JP4323140B2 - ウェットティッシュ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ウェットティッシュに関する。
【0002】
【従来の技術】
抄紙、不織布等からなる基布に、水又は含水アルコールを主体とする含侵液を含侵させたウェットティッシュは、携帯用のおしぼり、飲食店等における使い捨てのおてふき、テーブル、パソコン機器等の汚れた部分を清掃する等の用途に幅広く用いられている。このようなウェットティッシュは、水分を有する状態で密閉された容器中で保存され、使用時に容器から取り出すものである。
【0003】
このようなウェットティッシュは、湿潤状態で長期間保存されるため、湿潤状態での保存性が要求される。しかし、通常ウェットティッシュに使用される素材は、綿、レーヨン、パルプ等の天然繊維系の素材であるため、湿潤状態では腐敗しやすい。このような問題を改善するため、通常、ウェットティッシュでは、抗菌剤を使用し、これにより腐敗を防止している。
【0004】
しかし、このような抗菌剤は、通常、使用者には好まれず、塩素系の化合物等を用いる場合には、分解性の問題等もあるため、できる限り使用量を低減することが好ましいとされている。
【0005】
このような抗菌剤の使用量を低減させる方法として、合成繊維からなる基布を使用することによって、腐敗を生じないようにすることが挙げられる。しかし、このようなウェットティッシュは、自然界に廃棄されたときに分解されずに、ゴミとして残るという問題がある。従って、使用済みのウェットティッシュは、自然界で分解することによって廃棄物としての問題を生じさせないものであることが好ましい。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の現状に鑑み、生分解性を有する基布によって得られ、かつ抗菌剤の使用量を低減することができるウェットティッシュを提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、基布に水又は含水アルコールを主体とする含侵液を含侵させたウェットティッシュであって、上記基布は、ポリ乳酸系繊維を有することを特徴とするウェットティッシュである。
【0008】
上記基布は、抄紙であることが好ましい。上記基布は、不織布であることも好ましい。
上記基布は、スパンレース不織布であることが好ましい。
上記ウェットティッシュは、基布に対して抗菌剤の含有量が0.5質量%以下であることが好ましい。
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0009】
本発明に使用するウェットティッシュは、基布及び水又は含水アルコールを主体とする含侵液からなる。上記ウェットティッシュは、容器中に保存され、使用時に上記容器から取り出され、湿った状態で手、顔、身体等を拭くことによって、身体を清浄にしたり、テーブル、パソコン等の汚れた部分を清浄にする目的で使用されるものである。
【0010】
上記基布は、ポリ乳酸系繊維を含有するものである。上記ポリ乳酸は、乳酸を重合してなる脂肪族ポリエステル樹脂であり、生分解性を有する樹脂として、種々の用途が検討されている。上記ポリ乳酸系繊維を含有する基布からなるウェットティッシュが上記効果を有する作用は、必ずしも明らかになってはいないが、上記ポリ乳酸は、樹脂中に若干量の未反応の、又は、ポリマー末端から遊離した乳酸モノマーや、オリゴマーが残存しており、上記乳酸モノマー、オリゴマーが抗菌性を有するため、上記ポリ乳酸系繊維を有するウェットティッシュは、腐敗が進行しにくいものと考えられる。このため、上記ポリ乳酸系繊維を含有する基布を使用したウェットティッシュは、抗菌剤の使用量を通常の1/2以下に低減させるか、全く使用しない場合であっても、湿潤下の保存状態において腐敗を生じることがなく、抗菌剤の使用を低減できるものである。上記乳酸は、自然界に大量に存在する化合物であり、人間の皮膚に対しても悪影響を及ぼすことがない化合物である。更に上記ポリ乳酸系繊維は、表面ぬれ性にも優れるため、含侵液の保持性にも優れ、強度、使用感の点でも優れた性質を有する。
【0011】
上記ポリ乳酸系繊維は、ポリ乳酸を主体構成成分とする繊維をいう。上記ポリ乳酸系繊維は、共重合成分又は他のポリマーとしてポリ乳酸以外の成分を有するものであってもよい。上記ポリ乳酸系繊維は、ポリ乳酸の含有率が、50質量%以上であることが好ましい。上記ポリ乳酸の含有率が50質量%以上であることによって、抗菌剤の使用を低減させることができるという効果を充分に発揮することができる。上記ポリ乳酸の含有率は、60質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましく、90質量%以上であることが更に好ましい。上記ポリ乳酸系繊維に含まれるポリ乳酸以外の成分は、特に限定されるものではないが、生分解性を有する成分であることが好ましい。
【0012】
上記ポリ乳酸系繊維を形成するポリ乳酸としては特に限定されず、D体、L体、ラセミ体であってよい。上記ポリ乳酸は、L体を90モル%以上有することが好ましい。光学純度の高いモノマーからなる重合体は、結晶構造となり、紡糸・延伸で配向結晶化が進めため、得られる繊維の物性が良好となるためである。特に引っ張り強度が著しく上昇し、熱収縮率が小さくなり実用に適した繊維が得られる。
【0013】
上記ポリ乳酸の製造方法としては特に限定されず、例えば乳酸モノマーや乳酸モノマーの二量体であるラクチド等を使用する重合方法等を挙げることができる。上記乳酸モノマーは、グルコースを乳酸菌発酵させて製造することができる。上記方法による製造の際、菌株の選択によりD体、L体及びラセミ体を作り分けることができる。上記グルコースは、多糖類を発酵させることにより製造することができ、上記多糖類としては特に限定されず、例えば、トウモロコシ澱粉等を使用することができる。上記製造方法の他に、ショ糖等の二糖類を化学処理して製造することもできる。
【0014】
上記ポリ乳酸は、相対粘度(ηrel)が、下限2.7、上限3.9の範囲内であることが好ましい。上記相対粘度が2.7以上で、ポリマーの耐熱性が特に良く、充分な引張強度を得ることができるからである。又、3.9以下では、紡糸温度をそれほど上げる必要がないため、紡糸時の熱劣化が少なく、ポリ乳酸が流動し易いため、好ましい。上記下限は、2.9であることがより好ましく、上記上限は、3.6であることがより好ましい。
【0015】
上記ポリ乳酸は、紡糸における相対粘度の低下率が、7%以下であることが好ましい。上記範囲とすることによって、紡糸時のポリマーの分解がほとんどなく紡糸時の糸切れ等の発生もないため、紡糸性がよく延伸工程での引張強度も大きくすることができる。
【0016】
上記ポリ乳酸は、その質量平均分子量Mwが、下限120000、上限220000の範囲内であることが好ましく、数平均分子量Mwが、下限60000、上限110000の範囲内であることが好ましい。上記範囲内であることにより、優れた紡糸性及び充分な引張強度を得ることができるためである。
【0017】
上記ポリ乳酸には、残存モノマー及びオリゴマーが存在していることが必要である。本明細書で残存モノマー及びオリゴマーは、GPC分析により算出される分子量1000以下の成分をいう。残存モノマー及びオリゴマーが若干量残存していることによって、上記腐敗の進行を抑制する効果が発現すると考えられるためである。残存モノマー及びオリゴマーは、上記ポリ乳酸中に、上限0.5質量%、下限0.1質量%の範囲内で存在することがより好ましい。上記上限は、0.3質量%であることがより好ましい。残存モノマー及びオリゴマーが0.1質量%未満であると、抗菌性が低下するため、好ましくない。残存モノマー及びオリゴマーが0.5質量%を超えると、樹脂の耐熱性が低下し、紡糸性の低下、繊維の引張強度の低下等の問題を生じるおそれがあるため、好ましくない。
【0018】
上記ポリ乳酸は、ポリマー中のSn(錫)の含有量が30ppm以下であることが好ましく、更に好ましくは20ppm以下である。Sn系の触媒はポリ乳酸の重合触媒として使用されるが、30ppm以下であると、紡糸時に解重合が起きるおそれもなく、口金濾過圧の上昇もないため、紡糸操業性が著しく良好となるからである。Sn(錫)の含有量を少なくする方法としては特に限定されず、例えば、重合時に使用する量を少なくする方法、チップを適当な液体で洗浄する方法等を挙げることができる。
【0019】
上記ポリ乳酸は、直鎖状のポリマー構造を有することが好ましい。即ち、分岐構造をほとんど持たないことが好ましい。溶融粘度や重合度を改良する目的でポリ乳酸を重合する際に少量の分岐剤を添加することが行われているが、ポリ乳酸の分岐構造は通常の合成繊維、例えばポリエステル繊維等に比べてはるかに紡糸操業性に影響を与えることが本発明者等によって確認された。即ち、分岐構造がほとんど存在しないポリ乳酸含有成分は、紡糸時の操業性が非常に良好で、引張強度も強い。又、分岐構造が少ないほど、基材を製造する際の熱処理時の寸法安定性に優れている。分岐構造を排する為には、三価以上のアルコールやカルボン酸等のポリマーの原料に分岐構造を生成させるものを、原料モノマーとして使用しなければよい。別の理由でこれらの構造を持つ成分を使用する場合であっても、紡糸操業性に影響を及ぼさない必要最小限度の量にとどめることがが好ましい。
【0020】
上記ポリ乳酸は、ポリマー質量の5%減少温度であるTG(5%)が、300℃以上であることが好ましい。TG(5%)が高温である程、繊維製造、繊維加工における熱劣化が防止できるからである。又、基布の成形工程において熱処理工程を行う場合、熱処理温度を高温にして基布の接着点の強度を上げても、ポリマーが黄変しないという利点がある点からも好ましい。
【0021】
上記ポリ乳酸からなるポリ乳酸系繊維の形態としては特に限定されず、短繊維であっても長繊維であってもよく、作成する基布の形態に応じて適宜選択することができる。上記ポリ乳酸系繊維は、ポリ乳酸系複合繊維であってもよい。上記ポリ乳酸系複合繊維としては特に限定されず、例えば、芯鞘型、サイド・バイ・サイド型等を挙げることができる。上記ポリ乳酸系複合繊維は、最も融点の低い成分が繊維表面の一部に表出している形態のものであることが好ましい。上記ポリ乳酸系複合繊維を使用することによって、ポリ乳酸系繊維に熱融着性のバインダーとしての性質を好適に付与することができるため、好ましい。上記基布中のポリ乳酸系繊維は、通常のポリ乳酸系繊維及びポリ乳酸系複合繊維を併用するものであってもよい。
【0022】
上記ポリ乳酸系複合繊維の製造方法としては特に限定されず、例えば、特定形状の口金から二種類以上のポリマーを同時に溶出して紡糸する方法等を挙げることができる。
【0023】
上記基布は、上記ポリ乳酸系繊維を、10質量%以上含有することが好ましい。10質量%含有することによって、抗菌剤の使用量を低減することができるという効果を充分に発揮することができる。上記基布を構成する上記ポリ乳酸系繊維以外の成分としては、特に限定されず、生分解性を有する公知の繊維基材を使用することができる。又、ポリ乳酸系繊維のみからなる基材を使用するものであってもよい。上記ポリ乳酸系繊維を、基布中、15質量%以上含有することがより好ましく、20質量%以上であることが更に好ましい。
【0024】
上記ポリ乳酸系繊維を含有してなる基布の形態としては特に限定されず、例えば、抄紙、不織布、織布、編布等を挙げることができる。上記基布は、なかでも抄紙又は不織布であることが好ましい。抄紙及び不織布は、風合い、水又は含水アルコールを主体とする含侵液の含侵性に優れ、生産性が高く安価であるため好ましい。
【0025】
上記基布が抄紙である場合、上記ポリ乳酸系繊維は短繊維の形態を有するものを原料として使用する。上記短繊維の繊維長は、下限0.5mm、上限25mmの範囲内であることが好ましい。上記下限は、2mmであることがより好ましく、3mmであることが更に好ましい。上記上限は、15mmであることがより好ましく、12mmであることが更に好ましい。
【0026】
上記抄紙工程においては、上記ポリ乳酸系繊維は、繊維同士を融着させ、形態を保持するバインダーとしての作用をも有する。即ち、上記ポリ乳酸系繊維は熱可塑性樹脂からなる繊維であるために、融点以上の温度に加熱することによって溶融し、これによって繊維同士を融着させ、形態を保持することができる。通常ウェットティッシュに使用される抄紙は、バインダー成分として生分解性を有さない熱可塑性樹脂からなるバインダー成分が使用されており、上記バインダー成分が自然界では分解されないという問題を有するものでもあった。本発明のウェットティッシュは、上記生分解性を有さないバインダー成分が不要になる点で、上記の問題点をも同時に改善するものである。
【0027】
上記抄紙は、上記ポリ乳酸系繊維の少なくとも一部として、融点の異なる2以上の成分が複合したポリ乳酸系複合繊維を使用することが好ましい。上記ポリ乳酸系複合繊維は、一部に低融点成分を含むことから上記バインダーとしての作用に優れるため、基材の強度、形態保持能力に優れた基布が得られる点で好ましい。上記ポリ乳酸系複合繊維は、上記基布に対して、10質量%以上、90質量%以下であることが好ましい。10質量%以上であることによって、繊維を充分に融着させ、強度及び形態保持能力を得ることができる。90質量%以下であることによって、基布の風合い、使用感を維持することができる。
【0028】
上記抄紙は、その他の繊維成分として、セルロース含有成分を併用してなる混抄体であることが好ましい。上記セルロース含有成分としては特に限定されず、例えば、セルロース繊維、パルプ、コウゾ、ミツマタ、わら類、ささ類、バガス及びもみ殻類等を挙げることができる。上記セルロース繊維は、セルロースを主成分とする繊維である。上記セルロース繊維としては特に限定されず、例えば、綿、麻等の天然繊維;レーヨン等の再生セルロース繊維;アセテート等の半合成繊維等を挙げることができる。上記パルプは植物体を機械的、化学的に処理して繊維を抽出したもので、セルロースからなる。上記パルプとしては特に限定されず、例えば、木材パルプ、わらパルプ、竹パルプ、古紙からの再生パルプ等を挙げることができる。上記わら類、上記ささ類、上記バガス(サトウキビの茎からショ糖を絞り取ったカス)及び上記もみ穀類は、長さ0.2〜10mm程度に細かく砕いて用いることが好ましい。更に、この他に抄紙可能なセルロース含有植物体を用いることもできる。
【0029】
上記セルロース含有成分としては、パルプを使用することが好ましい。上記パルプは、抄紙性に優れ、得られた混抄体も使用感に優れるためである。上記混抄体においてパルプを使用する場合は、製紙用パルプを用いることが好ましい。上記セルロース含有成分としてパルプを使用する場合は、上記パルプを単独で用いてもよいし、パルプとわら類、ささ類、バガス及びもみ穀類から選ばれた一種以上を混合して用いてもよい。
【0030】
上記セルロース含有成分は、上記混抄体の100質量%に対して、下限10質量%、上限90質量%の範囲内であることが好ましい。10質量%以上含有することによって、セルロース含有成分に基づく風合いが発現するため好ましい。90質量%未満とすることによって、ポリ乳酸系繊維の含有量が減少しすぎることによって、抗菌剤の使用量を低減するという効果が減少することを防止できる。上記下限は、15質量%以上であることがより好ましく、20質量%であることが更に好ましく、25質量%であることが更に好ましい。上記上限は、ある程度生分解速度を抑え、ウェットティッシュとしての使用可能な期間が短期間となりすぎることを防止する観点からは85質量%であることがより好ましい。
【0031】
上記基布は、上記セルロース含有成分、上記ポリ乳酸系複合短繊維及び複合繊維ではないポリ乳酸系短繊維を混抄した混抄体であることがより好ましい。上記混抄体は、ポリ乳酸系複合短繊維の融点が最も低い成分を接着剤として作用させることによってウェットティッシュ用基布として好適な性質を有する混抄体となる。上記混抄体は、上記成分よりなるため、生分解性、親水性を有し、且つ引裂強度が大きく、また、50m/分以上の高速での抄紙も可能である。
【0032】
上記基布が、上記三成分からなるものである場合、上記三成分の質量割合は、セルロース含有成分/ポリ乳酸系複合短繊維/ポリ乳酸系短繊維=1〜85/34〜14/65〜1の割合であることが好ましく、更に好ましくは1〜70/34〜10/65〜20である。
【0033】
上記抄紙である基布は、上記基布を構成する原料を水に懸濁し、叩解し、その後抄紙することによって製造することができる。上記抄紙には通常の抄紙機を用いることができる。抄紙後の乾燥工程で、好ましくは110〜160℃前後、更に好ましくは120〜150℃前後の乾燥シリンダーを通す。この時の加熱によって、ポリ乳酸系短繊維もしくはポリ乳酸系複合短繊維が一部溶融し、構成素材同士を接着する。上記抄紙の厚さは、下限20μm、上限60μmの範囲内であることが好ましい。上記抄紙の目付は、下限20g/m2、上限60g/m2の範囲内であることが好ましい。
【0034】
上記基布が不織布である場合、不織布は長繊維不織布であっても短繊維不織布であってもよい。上記不織布の製造方法としては特に限定されず、例えば、スパンレース、メルトブロー、フラッシュ紡糸法等を挙げることができる。得られる不織布の風合いが優れる点から、カードを通過させる等で得たウエブを複数層積層しニードルパンチ加工して形態固定したニードルパンチ加工不織布やカードを通過させる等で得たウエブを複数層積層し水流により絡合させ形態固定した、いわゆるスパンレース法によって得られた不織布であることが好ましい。特に、スパンレース不織布は、抄紙タイプに比べて、一般に肌触り(風合い)がソフトであり、膨らみ(バルキー性)も有るので、手や顔などのオシボリ等に適している。上記スパンレース法による不織布の製造は、通常の方法によって行うことができる。
【0035】
上記不織布は、上記ポリ乳酸系繊維のみからなるものであっても、上記ポリ乳酸系繊維以外に、上記抄紙においてポリ乳酸系繊維とともに使用することができる上記セルロース含有成分を含有するものであってもよい。上記セルロース含有成分を含有することによって、上記セルロース含有成分に基づく風合いが発現する。上記不織布が上記セルロース含有成分を含有する場合、上記セルロース含有成分は不織布の質量に対して90質量%以下の割合で含有することが好ましい。上記セルロース含有成分が、90質量%以下であることによって、ポリ乳酸の含有量を確保することができ、抗菌剤の量を低減させるという効果を充分に発現させることができるためである。
【0036】
上記不織布の厚さは、下限20μm、上限5m/mの範囲内であることが好ましい。上記不織布の目付は、下限20g/m2、上限100g/m2の範囲内であることが好ましい。
【0037】
本発明のウェットティッシュは、上記基布に水又は含水アルコールを主体とする含侵液を含侵させたものである。上記含侵液は、水又は含水アルコールを主体とするものである。上記含侵液は、抗菌剤を含有するものであってもよいが、上記抗菌剤は基布に対して0.5質量%以下であることが好ましい。従来のウェットティッシュは、抗菌剤を基布に対して0.5〜1質量%程度使用するものであったが、本発明のウェットティッシュは、ポリ乳酸を有するため、抗菌効果が生じ、このため、抗菌剤の使用量を通常より低減するか、未使用とすることができる。従って、上記抗菌剤の含有量は、通常よりも少ない量とすることが好ましい。上記抗菌剤は、基布に対して0.3質量%以下であることがより好ましい。
【0038】
上記抗菌剤としては、特に限定されず、例えば、塩化ベンザルコニウム、第4級アンモニウム塩、銀ゼオライト等を挙げることができる。
【0039】
本発明のウェットティッシュは、上記基布に対して、上記含侵液を、下限50質量%以上、上限200質量%以下の範囲内の割合で含侵させることが好ましい。50質量%以上とすることによって、使用時に充分な水分又は含水アルコールを供給することができる点で好ましい。200質量%以下とすることで、必要以上の水分を使用する必要がなくなる。
【0040】
【実施例】
以下本発明について実施例を掲げて更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。実施例について説明する前に、上記ポリ乳酸系繊維の各物性の測定方法について説明する。
【0041】
<分子量とモノマー量>
試料を10mg/mLの濃度になるようにクロロホルムに溶かした。クロロホルムを溶媒としてGPC分析を行い、Mw、Mnを測定した。検出器はRIを用い、分子量の標準物質としてポリスチレンを用いた。又、分子量1000以下の成分の割合からポリマー中のモノマー量(質量%)を算出した。
【0042】
<相対粘度 ηrel>
フェノール/テトラクロロエタン=60/40(質量比)の混合溶媒に試料を1g/dlの濃度になるように溶解し、20℃でウベローデ粘度管を用いて相対粘度を測定した。
【0043】
<Sn含有量(ppm)>
0.5gの試料を硫酸/硝酸により湿式灰化した。これを水で希釈して50mL溶液とし、ICP発光分析法により測定した。
【0044】
<熱安定性>
セイコー電子製のTG/DTA 220Uを使用して、ポリマーの質量が5%減少した温度をTG(5%)として測定した。
【0045】
<紡糸時粘度低下率>
紡糸ノズルから出てきた糸条の相対粘度(ηrel)を測定し次式により求めた。本実施例における溶融ポリマーの滞留時間は約5分である。
紡糸時粘度低下率(%)=〔(ポリマーの相対粘度−糸条の相対粘度)/ポリマーの相対粘度〕×100
【0046】
実施例1
セルロース含有成分として製紙用木材パルプ70質量部、ポリ乳酸系複合短繊維として長さ1mmの芯鞘構造のポリ乳酸系短繊維(芯部が融点170℃のポリ乳酸、鞘部が融点135℃のポリ乳酸)30質量部を水に懸濁し、叩解した後、円網抄紙機を用いて抄紙し、その後乾燥工程で140℃前後の乾燥シリンダーを通して紙状シート(40g/m2)を製造した。
【0047】
なお、上記のポリ乳酸系複合短繊維の芯部のポリ乳酸含有成分は、L−ラクチド98.7モル%、D−ラクチド1.3モル%の仕込み比で、オクチル酸スズを重合触媒として定法により重合したものであり、得られたポリマーは、相対粘度3.0、質量平均分子量Mw14.6×104、数平均分子量Mn7.2×104、モノマー量0.27質量%、Sn含有量18ppmであり、熱安定性TG(5%)は318℃のものである。又、ポリ乳酸系複合短繊維の鞘部のポリ乳酸含有成分は、L−ラクチド93.6モル%、D−ラクチド6.4モル%の仕込み比で、オクチル酸スズを重合触媒として定法により重合したものであり、得られたポリマーは、相対粘度3.6、質量平均分子量Mw19.5×104、数平均分子量Mn9.4×104、モノマー量0.27質量%、Sn含有量17ppmであり、熱安定性TG(5%)は319℃のものである。
【0048】
上記紙状シートを25cm×20cmにカットし、抗菌剤を含有しない水1.0mlを含侵させたウェットティッシュ、及び、銀ゼオライト抗菌剤1%水溶液1.0mlを含侵させたウェットティッシュ(抗菌剤は、基布に対して0.5質量%)を作成した。
【0049】
実施例2
セルロース含有成分として製紙用木材パルプ50質量部、ポリ乳酸系短繊維として長さ7mmのポリ乳酸系短繊維25質量部、ポリ乳酸系複合短繊維として長さ1mmの芯鞘構造のポリ乳酸系短繊維(芯部が融点170℃のポリ乳酸、鞘部が融点135℃のポリ乳酸)25質量部を水に懸濁し、叩解した後、円網抄紙機を用いて抄紙し、その後乾燥工程で140℃前後の乾燥シリンダーを通して紙状シート(40g/m2)を製造した。上記紙状シートを25cm×20cmに裁断して混抄体を得た。
【0050】
なお、上記ポリ乳酸系複合短繊維は、実施例1と同じものを用いた。ポリ乳酸系短繊維のポリ乳酸成分は、L−ラクチド98.7モル%、D−ラクチド1.3モル%の仕込み比で、オクチルスズ酸を重合触媒として定法により重合したものであり、得られたポリマーは、相対粘度3.0、質量平均分子量Mw14.6×104、数平均分子量Mn7.2×104、モノマー量0.27質量%、Sn含有量18ppmであり、熱安定性TG(5%)は318℃のものである。
【0051】
上記混抄体を用いて、上記実施例1と同様の方法によってウェットティッシュを作成した。
【0052】
比較例
セルロース含有成分として製紙用木材パルプ97質量部、及び、ポリビニルアルコール繊維(商品名、VPB−107;クラレ社製)3質量部を水に懸濁し、叩解した後、円網抄紙機を用いて抄紙し、その後乾燥工程で140℃前後の乾燥シリンダーを通して紙状シート(40g/m2)を製造した。上記紙状シートを25cm×20cmに裁断して混抄体を得た。上記混抄体を使用して、上記実施例1と同様の方法によってウェットティッシュを作成した。
【0053】
(防腐性試験)
上記実施例1、2及び比較例によって得られたウェットティッシュを、SEK菌数測定法に準じて、抗菌性評価試験を行った。結果を表1に示す。なお、試験結果は、SEK菌数測定法による基準によって、適正であると判断されたものを○、適正であると判断されなかったものを×として判定を行った。
【0054】
【表1】
【0055】
上記結果より、本発明のウェットティッシュは、ポリ乳酸に基づく防腐性を有し、かつ抗菌剤を配合しなくても抗菌性を有することは明らかである。これにより、本発明のウェットティッシュは、抗菌剤の使用を低減させることができるという効果を有していることは明らかである。
【0056】
【発明の効果】
本発明は、ポリ乳酸系繊維を有する基布をウェットティッシュに使用することによって、ウェットティッシュに対してポリ乳酸が有する抗菌性効果を生じさせ、これによって抗菌剤の使用を低減させても、充分な防腐性を有するウェットティッシュを提供するものである。また、生分解性を有する基布を使用してウェットティッシュとすることにより、廃棄物としての問題が生じない。
Claims (1)
- 基布に水又は含水アルコールを主体とする含侵液を含侵させたウェットティッシュであって、前記基布は、残存モノマー及びオリゴマー(GPC分析により算出される分子量1000以下の成分)が0.1〜0.5質量%存在しているポリ乳酸系繊維を有し、基布に対して抗菌剤の含有量が0.5質量%以下であることを特徴とするウェットティッシュ。
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