JP4325897B2 - コモンモードチョークコイル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、デジタル信号処理時に誘起されるコモンモードノイズ対策や電源ラインノイズ対策用のコモンモードチョークコイル用フェライト焼結体、およびそのコモンモードチョークコイルに樹脂モールドを施してなるコモンモードノイズフィルタに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、情報通信技術の発達、あるいは、多様な電気機器の普及に伴い、電磁ノイズの発生が問題となっている。デジタル信号ラインや電源ラインに使用されるコモンモードチョークコイルは、ノイズ対策に必要な部品の1つである。特に最近は、機器に内蔵される電子回路の高速化、高周波化と、機器の小型化に伴う電子部品の高密度実装化により、コモンモードチョークコイルの使用は増加している。
コモンモードチョークコイルは1つの閉磁路を構成するコアに2本の導線を巻きつけたもので、コアの材質にはフェライト焼結体が使用されることが多い。コモンモードチョークコイル用フェライト焼結体には、ノイズ除去に必要なインピーダンスが高い材料であることが求められる。高いインピーダンスを得るためには、初透磁率が高い材料を選択することが有効な方法の1つである。また、コモンモードチョークコイル用フェライト焼結体には、ノイズ除去時に発生する熱や様々な使用環境下でも誤作動しないような高いキュリー点も望まれる。
コモンモードチョークコイルをはじめとして様々な電子部品は、その耐湿性あるいは耐衝撃性といった信頼性の確保の点から耐熱性の樹脂をモールドすることが多い。このモールド用の樹脂は硬化する際にフェライト焼結体に応力を負荷する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来、このようなコモンモードチョークコイル用フェライト焼結体には、NiCuZnフェライトが用いられてきた。しかし、従来からコモンモードチョークコイルに用いられているNiCuZnフェライト焼結体では、高いインピーダンスを得るために初透磁率を高くすると、コアに樹脂モールドを施した際に発生する外部応力により初透磁率が著しく低下する。
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、樹脂モールドが施され外部応力が負荷されても初透磁率の低下の少ないフェライト焼結体の提供を課題とする。また本発明は、そのようなフェライト焼結体を用いたコモンモードチョークコイルの提供を課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者は前記課題を解決することができるかについて種々検討を行った。その結果、特定の組成を有するNiMgCuZnフェライト焼結体により前記課題を解決できることが判明した。そして、その焼結体について微細構造を詳細に観察したところ、結晶粒径が特定の範囲にあり、しかも、偏析物が存在するNiMgCuZnフェライト焼結体が応力負荷による初透磁率の劣化が少なく、しかも応力が負荷された状態での初透磁率が高いことを知見した。
【0005】
本発明は以上の知見に基づくものであり、酸化鉄48〜48.5モル%、酸化ニッケル5〜14モル%、酸化マグネシウム1〜8モル%、酸化銅5〜10モル%、酸化亜鉛26〜30.5モル%の組成を有し、粒界または三重点にFeの含有量が10at%以下、Cuの含有量が50at%以下(0を含まず)である(Ni,Mg,Cu,Zn,Fe)Oの偏析が面積比で7〜9%の範囲で存在し、平均粒径が5〜18μmの範囲であるNiMgCuZnフェライト焼結体コアと、前記NiMgCuZnフェライト焼結体コアをモールドする樹脂モールド層と、を備えたことを特徴とするコモンモードチョークコイルにより前記課題を解決した。
【0007】
本発明によれば、周波数100kHz、温度25℃において、初透磁率μiが800以上、40MPaの圧縮応力を加えた時の初透磁率をμi40MPaとしたとき、初透磁率の低下率Δμが40%以下(ただし、Δμ=(μi−μi40MPa)/μi×100)という優れた特性を持つコモンモードチョークコイル用のNiMgCuZnフェライト焼結体コアが得られる。
【0008】
ところで、NiMgCuZnフェライト焼結体はこれまで、様々な分野で使用されている。たとえば、特開平1−212234号公報には、偏向ヨークとしての使用を目的とし、酸化ニッケル10.5〜14モル%、酸化銅6〜11モル%、酸化亜鉛26.5〜29モル%、酸化鉄45〜50モル%、酸化マンガン0〜2モル%、酸化マグネシウム0〜3モル%、酸化チタンを0〜3モル%からなる高低抗率及び低損失のNiMgCuZnフェライト焼結体が開示されている。
また、特公昭51−48275号公報には、アンテナ磁心としての使用を目的とし、酸化ニッケル5〜8モル%、酸化マグネシウム10〜15モル%、酸化銅5〜7モル%、酸化亜鉛20〜27モル%、酸化鉄46〜49モル%の組成を選択し、さらに酸化クロム0.3〜2.5質量%と酸化バナジウム0.1〜0.6重量%を同時に添加した、低温度係数および低損失のNiMgCuZnフェライト焼結体が開示されている。
さらに、特公昭58−48052号公報には、温度係数補償用コンデンサーと組み合わせて使用することを目的とし、酸化マグネシウム0〜25モル%、、酸化銅2〜12モル%、酸化亜鉛25〜34モル%、酸化鉄46〜50モル%、酸化コバルト0〜1モル%、酸化ニッケルを残部とする高温度係数および高初透磁率のNiMgCuZnフェライト焼結体が開示されている。
これら従来のNiMgCuZnフェライト焼結体は、本発明が提案するNiMgCuZnフェライト焼結体と類似する組成を有している。しかし、従来のNiMgCuZnフェライト焼結体を、コモンモードチョークコイルに適用しようという提案はなされていない。また、本発明は応力と偏析物との関係を見出し、この偏析物を積極的に利用する点に特徴を有しているが、上記先行技術にそのような開示、示唆は見当たらない。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態について報告する。
<偏析物について>
はじめに本発明の最も特徴的な要件である偏析物について説明する。
本発明のコモンモードチョークコイル用フェライト焼結体は、粒界や三重点に(Ni,Mg,Cu,Zn,Fe)Oの偏析が面積比で7〜9%の範囲で存在することを特徴とする。
この偏析物は、非磁性であり、10at%以下の鉄(0を含む)、50at%以下(0を含まず)の銅を含有し、ニッケル、マグネシウム、亜鉛の量は焼結体の組成によって変動する。
偏析物の量は焼結体の組成、焼成条件等により変化し、特に酸化鉄量の影響が大きい。また、偏析物の量の変化は磁気特性に大きな影響を与える。
例えば、酸化鉄量により偏析物量を変えた場合、(Ni,Mg,Cu,Zn,Fe)Oの面積比が上記の範囲よりも少なければ外部応力による影響を受けやすく、樹脂モールドによるインピーダンスの顕著な低下を招く。反対に多すぎると非磁性相が増加することにより十分なインピーダンスが得られない。
また、酸化鉄量以外の何らかの要因で偏析物(Ni,Mg,Cu,Zn,Fe)Oの面積比が上記の範囲を外れる場合、樹脂モールドによる影響を受けやすいか、または、十分なインピーダンスが得られない。
具体的には、焼成温度が低いなどの要因により(Ni,Mg,Cu,Zn,Fe)Oの偏析が上記の範囲より少ない場合には十分なインピーダンスが得られない。また、焼成温度が高い等の要因により(Ni,Mg,Cu,Zn,Fe)Oの偏析が多い場合、樹脂モールドによる影響を受けやすいか、または満足するインピーダンスが得られない。また、非磁性相が多くなること、不連続粒成長により粒子内にポアが残留することが影響してくる。また、このような場合、フェライトの主成分であるCuが顕著に偏析しやすく、フェライト粒内の組成が設計した値と外れ、満足するインピーダンスが得られない。
【0010】
<組成について>
次に本発明フェライト焼結体の組成について説明する。
本発明のフェライト焼結体は、酸化鉄(Fe2O3)を48〜48.5モル%含む。上記の範囲を外れた酸化鉄量領域では適量の偏析物が得られず、樹脂モールドによる影響を受けやすい、もしくは、高いインピーダンスが得られない。具体的には、酸化鉄量が上記の範囲より多い場合、粒界や三重点に(Ni,Mg,Cu,Zn,Fe)Oの偏析が満足に得られず、樹脂モールドによる影響を受けインピーダンスの顕著な低下を招く。酸化鉄量が上記の範囲より少ない場合、(Ni,Mg,Cu,Zn,Fe)Oの偏析が顕著に現れ非磁性相が多くなり、満足するインピーダンスが得られなくなるとともに、キュリー点の低下を来す。
【0011】
酸化ニッケルの量が少ないと初透磁率の劣化度が大きくなり本発明の目的に合致しないため5モル%以上とした。しかし、酸化ニッケルの量が多くなりすぎると初透磁率が低くなるため上限を15モル%とした。酸化ニッケルの量は5〜14モル%が望ましく、8〜14%がさらに望ましい。
酸化マグネシウムを含まなければ、(Ni,Mg,Cu,Zn,Fe)O化合物からなる偏析物が得られず、樹脂モールドによる影響を受けやすいので、本発明では1〜8モル%の酸化マグネシウムを含む。
【0012】
酸化銅量が5モル%未満では初透磁率の低下を来し、高いインピーダンスが得られない。また、酸化銅量が10モル%を越えると焼結体における結晶粒が成長しやすくなり、応力による初透磁率の劣化度が大きくなる。したがって本発明では5〜10モル%、さらに望ましくは6〜8モル%である。
酸化亜鉛は、26モル%未満であると初透磁率の低下を来し、高いインピーダンスが得られない。また、酸化亜鉛量が30.5モル%を越えるとキュリー点の低下を来す。従って、酸化亜鉛は26〜30.5モル%が望ましい。
【0013】
<結晶粒径について>
本発明において、焼結体の結晶粒径も外部応力による初透磁率の劣化度に影響を及ぼす。つまり、平均結晶粒径が大きくなると外部応力による初透磁率の劣化度が大きくなる。しかも満足するインピーダンスを得ることが困難となる。これは粒径が大きくなると磁壁の移動の関与が大きくなることが関係する。このような場合、磁壁の移動は樹脂モールドなどの外部応力の影響を受けやすく、安定した特性を得にくくなる。また、平均結晶粒径が小さすぎると満足するインピーダンスが得られない。これはフェライト結晶粒子が小さいと磁壁の移動による透磁率への寄与があまり得られないからである。したがって、本発明では平均結晶粒径を5〜18μmの範囲とする。望ましい粒径は7〜15μm、さらに望ましくは8〜12μmである。
焼結体の結晶粒径は焼成温度により変動する。つまり、焼成温度が低くなると結晶粒径が小さく、また、焼成温度が高くなると結晶粒径が大きくなる傾向にある。したがって、焼成温度を設定する場合にはこの点をも考慮する必要がある。
【0014】
<初透磁率の劣化度等の特性>
本発明にかかるフェライト焼結体は、周波数100kHz、温度25℃において、初透磁率μiが800以上、40MPaの圧縮応力を加えたときの初透磁率をμi40MPaとしたとき、初透磁率の低下率Δμが40%以下(ただし、Δμ=(μi−μi40MPa)/μi×100)であり、キュリー点が120℃以上という優れた特性を備えている。これは、偏析物、組成および焼結体の結晶粒径サイズが前述の条件に合致した場合に得られる特性である。このような特性は、従来のNiMgCuZnフェライト焼結体において認識されておらず、新規な規定である。この初透磁率の劣化度Δμは値が低いことが望ましく、本発明では30%、さらには20%以下という低い値を得ることができる。
【0015】
<その他について>
本発明の焼結体を製造するには、基本的には従来公知のフェライト焼結体の製造方法を適用すればよい。ただし、焼結体中の偏析物、結晶粒径を本発明で提案する範囲内とするためには、前述したように焼成温度を管理する必要がある。また、本発明のコモンモードチョークコイルを製造する場合にも、従来公知のコモンモードチョークコイルの形態、製造方法に従えばよい。
本発明のフェライト焼結体は、樹脂モールドによる外部応力の影響を受けにくく、かつ、ノイズ除去に必要なインピーダンスが高く、高いキュリー点が得られる。ただし、本発明のフェライト焼結体は、樹脂モールドを施し使用するとは限らない。例えば、ケーブルやコネクタ部に装着し、高周波の不要輻射ノイズを吸収する電磁波吸収部材等として用いることができる。また、本発明のフェライト焼結体は、コモンモードチョークコイルに限らずさまざまな用途に用いることができる。
【0016】
【実施例】
(実施例1)
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
焼成後の組成が下記の範囲内となるように各成分を秤量し、鋼鉄製ボールミルで16時間湿式混合した。
酸化鉄 (Fe2O3) : 46〜52モル%
酸化ニッケル (NiO) : 3〜19モル%
酸化マグネシウム (MgO) : 0〜16モル%
酸化銅 (CuO) : 3〜12モル%
酸化亜鉛 (ZnO) : 25〜31モル%
次にこの混合粉を大気中900℃で2時間仮焼成し、次いで、鋼鉄製ボールミルで湿式粉砕した。こうして得たNiMgCuZnフェライト粉に有機バインダーを添加して造粒し、目的の形状に成形した。この成形体を大気中において、950〜1300℃で3時間焼成して表1に示す試料No.1〜24の焼結体を得た。
これら焼結体について、25℃、100kHzにおける初透磁率μi、25℃、100kHz、圧縮応力40MPaを負荷したときの初透磁率μi40MPa、およびキュリー点を測定した。また、初透磁率μiおよび初透磁率μi40MPaより応力負荷時の初透磁率の劣化度Δμを算出した。その結果を表1に示す。なお、 初透磁率μi、μi40MPaは、角形のトロイダル形状(外周:20×9mm,内周6×4mm,厚さ5mm)の焼結体に20turnの巻き線を施し、μi40MPaについては応力試験器で長手方向に応力を加えながら、LCRメータでインダクタンスを測定した。応力40MPaにおける初透磁率の劣化度Δは、以下の式から求めた。
Δμ=(μi−μi40MPa)/μi×100(%)
μi :圧縮応力 0MPaにおける初透磁率
μi40MPa :圧縮応力40MPaにおける初透磁率
【0017】
【表1】
【0018】
表1において、試料No.1〜5は、この順で酸化ニッケル量が減少している。表1より、初透磁率μiは酸化ニッケル量が少なくなるほど高くなる。初透磁率の劣化度Δμは酸化ニッケルの量が多くなるほど、つまり酸化鉄を酸化ニッケルで置換する量が多くなるほど改善される傾向にある。酸化鉄の量として捉えると、酸化鉄量の少ない試料No.1は初透磁率μiの劣化度Δμが小さく、一方酸化鉄の多い試料No.5は初透磁率μiの劣化度Δμが大きくなる。また、キュリー点は酸化ニッケル量が少ないほど高くなる。
試料No.6〜9は、この順で酸化マグネシウム量が減少する。酸化ニッケルと同様に、初透磁率μiの劣化度Δμは酸化マグネシウム量が少なくなるほど高くなる。初透磁率の劣化度Δμは酸化ニッケルの量が多くなるほど、つまり酸化鉄を酸化マグネシウムで置換する量が多くなるほど改善される傾向にある。また、キュリー点は酸化マグネシウム量が少ないほど高くなる。試料No.16は酸化マグネシウム量が15.9モル%と多いために、キュリー点が113℃と低くなっている。
【0019】
試料No.10〜14において、酸化銅の量を増加することで初透磁率μiを増大させることができることがわかる。しかし、酸化銅量が多すぎると初透磁率の劣化度Δμが極度に低下する(試料No.14)。
また、酸化亜鉛量について着目すると、酸化亜鉛量が多すぎるとキュリー点の低下を招くことがわかる(試料No.24)。逆に酸化亜鉛量が25モル%と少なくなると、初透磁率μiが低くなる(試料No.15)。
酸化銅と酸化亜鉛の両者を適度に含有することで、高い初透磁率μi、抑制された初透磁率の劣化度Δμ、および高いキュリー点を同時に得られることがわかる(試料No.11〜13、17〜22)。
【0020】
表1の試料No.1〜5および11〜14について偏析物の面積比(%)および焼結体の結晶粒径(μm)を測定した。偏析物の面積比は、焼結体断面に鏡面研磨を施して200×200μmの視野をEPMAで観察し、偏析物の面積を求めた。結晶粒径については、鏡面研磨を施した焼結体断面をフッ酸水溶液でエッチングした後、光学顕微鏡で写真を撮り、画像解析装置を用いて結晶粒200個程度の平均値(円相当径)を求めた。
表2に示されるように、偏析物の面積比が小さいほど初透磁率μiは高くなるが、初透磁率の劣化度Δμは悪化する傾向にある(試料No.1〜5参照)。試料No.5のように偏析物の面積比が2.5%と少なくなると初透磁率の劣化度Δμは55%にも達する。一方、偏析物の面積比が大きくなると初透磁率の劣化度Δμは改善される。また、偏析物の面積比が同程度であっても、酸化銅量が多くなると結晶粒径が大きくなり、それにつれて初透磁率の劣化度Δμが低下する傾向にある(試料No.11〜14参照)。
【0021】
【表2】
【0022】
試料No.3について、偏析物の組成分析を行った。分析は、TEM−EDSによる点分析で6つの異なる偏析物A〜Fについて行った。その結果を表3に示す。
表3に示す結果から、偏析物はおおむね、Ni:30at%以下、Mg:30at%以下、Zn:20at%以下、Fe:10at%以下、Cu:0〜50at%である。また、さらに詳細に見ると、Cuの含有量が30〜50at%のもの(A〜D)と10at%以下のもの(E,F)の2つの相が存在する。
【0023】
【表3】
【0024】
次に、焼成温度による偏析物の面積比および焼結体の平均結晶粒径の変動を確認する実験を行った。
組成は、酸化鉄(Fe2O3):48.3モル%、酸化ニッケル(NiO):13.1モル%、酸化マグネシウム(MgO):1.4モル%、酸化銅(CuO):7.1モル%、酸化亜鉛(ZnO):30.1モル%であり、焼成温度は表4に示すように、1000℃、1020℃、1140℃、1160℃および1200℃の5種類とした。
得られた焼結体(試料No.25〜29)について、以上と同様に偏析物の面積比および焼結体の結晶粒径を測定した。その結果を表3に併せて示す。
表3より焼成温度が高くなるにつれて偏析物の面積比が高くなり、また結晶粒径も大きくなることが判る。それにしたがって初透磁率μiは高くなるが、初透磁率の劣化度は大きくなる。したがって、表2に示した結果も考慮すると、本発明で提案したように、偏析物の面積を7〜9%、結晶粒径を5〜18μmの範囲に調整することが必要なことがわかる。
【0025】
【表4】
【0026】
表1に示した試料No.3、5および20によるトロイダル形状のフェライトコアに樹脂モールドを施した。樹脂モールド前の初透磁率μi、樹脂モールド後の初透磁率の劣化度ΔμMおよび樹脂モールド前後の10MHzにおけるインピーダンス|Z|の値を測定した。その結果を表5に示す。本発明のコモンモードチョークコイル用フェライト焼結体は、樹脂モールドした場合においても比較例に比べインピーダンスの値が大きいことが分かる。また、本発明のコモンモードチョークコイル用フェライト焼結体は、樹脂モールドを施してない場合でも比較的高いインピーダンスが得られる。
【0027】
【表5】
【0028】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明のコモンモードチョークコイル用フェライト焼結体は、初透磁率が高くなおかつ応力による初透磁率の変化が小さいため、樹脂モールドしても高いインピーダンスが得られる。また、キュリー点も高い。従って、本発明のコモンモードチョークコイル用フェライト焼結体を使用することにより高性能なコモンモードチョークコイル、ノイズ吸収部材の製造が可能となる。
Claims (2)
- 酸化鉄48〜48.5モル%、酸化ニッケル5〜14モル%、酸化マグネシウム1〜8モル%、酸化銅5〜10モル%、酸化亜鉛26〜30.5モル%の組成を有し、粒界または三重点にFeの含有量が10at%以下、Cuの含有量が50at%以下(0を含まず)である(Ni,Mg,Cu,Zn,Fe)Oの偏析が面積比で7〜9%の範囲で存在し、平均粒径が5〜18μmの範囲であるNiMgCuZnフェライト焼結体コアと、
前記NiMgCuZnフェライト焼結体コアをモールドする樹脂モールド層と、を備えたことを特徴とするコモンモードチョークコイル。 - 前記NiMgCuZnフェライト焼結体コアは、周波数100kHz、温度25℃の初透磁率μiが800以上、かつ0〜40MPaの圧縮応力を加えた時の初透磁率の変化率が40%以下であり、キュリー点が120℃以上であることを特徴とする請求項1に記載のコモンモードチョークコイル。
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