JP4328138B2 - ポリイミド金属積層板 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、TAB(テープオートメーティッドボンディング)テープ加工ラインで広く使用されている、Chip on Film(以下、COFと略記することがある)用ポリイミド金属積層板に関するものである。
【0002】
詳しくは、インナーリードボンダを使用してAu-Au接合、あるいはAu-Sn接合により、チップと金属配線を接合する際に、チップの熱可塑性ポリイミドへの沈み込みが少なく、COF用基材に適するポリイミド金属積層板に関するものである。
【0003】
【従来の技術】
従来から、COF用基材としては、主に非熱可塑性ポリイミド樹脂フィルムに金属をスパッタして得られるポリイミド金属積層板が使用されてきた。スパッタ方式の場合、金属層のピンホールにより歩留まりが悪化しやすいため、ピンホールがないポリイミド金属積層板が望まれている。
【0004】
ピンホールがないポリイミド金属積層板としては、圧延銅箔や電解銅箔とポリイミドを積層したフレキシブル回路基板がある。ポリイミド金属積層板はキャスティングやラミネート方式により金属箔上にポリイミドを積層して得られるが、接着力等を向上するために、熱可塑性ポリイミド層を金属箔上に形成するものもある。
【0005】
ところで、チップ実装は、ACF(Anisotropic Conductive Film)、NCP(Non Conductive Paste)、超音波接合など低温で実装する方式から、Au-Au接合、Au-Sn接合など300℃以上の高温で実装する方式があるが、TABラインでの実装方式や、チップと配線の接続信頼性の点から、Au-Au接合、Au-Sn接合が現在でも多く採用されている。
【0006】
スパッタ方式で得られるポリイミド積層板の場合、熱可塑性樹脂層がないため、300℃以上のチップ実装時に金属配線がポリイミド層に沈み込むという現象は起こらなかった。
【0007】
【解決しようとする課題】
しかし、金属箔上に熱可塑性ポリイミド層を積層した金属積層板にAu-Sn接合によるチップ実装を行なった場合、該熱可塑性ポリイミドに配線およびチップのバンプが沈み込む、配線がずれる等の問題が起こった。配線の過度の沈み込みは、チップとポリイミド層の隙間が狭くなることから、アンダーフィルが入らない、エッジショートが発生するという問題が発生してしまう。また、配線ずれに関しては隣接する銅配線に接触し、ショートを起こす問題が発生した。これらの問題が発生しないためには、配線ずれが無く、沈み込み量が小さいものが望まれていた。
【0008】
本発明の目的は、チップ実装後に配線ずれやエッジショートがなく、かつアンダーフィルを充填可能な、ポリイミド金属積層板に関するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、検討の結果、熱可塑性ポリイミドをガラス転移温度以上の温度で特定弾性率のもの、即ち動性がある程度低いものにすることにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明に到達した。
【0010】
すなわち本発明は、1層以上の非熱可塑性ポリイミド層の少なくとも片面に熱可塑性ポリイミド層が形成され、該熱可塑性ポリイミド層の表面に金属が積層されたポリイミド金属積層板において、熱可塑性ポリイミドの弾性率が、ガラス転移温度以上の温度で7.0×106(Pa)以上1.0×109(Pa)以下のものであることを特徴とするポリイミド金属積層板、及び1層以上の非熱可塑性ポリイミド層の少なくとも片面に、熱可塑性ポリイミド層が形成され、該熱可塑性ポリイミド層の表面に金属が積層されたポリイミド金属積層板において、熱可塑性ポリイミドの弾性率が、ガラス転移温度以上分解温度以下の温度範囲で7.0×106(Pa)以上1.0×109(Pa)以下の値を有することがあることを特徴とするポリイミド金属積層板に関するものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリイミド金属積層板は、非熱可塑性ポリイミド層の少なくとも片面に熱可塑性ポリイミドまたは該熱可塑性ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸を含むワニスを塗布し、乾燥・キュアして熱可塑性ポリイミド層を形成し、さらに熱可塑性ポリイミド層の表面に、金属の該面を熱圧着することにより製造される。
【0012】
また、金属上に熱可塑性ポリイミドまたは該熱可塑性ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸を含むワニスを塗布し、乾燥・キュアして熱可塑性ポリイミド層を形成し、さらにその上に該非熱可塑性ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸を含むワニスを塗布し、乾燥・キュアして非熱可塑性ポリイミド層を形成しても良い。
【0013】
本発明で使用する金属としては、銅、ニッケル、コバルト、クロム、亜鉛、アルミニウム及びステンレス鋼、並びにそれらの合金からなる群から選ばれた少なくとも一種の金属であり、より好ましくは、銅及び銅合金、ステンレス鋼及びその合金、ニッケル及びニッケル合金(42合金も含む)、アルミニウム及びアルミニウム合金等が挙げられる。さらに好ましくは銅及び銅合金である。
【0014】
また、金属箔の厚みは、テープ状に利用できる厚みであれば制限はないが、2〜150μmが好ましく利用できる。
【0015】
ポリイミド金属積層板の構成としては、1層以上の非熱可塑性ポリイミド層の少なくとも片面に熱可塑性ポリイミド層が形成されていれば良く、具体的にはポリイミド層に金属箔層が1層のみの片面板または、金属箔がポリイミドの表裏に積層された両面板のどちらでも良い。
【0016】
片面板時のポリイミド層の構成としては、金属箔表面に少なくとも1層の熱可塑性ポリイミド層、その次に少なくとも1層の非熱可塑性ポリイミド層が積層され、好ましくは非熱可塑性ポリイミド層が線膨張係数の異なる2層以上からなることが好ましく、金属箔側から、20ppm/℃以下の低線膨張係数ポリイミド、20ppm/℃超える高線膨張係数ポリイミドの順番にすることで反りをコントロールし易くなる。また、別の片面板の構成としては、金属箔表面に少なくとも1層の熱可塑性ポリイミド層、少なくとも1層の非熱可塑性ポリイミド層、少なくとも1層の熱可塑性ポリイミド層になるように積層されている例を挙げることができ、この構成が好ましい。
【0017】
両面板時は、具体的構成としては、金属箔、少なくとも1層の熱可塑性ポリイミド層、少なくとも1層の非熱可塑性ポリイミド層、少なくとも1層の熱可塑性ポリイミド層、金属箔の構成を例として挙げることができる。
【0018】
熱可塑性ポリイミド層を形成する熱可塑性ポリイミドとしては、ガラス転移温度(Tg)以上で流動せず、弾性率を保持していることが好ましい。熱可塑性ポリイミドのTgは、350℃を超えると金属積層体とした場合、金属箔との接着力が発現しにくくなる為、好ましくは150℃以上350℃以下である。
【0019】
また、弾性率の測定温度としてはTg以上であれば良いが、好ましくはポリイミドの分解温度以下、より好ましくは使用される環境に近い条件、例えばチップと配線を接合する用途に使用される場合は、測定温度は実装温度付近であることが好ましい。具体的測定温度としては実装方式がACFやNCP、超音波方式の場合には150℃以上250℃以下、好ましくは200℃以上250℃以下であり、Au-Sn共晶やAu-Au接合の場合には250℃以上350℃以下、好ましくは300℃以上350℃以下であり、最高でもポリイミドの分解が進行し始める400℃程度以下であればよい。
【0020】
測定はTMA(Thermomechanical Analysys)や粘弾性測定機等、従来用いられている装置が使用可能で、熱可塑性ポリイミドフィルムのみの粘弾性を測定した場合、弾性率(正しくは貯蔵弾性率 E')が7.0×106(Pa)以上であることが重要である。弾性率が7.0×106(Pa)未満である場合は、チップ接合時に熱可塑性ポリイミドが変形し、熱可塑性ポリイミドとチップが接着してしまう、銅配線がずれる、という問題点がある。また、弾性率が1.0×109(Pa)以上の場合には金属箔と接着強度が発現しにくくなり、好ましくない。その為、好ましい弾性率の範囲は7.0×106以上1.0×109(Pa)以下である。更には、前述した配線ずれやチップとの接触といった致命的な問題以外にも、300℃以上の高温でチップを実装する用途に関しては、メッキの潜り込みや剥離などの現象が起こることが指摘されており、今後の微細配線用途には信頼性の観点から改善することが好ましいとされ、そうした用途については金属箔との接着の指標であるピール強度や半田耐熱性などを向上させるためにも弾性率の範囲がより好ましくは1.0×107以上8.0×108(Pa)以下、更に好ましくは4.0×107以上5.0×108(Pa)以下、より更に好ましくは5.5×107以上4.0×108(Pa)以下であることが望ましい。
【0021】
尚、本発明においては、熱可塑性ポリイミドの弾性率が、ガラス転移温度以上分解温度以下の温度範囲で少なくとも一点以上7.0×106(Pa)以上1.0×109(Pa)以下の値を有していればよく、例えば、ガラス転移温度が240℃であり、測定温度300℃で2.2×107(Pa)であれば、その後400℃にて1.0×106(Pa)程度に弾性率が低下しても本発明範囲に入るものである。
【0022】
更に熱可塑性ポリイミドは、金属をエッチング後、先端形状がφ1mmの円柱形であるペネトレーション試験棒を用いて加重50g、25℃から昇温速度10℃/分で熱可塑性ポリイミド側からペネトレーション試験を行った場合、350℃での沈み込み量が2μm以下になるようなものが好ましい。熱可塑性ポリイミド樹脂の厚みは、上記条件を満たすものであれば制限はされないが、0.5μmから50μmが好ましく利用できる。
【0023】
金属のエッチング方法は、通常行われている方法であれば特に限定されないが、一例を挙げると、約40℃に加温した塩化第二鉄溶液(40ボーメ)をスプレー式ノズルから吐出させる方式で、金属箔が完全になくなるまで数分程度処理し、水洗後、室温で乾燥し、ポリイミドフィルムを得る方法を挙げることができる。
【0024】
熱可塑性ポリイミド層を形成する熱可塑性ポリイミドとしては、弾性率がガラス転移温度以上の温度で7.0×106Pa以上のものであれば特に限定されないが、使用可能な熱可塑性ポリイミドの例として、原料のジアミンが、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(以下、APBと略す)、4,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル(以下、m-BPと略す)及び、3,3’−ジアミベンゾフェノン(以下、DABPと略す)、p−フェニレンジアミン(PPD)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)から選ばれた少なくとも一種のジアミンが好ましい。
【0025】
酸二無水物として特に限定はなく、公知の酸二無水物が使用可能であるが、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(以下、BTDAと略す)、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)が好ましい。ジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物の反応モル比は、通常、0.75〜1.25の範囲である。
【0026】
非熱可塑性ポリイミド層を形成する非熱可塑ポリイミドは、特定のジアミンと特定のテトラカルボン酸二無水物から合成される組成物が利用できる。特定のジアミンとして、o-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノフェニルエーテル、3,4−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル等が挙げられる。これらは、単独または2種類以上使用しても良い。また、前記のアミン化合物を併用する場合、特定のジアミン成分の使用量は、少なくとも70モル%以上、好ましくは80モル%以上である。
【0027】
特定のテトラカルボン酸二無水物として、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’―ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸等が挙げられる。これらは、単独または、二種類以上使用してもよい。
【0028】
また、非熱可塑性ポリイミドとして、市販の非熱可塑性ポリイミドフィルムも使用できる。例えば、ユーピレックス(登録商標)S、ユーピレックス(登録商標)SGA、ユーピレックス(登録商標)SN(宇部興産株式会社製、商品名)、カプトン(登録商標)H、カプトン(登録商標)V、カプトン(登録商標)EN(東レ・デュポン株式会社製、商品名)、アピカル(登録商標)AH、アピカル(登録商標)NPI、アピカル(登録商標)HP(鐘淵化学工業株式会社製、商品名)等が挙げられる。非熱可塑性ポリイミドの表面はプラズマ処理、コロナ放電処理等を施しもよい。
【0029】
非熱可塑性ポリイミド層の厚みは、目的により特に制限はないが、総厚みが5〜250μmの範囲が好適に利用できる。
さらに、市販の非熱可塑性ポリイミドフィルムの、熱可塑性ポリイミド層を積層しない側に、構造の異なる非熱可塑性ポリイミドを積層してもよい。
【0030】
本発明により提供されるポリイミド金属積層板は、金属箔を使用するためにピンホールが無く、熱可塑性ポリイミド樹脂層があってもAu-Au接合あるいはAu-Sn接合によるチップ実装時でも配線ずれが無く、アンダーフィル充填が可能となる。
【0031】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
なお、実施例に示した熱可塑性フィルムの弾性率及びガラス転移温度、ポリイミド金属積層体の金属をエッチング後、ペネトレーション試験、チップ搭載時の配線沈み込み量測定、ピール強度については下記の方法により測定した。
【0032】
(1)熱可塑性ポリイミド弾性率及びガラス転移温度(Tg)
幅4mm、長さ20mmの単層の熱可塑性ポリイミド試料をマックサイエンス株式会社製TMA-4000にセットし、25℃から300℃まで昇温し、弾性率測定を行なった。
尚、熱可塑性ポリイミドの単層フィルムは、ワニスをガラス板に最終厚さが25〜50μmになるようにアプリケーターにより塗布し、窒素にて置換したオーブン中で50℃から350℃まで約7℃/minで昇温後、15分保持したのち冷却し、温水中で数時間浸漬後単層フィルムを剥離することで得た。
【0033】
また、実施例2以降については、レオメトリックス社製RSAIIにより単層の熱可塑性ポリイミド試料を引張りモードにて窒素中、1Hz、3℃/minで、25℃から500℃まで昇温し、弾性率(貯蔵弾性率 E’)測定を行ない、同時に、損失弾性率(E’’)のピークをTgとして求めた。
【0034】
(2)ペネトレーション試験
マックサイエンス株式会社製TMA-4000の使用して測定を行なった。ポリイミド金属積層体の金属をエッチングし、熱可塑性ポリイミド樹脂と先端形状がφ1mmの円柱形である石英製ペネトレーション試験棒が接するように試料を試料台にセットした。加重50g、25℃から昇温速度10℃/分で熱可塑性ポリイミド側からペネトレーション試験を行った。一方、測定器の熱変形による誤差を考慮するため、試料なしでもペネトレーション試験を行ない、試料をセットした場合の測定値とセットしない場合の測定値の差を試験結果とした。
尚、金属のエッチングは約40℃に加温した塩化第二鉄溶液(40ボーメ)をスプレー式ノズルから吐出させる方式で、金属箔が完全になくなるまで数分程度処理し、水洗後、室温で乾燥し、ポリイミドフィルムを得た。
【0035】
(3)配線沈み込み量測定
チップ搭載後、試料を樹脂包理後、研磨し、バンプと配線接合部断面を日本光学製金属顕微鏡で観察を行なった。金属配線と熱可塑製ポリイミド層の界面と、非熱可塑性ポリイミド層と熱可塑製ポリイミド層の界面の最少隙間を測定し、配線沈み込み量とした。
(4)ピール強度(kN/m)
長さ50mm、幅2mmの導体を、金属箔をエッチングすることにより形成し、JIS C-6471に規定される方法に従い、短辺の端から金属導体側をポリイミド層から剥離し、その応力を測定する。剥離角度を90°、剥離速度を50mm/minとした。
【0036】
また、実施例に用いた溶剤、酸二無水物、ジアミンの略称は以下の通りである。
DMAc:N,N−ジメチルアセトアミド
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
APB:1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン
BTDA:3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
PPD:p−フェニレンジアミン
ODA:4,4’−ジアミノジフェニルエーテル
3,4’−ODA:3,4’−ジアミノジフェニルエーテル
m−BP:4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル
DABP:3,3’−ジアミベンゾフェノン
PMDA:ピロメリット酸二無水物
BPDA:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
【0037】
合成例1
<熱可塑性ポリイミド樹脂の前駆体の合成>
撹拌機及び窒素導入管を備えた容器に、溶媒としてDMAc1718.6gを加え、これにAPB146.2gを加え、溶解するまで室温にて撹拌を行った。その後、BTDA157.1gを加え、60℃において撹拌を行い、ポリアミック酸溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液はポリアミック酸の含有率が15重量%であり、25℃でのE型粘度は0.5Pa・sであった。
【0038】
合成例2
<熱可塑性ポリイミド樹脂の前駆体の合成>
撹拌機及び窒素導入管を備えた容器に、溶媒としてDMAc1636gを加え、これにAPB146.2gを加え、溶解するまで室温にて撹拌を行った。その後、BPDA142.5gを加え、60℃において撹拌を行ってポリアミック酸溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液はポリアミック酸の含有率が15重量%であり、25℃でのE型粘度は0.55Pa・sであった。
【0039】
合成例3
<非熱可塑性ポリイミド樹脂の前駆体の合成>
撹拌機及び窒素導入管を備えた容器に、溶媒としてDMAc846.9gとNMP362.9gを加え、これにPPD16.2g(30mol%)、及び、ODA49.1g(49mol%)を加え、撹拌しながら50〜60℃に加熱して溶解させた。その後、氷で約30℃になるまで冷却した後、BPDA25.1gを加え60℃に加熱し約2時間撹拌を行った。さらに、m−BP38.7g(21mol%)を加え60℃に温度を保ちながら撹拌を行った。最後にPMDA84.4gを加え60℃で2時間撹拌を行い、ポリアミック酸溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液はポリアミック酸の含有率が15重量%であり、25℃でのE型粘度は0.4Pa・sであった。
【0040】
合成例4〜14
ジアミン、酸無水物の種類、比率を変えた以外は合成例1と同様にポリアミック酸溶液(表1)を得た。
【0041】
【表1】
Figure 0004328138
【0042】
参考例
市販のポリイミド樹脂フィルム(東レ・デュポン株式会社製、商品名:カプトン(登録商標)100EN)を用い、第一面に合成例1のポリアミック酸溶液(以下ワニスと呼ぶ)をロールコーターにより乾燥後の厚さで4μmになるように塗布し、150℃で2分乾燥後、第二面に合成例3のワニスをロールコーターにより乾燥後の厚さで5μmになるように塗布し、70℃で5分、110℃で5分乾燥後、140℃で2分、180℃で5分、265℃で2分、エアーフロート方式の乾燥炉にて乾燥を行い、第一面が熱可塑性ポリイミド樹脂層である絶縁フィルムを得た。その後、市販の銅箔(古河サーキットフォイル(株)製、商品名:F0−WS(厚み9μm))に、ロールラミネーターにより240℃で圧力1.5MPaの条件で、金属箔と絶縁フィルムを張り合わせ、その後、バッチ式のオートクレーブにて温度280℃で4時間窒素雰囲気下でアニールを行い、フレキシブル金属積層体を得た。
その後、回路加工・チップ搭載メーカにてチップ搭載を行なった。チップ搭載後の外観を500倍、1250倍の顕微鏡にてポリイミド層側より観察した結果、バンプ付近の回路部分数十μmに渡り、銅箔とポリイミド層界面にSnの潜り込みが観察された。
【0043】
熱可塑性ポリイミド弾性率;7.7×106(Pa) (230℃)
熱可塑性ポリイミドガラス転移温度;195℃
ペネトレーション試験結果;2μm
チップ搭載結果;2μm
アンダーフィル充填;可
配線ずれ;観察されない。
Sn潜り込み;有
ピール強度;0.8kN/m
【0044】
実施例2
市販のポリイミド樹脂フィルム(東レ・デュポン株式会社製、商品名:カプトン(登録商標)150EN)を用い、第一面に合成例4のポリアミック酸溶液(以下ワニスと呼ぶ)をロールコーターにより乾燥後の厚さで3μmになるように塗布し、150℃で2分乾燥後、第二面に合成例3のワニスをロールコーターにより乾燥後の厚さで3μmになるように塗布し、70℃で5分、110℃で5分乾燥後、140℃で2分、180℃で5分、265℃で2分、エアーフロート方式の乾燥炉にて乾燥を行い、第一面が熱可塑性ポリイミド樹脂層である絶縁フィルムを得た。その後、市販の銅箔(古河サーキットフォイル(株)製、商品名:F0−WS(厚み9μm))に、プレス機により圧力10MPa、温度200〜400℃まで約2時間で昇温し、その後400℃で15分放置後冷却しフレキシブル金属積層体を得た。
【0045】
次に、回路幅約20〜30μmになるように回路加工し、無電解Snメッキ液(シプレイ社 LT34)にて温度70℃×3分間メッキし、水洗後100〜120℃程度で約60分間乾燥することでLSIチップを実装可能なテープを作成した。次にLSIチップ(日立超LSI社製 TEGチップ フェーズ0 Auメッキバンプ)をパルスボンダーにてチップ側450℃、テープ側100℃、圧力120MPa、2秒にてチップ搭載を行なった。
【0046】
熱可塑性ポリイミド弾性率;7.1×106(Pa) (350℃)
熱可塑性ポリイミドガラス転移温度;250℃
ペネトレーション試験結果;<1μm
チップ搭載結果;<1μm
アンダーフィル充填;可
配線ずれ;観察されない。
Sn潜り込み;有
ピール強度;0.7kN/m
【0047】
実施例3〜11
合成例4のワニスをそれぞれ表2に示すワニスに代えた以外は実施例2と同様にしてフレキシブル金属積層体を得た。また、評価結果も併せて表2に示す。
【0048】
比較例1
市販のポリイミド樹脂フィルム(東レ・デュポン株式会社製、商品名:カプトン(登録商標)100EN)を用い、第一面に合成例2のポリアミック酸溶液(以下ワニスと呼ぶ)をロールコーターにより乾燥後の厚さで4μmになるように塗布し、150℃で2分乾燥後、第二面に合成例3のワニスをロールコーターにより乾燥後の厚さで5μmになるように塗布し、70℃で5分、110℃で5分乾燥後、140℃で2分、180℃で5分、265℃で2分、エアーフロート方式の乾燥炉にて乾燥を行い、第一面が熱可塑性ポリイミド樹脂層である絶縁フィルムを得た。その後、市販の銅箔(古河サーキットフォイル(株)製、商品名:F0−WS(厚み9μm))に、ロールラミネーターにより240℃で圧力1.5MPaの条件で、金属箔と絶縁フィルムを張り合わせ、その後、バッチ式のオートクレーブにて温度280℃で4時間窒素雰囲気下でアニールを行い、フレキシブル金属積層体を得た。
その後、実施例1と同条件で回路加工・チップ搭載メーカにてチップ搭載を行なった。
【0049】
熱可塑性ポリイミド弾性率;弾性率が小さいため、測定時にフィルムが伸びきり、測定 不可(230℃)
熱可塑性ポリイミドガラス転移温度;200℃
ペネトレーション試験結果;4μm
チップ搭載結果;4μm
アンダーフィル充填;不可
配線ずれ;発生
Sn潜り込み;有
ピール強度;0.9kN/m
【0050】
比較例2
合成例4のワニスをそれぞれ表2に示すワニスに代えた以外は実施例2と同様にしてフレキシブル金属積層体を得た。また、評価結果も併せて表2に示す。ピール強度が低く実用上使用できない。
【0051】
【表2】
Figure 0004328138
【0052】
*1)ペネトレーション法
*2)チップ搭載後断面観察
*3)○:配線ズレ無、×:配線ズレ有
*4)○:充填可能、×:充填不可
【0053】
【発明の効果】
本発明により熱可塑性ポリイミド樹脂で接着された金属箔を使用するためにピンホールが無く、Au-Au接合あるいはAu-Sn接合によるチップ実装時でも配線ずれが無く、アンダーフィル充填が可能となるポリイミド金属積層板を提供できる。

Claims (5)

  1. 1層以上の非熱可塑性ポリイミド層の少なくとも片面に、熱可塑性ポリイミド層が形成され、該熱可塑性ポリイミド層の表面に金属が積層されたポリイミド金属積層板において、
    前記熱可塑性ポリイミドが、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを含むジアミン成分と、テトラカルボン酸二無水物成分とから合成され、かつ前記4,4’−ジアミノジフェニルエーテルが全ジアミン成分の50〜70モル%であり、
    前記熱可塑性ポリイミドのガラス転移温度が、240℃以上であり、
    前記熱可塑性ポリイミドの弾性率が、350℃の測定温度で5.5×10 (Pa)以上1.0×10(Pa)以下のものである、ポリイミド金属積層板。
  2. チップオンフィルム用のポリイミド金属積層板である、請求項1に記載のポリイミド金属積層板。
  3. 熱可塑性ポリイミドが、金属をエッチング後、先端形状がφ1mmの円柱形であるペネトレーション試験棒を用いて加重50g、25℃から昇温速度10℃/分で熱可塑性ポリイミド側からペネトレーション試験を行った場合、350℃での沈み込み量が2.0μm以下となるものである請求項1または2に記載のポリイミド金属積層板。
  4. 非熱可塑性ポリイミド層の総厚みが5〜250μmであり、熱可塑性ポリイミド層の厚さが0.5〜50μmである請求項1〜請求項3のいずれかに記載のポリイミド金属積層板。
  5. 金属が、銅、ニッケル、コバルト、クロム、亜鉛、アルミニウム及びステンレス鋼、並びにそれらの合金からなる群から選ばれた少なくとも1種の金属であり、その厚みが2〜150μmである請求項1〜請求項4のいずれかに記載のポリイミド金属積層板。
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