以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明のマイクロレンズアレーの製造方法は、前述の光電着法、あるいは光触媒着膜法を用いてマイクロレンズアレーを製造する方法において、高分子材料である膜形成材料を含む水系の電解液が、ラジカル発生剤、酸発生剤、及び架橋性に寄与する官能基を有する架橋剤のうちの少なくとも1種を含有し、膜形成材料を析出させてマイクロレンズアレー層を加熱する工程前又は加熱する工程と同時に、高分子材料を架橋させ、マイクロアレー層を硬化することを特徴としている。
以下、その製造方法の概要を説明する。
前記光電着法は、光起電力層薄膜に生ずる光起電力を利用するものであり、基材の表面に導電性薄膜と光起電力層薄膜とをこの順に積層したものを、pHが変化することにより水性液体に対する溶解性ないし分散性が低下する膜形成材料を含む水系の電解液に対し、前記光起電力層薄膜が該電解液に接触するように配置し、前記電解液中に置いた対向電極と前記導電性薄膜とを電気的に接続した状態で、前記光起電力層薄膜の選択領域に光を照射することにより該選択領域と対向電極との間に電圧を印加し、前記光起電力層薄膜の選択領域に前記膜形成材料を析出させる方法である。この光電着法は、従来の電着法に比べて低電圧(5V以下)で、均一な膜厚の膜が精度よく形成できることを特徴としている。また、前記光触媒着膜法は、光起電力層薄膜の光触媒機能を利用するものであり、前記特開平2001−140096号公報の段落0025〜0029に詳細に記載されている。
本発明のマイクロレンズアレーの製造方法では、上記方法を利用し、まず電解液として前記光電着法で用いる電解液と同様のものを用い、マイクロレンズアレー作製基板として、基材表面に導電性薄膜と該導電性薄膜に接して光起電力層薄膜とが設けられ、かつ前記導電性薄膜が電解液と導通可能にしたものが用いられる。そして、前記マイクロレンズアレー作製基板をその光起電力層薄膜が電解液に接触するように配置すると共に、前記導電性薄膜が電解液に導通する状態にし、この状態で、前記光起電力層薄膜の選択領域に光を照射して、前記光起電力層薄膜の選択領域に前記材料を析出させてマイクロレンズアレー層を形成するものである。
その結果、本発明によれば、簡便な方法により、低コストでマイクロレンズアレーを製造することができ、また、集積度が高い(直径30μmのマイクロレンズで5万個/cm2以上)マイクロレンズアレーを作製でき、かつ集積度と屈折率とを自由に調節することができる。また、複雑なものを含め任意のパターンのマイクロレンズアレーを作製することができる。さらに、得られるマイクロレンズアレーの集光効率が高い上、簡易な方法であるので、量産化が可能である。加えて、従来の感光性樹脂を用いるマイクロレンズアレーの製造方法では、基板に膜厚を精度よく制御して塗布する必要があり、またエッチングによりアルカリ廃液を出すなどの問題があったが、本発明によれば、均一な形状のレンズを容易に作製でき、また、パターン形成のためのエッチング処理も不用で環境に対する負荷も小さい。
特に本発明においては、膜形成材料を含む電解液中に前記ラジカル発生剤等を含有させることにより、前記マイクロレンズアレー層形成後の加熱処理工程等においても形状を維持することができる。
具体的には、本発明のように水系で膜形成を行った場合には、後述するようにマイクロレンズの透明性を向上させるため、膜中の水分等を除去する目的で前記マイクロレンズアレー層を加熱する必要があるが、この時に膜形成材料中の高分子材料のガラス転移点(Tg)以上に熱せられた場合には、マイクロレンズアレー層の流動が起こりレンズが平坦化方向に形状変化してしまう。その結果、レンズのエッジ部にズレが生じ所望の形状精度を達成することができなくなる。
本発明においては、前記電解液中にラジカル発生剤等の架橋を誘起する化合物及び/または架橋を構成する化合物を含有させることにより、前記加熱時あるいは加熱前にマイクロレンズアレー層における前記高分子材料を架橋させ、マイクロレンズアレー層を硬化させることができるため、前記のように加熱時に高温に熱せられた場合でもレンズの形状を維持することができる。
また、このようにして作製されたマイクロレンズアレーは、マイクロレンズアレー層が3次元的に架橋され緻密な状態となっているため、後処理工程や使用時に用いられる溶剤や酸・アルカリ等に対しても侵されることがなく、耐久性に優れたものとすることができる。さらに、機械的な強度という面からも、十分な強度を確保することができる。
本発明におけるマイクロレンズアレー作製基板は、基材表面に導電性薄膜および光起電力層薄膜をこの順に積層したものである。図1に、本発明において用いるマイクロレンズアレー作製基板1の一例の断面図を示す。図中、10は基材、12は導電性薄膜、14は光起電力層薄膜をそれぞれ示す。
上記基材10としては、絶縁性であることが好ましく、ガラス板、石英板、プラスチックフィルム、エポキシ基板等が用いられる。また、前記導電性薄膜12としては、ITO、酸化インジウム、ニッケル、アルミニウム等用いられる。なお、基材10を通して光起電力層薄膜14に光照射する場合には、基材10および導電性薄膜12は光透過性(透明)であることが必要である。ただし、光起電力層薄膜側から電解液を通して光半導体薄膜14に光照射する場合はこの限りでない。なお、前記マイクロレンズアレー作製基板1において、導電性薄膜12と光起電力層薄膜14が接触していること、かつ前記導電性薄膜12が電解液と導通可能であることが必要である。
次に、本発明における光起電力層薄膜14について説明する。本発明に用いられる光起電力層薄膜14としては、基本的には、光照射により起電力を発生する透明薄膜半導体であれば全て使用できる。具体的には、前記半導体としてGaN、ダイヤモンド、C−BN、SiC、ZnSe、TiO2、ZnO、In2O3、SnO2などが挙げられる。中でも酸化チタン(TiO2)は吸収が400nm以下にしかなく、透明で、容易にn型半導体を作ることができるため、光学デバイス作製用の基板としてはそのまま使用することが可能である。
上記酸化チタン等を半導体薄膜として形成する方法としては、熱酸化法、スッパタリング法、電子ビーム蒸着法(EB法)、イオンプレーティング法、ゾル・ゲル法、などの方法があり、これらの方法によりn型半導体として特性の良いものが得られる。
ただし、基材1が耐熱性の低いもの、たとえば、プラスチックフィルムの場合には、プラスチックフィルムに悪影響を与えない成膜法を選択する必要がある。前記ゾル・ゲル法は、光半導体として光学活性が高い酸化チタンを形成できるが、500度で焼結させる必要があるため200℃程度の耐熱性しかもたないプラスチックフイルム基材表面に酸化チタン膜を作製することは困難である。
したがって、プラスチックフイルム基材を用いる場合には、なるべく低温で、できれば200度以下で製膜することが可能であり、また比較的基材1に対するダメージが小さい成膜方法であるスパッタリング法、特にRFスパッタリング法が好ましく用いられる。該RFスパッタリング法は、光学活性の高いアナターゼ型の酸化チタン薄膜が得られる点からも好ましい方法である。(電子ビーム法やイオンプレーティング法は、200℃前後で基材1を加熱するので好ましくない。)
本発明に用いる電解液は、少なくともpHが変化することにより水性液体に対する溶解性ないし分散性が低下して、電解液から光起電力層薄膜上に析出して着膜する膜形成材料を含む。1種類以上の膜形成材料がこのような着膜性を持っていれば、単体では膜形成能力がない種々の屈折率制御材料(後述する)を電解液中に分散させても、膜形成時において前記着膜性の膜形成材料に取り込まれて、マイクロレンズアレー層中に固定されることになる。
前記pHが変化することにより溶解性等が低下し析出する膜形成材料の一例として、アクリル系とスチレン系の共重合高分子を例にとって説明する。この高分子は、純水(pH6〜8)にほとんど溶解しないが、加熱したりアルカリ性になると容易に溶解する。また、水に対する溶解度の大きなヒステリシスを持ち、溶解していても一度酸性になって析出すると中性や弱アルカリではなかなか再溶解しないという性質を持つ。
この高分子の水溶液中に白金電極を浸し通電すると、陽極付近では水溶液中のOH-イオンが消費されてO2になり、水素イオンが増えてpHが低下する。これは、陽極付近でホール(p)とOH-イオンとが結び付く次のような反応が起こるためである。
2OH-+2p+ → 1/2(O2)+H2O
この反応が起こるには、一定の電圧が必要であり、反応の進行に伴って水溶液中の水素イオン濃度が増えてpHが低下するのである。従って、ある一定以上の電圧を印加すると、電極の陽極側では高分子の溶解度が低下して不溶化し薄膜が形成されるのである。すなわち一般に、前記薄膜(電着膜)形成にはある一定以上の閾値電圧が必要であり、電流が流れれば必ず電着膜が形成されるわけではない。
上記薄膜形成は、上記一定の閾値電圧を得るのに半導体に光を照射して生じる光起電力を利用するものであるが、薄膜を形成するには光起電力だけでは不十分である。しかし、バイアス電圧を印加してかさ上げして置けば、外部から入力される電圧レベルは小さくてもパターンを形成することが可能である。こうして、電着される基材に光起電力層を設けて、この入力信号に光照射を使用すれば照射光量に応じて、所望する位置に所望する形状の任意の電着膜を形成することができることとなる。それでも一定の電圧(使用する半導体のバンドギャップに依存した電圧)以上になると、光起電力の形成に必要な半導体と溶液の間のショトキーバリアーが壊れてしまうという問題があり、印加できるバイアス電圧には限界がある。
また、一般的に電着用塗装として良く知られている高分子は、電着に必要な電圧が10V以上であることから光起電力を利用した電着技術には利用できない。ところが、前記共重合高分子は水に対する溶解度のヒステリシスを有しているために、低い電圧で薄膜形成が可能であり、種々の半導体で光起電力による電着膜の形成を行うことができる。
具体的には、一般に半導体の光起電力は比較的大きなSiでもせいぜい0.6Vしか得られない。ところが、0.6Vで電着が可能な材料は限られている。そこで、足りない電圧はバイアス電圧を印加して補う必要がある。印加できるバイアス電圧の上限は、ショトキーバリアーが維持される限界までである。ショトキーバリアーが壊れると、光が当たってない領域も電流が流れて、基材の全領域に電着膜が形成されマイクロレンズアレー層の形成ができなくなる。例えば、2.0Vで電着される材料であれば、1.5Vのバイアス電圧を印加して光を照射すると、光起電力層14の半導体の光起電力0.6Vを足して2.1Vとなり、電着に必要な閾値電圧を越えて、光が照射された選択領域のみに光電着膜が形成される。
次に、光起電力層に用いる材料(半導体)と電着膜形成能力のある膜形成材料との組合せであるが、これは使用する半導体の極性によって決まる。光起電力薄膜の形成には太陽電池として良く知られているように、半導体と接触した界面に生じたショトキーバリアやpnあるいはpin接合を利用する。一例として、n型半導体を例にとって説明する。n型半導体と溶液との間にショトキーバリアーがある時に、半導体側を負にした場合には電流が流れる順方向であるが、逆に半導体側を正にした時には電流が流れない。ところが、半導体側を正にして電流が流れない状態でも、光を照射するとエレクトロン・ホールペアが発生し、ホールが溶液側に移動して電流が流れる。この場合、半導体電極を正にするのであるから電着される材料は負イオンでなければならない。従って、n型半導体とアニオン性分子との組合せとなり、逆に、p型半導体ではカチオン性分子が電着されることになる。
本発明におけるpHが変化することにより水性液体に対する溶解性ないし分散性が低下する膜形成材料としては、カルボキシル基やアミノ基などのように、液のpHが変わることにより、そのイオン解離性が変化する基(イオン性基)を分子中に有している物質を含むことが好ましい。しかし、前記材料は必ずしもイオン性基の存在が必須ではない。また、イオンの極性も問わない。
pHが変化することにより水性液体に対する溶解性ないし分散性が低下する膜形成材料は、マイクロレンズアレーの機械的強度等の観点からも、上記のような性質を有する高分子材料であることが好ましい。このような高分子材料としては、前記のようにイオン性基を有する高分子材料(イオン性高分子)が挙げられる。該イオン性高分子は、水系液体(pH調節を行った水系液体を含む。)に対して十分な溶解性あるいは分散性を有していること、また光透過性を有していることが必要である。
また、pHの変化により水性液体に対する溶解性ないし分散性が低下する機能をもたせるために、前記高分子材料はその分子中に疎水性基を有するモノマー単位(疎水性単位)とイオン解離する基を有するモノマー単位(イオン解離単位)とを有していることが好ましく、上記イオン解離する基として、カルボキシル基(アニオン性基)、アミノ基(カチオン性基)等のイオン化可能性基が導入されていることが好ましい。たとえばカルボキシル基を有する高分子材料の場合、pHがアルカリ性領域においてはカルボキシル基が解離状態になって水性液体に溶解し、また酸性領域においては解離状態が消失し溶解度が低下し析出する。
前記高分子材料における上記疎水性単位の存在により、前記のようなpHの変化によってイオン解離している基がイオン性を失うことと相俟って、瞬時に膜を析出させるという機能が高分子材料に付与される。また、この疎水基は、後述する屈折率制御微粒子を吸着する能力があり、重合体に良好な分散機能を付与する。また、前記イオン解離する基として、他にヒドロキシ基等を挙げることができる。
疎水性単位とイオン解離単位とを有する重合体中の疎水性単位の数としては、疎水性単位とイオン解離単位との総数の30〜80%の範囲にあるものが好ましい。疎水性単位の数がイオン解離単位と疎水性単位との総数の30%未満のものは、形成された膜が再溶解し易く、膜の耐水性や膜強度が不足する場合があり、また、疎水性単位の数がイオン解離単位と疎水性単位との総数の80%より大きい場合は、水系液体への重合体の溶解性が不十分となるため、電解液が濁ったり、材料の沈殿物が生じたり、電解液の粘度が上昇しやすくなる。イオン解離単位と疎水性単位との総数に対する疎水性単位の数は、より好ましくは55%から70%の範囲である。この範囲のものは、特に膜の析出効率が高く、電解液の液性も安定している。また、光起電力の低い電着電位で膜形成ができる。
前記高分子材料としては、たとえば、イオン解離する基を有する重合性モノマー、疎水性基を有する重合性モノマーを共重合させたものが挙げられる。
また、イオン解離する基を含む重合性モノマーとしては、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリルアミド、無水マレイン酸、フマル酸、プロピオル酸、イタコン酸など、およびこれらの誘導体が用いられるが、これらに限定されるものではない。中でも特に、メタクリル酸、アクリル酸はpH変化による着膜効率が高く、有用な親水性モノマーである。
また、前記疎水性基を有する重合性モノマー材料としては、アルケン、スチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、アクリロニトリル、酢酸ビニル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ラウリルなど、およびこれらの誘導体が用いられるが、これらに限定されるものではない。特に、スチレン、α−メチルスチレンは疎水性が強いために、再溶解に対するヒステリシス特性を得やすく有用な疎水性モノマーである。
本発明のマイクロレンズアレーの製造方法において用いる高分子材料としては、前記イオン解離単位としてアクリル酸またはメタクリル酸を、前記疎水性単位としてスチレンまたはα−メチルスチレンを用いる共重合体が好ましく用いられる。すなわち、上記高分子材料としては、良好な着膜特性が得られるという観点から、カルボキシル基を有するものを用いることが好ましい。該カルボキシル基の含有量としては、上記高分子材料を構成する全単量体中のカルボキシル基を有する単量体の比率として、5〜35モル%の範囲であることが好ましい。
本発明のマイクロレンズアレー製造方法において膜構成材料として利用される高分子材料は、このようなイオン解離する基および疎水性基をそれぞれ含む重合性モノマーを、好ましくは、高分子中のイオン解離する基と疎水性基との数の割合が、前記のごとき比率となるように共重合させた高分子材料であり、各イオン解離する基及び疎水性基の種類は1種に限定されるものではない。
また、本発明において用いる高分子材料には、必要により架橋性基を導入することができる。このような架橋性基の導入により、後述する電解液中に含まれる架橋に寄与する官能基を有する架橋剤等による架橋を促進させることができると共に、マイクロレンズアレー作製後においても熱処理等により架橋・硬化させることができ、マイクロレンズアレーの機械的強度や耐熱性をさらに向上させることができる。
上記架橋性基としては、エポキシ基、ブロックイソシアネート基(イソシアネート基に変化しうる基を含む)、シクロカーボネート基、メラミン基等が挙げられる。したがって、前記高分子材料として、たとえば架橋性基を有する重合性モノマー、親水基を有する重合性モノマー、疎水基を有するモノマーを共重合させたものが好適に用いられる。
前記架橋性基を有する重合性モノマーとしては、たとえばグリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アジド、メタクリル酸2−(O−〔1’−メチルプロピリデンアミノ〕カルボキシアミノ)エチル(昭和電工(株)製、商品名:カレンズMO1−BN)、4−((メタ)アクリロイルオキシメチル)エチレンカーボネート、(メタ)アクリロイルメラミン等が挙げられる。これらの架橋性モノマーは、用いるモノマーの種類によっても異なるが、一般的に高分子化合物中1〜20モル%含まれることが好ましい。尚、ここでいう例えば「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」または「メタクリレート」を意味する。
前記高分子材料の重合度は、6,000〜25,000の範囲のものが良好な着膜性を得る高分子材料となる。より好ましくは、重合度が9,000から20,000の材料である。重合度が6,000より低いと再溶解し易くなる場合がある。重合度が25,000より高いと、水系液体への溶解性が不十分となり、液体が濁ったり沈殿物が生じたりして問題を生じる場合がある。
また、前記高分子材料がカルボキシル基等のアニオン性基を有している場合、この高分子材料の酸価は、60〜300の範囲において良好な着膜特性が得られる。特に90〜195の範囲がより好ましい。前記酸価が60より小さいと、水系液体への溶解性が不十分となり、電解液の固形分濃度を適正値まで上げることができなくなったり、液体が濁ったり沈殿物が生じたり、液粘度が上昇したりする場合がある。また、酸価が300を超えると、形成された膜が再溶解しやすくなる場合がある。
また、前記高分子材料は、それが溶解している電解液のpH値の変化に応じて、溶解状態あるいは分散状態から上澄みを発生して沈殿を生じる液性変化が、pH領域範囲が2以内で生じることが好ましい。前記のpH領域範囲が2以内であると、急峻なpH変化に対しても瞬時に膜の析出が可能となり、また析出する膜の凝集力が高く、電解液への再溶解速度が低減するなどの効果が優れている。そしてこのことにより、各マイクロレンズの形が整った高い集積度のマイクロレンズアレーが得られる。
前記pH領域範囲が2より大きい場合は、十分な薄膜構造を得るための着膜速度の低下や、膜の耐水性の欠如などが起こりやすい。より好ましい特性を得るには、前記pH領域範囲が1以内である。
さらに、前記のごとき高分子材料が溶解した状態の電解液は、pH値の変化に対して沈殿を生じる状態変化が急峻に生じることの他に、前述のように、再溶解しにくいという特性(ヒステリシス特性)を有していることが好ましい。
上記特性を有する高分子材料は、親水基と疎水基の種類、親水基と疎水基のバランス、酸価、分子量等を適宜、調節することにより得られる。本発明の電解液に含まれる膜形成材料としての高分子材料は、薄膜の形成効果を損なわない限りにおいて、以上述べたような材料を任意に組み合わせることができ、2種類以上のアニオン性分子の混合物のような同極性分子の混合物、あるいはアニオン性分子とカチオン性分子の混合物のような異極性分子の混合物が挙げられる。
本発明においては、前記電解液がラジカル発生剤、酸発生剤、及び架橋に寄与する官能基を有する架橋剤のうちの少なくとも1種を含有する必要がある。このように、予め電解液中に架橋を誘起する化合物及び/または架橋を構成する化合物を含ませておくことにより、形成されたマイクロレンズアレー層中にこれらの化合物が含まれることとなり、前述の如く、マイクロレンズアレー層を前記加熱処理する場合においても、加熱処理中あるいは加熱処理前に膜形成材料を架橋することができ、該加熱処理による形状変化を低減することができる。
前記ラジカル発生剤、酸発生剤とは、熱、光等により各々ラジカル、プロトンを発生させる化合物をいい、生じたラジカルやプロトンが膜構成材料である高分子を攻撃し、水素引き抜きやプロトン供与を行い、その後再結合やイオン的結合等により連鎖間を架橋する。なお、上記ラジカル発生剤、酸発生剤は、共に単に水素引き抜きやプロトン供与を行う(架橋を誘起する)だけでなく、その後に、これらの化合物自体が、架橋の結合部分を構成する(架橋を構成する)場合もある。
また、前記架橋に寄与する官能基を有する架橋剤とは、文字通りこれらの官能基が膜構成材料である高分子の官能基と反応し化学的結合を成し、その化合物自体が架橋の結合部分を構成して架橋構造を形成するものをいう。
前記ラジカル発生剤としては、例えばベンゾフェノン系化合物として、2−ベンジル−2,2−ジメチルアミノ−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、2,2−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)ビイミダゾール、4−〔o−ブロム−p−N,N’−ジ(エトキシカルボニル)アミノフェニル〕−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、7−〔〔4−クロロ−6−(ジエチルアミノ)−s−トリアジン−2−イル〕アミノ〕−3−フェニルクマリンなどを、
また、トリハロメチル基含有トリアジン誘導体として、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メチルチオフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジンなどを挙げることができる。
これらの中では、2−ベンジル−2,2−ジメチルアミノ−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、2,2−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)ビイミダゾール、2−(p−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジンが好ましく用いられる。
前記酸発生剤としては、例えばオニウム塩化合物類として、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスネート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロアセネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、ジフェニルヨードニウム−p−トルエンスルホネート、4−メトキシフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、4−メトキシフェニルヨードニウムトリフルオロアルセネート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロアセネートなどを挙げることができる。
これらの中では、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、ジフェニルヨードニウム−p−トルエンスルホネートが好ましく用いられる。
前記架橋に寄与する官能基を有する架橋剤としては、特に構造的に制限されないが、官能基として水酸基、アミノ基、カルボキシル基、イソシアネート基、エポキシ基などを複数有する化合物が挙げられ、このような官能基を有する化合物としては、ベンゾフェノン系化合物、トリハロメタン基含有トリアジン誘導体などが好ましく用いられる。
本発明においては、以上のラジカル発生剤、酸発生剤、架橋に寄与する官能基を有する架橋剤のうちの少なくとも1種を電解液に含有させることにより、形成されたマイクロレンズアレー層を十分に硬い堅牢な膜とすることができる。また、ラジカル発生剤、酸発生剤、架橋に寄与する官能基を有する架橋剤の各々について2種以上用いてもよい。
上記十分に堅牢な膜とするためのラジカル発生剤等の含有量は、電解液中の固形分濃度で0.005〜20質量%の範囲が好ましく、0.05〜5.0質量%の範囲がより好ましい。
また、ラジカル発生剤等が含有されたマイクロレンズアレー層を前記加熱処理においてTg以上に熱した場合でも、マイクロレンズアレーが形状を維持できる程度に架橋されるためには、例えば、加熱の場合は120℃で10分間程度、光照射の場合は光強度5mW/cm2の紫外線ランプで4分間程度架橋を行うことが好ましい。なお、この架橋は前記加熱処理と同時に行ってもよいし、加熱処理前に行ってもよい。
次に電解液の導電率について説明する。導電率は着膜スピードいいかえれば、着膜量に関連しており、導電率が高くなればなるほど一定時間に付着する膜の膜厚が厚くなり約10mS/cmで飽和する。従って、高分子材料だけでは導電率が足りない場合には、着膜に影響を与えないイオン、例えばNH4+イオンやCl-イオンを加えてやることで着膜スピードをコントロールすることができる。通常、電解液は、支持塩を加えて導電率を高める。電気化学で、一般的に使われる支持塩は、NaClやKCl等のアルカリ金属塩や、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、テトラエチルアンモニウムパークロレート((C2H5)4NClO4)等のテトラアルキルアンモニウム塩が用いられる。本発明でもこれらの支持塩を使用することができる。
また、電解液のpHも当然ながら薄膜の形成に影響する。例えば、薄膜形成前には着膜性分子の溶解度が飽和するような条件で着膜を行えば薄膜形成後には再溶解しにくい。ところが、未飽和状態の溶液のpHで膜の形成を行うと、薄膜が形成されても、光照射をやめた途端に膜が再溶解し始める。従って、溶解度が飽和するような溶液のpHで薄膜の形成を行うほうが望ましいことから、所望のpHに酸やアルカリを用いて電解液を調整する必要がある。
特に、前記光電着法は、既述の如く、電解液のpHと析出開始点との関係を考慮したり、あるいはヒステリシス特性を有する電解液を用いることにより、低電圧での膜形成が可能である。
通常の電着塗装では70V以上の印加電圧をかけ、電解液のpH設定は電着材料の析出開始点よりかなり高いpH設定を行いコルベ反応に基づく不可逆反応を電着基板上で起こさせることにより膜形成を行っている。しかしこのような高電圧の膜形成においては気泡が発生する結果、電極表面の電界分布が不均一になって膜自体の膜質が不均一になったり、気泡の脱泡現象により膜表面に凹凸が生じたりして、解像度および平滑性が良好な微細パターンを再現性よく形成することができない。一方この場合、単に電圧を低くしても、電圧印加を停止すると直ちに膜が再溶解を起こし、解像度のよい微細なパターンを形成することはできない。
これに対し、前述のような特性を有する電解液を用いると、低電圧印加でも容易に析出し、電圧の印加を止めても直ぐに再溶解しないというメリットを有する。ここでいう電圧印加とは、光照射により光起電力層薄膜に生ずる光起電力あるいはこれに補助的に足すバイアス電圧の和を意味する。該印加電圧は9V以下、好ましくは5V以下であることが好ましい。光起電力だけで膜形成が可能であれば、バイアス電圧は不要である。
本発明のマイクロレンズアレーの製造方法は、既述の如く、着膜法(光電着法、光触媒着膜法)を利用するものである。これらの方法による着膜は、得られる膜厚が光起電力層薄膜に照射された光の量に対応するので、このことを利用して、各マイクロレンズの断面形状に対応した膜厚が形成されるように、光起電力層薄膜の選択領域に、所定の調節した量の光を照射する。前記着膜法は、微細なパターンを解像度よく形成できるため、本発明のマイクロレンズアレーの製造方法により集積度が高いマイクロレンズアレーが得られる。
光起電力層薄膜の選択領域への光照射は、フォトマスクを介しての光照射あるいはレーザー光照射等により行われることが好ましい。例えば光が透過する各光透過部(以下において開口部ということがある)が円形であるフォトマスクを通して光照射を行った場合、光起電力層薄膜に照射される光強度は、フォトマスクの各開口部の周縁部に相当する部分と中央部に相当する部分とでは、周縁部に相当する部分の方が中央部に相当する部分よりも光強度が弱くなるという、各パターンに対応して露光強度の差が生ずる。したがって、光起電力層薄膜に生ずる光起電力においても、円の周縁部に相当する部分と中央部に相当する部分とで光起電力に差が生じ、それに対応して形成される膜厚に差が生ずる。すなわち、得られる膜パターンは、円形の平面形状を有し、かつ断面形状における膜厚が円の周縁に向かって減少するレンズ様形状の膜が形成されることになる。
本発明においては、前記フォトマスクにおいて、開口部(光透過部)を通って透過する光強度が、開口部中央部から周縁部にかけて小さくなるように、開口部に所定のレンズ形状パターンに従った光透過率の階調性をもたせることにより、形成される各レンズ断面の形状あるいは曲率を自由に制御することができる。例えば、フォトマスクの開口部に光を通さない微少なドットを形成し、そのドットの密度を開口部周縁から中心にかけて減少させることにより、各開口部を通る光強度を中心から周縁に向けて減少させる方法が採られる。その際、上記ドット密度の分布を、レンズの曲率に対応した膜厚が形成されるように調節すれば、所望のレンズ形状を得ることができる。
前記光起電力層薄膜への選択的な光照射をレーザー光により行うこともできる。この際、レーザー光の照射強度をレンズ形状あるいは曲率に対応した膜厚が形成されるように変化させて照射することにより、設定したレンズ形状あるいは曲率を有するマイクロレンズアレーが得られるように制御することができる。
また、レーザー光は、所定のレンズ形状パターンに従って変化する強度分布を有するものでもよく、たとえば、ガウシアンエネルギー分布を有するビーム、すなわち、ビームの中央部から周縁にかけて光強度が減少するレーザー光ビームをそのまま用いることにより、目的とするレンズ形状のパターンが得られる。
図2に、以上のような方法により作製されるマイクロレンズアレー2の一例を構成断面図として図示する。図中、10は絶縁性基板、12は導電性薄膜、14は光半導体薄膜、20はマイクロレンズをそれぞれ示す。
本発明におけるマイクロレンズアレーは、最終的には図2に示すように、マイスロレンズ20が一定間隔に密に配置されたものとなるが、前記選択領域に光照射して膜形成を行う場合には、当初からマイクロレンズ20をすべて膜形成してしまうと、膜形成後のマイクロレンズ間の洗浄等が不充分となり、各マイクロレンズ20の形状精度が低下してしまう。このため、前記選択領域への光照射は1度にすべてのマイクロレンズ20の部分について行うのではなく、例えば、全マイクロレンズ面積の25〜50%の範囲程度ずつ複数回に分けて行うことが好ましい。
マイクロレンズアレー2を構成する膜形成材料は、前記のように高分子材料からなる電着膜だけでもよいが、この場合の屈折率は1.4〜1.6の範囲程度であるので、さらに屈折率が高いマイクロレンズアレーを得るためには、電解液に上記高分子材料の他に、光透過性で屈折率の高い無機化合物微粒子を分散させ、高分子材料とともに着膜させ、膜の屈折率を制御することができる。
前記無機化合物微粒子としては、屈折率が1.8〜2.8の範囲程度のものを用いることが好ましく、たとえば、TiO2、ZnO、ZrO2、ITO等がいずれも利用可能である。これらの中では、屈折率の制御範囲が大きいことと安定性が高いことからルチル型酸化チタン微粒子が好ましい。前記微粒子の粒径は、5〜300nmの範囲が好ましく、20〜120nmの程度がより好ましい。また、その添加量は、マイクロレンズアレー2に要求される屈折率およびマイクロレンズアレー2の機械的強度等を考慮に入れて適宜決められる。
なお、着膜性高分子に置換基を付けて、高分子の屈折率を変えるということ可能である。
また、既述の如く、前記着膜法により析出形成されたマイクロレンズアレー層が散乱性を有して光透過性が不十分な場合には、マイクロレンズアレー層を構成する高分子材料のガラス転移点(Tg)以上に加熱すること(加熱処理)により、層内の空隙を除去して、光透過性を向上させることができるが、本発明におけるマイクロレンズアレー層は、上記加熱処理においても形状変化等を生じることがない。前記加熱処理前後でのマイクロレンズ20の境界のエッジ部(図2におけるA)のズレは、マイクロレンズ20の大きさによっても異なるが、0.05〜10μmの範囲であることが好ましく、0.1〜5μmの範囲であることがより好ましい。
さらに、透過率を向上させるために、前記方法で形成したマイクロレンズ20の表面に反射防止膜30を施すことが好ましい。この反射防止膜30の材料には、屈折率が低いSiO2が好ましく用いられる。そして、一般的には、空気に接する膜の、膜厚と屈折率との積であらわされる光学膜厚が、可視帯域の中心近くである波長の1/4またはその整数倍であることが好ましい。従って、可視域(400nm〜700nm)で透明性を得る場合は、中心波長を550nmとした場合、屈折率が1.43のSiO2の場合には、反射防止膜30の膜厚は96nmまたはその整数倍とすることが好ましい。
実際のレンズ設計をするに当たっては、膜形成材料(高分子材料、無機化合物微粒子等)の屈折率が用いる材料によって異なるため、アプリケーションに必要な透過率や波長を厳密なシミュレーションを行って決定する必要がある。
本発明により作製されるマイクロレンズアレー2において、マイクロレンズ20の大きさは直径が5〜100μmの範囲が好ましく、曲率半径が30〜1000μmの範囲が好ましい。また、各々のマイクロレンズ20の間隔は、1〜20μmの範囲が好ましい。
次に、本発明に用いるマイクロレンズアレー製造装置について説明する。
図3は、フォトマスクを用い、光電着法によりマイクロレンズアレーを形成するマイクロレンズアレー製造装置を示す概念図である。図3で示すマイクロレンズアレー製造装置は、紫外線を照射するための光源(図示せず)、第一の結像光学レンズ72と、第二の結像光学レンズ73を有する結像光学系、第一の結像光学レンズと第二の結像光学レンズの間に挿入したフォトマスク71、電解液を収納した電着槽80、ポテンショスタットのごとき電圧印加のための手段90、対向電極91、飽和カロメル電極のごときリファレンス電極92を備えている。また、このマイクロレンズアレー製造装置において、前記結像光学系に代え、ミラー反射光学系を使用することも可能である。
そして、図3で示すように、前記製造装置にマイクロレンズアレー作製基板を、電着槽80に光起電力層薄膜14が電解液に接触するように配置させて使用する。前記投影光学系を用いることにより、光起電力層薄膜14にパターン露光を結像させることができ、短い露光時間で微細なマイクロレンズアレーを形成することができる。なお、光起電力だけで必要な電着電圧を得られる場合には、前記電圧印加のための手段を省略できることはいうまでもない。
光源としては、光起電力層薄膜を構成する透明な半導体に感度がある波長を有するものが必要であり、波長が400nm以下である光源で露光することが好ましい。具体的には、水銀灯や水銀キセノンランプなどの350nm〜400nmの波長の光が使われる。
前記結像光学系の第二結像光学レンズ73と光透過性の基板面との距離は、1mm〜50cmの範囲とすることが取り扱いの点からみて好ましく、5mm〜50mmの範囲とすることがより好ましい。また、第二結像光学レンズ73の焦点深度は、±10〜±200μmの範囲であることが精度と取り扱いの点から好ましく、±30〜±100μmの範囲とすることがより好ましい。
また、フォトマスク71と光起電力層薄膜14とが近接している場合、前記のごとき結像光学系やミラー反射光学系を有する露光装置を備えた装置を用いる必要はなく、平行光あるいは密着型の露光装置により光照射をすることができる。照射光源としてはたとえば、Hg−Xeの均一照射光源を用いることができる。たとえば、フォトマスク71をマイクロレンズアレー作製基板の絶縁性の基板10に密着させ、あるいはこれに加えさらに絶縁性の基材10を0.2mm以下にして光の回折を防ぐことにより、集積度の高いマイクロレンズアレー形成が可能となる。
もちろん、露光時間が長時間でもかまわないならば、安価な走査型レーザー書き込み装置によっても光照射は可能である。図示しないが、図3の露光装置に代えて、He−Cdレーザ等のレーザ光照射のための走査型レーザー書き込み装置を用いることができる。この際、レーザー光ビームとしてガウシアンビーム、すなわち、ビーム中心ほど光強度が強く周辺に行くに従って弱くなるものを用い、レーザー光をON/OFFすることにより、所定の位置にレーザー光を照射させると、ビーム径に従って曲率等が定まるマイクロレンズがアレー状に形成される。
この他に、パターン解像度の許す範囲ならばプロキシミティ型露光装置も使用可能である。
前述のマイクロレンズアレー製造装置における露光については、マイクロレンズアレー作製基板の絶縁性の基材10側から露光する場合を説明したが、光起電力層薄膜14側から露光してもよい。光起電力層薄膜14側から露光する場合には、前記マイクロレンズアレー作製基板は電解液中に浸漬されることになるが、本発明において用いられる電解液は、照射光として用いられる紫外線を吸収しないため、電解液を通して光起電力層薄膜14に露光することができる。しかし、膜厚が厚くなると光の吸収が無視できなくなりレンズ形状を作るのが困難になるので、絶縁性の基材10側から露光する方が望ましい。また、光電着法において、光起電力層により電着に充分な起電力が得られる場合には、電圧印加装置によりバイアス電圧を印加する必要はない。
なお、前記図3において、電圧印加装置90を導電性薄膜12に連結しているが、光起電力層薄膜14が作用電極として機能している。
光触媒着膜法によりマイクロレンズアレーを作製するための装置としては、前記図3に示す装置から、電圧印加のための手段90、対向電極91およびリファレンス電極92を除いた構成のものを用いればよい。この装置を用いてマイクロレンズアレーを作製する際は、マイクロレンズアレー作製基板の導電性薄膜10が電解液に導通していることが必要である。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
厚さ0.5mmの石英ガラス基板(基材)の表面に、透明導電層(導電性薄膜)としてITOをスパッタリング法で厚さ0.1μm製膜し、さらに光起電力層薄膜としてTiO2を厚さ0.2μm製膜した。そして、このTiO2の光電流特性を上げるために、水素と窒素との混合気体中で還元処理を行いマイクロレンズアレー作製基板とした。なお、該還元処理は、4%の水素ガスが混合された純窒素ガス中、460℃で10分間アニールすることにより行った。
次に、純水中に高分子材料(スチレン−アクリル酸ランダム共重合体、重量平均分子量:19,000、疎水基/(親水基+疎水基)のモル比:73モル%、酸価:97、ガラス転移点:75℃、分解点:247℃、析出開始点:pH5.8)を加え、これに無機アルカリを入れてpHを調整し、pHが7.7で固形分濃度が6質量%の水溶液を作製した。この水溶液に、1質量%の2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジンのイソプロピルアルコール溶液を、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジンが5質量%になるように攪拌しながら加え電解液を作製した。また、その時の電解液の導電率が、3S/cmとなるように無機塩により調整した。
図3に示す電気化学分野で一般的な三極式の電着装置を用い、電着槽80に上記電解液を入れ、リファレンス電極92としての飽和カロメル電極に対し、前記TiO2の光起電力層薄膜14を作用電極として利用した。この時、第一の結像光学レンズ72からの光は一旦とフォトマスク71に結像し、更に第二の結像光学レンズ73を介して基材10の裏面にあるTiO2薄膜表面に結像するように調節した。第二の結像光学レンズ73と結像面との距離は10cmとし、焦点深度は±50μmとした。
また、フォトマスク71は、所定のマイクロレンズアレーを形成できるようにレンズ1個に相当する光透過部分に黒い微少ドットを中央部から周縁に向かって密度が高くなるように形成し、濃度階調(光透過率の階調)を持たせた。
そして前記作用電極に1.7Vのバイアス電位を与えて、基材10の裏側から水銀キセノンランプ(山下電装製、波長:365nm、光強度:50mW/cm2)により、マイクロレンズのマスクパターンのフォトマスク71を用いてTiO2の光起電力層薄膜14の選択領域に63秒間前記光を照射した。その結果、光起電力層薄膜表面の透過光が照射された領域に、マイクロレンズ形状のパターンの透明高分子を含む膜(マイクロレンズアレー層)が形成された。なお、この時の膜形成は光起電力層薄膜14の表面に最終的に形成されるマイクロレンズ全体の面積に対し、面積率で50%となるように間隔を置いて行った。その後、純水による水洗と室温の乾燥エアーによる乾燥とを行った。
次いで、前記と同様にして、高分子材料であるスチレン−アクリル酸共重合体水溶液に無機アルカリを入れてpHを調整し、pHが7.8、固形分濃度が6質量%の水溶液を作製し、この水溶液に、1質量%の2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジンのイソプロピルアルコール溶液を、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジンが5質量%になるように攪拌しながら加え電解液を作製した。また、その時の電解液の導電率が8S/cmとなるように無機塩により調整した。
前記と同様の電着装置の電着槽80に上記電解液を入れ、飽和カロメル電極に対しTiO2の光起電力層薄膜14を作用電極として利用するように同様に配置した。そして作用電極に1.7Vのバイアス電位を与えて基材10の裏側から前記水銀キセノンランプにより、フォトマスク71を用いて光起電力層薄膜14の選択領域に72秒間光を照射した。なお、この時の光照射領域は、前記最初に膜形成を行った領域以外の、残りの面積率で50%の所定のマイクロレンズ形成領域とした。
その結果、TiO2の光起電力層薄膜表面の透過光が照射された領域に、マイクロレンズ形状のパターン(マイクロレンズアレー層)が前記と同様に形成され(前記面積率で50%)、すべてのマイクロレンズ形成位置にマイクロレンズが配置されたマイクロレンズアレー層が得られた。その後、純水による水洗と室温の乾燥エアーによる乾燥とを行い、次いで、pHが4.5のpH調整液体で十分にカスケイド洗浄を行い、再度純水による洗浄を行った。
次に、作製した試料を80℃のオーブンで1時間加熱し、電着膜の硬質化処理(架橋)を行なった。またその後、マイクロレンズの透明性を高めるため、その試料を200℃のオーブンで30分間加熱処理し、最終的なマイクロレンズアレーを作製した。
上記マイクロレンズアレーには、レンズ直径が30μm、曲率半径が20μmのマイクロレンズが100mm角の基板全面に形成されており(レンズ集積度:6×105個/cm2)、境界のエッジ部のズレは5μm、屈折率は1.55であった。また、有機溶剤(エタノール)による超音波耐久性試験(60時間)を行なったところ、マイクロレンズアレーの形状に変化はなく、膜表面にも何ら変化は見られなかった。
また、この試料をを50℃の希塩酸溶液中に20日間浸漬し、形成された膜の膜質を観察したが、変化が確認できず、このマイクロレンズアレーは十分な堅牢性を示すことが示された。さらに、この膜は、2Hの鉛筆引っ掻きテストに対しても、傷を生じない硬質膜であることが実証された。
(実施例2)
厚さ0.5mmのガラス基板(基材)の表面に、透明導電層(導電性薄膜)としてITOをスパッタリング法で厚さ0.1μm製膜し、さらに光起電力層薄膜としてTiO2をゾル−ゲル法で厚さ0.1μm成膜し、500℃で30分間加熱を行なった。そして、このTiO2の光電流特性を上げるために、実施例1と同様、還元処理として5%の水素ガスが混合された純窒素ガス中、360℃で20分間アニールを行い、マイクロレンズアレー作製基板とした。
次に、純水中に高分子材料(スチレン−アクリル酸ランダム共重合体、重量平均分子量:22,000、疎水基/(親水基+疎水基)のモル比:73モル%、酸価:100、ガラス転移点:85℃、流動開始点:134℃、分解点:247℃、析出開始点:pH5.9)を加え、これに無機アルカリを入れてpHを調整し、pHが7.8で固形分濃度が6質量%の水溶液を作製した。この水溶液に、2質量%のジフェニルヨードニウム−p−トルエンスルホネートのジオキサン溶液を、ジフェニルヨードニウム−p−トルエンスルホネートが5質量%になるように攪拌しながら混合して加え電解液を作製した。また、その時の電解液の導電率が、8S/cmとなるように無機塩により調整した。
実施例1と同様に、図3に示す電着装置の電着槽80に上記電解液を入れ、同様に前記マイクロレンズアレー作製基板を配置した。そして作用電極に1.8Vのバイアス電位を与えて、基材10の裏側から水銀キセノンランプ(山下電装製、波長:365nm、光強度:50mW/cm2)により、実施例1と同様のマイクロレンズのマスクパターンのフォトマスク71を用いてTiO2の光起電力層薄膜14の選択領域に93秒間前記光を照射した。
その結果、光起電力層薄膜表面の透過光が照射された領域に、最大厚さが7.5μmのマイクロレンズ形状のパターンの透明高分子を含む膜(マイクロレンズアレー層)が形成された。なお、この時の膜形成は光起電力層薄膜14の表面に最終的に形成されるマイクロレンズ全体の面積に対し、面積率で50%となるように間隔を置いて行った。そして、純水による水洗と室温の乾燥エアーによる乾燥とを行った後、pHが4.5のpH調整液体で十分にカスケイド洗浄を行い、再度純水による洗浄を行った。
次いで、前記と同様にして、高分子材料であるスチレン−アクリル酸共重合体(重量平均分子量:14,000、疎水基/(親水基+疎水基)のモル比:73モル%、酸価:109、ガラス転移点:42℃、分解点:238℃、析出開始点: pH6.3)水溶液に無機アルカリを入れてpHを調整し、pHが7.8、固形分濃度が6質量%の水溶液を作製し、この水溶液に、2質量%のジフェニルヨードニウム−p−トルエンスルホネートのジオキサン溶液を、ジフェニルヨードニウム−p−トルエンスルホネートが5質量%になるように攪拌しながら加え電解液を作製した。また、その時の電解液の導電率が5mS/cmとなるように無機塩により調整した。
前記と同様の電着装置の電着槽80に上記電解液を入れ、飽和カロメル電極に対しTiO2の光起電力層薄膜14を作用電極として利用するように同様に配置した。そして作用電極に1.8Vのバイアス電位を与えて基材10の裏側から前記水銀キセノンランプにより、フォトマスク71を用いて光起電力層薄膜14の選択領域に106秒間光を照射した。なお、この時の光照射領域は、前記最初に膜形成を行った領域以外の、残りの面積率で50%の所定のマイクロレンズ形成領域とした。
その結果、TiO2の光起電力層薄膜表面の透過光が照射された領域に、最大厚さ7.8μmのマイクロレンズ形状のパターン(マイクロレンズアレー層)が前記と同様に形成され(前記面積率で50%)、すべてのマイクロレンズ形成位置にマイクロレンズが配置されたマイクロレンズアレー層が得られた。その後、純水による水洗と室温の乾燥エアーによる乾燥とを行い、次いで、pHが4.8のpH調整液体で十分にカスケイド洗浄を行い、再度純水による洗浄を行った。
その後、190℃の加熱オーブンで熱処理を行ない、電着膜の硬質化処理と、マイクロレンズの透明性を高めるための加熱処理とを同時に行った。
上記マイクロレンズアレーには、レンズ直径が30μm、曲率半径が20μmのマイクロレンズが100mm角の基板全面に形成されており(レンズ集積度:5×105個/cm2)、境界のエッジ部のズレは2μm、屈折率は1.57であった。また、有機溶剤(エタノール)による超音波耐久性試験(60時間)を行なったところ、マイクロレンズアレーの形状に変化はなく、膜表面にも何ら変化は見られなかった。
また、この試料をを50℃の希塩酸溶液中に20日間浸漬し、形成された膜の膜質を観察したが、変化が確認できず、このマイクロレンズアレーは十分な堅牢性を示すことが示された。さらに、この膜は、2Hの鉛筆引っ掻きテストに対しても、傷を生じない硬質膜であることが実証された。
なお、最終的にはマイクロレンズアレー層の表面に、保護層として透明なエポキシ樹脂を厚さ0.5μmコーティングしてマイクロレンズアレーを完成させた。
(実施例3)
厚さ0.2mmのポリスルフォンフィルム(基材)の表面に、透明導電膜(導電性薄膜)としてITOをスパッタリング法で厚さ0.16μm製膜し、さらに光起電力層薄膜としてTiO2を厚さ0.2μm製膜した。そして、このTiO2の光電流特性を上げるために、実施例1と同様、還元処理として4%の水素ガスが混合された純窒素ガス中、170℃で20分間アニールを行い、マイクロレンズアレー作製基板とした。その後、pH4.2のpH調整液体で洗浄した。
次に、純水中に高分子材料(スチレン−アクリル酸ランダム共重合体、重量平均分子量:13,000、疎水基/(親水基+疎水基)のモル比:70モル%、酸価:95、ガラス転移点:46℃、分解点:244℃、析出開始点:pH5.9)を加え、これに無機アルカリを入れてpHを調整し、pHが7.8で固形分濃度が8質量%の水溶液を作製した。この水溶液に、2.5質量%の2−ベンジル−2,2−ジメチルアミノ−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オンのジオキサン溶液を、2−ベンジル−2,2−ジメチルアミノ−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オンが5質量%になるように攪拌しながら混合して加え電解液を作製した。また、その時の電解液の導電率が、12mS/cmとなるように無機塩により調整した。
実施例1と同様に、図3に示す電着装置の電着槽80に上記電解液を入れ、同様に前記マイクロレンズアレー作製基板を配置した。そして作用電極に1.7Vのバイアス電位を与えて、基材10の裏側から水銀キセノンランプ(山下電装製、波長:365nm、光強度:50mW/cm2)により、実施例1と同様のマイクロレンズのマスクパターンのフォトマスク71を用いてTiO2の光起電力層薄膜14の選択領域に102秒間前記光を照射した。
その結果、光起電力層薄膜表面の透過光が照射された領域に、最大厚さが4.8μmのマイクロレンズ形状のパターンの透明高分子を含む膜(マイクロレンズアレー層)が形成された。なお、この時の膜形成は光起電力層薄膜14の表面に最終的に形成されるマイクロレンズ全体の面積に対し、面積率で50%となるように間隔を置いて行った。そして、純水による水洗と室温の乾燥エアーによる乾燥とを行った後、pHが4.5のpH調整液体で十分にカスケイド洗浄を行い、再度純水による洗浄を行った。
次いで、前記と同様にして、高分子材料であるスチレン−アクリル酸共重合体(重量平均分子量:10,000、疎水基/(親水基+疎水基)のモル比:68モル%、酸価:130、ガラス転移点:65℃、分解点:240℃、析出開始点: pH5.8)水溶液に無機アルカリを入れてpHを調整し、pHが7.8、固形分濃度が8質量%の水溶液を作製し、この水溶液に、2.5質量%の2−ベンジル−2,2−ジメチルアミノ−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オンのジオキサン溶液を、2−ベンジル−2,2−ジメチルアミノ−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オンが5質量%になるように攪拌しながら混合して加え電解液を作製した。また、その時の電解液の導電率が、4mS/cmとなるように無機塩により調整した。
前記と同様の電着装置の電着槽80に上記電解液を入れ、飽和カロメル電極に対しTiO2の光起電力層薄膜14を作用電極として利用するように同様に配置した。そして作用電極に1.7Vのバイアス電位を与えて基材10の裏側から前記水銀キセノンランプにより、フォトマスク71を用いて光起電力層薄膜14の選択領域に115秒間光を照射した。なお、この時の光照射領域は、前記最初に膜形成を行った領域以外の、残りの面積率で50%の所定のマイクロレンズ形成領域とした。
その結果、TiO2の光起電力層薄膜表面の透過光が照射された領域に、最大厚さ4.9μmのマイクロレンズ形状のパターン(マイクロレンズアレー層)が前記と同様に形成され(前記面積率で50%)、すべてのマイクロレンズ形成位置にマイクロレンズが配置されたマイクロレンズアレー層が得られた。その後、純水による水洗と室温の乾燥エアーによる乾燥とを行い、次いで、pHが4.2のpH調整液体で十分にカスケイド洗浄を行い、再度純水による洗浄を行った。
その後、170℃の加熱オーブンで熱処理を行ない、電着膜の硬質化処理と、マイクロレンズの透明性を高めるための加熱処理とを同時に行った。
上記マイクロレンズアレーには、レンズ直径が30μm、曲率半径が20μmのマイクロレンズが100mm角の基板全面に形成されており(レンズ集積度:8×105個/cm2)、境界のエッジ部のズレは0.6μm、屈折率は1.61であった。また、有機溶剤(エタノール)による超音波耐久性試験(60時間)を行なったところ、マイクロレンズアレーの形状に変化はなく、膜表面にも何ら変化は見られなかった。
また、この試料をを50℃の希塩酸溶液中に20日間浸漬し、形成された膜の膜質を観察したが、変化が確認できず、このマイクロレンズアレーは十分な堅牢性を示すことが示された。さらに、この膜は、2Hの鉛筆引っ掻きテストに対しても、傷を生じない硬質膜であることが実証された。
(実施例4)
厚さ0.4mmの無アルカリガラス基板(コーニング社製:#7059ガラス)の表面に、透明導電層(導電性薄膜)としてITOをRFスパッタ法で厚さ75nm製膜し、さらに光起電力層薄膜としてアナターゼ型TiO2を厚さ110nm製膜した。
次に、純水中に無機酸化物微粒子としてルチル型の酸化チタン(平均粒径:23nm、屈折率:2.7)と、高分子材料(スチレン−アクリル酸ランダム共重合体、重量平均分子量:13,000、疎水基/(親水基+疎水基)のモル比:65モル%、酸価:130、ガラス転移点:95℃、分解点:240℃、析出開始点:pH5.9)と、を質量比(酸化チタン/高分子材料)で1/5となるように加え、これに無機アルカリを入れてpHを調整し、pHが7.8で固形分濃度が12質量%の水溶液を作製した。この水溶液に、3.5質量%の2−ベンジル−2,2−ジメチルアミノ−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オンのテトラヒドロフラン溶液を、2−ベンジル−2,2−ジメチルアミノ−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オンが10質量%になるように攪拌しながら混合して加え電解液を作製した。また、その時の電解液の導電率が、3mS/cmとなるように無機塩により調整した。
実施例1と同様に、図3に示す電着装置の電着槽80に上記電解液を入れ、同様に前記マイクロレンズアレー作製基板を配置した。そして作用電極に1.8Vのバイアス電位を与えて、基材10の裏側からHe−Cdレーザー光(波長:330nm、光強度:10mW/cm2)をTiO2の光起電力層薄膜14の選択領域に照射した。上記He−Cdレーザーは、ガルバノスキャナー、AOモジュレーターと連動させており、所定の位置にレーザー光をON/OFFできる。また、該レーザー光は、ガウシアンエネルギー分布を有するビームであるために、中心ほど光強度が強く周辺に行くに従って弱くなっている。
この装置で前記レーザー光をスキャンさせたところ、最大厚さが4.2μmのマイクロレンズ形状のパターンの透明高分子を含む膜(マイクロレンズアレー層)が形成された。そして、純水による水洗と室温の乾燥エアーによる乾燥とを行った後、そのパターン像をpHが4.2のpH調整水溶液で浸水洗浄を行い、再度純水による洗浄を行った。
その後、この状態では散乱があり透明性が不十分であるために、150℃に加熱した架橋を行うと共に加熱処理して光学的な透明性を持たせた。次に、190℃の加熱オーブンに作製サンプルを入れ1時間放置し、電着膜の硬質化を完了させた。
上記マイクロレンズアレーには、レンズ直径が40μm、曲率半径が90μmの弧の部分のマイクロレンズが100mm角の基板全面に形成されており(レンズ集積度:5×105個/cm2)、境界のエッジ部のズレは0.5μm、屈折率は1.57であった。また、有機溶剤(エタノール)による超音波耐久性試験(60時間)を行なったところ、マイクロレンズアレーの形状に変化はなく、膜表面にも何ら変化は見られなかった。
また、この試料をを50℃の希塩酸溶液中に20日間浸漬し、形成された膜の膜質を観察したが、変化が確認できず、このマイクロレンズアレーは十分な堅牢性を示すことが示された。さらに、この膜は、2Hの鉛筆引っ掻きテストに対しても、傷を生じない硬質膜であることが実証された。
最後に、反射防止膜として機能するSiO2を、厚さ96nmとなるようにスパッタリングで着膜させ、透過率の高いマイクロレンズアレーとした。各レンズの焦点距離は、60〜85μmの範囲の光学性能であった。
(比較例1)
実施例1において、電解液に2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジンを加えなかった以外は、実施例1と同様にしてマイクロレンズアレーを作製した。
その結果、形成されたマイクロレンズアレー層の形状は実施例1と同様であったが、加熱処理時に膜の流動が生じ、処理後のエッジ部のズレは8μmであり、屈折率は1.54であった。また、実施例1と同様の有機溶剤による超音波耐久性試験や希塩酸溶液中への浸漬試験を行なったところ、いずれの場合も、マイクロレンズアレーの形状変化や膜質変化(クラックや脱離)が確認された。さらに、この膜は、2Hの鉛筆引っ掻きテストに対しても、耐傷性が不充分であった。