JP4319324B2 - 自動変速機のシフトレンジ切換装置 - Google Patents

自動変速機のシフトレンジ切換装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動変速機のシフトレンジをモータ等からなるアクチュエータを介して切り換える自動変速機のシフトレンジ切換装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、運転者によるシフトレバーの操作に従い自動変速機のシフトレンジを切り換えるシフトレンジ切換装置においては、シフトレンジ切換用の動力源として直流モータを備えたものが知られている。この種のシフトレンジ切換装置によれば、自動変速機のシフトレンジを運転者によるシフトレバーの操作力によって直接切り換える一般的な切換装置のように、シフトレバーとシフトレンジ切換機構とを機械的に接続する必要がないことから、これら各部を車両に搭載する際のレイアウト上の制限がなく、設計の自由度を高めることができる。また、車両への組み付け作業も簡単に行うことができる。
【0003】
ところで、上記シフトレンジ切換装置において、シフトレンジの切り換えに一つの直流モータを使用していると、直流モータが故障した際に、自動変速機のシフトレンジを切り換えることができなくなってしまうという問題があった。
そこで、従来より、例えばシフトレンジ切換機構の動力源として、各々別体に構成された2つの駆動モータ(アクチュエータ)を設け、通常時には、2つのアクチュエータの内の一方を駆動することにより、シフトレンジの切り換えを行うようにし、通常時に使用されるアクチュエータが故障した際には、他方のアクチュエータを駆動することにより、シフトレンジの切り換えを継続して実行できるようにしたシフトレンジ切換装置も考えられている。
【0004】
このように、シフトレンジ切換機構の動力源として2つのアクチュエータを設け、これを選択的に使用するようにした場合、通常時に使用されるアクチュエータが故障した際にでもシフトレンジの切り換えを行うことができるので、車両の走行安全性を確保することができる。しかしながら、シフトレンジ切換機構を、2つのアクチュエータを用いて各々単独で駆動できるように構成する必要があるため、各アクチュエータに付随する部品点数が多くなり、シフトレンジ切換装置のコストアップを招いてしまう。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本願出願人は、特願平11−217083にて、部品低減等のために複数のトルク発生手段を備えたアクチュエータを一つ用いて、その複数のトルク発生手段のいずれかが故障した場合にでも、故障していない他のトルク発生手段にてシフトレンジ切換機構を駆動できるようにすることを提案した。このようにすれば、シフトレンジ切換機構に対して複数のアクチュエータを設ける必要がないので、シフトレンジ切換機構にアクチュエータを設けるための部品点数を少なくすることができ、安全性の高いシフトレンジ切換装置を安価に実現できることになる。
【0006】
しかしながら、上記のように一つのアクチュエータに複数のトルク発生手段を備える方法は、アクチュエータ故障時の安全性を向上させることはできるものの、アクチュエータが正常の時には、必要以上の電力がアクチュエータに供給されることになり、通電電力の無駄やアクチュエータの発熱が大きくなるといった問題がある。
【0007】
即ち、アクチュエータを構成する複数のトルク発生手段は、シフトレンジを全ての走行レンジに切換可能なトルク(以下「レンジ切換トルク」という)を、各々単独で発生できるようになっており、そのため、万一、アクチュエータに異常が生じて、正常に動作するトルク発生手段が一つだけになってしまった場合でも、その残った一つのトルク発生手段のみによって、シフトレンジを切り換えることができるのである。
【0008】
ところが、上記のように各トルク発生手段がそれぞれ、各々単独でレンジ切換トルクを発生できるように構成されているため、全てのトルク発生手段が正常であるときにも、各トルク発生手段からはそれぞれレンジ切換トルクが発生し、そのトルク総和がシフトレンジ切換機構に伝達されることになる。つまり、本来一つのトルク発生手段のみでもシフトレンジの切り換えが可能であるにもかかわらず、アクチュエータの正常時には全てのトルク発生手段が駆動し、必要以上のトルクがシフトレンジ切換機構に伝達されてしまうのである。
【0009】
そのため、アクチュエータの正常時には、不必要に大きなトルクが発生してしまうのと共に、アクチュエータへの電力も必要以上に供給していることになるため通電電力の無駄にもなり、アクチュエータの発熱も大きくなる。
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、トルク発生手段を複数備えたアクチュエータを一つ用いて自動変速機のシフトレンジを切り換えるシフトレンジ切換装置において、アクチュエータへの通電電力の無駄を省くことを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の自動変速機のシフトレンジ切換装置は、例えば運転者がシフトレバーを操作することにより、外部からシフトレンジの切換指令が入力されると、制御手段が、その切換指令に従い、複数のトルク発生手段を備えた一つのアクチュエータをその複数のトルク発生手段に対して各々独立して設けられた複数の駆動回路を介して駆動することにより、シフトレンジ切換機構を動作させ、自動変速機のシフトレンジを、パーキングを含む各種走行レンジのうち切換指令に対応したシフトレンジに切り換える。各トルク発生手段は、シフトレンジを全ての走行レンジに切換可能なトルクを各々単独で発生できるように構成されている。
【0011】
そして、本発明では、電源から複数のトルク発生手段への通電経路に、各通電経路毎にスイッチング素子と抵抗との並列回路が設けられ、このスイッチング素子又は抵抗のいずれか一方を介してトルク発生手段への電力供給が行われる。即ち、制御手段は、複数のトルク発生手段が正常か否かを判定する異常判定手段を備えており、この異常判定手段により、複数のトルク発生手段が全て正常と判定されたときは、スイッチング素子をオフにして抵抗を介してトルク発生手段へ電力を供給する。一方、複数のトルク発生手段のいずれかが異常と判定されたときは、少なくとも、正常なトルク発生手段への通電経路に設けられたスイッチング素子をオンにして、該正常なトルク発生手段への電力供給をスイッチング素子を介して行う。
【0012】
つまり、本発明のシフトレンジ切換装置においては、複数のトルク発生手段が個々に単独でシフトレンジ切換に必要なトルクを発生できるため、これら複数のトルク発生手段を全て通常に動作させると、従来技術で述べたような問題(通電電力、発生トルクの無駄など)が生じる。そこで、本発明では、上記のようにシフトレンジ切換装置が構成されているため、トルク発生手段が全て正常の時は、抵抗を介して電力を供給することにより、各トルク発生手段が発生するトルクの総和がシフトレンジ切換に必要なトルクになるようにし、トルク発生手段のいずれかが異常の時は、少なくとも正常なトルク発生手段にはスイッチング素子を介して電力を供給することにより、正常なトルク発生手段が単独でシフトレンジ切換に必要なトルクを発生できるようにする。
【0013】
従って、本発明のシフトレンジ切換装置によれば、各トルク発生手段に対する電源電力の無駄な供給(換言すれば過剰トルクの発生)を防ぐことができ、各トルク発生手段の発熱も低減できる。また、トルク発生手段のいずれかが異常の時には、正常なトルク発生手段が単独でシフトレンジ切換に必要なトルクを発生できるため、万一、正常なトルク発生手段が一つだけになった場合でも、その残った一つのトルク発生手段のみでシフトレンジを切り換えることができる。
【0014】
次に、請求項2記載の自動変速機のシフトレンジ切換装置は、請求項1記載のシフトレンジ切換装置と同様、外部からシフトレンジの切換指令が入力されると、制御手段が、その切換指令に従い、複数のトルク発生手段を備えた一つのアクチュエータをその複数のトルク発生手段に対して各々独立して設けられた複数の駆動回路を介して駆動することにより、シフトレンジ切換機構を動作させ、自動変速機のシフトレンジを、パーキングを含む各種走行レンジのうち切換指令に対応したシフトレンジに切り換える。各トルク発生手段は、各種走行レンジに切換可能なトルクを各々単独で発生することができる。
【0015】
そして、請求項2記載の発明では、駆動回路において、トルク発生手段への通電経路上にスイッチング素子が設けられており、制御手段は、このスイッチング素子をデューティ制御することによりトルク発生手段への供給電力を制御する。しかも制御手段は、異常判定手段により複数のトルク発生手段が正常か否かを判定し、複数のトルク発生手段が全て正常と判定されたときは、スイッチング素子をデューティ制御する際のデューティ比を、複数のトルク発生手段によってアクチュエータを駆動するための所定の通常デューティ比に設定し、複数のトルク発生手段のいずれかが異常と判定されたときは、正常なトルク発生手段のみでアクチュエータを駆動できるように、デューティ比を、通常デューティ比より大きい値に設定する。
【0016】
つまり、請求項2記載のシフトレンジ切換装置においては、トルク発生手段が全て正常の時は、所定の通常デューティ比にてスイッチング素子をデューティ制御することにより、個々のトルク発生手段への供給電力を低減して、各トルク発生手段が発生するトルクを合成した合成トルクが、シフトレンジ切換に必要なトルク以上になるように制御する。一方、トルク発生手段のいずれかが異常の時に正常なトルク発生手段のみを用いる場合に、スイッチング素子を通常デューティ比にて制御すると合成トルクが不足するおそれがあるため、このときは、正常なトルク発生手段のみの合成トルクがシフトレンジ切換に必要なトルク以上となるように、通常デューティ比より大きいデューティ比にてスイッチング素子をデューティ制御する。
【0017】
従って、請求項2記載のシフトレンジ切換装置によれば、各トルク発生手段に対する電源電力の無駄な供給を防ぐことができ、各トルク発生手段の発熱も低減できる。また、トルク発生手段のいずれかが異常の時には、正常なトルク発生手段のみでシフトレンジ切換に必要なトルクを発生できるため、万一、正常なトルク発生手段が一つだけになった場合でも、その残った一つのトルク発生手段のみでシフトレンジを切り換えることができる。しかも、スイッチング素子をデューティ制御するのみで各トルク発生手段への電力供給を制御するため、請求項1記載の発明のように抵抗やスイッチング素子を駆動回路とは別に付加する必要はなく、シフトレンジ切換装置の小型化、コストダウンも可能になる。
【0018】
尚、請求項1又は2記載の発明において、複数のトルク発生手段のいずれかが異常になった場合、その異常状態が例えばグランドへの短絡によるものであれば、そのトルク発生手段に過電流が流れてしまうおそれがある。そのため、異常と判定されたトルク発生手段に対しては、その後の通電を禁止するのが望ましい。
【0019】
また、スイッチング素子としては、例えばパワートランジスタやパワーMOSFETなどの半導体スイッチング素子を用いたり、或いはリレー(有接点又は無接点)を用いてもよく、その種類は特に限定されない。更に、請求項1における抵抗の値、及び請求項2における通常デューティ比は、いずれも、シフトレンジ切換に必要なトルク以上の合成トルクを複数のトルク発生手段にて発生するために必要な電力を、各トルク発生手段に供給できるように設定すればよい。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
図1は、本発明が適用された自動変速機のシフトレンジ切換装置全体の構成を表すブロック図である。
【0021】
図1に示すように、シフトレンジ切換装置は、運転者が図示しないシフトレバーを操作することにより自動変速機2のシフトレンジを選択・指令するための操作部10と、自動変速機2のシフトレンジの切換状態を表示するための表示部12と、シフトレンジ切換用のアクチュエータの故障を車両乗員に報知するための警報ランプ13と、自動変速機2に組み込まれてシフトレンジを切り換えるためのシフトレンジ切換機構14と、シフトレンジ切換機構14を駆動するアクチュエータ(本実施形態ではモータ)24と、このモータ24の駆動回路18と、モータ24の回転軸に連結されてその回転角度を検出する回転角センサ20と、操作部10から入力されるシフトレンジの切換指令及び回転角センサ20からの検出信号を受けて、自動変速機2のシフトレンジが切換指令に対応した走行レンジとなるように駆動回路18を介してモータ24を駆動し、シフトレンジ切換機構14を動作させる制御回路22とから構成されている。
【0022】
尚、制御回路22は、CPU,ROM,RAM等からなるマイクロコンピュータにて構成されており、モータ24を駆動して自動変速機2のシフトレンジを切り換えるシフトレンジ切換制御に加えて、表示部12にシフトレンジの切換状態を表示するシフトレンジ表示制御や、モータ24の動作状態を監視してその故障を判定し、故障判定時にはモータ24への通電経路を切り換える(詳細は後述)と共に警報ランプ13を点灯してその旨を車両乗員に報知する故障時判定切換制御も実行する。
【0023】
また、図1には図示しないが、駆動回路18からモータ24に至る通電経路上には後述の電流検出回路が設けられており、制御回路22は、シフトレンジの切換時に、この電流検出回路にて検出されたモータ24への通電電流(実電流)を監視しつつ、駆動回路18を介してモータ24を駆動し、その通電電流から、後述するモータ巻線の断線,短絡等の異常を判定する。
【0024】
シフトレンジ切換機構14は、自動変速機2のシフトレンジを、パーキング(P),リバース(R),ニュートラル(N),ドライブ(D),セカンド(2),ロー(L)の各走行レンジに順に切り換えるためのものであり、図2に示す如く構成されている。
【0025】
即ち、シフトレンジ切換機構14は、自動変速機2内の図示しない摩擦係合装置の係合及び解放を、上記各走行レンジの切換状態に応じて切換制御するためのレンジ切換弁31及びマニュアルバルブ32と、各レンジを保持するためのディテントスプリング33及びディテントレバー34と、シフトレンジがPレンジに切り換えられたときに、自動変速機2の図示しない出力軸に設けられたパークギヤ35にパークポール36を嵌合させて、出力軸の回転を停止させるパークロッド37と、ディテントレバー34が固定されたコントロールロッド38とから構成されている。
【0026】
このシフトレンジ切換機構14は、コントロールロッド38の回転により、ディテントレバー34をコントロールロッド38の軸周りに回動させて、ディテントレバー34に連結されたレンジ切換弁31(延いてはマニュアルバルブ32)及びパークロッド37を、各走行レンジに対応した切換位置に制御する、周知のものであり、本実施形態では、こうしたシフトレンジの切換を電動で行うために、コントロールロッド38にモータ24の回転軸を直結している。
【0027】
次に、自動変速機2のシフトレンジの切り換えのために、コントロールロッド38を回動させるモータ24は、図3に示す如く構成されている。尚、図3(a)は、モータ24を回転軸に直交する方向から切断した状態を表す断面図であり、図3(b)は、モータ24を回転軸に沿って切断した状態を表す断面図である。
【0028】
図3に示すように、本実施形態のモータ24は、ハウジング60にベアリング61を介して回転自在に支持された単一のロータ62と、ハウジング60内にロータ62の回転中心と同軸上に配設された単一のステータ63とから構成される。ステータ63は、ロータ62に向けて30度毎に突設された12個のティース64を有する。そして、これら各ティース64は、ステータ63の周方向に沿って順にU,V,Wの各相に区分され、更に、モータ24の回転軸67に沿って左右に区分することにより、ティース64をU,V,W,U′,V′,W′の6つの相に区分し、その区分した各相のティース64U,64V,64W,64U′,64V′,64W′には、夫々、単一のモータ巻線65U,65V,65W,65U′,65V′,65W′が巻回されている。また、ロータ62の周囲には、45度毎に合計8個の突極66が形成され、その回転中心から回転軸67が突出している。
【0029】
このように構成されたモータ24は、スイッチドリラクタンス形のモータ(所謂SRモータ)であり、各相U,V,W,U′,V′,W′のモータ巻線65への通電電流を制御することにより双方向に回転できるし、また所望の回転位置で停止させることもできる。
【0030】
そして、本実施形態では、図4に示す如く、モータ24における上記各モータ巻線を、左側のティース64U,64V,64Wに巻回されたモータ巻線65U,65V,65Wからなる巻線部24aと、右側のティース64U′,64V′,64W′に巻回されたモータ巻線65U′,65V′,65W′からなる巻線部24bとに分けることにより、これら各組の巻線部24a,24bが二つのトルク発生手段として機能するように構成されている。また、駆動回路18は、これら各組の巻線部24a,24bの相電流を制御するために、各巻線部24a,24bに対応した2組の駆動回路18a,18bから構成されている。
【0031】
また、バッテリ59から駆動回路18aへの通電経路上には,抵抗器81とリレー83との並列回路が挿入され、バッテリ59から駆動回路18bへの通電経路上にも同様に、抵抗器82とリレー84との並列回路が挿入されている。尚、両抵抗器81、82は、その抵抗値がいずれも、各モータ巻線65U,65U′、65V,65V′、65W,65W′が有する抵抗成分の抵抗値と等しいものを用いている。また、両リレー83、84はいずれも、常時閉接点(いわゆるb接点)を有する周知のリレーである。
【0032】
両リレー83、84はいずれも、制御回路22によりそのコイルへの通電が制御される。そのため、バッテリ59から各駆動回路18a、18bへの通電は、制御回路22からのリレー出力がオン出力(リレー接点をオンにするためリレーコイルへ通電しないようにする)ときは、そのリレー接点を介して行われ、リレー出力がオフ出力(リレー接点をオフにするためリレーコイルへ通電する)ときは、抵抗器81、82を介して行われる。
【0033】
モータ24は、スイッチドリラクタンス形であり、例えばブラシレスDCモータのように相電流を双方向(正負)に制御する必要はないため、駆動回路18a,18bは、図4に示すように通電制御の対象となる各モータ巻線65U,65U′、65V,65V′、65W,65W′毎に、一つのNPNトランジスタTr1を備える。
【0034】
つまり、駆動回路18a,18bは、NPNトランジスタTr1のコレクタを、抵抗器81とリレー83との並列回路又は抵抗器82とリレー84との並列回路を介してバッテリ59の正極側に接続し、エミッタを対応するモータ巻線の一端に接続し、各巻線部24a,24bにおいて各モータ巻線をスター結線した中点を、バッテリの負極側に接続することにより、抵抗器81とリレー83との並列回路又は抵抗器82とリレー84との並列回路、及びNPNトランジスタTr1を介して、各モータ巻線65U,65U′、65V,65V′、65W,65W′に一方向に電流を流すように構成されている。
【0035】
そのため、リレー接点を介して通電する場合は、バッテリ59のバッテリ電圧(本実施形態では12V)がほぼ全て、各モータ巻線65U,65U′、65V,65V′、65W,65W′に印加されるが、抵抗器81、82を介して通電する場合は、バッテリ電圧(12V)の約半分の電圧(本実施形態では約6V)が印加されることになる。
【0036】
また、駆動回路18aから巻線部24aの各モータ巻線65U,65V,65Wに至る通電経路、及び、駆動回路18bから巻線部24bの各モータ巻線65U′,65V′,65W′に至る通電経路には、夫々、電流検出回路Sau,Sav,Saw、及び、Sbu、Sbv,Sbwが設けられており、これら各電流検出回路Sau,Sav,Saw、Sbu、Sbv,Sbwからの検出信号は、制御回路22に入力される。
【0037】
上記のように構成された本実施形態のシフトレンジ切換装置では、操作部10からシフトレンジの切換指令が入力されると、制御回路22は、上記各電流検出回路Sau,Sav,Saw、Sbu、Sbv,Sbwからの検出信号に基づき、リレー83及びリレー84へのリレー出力を制御するのと共に、各巻線部24a,24bのモータ巻線に流れる実電流を監視しながら、各駆動回路18a,18bを構成する各相毎のNPNトランジスタTr1を制御(つまり、各モータ巻線65U,65U′、65V,65V′、65W,65W′へ印加する電圧を制御)することにより、上記各組の巻線部24a,24bの各モータ巻線に流れる電流(相電流)をフィードバック制御し、モータ24の回転軸67(延いてはコントロールロッド38)の回転角度を、所望のシフトレンジに対応した回転角度に制御する、本発明の制御手段としてのシフトレンジ切換制御を実行する。
【0038】
ところで、本実施形態のシフトレンジ切換装置では、各巻線部24a、24bを単独で通電制御(但し、リレー83又はリレー84のリレー接点を介して通電)した際にモータ24の回転軸67に発生する回転トルクが、シフトレンジ切換機構14を介して自動変速機2のシフトレンジを全ての走行レンジに切り換えるのに必要なトルクよりも大きい所定のレンジ切換トルクになるように設定されている。
【0039】
つまり、リレー83、84のリレー接点を介して通電を行う場合は、各巻線部24a、24bのうちいずれか一方のみに通電制御するだけでシフトレンジの切り換えが可能なのである。そのため、各巻線部24a、24bが共に正常の時に、いずれもリレー接点を介して通電制御すると、回転軸67に発生するトルク(即ち、各巻線部24a、24bへの通電制御により発生するトルクの総和)は、所定のレンジ切換トルクの約2倍の値となり、必要以上の過大なトルクが発生してしまうことになる。
【0040】
これは即ち、シフトレンジの切り換えに必要な電力の約2倍の電力をバッテリ59から各巻線部24a、24bに供給していることにもなり、供給電力の無駄を生じ各巻線部24a、24bの発熱が大きくなる原因にもなる。
一方、各抵抗器81、82を介して通電すると、既述の通り、各モータ巻線65U,65U′、65V,65V′、65W,65W′にはバッテリ電圧の約半分の電圧(6V)が印加されるため、このとき各巻線部24a、24bへの通電制御によって発生するトルクはいずれも、所定のレンジ切換トルクの約半分の値となる。そして、これらのトルクの総和が、まさに所定のレンジ切換トルクとなる。
【0041】
つまり、各抵抗器81、82を介して各巻線部24a、24bへの通電制御を行うことにより、モータ24の回転軸67に発生するトルクは、結果的に所定のレンジ切換トルクになるため、適切なトルクを発生させることができるのに加え、通電電力の無駄もなくなる。
【0042】
そこで、制御回路22は、シフトレンジの切換指令に従ってシフトレンジを切り換える際、通常は各抵抗器81、82を介して通電する(つまり、制御回路22から各リレー83、84へのリレー出力をオフ出力にする)ようなシフトレンジ切換制御を実行する。以下、このシフトレンジ切換制御について説明する。
【0043】
図5は、制御回路22にて実行されるシフトレンジ切換制御を表すフローチャートである。制御回路22では、CPUがROMからシフトレンジ切換制御処理プログラムを読み出し、このプログラムに従って処理を実行する。このシフトレンジ切換制御処理は、イグニションスイッチ(図示せず)のオン後、継続して行われるものである。
【0044】
この処理が開始されると、まずステップ(以下「S」と略す)510にて、現在のシフトレンジがどのレンジに設定されているかを検出する。これは、シフトレンジ切換機構14におけるマニュアルバルブ32内に設けられたレンジ位置センサ(図示せず)からの検出信号により検出される。一般に、自動車のエンジンを始動させようとするときには、シフトレンジがPレンジ又はNレンジにないと始動できないようになっているため、通常はS510では、Pレンジ又はNレンジが検出される。S510でシフトレンジの現在位置を検出した後は、S520に進む。
【0045】
S520では、運転者によりシフトレンジ切換操作が行われたか否かを判断する。この判断は、操作部10から制御回路22へシフトレンジの切換指令が入力されたか否かを判断することにより行われる。シフトレンジ切換操作が行われない間は、このS520の処理を繰り返し行うが、シフトレンジ切換操作が行われ、操作部10から制御回路22に切換指令が入力された場合は、S530へ進む。
【0046】
S530では、操作部10から入力された切換指令に基づき、入力された所望のシフトレンジに切り換えるために必要な回転軸67の回転方向及び回転角度を設定する。
回転方向及び回転角度の設定後は、S540に進み、両リレー83、84へオフ出力を出力することによって、バッテリ59から各巻線部24a、24bへの通電を各抵抗器81、82を介して行うようにする。
【0047】
次に、S550では、S530にて設定された回転方向・角度に基づき回転軸67をさせる。これにより、コントロールロッド38が回転して、シフトレンジの切り換えが行われる。そして、切り換え後の新たなシフトレンジは、S510にてなされる処理と同様、現在のシフトレンジ位置として制御回路22内のRAMに記憶される。
【0048】
以上説明したように実行されるシフトレンジの切換制御において、各モータ巻線65U,65U′、65V,65V′、65W,65W′に印加される電圧パターンの具体例を、図6に示す。図6は、モータ正常時の印加電圧パターンを示す説明図である。
【0049】
図6に示すように、トランジスタTr1を制御することにより、各モータ巻線65U,65U′、65V,65V′、65W,65W′への印加電圧パターンを制御する。そして、モータ24の正常時には各抵抗器81、82を介して通電されるため、各モータ巻線に印加される電圧は、バッテリ電圧(12V)の約半分(6V)となっている。そのため、各巻線部24a、24b単独ではいずれも所定のレンジ切換トルクを発生することはできないが、各巻線部24a、24bへの通電による各発生トルクの総和は所定のレンジ切換トルクになり、適切なトルクにてシフトレンジの切り換えが行われる。
【0050】
そして、このように制御することにより、モータ24の回転軸67(延いてはコントロールロッド38)の回転角度を、シフトレンジの切換指令に対応した回転角度に制御し、自動変速機2のシフトレンジを切換指令に対応したレンジに切り換える。
【0051】
ところで、本実施形態では、制御回路22がモータ24の各巻線部24a,24bの各相のモータ巻線に印加する電圧を、図6に示すパターンに従って制御する。そのため、2つのトルク発生手段として機能する2組の巻線部24a,24bの一方、若しくはその駆動回路18a,18bの一方が故障した場合、故障していない他方の巻線部24a又は24bへの通電によって、モータ24の回転軸67を回転させて自動変速機2のシフトレンジを切換指令に対応した走行レンジに切り換えることになるが、このとき、いずれか一方の正常な巻線部24a又は24bのみに、抵抗器81又は82を介して通電を行うようにすると、所定のレンジ切換トルクを発生させることができない。
【0052】
そこで、制御回路22は、上記シフトレンジ切換制御の実行中には、上記各電流検出回路Sau,Sbu、Sav,Sbv、Saw,Sbwからの検出信号に基づき、トルク発生手段として機能する巻線部24a,24b又はその駆動系の故障を判定し、故障判定時には、その旨を車両乗員に報知してモータ24の点検・修理を促すと共に、正常な巻線部への通電をリレー接点を介して行うように制御する、故障時判定切換制御を実行するようにされている。以下、この故障時判定切換制御について説明する。
【0053】
図7は、制御回路22にて実行される故障時判定切換制御を表すフローチャートである。この制御は、図5に示したシフトレンジ切換制御処理において、S550の処理(即ち、モータ24を実際に回転させて、切換指令に対応したシフトレンジに切り換えられるまでの間の制御処理)が行われている間に、その処理と並行して繰り返し行われる。
【0054】
図7に示すように、この故障時判定切換制御では、まずS610にて、電流検出回路Sau,Sav、Sawからの検出信号に基づき、一方のトルク発生手段である巻線部24aの各相のモータ巻線に流れる電流を検出する。具体的には、電流検出回路Sau,Sav、Sawからの検出信号に基づきU相,V相、W相のモータ巻線65U、65V、65Wに流れる電流を検出する。
【0055】
そして、続くS620では、S610で検出した巻線部24aの各相巻線に流れる電流が、全て正常であるか否かを判断する。つまり、巻線部24aの相巻線の少なくとも一つがグランド側に短絡していれば、検出した電流の内の少なくとも一つが通常よりも異常に大きい過電流となり、逆に、巻線部24aの相巻線の少なくとも一つが断線しているか、或いは、駆動回路18aを含む巻線部24aの駆動系に断線・短絡等の異常が発生している場合には、検出した電流の内の少なくとも一つが連続して零になるので、ここでは、S610にて検出した各相の電流値が予め設定された異常判定電流よりも大きいか、或いは、電流値零の状態が所定時間以上続いているときに、巻線部24a又はその駆動系に異常があると判断する。
【0056】
次に、S620にて、巻線部24aの各相巻線に流れる電流は全て正常であると判断された場合には、続くS630に移行して、今度は、電流検出回路Sbu,Sbv,Sbwからの検出信号に基づき、もう一方のトルク発生手段である巻線部24bの各相のモータ巻線に流れる電流を検出する。具体的には、電流検出回路Sbu,Sbv,Sbwからの検出信号に基づきU′相,V′相、W′相のモータ巻線65U′、65V′、65W′に流れる電流を検出する。そして、続くS640では、上記S620と同様の手順で、S630で検出した巻線部24bの各相巻線に流れる電流が、全て正常であるか否かを判断し、巻線部24bの各相巻線に流れる電流が全て正常であれば、一旦当該処理を終了して、シフトレンジ切換のための主制御(シフトレンジ切換制御)に戻り、所定時間経過後に、再度S610以降の処理を実行する。
【0057】
一方、S620にて、巻線部24aの各相巻線に流れる電流の少なくとも一つが異常であると判断された場合には、S680に移行する。そして、S680では、シフトレンジの切り換えのために、巻線部24aへの通電を継続すると、巻線部24aの相巻線やその駆動回路18aに過電流が流れて、これら各部が焼損する虞があるため、以降の巻線部24aに対する通電制御を禁止する。
【0058】
そして、S690に進み、リレー84へのリレー出力をオン出力にする。つまり、このとき、巻線部24aの通電制御は禁止されているため、巻線部24bへの通電制御のみが行われることになるが、この巻線部24bへの通電を、抵抗器82を介さずにリレー84のリレー接点を介して行うようにする。
【0059】
また、S640にて、巻線部24bの各相巻線に流れる電流の少なくとも一つが異常であると判断された場合には、S650に移行する。そして、S650では、上記S680と同様に、巻線部24aに対する通電制御を禁止する。そして、S660に進み、リレー83へのリレー出力をオン出力にする。つまり、このとき、巻線部24bの通電制御は禁止されているため、巻線部24aへの通電制御のみが行われることになるが、この巻線部24aへの通電を、抵抗器81を介さずにリレー83のリレー接点を介して行うようにする。
【0060】
そして、S660又はS690の処理を実行すると、今度は、S670に移行して、運転席の前方に設けられた警報ランプ13を点灯することにより、運転者等の車両乗員に対して、シフトレンジ切換装置におけるモータ24が故障している旨を報知した後、当該処理を一旦終了する。
【0061】
以上説明したように実行されるシフトレンジの切換制御において、巻線部24bに異常が発生した場合の各モータ巻線65U,65U′、65V,65V′、65W,65W′に印加される電圧パターンの具体例を、図8に示す。図8は、巻線部24bが異常の時の印加電圧パターンを示す説明図である。
【0062】
図8に示すように、巻線部24bは異常であるため、巻線部24bの各モータ巻線65U′、65V′、65W′には電圧が印加されず、巻線部24aの各モータ巻線65U、65V、65Wにのみ、電圧が印加されている。そしてこの電圧は、リレー83のリレー接点を介して印加されているため、バッテリ電圧(12V)がほぼそのまま、各モータ巻線65U、65V、65Wに印加される。これにより、巻線部24aへの通電制御のみで、所定のレンジ切換トルクを発生することができ、シフトレンジの切り換えを継続して行うことができる。
【0063】
以上説明したように、本実施形態の自動変速機のシフトレンジ切換装置においては、モータ24の各巻線部24a、24bがいずれも正常の時は、各リレー83、84を共にオフにして各抵抗器81、82を介して通電を行うようにし、いずれか一方の巻線部或いはその駆動系が異常の時は、その異常な巻線部への通電制御を禁止すると共に、正常な巻線部への通電を、リレー接点を介して行うようにしている。
【0064】
このため、本実施形態のシフトレンジ切換装置によれば、各巻線部24a、24bが共に正常なときは、抵抗器81、82を介して各巻線部24a、24bへの通電を行うため、各巻線部24a、24bに対するバッテリ電力の無駄な供給(換言すれば過剰トルクの発生)を防ぐことができ、各巻線部24a、24bの発熱も低減できる。また、各巻線部24a、24bのいずれかが異常の時には、異常な巻線部への通電を禁止するため、異常な巻線部に過電流が流れてしまうのを防ぐことができるのと共に、リレー83又はリレー84のリレー接点を介して正常な巻線部へ電力を供給することにより、正常な巻線部への通電によりのみでシフトレンジ切換に必要な所定のレンジ切換トルクを発生できるため、その正常な巻線部への通電のみでシフトレンジを切り換えることができる。
【0065】
[第2実施形態]
本実施形態の自動変速機のシフトレンジ切換装置は、制御回路22を除き、第1実施形態の自動変速機のシフトレンジ切換装置(図1、図2、図3参照)と全く同様であるため、ここではその説明を省略する。そして、以下、本実施形態についても、第1実施形態の図1〜図3に基づいて説明する。
【0066】
そして、本実施形態では、モータ24を駆動する際の駆動回路が、図9に示すように構成されている。図9と図4を比較するとわかるように、図9に示す回路は、第1実施形態で説明した図4の回路から、両抵抗器81、82及び両リレー83、84を取り除いたものと全く同じ構成となっている。そのため、図9についても、図4と同じ構成要素には同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0067】
本実施形態においても、操作部10からシフトレンジの切換指令が入力されると、制御回路91(第1実施形態では制御回路22)は、各電流検出回路Sau,Sav,Saw、Sbu、Sbv,Sbwからの検出信号に基づき、各巻線部24a,24bのモータ巻線に流れる実電流を監視しながら、各駆動回路18a,18bを構成する各相毎のNPNトランジスタTr1を制御(つまり、各モータ巻線65U,65U′、65V,65V′、65W,65W′へ印加する電圧を制御)することにより、上記各組の巻線部24a,24bの各モータ巻線に流れる電流(相電流)をフィードバック制御し、モータ24の回転軸67(延いてはコントロールロッド38)の回転角度を、所望のシフトレンジに対応した回転角度に制御する、本発明の制御手段としてのシフトレンジ切換制御を実行する。
【0068】
ところで、第1実施形態では、各巻線部24a、24b或いはそれらの駆動系がいずれも正常の時は、バッテリ59から各巻線部24a、24bへの電力供給を抵抗器を介して行うことにより、トルクや通電電力を適正に制御できたが、本実施形態において第1実施形態と同様にトランジスタTr1を制御すると、各巻線部24a、24b或いはそれらの駆動系がいずれも正常の時は、各巻線部24a、24b共に、バッテリ59の電圧(12V)がほぼそのまま印加されることになり、回転軸67に発生するトルクが過大となり、通電電力も無駄になってしまう。
【0069】
そこで、本実施形態では、制御回路91によってトランジスタTr1を制御する際に、デューティ制御を行うようにしている。具体的には、図5に示したシフトレンジ切換制御において、S530までは同様の処理を行うが、S540では、トランジスタTr1を制御する際に、デューティ比を所定の通常デューティ比(例えば50%)にして制御するように設定する。そして、S550では、設定されたパターンに従って各巻線部24a、24bにバッテリ電圧が印加されるが、この電圧の印加は、所定の通常デューティ比(50%)にて印加されることになる。
【0070】
このように制御されるシフトレンジの切換制御において、各モータ巻線65U,65U′、65V,65V′、65W,65W′に印加される電圧パターンの具体例を、図10に示す。図10は、本実施形態におけるモータ正常時の印加電圧パターンを示す説明図である。
【0071】
図10に示すように、各巻線部24a、24bの各モータ巻線65U,65U′、65V,65V′、65W,65W′には、設定されたパターンに従って、バッテリ電圧(12V)が印加されるが、このバッテリ電圧は所定の通常デューティ比(50%)にて印加されている。従って、実質的には、図6に示したように、第1実施形態において各抵抗器81、82を介して通電した場合と等価になる。つまり、図10のようにデューティ比50%でバッテリ電圧(12V)を印加することと、図6のように6Vの電圧を印加(つまりデューティ比100%)するのとでは、いずれも同等の結果が得られるわけである。
【0072】
また、第1実施形態と同様、本実施形態でも、S550の処理が行われる間には、図7で既に説明した故障時判定切換制御が、その処理と並行して繰り返し行われる。そして、本実施形態では、図7のS660及びS690にて、デューティ比を所定の通常デューティ比の2倍(例えば100%)にする制御を行う。より具体的には、S660では、正常な巻線部24aへの通電を、デューティ比100%で行うようにし、S690では、正常な巻線部24bへの通電を、デューティ比100%で行うようにする。
【0073】
これにより、各巻線部24a、24bのいずれかが異常の場合には、正常な巻線部にのみ通電を行い、しかもその通電をデューティ比100%で行うため、その正常な巻線部への通電により発生するトルクのみで、シフトレンジの切り換えができる。そしてこの場合、例えば巻線部24bが異常の場合の印加電圧パターンは、図8に示した印加電圧パターンと全く同様になる。
【0074】
従って、本実施形態のシフトレンジ切換装置によれば、各巻線部24a、24bがいずれも正常の時には所定の通常デューティ比(50%)にてトランジスタTr1をデューティ制御し、いずれかが異常の時には通常デューティ比の2倍(100%)にてトランジスタTr1をデューティ制御するため、第1実施形態と同等の作用効果を奏する。しかも、本実施形態では、トランジスタTr1をデューティ制御するのみで各巻線部24a、24bへの通電を制御するため、第1実施形態のように抵抗器やリレーなどの部品を付加することなく、既存の回路構成にて、電力供給を適切に行うことができ、シフトレンジ切換装置の小型化、コストダウンも可能になる。
【0075】
尚、上記実施形態において、各巻線部24a、24bは本発明のトルク発生手段に相当し、モータ24は本発明のアクチュエータに相当し、制御回路22及び制御回路91は本発明の異常判定手段を備えた制御手段に相当し、バッテリ59は本発明の電源に相当し、各リレー83、84は本発明(請求項1)のスイッチング素子に相当し、各抵抗器81、82は本発明(請求項1)の抵抗に相当し、第2実施形態におけるトランジスタTr1は本発明(請求項2)のスイッチング素子に相当する
また、図5のシフトレンジ切換制御処理、及び図7の故障時判定切換制御処理(但しS670の処理は除く)はいずれも、本発明(請求項1)の制御手段にてなされる処理であり、特に、図7のS610〜S640の処理は、本発明(請求項1、2)の制御手段が備える異常判定手段にてなされる処理である。さらに、第2実施形態の場合に、図5のS540にてなされるデューティ比50%の設定、及び図7のS660及びS690にてなされるデューティ比100%の設定は、いずれも本発明(請求項2)の制御手段にてなされる処理である。
【0076】
尚、本発明の実施の形態は、上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採り得ることはいうまでもない。
例えば、上記実施形態では、モータ24が二つの巻線部24a、24bを有する構成にしたが、三つ以上の巻線部を有するモータを用いてもよい。そしてこの場合、第1実施形態における抵抗器の抵抗値や、第2実施形態におけるデューティ比は、結果として回転軸67に所定のレンジ切換トルクが発生するように、適宜決めればよい。
【0077】
また、上記実施形態では、モータ24としてSRモータを用い、駆動回路18a、18bを複数のトランジスタTr1により構成したが、これに限らず、例えばブラシレスDCモータやステッピングモータを用いるなど、回転角度を適切に制御できるあらゆるモータを用いることもできる。そして、使用するモータの種類にあわせて、駆動回路18a、18bを適宜選定すればよい。
【0078】
さらに、第1実施形態の抵抗器81、82は、抵抗器に限らず、バッテリ電圧を各巻線部24a、24bに適切に分圧して印加できるものであれば何でもよい。また、リレー83、84も、b接点を用いるのに限らず、例えば常時開接点(いわゆるa接点)を用いて制御するようにしたり、リレーの代わりにパワートランジスタやパワーMOSFETなどの半導体スイッチング素子を用いてもよく、本発明の作用効果を奏する限り、その種類は特に限定されない。尚、この場合において、半導体スイッチング素子を用いれば、リレーに比べて小電力でそのスイッチング動作を制御でき、しかもリレーのように接点などの機械的可動部がなくメンテ性もよいため、より好ましい。
【0079】
また、第2実施形態では、トランジスタTr1を制御する際に、その通電電流をデューティ制御することにより供給電力を制御するようにしたが、これに限らず、例えば図9の点線部に示すように、各駆動回路18a、18bにおける各トランジスタTrへの共通の通電経路に、それぞれスイッチング素子SW1、SW2を設け、これをデューティ制御し、トランジスタTr1は通常と同じ制御(第1実施形態と同様の制御)をするようにしてもよい。このようにしても、第2実施形態と同様の作用効果が得られる、但しこの場合、新たにスイッチング素子SW1、SW2を追加する必要があるため、装置の小型化や経済性を考慮すれば、第2実施形態の構成がより好ましい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1実施形態の自動変速機のシフトレンジ切換装置全体の構成を表すブロック図である。
【図2】 第1実施形態のシフトレンジ切換機構の概略構成を表す説明図である。
【図3】 第1実施形態のステータを2系統に区分してモータ巻線を巻回したモータの構成を表す断面図である。
【図4】 図3のモータを駆動する際の駆動回路の構成を表す回路図である。
【図5】 第1実施形態の制御回路にて実行されるシフトレンジ切換制御を表すフローチャートである。
【図6】 図3のモータを駆動する際の、モータが正常のときの印加電圧パターンとロータ回転角度との関係を表す説明図である。
【図7】 第1実施形態の制御回路にて実行される故障時判定切換制御を表すフローチャートである。
【図8】 図3のモータを駆動する際の、巻線部24bが異常のときの印加電圧パターンとロータ回転角度との関係を表す説明図である。
【図9】 第2実施形態における、図3のモータを駆動する際の駆動回路の構成を表す回路図である。
【図10】 第2実施形態における、図3のモータを駆動する際の、モータが正常のときの印加電圧パターンとロータ回転角度との関係を表す説明図である。
【符号の説明】
2…自動変速機、10…操作部、12…表示部、13…警報ランプ、14…シフトレンジ切換機構、18,18a,18b…駆動回路、20…回転角センサ、22,91…制御回路、24…モータ、24a,24b…巻線部、38…コントロールロッド、59…バッテリ、62…ロータ、63…ステータ、64U,64V,64W,64U′,64V′,64W′…ティース、65U,65V,65W,65U′,65V′,65W′…モータ巻線、66…突極、67…回転軸、81,82…抵抗器、83,84…リレー、SW1,SW2…スイッチング素子、Sau,Sav,Saw,Sbu,Sbv,Sbw…電流検出回路

Claims (2)

  1. 自動変速機のシフトレンジを、パーキングを含む各種走行レンジに切り換えるためのシフトレンジ切換機構と、
    前記シフトレンジ切換機構の動力源をなし、複数のトルク発生手段を備えた一つのアクチュエータと、
    前記一つのアクチュエータを構成する複数のトルク発生手段に対して各々独立して設けられ、各トルク発生手段に電源電力を供給することにより前記アクチュエータを駆動する複数の駆動回路と、
    外部操作によって入力される切換指令に従い前記複数の駆動回路を介して前記アクチュエータを駆動することにより、前記自動変速機のシフトレンジを該切換指令に対応したシフトレンジに制御する制御手段と
    を備え、
    前記複数のトルク発生手段は前記シフトレンジを全ての走行レンジに切換可能なトルクを各々単独で発生できるように構成されている自動変速機のシフトレンジ切換装置であって、
    電源から前記複数のトルク発生手段への通電経路には、各通電経路毎にスイッチング素子と抵抗との並列回路が設けられ、
    前記制御手段は、前記複数のトルク発生手段が正常か否かを判定する異常判定手段を備え、該異常判定手段により、前記複数のトルク発生手段が全て正常と判定されたときは、前記スイッチング素子をオフにして、前記抵抗を介して前記トルク発生手段へ電力を供給し、前記複数のトルク発生手段のいずれかが異常と判定されたときは、少なくとも、正常なトルク発生手段への通電経路に設けられたスイッチング素子をオンにして、該正常なトルク発生手段への電力供給を該スイッチング素子を介して行う
    ことを特徴とする自動変速機のシフトレンジ切換装置。
  2. 自動変速機のシフトレンジを、パーキングを含む各種走行レンジに切り換えるためのシフトレンジ切換機構と、
    前記シフトレンジ切換機構の動力源をなし、複数のトルク発生手段を備えた一つのアクチュエータと、
    前記一つのアクチュエータを構成する複数のトルク発生手段に対して各々独立して設けられ、各トルク発生手段に電源電力を供給することにより前記アクチュエータを駆動する複数の駆動回路と、
    外部操作によって入力される切換指令に従い前記複数の駆動回路を介して前記アクチュエータを駆動することにより、前記自動変速機のシフトレンジを該切換指令に対応したシフトレンジに制御する制御手段と
    を備え、
    前記複数のトルク発生手段は前記シフトレンジを全ての走行レンジに切換可能なトルクを各々単独で発生できるように構成されている自動変速機のシフトレンジ切換装置であって、
    前記駆動回路は、前記トルク発生手段への通電経路上に設けられたスイッチング素子を備え、
    前記制御手段は、前記スイッチング素子をデューティ制御することにより前記トルク発生手段への電力供給を制御するように構成され、
    更に前記制御手段は、前記複数のトルク発生手段が正常か否かを判定する異常判定手段を備え、該異常判定手段により、前記複数のトルク発生手段が全て正常と判定されたときは、前記スイッチング素子をデューティ制御する際のデューティ比を、前記複数のトルク発生手段によって前記アクチュエータを駆動するための所定の通常デューティ比に設定し、前記複数のトルク発生手段のいずれかが異常と判定されたときは、正常なトルク発生手段のみで前記アクチュエータを駆動できるように、前記デューティ比を、前記通常デューティ比より大きくする
    ことを特徴とする自動変速機のシフトレンジ切換装置。
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