JP4329514B2 - マイクロレンズアレイ及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、マイクロレンズアレイ及びその製造方法に関し、特に液晶プロジェクタ等の表示装置や集光レンズ等の光学素子などに好適なマイクロレンズアレイ及びその製造方法に関する。
マイクロレンズアレイの製造方法としては、フォトリソ工程やドライエッチングなどのエッチング行程や、熱拡散などによる高屈折率材料ドーピング法、さらには予め形成した型にプラスチック材を流し込んでマイクロレンズアレイを形成する方法などがある。しかし、フォトリソ行程では、高解像度で任意のマイクロレンズアレイを形成できるものの、これにより作製されたマイクロレンズは階段形状のエッジで回折現象を生じさせて集光するものであるため、レンズの曲率制御が難しい。また、ドライエッチング法は長時間のエッチング時間が必要で生産効率が低く、かつレンズの曲率制御も難しい。熱拡散などによる高屈折率材料ドーピング法は、平板であるという利点はあるが屈折率だけで制御するためにレンズの形状と曲率の制限が多いこと、耐熱性が必要でガラス基材にしか使えないなど機材の制限がある。予め形成した型を用意する方法もあるが、型の微細化に制限があるなどの課題がある。また、いずれの技術も高コストであり簡便で自由度の高いマイクロレンズの作製技術とは言い難い(例えば、特許文献1〜2参照)。
一方、低コストな方法の一般例として、マイクロビーズをバインダー樹脂中に埋め込む方法もある。しかし、マイクロビーズを均一に並べることが困難であるという問題がある。
他方、本発明者等は、先に着色材を含む電着材料を用い、低電圧印加で電着あるいは光電着させること(光電着法)により解像度に優れた画像形成方法を提供した(例えば、特許文献3〜8参照)。これらに記載の方法は、簡易に高分子の膜を解像度よく形成することを特長とするものであるが、主として液晶表示装置等の表示装置の分野において応用されている技術である。
また、本発明者等は、前記方法と同様に簡易な方法で高分子の膜を解像度よく形成する光触媒着膜法をも提案した(例えば、特許文献9参照)。
上記の光電着法や光触媒着膜法による膜形成は、光半導体に光照射した際の光起電力を用いて光半導体界面のpHを変化させ、電着材料を析出させて膜成長させることにより成膜するものであり、形状が均一で集光特性の良好なマイクロレンズアレイの作製が可能で、低コスト化、量産化への期待も大きい。
特開平3−169076号公報 特開平4−286360号公報 特開平10−119414号公報 特開平11−189899号公報 特開平11−15418号公報 特開平11−174790号公報 特開平11−133224号公報 特開平11−335894号公報 特開2001−140096号公報
マイクロレンズアレイは、液晶プロジェクター等の表示装置のほか、集光レンズ等の光学素子として広く利用されてきているが、上記のように、簡便で自由度の高いマイクロレンズアレイの形成技術については確立されるまでに至っておらず、感光性材料を用いたフォトリソグラフィ法を含む複雑な工程を経て微細加工して作製されているのが通例である。
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、従来行なっていた異系統の複数の工程を同系統の工程(電着)を一連に行なうことよって簡易かつ低コストでの量産化が可能で、開口率、曲率を任意に制御して均一形状で集光効率の高いマイクロレンズアレイを作製することができるマイクロレンズアレイの製造方法及び、量産適正を有し、均一形状で集光効率に優れたマイクロレンズアレイを提供することを目的とし、該目的を達成することを本発明の課題とする。
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
<1> pHの変化により水性液体に対する溶解性ないし分散性が低下する膜形成材料とマイクロレンズが集光するときの波長帯の光を遮断もしくは減衰する顔料とを含む顔料水分散系電解液に、絶縁性の基板に導電性薄膜と光起電力機能を有する光半導体薄膜とが該基板側から順次設けられた膜形成用基板を前記光半導体薄膜が接触するように配置した状態で、前記光半導体薄膜の選択領域に光照射することによって該選択領域と対向電極との間に電圧を印加し、前記選択領域に前記膜形成材料を前記顔料と共に析出させて、前記波長帯の光を遮断もしくは減衰する遮光性膜を形成する遮光性膜形成工程と、pHの変化により水性液体に対する溶解性ないし分散性が低下する膜形成材料を含む水系電解液に、前記膜形成用基板を前記光半導体薄膜が接触するように配置した状態で、前記光半導体薄膜の選択領域に光照射することによって該選択領域と対向電極との間に電圧を印加し、前記選択領域に前記膜形成材料を析出させてマイクロレンズアレイ膜を形成するレンズ膜形成工程と、を有するマイクロレンズアレイの製造方法である。
<2> 前記遮光性膜形成工程の後に前記レンズ膜形成工程を設け、前記レンズ膜形成工程は、前記遮光性膜形成工程で形成された遮光性膜を含む領域に光照射するようにした前記<1>に記載のマイクロレンズアレイの製造方法である。
<3> 前記遮光性膜を形成した後の前記レンズ膜形成工程において、前記膜形成用基板の前記遮光性膜が形成されてない側から膜形成用基板の全面に光照射し、遮光性膜が形成されていない前記光半導体薄膜の選択領域にマイクロレンズアレイ膜を形成する前記<2>に記載のマイクロレンズアレイの製造方法である。
<4> 前記遮光性膜の形成と同時にアライメントマークを形成し、形成されたアライメントマークを基準に前記マイクロレンズアレイ膜を形成する前記<1>〜<3>のいずれかに記載のマイクロレンズアレイの製造方法である。
<5> 絶縁性の基板に導電性薄膜と光起電力機能を有する光半導体薄膜とが該基板側から順次設けられた膜形成用基板の上に、水系液中にあるときにpHの変化により水性液体に対する溶解性ないし分散性が低下する膜形成材料とマイクロレンズが集光するときの波長帯の光を遮断もしくは減衰する顔料とを含む遮光性部位および、前記遮光性部位と重なり合う領域を含むマイクロレンズ部を有するマイクロレンズアレイである。
<6> 絶縁性の基板に導電性薄膜と光起電力機能を有する光半導体薄膜とが該基板側から順次設けられた膜形成用基板の上に、水系液中にあるときにpHの変化により水性液体に対する溶解性ないし分散性が低下する膜形成材料とマイクロレンズが集光するときの波長帯の光を選択的に遮断もしくは減衰する顔料とを含むフィルタ部および、前記フィルタ部と重なり合う領域を含むマイクロレンズ部を有するマイクロレンズアレイである。
本発明によれば、従来行なっていた異系統の複数の工程を同系統の工程(電着)を一連に行なうことよって簡易かつ低コストでの量産化が可能で、開口率、曲率を任意に制御して均一形状で集光効率の高いマイクロレンズアレイを作製することができるマイクロレンズアレイの製造方法及び、量産適正を有し、均一形状で集光効率に優れたマイクロレンズアレイを提供することができる。
以下、本発明のマイクロレンズアレイの製造方法について説明し、該説明を通じて本発明のマイクロレンズアレイの詳細についても明確にする。
本発明は、マイクロレンズアレイ及び遮光性膜の両方を、特開平10−119414号公報、特開平11−189899号公報、特開平11−15418号公報、特開平11−174790号公報、特開平11−133224号公報、特開平11−335894号公報等に記載の光電着法、あるいは特開平2001−140096号公報に記載の光触媒着膜法を用いて形成するものである。
光電着法は、光半導体薄膜に生ずる光起電力を利用するもので、pHが変化することにより水性液体に対する溶解性ないし分散性が低下する膜形成材料を含む電解液に、絶縁性の基板上に導電性薄膜及び光半導体薄膜を該基板側から順次積層したもの(膜形成用基板)を前記光半導体薄膜が電解液に接触するように配置した状態で、前記光半導体薄膜の選択領域に光を照射することによって前記選択領域の光半導体薄膜と対向電極との間に電圧を印加し、前記光半導体薄膜の選択領域に膜形成材料を析出させる方法である。この光電着法は、従来の電着法に比し低電圧(5V以下)で均一な膜厚の膜を精度よく形成できることを特徴とするものである。
また、光触媒着膜法は、光半導体薄膜の光触媒機能を利用するもので、特開2001−140096号公報の段落[0025]〜[0029]に詳細に記載されている。この方法を利用したマイクロレンズアレイの製造方法では、電解液として前記光電着法で用いる電解液と同様のものを用い、膜形成用基板として絶縁性基板に導電性薄膜と該導電性薄膜に接した光半導体薄膜とが該基板側から順次設けられ、かつ前記導電性薄膜を電解液と導通可能(前記公報の段落[0026]参照)にしたもの(膜形成用基板)を用いる。また更に、この膜形成用基板をその光半導体薄膜が電解液に接触するように配置すると共に、前記導電性薄膜が電解液に導通する(前記公報の段落[0026]参照)状態にし、この状態で光半導体薄膜の選択領域に光を照射して該光半導体薄膜の選択領域に膜形成材料を析出させる方法である。この方法による場合、電着用の別の電極等を必要としないので、より簡易な装置で低コストに膜形成することができる。これにより作製されたマイクロレンズアレイ及び遮光性膜は、光電着法と同等の高品質を有するものである。
本発明のマイクロレンズアレイの製造方法では、遮光性膜形成工程及びレンズ膜形成工程において上記の光電着法又は光触媒着膜法を利用することによって、マイクロレンズが集光するときの波長帯の光を遮断もしくは減衰する遮光性膜の形成に続く一連の工程で、簡便かつ低コストに集積度の高い(直径30μmのマイクロレンズアレイで5万個/cm2以上)マイクロレンズアレイを製造することができ、この集積度と屈折率も自由に調節可能である。場合により、加熱や減圧を付与して塑性変形させる等によりマイクロレンズアレイの集光効率を高めたり、レンズの曲率を所望に制御することも可能となる。また、複雑なものを含め任意のパターンのマイクロレンズアレイを作製することができ、方法が簡易なため量産化も可能である。従来のように感光性樹脂を用いたマイクロレンズアレイの製造方法では、基板に膜厚を精度よく制御して塗布する必要があるほか、アルカリ廃液が出るなどの問題があったが、本発明においては均一でかつ制御された形状や曲率を持つマイクロレンズを容易に作製できると共に、フォトリソグラフィー法を含む複雑な工程が不要で、環境に対する負荷も小さい。
−膜形成用基板−
光電着法における膜形成用基板は、絶縁性基板上に導電性薄膜と光半導体薄膜とを該基板側から順次積層したものである。絶縁性基板としては、ガラス板、石英板、プラスチックフィルム、エポキシ基板等が、導電性薄膜としては、ITO、酸化インジウム、ニッケル、アルミニウム等が、また、光半導体薄膜としては、以下で述べるような酸化チタン薄膜等が好適である。なお、絶縁性基板を通して光半導体薄膜に光照射する場合には、絶縁性基板及び導電性薄膜は光、特に紫外線透過性であることが必要である。ただし、電解液を通して光半導体薄膜に光照射する場合はこの限りでない。
また、光触媒着膜法における膜形成用基板の絶縁性基板、導電性薄膜、及び光半導体薄膜(光触媒薄膜)は、光電着法で用いられる膜形成用基板と同様に構成することができる。但し、膜形成用基板の導電性薄膜と光半導体薄膜とが接触していること、及び前記導電性薄膜が電解液と導通可能であることが必要である。
図1に本発明に係る膜形成用基板の一例を示す。図1において、膜形成用基板5は、絶縁性基板1の表面に、絶縁性基板1側から導電性薄膜2と光半導体薄膜3とを順次積層して構成されている。この膜形成用基板5は、光電着法及び光触媒着膜法のいずれにも用いられる。
次に、本発明に係る光半導体薄膜(光触媒薄膜)について説明する。光電着法及び光触媒着膜法に用いられる光半導体薄膜としては、基本的には、光照射により起電力を発生するあるいは光触媒機能を有する(好ましくは透明性の)薄膜半導体であれば全て使用できる。具体的には、GaN、ダイヤモンド、c−BN、SiC、ZnSe、TiO2、ZnO、In23、SnO2などがある。中でも酸化チタンは吸収が400nm以下にしかなく、透明で、容易にn型半導体を作ることができるため、光学デバイス作製用の基板としてはそのまま使用することが可能である。
基板に酸化チタン半導体薄膜を設ける方法としては、熱酸化法、スパッタリング法、電子ビーム蒸着法(EB法)、イオンプレーティング法、ゾル・ゲル法などの方法があり、これらの方法によりn型半導体として特性のよいものが得られる。
ただし、基板が耐熱性の低いもの、例えばプラスチックフィルムの場合には、プラスチックフィルムに悪影響を与えない成膜法を選択する必要がある。ゾル・ゲル法は光半導体として光学活性が高い酸化チタンを形成できるが、500℃で焼結させる必要があるため、200℃程度の耐熱性しかもたないプラスチックフィルム基板上に酸化チタン膜を作製することは困難である。したがって、プラスチックフィルム基板を用いる場合には、なるべく低温で、できれば200℃以下で製膜することが可能であり、また比較的基板に対するダメージが小さい成膜方法であるスパッタリング法、特にRFスパッタリング法が好ましく用いられる。RFスパッタリング法は、光学活性の高いアナタース型の酸化チタン薄膜が得られる点からも好ましい方法である(電子ビーム法やイオンプレーティング法は200℃前後で基板を加熱するので好ましくない)。
−膜形成工程−
本発明のマイクロレンズアレイの製造方法においては、遮光性膜形成工程とレンズ膜形成工程とを有し、前者では前記光電着法又は光触媒着膜法によって、パターン状に光照射された選択領域に膜形成材料を「マイクロレンズが集光するときの波長帯の光を遮断もしくは減衰する顔料」と共に析出させて前記波長帯の光を遮断もしくは減衰する遮光性膜を形成し、後者では同様に光電着法又は光触媒着膜法によって、パターン状に光照射された選択領域に膜形成材料を析出させてマイクロレンズアレイ膜を形成する。具体的な形成方法については後述する。
本発明において、「光を遮断もしくは減衰する」とは、形成されたマイクロレンズが集光するときの波長帯の光を吸収して透過する光を少なくとも80%程度低減し、例えば遮光性膜がブラックマトリクス等のような遮光膜として設けられるような場合には特に大きな減衰が得られ、望ましくは光の透過を略遮断しておよそ光の透過のない状態にあることをいう。そして、「遮光性」は、上記の光の遮断(遮光)と光の減衰の両方を含む意である。
(水系電解液)
本発明に係る顔料水分散系電解液及び水系電解液は、pHの変化、つまりpHが変化することにより水性液体に対する溶解性ないし分散性が低下して、電解液から光半導体薄膜上に析出して着膜する膜形成材料を含み、顔料水分散系電解液は更に「マイクロレンズが集光するときの波長帯の光を遮断もしくは減衰する顔料」を含有する。1種類以上の膜形成材料がこのような着膜性を持っていれば、単体では膜形成能力が無い種々の顔料や屈折率制御材料(後述する)等を電解液中に分散させても、膜形成時において前記着膜性材料に取り込まれて遮光性膜又はマイクロレンズアレイ中に固定されることになる。したがって、顔料水分散系電解液を用いたときには顔料が着膜性材料である膜形成材料に取り込まれて光を遮断もしくは減衰する遮光性膜の形成が可能となる。また、顔料水分散系電解液及び水系電解液は、上記以外に他の成分を更に用いて構成することができる。
「pHの変化により水性液体に対する溶解性ないし分散性が低下する膜形成材料」としては、カルボキシル基やアミノ基などのように液のpHが変わることにより、そのイオン解離性が変化する基(イオン性基)を分子中に有している物質を含むことが好ましい。しかし、前記材料は必ずしもイオン性基の存在が必須ではない。また、イオンの極性も問わない。
「pHの変化により水性液体に対する溶解性ないし分散性が低下する膜形成材料」は、マイクロレンズアレイの機械的強度等の観点から、このような性質を有する高分子材料であることが好ましい。このような高分子材料としては、上記のようにイオン性基を有する高分子材料(イオン性高分子)が挙げられる。
前記イオン性高分子は、水性液体(pH調節を行なった水性液体を含む。)に対して充分な溶解性あるいは分散性を有していること、また光透過性を有していることが必要である。
また、pHの変化により水性液体に対する溶解性ないし分散性が低下する機能をもたせるために、分子中に親水基と疎水基を有していることが好ましく、親水基として、カルボキシル基(アニオン性基)、アミノ基(カチオン性基)等のイオン解離する基が導入されていることが好ましい。例えばカルボキシル基を有する高分子材料の場合、pHがアルカリ性領域においてはカルボキシル基が解離状態になって水性液体に溶解し、また酸性領域においては解離状態が消失し溶解度が低下し析出する。また、前記疎水基の存在により、上記のようなpHの変化によってイオン解離している基がイオン性を失うこととあいまって、瞬時に膜を析出させるという機能を高分子材料に付与している。この疎水基は、後述する本発明のマイクロレンズアレイ製造方法において屈折率制御微粒子を吸着する能力があり、重合体に良好な分散機能を付与する。
具体的には、疎水性基を有するモノマーからの単位(疎水性単位)とイオン解離する基を有するモノマーからの単位(イオン解離単位)を含み、前記疎水性単位とイオン解離性単位の和に対する疎水性単位の割合が55〜70%である共重合体(高分子材料)が好ましい。イオン解離する基としてはカルボキシル基、アミノ基、スルホ基、第4アンモニウム基等が挙げられる。
好ましい高分子材料としては例えば、1)アルケン、スチレン及びその誘導体ならびにビニルナフタレン及びその誘導体から選ばれるモノマー(疎水性基を有するモノマー)の1種以上と、2)イオン解離する酸性基を含有するモノマーの1種以上からの各構成単位を含む共重合体が好ましく用いられる。また、前記モノマーの他にさらに他のモノマー、例えばα,β−エチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステル(その他のモノマー)の1種以上からの各構成単位を含む共重合体が好ましく用いられる。
前記1)のモノマーである、アルケン、スチレン及びその誘導体ならびにビニルナフタレン及びその誘導体から選ばれるモノマーから構成される単位は疎水性が強く、顔料微粒子を強く吸着して顔料分散を安定化する。さらに前記構成単位はその疎水性により形成画像の耐水性に寄与し、また、画像部に堅牢性を与える。さらに前記構成単位は共重合体のイオン解離する酸性基を含有するモノマーのイオン解離機能の抑制にも影響を与える。
アルケンは炭素数が2〜20程度のものが好ましく、より好ましくは2〜10であり、疎水性が大きく損なわれない限り他の置換基を有していてもよい。
スチレン及びこの誘導体としては、スチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレンや、これらのスチレン及びその誘導体のベンゼン環に疎水性を大きく損なわない置換基あるいはさらに疎水性を増す置換基が置換したものなどを挙げることができる。また、ビニルナフタレン及びその誘導体としては、ビニルナフタレンのほか、ナフタレン環に疎水性を大きく損なわない置換基あるいはさらに疎水性を増す置換基が置換したビニルナフタレンなどが挙げられる。
中でも、アルケン、スチレン及びその誘導体は、共重合体合成時の制御性が高く有用な疎水性モノマ−である。
前記2)のモノマーである、イオン解離する酸性基を含有するモノマーからの構成単位は、共重合体をアルカリ性の水性媒体に溶解させる機能を有し、該モノマーとしては、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸が好ましく挙げられ、例えばメタクリル酸、アクリル酸、無水マレイン酸又はそのモノエステル、フマル酸又はそのモノエステル、イタコン酸又はそのモノエステル、クロトン酸などが挙げられる。特に、メタクリル酸、アクリル酸は前記機能の点からみて好ましい。
他のモノマーである、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステルからの構成単位は共重合体に屈曲性を与える成分である。α,β−エチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステルのアルキル基は炭素数1〜20が好ましく、より好ましくは2〜10である。例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等のメタクリル酸エステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル類、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル等のマレイン酸エステル類、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル等のフマル酸エステル類等が挙げられる。
また、前記高分子材料は、架橋性基を導入することにより架橋可能な高分子材料とすることができ、遮光性膜やマイクロレンズアレイ膜を形成した後に熱処理を施して架橋させ、マイクロレンズアレイの機械的強度や耐熱性を向上させることができる。前記架橋性基としては、エポキシ基、ブロックイソシアネート基(イソシアネート基に変化しうる基を含む)、シクロカーボネート基、メラミン基等が挙げられる。
この点から、前記高分子材料として、例えば架橋性基を有する重合性モノマーとイオン解離する基を有するモノマーと疎水性基を有するモノマーとを共重合させたものも好適である。
前記架橋性基を有する重合性モノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アジド、メタクリル酸2−(O−〔1’−メチルプロピリデンアミノ〕カルボキシアミノ)エチル〔昭和電工(株)製、商品名:カレンズMO1−BN〕、4−((メタ)アクリロイルオキシメチル)エチレンカーボネート、(メタ)アクリロイルメラミン、等が挙げられる。これらの架橋性基を有する重合性モノマーは、モノマーの種類によっても異なるが、一般には高分子材料中において1〜20モル%含まれる。
前記高分子材料の重合度としては、6,000〜25,000の範囲が良好な着膜性能を得る点で好ましい。また、より好ましくは9,000〜20,000である。前記重合度が、6,000より低いと再溶解し易くなることがあり、25,000より高いと水系液体への溶解性が不充分となり、液体が濁ったり沈殿物が生じたりすることがある。
また、前記高分子材料がカルボキシル基等のアニオン性基を有している場合、高分子材料の酸価としては、60〜300の範囲が良好な着膜特性が得られる点で好ましい。特に90〜195の範囲がより好ましい。前記酸価が、60より小さいと水系液体への溶解性が不充分となり、電解液の固形分濃度を適正値まで上げることができなくなったり、液体が濁ったり沈殿物が生じたり、液粘度が上昇したりすることがあり、300を超えると形成された膜が再溶解しやすくなることがある。
前記高分子材料は、それが溶解している電解液のpH値の変化に応じて、溶解状態あるいは分散状態から上澄みを発生して沈殿を生じる液性変化が、pH範囲領域2以内で生じることが好ましい。前記pH範囲領域が2以内であると、急峻なpH変化に対しても瞬時に膜の析出が可能となり、また析出する膜の凝集力が高く、電解液への再溶解速度が低減するなどの効果が優れている。これにより、各マイクロレンズアレイの形が整った高い集積度のマイクロレンズアレイが得られる。また、前記pH範囲領域が2より大きいと、充分な薄膜構造を得るための着膜速度の低下や、膜の耐水性の欠如(解像度の低下を招く)などが起こりやすい。より好ましい特性を得るには、前記pH範囲領域が1以内が好ましい。
さらに、前記のごとき高分子材料が溶解した状態の電解液は、pH値の変化に対して沈殿を生じる状態変化が急峻に生じることのほか、さらに再溶解しにくいという特性を有していることが好ましい。この特性は、いわゆるヒステリシス特性といわれるもので、例えばアニオン性の高分子材料の場合にはpHが低下することにより急激に析出が起こるが、pHが上昇しても(例えば電着終了時あるいは光触媒着膜法における光照射停止時など)再溶解が急激に起こらず、析出状態が一定時間保持されることを意味する。一方、ヒステリシス特性を示さないものは、pHがわずかに上昇しても溶解度が上昇し、析出膜が再溶解しやすい。
ヒステリシス特性を有する高分子材料は、親水基(イオン解離する基)と疎水基の種類やバランス、酸価、分子量等を適宜、調節することにより得られる。本発明に係る電解液に含まれる高分子材料は、薄膜形成性を損なわない限り、上記した材料を任意に組合わせて構成することができ、2種類以上のアニオン性分子の混合物のような同極性分子の混合物、あるいはアニオン性分子とカチオン性分子の混合物のような異極性分子の混合物が挙げられる。
本発明に係る顔料水分散系電解液は、「マイクロレンズが集光するときの波長帯の光を遮断もしくは減衰する顔料」の少なくとも一種を含む。この顔料は、上記のように少なくともマイクロレンズが集光する波長帯に属する光を減衰し、特にブラックマトリクス等のように遮光膜として設けられるときには遮光可能な色材であり、例えば、カーボンブラック等の黒系顔料が挙げられ、黒系顔料以外に他の色相の顔料を混合した混合系顔料でもよい。混合顔料の具体的な例としては、フタロシアニン系の青色顔料および緑色顔料にさらにアゾ系赤色顔料をそれぞれ1/3ずつ混合したものなどが好適である。
上記顔料の顔料水分散系電解液中における総量としては、膜形成材料の質量に対して、30〜90質量%が好ましく、40〜80質量%がより好ましい。該総量が、30質量未満であると遮光もしくは減衰が所望の程度得られないことがあり、90質量%を超えると剥がれ等が発生し、均質な電着膜が形成できないことがある。
(導電率)
電解液の導電率は、着膜スピード、換言すれば着膜量に関連するものであり、導電率が高くなればなるほど一定時間に付着する膜の膜厚が厚くなり約20mS/cmで飽和する。したがって、高分子材料だけでは導電率が足りない場合には、着膜に影響を与えないイオン、例えばNH4 +イオンやCl-イオンを加えることで着膜スピードをコントロールすることができる。通常、電解液は、支持塩を加えて導電率を高める。電気化学の分野で一般的に使われる支持塩は、NaClやKCl等のアルカリ金属塩や、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、テトラエチルアンモニウムパークロレート(Et4NClO4)等のテトラアルキルアンモニウム塩が用いられる。本発明でもこれらの支持塩を使用できる。
(pH)
電解液のpHも当然ながら薄膜の形成に影響するものである。例えば、着膜前には着膜性分子の溶解度が飽和するような条件で着膜を行えば薄膜形成後には再溶解しにくい。ところが、未飽和状態の溶液のpHで膜の形成を行なうと、薄膜が形成されても、光照射を止めた途端に膜が再溶解し始める。したがって、溶解度が飽和するような溶液のpHで薄膜の形成を行なう方が望ましいことから、所望のpHに酸やアルカリを用いて電解液を調整することができる。
特に、前記光電着法は、上記のように電解液のpHと析出開始点との関係を考慮したり、あるいはヒステリシス特性を有する電解液を用いることにより、低電圧での膜形成が可能である。
通常の電着塗装では70V以上の印加電圧をかけ、電解液のpH設定は電着材料の析出開始点よりかなり高いpH設定を行ないコルベ反応に基づく不可逆反応を電着基板上で起こさせることにより膜形成を行なっている。しかし、このような高電圧の膜形成においては気泡が発生する結果、電極表面の電界分布が不均一になって膜自体の膜質が不均一になったり、気泡の脱泡現象により膜表面に凹凸が生じたりして、解像度及び平滑性が良好な微細パターンを再現性よく形成することができない。一方、この場合は単に電圧を低くしても、電圧印加を停止すると直ちに膜が再溶解を起こし、解像度のよい微細なパターンを形成することはできない。これに対して、上記のような特性を有する電解液を用いることで、低電圧印加でも容易に析出し、電圧の印加を止めても直ぐに再溶解しないというメリットを有する。ここでいう電圧印加とは、光照射により光半導体薄膜に生ずる光起電力あるいはこれに補助的に足すバイアス電圧の和を意味する。印加電圧は9V以下が好ましく、より好ましくは5V以下である。光起電力だけで膜形成が可能な場合にはバイアス電圧の印加は不要である。なお、使用する半導体によっては、半導体のバンドギャップに依存した電圧以上のバイアス電圧を印加すると、光起電力の形成に必要な半導体と溶液の間のショトキーバリアが壊れてしまうという問題があり、印加できるバイアス電圧には限界がある。
(屈折率)
また、マイクロレンズアレイを形成する際の屈折率制御について説明する。
マイクロレンズアレイは、上記の高分子材料などの膜形成材料のみからなるものでもよいが、この場合の屈折率は1.4〜1.6程度であるため、さらに屈折率の高いマイクロレンズアレイを得るためには水系電解液に高分子材料のほかに更に光透過性で屈折率の高い無機酸化物微粒子(屈折率制御材料)を分散させ、高分子材料と共に着膜させて膜自体の屈折率を制御することもできる。
前記無機酸化物微粒子としては、屈折率が1.8〜2.8程度のものを用いることが好ましく、例えば、TiO2、ZnO、ZrO2、ITO等がいずれも利用可能である。屈折率の制御範囲が大きいことと安定性が高いことからルチル型酸化チタン微粒子が好ましい。また、低屈折率を得る場合に、弗化マグネシウムに代表される弗素化合物が好適に使用できる。該無機酸化物微粒子の数平均粒子径としては、電解液への分散性及びマイクロレンズアレイの透明性の観点から、0.2〜150nmが好ましく、2〜20nmがより好ましい。前記数平均粒子径が、0.2nm未満であると該微粒子の製造及び電解液製造時のコストが高くなると共に、品質を安定させることが困難となることがあり、150nmを超えると例えば通信波長帯である1.5μmの1/10を超えるため、透明性の低下や内部乱反射を招いて透過光損失が増大することがある。また、その添加量は、マイクロレンズアレイに要求される屈折率及びマイクロレンズアレイの機械的強度等を考慮に入れて適宜決められる。なお、着膜性の高分子材料に置換基を付けて高分子の屈折率を変えることも可能である。
本発明のマイクロレンズアレイの製造方法は、既述した光電着法又は光触媒着膜法を利用するものである。これらの方法による着膜は、得られる膜厚が光半導体薄膜に照射された光の量に対応するので、これを利用することで遮光性膜や各マイクロレンズアレイ膜の断面形状に対応した膜厚が得られるように、光半導体薄膜の選択領域に所定の調節した量の光を照射する。光電着法又は光触媒着膜法では微細なパターンを解像度よく形成することが可能なため、マイクロレンズアレイの集積度を向上させることができる。
光半導体薄膜への光の選択的照射は、フォトマスクを介しての光照射あるいはレーザー光照射等により行なうことができ、また、遮光性膜形成工程の後にレンズ膜形成工程を設けるようにし、マイクロレンズアレイ膜の形成前に遮光性膜を形成する場合には、この遮光性膜をマスクに利用しこれを介して被照射面全体に光照射するようにして行なうことができる。
例えば、光が透過する各部分(以下、開口部ということがある。)が円形であるフォトマスクを通して光照射を行なう場合、光半導体薄膜に照射される光強度はフォトマスクの各開口部の円周縁部に相当する部分と中央部に相当する部分とでは、円周縁部に相当する部分の方が中央部に相当する部分よりも光強度が弱くなるという、各パターンにおける露光強度の差が生ずる。したがって、光半導体薄膜に生ずる光起電力においても、円周縁部に相当する部分と中央部に相当する部分とで発生電流量に差が生じ、それに対応して形成される膜厚に差が生ずる。さらに、光強度が照射している全ての部分において均一であったとしても、厚膜形成のために長時間露光するような場合には発生した水素イオンの拡散作用が顕著になるため、各開口部の円周縁部と中央部とでは着膜効率に差を生ずる。すなわち、得られる膜パターンは、円形の平面形状を有し、かつ断面形状における膜厚が円の周縁に向かって減少するレンズ様形状の膜が形成されることになる。
また、フォトマスクにおいて、開口部を通って透過する光強度が開口部中央から円周縁部にかけて小さくなるように階調性を持たせると、各レンズ断面の形状あるいは曲率を自由に制御することができる。例えば、フォトマスクの開口部に光を通さない微少なドットを形成し、このとき開口部の周縁から中心にかけてドットの密度を減少させることにより各開口部を通る光強度を中心から周縁に向けて減少させる方法により行なえる。その際は、ドット密度の分布をレンズの曲率に対応した膜厚が形成されるように調節することができる。
また、光半導体薄膜への選択的な光照射をレーザー光により行なった場合、レーザー光の照射強度をレンズ形状あるいは曲率に対応した膜厚が形成されるように変化させて照射することにより、設定したレンズ形状あるいは曲率を有するマイクロレンズアレイが得られるように制御することができる。
また、レーザー光は、所定のレンズ形状パターンにしたがって変化する強度分布を有するもの、例えばレーザー光のガウシアンビーム、すなわちビームの中央部から周縁にかけて光強度が減少するレーザー光ビームをそのまま用いることにより、目的とするレンズ形状のパターンが得られる。必要とするマイクロレンズの形状によっては、照射面全体にわたって均一な光強度としてもマイクロレンズ形状を実現することが可能である。したがって、一般のアライナーに濃度分布のないフォトマスクを用いるという安価な装置構成でもマイクロレンズアレイを作製することが可能である。これは、電着による着膜が瞬間的に生成されるのではなく数秒〜数分の経過時間を必要とする結果、その間に生成する水素イオンの拡散が原因となってなだらかなレンズ面を形成し得る作用を利用したものである。経過時間と着膜速度を制御することにより、ある程度まで任意のレンズ形状を得ることが可能であり、また、形成されたマイクロレンズ形状に対しさらに熱や減圧を付与し変形させることによってもある程度形状を制御することが可能となる。
また、本発明においては既述の通り光電着法又は光触媒着膜法を利用し、最初に所望の形状(パターン、サイズ)に遮光性膜を形成し、該形成後この遮光性膜に合わせてマイクロレンズアレイ膜を形成するようにすることにより好適に、開口率や曲率が任意に制御されたマイクロレンズアレイを作製することが可能である。この場合の一例を以下に示す。
図2に示すように、「マイクロレンズが集光するときの波長帯の光を遮断もしくは減衰する顔料」としてカーボンブラック顔料を膜形成材料と共に分散した顔料水分散系電解液を用いて光電着法による着膜を行ない、膜形成用基板にブラックマトリックス(遮光性膜)10を形成(遮光性膜形成工程)した後、この顔料水分散系電解液をマイクロレンズアレイ膜形成用の膜形成材料を含む水系電解液に交換し、ブラックマトリックス10を含む領域に光照射、例えばブラックマトリクス10が形成されていない側から基板全面に光照射することでブラックマトリクス未形成領域に選択的に照射が行なわれ、簡易に遮光性膜を持つマイクロレンズアレイ膜11を作製できる(レンズ膜形成工程)。これは、遮光性膜に必要充分な絶縁性を持たせることでその膜面にはほとんどマイクロレンズアレイ形成用の膜形成材料材料が着膜されず、既述した水素イオンの拡散現象により自然にレンズ形状が得られるためである。このように、2種類の水系電解液を入れ替えて行なう工程を一連の作業として行なうことで簡易かつ低コストに、マイクロレンズアレイをノイズとなる光を遮断もしくは減衰する遮光性膜と共に形成できる。
また、図3に示すように、予めブラックマトリクス10と共に赤(R)、緑(G)、青(B)のカラーフィルタ膜12(12R,12G,12B)を形成しておき、そのRGB膜の膜面上にマイクロレンズアレイ膜11を形成するようにすることで、CCDセンサ等のカラー読取用フィルタ付きマイクロレンズアレイなども容易かつ低コストに作製、量産することができる。なお、一旦乾燥したカラーフィルタ膜の膜面にさらにマイクロレンズアレイ膜を形成することが膜面の導電性によっては難しい場合もあるので、このようなときには、特開2000−266922号の記載のように常に電解液に接触させた状態とし膜の導電性を保ったままマイクロレンズアレイ膜を形成するようにするのがよい。
さらに、遮光性膜形成工程及びレンズ膜形成工程の各々の工程後には、不要な電解液を除去するための洗浄工程を設けることができる。上記のようにして、遮光性膜、あるいは遮光性膜及びマイクロレンズアレイ膜(並びに場合によりカラーフィルタ膜)が形成された膜形成用基板には、表面張力等によって不要な電解液が付着しているので、マイクロレンズアレイ膜に打撃圧力が加わって損傷が生じたり、乾燥固着することがないように洗浄することが望ましい。洗浄方法としては、純水等の水系液への浸漬や流水、水系液や加湿空気の噴出・噴射による方法などが挙げられ、好ましくは水系液若しくは加湿空気を0.01〜1000KPaの低圧に加圧供給して、膜形成用基板の表面に付着した電解液をノズルを用いて除去するようにすることができる。この詳細については、特開2002−317297号公報に記載がある。
また、形成されたマイクロレンズアレイ膜が散乱性を有して光透過性が不充分である場合には、マイクロレンズアレイ膜を構成する高分子化合物のガラス転移点以上に加熱することが望ましく、加熱により層内の空隙が除去され、光透過性を向上させることができる。
マイクロレンズアレイの透過率を向上させる観点からは、形成されたマイクロレンズアレイの表面に反射防止膜を施すことが好ましい。この反射防止膜の材料には、屈折率が低いSiO2が好ましく用いられる。また一般的には、空気に接する膜の、膜厚と屈折率の積で表される光学膜厚が、可視帯域の中心近くである波長の1/4又はその整数倍であることが好ましい。したがって、可視域(400nm〜700nm)で透明性を得る場合は、中心波長を550nmとした場合、屈折率が1.43のSiO2の場合には、反射防止膜の膜厚は96nm又はその整数倍とすることが好ましい。
また、膜形成用基板にマイクロレンズアレイ膜が形成された後、(場合により洗浄工程を経た後に)さらにマイクロレンズアレイ膜を加熱したり減圧したりする等して(塑性)変形させるようにしてもよい。これにより更に、所望のレンズ形状や曲率に制御されたマイクロレンズアレイに成形することができる。
本発明のマイクロレンズアレイの製造方法は、既述した下記光電着法又は光触媒着膜法によって遮光性膜とマイクロレンズアレイ膜との両方を順次形成することができる膜形成手段を設けて構成された電着装置を適宜選択して行なうことができる。また、場合により膜形成後に洗浄を行なう洗浄手段や、形成されたマイクロレンズアレイ膜を加熱する加熱手段、等の他の手段を設けて構成することができる。
前記膜形成手段においては、(1)光電着法による場合には、上記の顔料水分散系電解液又は水系電解液に、絶縁性の基板に導電性薄膜と光起電力機能を有する光半導体薄膜とが該基板側から順次設けられた膜形成用基板を前記光半導体薄膜が接触するように配置した状態で前記光半導体薄膜の選択領域に光照射することによって該選択領域と対向電極との間に電圧を印加し、前記選択領域に前記膜形成材料を析出させ、あるいは(2)光触媒着膜法による場合には、上記の顔料水分散系電解液又は水系電解液に、絶縁性の基板に導電性薄膜と該導電性薄膜に接した光起電力機能を有する光半導体薄膜とが該基板側から順次設けられ、かつ前記導電性薄膜が水系電解液と通電可能な膜形成用基板を少なくとも前記光半導体薄膜が接触するように配置すると共に前記導電性薄膜が前記水系電解液に通電する状態で、前記光半導体薄膜の選択領域に光照射することによって前記選択領域に前記膜形成材料を析出させることにより膜形成される。これにより、既述の通り簡便かつ低コストに、遮光性膜及び集積度の高いマイクロレンズアレイ膜を形成することができる。
膜形成手段は、例えば図4に示すように好適に構成することができる。図4は、光電着法によって光半導体薄膜に遮光性膜とマイクロレンズアレイ膜とを選択的に形成する電着装置の構成例を示す概略断面図である。すなわち、図4に示すように、紫外線を照射するための図示しない光源並びに光源から照射方向に向かって順次設けられ、受けた光を結像するための第二の結像光学レンズ21及び第一の結像光学レンズ23を備えた結像光学系と、第一の結像光学レンズ23と第二の結像光学レンズ21との間に設けられたフォトマスク22と、電解液20を収納する電着槽24と、バイアス電圧を印加するポテンショスタット27と、収納された電解液20と接触可能なように電着漕に配置された対向電極25及びリファレンス電極としての飽和カロメル電極26と、で構成することができる。マイクロレンズアレイ膜が形成される膜形成用基板は電着槽24の上部開口部に配置され、その導電性薄膜2並びに対向電極25及び飽和カロメル電極26は各々ポテンショスタット27と電気的に接続されている。このとき、膜形成用基板(光半導体薄膜)は、対向電極に対する作用電極として機能している。
また、上記の電着装置は、前記結像光学系に代えてミラー反射光学系を用いて構成することも可能である。
このような構成に図1に示す構成の膜形成用基板5を用いた場合は、遮光性膜及びマイクロレンズアレイ膜を形成するための膜形成用基板5を光半導体薄膜3が電解液20と接触するように電着槽24に配置すると共にポテンショスタット(印加手段)27を用いてバイアス電圧を印加し(光起電力のみで必要な電着電圧が得られるときにはバイアス電圧を印加する印加手段は省略することができる。)、この状態で膜形成用基板5の光半導体薄膜3に結像/ミラー反射光学系を通過したパターン光が選択的に結像されると、パターン光が結像された選択領域と対向電極5との間に光起電力が生じて該選択領域にマイクロレンズアレイ膜が形成される。これにより、短い露光時間で微細なマイクロレンズアレイ膜を形成することができる。
上記の結像光学系を構成する第一の結像光学レンズ23と、膜形成用基板5を構成する絶縁性の基板(光透過性)1との距離は、取扱い上の観点から1mm〜50cmの範囲が好ましく、また、第一の結像光学レンズの焦点深度としては、精度と取扱い上の点で±10〜±100μmの範囲であるのが好ましい。
また、装置構成上フォトマスクと光半導体薄膜とを近接させることが可能な場合には、上記のような結像光学系やミラー反射光学系を備えた装置を用いる必要はなく、平行光あるいは密着型の露光装置により光照射をすることができる。
光照射に用いる光源としては、例えば、水銀灯、水銀キセノンランプ、高圧水銀ランプ等が挙げられる。また、光源にHg−Xeの均一照射光源を用いる場合は、例えば図4に示す結像/ミラー反射光学系に代え、図5に示すようにHg−Xe均一照射光源28を膜形成用基板5の上部に配置し、かつフォトマスク22を膜形成用基板5の絶縁性基板1に密着させ、あるいは密着させると共に絶縁性の基板厚を0.2mm以下することによって、光の回折を防いで集積度の高いマイクロレンズアレイ膜の形成が可能となる。
長時間にわたる露光が可能な場合には安価な走査型レーザ書き込み装置によっても光照射は可能である。この場合には、図4もしくは図5に示す結像/ミラー反射光学系もしくは均一照射光源及びフォトマスクに代えて、He−Cdレーザ等のレーザ光照射のための走査型レーザー書き込み装置を用いることができる。レーザビームとしては、ガウシアンビーム、すなわちビーム中心ほど光強度が強く中心から周縁に広がるに従って弱くなるものを用い、レーザ光をON/OFFすることで所定の位置にレーザ光を照射させると、ビーム径に従って曲率等が定まるマイクロレンズがアレー状に形成される。このほか、パターン解像度の許す範囲ならばプロキシミティ型露光装置も使用可能である。
上記のように、膜形成用基板5の絶縁性基板1側から光照射を行なう以外に、光半導体薄膜3側から露光するようにしてもよい。光半導体薄膜側から露光する場合には、膜形成用基板5は電解液中に浸漬されることになるが、本発明に係る電解液を照射される紫外線を吸収しないように構成したときには、電解液を通して光半導体薄膜3に光照射することができる。レンズ膜形成時には、膜成長して膜厚が厚くなってくると光の吸収が無視できなくなりレンズ形状とするのが困難になるため、絶縁性基板側から光照射するようにすることが望ましい。
なお、図4及び図5においては、電圧印加手段(ポテンショスタット)27を導電性薄膜に連結し、このとき光半導体薄膜が作用電極として機能する。
また一方、光触媒着膜法による場合には、例えば図4又は図5に示す電着装置などに設けられた、バイアス電圧を印加するポテンショスタット27並びに対向電極25及びリファレンス電極26を除いて同様に構成することができる。この構成の装置を用いてマイクロレンズアレイを作製するときには、膜形成用基板5を構成する導電性薄膜2と光半導体薄膜3とを接するように設けると共に、導電性薄膜2が電解液に導通するように構成されていることが必要である。
本発明のマイクロレンズアレイは、既述の本発明のマイクロレンズアレイの製造方法によって製造され、量産適正があり、均一形状で集光効率に優れるものである。
本発明の第1の態様は、既述のように、絶縁性の基板/導電性薄膜/光半導体薄膜の積層構造に構成された膜形成用基板の上に、既述の「pHの変化により水性液体に対する溶解性ないし分散性が低下する膜形成材料」とマイクロレンズが集光するときの波長帯の光を遮断もしくは減衰する顔料とを含む遮光性部位(すなわち既述の遮光性膜)および、該遮光性部位と重なり合う領域を含む既述のマイクロレンズアレイ膜からなるマイクロレンズ部を有している。例えば、図6に示すように、絶縁性の基板1/導電性薄膜2/光半導体薄膜3よりなる膜形成用基板5の光半導体薄膜3の膜面に、既述した本発明のマイクロレンズアレイの製造方法により形成された遮光性膜10と遮光性膜間に形成されたマイクロレンズ11とマイクロレンズ11を少なくとも覆う反射防止膜13とを設けて構成することができる。
また、本発明の第2の態様のマイクロレンズアレイは、上記同様の積層構造に構成された膜形成用基板の上に、既述の「pHの変化により水性液体に対する溶解性ないし分散性が低下する膜形成材料」とマイクロレンズが集光するときの波長帯の光を選択的に遮断もしくは減衰する顔料とを含むフィルタ部および、前記フィルタ部と重なり合う領域を含む既述のマイクロレンズアレイ膜からなるマイクロレンズ部を有している。第2の態様におけるフィルタ部には、RGB等の着色膜であるカラーフィルタ膜以外に既述の遮光性膜(例えばブラックマトリクス)が含まれる。例えば、図7に示すように、絶縁性の基板1/導電性薄膜2/光半導体薄膜3よりなる膜形成用基板5の光半導体薄膜3の膜面に、既述した本発明のマイクロレンズアレイの製造方法により形成された遮光性膜10と遮光性膜間に形成された着色膜(RGB)12(12R,12G,12B)と着色膜12の膜面に積層して着膜されたマイクロレンズ11とマイクロレンズ11を少なくとも覆う反射防止膜13とを設けて構成することができる。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
−膜形成用基板の作製−
厚さ0.7mmの無アルカリガラス基板(7059ガラス)にITOよりなる導電性薄膜をRFスパッタリングで75nm厚に成膜し、該膜上に更に膜厚110nmのアナターゼ型の酸化チタン薄膜(光半導体薄膜)を成膜することにより、図1に示すようにガラス基板1上に順次ITO膜2、酸化チタン薄膜3が積層された膜形成用基板5を得た。
−遮光性膜用電解液の調製−
次に、カーボンブラック(顔料)とスチレン−アクリル酸共重合体(分子量13,000、疎水基(親水基+疎水基)のモル比65%、酸価150)とを体積比率で1:2に分散させ、これに更にエチレングリコールを5質量%加えた後、更にテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド及び塩化アンモニウムを用いてpH7.8、導電率6mS/cmになるように調整し、ブラックカーボンが分散された水分散液(固形分含有率10質量%)である遮光性膜用電解液(顔料水分散系電解液)を調製した。
−レンズ用電解液の調製−
次に、ルチル型の酸化チタン微粒子(粒径10nm、屈折率2.7)とスチレン−アクリル酸共重合体(分子量13,000、疎水基(親水基+疎水基)のモル比65%、酸価150)とを体積比率で1:5に分散させ、これに更にエチレングリコールを5質量%加えた後、更にテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド及び塩化アンモニウムを用いてpH7.8、導電率6mS/cmになるように調整し、透明微粒子が分散された水分散液(固形分含有率10質量%)である、マイクロレンズアレイを形成するためのレンズ用電解液(水系電解液)を調製した。
−電着装置(光電着法)の準備−
電着装置として、図4に示すものと同様の電気化学で一般的な三極式に構成された装置を準備した。この装置は、結像光学系としてプロジェクション型露光装置(結像光学レンズ23と結像面(酸化チタン薄膜3の露出面)との焦点距離=100mm、焦点深度は±50μm、波長365nmの光強度100mW/cm2;ウシオ電気(株)製)を備え、図4に示すように酸化チタン薄膜3が電解液と接するように配置された膜形成用基板5の、該酸化チタン薄膜3の液接触面に膜形成が可能なように構成されている。プロジェクション型露光装置は、膜形成用基板5からみて順に、第一の結像光学レンズ23とフォトマスク22と第二の結像光学レンズ21と図示しない光源とが配置されてなる。
本装置において、膜形成用基板5は、ITO膜2を介してポテンショスタット(電圧印加手段)27と接続されると共に、更にポテンショスタット27は飽和カロメル電極(リファレンス電極)26及び対向電極25とも接続された三極式に構成されており、膜形成用基板5(酸化チタン薄膜3)を対向電極(白金電極)15に対する作用電極として利用する。電着槽24には、電解液20が収納されるようになっている。また、フォトマスク22は、後に直径30μmのマイクロレンズを形成しようとする領域がクロムコートされている(遮光性膜形成用のフォトマスク)。
−遮光性膜の形成−
まず、電着槽24に電解液20として上記より得た遮光性膜用電解液を収納し、これに膜形成用基板5(図2−(a)参照)の酸化チタン薄膜3を接触させると共に、飽和カロメル電極26に対して酸化チタン薄膜3を作用電極として利用し、作用電極に印加するバイアス電圧が1.8Vとなるようにポテンショスタット27から電圧印加し、膜形成用基板5の裏面側(膜形成用基板の酸化チタン薄膜3が設けられていない側)から、酸化チタン薄膜3の液接触面においてパターン光が結像するように紫外線を6秒間照射した。このとき、酸化チタン薄膜3の照射領域には、図2−(b)に示すように、黒色膜(遮光性部位)10が形成された。その後、この膜形成用基板5を遮光性膜用電解液から離し、付着している不要な電解液を純水を噴射して洗浄し、110℃下で10分間乾燥した。
−マイクロレンズアレイ膜の形成−
電着槽24に収納されていた遮光性膜用電解液を排出し、排出後内部洗浄を行なった後、電着槽24に上記より得たレンズ用電解液を収納した。そして、上記の電着操作と同様に、まず遮光性膜10が既に形成されている膜形成用基板5の酸化チタン薄膜3をレンズ用電解液に接触させると共に、飽和カロメル電極26に対して酸化チタン薄膜3を作用電極として利用し、作用電極に印加するバイアス電圧が1.8Vとなるようにポテンショスタット27から電圧印加し、フォトマスクを除去して膜形成用基板5の裏面側から紫外線を30秒間全面照射した。このとき、図2−(c)に示すように、酸化チタン薄膜3の遮光性膜10が形成されていない領域全てにマイクロレンズアレイ膜(マイクロレンズ部)11が形成された。その後、この膜形成用基板5をレンズ用電解液から離し、付着している不要な電解液を純水を噴射して洗浄した。また、このままでは散乱があり透明性も不充分であるため、さらに110℃で10分間加熱処理を行なった。
引き続き、得られたマイクロレンズアレイ膜11の上に更に、反射防止膜として機能するSiO2膜を膜厚96nmとなるようにスパッタリングにより成膜し、図6に示す構成よりなる光学的に透明性、光透過性の良好なマイクロレンズアレイを作製した。
作製されたマイクロレンズアレイは、屈折率1.65、レンズ直径30nm、レンズの曲率半径22μmを有していた。このように、2種類の電解液を入れ替えて同様の操作(すなわち同系統の工程)を一連の作業として連続的に行なうことによって簡易かつ低コストに、所望の形状、特にレンズ部の開口率や曲率が所望に制御された均一で集光効率の良好なマイクロレンズアレイを作製することができた。
(実施例2)
実施例1において、電着装置(図4)を図5に示す構成の電着装置(光電着法)に代え、無アルカリガラス基板の厚さを0.3mmとしたこと以外、実施例1と同様にして、膜形成用基板の作製、遮光性膜用電解液及びレンズ用電解液の調製、遮光性膜の形成、マイクロレンズアレイ膜の形成を順次行ない、更に加熱処理、スパッタリングを施して光学的に透明性、光透過性の良好なマイクロレンズアレイを作製した。
図5示す電着装置は、上記の図4に示す電着装置と同様に電気化学で一般的な三極式に構成され、配置された膜形成用基板5のガラス基板1のITO膜2及び酸化チタン薄膜3が設けられていない側の表面にフォトマスク22を密接して配置し、フォトマスク22の上方に配設された水銀キセノンランプ28(波長365nmの光強度50mW/cm2、山下電装社製)から光照射可能なようになっている。そして、図5に示すように酸化チタン薄膜3が電解液と接するように配置された状態で照射されたときには、膜形成用基板5の酸化チタン薄膜3の液接触面に膜形成される。
形成された遮光性膜は、ガラス基板が薄いことから実施例1とほぼ同等の精度を有しており、形成されたマイクロレンズアレイの屈折率、レンズの直径及び曲率半径については実施例1と同等であった。実施例1と同様、2種類の電解液を用いて同様の操作(すなわち同系統の工程)を一連の作業として連続的に行なうことによって簡易かつ低コストに、所望の形状、特にレンズ部の開口率や曲率が所望に制御された均一で集光効率の良好なマイクロレンズアレイを作製することができた。
(実施例3)
まず、実施例1と同様にして、膜形成用基板の作製、遮光性膜用電解液及びレンズ用電解液の調製、並びに電着装置の準備を行なうと共に、さらに以下のようにして赤色膜形成用、青色膜形成用、緑色膜形成用の3種の電解液R,G,Bを調製し、さらにカラーフィルタ膜を備えたマイクロレンズを作製した。
−着色膜形成用の電解液R,G,Bの調製−
スチレン−アクリル酸共重合体(分子量13,000、疎水基/(親水基+疎水基)のモル比65%、酸化150)とアゾ系赤色超微粒子顔料とを、固形分比率で1:2に分散させた赤色の水分散液である赤色膜用電解液R(pH=7.8、導電率=8mS/cm、固形分濃度5%)を調製した。また、赤色膜用電解液Rの調製に用いたアゾ系赤色超微粒子顔料をフタロシアニンブルー顔料、フタロシアニングリーン顔料に各々代えたこと以外、上記した赤色膜用電解液Rの調製と同様にして、青色膜用電解液Bと緑色膜用電解液Gとを調製した。
−遮光性膜の形成−
まず、電着槽24に電解液20として遮光性膜用電解液を収納し、これに膜形成用基板5(図3−(a)参照)の酸化チタン薄膜3を接触させると共に、飽和カロメル電極26に対して酸化チタン薄膜3を作用電極として利用し、作用電極に印加するバイアス電圧が1.8Vとなるようにポテンショスタット27から電圧印加し、膜形成用基板5の裏面側(膜形成用基板の酸化チタン薄膜3が設けられていない側)から、酸化チタン薄膜3の液接触面においてパターン光が結像するように紫外線を6秒間照射した。このとき、酸化チタン薄膜3の照射領域には、図3−(b)に示すように、ブラックマトリックス(遮光膜)10が形成され、同時に膜形成用基板5の両縁端部にアライメントマーク14(片側のみ図示)を形成した。以下の各着色膜の形成においてはこのアライメントマーク14を基準に位置調整を行なうようにした。その後、この膜形成用基板5を遮光性膜用電解液から離し、付着している不要な電解液を純水を噴射して洗浄し、110℃下で10分間乾燥した。
−着色膜の形成−
続いて、電着槽24中の遮光性膜用電解液を排出し、排出後内部洗浄を行なった後、電着槽24に上記より得た赤色膜用電解液Rを収納し、遮光性膜形成用のフォトマスクを赤色膜形成用のフォトマスクRに代えた。そして、上記の電着操作と同様に、遮光性膜10が既に形成されている膜形成用基板5の酸化チタン薄膜3を赤色膜用電解液Rに接触させると共に、飽和カロメル電極26に対して酸化チタン薄膜3を作用電極として利用し、作用電極に印加するバイアス電圧が1.8Vとなるようにポテンショスタット27から電圧印加し、膜形成用基板5の裏面側から、アライメントマーク14を基準にして酸化チタン薄膜3の液接触面に更にパターン光が結像するように紫外線を5秒間照射した。このとき、図3−(c)に示すように、酸化チタン薄膜3の遮光性膜10が形成されていない照射領域に赤色膜12Rが形成された。その後、この膜形成用基板5を赤色膜用電解液Rから離し、付着している不要な電解液を純水を噴射して洗浄した。
続いて、電着槽24中の赤色膜用電解液Rを排出し、排出後内部洗浄を行なった後、電着槽24に上記より得た青色膜用電解液Bを収納し、フォトマスクRを青色膜形成用のフォトマスクBに代え、上記赤色膜の形成の場合と同様にして青色膜12Bを形成した。その後引き続いて、電着槽24中の青色膜用電解液Bを排出し、排出後内部洗浄を行なった後、電着槽24に上記より得た緑色膜用電解液Gを収納し、フォトマスクBを緑色膜形成用のフォトマスクGに代えて上記と同様にして緑色膜12Gを形成した。このようにして膜形成用基板5上に、図3−(c)に示すようなフィルタ部をなすブラックマトリクス並びに赤色膜、青色膜及び緑色膜を形成した。
−マイクロレンズアレイの形成−
次に、電着槽24中の緑色膜用電解液Gを排出し、排出後内部洗浄を行なった後、電着槽24にレンズ用電解液を収納すると共に、フォトマスクGを、所定のマイクロレンズが形成されるように、円形状の光透過部分に黒い微小ドットを中央部から円周縁に向かって密度が高くなるように形成されて濃度階調(光透過性の階調)を有するフォトマスクLに代えた。そして、膜形成用基板5のブラックマトリクス及び3色の着色膜の形成面をレンズ用電解液に接触させ、上記の電着操作と同様にしてバイアス電圧が1.8Vとなるように作用電極に電圧印加し、膜形成用基板5の裏面側から、アライメントマーク14を基準にして赤色膜、青色膜、緑色膜の各着色膜に対応する位置に相当する液接触面に更にパターン光を結像させて紫外線を50秒間照射した。このとき、図3−(d)に示すように、赤色膜、青色膜、緑色膜の各々の膜面上に選択的に重ねてマイクロレンズアレイ膜(マイクロレンズ部)11を形成した。その後、レンズ用電解液から離し、付着している不要な電解液を純水を噴射して洗浄した。また、このままでは散乱があり透明性も不充分であるため、さらに110℃で10分間加熱処理を行なった。
なお、上記において、電着槽24中の電解液の交換は、最初に収納された遮光性膜用電解液から赤色膜用電解液Rに代えるときには、遮光性膜用電解液を排出し、排出後内部洗浄を行なった後、完全に乾燥するまでの間に赤色膜用電解液Rを収納するようにすると共に、電解液が接触したのを感知したセンサの信号に同期してバイアス電圧が印加されるように構成してある。そして、赤色膜の形成が終了した後には、上記と同様に赤色膜用電解液Rを排出し、内部洗浄後完全に乾燥するまでの間に次の電解液を収納する操作を繰り返し行なった。また、電解液の交換は、電着を終えた電解液が収納されている電着槽に純水に若干の塩を加えた洗浄水を注入しつつ該電解液を排出するようにし、これがほぼ完全に洗浄水になるまで行なった後に、次の電解液を注入しつつ洗浄水を排出し、該電解液濃度が本来の値になるまでこれを行なうような操作としてもよい。このようにすることで膜の導電性を低下することなく、既形成電着膜上に続けてマイクロレンズアレイ膜を着膜することできる。
作製されたマイクロレンズアレイは、屈折率1.65、レンズ直径30nm、レンズの曲率半径30μmを有していた。このように、5種類の電解液を順次同一の電着装置内に入れ替えて同様の操作(すなわち同系統の工程)を一連の作業として連続的に行なうことによって、簡易かつ低コストに所望の形状、特にレンズ部の開口率や曲率が所望に制御された均一で集光効率の良好なマイクロレンズアレイを作製することができた。
また、上記の各実施例のように、本発明のマイクロレンズアレイの製造方法によると、量産化が可能であると共に、従来の感光性樹脂を用いた方法では基板に膜厚を精度よく制御して塗布する必要があり、エッチング時にアルカリ廃液が出る等の問題があるのに対し、均一形状のレンズを簡易に形成でき、パターン形成のためのエッチング処理も不要で環境に対する負荷も小さい。
本発明に係る膜形成用基板の構成例を示す概略断面図である。 本発明のマイクロレンズアレイの製造方法によりマイクロレンズアレイの作製を行なう一例を示す概略工程図である。 本発明のマイクロレンズアレイの製造方法によりマイクロレンズアレイの作製を行なう他の例を示す概略工程図である。 光電着法によって光半導体薄膜に遮光性膜とマイクロレンズアレイ膜とを選択的に形成する電着装置の一例を示す概略図である。 光電着法によって光半導体薄膜に遮光性膜とマイクロレンズアレイ膜とを選択的に形成する電着装置の他の例を示す概略図である。 本発明のマイクロレンズアレイの構成例を示す断面図である。 本発明のマイクロレンズアレイの構成例を示す断面図である。
符号の説明
1…ガラス基板(絶縁性の基板)
2…ITO膜(導電性薄膜)
3…酸化チタン薄膜(光半導体薄膜)
5…膜形成用基板
10…遮光性膜,ブラックマトリクス
11…マイクロレンズアレイ膜(マイクロレンズアレイ)
12…着色膜(赤色膜、青色膜、緑色膜)
14…アライメントマーク
20…遮光性膜用電解液,レンズ用電解液
25…対向電極

Claims (6)

  1. pHの変化により水性液体に対する溶解性ないし分散性が低下する膜形成材料とマイクロレンズが集光するときの波長帯の光を遮断もしくは減衰する顔料とを含む顔料水分散系電解液に、絶縁性の基板に導電性薄膜と光起電力機能を有する光半導体薄膜とが該基板側から順次設けられた膜形成用基板を前記光半導体薄膜が接触するように配置した状態で、前記光半導体薄膜の選択領域に光照射することによって該選択領域と対向電極との間に電圧を印加し、前記選択領域に前記膜形成材料を前記顔料と共に析出させて、前記波長帯の光を遮断もしくは減衰する遮光性膜を形成する遮光性膜形成工程と、
    pHの変化により水性液体に対する溶解性ないし分散性が低下する膜形成材料を含む水系電解液に、前記膜形成用基板を前記光半導体薄膜が接触するように配置した状態で、前記光半導体薄膜の選択領域に光照射することによって該選択領域と対向電極との間に電圧を印加し、前記選択領域に前記膜形成材料を析出させてマイクロレンズアレイ膜を形成するレンズ膜形成工程と、
    を有するマイクロレンズアレイの製造方法。
  2. 前記遮光性膜形成工程の後に前記レンズ膜形成工程を設け、前記レンズ膜形成工程は、前記遮光性膜形成工程で形成された遮光性膜を含む領域に光照射するようにした請求項1に記載のマイクロレンズアレイの製造方法。
  3. 前記遮光性膜を形成した後の前記レンズ膜形成工程において、前記膜形成用基板の前記遮光性膜が形成されてない側から膜形成用基板の全面に光照射し、遮光性膜が形成されていない前記光半導体薄膜の選択領域にマイクロレンズアレイ膜を形成する請求項2に記載のマイクロレンズアレイの製造方法。
  4. 前記遮光性膜の形成と同時にアライメントマークを形成し、形成されたアライメントマークを基準に前記マイクロレンズアレイ膜を形成する請求項1〜3のいずれか1項に記載のマイクロレンズアレイの製造方法。
  5. 絶縁性の基板に導電性薄膜と光起電力機能を有する光半導体薄膜とが該基板側から順次設けられた膜形成用基板の上に、
    水系液中にあるときにpHの変化により水性液体に対する溶解性ないし分散性が低下する膜形成材料とマイクロレンズが集光するときの波長帯の光を遮断もしくは減衰する顔料とを含む遮光性部位および、前記遮光性部位と重なり合う領域を含むマイクロレンズ部を有するマイクロレンズアレイ。
  6. 絶縁性の基板に導電性薄膜と光起電力機能を有する光半導体薄膜とが該基板側から順次設けられた膜形成用基板の上に、
    水系液中にあるときにpHの変化により水性液体に対する溶解性ないし分散性が低下する膜形成材料とマイクロレンズが集光するときの波長帯の光を選択的に遮断もしくは減衰する顔料とを含むフィルタ部および、前記フィルタ部と重なり合う領域を含むマイクロレンズ部を有するマイクロレンズアレイ。
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