JP4321029B2 - 圧力センサ出力処理装置と圧力センサ装置 - Google Patents
圧力センサ出力処理装置と圧力センサ装置 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧力センサのセンサ出力処理装置に関する。また、本発明は、圧力センサとそのセンサ出力処理装置を備えた圧力センサ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えばエンジンのシリンダ内の脈動的に変化する燃焼圧を圧力センサで検知し、そのセンサ出力値を利用してエンジンの点火時期を制御すること等が行われている。そのセンサ出力値は一般に、圧力の大きさに応じた値に、各種の要因によるオフセット値(作用している圧力がゼロであるにもかかわらずセンサ出力として現れる値)が重畳されたものとなっている。このオフセット値は、作用する圧力が上記燃焼圧のように脈動的に変化する場合、その脈動波形のボトム値として現れる。
【0003】
このオフセット値が常に一定であればセンサ出力値から圧力の大きさに応じた値を一義的に求めることができるので問題はない。しかし、このオフセット値は一般に温度依存性を有する。即ち、圧力センサが置かれた環境の温度変化によってオフセット値は変化する。よって、上記エンジンのシリンダ内のようにエンジンの負荷変動により温度変化の大きい環境での圧力を検知しようとする場合は、オフセット値も大きく変化し得る。
従って、作用する圧力の大きさを精度良く検知するためには、センサ出力値からオフセット値の影響を低減した値から、圧力の大きさを検知することが望まれる。
【0004】
圧力センサの出力値からオフセット値の影響を低減するためのセンサ出力処理回路の構成が、本出願人によって特許文献1に開示されている。図24に、このセンサ出力処理回路の構成図を示す。図25に、図24に示す圧力センサ224の出力電圧波形を示す。
【0005】
【特許文献1】
特開平6−34455号公報(第9−10頁、第12図)
【0006】
図24に示すセンサ出力処理回路は、電流源222と、圧力センサ224の出力電圧V1を検出する電圧検出器206と、電圧検出器206で検出した電圧をタイミングT0とT1においてサンプリングするためのサンプリング信号を発生するサンプリング信号発生器204と、タイミングT0における検出電圧値V1(T0)を記憶するためのレジスタ(デジタルメモリ)208と、タイミングT1における検出電圧値V1(T1)を記憶するためのレジスタ210と、検出電圧値V1(T1)と検出電圧値V1(T0)の差をとる演算部212を備えている。
なお、図25において、脈動的に変化するセンサ出力電圧V1がピーク値となるタイミングがT1である。そのセンサ出力電圧V1がボトム値となるタイミングの1つがT0である。
【0007】
このセンサ信号処理回路は、サンプリング信号発生器204からタイミングT0に発生したサンプリング信号に同期してタイミングT0の検出電圧データV1(T0)をレジスタ208に記憶させる。また、サンプリング信号発生器204からタイミングT1に発生させたサンプリング信号に同期してタイミングT1の検出電圧データV1(T0)をレジスタ210に記憶させる。また、演算部212は、レジスタ210に記憶されたタイミングT1における検出電圧値V1(T1)と、レジスタ208に記憶されたタイミングT0における検出電圧V1(T0)の差を求める。この結果、検出電圧値V1(T1)からオフセット値V1(T0)の影響をほぼ取除いた値V2=V1(T1)−V1(T0)を得ることができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このセンサ信号処理回路では、タイミングT1における検出電圧値V1(T1)から、タイミングT1よりも前のタイミングT0における検出電圧値V1(T0)の差をとる構成としている。よって、タイミングT0,T1における検出電圧値V1(T0)、V1(T1)をサンプリングするための構成(サンプリング信号発生器204等)が必要であった。また、サンプリングの際にサンプリング雑音が生じるという問題があった。さらに、タイミングT0、T1における検出電圧値V1(T0)、V1(T1)を記憶するための構成(レジスタ208,210等)が必要であった。このように、従来のセンサ出力処理回路によると、圧力センサの出力値からオフセット値の影響を低減するために複雑な構成を必要とするという問題があった。
【0009】
本発明は、従来に比べてシンプルな構成で圧力センサの出力値からオフセット値の影響を低減することができる圧力センサ出力処理装置又は圧力センサ装置を提供することを目的とする。
本発明は、このセンサ出力処理装置又は圧力センサ装置をさらに改良した技術を提供することを他の目的とする。
本発明は上記した目的の少なくとも1つを達成しようとするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段及び作用と効果】
本発明を具現化した圧力センサ出力処理装置は、圧力センサの出力のボトム値ホールド用コンデンサと、そのコンデンサの電荷を放電するリセットスイッチを有するボトム値ホールド手段と、圧力センサの出力とボトム値ホールド手段の出力の差をとる差動手段と、リセットスイッチにリセット信号を出力するリセット手段を備えている。この装置のボトム値ホールド手段では、リセット信号が入力された際に、リセットスイッチによってコンデンサの電荷を放電してボトム値ホールド手段の出力を所定値まで増大させ、ついで圧力センサの出力のボトム値にまで低下させる。
ここで、本明細書にいう「差動手段」は、圧力センサの出力とボトム値ホールド手段の出力の差をとるとともにその差を増幅するようなものであってもよい。また、圧力センサの出力値に所定の処理(増幅等)が施された後の値と、ボトム値ホールド手段に所定の処理が施された後の値の差をとるようなものであってもよい。
【0011】
本発明の装置は、圧力センサの出力のボトム値ホールド用コンデンサを有するボトム値ホールド手段を備えている。よって、圧力センサの出力のオフセット値は、ボトム値ホールド用のコンデンサによって圧力センサの出力のボトム値をホールドした値から近似的に得ることができる。よって、従来のように、圧力センサの出力をサンプリングするための構成(サンプリング信号発生器等)や、所定タイミングにサンプリングした圧力センサの出力値を記憶するための構成(レジスタ等)が不要である。このため、サンプリングの際に生じるサンプリング雑音が生じないという効果も得られる。
従って、本発明の装置によると、従来に比べてシンプルな構成で圧力センサの出力値からオフセット値の影響を低減することができる。この結果、作用する圧力の大きさを精度良く検知することができる。
【0012】
本発明の装置は、ボトム値ホールド手段にリセットスイッチを更に備えており、そのリセットスイッチにリセット信号を出力するリセット手段を装置内に更に備えている。リセットスイッチは、ボトム値ホールド用のコンデンサの電荷を放電する機能を有する。
【0013】
ボトム値ホールド用のコンデンサの放電特性を緩やかにして(放電時間を長くして)、ボトム値ホールド手段の出力の応答性を低くすると、ボトム値ホールド手段は、圧力センサの出力のボトム値に近い値を出力し続けるというメリットがある。その反面、上記応答性を低くすると、圧力センサの出力のボトム値の変動が大きい場合、その変動にボトム値ホールド手段の出力を十分に追従させるのが困難になるというデメリットがある。
【0014】
これに対し、本発明者らは、リセットスイッチとリセット手段を備えることで、そのデメリットの改善に成功した。即ち、ボトム値ホールド手段の出力の応答性が低く、圧力センサの出力のボトム値の変動にボトム値ホールド手段の出力を十分に追従させることができない場合でも、所定の場合にリセット手段はリセットスイッチにリセット信号を出力する。これによってボトム値ホールド用のコンデンサの電荷が放電され、ボトム値ホールド手段の出力が所定値(例えば、リセット信号が入力された際の圧力センサの出力値)まで増大する。その後、ボトム値ホールド手段の本来の機能に基づいてボトム値ホールド手段の出力を圧力センサの出力のボトム値にまで低下する。これにより、圧力センサの出力のボトム値の変動にボトム値ホールド手段の出力を十分に追従させることができ、ボトム値ホールド手段の出力から、圧力センサの出力のボトム値を精度良く検知することができる。このため、差動手段により得られる圧力センサの出力とボトム値ホールド手段の出力の差から、作用する圧力の大きさを精度良く検知することができる。
従って、本発明の装置によると、ボトム値ホールド手段の出力の応答性を低くした場合でも、そのメリットを享受しながら、そのデメリットを改善することができる。
【0015】
上記の装置において、リセット手段は、圧力センサの出力のボトム値とボトム値ホールド手段の出力値の差が所定値より大きくなった場合に、リセット信号を出力することが好ましい。
また、圧力センサ出力処理装置は、以下の構成で実現されてもよい。本発明を具現化した第2の圧力センサ出力処理装置は、ボトム値ホールド手段と、差動手段と、リセット手段を備えている。ボトム値ホールド手段は、圧力センサの出力のボトム値ホールド用の第1コンデンサを有する第1ボトム値ホールド部と、その第1ボトム値ホールド部の出力のボトム値ホールド用の第2コンデンサ及びその第2コンデンサの電荷を放電するリセットスイッチを有する第2ボトム値ホールド部を有する。第2ボトム値ホールド部の第2コンデンサは第1ボトム値ホールド部の第1コンデンサよりも放電特性が緩やかである。差動手段は、第1ボトム値ホールド部の出力と第2ボトム値ホールド部の出力の差をとる。リセット手段は、第1ボトム値ホールド部の出力と第2ボトム値ホールド部の出力の差が所定値より大きくなった場合に、リセットスイッチにリセット信号を出力する。この装置のボトム値ホールド手段では、リセット信号が入力された際に、リセットスイッチによって第2コンデンサの電荷を放電して第2ボトム値ホールド部の出力を所定値(例えば、リセット信号が入力された際の第1ボトム値ホールド部の出力値)まで増大させ、ついで第1ボトム値ホールド部の出力のボトム値にまで低下させる。
これらの構成によると、圧力センサの出力のボトム値とボトム値ホールド手段の出力値の差が大きくなり過ぎるという事態を回避できる。
【0027】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態) 図1に、第1実施形態の燃焼圧センサ装置の構成図を示す。
第1実施形態の燃焼圧センサ装置は、燃焼圧センサ24と、燃焼圧センサ24のセンサ出力処理回路を備えている。センサ出力処理回路は、電流源22と、ボトム値ホールド回路50と、差動増幅器62を有する。
燃焼圧センサ24は、作用する応力に応じて電気抵抗値が変化するピエゾ抵抗素子46をゲージ部として有している。ピエゾ抵抗素子46には、電流源22から定電流が流される。ピエゾ抵抗素子46に定電流が流されている状態で、圧力(応力)がピエゾ抵抗素子46に加わり、その抵抗値が変化すると、その両端に現れる電圧(出力電圧)V1も抵抗値の変化に応じて変化する。
【0028】
燃焼圧センサ24の出力電圧V1は、ボトム値ホールド回路50を構成する差動増幅器58の正相入力端子に入力される。また、その出力電圧V1は分岐して、差動増幅器62の正相入力端子にも入力される。ボトム値ホールド回路50の出力電圧V2は、差動増幅器62の逆相入力端子に入力される。また、その出力電圧V2は分岐しており、出力端子66からも取出すことができる。差動増幅器62は、正相入力端子に入力された燃焼圧センサ24の出力電圧V1と、逆相入力端子に入力されたボトム値ホールド回路50の出力電圧V2の差をとり、所定の増幅度で増幅し、端子68にV3として出力する。なお、差動増幅器62には、ベース電圧Vbbの設定用端子64が設けられている。
【0029】
図2に、燃焼圧センサ24の構成例を示す。燃焼圧センサ24は、アウターハウジング26と、インナーハウジング28と、断熱部材30と、センサ部32と、ハーメチック端子36と、細長状の端子38と、ワイヤ34等を備えている。なお、図2の右側を前端側、左側を後端側とする。
アウターハウジング26には、インナーハウジング28が収容されている。インナーハウジング28は金属からなり、前端部に形成されたダイアフラム部28aと、筒状部28bによって構成されている。断熱部材30はダイアフラム部28aの後端面に取付けられている。センサ部32は、ハーメチック端子36上に載置され、かつ、固定されている。細長状の端子38は、ハーメチック端子36の空洞部を通って後端側へ伸びている。センサ部32の前端(半球の前端)は、断熱部材30の後端面と接触している。
【0030】
図3に、燃焼圧センサ24のセンサ部(力検知素子)32の概略斜視図を示す。図4に、燃焼圧センサ24のセンサ部(力検知素子)32の電気的構成を示す。センサ部としての力検知素子32は、力検知ブロック48と、力伝達ブロック40,42を有する。力検知ブロック48はシリコン基板からなり、4本の細長状でメサ段差状の突出部が形成されており、この突出部にピエゾ抵抗素子46a〜46dが形成されている。このうち、ピエゾ抵抗素子46a,46cは応力が作用すると抵抗値が変化し、ピエゾ抵抗素子46b,46dは応力が作用しても抵抗値がほとんど変化しないように構成されている(図4(a)参照)。直方体状の第1力伝達ブロック42はガラスからなり、力検知ブロック48に陽極接合されている。半球状の第2力伝達ブロック40は、鉄等の金属からなり、第1力伝達ブロック42に接着されている。なお、第2力伝達ブロック40についても、シリコンあるいはガラス等によって形成してもよい。
【0031】
4本のピエゾ抵抗素子46a〜46dは□形に配置されている。□形のピエゾ抵抗素子46a〜46dの4つの角部から外方に伸びる位置には、電極44a〜44dが形成されている。図4(a)に示すように、電極44a,44dは共に電流源22(図1参照)に接続されている。電極44b,44cは共に接地されている。このため、力検知素子32の電気的構成は、図4(b)に示す構成と等価である。即ち、図4(a)の構成は、図4(b)のように、ピエゾ抵抗素子46a,46cが並列接続された単ゲージ構成のピエゾ抵抗素子46に電流源22が接続された構成と等価となる。
【0032】
図2に示すように、ハーメチック端子14の前端面からは細長状の端子38の一部が突出している。図2には細長状の端子38は2本のみ示されているが、実際には4本存在する。4つの電極34a〜34d(図3参照)と4本の細長状の端子38は1対1に対応付けられてワイヤ34を介して接続されている。
【0033】
この燃焼圧センサ24では、圧力がダイアフラム部28aに加わると、ダイアフラム部28aがたわむことで断熱部材30が後端側に変位する。断熱部材30が後端側に変位すると、断熱部材30に接触するセンサ部(力検知素子)32の力検知ブロック48のピエゾ抵抗素子46(46a,46c)に圧縮応力が作用する。この結果、そのピエゾ抵抗素子46(46a,46c)の抵抗値が変化する。その抵抗値に変化に応じた出力電圧が図4(b)に示すようにV1として電極44a(又は44d)に現れる。この出力電圧V1を利用することで、ダイアフラム部28aに加わる圧力の大きさを検知し得る。
【0034】
次に、図1に示すボトム値ホールド回路50について詳細に説明する。ボトム値ホールド回路50は、差動増幅器58と、ダイオード60と、ボトム値ホールド用のコンデンサ54と、そのコンデンサ54の放電手段としての抵抗56と、電源52を備えている。差動増幅器58の逆相入力端子は、ボトム値ホールド回路50の出力部61に接続されている。差動増幅器58の出力端子には、ダイオード60のカソード側が接続されている。ダイオード60のアノード側はボトム値ホールド回路50の出力部61に接続されている。この出力部61にはさらに、並列接続されたコンデンサ54と抵抗56の一端に接続されている。並列接続されたコンデンサ54と抵抗56の他端には、電源52が接続されている。
【0035】
このボトム値ホールド回路50の動作を、図5と図6を参照しながら説明する。図5は、第1実施形態の燃焼圧センサ装置の各部の電圧波形を示す。図6は、ボトム値ホールド回路50の動作の説明図を示す。
図5のV1〜V3,VXは、図1におけるV1〜V3,VXと同じものである。即ち、V1は、燃焼圧センサ24の出力電圧である。V2は、ボトム値ホールド回路50の出力電圧である。V3は、差動増幅器62の出力電圧である。VXは、ボトム値ホールド回路50を構成する差動増幅器58の出力電圧である。
ボトム値ホールド回路50は、大きく分けると、V2<V1の場合と、V2=V1の場合で動作が異なる。
図5に示すような、燃焼圧センサ24の出力電圧V1を構成する脈動波形の1周期において、最初から約9割の部分ではV2<V1であり、残り約1割の部分でV2=V1となる。但し、この割合は、後述するコンデンサ54と抵抗56の素子値で決まる時定数によって変化する。
【0036】
図6(a)に示すように、V2<V1の場合は、差動増幅器58はコンパレータ状態であり、差動増幅器58の出力電圧VXはVHiとなる。VX=VHiのときはダイオード(等価的にスイッチとみなせる)60がオフするように、電源52の電圧値VP等が設定されている。ダイオード60がオフの状態では、後述するダイオード60がオンのときにコンデンサ54に蓄積された電荷が抵抗(放電手段)56を通じて放電される。ダイオード60がオフの状態では、ボトム値ホールド回路50の出力電圧V2は、電源52の電圧値VPとコンデンサ54の両端電圧の差VP−VCとなる。VPは一定であり、VCはコンデンサ54の放電により徐々に減少するから、V2は徐々に増加する(図5参照)。V2の増加の度合い(V2の傾き)は、コンデンサ54と抵抗56の時定数によって決まる。時定数を大きくすると、V2の応答性は低くなる。即ち、V2の増加の度合いは緩やかになる。逆に時定数を小さくすると、V2の応答性は高くなる。即ち、V2の増加の度合いは急になる。
【0037】
一方、ダイオード60がオフの状態において、図5に示すように、V2が徐々に大きくなり、V1がピーク値を超えて徐々に小さくなると、V2>V1となる状態が発生した結果、V2がVXより大きくなり、ダイオード60がオンする。
ダイオード60がオンすると、図6(b)に示すように、差動増幅器58を含む回路はボルテージフォロワ状態となる。この結果、ダイオード60の順方向電圧(オン電圧)をVDとすると、V2=V1=VX+VDとなる。ダイオード60がオンの状態では、コンデンサ54には、その両端電圧VCが、電源52の電圧値VPとボトム値ホールド回路50の出力電圧V2の差VP−V2となるように充電される。
【0038】
さらに、図5に示すように、V1が徐々に小さくなり、ボトム値に達した後に再度上昇に転じると、再びV2<V1となり、ダイオード60はオフする。このように、ボトム値ホールド回路50は、燃焼圧センサ24の出力電圧V1のボトム値を境にして、ダイオード60がオンからオフに切換わる。この結果、V2はコンデンサ54の放電により、先に述べたコンデンサ54と抵抗56の時定数の大きさに応じて徐々に増加する。
このように、ボトム値ホールド回路50は、燃焼圧センサ24の出力として断続的に大きく変化する脈動波形V1のボトム値を、ボトム値ホールド用のコンデンサ54を利用してホールドするように構成されている。
【0039】
図7(a)に示すように、燃焼圧センサ24の出力電圧V1は、燃焼圧の大きさに応じた電圧値VA1、VA2、VA3にそれぞれ、オフセット電圧値(ボトム電圧値)VB1、VB2、VB3が重畳した値となっている。このオフセット電圧値VB1、VB2、VB3は燃焼圧センサ24の配置された環境の温度によって変化する。
オフセット値が生じる要因は種々あるが、大きく分けると次の2つのものとなる。1つ目は、作用している圧力はゼロであるが、何らかの要因によってセンサ部(力検知素子32)に力が加わっている場合である。2つ目は、作用している圧力もセンサ部32に加わっている力もゼロであるが、作用する圧力がゼロの時のセンサ素子(ピエゾ抵抗素子46)の抵抗値が予め想定された基準値からずれている場合である。
【0040】
前者の例としては、図2に示す力検知素子32に断熱部材30を通じて加えられるプリロード(予荷重)がある。即ち、力検知素子30にプリロードが加えられることで、燃焼圧センサ24の出力にはオフセット値が重畳される。このプリロード量は、温度によって変化する。これは、力検知素子32を構成するシリコン基板48等に比べて、インナーハウジング28を構成する金属の方が熱膨張率が大きいからである。例えば、高温になると、力検知素子32が前端側(図2の右側)に熱膨張する長さに比べて、インナーハウジング28の筒状部28bが前端側に熱膨張する長さの方が長くなるので、プリロード量が減少する。この結果、オフセット値も減少する。逆に低温になると、この場合はオフセット値が増加する。
【0041】
後者の例としては、センサ素子の抵抗値が温度依存性を有し、温度が変化することで、予め想定された基準抵抗値から実際の抵抗値が変化した場合には、その変化量がオフセット値となる。また、センサ素子の製造上のばらつきにより、予め想定された基準抵抗値から実際の抵抗値が変化しているセンサ素子については、その変化量がオフセット値となる。
【0042】
特に後者の要因によるオフセット値は、センサ素子がピエゾ抵抗素子であって、しかも単ゲージ構成の場合には、温度変化に大きく依存して変化する。単ゲージ構成の場合は、ワイヤを2本に減じることができるという有用な利点を有するものの、温度補償構造がとられていないからである。このため、単ゲージ構成のピエゾ抵抗素子を用いる場合には、温度に応じて大きく変化するオフセット値に対する対策を施すことが強く望まれる。
【0043】
第1実施形態の燃焼圧センサ装置は、このオフセット値に対する対策が有効に施されている。この燃焼圧センサ装置は、差動増幅器62において、オフセット電圧値が重畳した燃焼圧センサ24の出力電圧V1から、ボトム値ボールド回路50の出力電圧(オフセット電圧値に相当)V2の差をとり、所定の増幅度で増幅する。この結果、差動増幅器62からは、図7(b)に示すように、V1−V2を増幅した値VC1、VC2、VC3にベース電圧設定用端子62で設定した一定のベース電圧値Vbbが重畳された値V3が出力される。このように、第1実施形態の燃焼圧センサ装置によると、燃焼圧センサ24の出力電圧V1に含まれるオフセット電圧値の影響がほぼ取除かれた電圧値V3を得ることができる。よって、この電圧値V3から、燃焼圧の大きさを精度良く検知できる
【0044】
第1実施形態の燃焼圧センサ装置では、上記したように、ボトム値ホールド用のコンデンサ54を有するボトム値ホールド回路50によって、燃焼圧センサ24の出力電圧V1のボトム値をホールドした値から、オフセット電圧値を近似的に得ている。よって、図22に示す従来のセンサ出力処理回路のように、圧力センサ224の出力をサンプリングするための構成(サンプリング信号発生器204等)や、所定タイミングにサンプリングした圧力センサの出力値を記憶するための構成(レジスタ208,210等)が不要である。
従って、第1実施形態の燃焼圧センサ装置によると、従来に比べてシンプルな構成で燃焼圧センサ24の出力電圧V1からオフセット電圧値の影響をほぼ取除くことができる。
【0045】
(第1実施形態の変形例) 第1実施形態の燃焼圧センサ装置のセンサ部32のピエゾ抵抗素子は、図8に示すように、ホイートストンブリッジ構成にしてもよい。図8の構成では、ピエゾ抵抗素子47aと47dの接続部の電圧V1aと、ピエゾ抵抗素子47bと47cの接続部の電圧V1bを差動増幅器57に入力し、これらの差V1a−V1bを増幅した値を出力V1としている。図8のようなホイートストンブリッジ構成の燃焼圧センサ装置では、抵抗温度特性が補償されているため、一見すると第1実施形態のような構成は不要にも思える。しかし、ホイートストンブリッジ構成の燃焼圧センサ装置でも、先に述べたようなプリロード(予荷重)によるオフセットが生じる。このオフセットは温度によって変動する。よって、ホイートストンブリッジ構成の燃焼圧センサ装置にも第1実施形態の構成は有効である。但し、ホイートストンブリッジ構成のオフセット出力は基本的にはプリロード分だけなので、単ゲージ構成に比較すると、センサ出力に対するオフセット量は小さく、その影響は小さい。従って、第1実施形態の構成は、ホイートストンブリッジ構成にも効果があるが、単ゲージ構成でより効果を発揮することができる。
【0046】
(改善するのが好ましい課題) 第1実施形態の燃焼圧センサ装置では、容量値CBのコンデンサ54と抵抗値RBの抵抗56の時定数CBRBを大きくすると、ボトム値ホールド回路50の出力の応答性が低くなる。即ち、出力電圧V2の上昇が緩やかになる。よって、燃焼圧センサ24の出力電圧V1のボトム値の変動が小さい場合には、ボトム値ホールド回路50の出力電圧V2から、燃焼圧センサ24の出力電圧V1のオフセット値を精度良く検知できる。このため、差動増幅器62の出力電圧V3から、燃焼圧センサ24に加えられた圧力の大きさを精度良く検知できるというメリットがある。
その反面、時定数CBRBを大きくして、上記応答性を低くすると、図8(a)に示すように、燃焼圧センサ24の出力電圧V1のボトム値VBが上昇する方向に変動した場合に、その変動にボトム値ホールド回路50の出力電圧V2を十分に追従させるのが困難になる。この結果、加えられた燃焼圧の大きさ(圧力変化分の大きさ)が脈動波形の各周期において仮に一定であったとしても、差動増幅器62の出力電圧V3は、脈動波形の周期数が増加するにつれて、図9(a)に示すような徐々にボトム値が増加する波形となってしまう。このため、燃焼圧センサ24に作用する燃焼圧の大きさの検知精度が低下するというデメリットがある。作用する燃焼圧の大きさが脈動波形の各周期において仮に一定であるならば、図9(b)に示すように、脈動波形の周期数が増加しても差動増幅器62の出力電圧V3のピーク値及びボトム値が一定であるのが理想である。
【0047】
これに対し、コンデンサ54と抵抗56の時定数CBRBを小さくすると、ボトム値ホールド回路50の出力の応答性が高くなる。即ち、出力電圧V2の上昇が急になる。よって、燃焼圧センサ24の出力電圧V1のボトム値VBが上昇する方向に変化した場合でも、その変動にボトム値ホールド回路50の出力電圧V2を追従させることができるというメリットがある。
その反面、時定数CBRBを小さくして、上記応答性を高くすると、燃焼圧センサ24の出力電圧V1のボトム値の上昇が緩やかな場合には、ボトム値ホールド回路50の出力電圧V2は、時間が経過するにつれて燃焼圧センサ24の出力電圧V1のボトム値から徐々に離れた値になるというデメリットがある。
【0048】
以下の第2実施形態〜第5実施形態は、上記の時定数CBRBについてのトレードオフの問題を改善し得る技術等を提供するものである。
【0049】
(第2実施形態) 図10に、第2実施形態の燃焼圧センサ装置の構成を示す。図11に、第2実施形態の燃焼圧センサ装置の各部の電圧波形を示す。
第2実施形態の燃焼圧センサ装置は、第1実施形態の燃焼圧センサ装置が備える構成に加えて、加算器85,87と、差動増幅器86,88と、リセット信号発生回路90をさらに備えている。さらに、ボトム値ホールド回路50にリセットスイッチ84が設けられている。このリセットスイッチ84は、MOSFETによって構成されており、そのドレイン端子とソース端子はそれぞれ、並列接続されたコンデンサ54と抵抗56の一端と他端に接続されている。ゲート端子はリセット信号発生回路90の出力端子に接続されている。
また、第2実施形態においては、ボトム値ホールド回路50のコンデンサ54の容量値CBと抵抗56の抵抗値RBで決まる時定数CBRBを大きくして、ボトム値ホールド回路50の出力電圧V2の応答性を低くしている(図11の出力電圧波形V2参照)。
【0050】
第1加算器85は、ボトム値ホールド回路50の出力電圧V2と第1基準電圧VK1を加算して、第1判定用電圧VTH1=V2+VK1を出力する。この第1判定用電圧VTH1は、第1差動増幅器86の逆相入力端子に入力される。第1差動増幅器86の正相入力端子には、燃焼圧センサ24の出力電圧V1が入力される。第1差動増幅器86の出力電圧V4は、V1がVTH1より大きい場合はハイ値となり、V1がVTH1より小さい場合はロー値となる。
第2加算器87は、ボトム値ホールド回路50の出力電圧V2と第2基準電圧VK2を加算して、第2判定用電圧VTH2=V2+VK2を出力する。この第2判定用電圧VTH2は、第2差動増幅器88の逆相入力端子に入力される。第2差動増幅器88の正相入力端子には、燃焼圧センサ24の出力電圧V1が入力される。第2差動増幅器88の出力電圧V5は、V1がVTH2より大きい場合はハイ値となり、V1がVTH2より小さい場合はロー値となる。
【0051】
リセット信号発生回路90には、第1及び第2差動増幅器86,88の出力が入力される。リセット信号発生回路90は、第2差動増幅器88の出力電圧V5がロー値の間、第1差動増幅器86の出力電圧V4が常にハイ値であった場合に、パルス状のリセット信号VRSTを出力する(図11参照)。この構成によると、燃焼圧センサ24の脈動的に変化する出力電圧V1がボトム値となるタイミングが判らなくても(そのタイミングを検出する回路等を設けなくても)、燃焼圧センサ24の出力電圧V1のボトム値がVTH1より大きくなったこと(即ち、V1のボトム値とV2の差がVK1より大きくなったこと)が検知できる。また、このパルス状のリセット信号VRSTは、図11に示すように、出力電圧V4がハイ値からロー値に切換わるタイミングに出力する。
このリセット信号VRSTがボトム値ホールド回路50のリセットスイッチ84のゲート端子に入力されると、リセットスイッチ84がオンし、並列接続されている抵抗56とコンデンサ54の両端が短絡される。この結果、コンデンサ54に蓄積されていた電荷は瞬時に放電される。
【0052】
先に述べたように、第2実施形態においては、ボトム値ホールド回路50の出力電圧V2の応答性を低くしているため、図11に示すように基本的にV2<V1となっている。V2<V1の場合は、第1実施形態で説明したようにダイオード60がオフしている。ダイオード60がオフした状態において、上記のように抵抗56及びコンデンサ54の両端が短絡されると、V2はVPとなる。図11には、パルス状のリセット信号VRSTがリセットスイッチ84に出力されたことで、V2がピーク値VPのパルス状に変化した状態が示されている。このV2の変化が終了し、V2の値が低下すると、V2=V1となる状態が生じる。この状態では、第1実施形態で説明したように、ダイオード60がオンしている。そして、V1の値が低下してボトム値に達した後、増加に転じると、ダイオード60がオフし、V2はV1の上昇したボトム値に設定された後、そのボトム値をホールドする。
【0053】
第2実施形態によると、先に述べたように、リセット信号VRSTは、出力電圧V4がハイ値からロー値に切換わるタイミングに出力しているため、下降しているV1にV2を追従させることができる。よって、V2をV1のボトム値に確実に設定できる。また、第2実施形態によると、先に述べたように、並列接続された抵抗56とコンデンサ54の両端をリセットスイッチ84によって短絡することによって、比較的簡単な構成でありながら、確実にV2をV1のボトム値に設定することができる。
なお、V2がV1の上昇したボトム値に設定された後は、VTH1(=V2+VK1)及びVTH2(=V2+VK2)の値もこれに応じて上昇する。よって、V2の値が変化しても、V1のボトム値とV2の差がVK1より大きくなったことを確実に検出できる。
【0054】
このように、第2実施形態の燃焼圧センサ装置は、V1のボトム値とV2の差が所定値VK1より大きくなったことをリセット信号発生回路90が検出した場合に、V2をV1のボトム値に設定し、そのボトム値をホールドするように構成されている。よって、V1のボトム値とV2の差が大きくなり過ぎるという事態を回避できるので、V2から、V1のボトム値を精度良く検知することができる。このため、差動増幅器62により得られるV1とV2の差を増幅したV6から、作用する圧力の大きさを精度良く検知することができる。
従って、第2実施形態の燃焼圧センサ装置によると、ボトム値ホールド回路50の出力の応答性を低くした場合でも、そのメリットを享受しながら、そのデメリットを改善することができる。
【0055】
(第3実施形態) 図12に、第3実施形態の燃焼圧センサ装置の構成を示す。図13に、第3実施形態の燃焼圧センサ装置の各部の電圧波形を示す。
第3実施形態の燃焼圧センサ装置は、第1ボトム値ホールド回路50Aと、第2ボトム値ホールド回路50Bと、リセット信号発生回路91をさらに備えている。ボトム値ホールド回路50A,50Bの構成は、第1実施形態のボトム値ホールド回路と基本的には同様であるが、第2ボトム値ホールド回路50Bには、第2実施形態のボトム値ホールド回路と同様に、リセットスイッチ84Bが設けられている。第1ボトム値ホールド回路50Aのコンデンサ54Aと抵抗56Aで決まる時定数は小さく(早く)、コンデンサ54Aの放電特性は急峻である(放電時間は短い)。即ち、回路出力V2の応答性が高い(図13のV2参照)。一方、第2ボトム値ホールド回路50Bのコンデンサ54Bと抵抗56Bで決まる時定数は大きく(遅く)、コンデンサ54Bの放電特性は緩やかである(放電時間は長い)。即ち、回路出力V4の応答性は低い(図13のV4参照)。
第1ボトム値ホールド回路50Aの差動増幅器58Aの正相入力端子には、燃焼圧センサ24の出力電圧V1が入力される。第1ボトム値ホールド回路50Aの出力電圧V2は、第2ボトム値ホールド回路50Bの差動増幅器58Bの正相入力端子に入力される。第2ボトム値ホールド回路50Bの出力電圧V4は、差動増幅器62の逆相入力端子に入力されるとともに、出力端子67に出力される。
【0056】
リセット信号発生回路91は、誤差増幅器(差動増幅器)102と、比較器104と、基準電源106を備えている。誤差増幅器102の正相入力端子と逆相入力端子にはそれぞれ、第1及び第2ボトム値ホールド回路50A,50Bの出力が入力される。誤差増幅器102の出力は、比較器104の正相入力端子に入力される。比較器104の逆相入力端子には、基準電源106によって基準電圧Vrが入力される。比較器104の出力VRSTは、リセットスイッチ84のゲート端子に入力される。
【0057】
図13のように、燃焼圧センサ24の出力電圧V1が徐々に上昇するに伴って、燃焼圧センサ24の出力電圧V1のボトム値をホールドした値である第1ボトム値ホールド回路50Aの出力電圧V2も徐々に上昇する。出力電圧V2の応答性は高いので、出力電圧V1の上昇によく追従している。一方、第1ボトム値ホールド回路50Aの出力電圧V2のボトム値をホールドした値である第2ボトム値ホールド回路50Bの出力電圧V4は、図13の初期から中期にかけてはほとんど一定である。これは、出力電圧V4の応答性を低く設定したためである。
出力電圧V2とV4の差は、誤差増幅器102でK倍に増幅される。誤差増幅器102の出力K(V2−V4)が基準値Vrより大きくなったことが比較器104で検出されると、比較器104(リセット信号発生回路91)から、リセット信号VRSTが出力される。すると、第2ボトム値ホールド回路50Bのコンデンサ54Bに蓄積されていた電荷は瞬時に放電される。そして、第2ボトム値ホールド回路50Bの出力電圧V4は、第1ボトム値ホールド回路50Aの出力電圧V2の変動に追従し、その出力電圧V2のボトム値(出力電圧V1のボトム値と実質的に等しい)に設定される。
【0058】
よって、V1のボトム値とV4の差が大きくなり過ぎるという事態を回避できるので、V4から、V1のボトム値を精度良く検知することができる。このため、差動増幅器62により得られるV1とV4の差を増幅したV3から、作用する圧力の大きさを精度良く検知することができる。
従って、第3実施形態の燃焼圧センサ装置によると、第2ボトム値ホールド回路50Bの出力の応答性を低くした場合でも、そのメリットを享受しながら、そのデメリットを改善することができる。
【0059】
(第4実施形態) 図14に、第4実施形態の燃焼圧センサ装置の構成を示す。図15に、第4実施形態の燃焼圧センサ装置の各部の電圧波形を示す。
第4実施形態の燃焼圧センサ装置は、第1実施形態の燃焼圧センサ装置が備える構成に加えて、タイマ式のリセット信号発生回路92をさらに備えている。さらに、ボトム値ホールド回路50にリセットスイッチ84が設けられている。このリセットスイッチ84の構成は、第2実施形態のものと同様であり、そのゲート端子は、上記したタイマ式のリセット信号発生回路92の出力端子に接続されている。
第4実施形態の燃焼圧センサ装置は、図15に示すように、タイマ式のリセット信号発生回路92からリセット信号VRSTを、所定時間T毎にリセットスイッチ84に出力する構成としている。リセット信号VRSTがリセットスイッチ84に出力された後の動作は、第2実施形態と同様である。
【0060】
第4実施形態の燃焼圧センサ装置によると、V1のボトム値とV2の差が広がっていく状態が長期に亘って放置されるという事態を回避できるので、V2から、V1のボトム値を精度良く検知することができる。
従って、第4実施形態の燃焼圧センサ装置によると、第2実施形態と同様に、ボトム値ホールド回路50の出力の応答性を低くした場合でも、そのメリットを享受しながら、そのデメリットを改善することができる。
【0061】
(第5実施形態) 図15に、第5実施形態の燃焼圧センサ装置の構成を示す。図16に、第5実施形態の燃焼圧センサ装置の各部の電圧波形を示す。
第5実施形態の燃焼圧センサ装置は、第1実施形態の燃焼圧センサ装置が備える構成に加えて、パルス端検出回路70と、サンプル・ホールド回路76をさらに備えている。
パルス端検出回路70は、微分回路によって構成されている。この微分回路はコンデンサ74と抵抗74によって構成されている。コンデンサ74は、一端がボトム値ホールド回路50の差動増幅器58の出力端子に接続されている。コンデンサ74の他端は抵抗74の一端に接続されている。抵抗74の他端は接地されている。コンデンサ72と抵抗74の接続点はパルス端検出回路70の出力となっている。
【0062】
サンプル・ホールド回路76は、スイッチング素子(この例ではMOSFET)78と、コンデンサ80と、ボルテージフォロワ回路82によって構成されている。スイッチング素子78のゲート端子は、パルス端検出回路70の出力(コンデンサ72と抵抗74の接続点)に接続されている。スイッチング素子78のドレイン端子は、ボトム値ホールド回路50の出力に接続されている。スイッチング素子78のソース端子には、コンデンサ80の一端が接続されているとともに、ボルテージフォロワ回路82の入力端子に接続されている。コンデンサ80の他端は接地されている。
【0063】
また、第5実施形態においては、ボトム値ホールド回路50のコンデンサ54の容量値CBと抵抗56の抵抗値RBで決まる時定数CBRBを小さくして、ボトム値ホールド回路50の出力電圧V2の応答性を高くしている(図17の出力電圧波形V2参照)。
【0064】
第5実施形態の燃焼圧センサ装置の動作について説明する。ボトム値ホールド回路50の差動増幅器58の出力VXは、第1実施形態で述べたように、ダイオードオフ状態ではVX=VHiとなり、ダイオードオン状態ではVX+VD=V1=V2となる(図17参照)。なお、VDはダイオード60の順方向電圧である。VX=VHiのときと、VX+VD=V1=V2のときではVXの大きさに差があるから、VXは近似的にパルス状の波形となっている。
このVXがパルス端検出回路70に入力される。パルス端検出回路70は微分回路によって構成されているから、パルス状の波形VXが入力された場合は、その波形VXのパルス端の部分でピーク状の波形V3を出力する。パルス状の波形VXの立下りのパルス端では、負の向きにピーク状の波形V3が出力される。パルス状の波形VXの立上がりのパルス端では、正の向きにピーク状の波形V3が出力される。このうち、負の向きのピーク状の波形V3は無視するものとする。
【0065】
正の向きにピーク状の波形V3がサンプル・ホールド回路76のスイッチング素子78のゲート端子に入力されると、スイッチング素子78がオンする。スイッチング素子78がオンしたタイミングは、出力電圧V1がボトム値となるタイミングである。このように、パルス端検出回路70は、出力電圧V1がボトム値となるタイミングを検出する役割を果たしている。
この結果、そのスイッチング素子78がオンしたタイミング(出力電圧V1がボトム値となったタイミング)におけるボトム値ホールド回路50の出力電圧V2(=V4)が、サンプルホールド回路76のボルテージフォロワ回路82の入力部81に伝わる。この結果、その入力部81に一端が接続されたコンデンサ80には、その両端電圧がV4となるように電荷が蓄積され、両端電圧がV4の状態をホールドする。
【0066】
ボルテージフォロワ回路82はバッファとしての役割を果たすものであり、ボルテージフォロワ回路82の出力には、上記電圧V4がそのまま出力される。この出力電圧V4は差動増幅器62の逆相入力端子に入力される。この出力電圧V4の値は、スイッチング素子78が再度オンするまで同じ値がホールドされている。即ち、図17に示すように、V1のボトム値が徐々に増加する状態の場合には、出力電圧V4の値は、V1のボトム値において段差ができる階段状の波形となる。ここで、差動増幅器62の正相入力端子には、第1実施形態と同様に、燃焼圧センサ24の出力電圧V1が入力される。
このため、差動増幅器62の出力電圧V5は、燃焼圧センサ24の出力電圧V1からサンプルホールド回路76の出力電圧V4の差を増幅した値に、一定のベース電圧Vbbが重畳した値となる。この出力電圧波形が図17に示されている。
【0067】
第5実施形態の燃焼圧センサ装置によると、ボトム値ホールド回路50の出力電圧V2の応答性が高く、V2がV1のボトム値から徐々に離れた値となる場合でも、サンプル・ホールド回路76の出力電圧V4から、V1のボトム値を精度良く検知することができる。このため、差動増幅器62により得られるV1とV4の差を増幅した値V5から、作用する圧力の大きさを精度良く検知することができる。また、時定数CBRBを小さくできるので、容量値CBの小さなコンデンサ54、あるいは抵抗値RBの小さな抵抗52を使用できるという効果も得られる。
従って、第5実施形態の燃焼圧センサ装置によると、ボトム値ホールド回路50の出力の応答性を高くした場合でも、そのメリットを享受しながら、そのデメリットを改善することができる。
【0068】
(第6実施形態) 図18に、第6実施形態の燃焼圧センサ装置の構成を示す。
第6実施形態の燃焼圧センサ装置は、第1実施形態の燃焼圧センサ装置が備える構成に加えて、制御回路(補正回路)94aをさらに備えている。
この制御回路94aは、ボトム値ホールド回路50の出力電圧V2を検出し、その出力電圧値V2に応じて電流源22の電流値を制御する。より具体的には、制御回路94aは、検出した出力電圧値V2が基準値からどれだけ異なるか(大きいか、小さいかも含む)を検出する。検出した出力電圧値V2が基準値よりも所定値だけ大きい場合は、電流源22から流す電流値を前記所定値の大きさに応じて減少させる。即ち、ピエゾ抵抗素子46の抵抗温度係数と感度温度係数が正の場合であって、検出した出力電圧値V2が基準値よりも大きい場合は、燃焼圧センサ24の配置された環境が高温となっており、ピエゾ抵抗素子46の感度が基準感度よりも高くなっていると想定できる。よって、この燃焼圧センサ24の感度上昇に伴う差動増幅器62の出力電圧(装置出力)V3の増加を補正するため、電流源22から流す電流値を減少させる。この結果、所定の圧力が作用したときの燃焼圧センサ24の出力電圧V1、ひいては差動増幅器62の出力電圧V3の増加が抑制される。
一方、検出した出力電圧値V2が基準値よりも所定値だけ小さい場合は、電流源22から流す電流値を前記所定値の大きさに応じて増加させて、所定の圧力が作用したときの差動増幅器62の出力電圧V3の低下を抑制する。
なお、電流源22を、制御回路94aで電圧値を調整可能な電圧源に置換えてもよい。
【0069】
(第7実施形態) 図19に、第7実施形態の燃焼圧センサ装置の構成を示す。
第7実施形態の燃焼圧センサ装置は、第1実施形態の燃焼圧センサ装置が備える構成に加えて、制御回路(補正回路)94bをさらに備えている。また、ピエゾ抵抗素子46の入力兼出力端子と電圧源23の端子の間には、可変抵抗96が設けられている。
この制御回路94bは、ボトム値ホールド回路50の出力電圧V2を検出し、その出力電圧値V2に応じて可変抵抗96の抵抗値を調整する。より具体的には、制御回路94bは、ピエゾ抵抗素子46の抵抗温度係数と感度温度係数が正の場合であって、検出した出力電圧値V2が基準値よりも所定値だけ大きい場合は、可変抵抗96の抵抗値を前記所定値の大きさに応じて増加させる。この結果、所定の圧力が作用したときの燃焼圧センサ24の出力電圧V1、ひいては差動増幅器62の出力電圧V3の増加が抑制される。
一方、検出した出力電圧値V2が基準値よりも所定値だけ小さい場合は、可変抵抗96の抵抗値を前記所定値の大きさに応じて減少させて、所定の圧力が作用したときの差動増幅器62の出力電圧V3の低下を抑制する。
なお、可変抵抗96は、燃焼圧センサ24のグランド側(接地側)に挿入してもよい。
【0070】
(第8実施形態) 図20に、第8実施形態の燃焼圧センサ装置の構成を示す。
第8実施形態の燃焼圧センサ装置は、第1実施形態の燃焼圧センサ装置が備える構成に加えて、制御回路(補正回路)94cをさらに備えている。また、差動増幅器62の出力端子68とベース電圧Vbbの設定用端子64の間には、可変抵抗98と固定抵抗100が直列に接続されている。可変抵抗98と固定抵抗100の接続部には、補正出力端子68aが設けられている。
この制御回路94cは、ボトム値ホールド回路50の出力電圧V2を検出し、その出力電圧値V2に応じて、第7実施形態と同様に、可変抵抗98の抵抗値を調整し、燃焼圧センサ24(ピエゾ抵抗素子46)の感度変化に伴う差動増幅器62の出力電圧V3の変化を補正した値V3aを補正出力端子68aから出力する。
【0071】
(第9実施形態) 図21に、第9実施形態の燃焼圧センサ装置の構成を示す。
第9実施形態の燃焼圧センサ装置は、第1実施形態の燃焼圧センサ装置が備える構成に加えて、制御回路(補正回路)94dをさらに備えている。
この制御回路94dは、ボトム値ホールド回路50の出力電圧V2を検出し、その出力電圧値V2に応じて、差動増幅器62の増幅度を調整する。より具体的には、制御回路94dは、検出した出力電圧値V2が基準値よりも所定値だけ大きい場合は、差動増幅器62の増幅度を前記所定値の大きさに応じて減少させて、所定の圧力が作用したときの差動増幅器62の出力電圧V3の増加を抑制する。
一方、検出した出力電圧値V2が基準値よりも所定値だけ小さい場合は、差動増幅器62の増幅度を前記所定値の大きさに応じて増加させて、所定の圧力が作用したときの差動増幅器62の出力電圧V3の低下を抑制する。
【0072】
第6〜第9実施形態の燃焼圧センサ装置によると、燃焼圧センサ装置が配置された環境の温度変化があり、燃焼圧センサ24の感度変化が生じた場合でも、所定の圧力が作用したときの装置出力(上記例では差動増幅器62の出力電圧V3,V3a)をぼぼ一定に保つことができる。
【0073】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
(1)上記実施形態では、センサ素子としてピエゾ抵抗素子を用いた燃焼圧センサを例に説明したが、センサ素子として圧電素子を用いたものであってもよい。
(2)上記実施形態では、ピエゾ抵抗素子が単ゲージ構成のものを例に説明したが、フルブリッジ構成や、ハーフブリッジ構成のものであってもよい。
(3)第2実施形態(図10、図11参照)においては、出力電圧V1がボトム値となるタイミングを検出し、そのタイミングにおけるV1の値がVTH1以上となったことを検出する構成としてもよい。
(4)第2実施形態(図10、図11参照)等では、ボトム値ホールド回路50のコンデンサ54と抵抗56をスイッチ素子84で短絡することで、コンデンサ54に蓄積された電荷を放電させ、V2をVPに設定し、V2を下降しているV1に追従させ、V2をV1のボトム値に設定するようにしている(図11参照)。しかし、例えば図22や図23の構成によって充分に小さな時定数に切換えることで、V2の応答性を向上させて、V2をV1のボトム値に設定するようにしてもよい。即ち、図22に示すように、リセット信号発生回路90からのリセット信号によってスイッチ85aをオンさせ、抵抗56に抵抗値の小さな抵抗56aを並列接続させることで、小さな時定数に切換えるようにしてもよい。また、図23に示すように、リセット信号発生回路90からのリセット信号によってスイッチ85bをオフさせ、コンデンサ54に並列接続されていたコンデンサ54aを切り離すことで、小さな時定数に切換えるようにしてもよい。
(5)第4実施形態(図14、図15参照)では、リセット信号発生回路92からのリセット信号VRSTを、所定時間T毎にリセットスイッチ84に出力する構成としたが、脈動波形V1の脈動数(パルス数)をカウントする回路(脈動周波数検出回路)を設け、所定数カウントされる毎にリセット信号VRSTをリセットスイッチ84を出力する構成としてもよい。また、脈動周波数検出回路で検出された脈動周波数に応じて、ボトム値ホールド回路50のコンデンサと抵抗で決まる時定数を制御する(例えば複数の段階に切換える)構成としてもよい。例えば、脈動周波数が小さいときは時定数を大きくして応答性を低くしても、ボトム値ホールド回路50で脈動波形V1のボトム値をホールドし得る。よって、不必要に時定数を小さくすることで応答性を高くして、誤差(脈動波形V1の実際のボトム値とボトム値ホールド回路50の出力V2の差)が大きくなることを回避できる。
【0074】
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1実施形態の燃焼圧センサ装置の構成を示す。
【図2】 燃焼圧センサの構成を示す。
【図3】 燃焼圧センサのセンサ部(力検知素子)の概略斜視図を示す。
【図4】 燃焼圧センサのセンサ部(力検知素子)の電気的構成を示す。
【図5】 第1実施形態の燃焼圧センサ装置の各部の電圧波形を示す。
【図6】 ボトム値ホールド回路の動作の説明図を示す。
【図7】 燃焼圧センサの出力電圧波形と、センサ出力処理回路の出力電圧波形を示す。
【図8】 第1実施形態の変形例の燃焼圧センサ装置の構成を示す。
【図9】 燃焼圧センサの出力電圧波形が徐々に上昇していく場合の第1実施形態の燃焼圧センサ装置の各部の電圧波形を示す。
【図10】 第2実施形態の燃焼圧センサ装置の構成を示す。
【図11】 第2実施形態の燃焼圧センサ装置の各部の電圧波形を示す。
【図12】 第3実施形態の燃焼圧センサ装置の構成を示す。
【図13】 第3実施形態の燃焼圧センサ装置の各部の電圧波形を示す。
【図14】 第4実施形態の燃焼圧センサ装置の構成を示す。
【図15】 第4実施形態の燃焼圧センサ装置の各部の電圧波形を示す。
【図16】 第5実施形態の燃焼圧センサ装置の構成を示す。
【図17】 第5実施形態の燃焼圧センサ装置の各部の電圧波形を示す。
【図18】 第6実施形態の燃焼圧センサ装置の構成を示す。
【図19】 第7実施形態の燃焼圧センサ装置の構成を示す。
【図20】 第8実施形態の燃焼圧センサ装置の構成を示す。
【図21】 第9実施形態の燃焼圧センサ装置の構成を示す。
【図22】 第2実施形態等の第1変形例の燃焼圧センサ装置の構成を部分的に示す。
【図23】 第2実施形態等の第2変形例の燃焼圧センサ装置の構成を部分的に示す。
【図24】 従来の圧力センサのセンサ出力処理回路の構成を示す。
【図25】 圧力センサの出力電圧波形を示す。
【符号の説明】
22:電流源
24:燃焼圧センサ
26:ピエゾ抵抗素子
50:ボトム値ホールド回路62:差動増幅器
Claims (2)
- 圧力センサの出力のボトム値ホールド用のコンデンサと、そのコンデンサの電荷を放電するリセットスイッチを有するボトム値ホールド手段と、
前記圧力センサの出力と前記ボトム値ホールド手段の出力の差をとる差動手段と、
前記リセットスイッチにリセット信号を出力するリセット手段を備えており、
前記リセット手段は、前記圧力センサの出力のボトム値と前記ボトム値ホールド手段の出力の差が所定値より大きくなった場合に、前記リセット信号を出力し、
前記ボトム値ホールド手段は、前記リセット信号が入力された際に、前記リセットスイッチによって前記コンデンサの電荷を放電して前記ボトム値ホールド手段の出力を所定値まで増大させ、ついで前記圧力センサの出力のボトム値にまで低下させることを特徴とする圧力センサ出力処理装置。 - 圧力センサの出力のボトム値ホールド用の第1コンデンサを有する第1ボトム値ホールド部と、前記第1ボトム値ホールド部の出力のボトム値ホールド用の第2コンデンサ及び前記第2コンデンサの電荷を放電するリセットスイッチを有する第2ボトム値ホールド部を備えるボトム値ホールド手段と、
前記第1ボトム値ホールド部の出力と前記第2ボトム値ホールド部の出力の差をとる差動手段と、
前記リセットスイッチにリセット信号を出力するリセット手段を備えており、
第2ボトム値ホールド部の第2コンデンサは第1ボトム値ホールド部の第1コンデンサよりも放電特性が緩やかであり、
前記リセット手段は、前記第1ボトム値ホールド部の出力と前記第2ボトム値ホールド部の出力の差が所定値より大きくなった場合に前記リセット信号を出力し、
前記ボトム値ホールド手段は、前記リセット信号が入力された際に、前記リセットスイッチによって前記第2コンデンサの電荷を放電して前記第2ボトム値ホールド部の出力を所定値まで増大させ、ついで第1ボトム値ホールド部の出力のボトム値にまで低下させることを特徴とする圧力センサ出力処理装置。
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