述の他の実施形態についても同様である。
【0078】
この第二の実施形態に於いては、ステップ50に於いて肯定判別が行われると、即ち車輌が旋回状態にある旨の判別が行われると、ステップ80に於いて前輪のアンチスキッド制御の開始閾値を低下させる指令信号がABS制御装置32へ出力され、ステップ90に於いて左右前輪の制動圧の増圧が所定の増圧勾配にて開始される。尚ステップ100〜140はそれぞれ上述の第一の実施形態に於けるステップ100〜140と同様に実行されるが、ステップ150に於いては左右前輪の制動圧が所定の減圧勾配にて減圧される。
【0079】
またこの第二の実施形態に於いては、図5に示されている如く、アンチスキッド制御ルーチンのステップ340の次に実行されるステップ342に於いて、自動制動制御装置30よりアンチスキッド制御の開始閾値を低下させる指令信号が入力されているか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはそのままステップ360へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ344に於いて0<Ks<1を満たす一定の値Kを補正係数として閾値SLoがSLobよりも低いKsSLobに設定された後ステップ360へ進む。
【0080】
かくしてこの第二の実施形態によれば、路面の摩擦係数が低いと推定され且つ車輌が旋回状態にあるときには、路面の摩擦係数が高いと推定される場合や車輌が旋回状態にはない場合に比して、アンチスキッド制御の開始閾値SLoが低下されるので、アンチスキッド制御を早めに開始させることができ、これにより摩擦係数推定のための制動力が左右前輪に付与され左右前輪が急激にロック状態になることに起因して左右前輪の横力が急激に変動し、これに起因して車輌の走行安定性が悪化する虞れを確実に低減することができる。
【0081】
尚アンチスキッド制御の開始閾値が通常の制動時の値よりも低い値に低下されても、左右の前輪が所定の制動力又は所定の制動スリップ状態になるまで左右前輪の制動力が増大されるので、アンチスキッド制御の開始閾値の低下に起因して路面の最大摩擦係数の推定精度が大きく悪化することはない。
【0082】
特に図示の第二の実施形態によれば、車輌が旋回する状況に於いて路面の最大摩擦係数の推定が行われる場合であっても、路面の摩擦係数が高く車輌の走行安定性が悪化する虞れがないときには、アンチスキッド制御の開始閾値は低下されないので、アンチスキッド制御が不必要に早く開始されること及びこれに起因して制動圧の付与時間が長くなって車輌が不必要に減速される虞れを低減することができる。
【0083】
尚上述の第二の実施形態に於けるアンチスキッド制御の開始閾値の低下量は一定であるが、例えば路面の最大摩擦係数の概略値μaが低いほど補正係数Ksが大きく設定されることにより、開始閾値の低下量は路面の最大摩擦係数の概略値μaが低いほど大きくなるよう概略値μaに応じて可変設定されてもよい(修正例2−1)。
【0084】
また上述の第二の実施形態に於いては、車輪の制動スリップが過大であるか否かの判別は制動スリップ量SLiにより判定されるようになっているが、推定車体速度Vbを基準速度とする制動スリップ率に基づき判定されてもよく、その場合にはステップ340及び350に於いて制動スリップ率の閾値が選択され、特にステップ340に於いてステップ350の場合よりも低い閾値が選択され、ステップ344に於いて更に低い閾値が設定される(修正例2−2)。
【0085】
第三の実施形態
図6は本発明による路面の摩擦係数推定装置の第三の実施形態に於ける路面の摩擦係数推定制御ルーチンを示すフローチャートである。
【0086】
この第三の実施形態に於いては、ステップ50に於いて肯定判別が行われると、即ち車輌が旋回状態にあると判別されると、ステップ52に於いて例えば車輌のヨーレートγや車輌の横加速度Gyの符号に基づき車輌が左旋回しているか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ54に於いて左前輪の制動圧の増圧が所定の増圧勾配にて開始されると共に、ステップ200〜250が左前輪について実行されるようjがflに設定され、否定判別が行われたときにはステップ56に於いて右前輪の制動圧の増圧が所定の増圧勾配にて開始されると共に、ステップ200〜250が左前輪について実行されるようjがfrに設定される。
【0087】
またこの第三の実施形態に於いては、ステップ210に於いて左右前輪の静的支持荷重をそれぞれFzsj(j=fl又はfr)とし、車輌のトレッドをTrとして左前輪又は右前輪の支持荷重Fzj(j=fl又はfr)が下記の式4に従って演算される。
Fzj=Fzsj+WHVbd/(2L)+WHGy/(2Tr) ……(4)
【0088】
またこの第三の実施形態に於いては、ステップ240に於いて左右輪の摩擦係数の平均値は演算されず、車輌が左旋回状態にあるときには最大摩擦係数μmaxとして摩擦係数μfl1〜μflnのうちの最大値が選択され、車輌が右旋回状態にあるときには最大摩擦係数μmaxとして摩擦係数μfr1〜μfrnのうちの最大値が選択される。
【0089】
かくしてこの第三の実施形態によれば、路面の摩擦係数が低いと推定され且つ車輌が旋回状態にあると判定されると、旋回内側前輪の制動圧のみが所定の増圧勾配にて増圧され、旋回内側前輪の前後力及び支持荷重に基づき路面の最大摩擦係数μmaxが演算される。
【0090】
従ってこの第三の実施形態によれば、左右前輪に制動力が付与される場合に比して前輪横力の低下量を低減することによって車輌の旋回方向のヨーモーメントの低下量を低減すると共に、左右前輪の前後力の差により車輌を旋回させる方向のモーメントを増大させることができ、これにより路面の摩擦係数推定の目的で車輪に制動力が付与されることに起因して車輌の旋回時に於ける走行安定性が悪化する虞れを確実に低減することができる。
【0091】
またこの第三の実施形態によれば、路面の摩擦係数が低いと推定され且つ車輌が旋回状態にあると判定されると、旋回内側前輪にのみ制動力が付与されるので、全ての車輪に制動力が付与される上述の第一の実施形態の場合に比して、車輌全体の制動力を低減し、これにより路面の摩擦係数の推定時に車輌が不必要に減速される虞れを確実に低減することができる。
【0092】
特に図示の第三の実施形態によれば、車輌が旋回する状況に於いて路面の最大摩擦係数の推定が行われる場合であっても、路面の摩擦係数が高く車輌の走行安定性が悪化する虞れが低いときには、左右前輪に制動力が付与されるので、かかる状況に於いても旋回内側前輪にのみ制動力が付与される場合に比して路面の最大摩擦係数の推定精度を向上させることができる。
【0093】
尚上述の第三の実施形態に於いては、路面の摩擦係数が低いと推定され且つ車輌が旋回状態にあると判定されると、旋回内側前輪にのみ制動力が付与され、先回内側前輪の前後力及び支持荷重に基づき路面の最大摩擦係数が演算されるようになっているが、路面の摩擦係数が低いと推定され且つ車輌が旋回状態にあると判定されると、旋回内側前輪及び旋回内側後輪に制動力が付与され、これらの車輪の前後力及び支持荷重に基づき路面の最大摩擦係数が演算されてもよく(修正例2−1)、その場合には上述の第三の実施形態の場合よりも路面の最大摩擦係数の推定精度を向上させることができる。
【0094】
第四の実施形態
図7は本発明による路面の摩擦係数推定装置の第四の実施形態に於ける路面の摩擦係数推定制御ルーチンを示すフローチャートである。
【0095】
この第四の実施形態に於いては、ステップ52に於いて車輌が左旋回している旨の判別が行われたときにはステップ72に於いて右後輪以外の車輪の制動圧の増圧が所定の増圧勾配にて開始され、ステップ52に於いて車輌が右旋回している旨の判別が行われたときにはステップ74に於いて左後輪以外の車輪の制動圧の増圧が所定の増圧勾配にて開始され、ステップ200〜250は第一及び第二の実施形態の場合と同様左右前輪について実行される。
【0096】
かくしてこの第四の実施形態によれば、路面の摩擦係数が低いと推定され且つ車輌が旋回状態にあると判定されると、左右前輪及び旋回内側後輪に制動力が付与されることにより、左右前輪の前後力及び支持荷重に基づき路面の最大摩擦係数μmaxが演算されるので、左右前輪に制動力が付与されることによる前輪横力の低下に起因する車輌の旋回方向のヨーモーメントの低下が、旋回内側後輪に制動力が付与され左右後輪の前後力差による旋回補助方向のヨーモーメントにより相殺し、これにより路面の摩擦係数が低い状況にて路面の摩擦係数推定の目的で左右前輪に制動力が付与されることに起因して車輌の旋回時の走行安定性が悪化し車輌がドリフトアウト状態になる虞れを確実に低減することができる。
【0097】
またこの第四の実施形態によれば、旋回外側後輪には制動力が付与されないので、全ての車輪に制動力が付与される上述の第一の実施形態の場合に比して、路面の摩擦係数の推定時に於ける車輌全体の制動力を低減し車輌が不必要に減速される虞れを低減することができる。
【0098】
特に図示の第四の実施形態によれば、路面の摩擦係数が低いと推定され且つ車輌が旋回状態にあると判定されると、左右前輪及び旋回内側後輪に制動力が付与されるが、路面の最大摩擦係数は左右前輪の前後力及び支持荷重に基づき演算されるので、上述の第三の実施形態の場合の如く車輪の支持荷重の演算に際し車輌横方向の荷重移動を考慮する必要性を排除することができる。
【0099】
尚上述の第四の実施形態に於いては、路面の摩擦係数が低いと推定され且つ車輌が旋回状態にあると判定されると、左右前輪及び旋回内側後輪に制動力が付与されるにも拘わらず、左右前輪の前後力及び支持荷重に基づき路面の最大摩擦係数が演算されるようになっているが、左右前輪及び旋回内側後輪の前後力及び支持荷重に基づき路面の最大摩擦係数が演算されてもよく(修正例4−1)、その場合には上述の第四の実施形態の場合に比して路面の最大摩擦係数の推定精度を向上させることができる。
【0100】
第五の実施形態
図8は本発明による路面の摩擦係数推定装置の第五の実施形態に於ける路面の摩擦係数推定制御ルーチンを示すフローチャートである。
【0101】
この第五の実施形態に於いては、路面の摩擦係数が高いと推定された場合や車輌が旋回状態にはないと推定された場合にはステップ60に於いて左右後輪の制動圧の増圧が所定の勾配にて開始され、ステップ100〜150は左右後輪について実行される。
【0102】
またこの第五の実施形態に於いては、ステップ52に於いて車輌が左旋回している旨の判別が行われたときにはステップ76に於いて左前輪以外の車輪の制動圧の増圧が所定の増圧勾配にて開始され、ステップ52に於いて車輌が右旋回している旨の判別が行われたときにはステップ78に於いて右前輪以外の車輪の制動圧の増圧が所定の増圧勾配にて開始され、ステップ200〜250はそれぞれステップ100〜150の場合と同様左右後輪について実行される。
【0103】
かくしてこの第五の実施形態によれば、路面の摩擦係数が低いと推定され且つ車輌が旋回状態にあると判定されると、左右後輪及び旋回外側前輪に制動力が付与され、左右後輪に制動力が付与され左右後輪の横力が低下することによる車輌の旋回方向のヨーモーメントの増大が旋回外側前輪に制動力が付与され左右前輪の前後力差による旋回方向とは逆方向のヨーモーメントにより相殺されるので、路面の摩擦係数が低い状況にて路面の摩擦係数推定の目的で左右後輪に制動力が付与されることに起因して車輌の旋回時の走行安定性が悪化し車輌がスピン状態になる虞れを確実に低減することができる。
【0104】
またこの第五の実施形態によれば、旋回内側前輪には制動力が付与されないので、全ての車輪に制動力が付与される上述の第一の実施形態の場合に比して、路面の摩擦係数の推定時に於ける車輌全体の制動力を低減し車輌が不必要に減速される虞れを低減することができる。
【0105】
特に図示の第五四の実施形態によれば、路面の摩擦係数が低いと推定され且つ車輌が旋回状態にあると判定されると、左右後輪及び旋回外側前輪に制動力が付与されるが、路面の最大摩擦係数は左右後輪の前後力及び支持荷重に基づき演算されるので、上述の第三の実施形態の場合の如く車輪の支持荷重の演算に際し車輌横方向の荷重移動を考慮する必要性を排除することができる。
【0106】
尚上述の第五の実施形態に於いては、路面の摩擦係数が低いと推定され且つ車輌が旋回状態にあると判定されると、左右後輪及び旋回外側前輪に制動力が付与されるにも拘わらず、左右後輪の前後力及び支持荷重に基づき路面の最大摩擦係数が演算されるようになっているが、左右後輪及び旋回外側前輪の前後力及び支持荷重に基づき路面の最大摩擦係数が演算されてもよく(修正例5−1)、その場合には上述の第五の実施形態の場合に比して路面の最大摩擦係数の推定精度を向上させることができる。
【0107】
以上に於ては本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
【0108】
例えば上述の各実施形態に於いては、路面の最大摩擦係数の概略値μaに基づき路面の摩擦係数が低いか否かの判別が行われ、路面の摩擦係数が低いと判定された場合に車輌が旋回状態にあるか否かが判別されるようになっているが、上述の第一の実施形態及び第三乃至第五の実施形態に於いては路面の摩擦係数が低いか否かの判別が省略されてもよい。
【0109】
また上述の第一乃至第三の実施形態に於いては、通常時には、即ち路面の摩擦係数が高い場合や車輌が旋回状態にない場合には左右の前輪に制動力が付与されるようになっているが、通常時には左右の後輪に制動力が付与されるよう修正されてもよい。
【0110】
特に上述の第三の実施形態に於いて通常時に左右の後輪に制動力が付与される場合には、ステップ52に於いて肯定判別が行われるとステップ54に於いて右後輪の増圧が開始され、否定判別が行われるとステップ56に於いて左後輪の増圧が開始され、これにより旋回外側後輪に対する制動力の付与による後輪横力の減少に起因する車輌ヨーモーメントの増大が左右後輪の前後力差による車輌ヨーモーメントの減少により相殺されることが好ましい。
【0111】
また上述の第二乃至第五の実施形態に於いては、路面の摩擦係数が低いと推定され且つ車輌が旋回状態にあると判定された場合にも、制動圧は所定の増圧勾配及び所定の減圧勾配にて増減されるようになっているが、これらの実施形態に於いても第一の実施形態の場合と同様、制動圧が所定の増圧勾配よりも低い増圧勾配にて増圧され、若しくは所定の減圧勾配よりも低い減圧勾配にて減圧されるよう修正されてもよい。
【0112】
また上述の各実施形態に於いては、路面の最大摩擦係数の概略値μaは前述の特開平11−788435号公報に記載された要領にて演算されるようになっているが、これらの概略値は例えば超音波などにより路面の性状を検出する装置の如く、当技術分野に於いて公知の任意の手段により検出又は推定されてよい。
【0113】
更に上述の各実施形態に於いては、制動装置は油圧式の制動装置であり、各車輪の制動力は対応する制動圧が制御されることにより制御されるようになっているが、制動装置は電磁気的に各車輪に制動力を付与する電気式の制動装置であってもよい。
【0114】
【発明の効果】
以上の説明より明らかである如く、本発明の請求項1の構成によれば、路面の摩擦係数推定の目的で左右の前輪にのみ制動力が付与されることに起因して前輪の横力が低下し、これにより車輌がドリフトアウト状態になったり、逆に路面の摩擦係数推定の目的で左右後輪にのみ制動力が付与されることに起因して後輪の横力が低下し、これにより車輌がスピン状態になったりする虞れを確実に低減することができ、また路面の摩擦係数が高く路面の摩擦係数推定の目的で左右一対の車輪にのみ制動力が付与されても車輌の走行安定性が大きく低下することがない状況に於いては、全ての車輪に制動力が付与されるのではなく、左右一対の車輪にのみ制動力が付与されるので、車輌が過剰に減速されたり路面の摩擦係数の推定に要する時間が長くなったりすることを回避することができる。
【0115】
また本発明の請求項2の構成によれば、路面の摩擦係数推定の目的で一対の車輪に急激に制動力が付与され一対の車輪の横力が急激に減少すること及びこれに起因して車輌の走行安定性が急激に悪化することを確実に防止することができ、また路面の摩擦係数が高く路面の摩擦係数推定の目的で左右一対の車輪に制動力が付与されても車輌の走行安定性が大きく低下することがない状況に於いては、左右一対の車輪に付与される制動力の変化率は低減されないので、車輌が過剰に長く減速されたり路面の摩擦係数の推定に要する時間が長くなったりすることを回避することができる。
また請求項3の構成によれば、車輌が旋回状態にあるときには車輌が旋回状態にない場合に比してアンチスキッド制御を早く開始させることができ、これにより路面の摩擦係数推定の目的で制動力が付与される一対の車輪の制動力が急激に増大し一対の車輪の横力が急激に減少すること及びこれに起因して車輌の走行安定性が急激に悪化することを確実に防止することができ、また路面の摩擦係数が高く路面の摩擦係数推定の目的で左右一対の車輪に制動力が付与されても車輌の走行安定性が大きく低下することがない状況に於いては、アンチスキッド制御の開始閾値は低く設定されないので、車輪に付与される制動力が不十分になったり路面の摩擦係数の推定に要する時間が長くなったりすることを回避することができる。
【0116】
また本発明の請求項4の構成によれば、車輪に対する制動力の付与による車輪横力の減少に起因する車輌のヨーモーメントの低下を、旋回内輪に制動力が付与され旋回内外輪の制動力差によるヨーモーメントの増大により相殺し、これにより車輌の旋回時の走行安定性が悪化し車輌がドリフトアウト状態になる虞れを低減することができ、また路面の摩擦係数が高く路面の摩擦係数推定の目的で左右前輪に制動力が付与されても車輌の走行安定性が大きく低下することがない状況に於いては、旋回内輪に制動力が付与され旋回内輪について路面の摩擦係数が推定されるのではなく、左右前輪に制動力が付与され左右前輪について路面の摩擦係数が推定されるので、左右前輪についての路面の摩擦係数の推定に長時間を要することを回避することができる。
また請求項5の構成によれば、左右前輪に対する制動力の付与による前輪横力の減少に起因する車輌のヨーモーメントの低下を、旋回内側後輪に制動力を付与して左右後輪の制動力差によるヨーモーメントの増大により相殺し、これにより車輌の旋回時の走行安定性が悪化し車輌がドリフトアウト状態になる虞れを低減することができ、また路面の摩擦係数が高く路面の摩擦係数推定の目的で左右前輪にのみ制動力が付与されても車輌の走行安定性が大きく低下することがない状況に於いては、旋回内側後輪に制動力が付与されないので、車輌全体の制動力が過剰になったり路面の摩擦係数の推定に要する時間が長くなったりすることを回避することができる。
【0117】
また本発明の請求項6の構成によれば、左右後輪に対する制動力の付与による後輪横力の減少に起因する車輌のヨーモーメントの増大を、旋回外側前輪に制動力を付与して左右前輪の制動力差によるヨーモーメントの低減により相殺し、これにより車輌の旋回時の走行安定性が悪化し車輌がスピン状態になる虞れを低減することができ、また路面の摩擦係数が高く路面の摩擦係数推定の目的で左右後輪にのみ制動力が付与されても車輌の走行安定性が大きく低下することがない状況に於いては、旋回外側前輪に制動力が付与されないので、車輌全体の制動力が過剰になったり路面の摩擦係数の推定に要する時間が長くなったりすることを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による路面の摩擦係数推定装置の第一の実施形態を示す概略構成図である。
【図2】第一の実施形態に於ける摩擦係数推定制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図3】第一の実施形態に於けるアンチスキッド制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図4】第二の実施形態に於ける摩擦係数推定制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図5】第二の実施形態に於けるアンチスキッド制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図6】第三の実施形態に於ける摩擦係数推定制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図7】第四の実施形態に於ける摩擦係数推定制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図8】第五の実施形態に於ける摩擦係数推定制御ルーチンを示すフローチャートである。
【符号の説明】
10FR〜10RL…車輪
20…制動装置
28…マスタシリンダ
30…自動制動制御装置
32…ABS制御装置
34i…圧力センサ
36…ヨーレートセンサ
38…横加速度センサ
40…ストップランプスイッチ(STPSW)
42i…車輪速度センサ

Claims (8)

  1. 所定の制動力又は所定のスリップ状態になるまで左右一対の車輪に制動力を付与し、その際の制動力に基づき路面の摩擦係数を推定する路面の摩擦係数推定装置にして、車輌の旋回状態を判定する手段と、路面の摩擦係数を推定する他の推定手段とを有し、車輌が旋回状態にあるときには、前記他の推定手段により推定される路面の摩擦係数が基準値以下である場合に、少なくとも前記一対の車輪が所定の制動力又は所定のスリップ状態になるまで全ての車輪に制動力を付与することを特徴とする路面の摩擦係数推定装置。
  2. 所定の制動力又は所定のスリップ状態になるまで左右一対の車輪に制動力を付与し、その際の制動力に基づき路面の摩擦係数を推定する路面の摩擦係数推定装置にして、車輌の旋回状態を判定する手段と、路面の摩擦係数を推定する他の推定手段とを有し、車輌が旋回状態にあるときには、前記他の推定手段により推定される路面の摩擦係数が基準値以下である場合に、車輌が旋回状態にない場合に比して前記一対の車輪に付与される制動力の変化率を低減することを特徴とする路面の摩擦係数推定装置。
  3. アンチスキッド制御が行われる車輌に適用され、所定の制動力又は所定のスリップ状態になるまで左右一対の車輪に制動力を付与し、その際の制動力に基づき路面の摩擦係数を推定する路面の摩擦係数推定装置にして、車輌の旋回状態を判定する手段と、路面の摩擦係数を推定する他の推定手段とを有し、車輌が旋回状態にあるときには、前記他の推定手段により推定される路面の摩擦係数が基準値以下である場合に、車輌が旋回状態にない場合に比してアンチスキッド制御の開始閾値を低く設定することを特徴とする路面の摩擦係数推定装置。
  4. 所定の制動力又は所定のスリップ状態になるまで左右前輪に制動力を付与し、その際の制動力に基づき路面の摩擦係数を推定する路面の摩擦係数推定装置にして、車輌の旋回状態を判定する手段と、路面の摩擦係数を推定する他の推定手段とを有し、車輌が旋回状態にあるときには、前記他の推定手段により推定される路面の摩擦係数が基準値以下である場合に、所定の制動力又は所定のスリップ状態になるまで旋回内輪に制動力を付与し、前記旋回内輪の制動力に基づき路面の摩擦係数を推定することを特徴とする路面の摩擦係数推定装置。
  5. 所定の制動力又は所定のスリップ状態になるまで左右前輪に制動力を付与し、その際の制動力に基づき路面の摩擦係数を推定する路面の摩擦係数推定装置にして、車輌の旋回状態を判定する手段と、路面の摩擦係数を推定する他の推定手段とを有し、車輌が旋回状態にあるときには、前記他の推定手段により推定される路面の摩擦係数が基準値以下である場合に、少なくとも左右前輪が所定の制動力又は所定のスリップ状態になるまで左右前輪及び旋回内側後輪に制動力を付与し、少なくとも左右前輪の制動力に基づき路面の摩擦係数を推定することを特徴とする路面の摩擦係数推定装置。
  6. 所定の制動力又は所定のスリップ状態になるまで左右後輪に制動力を付与し、その際の制動力に基づき路面の摩擦係数を推定する路面の摩擦係数推定装置にして、車輌の旋回状態を判定する手段と、路面の摩擦係数を推定する他の推定手段とを有し、車輌が旋回状態にあるときには、前記他の推定手段により推定される路面の摩擦係数が基準値以下である場合に、少なくとも左右後輪が所定の制動力又は所定のスリップ状態になるまで左右後輪及び旋回外側前輪に制動力を付与し、少なくとも左右後輪の制動力に基づき路面の摩擦係数を推定することを特徴とする路面の摩擦係数推定装置。
  7. 所定の制動力又は所定のスリップ状態になるまで制動力の所定の増加勾配及び所定の低下勾配にて左右一対の車輪に制動力を付与し、その際の制動力に基づき路面の摩擦係数を推定する路面の摩擦係数推定装置にして、車輌の旋回状態を判定する手段と、路面の摩擦係数を推定する他の推定手段とを有し、車輌が旋回状態にあるときには、前記他の推定手段により推定される路面の摩擦係数が基準値以下である場合に、前記所定の増加勾配よりも小さい増加勾配にて左右一対の車輪に制動力を付与すると共に、前記所定の低下勾配にて制動力を低下させることを特徴とする路面の摩擦係数推定装置。
  8. アンチスキッド制御が行われる車輌に適用され、所定の制動力又は所定のスリップ状態になるまで左右一対の車輪に制動力を付与し、その際の制動力に基づき路面の摩擦係数を推定する路面の摩擦係数推定装置にして、車輌の旋回状態を判定する手段と、路面の摩擦係数を推定する他の推定手段とを有し、車輌が旋回状態にあるときには、前記他の推定手段により推定される路面の摩擦係数が基準値以下である場合に、車輌が旋回状態にない場合に比してアンチスキッド制御の開始閾値を低く設定し、前記他の推定手段により推定される路面の摩擦係数が低いほど前記開始閾値の低下量を大きくすることを特徴とする路面の摩擦係数推定装置。
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