JP2001284117A - コモンモードチョークコイル、コモンモードチョークコイル用フェライト焼結体 - Google Patents

コモンモードチョークコイル、コモンモードチョークコイル用フェライト焼結体

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JP2001284117A JP2000095479A JP2000095479A JP2001284117A JP 2001284117 A JP2001284117 A JP 2001284117A JP 2000095479 A JP2000095479 A JP 2000095479A JP 2000095479 A JP2000095479 A JP 2000095479A JP 2001284117 A JP2001284117 A JP 2001284117A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 樹脂モールドが施され外部応力が負荷されて
も初透磁率の低下の少ないフェライト焼結体を用いたコ
モンモードチョークコイルを提供する。 【解決手段】 酸化鉄48〜49モル%のNiMgCu
Znフェライトを主組成物とし、粒界または三重点に
(Ni,Mg,Cu,Zn,Fe)Oの偏析が面積比で
3.5〜9%の範囲で存在し、平均粒径が5〜18μmの
範囲であるNiMgCuZnフェライト焼結体コアと、
前記NiMgCuZnフェライト焼結体コアをモールド
する樹脂モールド層と、を備えている。前記NiMgC
uZn系フェライト焼結体コアは、周波数100kHz、
温度25℃の初透磁率をμi、周波数100kHz、温度2
5℃、40MPaの圧縮応力を負荷したときの初透磁率を
μi40MP a、としたときの初透磁率の劣化度Δμ(ただ
し、Δμ=(μi−μi40MPa)/μi×100)が40%
以下である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、デジタル信号処理
時に誘起されるコモンモードノイズ対策や電源ラインノ
イズ対策用のコモンモードチョークコイル用フェライト
焼結体、およびそのコモンモードチョークコイルに樹脂
モールドを施してなるコモンモードノイズフィルタに関
する。
【0002】
【従来の技術】近年、情報通信技術の発達、あるいは、
多様な電気機器の普及に伴い、電磁ノイズの発生が問題
となっている。デジタル信号ラインや電源ラインに使用
されるコモンモードチョークコイルは、ノイズ対策に必
要な部品の1つである。特に最近は、機器に内蔵される
電子回路の高速化、高周波化と、機器の小型化に伴う電
子部品の高密度実装化により、コモンモードチョークコ
イルの使用は増加している。コモンモードチョークコイ
ルは1つの閉磁路を構成するコアに2本の導線を巻きつ
けたもので、コアの材質にはフェライト焼結体が使用さ
れることが多い。コモンモードチョークコイル用フェラ
イト焼結体には、ノイズ除去に必要なインピーダンスが
高い材料であることが求められる。高いインピーダンス
を得るためには、初透磁率が高い材料を選択することが
有効な方法の1つである。また、コモンモードチョーク
コイル用フェライト焼結体には、ノイズ除去時に発生す
る熱や様々な使用環境下でも誤作動しないような高いキ
ュリー点も望まれる。コモンモードチョークコイルをは
じめとして様々な電子部品は、その耐湿性あるいは耐衝
撃性といった信頼性の確保の点から耐熱性の樹脂をモー
ルドすることが多い。このモールド用の樹脂は硬化する
際にフェライト焼結体に応力を負荷する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来、このようなコモ
ンモードチョークコイル用フェライト焼結体には、Ni
CuZnフェライトが用いられてきた。しかし、従来か
らコモンモードチョークコイルに用いられているNiC
uZnフェライト焼結体では、高いインピーダンスを得
るために初透磁率を高くすると、コアに樹脂モールドを
施した際に発生する外部応力により初透磁率が著しく低
下する。本発明は、上記のような事情に鑑みてなされた
ものであり、樹脂モールドが施され外部応力が負荷され
ても初透磁率の低下の少ないフェライト焼結体の提供を
課題とする。また本発明は、そのようなフェライト焼結
体を用いたコモンモードチョークコイルの提供を課題と
する。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者は前記課題を解
決することができるかについて種々検討を行った。その
結果、特定の組成を有するNiMgCuZnフェライト
焼結体により前記課題を解決できることが判明した。そ
して、その焼結体について微細構造を詳細に観察したと
ころ、結晶粒径が特定の範囲にあり、しかも、偏析物が
存在するNiMgCuZnフェライト焼結体が応力負荷
による初透磁率の劣化が少なく、しかも応力が負荷され
た状態での初透磁率が高いことを知見した。
【0005】本発明は以上の知見に基づくものであり、
酸化鉄48〜49モル%のNiMgCuZnフェライト
を主組成物とし、粒界または三重点に(Ni,Mg,C
u,Zn,Fe)Oの偏析が面積比で3.5〜9%の範
囲で存在し、平均粒径が5〜18μmの範囲であるNi
MgCuZnフェライト焼結体コアと、前記NiMgC
uZnフェライト焼結体コアをモールドする樹脂モール
ド層と、を備えたことを特徴とするコモンモードチョー
クコイルにより前記課題を解決した。
【0006】本発明は以上のコモンモードチョークコイ
ルにより好適なフェライト焼結体として、酸化鉄:48
〜49モル%、酸化ニッケル:5〜14モル%、酸化マ
グネシウム:14モル%以下(0を含まず)、酸化銅:
5〜10モル%、酸化亜鉛:26〜30.5モル%の組
成を有するコモンモードチョークコイル用フェライト焼
結体を提供する。この焼結体には偏析物である(Ni,
Mg,Cu,Zn,Fe)Oが、粒界または三重点に存
在し、その偏析物の組成はFe:10at%以下、C
u:50at%以下(ただし、Cuは0を含まず)とす
ることが望ましい。
【0007】本発明によれば、周波数100kHz、温度
25℃において、初透磁率μiが800以上、40MPa
の圧縮応力を加えた時の初透磁率をμi40MPaとしたと
き、初透磁率の低下率Δμが40%以下(ただし、Δμ
=(μi−μi40MPa)/μi×100)という優れた特性
を持つコモンモードチョークコイル用フェライト焼結体
が得られる。
【0008】ところで、NiMgCuZnフェライト焼
結体はこれまで、様々な分野で使用されている。たとえ
ば、特開平1−212234号公報には、偏向ヨークと
しての使用を目的とし、酸化ニッケル10.5〜14モ
ル%、酸化銅6〜11モル%、酸化亜鉛26.5〜29
モル%、酸化鉄45〜50モル%、酸化マンガン0〜2
モル%、酸化マグネシウム0〜3モル%、酸化チタンを
0〜3モル%からなる高低抗率及び低損失のNiMgC
uZnフェライト焼結体が開示されている。また、特公
昭51−48275号公報には、アンテナ磁心としての
使用を目的とし、酸化ニッケル5〜8モル%、酸化マグ
ネシウム10〜15モル%、酸化銅5〜7モル%、酸化
亜鉛20〜27モル%、酸化鉄46〜49モル%の組成
を選択し、さらに酸化クロム0.3〜2.5質量%と酸化
バナジウム0.1〜0.6重量%を同時に添加した、低温
度係数および低損失のNiMgCuZnフェライト焼結
体が開示されている。さらに、特公昭58−48052
号公報には、温度係数補償用コンデンサーと組み合わせ
て使用することを目的とし、酸化マグネシウム0〜25
モル%、、酸化銅2〜12モル%、酸化亜鉛25〜34
モル%、酸化鉄46〜50モル%、酸化コバルト0〜1
モル%、酸化ニッケルを残部とする高温度係数および高
初透磁率のNiMgCuZnフェライト焼結体が開示さ
れている。これら従来のNiMgCuZnフェライト焼
結体は、本発明が提案するNiMgCuZnフェライト
焼結体と類似する組成を有している。しかし、従来のN
iMgCuZnフェライト焼結体を、コモンモードチョ
ークコイルに適用しようという提案はなされていない。
また、本発明は応力と偏析物との関係を見出し、この偏
析物を積極的に利用する点に特徴を有しているが、上記
先行技術にそのような開示、示唆は見当たらない。
【0009】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施の形態につい
て報告する。 <偏析物について>はじめに本発明の最も特徴的な要件
である偏析物について説明する。本発明のコモンモード
チョークコイル用フェライト焼結体は、粒界や三重点に
(Ni,Mg,Cu,Zn,Fe)Oの偏析が面積比で
3.5〜9%の範囲で存在することを特徴とする。この
偏析物は、非磁性であり、10at%以下の鉄(0を含
む)、50at%以下(0を含まず)の銅を含有し、ニ
ッケル、マグネシウム、亜鉛の量は焼結体の組成によっ
て変動する。偏析物の量は焼結体の組成、焼成条件等に
より変化し、特に酸化鉄量の影響が大きい。また、偏析
物の量の変化は磁気特性に大きな影響を与える。例え
ば、酸化鉄量により偏析物量を変えた場合、(Ni,M
g,Cu,Zn,Fe)Oの面積比が上記の範囲よりも
少なければ外部応力による影響を受けやすく、樹脂モー
ルドによるインピーダンスの顕著な低下を招く。反対に
多すぎると非磁性相が増加することにより十分なインピ
ーダンスが得られない。また、酸化鉄量以外の何らかの
要因で偏析物(Ni,Mg,Cu,Zn,Fe)Oの面
積比が上記の範囲を外れる場合、樹脂モールドによる影
響を受けやすいか、または、十分なインピーダンスが得
られない。具体的には、焼成温度が低いなどの要因によ
り(Ni,Mg,Cu,Zn,Fe)Oの偏析が上記の
範囲より少ない場合には十分なインピーダンスが得られ
ない。また、焼成温度が高い等の要因により(Ni,M
g,Cu,Zn,Fe)Oの偏析が多い場合、樹脂モー
ルドによる影響を受けやすいか、または満足するインピ
ーダンスが得られない。また、非磁性相が多くなるこ
と、不連続粒成長により粒子内にポアが残留することが
影響してくる。また、このような場合、フェライトの主
成分であるCuが顕著に偏析しやすく、フェライト粒内
の組成が設計した値と外れ、満足するインピーダンスが
得られない。
【0010】<組成について>次に本発明フェライト焼
結体の組成について説明する。本発明のフェライト焼結
体は、酸化鉄(Fe23)を48〜49モル%含み、望
ましい態様として酸化鉄を48〜48.5モル%を含
む。上記の範囲を外れた酸化鉄量領域では適量の偏析物
が得られず、樹脂モールドによる影響を受けやすい、も
しくは、高いインピーダンスが得られない。具体的に
は、酸化鉄量が上記の範囲より多い場合、粒界や三重点
に(Ni,Mg, Cu, Zn,Fe)Oの偏析が満足
に得られず、樹脂モールドによる影響を受けインピーダ
ンスの顕著な低下を招く。酸化鉄量が上記の範囲より少
ない場合、(Ni,Mg, Cu, Zn,Fe)Oの偏
析が顕著に現れ非磁性相が多くなり、満足するインピー
ダンスが得られなくなるとともに、キュリー点の低下を
来す。
【0011】酸化ニッケルの量が少ないと初透磁率の劣
化度が大きくなり本発明の目的に合致しないため5モル
%以上とした。しかし、酸化ニッケルの量が多くなりす
ぎると初透磁率が低くなるため上限を15モル%とし
た。酸化ニッケルの量は5〜14モル%が望ましく、8
〜14%がさらに望ましい。酸化マグネシウムを含まな
ければ、(Ni,Mg,Cu,Zn,Fe)O化合物か
らなる偏析物が得られず、樹脂モールドによる影響を受
けやすい。ただし、酸化マグネシウムの量が14モル%
を越えるとキュリー点の低下を来すため14モル%以下
とする。酸化マグネシウムの量は1〜12モル%が望ま
しく、1〜8モル%がさらに望ましい。
【0012】酸化銅量が5モル%未満では初透磁率の低
下を来し、高いインピーダンスが得られない。また、酸
化銅量が10モル%を越えると焼結体における結晶粒が
成長しやすくなり、応力による初透磁率の劣化度が大き
くなる。したがって本発明では5〜10モル%、さらに
望ましくは6〜8モル%である。酸化亜鉛は、26モル
%未満であると初透磁率の低下を来し、高いインピーダ
ンスが得られない。また、酸化亜鉛量が30.5モル%
を越えるとキュリー点の低下を来す。従って、酸化亜鉛
は26〜30.5モル%が望ましい。
【0013】<結晶粒径について>本発明において、焼
結体の結晶粒径も外部応力による初透磁率の劣化度に影
響を及ぼす。つまり、平均結晶粒径が大きくなると外部
応力による初透磁率の劣化度が大きくなる。しかも満足
するインピーダンスを得ることが困難となる。これは粒
径が大きくなると磁壁の移動の関与が大きくなることが
関係する。このような場合、磁壁の移動は樹脂モールド
などの外部応力の影響を受けやすく、安定した特性を得
にくくなる。また、平均結晶粒径が小さすぎると満足す
るインピーダンスが得られない。これはフェライト結晶
粒子が小さいと磁壁の移動による透磁率への寄与があま
り得られないからである。したがって、本発明では平均
結晶粒径を5〜18μmの範囲とする。望ましい粒径は
7〜15μm、さらに望ましくは8〜12μmである。
焼結体の結晶粒径は焼成温度により変動する。つまり、
焼成温度が低くなると結晶粒径が小さく、また、焼成温
度が高くなると結晶粒径が大きくなる傾向にある。した
がって、焼成温度を設定する場合にはこの点をも考慮す
る必要がある。
【0014】<初透磁率の劣化度等の特性>本発明にか
かるフェライト焼結体は、周波数100kHz、温度25
℃において、初透磁率μiが800以上、40MPaの圧
縮応力を加えたときの初透磁率をμi 40MPaとしたとき、
初透磁率の低下率Δμが40%以下(ただし、Δμ=
(μi−μi40MPa)/μi×100)であり、キュリー点
が120℃以上という優れた特性を備えている。これ
は、偏析物、組成および焼結体の結晶粒径サイズが前述
の条件に合致した場合に得られる特性である。このよう
な特性は、従来のNiMgCuZnフェライト焼結体に
おいて認識されておらず、新規な規定である。この初透
磁率の劣化度Δμは値が低いことが望ましく、本発明で
は30%、さらには20%以下という低い値を得ること
ができる。
【0015】<その他について>本発明の焼結体を製造
するには、基本的には従来公知のフェライト焼結体の製
造方法を適用すればよい。ただし、焼結体中の偏析物、
結晶粒径を本発明で提案する範囲内とするためには、前
述したように焼成温度を管理する必要がある。また、本
発明のコモンモードチョークコイルを製造する場合に
も、従来公知のコモンモードチョークコイルの形態、製
造方法に従えばよい。本発明のフェライト焼結体は、樹
脂モールドによる外部応力の影響を受けにくく、かつ、
ノイズ除去に必要なインピーダンスが高く、高いキュリ
ー点が得られる。ただし、本発明のフェライト焼結体
は、樹脂モールドを施し使用するとは限らない。例え
ば、ケーブルやコネクタ部に装着し、高周波の不要輻射
ノイズを吸収する電磁波吸収部材等として用いることが
できる。また、本発明のフェライト焼結体は、コモンモ
ードチョークコイルに限らずさまざまな用途に用いるこ
とができる。
【0016】
【実施例】(実施例1)次に実施例を挙げて本発明をさ
らに詳細に説明する。焼成後の組成が下記の範囲内とな
るように各成分を秤量し、鋼鉄製ボールミルで16時間
湿式混合した。 酸化鉄 (Fe23) : 46〜52モル% 酸化ニッケル (NiO) : 3〜19モル% 酸化マグネシウム (MgO) : 0〜16モル% 酸化銅 (CuO) : 3〜12モル% 酸化亜鉛 (ZnO) : 25〜31モル% 次にこの混合粉を大気中900℃で2時間仮焼成し、次
いで、鋼鉄製ボールミルで湿式粉砕した。こうして得た
NiMgCuZnフェライト粉に有機バインダーを添加
して造粒し、目的の形状に成形した。この成形体を大気
中において、950〜1300℃で3時間焼成して表1
に示す試料No.1〜24の焼結体を得た。これら焼結
体について、25℃、100kHzにおける初透磁率μ
i、25℃、100kHz、圧縮応力40MPaを負荷した
ときの初透磁率μi40MPa、およびキュリー点を測定し
た。また、初透磁率μiおよび初透磁率μi40MPaより
応力負荷時の初透磁率の劣化度Δμを算出した。その結
果を表1に示す。なお、 初透磁率μi、μi
40MPaは、角形のトロイダル形状(外周:20×9m
m,内周6×4mm,厚さ5mm)の焼結体に20turn
の巻き線を施し、μi40MPaについては応力試験器で長
手方向に応力を加えながら、LCRメータでインダクタ
ンスを測定した。応力40MPaにおける初透磁率の劣化
度Δは、以下の式から求めた。 Δμ=(μi−μi40MPa)/μi×100(%) μi :圧縮応力 0MPaにおける初透磁率 μi40MPa :圧縮応力40MPaにおける初透磁率
【0017】
【表1】
【0018】表1において、試料No.1〜5は、この
順で酸化ニッケル量が減少している。表1より、初透磁
率μiは酸化ニッケル量が少なくなるほど高くなる。初
透磁率の劣化度Δμは酸化ニッケルの量が多くなるほ
ど、つまり酸化鉄を酸化ニッケルで置換する量が多くな
るほど改善される傾向にある。酸化鉄の量として捉える
と、酸化鉄量の少ない試料No.1は初透磁率μiの劣
化度Δμが小さく、一方酸化鉄の多い試料No.5は初
透磁率μiの劣化度Δμが大きくなる。また、キュリー
点は酸化ニッケル量が少ないほど高くなる。試料No.
6〜9は、この順で酸化マグネシウム量が減少する。酸
化ニッケルと同様に、初透磁率μiの劣化度Δμは酸化
マグネシウム量が少なくなるほど高くなる。初透磁率の
劣化度Δμは酸化ニッケルの量が多くなるほど、つまり
酸化鉄を酸化マグネシウムで置換する量が多くなるほど
改善される傾向にある。また、キュリー点は酸化マグネ
シウム量が少ないほど高くなる。試料No.16は酸化
マグネシウム量が15.9モル%と多いために、キュリ
ー点が113℃と低くなっている。
【0019】試料No.10〜14において、酸化銅の
量を増加することで初透磁率μiを増大させることがで
きることがわかる。しかし、酸化銅量が多すぎると初透
磁率の劣化度Δμが極度に低下する(試料No.1
4)。また、酸化亜鉛量について着目すると、酸化亜鉛
量が多すぎるとキュリー点の低下を招くことがわかる
(試料No.24)。逆に酸化亜鉛量が25モル%と少
なくなると、初透磁率μiが低くなる(試料No.1
5)。酸化銅と酸化亜鉛の両者を適度に含有すること
で、高い初透磁率μi、抑制された初透磁率の劣化度Δ
μ、および高いキュリー点を同時に得られることがわか
る(試料No.11〜13、17〜22)。
【0020】表1の試料No.1〜5および11〜14
について偏析物の面積比(%)および焼結体の結晶粒径
(μm)を測定した。偏析物の面積比は、焼結体断面に
鏡面研磨を施して200×200μmの視野をEPMA
で観察し、偏析物の面積を求めた。結晶粒径について
は、鏡面研磨を施した焼結体断面をフッ酸水溶液でエッ
チングした後、光学顕微鏡で写真を撮り、画像解析装置
を用いて結晶粒200個程度の平均値(円相当径)を求
めた。表2に示されるように、偏析物の面積比が小さい
ほど初透磁率μiは高くなるが、初透磁率の劣化度Δμ
は悪化する傾向にある(試料No.1〜5参照)。試料
No.5のように偏析物の面積比が2.5%と少なくな
ると初透磁率の劣化度Δμは55%にも達する。一方、
偏析物の面積比が大きくなると初透磁率の劣化度Δμは
改善される。また、偏析物の面積比が同程度であって
も、酸化銅量が多くなると結晶粒径が大きくなり、それ
につれて初透磁率の劣化度Δμが低下する傾向にある
(試料No.11〜14参照)。
【0021】
【表2】
【0022】試料No.3について、偏析物の組成分析
を行った。分析は、TEM−EDSによる点分析で6つ
の異なる偏析物A〜Fについて行った。その結果を表3
に示す。表3に示す結果から、偏析物はおおむね、N
i:30at%以下、Mg:30at%以下、Zn:2
0at%以下、Fe:10at%以下、Cu:0〜50
at%である。また、さらに詳細に見ると、Cuの含有
量が30〜50at%のもの(A〜D)と10at%以
下のもの(E,F)の2つの相が存在する。
【0023】
【表3】
【0024】次に、焼成温度による偏析物の面積比およ
び焼結体の平均結晶粒径の変動を確認する実験を行っ
た。組成は、酸化鉄(Fe23):48.3モル%、酸
化ニッケル(NiO):13.1モル%、酸化マグネシ
ウム(MgO):1.4モル%、酸化銅(CuO):
7.1モル%、酸化亜鉛(ZnO):30.1モル%で
あり、焼成温度は表4に示すように、1000℃、10
20℃、1140℃、1160℃および1200℃の5
種類とした。得られた焼結体(試料No.25〜29)
について、以上と同様に偏析物の面積比および焼結体の
結晶粒径を測定した。その結果を表3に併せて示す。表
3より焼成温度が高くなるにつれて偏析物の面積比が高
くなり、また結晶粒径も大きくなることが判る。それに
したがって初透磁率μiは高くなるが、初透磁率の劣化
度は大きくなる。したがって、表2に示した結果も考慮
すると、本発明で提案したように、偏析物の面積を3.
5〜9%、結晶粒径を5〜18μmの範囲に調整するこ
とが必要なことがわかる。
【0025】
【表4】
【0026】表1に示した試料No.3、5および20に
よるトロイダル形状のフェライトコアに樹脂モールドを
施した。樹脂モールド前の初透磁率μi、樹脂モールド
後の初透磁率の劣化度ΔμMおよび樹脂モールド前後の
10MHzにおけるインピーダンス|Z|の値を測定した。
その結果を表5に示す。本発明のコモンモードチョーク
コイル用フェライト焼結体は、樹脂モールドした場合に
おいても比較例に比べインピーダンスの値が大きいこと
が分かる。また、本発明のコモンモードチョークコイル
用フェライト焼結体は、樹脂モールドを施してない場合
でも比較的高いインピーダンスが得られる。
【0027】
【表5】
【0028】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明のコモンモ
ードチョークコイル用フェライト焼結体は、初透磁率が
高くなおかつ応力による初透磁率の変化が小さいため、
樹脂モールドしても高いインピーダンスが得られる。ま
た、キュリー点も高い。従って、本発明のコモンモード
チョークコイル用フェライト焼結体を使用することによ
り高性能なコモンモードチョークコイル、ノイズ吸収部
材の製造が可能となる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4G018 AA01 AA07 AA23 AA24 AA25 5E041 AB01 AB03 AB19 BD01 CA02 NN02 NN06 NN14 NN15 NN18 5E070 AA01 AA11 AB10 BA14 BB01

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 酸化鉄48〜49モル%のNiMgCu
    Znフェライトを主組成物とし、粒界または三重点に
    (Ni,Mg,Cu,Zn,Fe)Oの偏析が面積比で
    3.5〜9%の範囲で存在し、平均粒径が5〜18μmの
    範囲であるNiMgCuZnフェライト焼結体コアと、
    前記NiMgCuZnフェライト焼結体コアをモールド
    する樹脂モールド層と、を備えたことを特徴とするコモ
    ンモードチョークコイル。
  2. 【請求項2】 酸化ニッケル5〜14モル%、酸化マグ
    ネシウム0〜14モル%(0を含まず)、酸化銅5〜1
    0モル%、酸化亜鉛26〜30.5モル%、酸化鉄48
    〜49モル%の範囲であることを特徴とするコモンモー
    ドチョークコイル用フェライト焼結体。
  3. 【請求項3】 請求項2記載のコモンモードチョークコ
    イル用フェライト焼結体中の粒界または三重点に(N
    i,Mg,Cu,Zn,Fe)Oの偏析が存在し、その
    偏析物のFeの含有量が10at%以下、Cuの含有量
    が50at%以下(0を含まず)であることを特徴とす
    るコモンモードチョークコイル用フェライト焼結体。
  4. 【請求項4】 周波数100kHz、温度25℃の初透磁
    率μiが800以上、かつ0〜40MPaの圧縮応力を加
    えた時の初透磁率の変化率が40%以下であり、キュリ
    ー点が120℃以上であることを特徴とするコモンモー
    ドチョークコイル用フェライト焼結体。
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