JP4330260B2 - 油性インクジェット記録用インク - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、油性インクジェット記録用インクに関し、より詳しくは、初期および長期保存においても良好な顔料分散性を有し、印字環境の温度変化に左右されずに、吐出安定性に優れた油性インクジェット記録用インクに関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式の分野においては、濃度低下やにじみがなく、鮮明な色彩を有する画像をより高速で安定的に印刷するために、装置およびインクの両面から研究が行なわれている。
【0003】
現在、印刷装置としてはピエゾ振動素子を用いる方式、サーマルヘッドを利用する方式、電気的吸引力を利用する方式などが知られている。
【0004】
その中でも、ピエゾ振動素子を利用する方式は、記録ヘッドの装置の構成が簡単で、他の方式と比較して、インクに対する電気的および熱的性能の制限が少ないという点から有用性が高いものである。そして、このタイプの印刷装置に適用されるインクとして、最近、顔料を飽和炭化水素系媒体に分散させた油性タイプのものが実用化されている。
【0005】
しかし、本質的に顔料タイプのインクでは、インク自体の保存安定性や吐出安定性の不良など、いわゆるインクジェット記録液の信頼性が低いという問題がある。
【0006】
また、現在、開発されている油性インクジェットインクにおいて、飽和炭化水素系溶剤としては、エクソン化学(株)製のアイソパーシリーズやエクソールシリーズに代表される、イソパラフィン系やシクロパラフィン系溶剤の単独利用が主流であるが、得られたインクは低温時における保存安定性が低いもの、あるいはノズル詰まりを起こしやいものなどであり、充分な性能を有するものではない。
【0007】
そこで、これらの問題を解決するために、たとえば、飽和炭化水素系有機溶剤とオレイルアルコールなどの極性の高い溶剤を併用する方法が、特表平10−507487号公報で開示されている。しかしながら、飽和炭化水素系溶剤と極性の高い溶剤を併用すると、インクの保存安定性がますます低下して、保存中に顔料が沈降するという問題がある。
【0008】
さらに、飽和炭化水素系溶剤として流動パラフィンを用い、顔料分散剤として長鎖アルキル基と二塩基酸の残基を有する化合物からなる油性インクジェット記録用インクも国際公開WO99/38925で開示されているが、この系では常温での吐出安定性は有しても、低温時における吐出安定性が低いという問題を有する。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明者らは、インクジェット記録用インクの溶剤として、飽和炭化水素系溶剤100重量部に対して、植物油を10〜100重量部含有させることにより、飽和炭化水素系溶剤、顔料分散剤などの材料の如何に関わらず、初期並びに長期間においても良好な保存安定性を有し、さらにより低温から高温までの幅広い温度域において、吐出安定性に優れた油性インクジェット記録用インクが得られることを見出し、国際出願PCT/JP99/07243で提案している。
【0010】
本発明は、この出願の油性インクジェット記録用インクにおけるよりもより少ない植物油の量で、前記の性能に優れる油性インクジェット記録用インクを提供することを目的する。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、植物油のより少ない量で、前記の性能に優れる油性インクジェット記録用インクを提供することを目的として研究を重ねた結果、顔料分散剤としてポリアミン化合物と12−ヒドロキシステアリン酸自己縮合物との反応物を利用し、流動パラフィンを飽和炭化水素系溶剤の主成分とすることにより、前記目的が達成されることを見出し、本発明を完成させたものである。
【0012】
すなわち、請求項1にかかわる発明は、顔料、ポリアミン化合物と12−ヒドロキシステアリン酸自己縮合物との反応物からなる分散剤、流動パラフィンを主成分とする飽和炭化水素系溶剤、および植物油を含有する油性インクジェット記録用インクにおいて、25℃における表面張力が26〜30dyne/cm、25℃におけるポリテトラフルオロエチレン板上での接触角が40〜50°であり、さらに前記飽和炭化水素系溶剤の重量をWHC、前記植物油の重量をWVOとしたとき、
HC/WVO>10
であることを特徴とする油性インクジェット記録用インクに関するものである。
【0013】
また、請求項2にかかわる発明は、前記分散剤がポリアリルアミンと12−ヒドロキシステアリン酸自己縮合物との反応物である請求項1に記載の油性インクジェット記録用インクに関するものである。
【0014】
また、請求項3にかかわる発明は、前記飽和炭化水素系溶剤において、流動パラフィンの含有量が70重量%以上である請求項1または2に記載の油性インクジェット記録用インクに関するものである。
【0015】
また、請求項4にかかわる発明は、前記流動パラフィンが、単環シクロパラフィンを20重量%以上含み、25℃における表面張力が26〜30dyne/cmであり、さらに粘度が20mPa・s以下の流動パラフィンである請求項1〜3のいずれかに記載の油性インクジェット記録用インクに関するものである。
【0016】
また、請求項5にかかわる発明は、前記飽和炭化水素系溶剤が、さらにイソパラフィンを含有する請求項1〜4のいずれかに記載の油性インクジェット記録用インクに関するものである。
【0017】
また、請求項6にかかわる発明は、さらに石油系樹脂および/またはロジン変性マレイン酸樹脂を含有する請求項1〜5のいずれかに記載の油性インクジェット記録用インクに関するものである。
【0018】
また、請求項7にかかわる発明は、凝固点が−10℃以下である請求項1〜6のいずれかに記載の油性インクジェット記録用インクに関するものである。
【0019】
また、請求項8にかかわる発明は、体積抵抗値が108Ωcm以上である請求項1〜7のいずれかに記載の油性インクジェット記録用インクに関するものである。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下に本発明をより詳細に説明する。
【0021】
まず、本発明で用いられる顔料は、一般のインクジェット記録用インクで使用できる各種の無機および有機顔料が利用可能であるが、とくに有用なものとして、C.I.ピグメントイエロー93、95、109、110、120、128、138、139、151、154、155、173、180、185、193、C.I.ピグメントオレンジ34、36、43、61、63、71、C.I.ピグメントレッド122、202、C.I.ピグメントレッド122と202との固溶体、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントバイオレット19、23、33、C.I.ピグメントブラック7などをあげることができる。
【0022】
インクジェット記録方式では、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色を基本として、最近ではオレンジ、グリーンを加えた6色、さらには、ライトマゼンタ、ライトブルーを加えた8色のインクを用いてカラー画像などが形成されている。
【0023】
これらの色相を得るために、さらに上記の顔料の中でも耐候性の良好なものが好適であり、とりわけ、イエローとしては、C.I.ピグメントイエロー138、154、180、185、マゼンタとしては、C.I.ピグメントレッド122、202、C.I.ピグメントバイオレット19、シアンとしては、C.I.ピグメントブルー15、ブラックとしては、C.I.ピグメントブラック7のとくに酸性もしくは中性顔料、オレンジとしては、C.I.ピグメントオレンジ43、64、71、グリーンとしては、C.I.ピグメントグリーン7、36がより好適である。
【0024】
本発明において、顔料の好適な使用量としては、インクジェット記録用インク中に0.5〜30重量%であり、より好適には1〜10重量%程度である。顔料の使用量が少なくなりすぎるとインクの色濃度が低下し、一方、多くなりすぎるとインク粘度や流動性の面から印刷が困難となる。
【0025】
つぎに、本発明において、有機溶剤中に顔料を分散させるために利用する分散剤は、ポリアミン化合物と12−ヒドロキシステアリン酸自己縮合物との反応物であり、具体的には、ポリアリルアミンと12−ヒドロキシステアリン酸自己縮合物との反応物;ポリエチレンポリアミンと12−ヒドロキシステアリン酸自己縮合物との反応物、たとえば、市販品として、ゼネカ(株)製のソルスパース13940など、ジアルキルアミノアルキルアミンと12−ヒドロキシステアリン酸自己縮合物を反応させたもの、たとえば、市販品として、ゼネカ(株)製のソルスパース17000、18000などをあげることができる。
【0026】
とくに、分散剤としてポリアリルアミンと12−ヒドロキシステアリン酸自己縮合物との反応物を利用すると、有機顔料に対する初期および長期保存の間での顔料分散性が良好であり、さらにインクの吐出安定性にも優れるという面から好適である。
【0027】
つぎに、本発明は、流動パラフィンを主たる成分とする飽和炭化水素系溶剤を利用するものである。
【0028】
なお、流動パラフィンとは、比較的軽質の潤滑油成分を硫酸洗浄などによって高度に精製して得られる、主としてノルマルパラフィン、イソパラフィンおよび単環シクロパラフィンの3成分の混合物であり(日本薬局方において軽質流動パラフィンと呼ばれるものも含む)、その中でも単環シクロパラフィンを20重量%以上含有するものが好適である。
【0029】
そして、実質的に紫外線吸収性の不純物を含有しないレベルまで精製され、使用目的に応じて、日本薬局方における流動パラフィンの純度試験、日本国で定められた、食品添加物基準における流動パラフィンの純度試験、および化粧品原料基準における流動パラフィンの純度試験の少なくとも1つに合格しているものは、作業・衛生の面においてもより好適である。
【0030】
これら3つの流動パラフィンの純度試験および基準値については、現在、最新のものとして、第十四改正日本薬局方、第7版食品添加物公定書、および厚生省告示第181号に基づく化粧品原料基準に収載されており、いずれのものにも合格した流動パラフィンとしては、たとえば、モレスコホワイトP−40、モレスコホワイトP−55(以上、松村石油研究所(株)製)、流動パラフィンNo.40−S、流動パラフィンNo.55−S(以上、中央化成(株)製)などをあげることができる。
【0031】
さらに、イソパラフィン系溶剤、シクロパラフィン系溶剤も併用可能であり、イソパラフィン系としては、イソデカン、イソドデカン、および市販のイソパラフィン系混合物、たとえばアイソパーE、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL、アイソパーM(以上、いずれもエクソン化学(株)製)、シェルゾール(シェルオイル(株)製)、ソルトロール(フィリップス石油(株)製)、ベガゾール(モービル石油(株)製)、IPソルベント2835(出光石油化学(株)製)などをあげることができ、また、シクロパラフィン系溶剤としては、シクロオクタン、シクロデカン、デカリン、および市販のシクロパラフィンを含む混合物、たとえばエクソールD130、D140(いずれもエクソン化学(株)製)などをあげることができる。
【0032】
ここで、より低温で液状を維持する必要がある場合は、低い凝固点を有するイソパラフィン系炭化水素系溶剤の併用が好適であり、一方、ノズルの先端に残ったインクが乾燥しないようにノズル内に後退させて、吐出安定性を良好とさせる場合は、高い表面張力を有するシクロパラフィン系炭化水素系溶剤の併用が好適である。
【0033】
そして、このように、流動パラフィンを主な成分として、インクの要求性能に応じて他の飽和炭化水素系溶媒を適度に混合して使用すると、たとえばアイソパーやエクソールなどのイソパラフィン系溶剤やシクロパラフィン系溶媒を単独で利用するのと比較して、良好な性能バランスを有するインクジェットインクを調製することが可能となる。なお、流動パラフィンの含有量は、好ましくは全炭化水素系溶剤に対して70重量%以上である。
【0034】
以上の流動パラフィンを必須成分とする飽和炭化水素系溶剤において、インクの吐出安定性の面から、25℃における粘度が20mPa・s以下のものが好適であり、低粘度の飽和炭化水素系溶剤と高粘度の飽和炭化水素系溶剤とを混合して、前記の粘度になるように調整して使用することもできる。
【0035】
また、蒸発乾燥による印刷速度の向上とノズルの目詰まりのバランスを考慮すると、飽和炭化水素系溶剤の沸点としては180〜360℃/760mmHgの範囲にあるのが好適であり、飽和炭化水素系溶剤の混合物を利用する場合は、その大部分の成分が前記の沸点の範囲にあることが望ましい。
【0036】
さらに、本発明では、顔料分散や吐出安定性を向上させる助剤として植物油を使用する。利用可能な植物油としては、大豆油、綿実油、ヒマワリ油、ナタネ油、カラシ油、ゴマ油、コーン油等の半乾性油、オリーブ油、落下生油、ツバキ油等の不乾性油、亜麻仁油、サフラワー油などの乾性油をあげることができ、これらの植物油は単独または混合して使用できる。
【0037】
とくに性状の点からは、酸化による重合性の低い半乾性油や不乾性油であって、その中でも、より低粘度なナタネ油、オリーブ油、また、安価な大豆油がより好ましい。
【0038】
そして、本発明で用いる飽和炭化水素系溶剤と植物油の使用量は、飽和炭化水素系溶剤の重量をWHC、植物油の重量をWVOとしたとき、WHC/WVO>10となる量であり、顔料分散性や吐出安定性から、好ましくはWHC/WVOの上限は500、より好ましくは100程度である。
【0039】
さらに、被印刷体への固着性などの改善のために、通常の油性インクジェット記録用インクで利用されている各種バインダー樹脂を添加することができ、とくに再溶解性に効果のある石油樹脂やロジン変性マレイン酸樹脂などは好適である。また、顔料の分散に効果のある顔料誘導体や界面活性剤、さらに粘度調整剤等の各種添加剤を添加することもできる。
【0040】
これらの材料を用いてインクジェット記録用インクを製造する方法としては、まず、飽和炭化水素系溶剤に分散剤を溶解させて分散剤溶液とし、さらに顔料、必要に応じて界面活性剤などを攪拌混合して、練肉機で練肉した後、残りの材料を添加混合する方法が利用できる。
【0041】
前記練肉機としては、たとえば、湿式サーキュレーションミル、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、パールミルなどをあげることができ、とくにインクジェット記録液では、通常の印刷インキと比較して、より微細に顔料を分散させる必要があることから、前記機種の中でも湿式サーキュレーションミルが好ましい。
【0042】
本発明の油性インクジェット記録用インクは、25℃において、表面張力を26〜30dyne/cm、ポリテトラフルオロエチレン板上での接触角を40〜50°とすることが必要であり、この範囲にあるインクは、速やかにノズル内に充填され、ノズルの詰まりも少なくすることができる。なお、上記のポリテトラフルオロエチレン板上における接触角の数値は、25℃の雰囲気温度において、適度な厚さを有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)板を用いて、その水平面上にシリンジでインクを1滴滴下し、PTFE板にインクが接触した直後のものを示すものである。
【0043】
また、低温における保存安定性などを良好にするという観点から、インクの凝固点は−10℃以下であるのが好適である。さらに、インクの粘度としては、使用時の環境温度において、1.0〜30.0mPa・s、とくに10〜20.0mPa・sが好適であり、粘度がこの範囲にあると、高速印刷において吐出追随性や吐出安定性も良好である。
【0044】
これらの物性値は、最終的なインクの組成物として有していればよいが、とくに主要成分である飽和炭化水素系溶剤に支配される物性値であることから、用いる飽和炭化水素系溶剤(混合物の場合は混合物として)として、上記の表面張力と接触角を有し、低粘度で、さらに凝固点が−10℃以下となるものを選択しておくことが望ましい。
【0045】
本発明の油性インクジェット記録用インクの用途としては、ピエゾ振動素子を利用してインクを吐出する、オンデマンド・インクジェット記録方式に適しており、現在、市販されている油性インクジェット記録用インクの印刷装置において、良好な吐出安定性を得ることができる。
【0046】
なお、本発明の油性インクジェット記録用インクは、108Ωcm以上の体積抵抗値を有するものが好ましいが、帯電剤を含有しないものである。従って、帯電させたインク液滴と電極との間に発生する電気的吸引力を利用して、連続的に液滴を飛翔させるインクジェット記録方法で使用するインクとは、本質的に要求される吐出特性が異なるものである。
【0047】
本発明のインクジェット記録用インクは、初期および長期保存においても良好な顔料分散性を有し、より低温から高温までの幅広い温度範囲において吐出安定性に優れた油性インクジェット記録用インクである。
【0048】
【実施例】
以下、実施例でもって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、とくに断りのない限り、本実施例において「部」および「%」は、それぞれ「重量部」および「重量%」を表わす。
【0049】
実施例1〜11および比較例1〜4
<ベースインキの製造>
分散剤として、ポリアリルアミンと12−ヒドロキシステアリン酸自己縮合物との反応物3部を流動パラフィンNo.40−S(中央化成(株)製)12部に溶解し、これに顔料としてファストゲン スーパーレッド 7061B(大日本インキ化学工業(株)製)5部を攪拌混合した後、ビーズミルを用いて練肉し、ベースインキNo.1を得た。
【0050】
分散剤としてソルスパーズ17000の3部を流動パラフィンNo.40−S12部に溶解し、これに顔料としてカーボンブラックMA−7(三菱化学(株)製)5部を攪拌混合した後、ビーズミルを用いて練肉し、ベースインキNo.2を得た。
【0051】
分散剤としてソルスパーズ17000の3部をイソパラフィン系溶剤であるIPソルベント2835(出光石油化学(株)製)12部に溶解し、これに顔料としてカーボンブラックMA−7(三菱化学(株)製)5部を攪拌混合した後、ビーズミルを用いて練肉し、ベースインキNo.3を得た。
【0052】
<インクジェット記録用インクの製造>
表1の配合に従い、各種材料を攪拌混合して、25℃における粘度がほぼ10mP・sの実施例1〜11、比較例1〜4のインクジェット記録用インクを得た。
【0053】
なお、No.55−Sは流動パラフィン(中央化成(株)製)、アイソパーMはイソパラフィンの混合物(エクソン化学(株)製)、エクソールD130はシクロパラフィンとパラフィンの混合物(エクソン化学(株)製)である。
【0054】
<性能評価>
・表面張力の測定
実施例1〜11、比較例1〜4のインクジェット記録用インクの25℃における表面張力を表面張力計(動的濡れ性試験機、レスカ社製)を用いて測定し、その結果を表1に示した。
【0055】
・接触角の測定
25℃において、(株)サンプラテック製のPTFE板(厚さ1.0mm)を用い、その水平面上にシリンジで実施例1〜11、比較例1〜4のインクジェット記録用インクを1滴滴下し、PTFE板にインクが接触した直後の接触角を測定した(ちなみに、本発明者らは、国際出願PCT/JP99/07243において、フッ化エチレン−プロピレン共重合体フィルムに対するインクの接触角を示したが、フッ化エチレンとプロピレンとの共重合比率が変動すると接触角も変動する可能性があるため、本発明では、変動の要素のないポリテトラフルオロエチレン板に対する接触角を測定した)。
【0056】
・低温保存安定性
実施例1〜11、比較例1〜4のインクジェット記録用インクをガラス瓶にとり密栓して、0℃で1ヶ月、さらに−10℃で1ヶ月間経時させた後の、沈降物の有無とその状態から低温保存安定性を評価した。
A:沈降物が全く生じない。
B:沈降物は生じるが、軽く振ればなくなる。
C:激しく振っても沈降物がなくならない。
【0057】
・常温における吐出安定性
一般的な室内環境と考えられる20℃の温度下で、市販の油性インクジェット記録用インク対応の印刷装置(IP−4000、ピエゾタイプ、セイコーインスツルメンツ(株)製)を用いて、実施例1〜11、比較例1〜4のインクジェット記録用インクを専用光沢紙(ロール紙)に連続ベタ印刷し、A0に相当するサイズでカットして印刷物100枚を得た。印刷がされない部分(ほぼ全てのノズルからインクが吐出されなくなり、印字がされない部分をいう)が印刷開始から何枚目で発生したかで常温吐出安定性を評価した。
A:印刷されない部分が71枚目以降に発生するか、印刷されない部分が100枚目まで発生しない。
B:印刷されない部分が51枚目〜71枚目で発生する。
C:印刷されない部分が31枚目〜50枚目で発生する。
D:印刷されない部分が30枚目までに発生する。
【0058】
・低温における吐出安定性
室温を5℃とした以外は前記の常温時での吐出安定性と同じ評価方法、同じ評価基準で、実施例1〜11、比較例1〜4のインクジェット記録用インクの低温吐出安定性を評価した。
【0059】
・紙面乾燥性
環境条件を室温25℃、相対湿度60%として、上記と同じ油性インクジェットプリンターを用いて、実施例1〜11、比較例1〜4のインクジェット記録用インクを専用光沢紙にベタで印字後、指触による指への記録液付着がなくなるまでの時間から乾燥性を評価した。
A:2秒以内に乾燥するもの。
B:2秒を超えて5秒以内に乾燥するもの。
C:5秒を超えても乾燥しないもの。
【0060】
なお、上記の評価において、常温および低温での吐出安定性については、AおよびBランクを良好な性能、Cランクを使用上問題のない性能、Dランクを使用に差し支える性能、その他の項目については、Aランクを良好な性能、Bランクを使用上問題のない性能、Cランクを使用に差し支える性能と判断した。
【0061】
【表1】
Figure 0004330260
【0062】
【発明の効果】
以上、実施例と比較例をあげて具体的に示したように、本発明の油性インクジェット記録用インクは、初期および長期において良好な顔料分散性を有し、さらに低温から高温の広い温度範囲において吐出安定性に優れた油性インクジェット記録用インクである。

Claims (8)

  1. 顔料、ポリアミン化合物と12−ヒドロキシステアリン酸自己縮合物との反応物からなる分散剤、流動パラフィンを主成分とする飽和炭化水素系溶剤、および植物油を含有する油性インクジェット記録用インクにおいて、25℃における表面張力が26〜30dyne/cm、25℃におけるポリテトラフルオロエチレン板上での接触角が40〜50°であり、さらに前記飽和炭化水素系溶剤の重量をWHC、前記植物油の重量をWVOとしたとき、
    100≧HC/WVO>10
    であることを特徴とする油性インクジェット記録用インク。
  2. 前記分散剤が、ポリアリルアミンと12−ヒドロキシステアリン酸自己縮合物との反応物である請求項1に記載の油性インクジェット記録用インク。
  3. 前記飽和炭化水素系溶剤において、流動パラフィンの含有量が70重量%以上である請求項1または2に記載の油性インクジェット記録用インク。
  4. 前記流動パラフィンが、単環シクロパラフィンを20重量%以上含み、25℃における表面張力が26〜30dyne/cmであり、さらに粘度が20mPa・s以下の流動パラフィンである請求項1〜3のいずれかに記載の油性インクジェット記録用インク。
  5. 前記飽和炭化水素系溶剤が、さらにイソパラフィンを含有する請求項1〜4のいずれかに記載の油性インクジェット記録用インク。
  6. さらに石油系樹脂および/またはロジン変性マレイン酸樹脂を含有する請求項1〜5のいずれかに記載の油性インクジェット記録用インク。
  7. 凝固点が−10℃以下である請求項1〜6のいずれかに記載の油性インクジェット記録用インク。
  8. 体積抵抗値が108Ωcm以上である請求項1〜7のいずれかに記載の油性インクジェット記録用インク。
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