JP4843945B2 - センサ電圧処理回路 - Google Patents

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Description

本発明はセンサが出力する電圧を処理し、観測対象事象に対応する電圧を取出す回路に関する。
例えば、抵抗値が変化するピエゾ抵抗効果を利用する検知部をセンサに組込み、そのセンサを内燃機関の燃焼室に設置することがある。この場合のセンサ電圧は、検知部の温度に依存して変化する電圧に、燃焼室の燃焼圧に依存して変化する電圧が重畳したものとなる。センサ電圧から燃焼圧を計測するためには、センサ電圧から温度に依存して変化する電圧を減じなければならない。センサ電圧から減じる電圧を一定電圧にしてしまうと、減算後の電圧に温度に依存して変化する電圧が残ってしまう。
センサに組込まれた検知部の温度は緩慢に変化するのに対し、燃焼室の燃焼圧は急速に増減する変化を繰返す。内燃機関の燃焼室に設置したセンサが出力するセンサ電圧は、温度に依存して緩慢に変化する電圧に、燃焼圧に依存して急速に脈動する電圧が重畳したものとなる。緩慢に変化する電圧に、急速に脈動する電圧が重畳した電圧から、緩慢に変化する電圧を減じることによって、急速に脈動する事象が観測可能となる。
上記は一例であり、センサが、緩慢に変化する第1事象に依存して変化する電圧に、急速に増減する変化を繰返す第2事象に依存して変化する電圧が重畳した電圧を出力することが多くある。例えば緩慢に変化する温度変化に、急速に脈動する温度変化が重畳することもある。第1事象と第2事象は、異なる物理量であることもあれば、同一の物理量であることもある。
急速に脈動する第2事象を観測するためには、背景の変化、すなわち、緩慢に変化する第1事象に伴って変動する電圧の影響を除去する必要がある。本発明は、緩慢に変化する第1事象に依存して変化する電圧に、急速に増減する変化を繰返す第2事象に依存して変化する電圧が重畳しているセンサ電圧を処理し、第1事象に依存して変化する電圧の影響を排除し、第2事象に依存して変化する電圧を取出す技術に関する。
緩慢に変化する電圧に急速に脈動する電圧が重畳しているセンサ電圧を処理し、緩慢に変化する電圧の影響を排除し、急速に脈動する電圧を取出す電圧処理回路が開発されている。特許文献1に本出願人によって開発された電圧処理回路が開示されている。
特開2004−108896号公報
特許文献1のセンサ電圧処理回路は、緩慢に変化する温度変化(第1事象)に依存して変化する電圧に、急速に増減する変化を繰返す(脈動する)燃焼圧の変化(第2事象)に依存して変化する電圧が重畳しているセンサ電圧を処理する。この処理回路は、緩やかに変化する正の電圧に、急速に脈動する正の電圧が重畳しているセンサ電圧を処理する。
特許文献1のセンサ電圧処理回路は、緩やかに変化する正の電圧をコンデンサを利用して保存する電圧保存回路を利用する。センサ電圧が電圧保存回路で保存している保存電圧を上回っている間は、電圧保存回路が保存電圧を維持し、センサ電圧が保存電圧に等しくなると、センサ電圧の降下に追従して保存電圧を降下させる電圧保存回路を備えている。さらに、電圧保存回路の電圧とセンサ電圧との電圧差を出力する差動回路を備えている。
電圧保存回路は、緩慢に変化する第1事象に依存して変化する電圧を保存する。急速に脈動する第2事象に依存して変化する電圧が重畳したためにセンサ電圧が保存電圧を上回るようになっても、電圧保存回路は保存電圧を維持する。電圧保存回路の電圧とセンサ電圧との電圧差は、急速に脈動する第2事象に依存して変化する電圧に等しい。電圧保存回路と差動回路を利用すると、急速に脈動する第2事象に依存して変化する電圧を取出すことができる。
電圧保存回路は、センサ電圧が保存電圧に等しくなると、センサ電圧の降下に追従して保存電圧を降下させる。急速に脈動する第2事象に依存して変化する電圧が小さくなってセンサ電圧が緩慢に変化する第1事象に依存して変化する電圧にほぼ等しくなると、電圧保存回路は、保存電圧が緩慢に変化する第1事象に依存して変化する電圧に等しくなるように更新する。この場合、電圧保存回路はセンサ電圧のボトム値を保存するということができる。センサ電圧は、緩慢に変化するボトム値に急速に変化する脈動値が重畳したものであり、電圧保存回路はボトム値の変化に追従して変化する。
ボトム値を保存する電圧保存回路は、センサ電圧のボトム電圧が出現する毎に、コンデンサに保存する電圧を更新するように構成されている。具体的には、センサ電圧が保存電圧に等しくなると、電圧保存回路は、センサ電圧に応じた電圧をコンデンサに保存する。即ち、電圧保存回路は、センサ電圧が保存電圧に等しくなるのを合図に、次のボトム電圧が現れたことを認識し、次のボトム電圧に応じた電圧をコンデンサに保存する。センサ電圧が脈動に起因して再び増加するまで、保存電圧はセンサ電圧に追随して変化し、ボトム電圧をコンデンサに保存する。脈動に起因してセンサ電圧が再び増加すると、センサ電圧が保存電圧を上回る状態に移行する。この間は保存電圧が維持される。したがって、電圧保存回路には、センサ電圧が脈動に起因して増加する直前のセンサ電圧(ボトム電圧に相当する)が保存される。
電圧保存回路は、次のボトム電圧が出現するまで、前回のボトム電圧を保存する。次のボトム電圧が前回のボトム電圧よりも低い場合には、電圧保存回路がセンサ電圧の降下に追従して保存電圧を降下させるので、保存電圧は低いボトム電圧に更新される。
その一方において、次のボトム電圧が前回のボトム電圧よりも高い場合には、センサ電圧の降下に追従して保存電圧を降下させる回路だけでは、保存電圧を上昇したボトム電圧に更新することができない。
実際の電圧保存回路では、コンデンサに電荷を蓄電することによって電圧を保存する。コンデンサは徐々に放電する。そのために実際の電圧保存回路では、保存電圧がセンサ電圧に向けて徐々に変化する。実際の電圧保存回路では、ボトム値から徐々に上昇する電圧を保存していることになる。ボトム値から徐々に上昇する電圧を保存しているために、センサ電圧が保存電圧に等しくなるとセンサ電圧の降下に追従して保存電圧を降下させることによって、次のボトム電圧が前回のボトム電圧よりも高い場合でも、保存電圧を更新することができる。
実際の電圧保存回路では、コンデンサとそのコンデンサに並列に接続されている抵抗の時定数を調整することによって、コンデンサの放電速度を調整する。緩慢に変化する電圧の変化速度が比較的に速い(それでも第2事象の変化よりはおそい)場合は、時定数を小さくすることによって放電速度を速くする。これにより、緩慢に変化する電圧の増大と減少の双方に追随するように保存電圧を更新することができる。
特許文献1のセンサ電圧処理回路では、センサ電圧が保存電圧と等しくなってから次にセンサ電圧が増加するまでの間、即ち、保存電圧がセンサ電圧の降下に追随して降下している間、電圧保存回路の保存電圧とセンサ電圧が一致して変化する。この期間では、脈動に起因する電圧が実際には存在しているにも関わらず、電圧処理回路の差動回路の出力電圧がゼロとなってしまう。本明細書ではこの期間を消失時間という。
この消失期間を短縮するためには、コンデンサとそれと並列に接続されている抵抗の時定数を調整すること有効である。しかしながら、時定数を調整しても消失期間を完全に無くすことは困難である。
急速に脈動する電圧がマイナス電圧であることもある。この場合は、緩慢に変化する電圧値にマイナスの脈動電圧が重畳する。この場合には、センサ電圧のピーク値を保存する電圧保存回路を利用することによって、センサ電圧から脈動電圧を取出すことができる。
ピーク電圧保存回路を利用する場合でも、保存電圧を更新するために、保存電圧とセンサ電圧が一致して変化する期間が存在する。ピーク電圧保存回路を利用する場合でも、差動回路の出力電圧から脈動電圧が消失してしまう時間が存在する。
本発明の目的は、脈動電圧に重畳する緩慢な電圧変化の影響を補償するための電圧保存回路を備えており、その保存電圧をセンサ電圧に基づいて更新する方式のセンサ電圧処理回路を改善し、脈動電圧が存在するにもかかわらず、差動回路の出力電圧がゼロになってしまう消失時間を解消する技術を実現する。
本発明は、緩慢に変化する第1事象に依存して変化する電圧に、急速に増減する変化を繰返す第2事象に依存して変化する電圧が重畳しているセンサ電圧を処理する回路に関する。本発明のセンサ電圧処理回路は、コンデンサを利用して電圧を保存するとともに、センサ電圧が保存電圧を上回っている間はコンデンサからの電荷の放電速度に応じて保存電圧を上昇させながら維持し、センサ電圧が保存電圧に等しくなるとセンサ電圧の降下に追従して保存電圧を降下させる電圧保存回路を備えている。さらに、電圧保存回路の保存電圧の変化を緩慢化する緩慢回路を備えている。さらに、緩慢回路の出力電圧とセンサ電圧との電圧差を出力する差動回路を備えている。
ここでいうセンサ電圧とは、センサが出力する電圧の他に、センサが出力した電圧をある種の回路等によって処理した後の電圧も含む。例えば、センサと保存電圧回路の間に、ある種の回路が挿入されている場合が後者の例であり、この場合のセンサ電圧とはある種の回路が出力する電圧をいう。
緩慢回路は、典型的にはセンサ電圧処理回路が動作している全期間に亘って電圧保存回路の保存電圧の変化を緩慢化するものであるが、電圧保存回路の保存電圧がセンサ電圧と等しくなった直後の所定期間だけ緩慢化するものであってもよい。前記期間以外では、電圧保存回路の保存電圧がもともと緩慢に変化するからである。
緩慢回路を設けることによって、電圧保存回路の保存電圧がセンサ電圧と等しくなった後に、保存電圧がセンサ電圧の降下に追従して一緒に変化してしまう現象を禁止することができる。すなわち差動回路の出力がゼロに維持される現象の発生を禁止することができる。
電圧保存回路と緩慢回路を組み合わせて用いると、電圧保存回路の保存電圧がセンサ電圧と等しくなった直後で、保存電圧がセンサ電圧に追従して急速に変化する期間では、保存電圧の変化が緩慢回路によって緩慢化される。緩慢化された電圧は、センサ電圧の降下に追従しないで緩やかに変化する。緩慢回路の出力電圧とセンサ電圧が一致して変化しないので、緩慢回路の出力電圧とセンサ電圧との電圧差がゼロとならない。急速に脈動する電圧が存在するにも関わらず、電圧処理回路の出力値がゼロとなってしまう現象を回避することができる。したがって、上記のセンサ電圧処理回路によると、急速に脈動する電圧あるいはその変化の様子を、センサ電圧処理回路が動作している全期間に亘って観測することができる。
上記のセンサ電圧処理回路は、センサが内燃機関の燃焼室に臨んでいる場合に特に有用である。この場合、第1事象である温度変化、第2事象である圧力変化が重畳したセンサ電圧を処理し、温度変化に依存する電圧の影響を排除し、圧力変化に依存する電圧を取出す必要がある。
内燃機関において、急速に脈動する燃焼圧を検出し、その値を利用して内燃機関の点火時期等の制御を行う技術の開発が進められている。ところが、内燃機関の燃焼室に設置されているセンサが出力するセンサ電圧は、温度に依存して緩慢に変化する電圧に、燃焼圧に依存して急速に脈動する電圧が重畳したものとなることが多い。センサ電圧から温度に依存して緩慢に変化する電圧を排除したいという要求が強い。さらに、内燃機関では温度変化が大きいことから、温度に依存して変化する電圧自体も比較的大きく変動する。このため、消失期間が長期化することが多い。本発明のセンサ出力処理回路は、このような要求に応えることができる。
電圧保存回路は、オペアンプと、ダイオードと、コンデンサと、抵抗と、定電圧電源を備えていることが好ましい。センサ電圧がオペアンプの非反転入力端子に接続されており、オペアンプの出力端子がダイオードのカソード端子に接続されており、ダイオードのアノード端子がコンデンサを介して定電圧電源に接続されているとともにオペアンプの反転入力端子に接続されており、抵抗がコンデンサに並列に接続されていることが好ましい。ここでいうダイオードはpn接合を内蔵する半導体であり、バイポーラトランジスタ等を利用してダイオードとして機能させることもできる。
この電圧保存回路を利用することによって、センサ電圧のボトム電圧が出現する毎に、コンデンサに保存する電圧を更新することができる。この電圧保存回路と緩慢回路を組み合わせることによって、緩慢に変化する電圧の変動に追随しながら、急速に脈動する電圧あるいはその変化の様子を、センサ電圧処理回路が動作している全期間に亘って観測することができる。
RC平滑回路で緩和回路を構成してもよい。
RC平滑回路を利用すると、電圧保存回路の保存電圧の高周波成分を除去することができる。したがって、電圧保存回路の保存電圧の変化を緩慢化することができる。電圧保存回路とRC平滑回路を組み合わせることによって、電圧保存回路の保存電圧の変化がRC平滑回路によって緩慢化され、RC平滑回路の出力電圧がセンサ電圧の降下に追従しないで緩やかに変化するようになる。RC平滑回路の出力電圧とセンサ電圧が一致して変化しないので、急速に脈動する電圧が存在するにも関わらず、電圧処理回路の出力値がゼロとなってしまう現象を回避することができる。したがって、上記の電圧処理回路によると、急速に脈動する電圧あるいはその変化の様子を、センサ電圧処理回路が動作している全期間に亘って観測することができる。
緩慢回路が、ピーク値ホールド回路であってもよい。この場合、第2コンデンサを利用して第2保存電圧を保存するとともに、電圧保存回路の保存電圧が第2保存電圧を下回っている間はコンデンサからの電荷の放電速度に応じて第2保存電圧を降下させながら維持し、電圧保存回路の保存電圧が第2保存電圧と等しくなると電圧保存回路の保存電圧の上昇に追従して第2保存電圧を上昇させる第2電圧保存回路を利用する。
緩慢回路には、電圧保存回路の保存電圧が入力する。緩慢回路は、電圧保存回路の保存電圧と、降下するセンサ電圧が一致した瞬間を第2保存電圧(ピーク電圧)とし、その第2保存電圧に応じた電圧を第2コンデンサに保存する。これにより、電圧保存回路の保存電圧がセンサ電圧に一致した後に、センサ電圧に追従して急峻に変化してしまうタイミングにおいて、緩慢回路から出力される第2保存電圧は緩やかに変化するようになる。この結果、緩慢回路の第2保存電圧は、センサ電圧の変動よりも緩やかに変動するようになる。緩慢回路の第2保存電圧とセンサ電圧が一致して変化しないので、センサ電圧処理回路の出力がゼロとなる現象を回避することができる。このセンサ電圧処理回路は、急速に脈動する電圧あるいはその変化の様子を、センサ電圧処理回路が動作している全期間に亘って観測することができる。
なお、緩和回路は、前記したRC平滑回路と第2コンデンサを利用する回路の両者を備えていてもよい。この場合、電圧保存回路の時定数を任意に設定できるという利点を有する。
緩慢回路は、電圧保存回路のコンデンサに直列に抵抗を接続するという簡単な回路で実現することもできる。抵抗は、コンデンサの少なくとも一端に接続されておれば足り、コンデンサの両端に接続されていてもよい。要は、コンデンサと直列に接続されていればよい。この場合は、電圧保存回路と緩慢回路が一体化していると評価することもできる。
この位置関係に抵抗を設けることによって、電圧保存回路のコンデンサの充放電速度を低下させることができる。特に、電荷が充電される速度を低下させることができるので、電圧保存回路の保存電圧がセンサ電圧に追従して急峻に変化しようとする際に、保存電圧が緩やかに変化するように制御することができる。電圧保存回路の保存電圧が、センサ電圧の変動よりも緩やかに変動するので、センサ電圧処理回路の出力がゼロとなる現象を回避することができる。このセンサ電圧処理回路を利用すると、急速に脈動する電圧あるいはその変化の様子を、センサ電圧処理回路が動作している全期間に亘って観測することができる。
本発明のセンサ電圧処理回路は、マイナスの脈動電圧が重畳する場合にも有用である。マイナスの脈動電圧が重畳する場合には、コンデンサを利用して電圧を保存するとともにセンサ電圧が保存電圧を下回っている間はコンデンサからの電荷の放電速度に応じて保存電圧を降下させながら維持し、センサ電圧が保存電圧に等しくなるとセンサ電圧の上昇に追従して保存電圧を上昇させる電圧保存回路を用いる。このセンサ電圧処理回路の消失時間を解消するためにも、電圧保存回路の保存電圧の変化を緩慢化する緩慢回路と、緩慢回路の出力電圧とセンサ電圧との電圧差を出力する差動回路を組合わせて用いることが有効である。
本発明のセンサ電圧処理回路では、緩慢回路を設けることによって、電圧保存回路の保存電圧とセンサ電圧が一緒になって変化する現象を回避することができる。電圧保存回路と緩慢回路を組み合わせることによって、保存電圧の変化が緩慢化され、緩慢回路の出力電圧がセンサ電圧と一緒になって降下する現象を回避することができる。これにより、脈動電圧が存在しているにも関わらず、センサ電圧処理回路の出力値がゼロとなってしまう事態を回避できる。
(第1実施形態)
図1に、第1実施形態の燃焼圧計測装置の構成図を示す。この燃焼圧計測装置は、燃焼圧センサ30と、燃焼圧センサ30のセンサ電圧処理回路31を備えている。燃焼圧センサ30は、作用する応力に応じて電気抵抗値が変化するピエゾ抵抗素子46を利用する検知部32を有している(図3参照)。燃焼圧センサ30は、内燃機関の燃焼室に臨んで配置されており、検知部32の周囲の緩慢に変化する温度変化に依存して変化する電圧に、急速に脈動する燃焼圧の変化に依存して変化する電圧が重畳しているセンサ電圧Vを出力する。センサ電圧処理回路31は、センサ電圧Vから緩慢に変化電圧を除去し、急速に脈動する電圧変化を取出す処理をする回路である。センサ電圧処理回路31は、ボトム電圧保存回路50(電圧保存回路の一例)と、ローパスフィルタ回路60(緩慢回路の一例)と、差動増幅器80(差動回路の一例)を備えている。
ピエゾ抵抗素子46には、電流源22から定電流が流されている。ピエゾ抵抗素子46に定電流が流されている状態で、圧力(応力)がピエゾ抵抗素子46に加わり、その抵抗値が変化すると、その両端に現れる電圧(出力電圧)Vが抵抗値の変化に応じて変化する。ピエゾ抵抗素子46は環境温度によって抵抗値が変化する特性を備えているので、センサ電圧Vには温度変化の影響も重畳する。
図1に示すように、燃焼圧センサ30のセンサ電圧Vは、ボトム電圧保存回路50を構成する差動増幅器58の非反転入力端子に入力されている。また、そのセンサ電圧Vは分岐して、差動増幅器80の非反転入力端子にも入力されている。ボトム電圧保存回路50の保存電圧Vは、ローパスフィルタ回路60の入力端子60aに入力されている。ローパスフィルタ回路60の出力電圧Vは、差動増幅器80の反転入力端子に入力されている。また、その出力電圧Vは分岐しており、出力端子82から取出すこともできる。この出力端子82から出力電圧Vを監視することによって、燃焼室内温度を測定することができる。差動増幅器80は、非反転入力端子に入力された燃焼圧センサ30のセンサ電圧Vと、反転入力端子に入力されたローパスフィルタ回路60の出力電圧Vの差をとり、所定の増幅度で増幅し、その増幅結果を端子84に出力電圧Vとして出力する。なお、差動増幅器80には、ベース電圧Vbbの設定用端子81が設けられている。端子84の出力電圧Vは、燃焼室内温度の影響を受けず、燃焼室内の圧力に呼応して増減する。
図2に、燃焼圧センサ30の一例を挙げ、その要部断面図を概略して示す。燃焼圧センサ30は、アウターハウジング33と、インナーハウジング31と、断熱部材35(力伝達部材ともいう)と、検知部32と、ハーメチック端子36と、細長状の端子38a,38bと、ワイヤ34a,34b等を備えている。なお、図2の右側を前端側、左側を後端側とする。
インナーハウジング31は、アウターハウジング33に収容されている。インナーハウジング31は金属等で形成されており、前端部に形成されたダイアフラム部31aと、筒状部31bによって構成されている。断熱部材35はダイアフラム部31aの後端面に取付けられており、ダイアフラム部31aによって圧力から変換された力を検知部32へ伝達する。さらに、断熱部材35は燃焼に伴う熱の影響が検知部32に伝わるのを抑制する効果もある。検知部32は、ハーメチック端子36上に載置され、かつ、固定されている。細長状の端子38a,38bは、ハーメチック端子36の空洞部を通って後端側へ伸びている。検知部32の前端(半球の前端)は、断熱部材35の後端面と接触している。
図3に、燃焼圧センサ30の検知部32の斜視図を概略して示す。検知部32は、力検知ブロック48と、力伝達ブロック40,42を有する。力検知ブロック48はシリコン基板等からなり、その表面に1本の細長状のメサ段差状の突出部が形成されている。突出部にピエゾ抵抗素子46が形成されている。ピエゾ抵抗素子46は、応力が作用すると抵抗値が変化する。ピエゾ抵抗素子46の両端に、電極44a、44bが形成されている。直方体状の第1力伝達ブロック42はガラス等からなり、突起47を介して力検知ブロック48に陽極接合されている。半球状の第2力伝達ブロック40は、鉄等の金属からなり、第1力伝達ブロック42に接着されている。なお、第2力伝達ブロック40についても、シリコンあるいはガラス等によって形成してもよい。
図2に示す細長状の端子38aはワイヤ34aによって電極44aに接続されている。細長状の端子38bはワイヤ34bによって電極44bに接続されている。細長状の端子38aは定電流電源22に接続され、細長状の端子38bは接地されて用いられる。
この燃焼圧センサ30のダイアフラム部31aに圧力が加わると、ダイアフラム部31aがたわむことによって、断熱部材35の位置が後端側に変位する。断熱部材35が後端側に変位すると、断熱部材35に接触している検知部32の力検知ブロック48のピエゾ抵抗素子46に圧縮応力が作用する。この結果、そのピエゾ抵抗素子46の抵抗値が変化する。その抵抗値の変化に応じた出力電圧Vが電極44aに現れる。このセンサ電圧Vを利用することで、ダイアフラム部31aに加わる圧力の大きさを計測することができる。
次に、図1に示すボトム電圧保存回路50について説明する。ボトム電圧保存回路50は、差動増幅器58と、ダイオード59と、ボトム電圧ホールド用のコンデンサ54と、抵抗56と、正の定電圧電源52を備えている。センサ電圧Vが差動増幅器58の非反転入力端子に接続されている。差動増幅器58の出力端子がダイオード59のカソード端子に接続されている。ダイオード59のアノード端子がコンデンサ54を介して正の定電圧電源52に接続されている。ダイオード59のアノード端子は、差動増幅器58の反転入力端子にお接続されている。抵抗56は、接続点51、53を介してコンデンサ54と並列に接続されている。
ローパスフィルタ回路60は、抵抗62とコンデンサ66を備えたRC平滑回路であり、コンデンサ66の一端は負の定電圧電源64に接続されている。負の定電圧電源64の電位は、接地電位あるいは固定された負の定電位である。ローパスフィルタ回路60の出力端子60bは、差動増幅器80の反転入力端子に接続されている。
第1実施形態のセンサ電圧処理回路31の動作を説明する前に、その動作の理解を助けるために、まずはローパスフィルタ回路60が設けられていない場合(これを比較例とする)に関して、ボトム電圧保存回路50の動作を説明する。比較例は、図1に示すセンサ電圧処理回路31のうち、ローパスフィルタ回路60のみが取り除かれた回路であり、ローパスフィルタ回路60以外の構成は同一とする。
図4に、比較例の燃焼圧計測装置の各部の電圧波形を示す。図5は、ボトム電圧保存回路50の動作を説明するための図である。なお、比較例の電圧波形を第1実施形態のそれと区別するために、比較例の説明では、燃焼圧センサ30のセンサ電圧VをV’に変更し、ボトム電圧保存回路50の保存電圧VをV’に変更し、差動増幅器80の出力電圧VをV’に変更して説明する。V’は、ボトム電圧保存回路50を構成する差動増幅器58の出力電圧である。
図4に示すように、燃焼圧センサ30のセンサ電圧V’は、そのときの燃焼室内温度によって決まるボトム電圧に、脈動する燃焼圧に対応して脈動する電圧が重畳したものとなっている。ボトム電圧保存回路50は、センサ電圧V’が保存電圧V’を上回っている場合(V’>V’)と、センサ電圧V’が保存電圧V’に等しい場合(V’=V’)の場合で動作が異なる。脈動の最初から約9割の部分ではV’>V’であり、残り約1割の部分でV’=V’となる。但し、この割合は、後述するコンデンサ54と抵抗56の素子特性で決まる時定数によって変化させることができる。
図5(a)に示すように、V’>V’の場合は、差動増幅器58がコンパレータとして機能する状態となり、差動増幅器58の出力電圧V’はVHighとなる。V’=VHighのときはダイオード59(等価的にスイッチとみなせる)がオフするように、正の定電圧電源52の電圧値V’等が設定されている。ダイオード59がオフの状態では、コンデンサ54が新たに充電されることがなく、基本的にはコンデンサ54の電圧が維持される。コンデンサ54の電圧は、ダイオード59がオンからオフに変化したときの電圧に維持される。ダイオード59がオフの状態では、ボトム電圧保存回路50の電圧V’は、正の定電圧電源52の電圧値V’からコンデンサ54の両端間電圧V’を減じた電圧(V’−V’)となる。V’は一定であり、V’はダイオード59がオンからオフに変化したときの電圧に維持されるから、ボトム電圧保存回路50の電圧V’は、ほぼ一定値に保存される。
ただしコンデンサ54の電圧は、抵抗54によって緩やかに放電して徐々に減少する。このために、ボトム電圧保存回路50の保存電圧V’は徐々に増加する(図4参照)。保存電圧V’の増加の度合い(V’の傾き)は、コンデンサ54と抵抗56の時定数によって任意に設定することができる。時定数を大きくすると、V’の応答性は低くなる。即ち、V’の増加の度合いは緩やかになる。逆に時定数を小さくすると、V’の応答性は高くなる。即ち、V’の増加の度合いは急になる。
図4に示すように、ボトム電圧保存回路50の保存電圧V’は徐々に大きくなるのに対し、V’はピークを超えて降下する。脈動電圧がほぼゼロとなると、V’とV’が一致する。これにより、V’=V’となる状態が発生するので、ダイオード59がターンオンする。
ダイオード59がオンすると、図5(b)に示すように、差動増幅器58を含む回路はボルテージフォロワ状態となる。この結果、ダイオード59の順方向電圧(オン電圧)をV’とすると、V’=V’=V’+V’となる。ダイオード59がオンの状態では、コンデンサ54の両端電圧V’が、正の定電圧電源52の電圧値V’から燃焼圧センサ30のセンサ電圧V’を減じた電圧に一致するまで充電される。即ち、ボトム電圧保存回路50は、センサ電圧V’が保存電圧V’と等しくなった瞬間を合図に、次のボトム電圧が現れたことを認識し、その後は降下するセンサ電圧V’に追随して保存電圧V’を変化させる。次のボトム電圧が高いほどコンデンサ54の両端電圧V’が小さくなるように充電するために保存電圧V’が高く更新され、次のボトム電圧が低いほどコンデンサ54の両端電圧V’が大きくなるように充電するために保存電圧V’が低く更新される。保存電圧V’は保存している間に緩やかに増大するために、次のボトム電圧が増大すれば保存電圧V’が高く更新される。次のボトム電圧が減少すれば保存電圧V’は低く更新される。
図4に示すように、V’がボトム電圧を脱して再度増加段階に移行すると、再びV’>V’となり、ダイオード59はターンオフする。ボトム電圧保存回路50は、燃焼圧センサ30の出力電圧V’がボトム電圧V’から脱して増加段階に移行するのを境にして、ダイオード59がオンからオフに切換わる。ダイオード59がオフすると、先に述べたように、次のボトム電圧が現れるまで、コンデンサ54は電荷を徐々に放電しながら、基本的にはボトム電圧に応じた保存電圧V’を維持する。このようにして、ボトム電圧保存回路50は、燃焼圧センサ30の出力電圧V’にボトム電圧が出現する毎に、新たなボトム電圧に更新し、更新したボトム電圧をホールドするように構成されている。
図6(a)に示すように、燃焼圧センサ30のセンサ電圧V’は、燃焼圧の大きさに応じたそれぞれの電圧値V’A1、V’A2、V’A3(脈動電圧ともいう)に、オフセット電圧値(ボトム電圧値ともいう)V’B1、V’B2、V’B3が重畳した値となっている。電圧値V’A1、V’A2、V’A3は、急速に増減する変化を繰返す燃焼圧に依存して変化する。オフセット電圧値V’B1、V’B2、V’B3は燃焼圧センサ30の配置された環境の温度によって変化する。環境の温度変化は、燃焼圧の変化に比して緩慢に変化する。
オフセット値が生じる要因は種々あるが、大きく分けると次の2つのもの挙げることができる。1つは、作用している圧力がゼロであるにも関わらず、何らかの要因によって検知部32に力が加わっている場合である。もう1つは、作用している圧力も検知部32に加わっている力もゼロであるが、作用する圧力がゼロの時のセンサ素子(ピエゾ抵抗素子46)の抵抗値が予め想定された基準値からずれている場合である。
前者の例としては、図2に示す検知部32に断熱部材35を通じて加えられるプリロード(予荷重)がある。即ち、検知部32にプリロードが加えられることで、燃焼圧センサ30の出力値にはオフセット値が重畳される。このプリロード量は、温度によって変化する。これは、検知部32を構成するシリコン基板48等に比べて、インナーハウジング31を構成する金属の熱膨張率の方が大きいからである。例えば、高温になると、検知部32が前端側(図2の右側)に熱膨張する長さに比べて、インナーハウジング31の筒状部31bが前端側に熱膨張する長さの方が長くなるので、プリロード量が減少する。この結果、オフセット値も減少する。逆に低温になると、この場合はオフセット値が増加する。
後者の例としては、センサ素子の抵抗値が温度依存性を有することがあげられる。
後者の要因によるオフセット値は、センサ素子がピエゾ抵抗素子であって、しかも単ゲージ構成の場合には、温度変化に大きく依存して変化する。単ゲージ構成の場合は、ワイヤを2本に減じることができるという有用な利点を有するものの、温度補償構造がとられていないからである。このため、単ゲージ構成のピエゾ抵抗素子を用いる場合には、温度に応じて大きく変化するオフセット値に対する対策を施すことが強く望まれる。
比較例の燃焼圧計測装置は、差動増幅器80において、燃焼圧センサ30のセンサ電圧V’から、ボトム電圧保存回路50の保存電圧(ボトム電圧に相当する)V’の差をとり、所定の増幅度で増幅する。この結果、差動増幅器80からは、図6(b)に示すように、V’−V’を増幅した値V’C1、V’C2、V’C3に、ベース電圧設定用端子81で設定した一定のベース電圧値V’bbが重畳された値V’が出力される。このように、比較例の燃焼圧計測装置によると、燃焼圧センサ30のセンサ電圧V’に含まれるオフセット電圧値の影響が排除された電圧値V’を得ることができる。
ところが、この比較例では、図4に示すように、ボトム電圧保存回路50の保存電圧V’と降下段階の燃焼圧センサ30の出力電圧V’が一致してから、V’が再び増加段階に移行するまでの間、即ち、ボトム電圧保存回路50のコンデンサ54が電荷を充電しているときに、センサ電圧V’の降下に追随してV’が一緒になって変化する。一緒になって変化すると、実際にはV’に脈動電圧が存在しているにも関わらず、差動増幅器80の出力、即ち、センサ電圧処理回路31の出力電圧V’がゼロとして現れる。この期間を消失時間という。この消失期間を短縮するためには、コンデンサ54と抵抗56の時定数を調整することによって、V’の増加の傾きを小さくすればよい。しかしながら、ボトム電圧が外部環境の変化等によって経時的に大きく増加する場合があり、大きく増加した場合でもそれに追従してボトム電圧保存回路50で保存する電圧V’を更新できるようにするためには、V’の増加の傾きをあまりに小さくすることができない。
従来の技術では、V’の増加の傾きを大きく調整して、ボトム電圧が大きく増加した場合でもそれに追従して保存電圧V’を更新できるようにすると消失期間は長くなる。それを嫌ってV’の増加の傾きを小さく調整すれば、消失期間を短くすることができるが、ボトム電圧が大きく増加するとそれに追従して保存電圧V’を更新することができなくなってしまう。コンデンサ54と抵抗56の時定数を調整することによって、V’の増加の傾きを最適化することには限界があり、消失期間を短くしようとするとボトム電圧保存回路50でボトム電圧の増加に追従できないことなり、ボトム電圧の増加に追従しようとすると消失期間が長くなってしまう。
一方、次に説明するように、図1に示す本実施形態のセンサ出力処理回路31では、ローパスフィルタ回路60を設けることによって、この消失期間を無くすことに成功したのである。
図7に、第1実施形態の燃焼圧計測装置の各部の電圧波形を示す。図7のV〜V,Vは、図1におけるV〜V,Vと同じものである。Vは、燃焼圧センサ30の出力電圧である。Vは、ボトム電圧保存回路50の保存電圧である。Vは、ローパスフィルタ回路60の出力電圧である。Vは、差動増幅器80の出力電圧である。Vは、ボトム電圧保存回路50を構成する差動増幅器58の出力電圧である。
ローパスフィルタ回路60は、ボトム電圧保存回路50の保存電圧Vの高周波成分を除去する。図7の図示104に示すように、ボトム電圧保存回路50の保存電圧Vと燃焼圧センサ30のセンサ電圧Vが一致した直後の期間において、ローパスフィルタ回路60は、VがVと一緒に急峻に変化しようとするときの高周波成分を除去することによって、ローパスフィルタ回路60の出力電圧Vは燃焼圧センサ30のセンサ電圧Vの変動よりも緩やかに変動するようになる。ローパスフィルタ回路60の出力電圧Vと燃焼圧センサ30のセンサ電圧Vは一緒に変化しない。ローパスフィルタ回路60の出力電圧Vは、ボトム電圧保存回路50のコンデンサ54が充電しているときに、燃焼圧センサ30のセンサ電圧Vの変動よりも緩やかに変動するようになる。ローパスフィルタ回路60の出力電圧Vの変化速度の絶対値は、ボトム電圧保存回路50のコンデンサ54が充電しているときに、燃焼圧センサ30のセンサ電圧Vの変化速度の絶対値よりも小さくなる。ローパスフィルタ回路60の出力電圧Vと、燃焼圧センサ30のセンサ電圧Vが異なっていることから、差動増幅器80の出力電圧、即ち、出力処理回路の出力電圧Vがゼロとなる現象を回避することができる(図示102)。
なお、図示102に示されるように、センサ出力処理回路の出力電圧Vはボトム電圧値に対して下に凸状の変動を示しており、実際の燃焼圧センサ30の脈動電圧とは異なる。しかしながら、脈動電圧を反映した出力電圧Vを得ることができる。センサ出力処理回路31を利用すると、脈動成分の変化の様子を全期間に亘って観測することができる。エンジン等の燃焼圧を観測する場合、燃焼圧の変化の様子を全期間に亘って把握する必要がある。本実施形態のセンサ出力処理回路31は、エンジン等の燃焼圧を観測する場合、極めて有用である。
(第2実施形態)
図8に、第2実施形態の燃焼圧計測装置の構成図を示す。この燃焼圧計測装置は、第1実施形態において設けられていたローパスフィルタ回路60を、ピーク電圧保存回路90に変更した例である。ピーク電圧保存回路90以外の構成要素は、第1実施形態のそれと同一のものを利用することができる。ピーク電圧保存回路90は、差動増幅器98と、ダイオード99と、ピーク電圧ホールド用のコンデンサ94と、そのコンデンサ94の放電用の抵抗96と、負の定電圧電源64を備えている。ボトム電圧保存回路50の保存電圧V(第1保存電圧の一例)が差動増幅器98の非反転入力端子に接続されている。差動増幅器98の出力端子がダイオード99のアノード端子に接続されている。ダイオード99のカソード端子がコンデンサ94を介して負の定電圧電源92に接続されている。ダイオード99のカソード端子は、差動増幅器98の反転入力端子にも接続されている。抵抗96は、共通接続点91、93を介してコンデンサ94と並列に接続されている。負の定電圧電源92の電位は、接地電位あるいは固定された負の定電位である。
第2実施形態の燃焼圧計測装置の各部の電圧波形も、図7に示す第1実施形態の電圧波形と実質的に同様の挙動を示す。
ピーク電圧保存回路90を構成する差動増幅器98の非反転入力端子には、ボトム電圧保存回路50の保存電圧Vが入力している。ピーク電圧保存回路90は、ボトム電圧保存回路50の保存電圧Vと、降下段階の燃焼圧センサのセンサ電圧Vが一致した瞬間をピーク電圧(第2保存電圧の一例)として、そのピーク電圧に応じた電荷をコンデンサ94に蓄積する。具体的には、ボトム電圧保存回路50の保存電圧Vと、降下段階の燃焼圧センサのセンサ電圧Vが一致する前の期間、即ち、ボトム電圧保存回路50の保存電圧Vが増加している期間では、ピーク電圧保存回路90の差動増幅器98はVHighを出力している。差動増幅器98がVHighを出力していると、ダイオード99はターンオンとなるので、差動増幅器98を含む回路はボルテージフォロワ状態となる。したがってピーク電圧保存回路90の出力電圧Vは、ボトム電圧保存回路50の保存電圧Vを出力するとともに、その出力電圧V(=V)に応じた電荷をコンデンサ94に蓄積する。ボトム電圧保存回路50の保存電圧Vと、降下段階の燃焼圧センサのセンサ電圧Vが一致した後の期間では、ピーク電圧保存回路90の差動増幅器98はVLowを出力する。差動増幅器98がVLowを出力すると、ダイオード99はターンオフとなる。したがって、コンデンサ94には、ボトム電圧保存回路50の保存電圧Vと、降下段階の燃焼圧センサのセンサ電圧Vが一致した瞬間の電圧値に応じた電荷が蓄積されることになる。これにより、ボトム電圧保存回路50の保存電圧Vのピーク電圧をホールドすることができる。ボトム電圧保存回路50の保存電圧Vと、降下段階の燃焼圧センサのセンサ電圧Vが一致した後の期間では、ピーク電圧保存回路90の出力電圧Vは、コンデンサ94に蓄積された電荷を徐々に放電しながら減少していく(図7の図示104)。ピーク電圧保存回路90の出力電圧Vが減少し、燃焼圧センサ30のセンサ値Vと一致すると、差動増幅器98はVHighを出力する。差動増幅器98がVHighを出力すると、ダイオード99はターンオンとなるので、差動増幅器98を含む回路はボルテージフォロワ状態となる。この結果、ピーク電圧保存回路90の出力電圧Vは、ボトム電圧保存回路50の保存電圧V(この期間は燃焼圧センサ30のセンサ電圧Vと一致している)を出力するとともに、その出力電圧V(=V)に応じた電荷をピーク電圧保存回路90のコンデンサ94に蓄積する。このことから、第2実施形態の燃焼圧計測装置の各部の電圧波形も、図7に示す第1実施形態の電圧波形と実質的に同様の挙動を示すことが分かる。
即ち、第2実施形態の燃焼圧計測装置においても、ボトム電圧保存回路50の保存電圧Vが燃焼圧センサ30のセンサ電圧Vに一致した直後に一緒になって急峻に変化してしまう現象を緩やかに変化させることができる。ピーク電圧保存回路90の出力電圧Vは、ボトム電圧保存回路50のコンデンサ54が充電しているときに、燃焼圧センサ30のセンサ電圧Vの変動よりも緩やかに変動するようになる。ピーク電圧保存回路90の出力電圧Vと燃焼圧センサ30のセンサ電圧Vが一致して変化しないので、センサ電圧処理回路31の出力電圧Vがゼロとなる現象を回避することができる。この燃焼圧計測装置は、脈動成分あるいはその変化の様子を全期間に亘って検出することができる。
(第3実施形態)
図9に、第3実施形態のボトム電圧保存回路50の構成図を示す。第3実施形態のボトム電圧保存回路50は、変化を緩慢化する回路を内蔵している。ボトム電圧保存回路50以外の他の構成要素は、上記の各実施形態、あるいは従来のものと同一とすることができる。例えば、図1や図8に示す燃焼圧計測装置のボトム電圧保存回路50を、図9に示すボトム電圧保存回路50に変更してもよい。あるいは図1や図8に示す燃焼圧計測装置において、ローパスフィルタ回路60やピーク電圧保存回路90を省いた従来の燃焼圧計測装置において、それに設けられているボトム電圧保存回路50を図9のボトム電圧保存回路50に変更してもよい。
このボトム電圧保存回路50は、従来の構成に加えて、コンデンサ54と直列に抵抗55(緩和手段の一例)が設けられている。なお、コンデンサ54と抵抗55の位置関係(図中の上下関係)が逆転されていてもよく、あるいはコンデンサ54を挟んで上下に抵抗が設けられていてもよい。要は、コンデンサ54と直列の位置関係に抵抗を設けることによって、以下に示すのと同様の作用効果を得ることができる。
上記の位置関係に抵抗55を設けることによって、ボトム電圧保存回路50のコンデンサ54に対する電荷の充放電の速度を低下させることができる。特に、電荷が充電される速度を低下させることができることから、ボトム電圧保存回路50の保存電圧Vの変化が緩やかになる。即ち、ボトム電圧保存回路50のコンデンサ54を充電しているとき、コンデンサ54の両端電圧Vは、正の電圧電源52の電圧値Vと燃焼圧センサ30のセンサ電圧Vの差(V−V)となるように充電される。電圧電源52の電圧値Vの電圧値が一定なので、コンデンサ54の両端電圧Vの充電速度が遅いと、ボトム電圧保存回路50の保存電圧Vの変化が緩やかになる。燃焼圧センサ30のセンサ電圧Vの急峻な変化に追従して電荷を蓄積するのではなく、それよりも遅れて電荷を蓄積するようになる。したがって、ボトム電圧保存回路50の保存電圧が、燃焼圧センサ30のセンサ電圧Vと一緒になって急峻に変化してしまう現象を緩やかに変化させることができる。ボトム電圧保存回路50の保存電圧は、コンデンサ54を充電するときに、燃焼圧センサ30のセンサ電圧の変動よりも緩やかに変動するようになる。ボトム電圧保存回路50の保存電圧と燃焼圧センサのセンサ電圧が一緒になって変化しないので、センサ電圧処理回路31の出力電圧がゼロとなる現象を回避することができる。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
出力処理回路において、図1に示すローパスフィルタ回路60と、図8に示すピーク電圧保存回路90の両者を同時に備えていてもよい。この場合、ボトム電圧保存回路50とローパスフィルタ回路60の間にピーク電圧保存回路90を挿入してもよく、あるいはボトム電圧保存回路50とピーク電圧保存回路90の間にローパスフィルタ回路60を挿入してもよい。ローパスフィルタ回路60とピーク電圧保存回路90の両者を同時に設けることによって、ボトム電圧保存回路50に備えられているコンデンサ54と抵抗56の時定数を任意に設定できるようになる。
ローパスフィルタ回路60は、受動フィルタの一例であるRC平滑回路に代えて、オペアンプを利用する能動フィルタ等の他のローパスフィルタを利用してもよい。
上記実施形態のセンサ電圧処理回路は、緩慢に変動する信号に負の脈動信号が重畳する場合にも有用である。例えば、燃焼圧センサ等に負の定電圧を供給することによって、燃焼圧センサ等の出力が負の脈動信号を出力する場合には、ボトム値保存回路に代えて、ピーク値保存回路を用いればよい。ピーク値を更新して、そのピーク値を負の脈動信号から減ずることによって、緩慢に変動する信号を排除することができる。これにより、急速に変動する負の脈動信号のみを取出すことができる。
また、緩慢に変動する信号に正の脈動信号と負の脈動信号が断続的に重畳する場合にも有用である。正の脈動信号はボトム電圧保存回路によって取出すことができ、負の脈動信号は緩和回路(ローパスフィルタ、ピーク電圧保存回路、あるいは抵抗等)によって取出すことができる。
また、脈動信号が断続的に繰返す場合に限らず、例えば正の脈動信号と負の脈動信号が連続して繰返すような信号(正弦信号あるいは正弦信号と似た信号)が重畳する場合にも有用である。この場合は、ボトム電圧保存回路によって負の脈動信号の極小値が更新され、その極小値をセンサの出力信号から減ずることによって脈動信号のみを取出すことができる。
なお、緩慢に変動する信号に正の脈動信号と負の脈動信号の両者が重畳する場合、各実施形態や変形例等のセンサ出力処理回路を利用することによって、得られる信号が本来の脈動信号に対して多くの誤差を含んでしまう可能性がある。このような誤差を低減するためには、ボトム電圧保存回路の時定数や、緩慢回路の特性(ローパスフィルタ回路の場合はそのカットオフ周波数、ピーク電圧保存回路の場合はその時定数、抵抗の場合はその抵抗値)を調整することによって、前記誤差を抑えることができる。
センサ素子(検知部)の構成は、単ゲージ構成に限らず、ホイーンストンブリッジ、ハーフブリッジであってもよい。また、センサ素子(検知部)は、圧電型の素子を利用してもよい。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
第1実施形態の燃焼圧計測装置の構成図を示す。 燃焼圧センサの要部断面図を示す。 検知部の斜視図を示す。 比較例の燃焼圧計測装置の各部の電圧波形を示す。 ボトム電圧保存回路の動作の説明図を示す。 燃焼圧センサの出力電圧波形と、出力処理回路の出力電圧波形を示す。 第1実施形態の燃焼圧計測装置の各部の電圧波形を示す。 第2実施形態の燃焼圧計測装置の構成図を示す。 第3実施形態のボトム電圧保存回路の構成図を示す。
符号の説明
22:電流源
30:燃焼圧センサ
50:ボトム電圧保存回路
51、53、91、93:共通接続点
52:正の電圧電源
54、66、94:コンデンサ
55、56、62、96:抵抗
58、80、98:差動増幅器
59:ダイオード
60:ローパスフィルタ回路
64、92:負の電圧電源
90:ピーク電圧保存回路

Claims (7)

  1. 緩慢に変化する第1事象に依存して変化する電圧に、急速に増減する変化を繰返す第2事象に依存して変化する電圧が重畳しているセンサ電圧を処理する回路であり、
    コンデンサを利用して保存電圧を保存するとともに、センサ電圧が保存電圧を上回っている間はコンデンサからの電荷の放電速度に応じて保存電圧を上昇させながら維持し、センサ電圧が保存電圧に等しくなるとセンサ電圧の降下に追従して保存電圧を降下させる電圧保存回路と、
    電圧保存回路の保存電圧の変化を緩慢化する緩慢回路と、
    緩慢回路の出力電圧とセンサ電圧との電圧差を出力する差動回路、
    を備えているセンサ電圧処理回路。
  2. 前記第1事象が温度変化であり、前記第2事象が圧力変化であり、センサが内燃機関の燃焼室に臨んでいることを特徴とする請求項1のセンサ電圧処理回路。
  3. 電圧保存回路は、オペアンプと、ダイオードと、コンデンサと、抵抗と、定電圧電源を備えており、
    センサ電圧がオペアンプの非反転入力端子に接続されており、オペアンプの出力端子がダイオードのカソード端子に接続されており、ダイオードのアノード端子がコンデンサを介して定電圧電源に接続されているとともにオペアンプの反転入力端子に接続されており、抵抗がコンデンサに並列に接続されていることを特徴とする請求項1又は2のセンサ電圧処理回路。
  4. 緩慢回路が、RC平滑回路を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかのセンサ電圧処理回路。
  5. 緩慢回路が、第2コンデンサを利用して第2保存電圧を保存するとともに、電圧保存回路の保存電圧が第2保存電圧を下回っている間は第2コンデンサからの電荷の放電速度に応じて第2保存電圧を降下させながら維持し、電圧保存回路の保存電圧が第2保存電圧と等しくなると電圧保存回路の保存電圧の上昇に追従して第2保存電圧を上昇させる第2電圧保存回路を備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかのセンサ電圧処理回路。
  6. 緩慢回路が、電圧保存回路のコンデンサと直列に接続されている抵抗を備えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかのセンサ電圧処理回路。
  7. 緩慢に変化する第1事象に依存して変化する電圧に、急速に増減する変化を繰返す第2事象に依存して変化する電圧が重畳しているセンサ電圧を処理する回路であり、
    コンデンサを利用して保存電圧を保存するとともに、センサ電圧が保存電圧を下回っている間はコンデンサからの電荷の放電速度に応じて保存電圧を降下させながら維持し、センサ電圧が保存電圧に等しくなるとセンサ電圧の上昇に追従して保存電圧を上昇させる電圧保存回路と、
    電圧保存回路の保存電圧の変化を緩慢化する緩慢回路と、
    緩慢回路の出力電圧とセンサ電圧との電圧差を出力する差動回路、
    を備えているセンサ電圧処理回路。
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