JP4326608B2 - 被膜形成用樹脂からなる被膜 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気的特性と耐摩耗性に優れ、被膜形成用樹脂に適したポリアリレートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以後ビスフェノールAと記す)の残基とテレフタル酸及びイソフタル酸の残基とから構成されている非晶性ポリアリレートはエンジニアリングプラスチックとして既によく知られている。かかるポリアリレートは耐熱性が高く、衝撃強度に代表される機械的強度や寸法安定性に優れ、加えて非晶性で透明であるために、その成形品は電気・電子、自動車、機械などの分野に幅広く応用されている。
また、ビスフェノールAを原料としたポリアリレート樹脂(以後ビスフェノールAポリアリレートと記す)は、各種溶剤への溶解性と優れた電気的特性(絶縁性、誘電特性等)、耐摩耗性を利用してコンデンサー用のフィルム等の電子部品に、また透明性、耐摩耗性、耐擦傷性を利用して液晶表示装置の各種フィルムやコーティング樹脂の様な被膜を形成する用途への応用が行われている。
【0003】
しかしながら、フィルム等の表面光沢を要求される分野や、コーティング材料など被膜を形成する用途における樹脂の耐摩耗性に対する要求は、ますます厳しいものになり、ビスフェノールAポリアリレートでは、これらの特性が不十分な用途が生じてきている。このような事情からさらに電気的な特性と耐摩耗特性に優れた樹脂が求められている。
【0004】
このような問題を解決する可能性のある被膜形成用樹脂として、特開平9−136946号公報には、実施例として4,4’−ジヒドロキシジフェニルチオエーテルと2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンとテレフタル酸からなり、テトラクロロエタン中での溶液粘度(インヘレント粘度)が0.72であるポリアリレートが開示されている。しかしながら、このポリアリレートにおいては、耐摩耗性については言及されておらず、また、耐摩耗性等の機械的性質に大きく影響する溶液粘度は0.72であり、この値では被膜形成用樹脂としては耐摩耗性が不十分であった。
このような事情から、電気的な特性と耐摩耗性が従来のものよりもさらに優れ、被膜形成用樹脂に適したポリアリレートが求められていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような実状に鑑み、本発明は、従来のものよりもさらに電気的特性及び耐摩耗性に優れ、被膜形成用樹脂に適したポリアリレートを提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはこの様な課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ポリアリレートの電気特性は、ポリアリレートを構成する二価フェノールの2つのベンゼン環をつなぐ結合様式とポリマー末端のカルボキシル価に影響されるという知見を得た。つまり、2価フェノールの2つのベンゼン環の結合がアルキレン基やアルキリデン基のようなαないしβ位に水素原子を持つ結合からなるような二価フェノールに比べて、そのような位置に水素原子を持たない結合からなる二価フェノールは、電気的に安定であること、さらにこのような二価フェノールの中でも2つのベンゼン環が硫黄原子で結合された特定の二価フェノールからなるポリアリレートは、電気特性に優れるのみならず、耐摩耗性にも優れていること、ポリアリレートの末端のカルボキシル価が特定値以上になると、電気特性が低下することを見出し、さらに、樹脂の溶液粘度(分子量)が耐摩耗性に大きく影響するということを見出した。すなわち、特定の二価フェノールからなり、分子量が特定の値以上であり、カルボキシル価が特定量以下であるポリアリレートは、電気特性ならびに耐摩耗性に優れていることを見いだし、本発明に到達した。
【0007】
すなわち、本発明の要旨は、二価フェノールと芳香族ジカルボン酸からなるポリアリレートであって、二価フェノール成分が下記一般式(1)
【0008】
【化2】
【0009】
〔式中、R1 〜R8 は、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4の炭化水素基、炭素数1〜4のアルコキシ基から選ばれる。〕に示す二価フェノールを全二価フェノール中5〜100モル%、及びビスフェノールA、ビスフェノールC、ビスフェノールZから選ばれる1種の二価フェノールを全二価フェノール中95〜0モル%を含むものであり、25℃で1,1,2,2−テトラクロロエタン中で測定した1g/dl濃度におけるインヘレント粘度が0.75以上であり、かつ末端のカルボキシル価が20モル/トン以下であることを特徴とするポリアリレートを用いた耐磨耗性に優れた被膜形成用樹脂からなる被膜。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリアリレートは、二価フェノールと芳香族ジカルボン酸(その機能性誘導体を含む)からなり、二価フェノールが一般式(1)に示す二価フェノールを全二価フェノール中5モル%以上100モル%以下含むものである。すなわち、ポリアリレートを構成する二価フェノール中一般式(1)に示す二価フェノールを5モル%以上、好ましくは10モル%以上含むものであり、二価フェノールの100モル%が一般式(1)に示す二価フェノールであってもよい。
一般式(1)に示す二価フェノールの割合が5モル%未満では、電気特性ならびに耐摩耗性の向上効果が不十分である。〔ただし、一般式(1)中、R1 〜R8 は、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4の炭化水素基、炭素数1〜4のアルコキシ基から選ばれる。〕
【0011】
一般式(1)で示される二価フェノールの具体例としては、4,4’−ジヒドロキシジフェニルチオエーテル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルチオエーテル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルチオエーテル、2,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルチオエーテル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルチオエーテル、3,3’−ジ−tert−ブチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルチオエーテル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルチオエーテル、3,3’,5,5’’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルチオエーテル、3,3’,5,5’’−テトラ−tert−ブチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルチオエーテル、3,3’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルチオエーテル、2,2’−ジヒドロキシジフェニルチオエーテル、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルチオエーテル、3,3’−ジフルオロ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルチオエーテル、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルジフェニルチオエーテル、3,3’,5,5’−テトラフルオロ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルチオエーテル、2,2’,3,3’,5,5’−ヘキサメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルチオエーテル等を挙げることができ、これらは単独又は二種以上を混合して用いてもよい。
【0012】
この中でも、特に好ましいものとしては、4,4’−ジヒドロキシジフェニルチオエーテル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルチオエーテル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルチオエーテル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルチオエーテル、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルチオエーテル、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルジフェニルチオエーテル、2,2’,3,3’,5,5’−ヘキサメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルチオエーテルを挙げることができる。
【0013】
本発明のポリアリレートを構成する一般式(1)で示される二価フェノールと共重合される他の二価フェノールとしては、2−メチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3−メチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2−クロロ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3−クロロ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’−ジ−tert−ブチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルビフェニル、3,3’−ジフルオロ−4,4’−ビフェノール、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル、3,3’,5,5’−テトラフルオロ−4,4’−ビフェノール、2,2’,3,3’,5,5’−ヘキサメチル−4,4’−ビフェノール、
【0014】
ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4−メチル−2−ヒドロキシフェニル)メタン、
ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−sec−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)−2−メチルプロパン、4,4’−〔1,4−フェニレン−ビス(1−メチルエチリデン)〕ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)、1,1−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、2,4’−メチレンビスフェノール、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、
【0015】
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチル−ブタン、ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、3,3−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、3,3−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノナン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、テルペンジフェノール、1,1−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)−2−メチルプロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3,5−ジ−sec−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)エタン、1,1−ビス(3−ノニル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチル−6−メチルフェニル)メタン、1,1−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸ブチルエステル、1,1−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2−ヒドロキシ−5−フルオロフェニル)メタン、
【0016】
2,2−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルメタン、1,1−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)−1−(p−フルオロフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−(p−フルオロフェニル)メタン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ニトロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジメチルシラン、ビス(2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、1,1−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、
【0017】
1,1−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸メチルエステル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸エチルエステル、2,2’,3,3’,5,5’−ヘキサメチル−4,4’−ビフェノール、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、2,4’−メチレンビスフェノール、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(2−ヒドロキシ−3−アリルフェニル)メタン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(2ーヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)エタン、ビス(2−ヒドロキシ−5−フェニルフェニル)メタン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタデカン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタデカン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタデカン、1,2−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)メタン、2,2−ビス(3−スチリル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
【0018】
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−(p−ニトロフェニル)エタン、ビス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルメタン、ビス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチル−5−メチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチル−5,5−ジメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチル−4−メチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチル−5−エチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチル−5−メチル−シクロペンタン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチル−5−メチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジフェニル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチル−5−メチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチル−5−メチル−シクロヘキサン、
【0019】
1,1−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチル−5−メチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチル−5−メチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチル−5−メチル−シクロヘキサン、1,4−ジ(4−ヒドロキシフェニル)−p−メンタン、1,4−ジ(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−p−メンタン、1,4−ジ(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−p−メンタン等のテルペンジフェノール類等を挙げることができる。こられは必ずしも1種類で用いる必要はなく、2種類以上共重合してもよい。これらの中でも特に好ましい二価フェノールとしては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールC)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン(ビスフェノールAP)が挙げられる。
【0020】
また、ポリアリレートの電気的特性や溶解性を損なわない範囲で共重合する二価フェノールを、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ドデカンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジオール、1,4−ジヒドロキシメチルシクロヘキサン等の二価アルコールで置き換えてもよい。
【0021】
本発明のポリアリレートを製造する際に用いられる二価のカルボン酸を例示すると、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、3−tert−ブチルイソフタル酸、ジフェン酸、4,4’−ジカルボキシジフェニルエーテル、ビス(p−カルボキシフェニル)アルカン、4,4’−ジカルボキシフェニルスルホンなどの芳香族ジカルボン酸が挙げられる。これらの二価のカルボン酸は、1種類で用いることもできるし、2種類以上で併用することも可能である。特に好適に用いることができる二価のカルボン酸としては、テレフタル酸とイソフタル酸の等量混合物である。なお、ポリアリレートを構成する二価のカルボン酸として、これらの二価のカルボン酸ハライド等の機能性誘導体を含む。
【0022】
また、本発明のポリアリレートの末端は、フェノール、クレゾール、p−tert−ブチルフェノール、o−フェニルフェノールなどの一価のフェノール類、安息香酸クロライド、メタンスルホニルクロライド、フェニルクロロホルメートなどの一価の酸クロライド類、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ドデシルアルコール、ステアリルアルコール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコールなどの一価のアルコール類、酢酸、プロピオン酸、オクタン酸、シクロヘキサンカルボン酸、安息香酸、トルイル酸、フェニル酢酸、p−tertーブチル安息香酸、p−メトキシフェニル酢酸などの一価のカルボン酸などで封止されていてもよい。
【0023】
さらに、本発明のポリアリレートは必ずしも直鎖状の樹脂である必要はなく、3官能以上の物質を重合時に本発明の効果を損なわない範囲で添加して分岐構造が導入されていてもよい。
【0024】
ポリアリレートの分子量は、製造時、前記末端封止材料の添加量によってコントロールすることができる。分子量の目安となるインヘレント粘度は、テトラクロロエタンを粘度測定溶媒に用い、25℃における1g/dl溶液の粘度を測定することによって得られる。本発明のポリアリレートのインヘレント粘度は0.75以上の範囲にある。好ましくは0.85〜2.5である。インヘレント粘度が0.75未満であると耐摩耗性が不十分な場合があり、一方2.5を超えるとコーティングに用いる場合に、曳糸性が生じたり、コーティング時に調製する溶液の粘度が上昇して取扱いが困難になる傾向があるので好ましくない。
【0025】
さらに、本発明の樹脂のカルボキシル価は20モル/トン以下であることが必須である。カルボキシル価は、耐アーク性や誘電率など電気的な特性に影響を与えるため、15モル/トン以下にすることが好ましい。カルボキシル価が20モル/トンを越えると、樹脂の電気特性が低下するので好ましくない。樹脂のカルボキシル価は、電位差滴定装置を利用した中和滴定など公知の方法で測定することができる。
【0026】
本発明のポリアリレートは公知の方法で製造できるが、水と相溶しない有機溶剤に溶解せしめた二価のカルボン酸ハライドとアルカリ水溶液に溶解せしめた二価のフェノールとを混合する界面重合法(W.M.EARECKSON J.Poly.Sci.XL399 1959年、特公昭40−1959号公報)が好適に採用される。界面重合法は、溶液重合法と比較して反応が速く、そのため酸ハライドの加水分解を最小限に抑えることが可能であり、特に後述する重合触媒を選ぶことにより、本発明のような高分子量のポリマーを得る場合には有利である。
【0027】
界面重合法での製造方法を詳細に説明する。
まず、二価フェノールのアルカリ水溶液を調製し、続いて、重合触媒を添加する。
重合触媒としては、分子量が高くカルボキシル価の低いポリマーが得られるものであれば特に限定はされないが、トリブチルベンジルアンモニウムハライド、テトラブチルアンモニウムハライドなどの第四級アンモニウム塩、トリブチルベンジルホスホニウムハライドテトラブチルホスホニウムハライドなどの第四級ホスホニウム塩が反応速度が速く、酸ハライドの加水分解を最小限に抑えて高分子量でカルボキシル価の低いポリマーを与える点で好ましい。第四級アンモニウム塩のアルキル鎖の短いトリメチルベンジルアンモニウムハライド、トリメチルベンジルホスホニウムハライドでは、高分子量で低カルボキシル価のポリマーを得ることができないので、好ましくない。
【0028】
一方、水と相溶せず、かつポリアリレートを溶解するような溶媒、例えば塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、o−、m−,p−ジクロロベンゼンなどの塩素系溶媒、トルエン、ベンゼン、キシレンなどの芳香族系炭化水素などに二価のカルボン酸ハライドを溶解させた溶液を先のアルカリ溶液に添加して混合する。25℃以下の温度で1時間〜5時間撹拌しながら反応させることによって、本発明のポリアリレートを得ることができる。ここで用いることができるアルカリには、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等がある。
【0029】
本発明のポリアリレートは、実質的に非晶性であり、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、トルエン等の汎用溶媒への高い溶解性を示すので、これらの溶媒に溶解して塗工液とすることができる。塗工液を製造する際、ポリアリレートをこれらの溶媒に、10重量%以上完溶して用いることが好ましい。
本発明のポリアリレートには、その特性を損なわない範囲で、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、チオエーテル系、燐系等各種酸化防止剤を添加することができる。また、各種性能を付与するために、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、金属粉などの導電性フィラーやシリカやタルクなど各種フィラーを添加することもできる。
本発明のポリアリレートは、塗工液のバインダー樹脂やソルベントキャストフィルム用樹脂等の被膜形成用の樹脂として、特に電気・電子材料分野へ好適に利用することができる。
【0030】
【実施例】
次に、本発明を実施例、参考例及び比較例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の思想を逸脱しない範囲で種々の変形及び応用が可能である。
【0031】
実施例1
撹拌装置を備えた反応容器中に3,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルチオエーテルを41.2重量部、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン100重量部、p−tert−ブチルフェノール1.5重量部、水酸化ナトリウム56.5重量部、トリブチルベンジルアンモニウムクロライド2.3重量部を仕込み、水3749重量部に溶解した(水相)。これとは別に塩化メチレン2867重量部に、テレフタル酸クロライド/イソフタル酸クロライド=1/1混合物114重量部を溶解した(有機相)。この有機相を先に調製した水相中に強撹拌下で添加し、3時間重合反応を行った。この後酢酸30重量部を添加して反応を停止し、水相と有機相を分離し、有機相が中性となるまで水洗を繰り返し、有機相をメタノール中に添加して、ポリマーを沈澱させた。このポリマーを分離乾燥して3,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルチオエーテル単位を30モル%含むポリアリレートを得た。
【0032】
実施例2〜9、比較例1〜3、5
実施例1の二価フェノールの仕込みを変える他は、実施例1と同様にポリアリレートを製造した。表1に二価フェノールの仕込み条件を示した。
【0033】
比較例4
実施例1において、トリブチルベンジルアンモニウムクロライドのかわりにトリメチルベンジルアンモニウムクロイライドを用いた以外は全て実施例1と同様に行った。
【0034】
樹脂の評価
上記の様に合成した樹脂の物性を評価した。この結果を表2に示す。なお評価は次の方法を用いて行った。
1)インヘレント粘度
溶媒として1,1,2,2−テトラクロロエタンを用い、温度25℃、濃度1g/dlの条件で行った。
2)カルボキシル価
試験管に樹脂0.15gを精秤し、ベンジルアルコール5mlに加熱溶解し、クロロフォルム10mlとポリマーのベンジルアルコール溶液とを混合した後フェノールレッドを指示薬として加え、撹拌しながら0.1N−KOHベンジルアルコール溶液で中和滴定を行ってカルボキシル価を求めた。
【0035】
3)耐摩耗性
樹脂を塩化メチレンに溶解し、樹脂15重量%含有する塗工液を調製し、厚み100μmのキャストフィルムを作製した。このフィルムについて、テーバー摩耗試験機(摩耗輪CS−10F)を用い、荷重250gで10000サイクル試験後の重量減少(摩耗量)を測定し、耐摩耗性の指標とした。
4)誘電率
前記3)で調製したポリアリレートの塩化メチレン溶液から厚み50μmの溶媒キャストフィルムを作製した。このフィルムを試験片として、ASTM D−150に従って1MHzで測定を行った。
5)絶縁破壊電圧
4)と同じ厚み50μmのポリアリレートフィルムを用いて、ASTM D149に従って測定を行った。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
以上の結果から、次のことが明らかになった。
1)比較例1〜3と実施例1〜9の比較から、本発明のポリアリレートは二価フェノールがチオエーテル結合を有する二価フェノールが単独で用いられているか、もしくはこの二価フェノールが特定の割合で共重合されているので、耐摩耗性ならびに電気的な特性に優れている。
2)比較例4、5と実施例1〜9の比較から、本発明のポリアリレートは分子量が高く耐摩耗性に優れている。
3)比較例4と実施例1〜9の比較から、本願発明のポリアリレートはカルボキシル価が低いので、電気的な特性に優れている。
【0039】
【発明の効果】
以上のように、本発明のポリアリレートは、電気的な特性ならびに耐摩耗性に優れている。また、溶媒に可溶であるので、容易に塗工液とすることができ、キャストフィルムや被膜を容易に得ることができる。したがって、本発明のポリアリレートは、電気機器、モータ、発電機、相間絶縁等の絶縁材料、変圧器、電線の被覆、コンデンサなどの誘電体フィルムとして、あるいは、表面被覆材など被膜を形成させて用いる分野に好適に利用できる。また、電気的な特性ならびに耐摩耗性に加えて、透明性にも優れているので、これらの特性を利用して液晶の表示板や各種基盤などへも好適に利用できる。
Claims (1)
- 二価フェノールと芳香族ジカルボン酸からなるポリアリレートであって、二価フェノール成分が下記一般式(1)
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