JP4321134B2 - 車両用空調装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車室外と車室内とを仕切るダッシュパネルなどの区画板の前後に車室内を空調する空調ユニットと送風ユニットとを搭載する車両用空調装置に関するものであり、特に、区画板に形成された開口部の周縁と送風ユニットとの隙間を気密するシール部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、車両用空調装置として、内部に蒸発器、ヒータコアなどの空調機器を有するとともに空気通路を形成する空調ユニットと、内部に前記空調ユニットに送風する送風手段を有する送風ユニットとを備え、車室内と車室外であるエンジンルームとを仕切るダッシュパネルの開口部の車室外側に前記送風ユニットを配置するようなレイアウトにおいて、エンジンルームから車室内へ雨水や被水などの水の侵入を防止する目的で、エンジンルームと車室内とのシールを行なうように構成した車両用空調装置が知られている。
【0003】
例えば、図3(a)および図3(b)に示すように、ダッシュパネル101に形成された開口部102の周縁と送風ユニット103との隙間105にシール部材106、107を設け、そのシール部材106、107の押圧により隙間105の気密を行なっている。
【0004】
このシール部材106、107は、開口部102の周縁に押圧される凸面側の断面形状が図3(a)に示す略楕円状に形成したもの、または、図3(b)に示す凸面側の先端に略凹状の切り目107aを形成したもののいずれかからなり、根元側が送風ユニット103を構成する外郭ケース104に形成された凹状の挿入部104aに挿入され、他端の凸面側を開口部102の周縁側に押圧させるように外郭ケース104をダッシュパネル101に固定させることで、隙間105を気密している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記形状のシール部材106によれば、略凹状の切り目107aを形成したシール部材107方が、略楕円状に形成したシール部材106のものよりも押圧を小さくすることができるが、その押圧力がシール面全体において均等ではない。これにより、送風ユニット103をダッシュパネル101に固定する組み付け時の取り付け公差の吸収ができない問題がある。しかも、略凹状の切り目107aを形成したシール部材107によれば、シール面積が大きく取れないとともに、押力が小さい個所では気密性が低下する問題がある。
【0006】
また、シール部材106、107の根元側を挿入部104aに挿入するように構成されているが、シール部材106、107の製造のばらつきにより、挿入部104aへの挿入の容易性にばらつきがあり、シール部材106、107の挿入部104aへの圧縮量が大であれば組み付け性が悪化し、シール部材106、107の挿入部104aへの圧縮量が小であれば外れやすい問題がある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、上記点に鑑みたものであり、一端が挿入部に嵌合させかつ均等の押圧が得られるシール部材を形成することで、取り付け公差の吸収を図るとともに組み付け性良好な車両用空調装置を提供することにある。
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1ないし請求項3に記載の技術的手段を採用する。すなわち、請求項1に記載の発明では、車室内と車室外とを仕切る区画板(1)に形成された開口部(2)の車室内側に配設され、内部に空調機器を有するとともに空気通路を形成する空調ユニット(20)と、区画板(1)の開口部(2)の車室外側に配設され、空調ユニット(20)に空気を送風する送風手段(13)を有する送風ユニット(10)とを備える車両用空調装置において、
送風ユニット(10)には、開口部(2)の周縁と送風ユニット(10)との間の隙間を気密するシール部材(3)と、シール部材(3)の一端を嵌合する嵌合部(11a)とが設けられ、
シール部材(3)は、ゴム系弾性体で断面が略U字形状からなり、その凸面側を圧縮させて隙間が気密されるものであって、シール部材(3)の反凸面側を嵌合部(11a)に嵌合させたときに、反凸面側が互いに接して重なり合う部位を形成して前記嵌合部(11a)内に装着され、シール部材(3)の凸面側内部に空気層を有する中空部(4)が形成されるように構成したことを特徴としている。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、シール部材(3)の凸面側内部に空気層を有する中空部(4)が形成されるように構成したことにより、シール面全体において均等な押圧が掛かることで、送風ユニット(10)と区画板(1)との組み付け時における取り付け公差を中空部(4)により吸収できるとともに、シール面に掛かる押圧が均等に掛かるため気密性が向上する。また、シール部材(3)の断面が略U字形状から形成されることにより、成形加工による製造が可能となる。さらに、シール面側に凹状の切り目が形成される従来品と比較してシール面積を大きくできるとともに、気密性が向上できる。
さらに、シール部材(3)は、反凸面側が重なり合って嵌合部(11a)内に装着されることにより、断面が略U字形状から成るにもかかわらず、シール部材(3)の凸面側内部に空気層を有する中空部(4)が良好に形成できる。
【0011】
請求項2に記載の発明では、シール部材(3)は、重なり合う部位の相互に、凹凸状からなる位置合わせ部(3a、3b)が形成されていることを特徴としている。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、重なり合う部位の相互には、凹凸状からなる位置合わせ部(3a、3b)が形成されていることにより、重なり合う部位がずれることはない。これにより、上記中空部(4)の断面積が均等に保つことができる。
【0013】
請求項3に記載の発明では、シール部材(3)は、反凸面側の外面側に抜け留め用のリブ部(3c)が形成されていることを特徴としている。請求項3に記載の発明によれば、反凸面側の外面側に抜け留め用のリブ部(3c)が形成されていることにより、嵌合部(11a)への組み付け性が良好であるとともに、嵌合部(11a)から容易にシール部材(3)が外れることはない。
【0014】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態による車両用空調装置を図1および図2に基づいて説明する。車両用空調装置の通風系は、大別して図1に示す送風ユニット10と2点鎖線で示す空調ユニット20との2つの部分に分かれている。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の送風ユニット10は、車室内と車室外(以下、エンジンルームと称す。)とを仕切る鉄板からなる区画板であるダッシュパネル1のエンジンルーム側に配置されており、これに対し、空調ユニット20は、ダッシュパネル1の車室内側において、計器盤下方部のうち、車両左右方向の略中央部に配置されている。
【0017】
そして、ダッシュパネル1に形成された開口部2を通じて送風ユニット10と空調ユニット20とが連通するように構成されている。なお、送風ユニット10は、開口部2の周縁との隙間を詳しくは後述するシール部材であるグロメット3を介してダッシュパネル1に固定されている。
【0018】
空調ユニット20は、周知のごとく、例えば、ポリプロピレンなどの樹脂材料からなる1つの共通の空調ケース(図示せず)内に冷凍サイクルを構成する蒸発器(図示せず)やヒータコア(図示せず)などの空調機器を一体的に内蔵するとともに、車室内の複数の吹出口に空調空気を送るための空気通路を形成している。
【0019】
送風ユニット10は、ポリプロピレンなどの樹脂材料からなる外郭ケース11内に内気(車室内空気)と外気(車室外空気)とを切り換えて導入する内外気切り換え手段14と、この内外気切り換え手段14を通して空気を導入して空調ユニット20に空気流を送風する送風手段13とを一体的に内蔵している。そして、外郭ケース11は、開口部2の周縁を覆うようにダッシュパネル1に固定されている。
【0020】
内外気切り換え手段14は、内気ドア14a、外気ドア14b、図示しないリンク機構、および内外気切り換え機構(サーボモータなどのアクチュエータ)などから構成されている。内気ドア14aは、空調ユニット20に形成された内気導入口(図示せず)と後述する送風手段13との空気通路を開閉制御する制御ドアであり、外気ドア14bは、外郭ケース11に形成された外気導入口12と後述する送風手段13との空気通路を開閉制御する制御ドアである。
【0021】
これにより、内気ドア14aを開いて外気ドア14bを閉じることで車室内空気が送風手段13に導入され、外気ドア14bを開いて内気ドア14aを閉じることで車室外空気が送風手段13に導入される。
【0022】
送風手段13は、電動モータ13a、送風機13bおよびブロワケーシング13cなどから構成されている。また、ブロワケーシング13cには、吸入口13dおよび吐出口13eとが形成され、吸入口13dより吸い込んだ空気が吐出口13eから空調ユニット20に向けて吹き出される。なお、開口部2には、内気導入口(図示せず)から導入する内気と、吐出口13eから吹き出される空気流が通過するが、吐出口13eには、空調ユニット20側に設けられた図示しないダクトが接続されており、吐出空気と内気とは区画されている。
【0023】
次に、本発明の要部である開口部2のエンジンルーム側に配設される送風ユニット10と開口部2の周縁との隙間を気密するシール部材であるグロメット3について説明する。グロメット3は、エンジンルームから車室内へ雨水や被水などの水の侵入を防止することを目的とするものであり、ゴム系の弾性体から形成して、その一端を外郭ケース11に形成された嵌合部11aに嵌合し、送風ユニット10をダッシュパネル1に固定させることで開口部2とエンジンルームとが気密されるように構成している。
【0024】
つまり、グロメット3の他端の凸面側が押圧により圧縮されて開口部2の周縁との隙間を気密するものである。これにより、エンジンルームから車室内へ雨水や被水などの水の侵入を防止することができる。なお、図中の15は、送風ユニット10をダッシュパネル1に固定する締結部材である。
【0025】
ここで、グロメット3の形状を図2に基づいて説明する。図2は、グロメット3の断面形状と、グロメット3の根元部(反凸面側)が送風ユニット10の嵌合部11aに装着された形態とを示した横断面図である。図2に示すように、グロメット3は、断面が略U字形状で環状に形成された成形品である。
【0026】
そして、根元部(反凸面側)の内面側には、凹状の凹部3aおよび凹部3aに対応する凸状の凸部3bがそれぞれに形成されている。この凹部3aと凸部3bとは、請求項で称する位置合わせ部であり、この根元部(反凸面側)を重ね合わせることにより空気層を有する中空部4が形成されるとともに根元部(反凸面側)のズレが防止できる。
【0027】
また、根元部(反凸面側)の外面側にはリブ部3cが形成されている。このリブ部3cは、嵌合部11aに挿入するときに、挿入しやすく、そして、挿入後には嵌合部11aからグロメット3が抜けにくくなるように形成している。これにより、抜け止め用のリブである。なお、外郭ケース11に形成される嵌合部11aは、グロメット3の根元部(反凸面側)が重ね合わされた状態で嵌合するように凹状の溝部が形成されている。また、図中の3dは鍔部であり、嵌合部11aの周縁と重なることにより外郭ケース11の外部と内部とが気密される。3eは凸面側先端に設けられた凹部であり、凸面側のシール面への面圧を高める。
【0028】
次に、以上の構成によるグロメット3と送風ユニット10のダッシュパネル1への組み付け方法について説明する。まず、グロメット3の根元部(反凸面側)を重ね合わせた状態で嵌合部11aに挿入してグロメット3を送風ユニット10に装着する。そして、グロメット3の凸面側が開口部2の周縁側に押圧が掛かるように送風ユニット10をダッシュパネル1に締結部材15により固定する。これにより、グロメット3の凸面側が圧縮されて送風ユニット10と開口部2の周縁との隙間が気密される。しかも、グロメット3の凸面側内部に中空部4が形成されることにより、凸面側のシール面に掛かる押圧が均等に掛かるため気密性が向上する。
【0029】
以上の一実施形態の車両用空調装置によれば、グロメット3の凸面側内部に空気層を有する中空部4が形成されるように構成したことにより、シール面全体において均等な押圧が掛かることで、送風ユニット10とダッシュパネル1との組み付け時における取り付け公差を中空部4により吸収できるとともに、シール面に掛かる押圧が均等に掛かるため気密性が向上する。
【0030】
また、グロメット3の断面が略U字形状から形成されることにより、成形加工による製造が可能となる。さらに、シール面側に凹状の切り目が形成される従来品と比較してシール面積を大きくできるとともに、気密性が向上できる。
【0031】
また、グロメット3は、根元部(反凸面側)が重なり合って嵌合部11a内に装着されており、重なり合う部位の相互には、凹凸状からなる凹部3a、凸部3bが形成されていることにより、重なり合う部位がずれることはない。これにより、中空部4の断面積が均等に保つことができる。
【0032】
また、グロメット3は、根元部(反凸面側)の外面側にリブ部3cが形成されていることにより、嵌合部11aへの組み付け性が良好であるとともに、挿入後に嵌合部11aから容易にグロメット3が外れることはない。
【0033】
(他の実施形態)
以上の一実施形態では、凸面側に凹部3eを形成したがなくても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態における車両用空調装置の構成を示す模式図である。
【図2】本発明の一実施形態におけるグロメット3の断面形状および送風ユニット10への装着形態を示す横断面図である。
【図3】(a)および(b)は、従来技術におけるグロメットの形状および送風ユニットへの装着形態を示す横断面図である。
【符号の説明】
1…ダッシュパネル(区画板)
2…開口部
3…グロメット(シール部材)
3a…凹部(位置合わせ部)
3b…凸部(位置合わせ部)
3c…リブ部
4…中空部
10…送風ユニット
11a…嵌合部
13…送風手段
20…空調ユニット

Claims (3)

  1. 車室内と車室外とを仕切る区画板(1)に形成された開口部(2)の車室内側に配設され、内部に空調機器を有するとともに空気通路を形成する空調ユニット(20)と、
    前記区画板(1)の前記開口部(2)の車室外側に配設され、前記空調ユニット(20)に空気を送風する送風手段(13)を有する送風ユニット(10)とを備える車両用空調装置において、
    前記送風ユニット(10)には、前記開口部(2)の周縁と前記送風ユニット(10)との間の隙間を気密するシール部材(3)と、前記シール部材(3)の一端を嵌合する嵌合部(11a)とが設けられ、
    前記シール部材(3)は、ゴム系弾性体で断面が略U字形状からなり、その凸面側を圧縮させて前記隙間が気密されるものであって、前記シール部材(3)の反凸面側を前記嵌合部(11a)に嵌合させたときに、前記反凸面側が互いに接して重なり合う部位を形成して前記嵌合部(11a)内に装着され、前記シール部材(3)の前記凸面側内部に空気層を有する中空部(4)が形成されるように構成したことを特徴とする車両用空調装置。
  2. 前記シール部材(3)は、前記重なり合う部位の相互に、凹凸状からなる位置合わせ部(3a、3b)が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
  3. 前記シール部材(3)は、前記反凸面側の外面側に抜け留め用のリブ部(3c)が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の車両用空調装置。
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