JP4315394B2 - メカニカルシール - Google Patents

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Description

本発明は、回転軸とこれに嵌合保持された回転密封環との対向周面間に環状シール部材を装填してなるメカニカルシールに関するものである。
例えば、回転軸に軸線方向移動可能に保持された回転密封環と回転軸が洞貫するシールケースに固定された静止密封環とを具備して、両密封環の対向端面たる密封端面の相対回転部分において、当該相対回転部分の内径側領域たる被密封流体領域とその外径側領域たる非密封流体領域とを遮蔽シールするように構成されたメカニカルシールでは、一般に、回転軸と回転密封環との対向周面間に装填したOリングにより、回転密封環の軸線方向移動を許容しつつ当該回転密封環と回転軸との間を二次シールするように構成されている(例えば、特許文献1の図1を参照)。
かかるメカニカルシールにあって、両密封環の対向端面である密封端面の内径は、回転軸の外径より小さくできず、回転軸の外径によって必然的に決定されることになる。また密封端面の外径は、回転密封環を静止密封環へと押圧する方向に作用する被密封流体による背圧の受圧面積との関係から導かれるバランス比等を考慮して決定され、当該受圧面積は回転密封環におけるOリングとの接触面の径(Oリングが接触する回転密封環部分の内径であって、バランス径と称せられる)によって決定される。そして、このバランス径は、Oリングが回転密封環と回転軸との対向周面間に装填されていることから、回転軸の外径及びOリングの断面径(JIS B2401に規定される「Oリングの太さ」である)によって必然的に決定されることになる。すなわち、バランス径は回転軸の外径とOリングの断面径(正確には、前記対向周面間に装填された状態におけるOリング断面の径方向幅(回転軸に直交する方向の幅))との合計値で与えられる。
したがって、二次シールとして使用するOリングは、回転軸の外径に応じた内径のものであって、所望するバランス径が得られるような断面径のものを選定する必要がある。
特開平10−053480公報(図1)
而して、Oリングの寸法は内径及び断面径(太さ)を基準としてJIS(例えば、JIS B2401,JIS W1516,JIS W1517等)に定められており、このようなJISに基づいた寸法のものが市販されているが、Oリングとしてこのような市販の規格品(以下「市販Oリング」という)を使用する場合、その選定手順として、まず、回転軸の外径によってOリングの内径を決定し、決定された内径を有する市販Oリングの中から所望するバランス径に応じた断面径のOリング(市販Oリング)を選定することになる。
しかし、市販OリングとしてはJISに規定される種々の内径のものが提供されているが、同一内径の市販Oリングにあって、断面径(太さ)及びこれと内径とから決定される外径についての選択範囲が小さいことから、市販Oリングを使用した場合、バランス径及びシール面幅(両密封端面の相対回転領域における径方向幅)の設計自由度が小さく、シール条件に最適するメカニカルシールを提供することが困難である場合が多い。
例えば、上記したメカニカルシールにおいて、被密封流体が高圧である場合、安定したメカニカルシール機能(軸封機能)を発揮させるためには、バランス径を大きくして、シール面幅を可及的に大きく設計しておく必要があるが、回転軸の外径に応じて選定される市販Oリングを使用することによっては対応することができない。すなわち、回転密封環を市販Oリングを介して回転軸に軸線方向移動可能に保持させたメカニカルシールにあっては、バランス径及び密封端面の外径がOリングの断面径によって制限され、シール面幅を一定以上に大きくすることができず、被密封流体が高圧である回転機器への適用を困難にしているのが実情であり、市販Oリングを使用する限り、メカニカルシールの設計上、大きな制約を受けることになる。
一方、市販Oリングとは内径が同一であるが断面径の大きな特殊Oリングを使用することによって、当該市販Oリングを使用した場合に比してバランス径及びシール面幅を大きくすることは可能であるが、断面径が市販Oリングより大きな特殊Oリングは、どうしても不均質なものとなり易く(部分的に粗密を生じ易く)、その結果、回転密封環及び回転軸への圧接力(シール力)が周方向において不均一となって、Oリングによる二次シール機能及び回転密封環の軸線方向移動性つまり追従性が低下することになり、良好な軸封機能を発揮し難い。また、このような特殊OリングはJISに基づく規格品でなく規格外の特注品であるから、容易に製作,入手が困難である上、コスト的にも大きな問題がある。
本発明は、このような点に鑑みてなされたもので、市販Oリングを使用することができるものでありながら、市販Oリングでは得られない大きな断面径(太さ)を必要とする機器にも好適に使用することができる極めて実用的な環状シール部材を二次シール手段として使用することにより、バランス径及びシール面幅を市販Oリングを使用した場合に比して大きく設定することができ、高圧条件下においても良好な軸封機能(メカニカルシール機能)を発揮しうるメカニカルシールを提供することを目的とするものである。
発明は、回転軸にこれとの対向周面間に装填した環状シール部材を介して軸線方向移動可能に保持された回転密封環と回転軸が洞貫するシールケースに固定された静止密封環とを具備して、両密封環の対向端面たる密封端面の相対回転部分において、当該相対回転部分の内径側領域たる被密封流体領域とその外径側領域たる非密封流体領域とを遮蔽シールするように構成されたメカニカルシールにおいて、上記の目的を達成すべく、特に、前記環状シール部材が、環状をなすOリング保持体と、Oリング保持体の外周部に形成した断面円弧状の第一Oリング溝に、内周部を係合保持された第一Oリングと、Oリング保持体の内周部に形成した断面円弧状の第二Oリング溝に、外周部を係合保持された第二Oリングとからなり、前記対向周面間に第一Oリングの外周部が回転密封環の内周面に圧接すると共に第二Oリングの内周部が回転軸の外周面に圧接し且つOリング保持体が前記対向周面に干渉しない状態で装填されており、回転軸と回転密封環との対向周面間を上記した環状シール部材により二次シールして、当該対向周面間を第一Oリング又は第二Oリングと同一断面径のOリング(より正確には、回転軸の外径によって寸法(内径)が特定される第二Oリング(市販Oリングを使用)と同一断面径の市販Oリング)により二次シールした場合に比して、バランス径及びシール面幅を大きく設定しうるように構成したことを特徴とするメカニカルシールを提案する。かかる環状シール部材の好ましい実施の形態にあって、第一及び第二Oリングとしては、何れも、冒頭で述べた市販Oリング(JIS(JIS B2401等)により規定された寸法(内径,断面径(太さ))のOリング)が使用される。市販Oリングを使用する場合において、第一Oリングとしては、その内径及び断面径から決定される外径(=内径+断面径×2)が回転密封環の内周面の径に応じた寸法となるようなものが選定され、第二Oリングとしては、その内径が回転軸の外周面の径に応じた寸法となるようなものが選定される。この場合において、第一及び第二Oリングはそれらの断面径が同一径のものであっても異径のものであっても何れでもよい。また、かかるメカニカルシールは、好ましい実施の形態にあって、静圧形ノンコンタクトガスシールに構成される。すなわち、この静圧形ノンコンタクトガスシールは、シールケース及び静止密封環に、密封端面間にシールガスを供給する一連のシールガス通路を形成して、密封端面間に噴出させたシールガスにより発生された静圧によって当該密封端面間を非接触状態に保持するように構成される。
本発明のメカニカルシールにおいて使用される環状シール部材によれば、第一及び第二Oリングとして市販Oリングを使用しつつも、任意の径をなす第一シール面(回転密封環の内周面)と第二シール面(回転軸の外周面)との間に適正に装填することができるから、単一の市販Oリングではシールすることができないような大きな径方向間隔を有する第一シール面と第二シール面との間においても、単一のOリングを使用した場合と同等のシール機能を発揮させることができる。しかも、第一及び第二Oリングとして市販Oリングを使用できるものであり、Oリング保持体も第一及び第二Oリングに応じた寸法,形状のものを切削加工等により容易且つ安価に製作できるものとなすことができるものであるから、第一シール面と第二シール面との径方向間隔が如何なる寸法であっても、これを良好にシールする環状シール部材を容易且つ安価に製造することができる
したがって、本発明のメカニカルシールによれば、上記した環状シール部材を回転密封環と回転軸との対向周面間の二次シール手段として使用していることから、バランス径及びシール面幅を自由に設定することができ、シール条件に応じた最適な軸封機能(メカニカルシール機能)を発揮させることができる。特に、被密封流体が高圧である場合にも、回転軸径に拘わらず、バランス径及びシール面幅を圧力条件に応じた適正な大きさのものとすることができ、安定且つ良好な軸封機能を発揮させることができる。
以下、本発明の構成を図1〜図3を参照して具体的に説明する。図1は本発明に係るメカニカルシールの一例を示す縦断側面図であり、図2は図1の要部を拡大して示す詳細図であり、図3は当該メカニカルシールに使用された本発明に係る環状シール部材を示す縦断側面図である。
図1に示すメカニカルシール1は、例えば、固体状異物(粉体,スラッジ等)又は液状異物(水分,油分等)を含有するガスを扱う小形の回転機器(ロータリバルブ等)の軸封手段として使用されるものであり、当該回転機器の回転軸2が同心状に洞貫する状態で当該回転機器のハウジングに一体形成され又は当該ハウジングに取り付けられた円筒状のシールケース3と、シールケース3に嵌合固定された静止密封環4と、静止密封環4に対向して回転軸2に軸線方向移動可能に嵌合保持された回転密封環5と、回転軸2に嵌合固定されたスプリングリテーナ6と、回転密封環5とスプリングリテーナ6との間に介装されたスプリング部材7と、両密封環4,5の対向端面たる密封端面4a,5a間にシールガス8を噴出させるシールガス通路9とを具備して、密封端面4a,5aの相対回転部分において、当該相対回転部分の内径側領域たる被密封流体領域(機内領域)Hとその外径側領域たる非密封流体領域(大気領域たる機外領域)Lとを遮蔽シールするように構成された静圧形ノンコンタクトガスシールである。なお、以下の説明において、左右とは図1における左右を意味する。
静止密封環4は、図1に示す如く、回転軸2に同心状に遊嵌された状態でシールケース3の内周部に前後一対のOリング10,10を介して内嵌保持された円環状体であり、その先端面(左端面)は平滑な環状平面である密封端面4aに構成されている。静止密封環4の基端側内周部分には、図1に示す如く、回転軸2の外周面に近接する凹凸状のラビリンスシール又はネジシール11が形成されている。なお、回転軸2は、図1に示す如く、軸本体2aに円筒状スリーブ2bを挿通固着してなる。
回転密封環5は、図1に示す如く、回転軸2に本発明に係る環状シール部材12を介して軸線方向(左右方向)に移動可能に嵌合保持された円環状体であり、その先端面(右端面)は平滑な環状平面である密封端面5aに構成されている。回転密封環5は、回転軸2に遊嵌された先端部分(密封端面5aが形成された部分)5bとこれより内径を大きくした基端部分5cとからなり、回転密封環5と回転軸2と対向周面13,14間(基端部分5cの内周面13とスリーブ2bの外周面14との間)に装填させた環状シール部材12により、回転軸2との間を二次シール状態で軸線方向移動可能に保持されている。なお、回転密封環5の密封端面5aは、その外径を静止密封環の密封端面4aの外径より大きく且つその内径を当該密封端面4aの内径より小さく設定したものであり、両密封端面4a,5aが重合する環状領域の径方向幅であるシール面幅W1は、図2に示す如く、静止密封環4の内外径(正確には密封端面4aの内外径)D1,D2によって与えられる。すなわち、W1=(D2−D1)/2である。
スプリングリテーナ6は、図1に示す如く、内外筒6a,6bの基端部(左端部)を環状壁6cで連結してなる二重筒構造をなすものであり、回転軸2にセットスクリュー6dにより嵌合固定されていて、内外筒6a,6bの対向周面間に回転密封環5の基端部5cを嵌挿すると共に環状壁6cを貫通するドライブピン18を回転密封環5に螺着することにより、回転密封環5の軸線方向移動を所定範囲で許容しつつ、回転密封環5の相対回転を阻止している。なお、回転密封環5の外周面と外筒6bの内周面との間には、回転密封環5の追従性安定を図るためのOリング19,19が装填されている。
スプリング部材7は、図1に示す如く、スプリングリテーナ6の環状壁6cと回転密封環5の基端部5cとの間に介挿された複数のコイルスプリング(一個のみ図示)で構成されていて、回転密封環5を静止密封環4へと押圧附勢するものであり、密封端面4a,5a間を閉じる方向に作用する閉力を発生させるものである。
シールガス通路9は、シールケース3及び静止密封環4を貫通する一連の通路であって、図1に示す如く、シールケース3と静止密封環4との嵌合部分に形成された空間であって、Oリング10,10によってシールされた環状の連絡空間9aと、シールケース3を径方向に貫通して連絡空間9aに至るケース側通路9bと、密封端面4aに形成された静圧発生溝9cと、静止密封環4を貫通して連絡空間9aから静圧発生溝9cに至る密封環側通路9dとからなる。静圧発生溝9cは、密封端面4aと同心をなす環状溝又は複数の円弧状溝である。シールガス通路9は、機内領域Hの流体圧力より高圧のシールガス8を、ケース側通路9b、連絡空間9a、密封環側通路9dを経て静圧発生溝9cに供給させるものであり、密封端面4a,5a間にシールガス8を噴出させて、密封端面4a,5a間にこれを非接触状態に保持する静圧を発生させるものである。シールガス8としては、被密封流体に対して不活性で無害なガス(一般に、窒素ガス)が使用される。シールガス通路9の適所(密封環側通路9d)には、オリフィス,毛細管,多孔質部材等の絞り器9eが配設されていて、密封端面4a,5a間の隙間が自動調整されるようになっている。すなわち、回転機器の振動等により密封端面4a,5a間の隙間が大きくなったときは、静圧発生溝9cから密封端面4a,5a間に流出するシールガス量と絞り器9eを通って静圧発生溝9cに供給されるシールガス量とが不均衡となり、静圧発生溝9c内の圧力が低下して、開力が閉力より小さくなるため、密封端面4a,5a間の隙間が小さくなるように変化して、その隙間が適正なものに調整される。逆に、密封端面4a,5a間の隙間が小さくなったときは、上記したと同様の作用により静圧発生溝9c内の圧力が上昇して、開力が閉力より大きくなり、密封端面4a,5a間の隙間が大きくなるように変化して、その隙間が適正なものに調整される。なお、静止密封環4には、連絡空間9aからラビリンスシール(又はネジシール)11へとシールガス8を供給させる通路20が形成されている。この通路20にも、前記絞り器9eと同様の絞り器20aが配設されている。
環状シール部材12は、図2に示す如く、同心をなして対向する円形の第一シール面たる回転密封環5の内周面13とこれより小径の第二シール面たる回転軸2の外周面14との間にこれをシール(二次シール)すべく装填された複合Oリング部材であって、図3に示す如く、環状をなすOリング保持体15と、Oリング保持体15の外周部に係合保持された第一Oリング16と、Oリング保持体15の内周部に係合保持された第二Oリング17とから構成されている。
第一Oリング16は、内周部16bをOリング保持体15の外周部に形成した環状の第一Oリング溝15aに係合させることにより、外周部16aがOリング保持体15の外周部から突出する状態で、Oリング保持体15に保持されている。第二Oリング17は、外周部17bをOリング保持体15の内周部に形成した環状の第二Oリング溝15bに係合させることにより、内周部17aがOリング保持体15の内周部から突出する状態で、Oリング保持体15に保持されている。
第一及び第二Oリング16,17は、何れも、NBR,FKM等からなる市販Oリング(JIS B2401,JIS W1516,JIS W1517等で規定された市販の規格品)であり、回転密封環5と回転軸2との対向周面13,14の径に応じて選定されたものである。すなわち、第一Oリング16としては、その内径d1及び断面径(太さ)d2から決定される外径d3(=d1+d2×2)が第一シール面13の径D3に応じた寸法となるようなもの、つまり外周部16aが第一シール面13に最適な接触圧(シール圧)で圧接しうるような外径d3の市販Oリングが使用される。また、第二Oリング17としては、その内径d4が第二シール面14の径D4に応じた寸法となるようなもの、つまり内周部17aが第二シール面14に最適な接触圧(シール圧)で圧接しうるような内径d4の市販Oリングが使用される。なお、第一Oリング16の外径d3は第二Oリング17の外径より大きいこと及び第二Oリング17の内径d4は第一Oリング16の内径d1より小さいことはいうまでもないが、環状シール部材12の径方向厚さd0(=(d3−d4)/2)は単一のOリングにおける断面径(太さ)に相当するものであり、この径方向厚さd0は第一シール面13と第二シール面14との径方向間隔D0(=(D3−D4)/2)に応じて当該径方向間隔D0より適当量大きく設定されている。
Oリング保持体15は、切削加工等により容易且つ安価に製作できる金属等で構成された非弾性部材ないし剛体であり、外周部に第一Oリング16の断面径d2に応じた断面円弧状の第一Oリング溝15aを形成すると共に内周部に第二Oリング17の断面径d5に応じた断面円弧状の第二Oリング溝15bを形成した環状体である。なお、Oリング保持体15は、いうまでもなく、当該環状シール部材12をシール面13,14間に装填した状態において当該シール面13,14に干渉しない形状の環状体に構成されている。
以上のように構成されたメカニカルシール1にあっては、シールガス8をガス通路9から密封端面4a,5a間に供給させると、密封端面4a,5a間にこれを開く方向に作用する開力が発生することになる。この開力は、静圧発生溝9cに供給されたシールガス8によって発生する静圧によるものである。したがって、密封端面4a,5aは、この開力と密封端面4a,5a間を閉じる方向に作用する閉力(回転密封環5を静止密封環4へと押圧附勢するスプリング部材7によるスプリング荷重及び回転密封環5に作用する被密封流体による背圧)とがバランスする非接触状態に保持される。そして、シールガス8が機内領域Hの圧力より高圧であり、密封端面4a,5aから両領域H,Lに噴出することから、被密封流体の密封端面4a,5a間からの漏洩が完全に阻止され、両領域H,L間が良好に遮蔽シールされることになる。
このとき、回転密封環5と回転軸2との対向周面13,14間の二次シール手段として、異径の第一及び第二Oリング16,17を組み合わせてなる複合Oリング構造をなす環状シール部材12を使用しているから、各Oリング16,17として市販Oリングを使用しているにも拘わらず、バランス径を自由に設定することができ、シール条件に応じて当該条件に最適するシール面幅W1(=(D2−D1)/2)を確保することができる。
すなわち、バランス径つまり第一Oリング16が接触する第一シール面13の径(回転軸2との間を二次シールすべき回転密封環部分(基端部分5c)の内径)D3は、Oリング保持体15の外周部に保持させる第一Oリング16として使用する市販Oリングの選択によって任意に設定することができる。市販Oリングを使用する場合において、第二Oリング17の選択幅は回転軸2の外径D4(第二シール面14の径)によって制限されるが、第一Oリング16についてはこのような制限はなく、Oリング保持体15の形状(外径寸法)を適宜に設定することにより第一Oリング16として任意寸法の市販Oリングを選択することができる。したがって、第一Oリング16として適宜外径d3の市販Oリングを選択することにより、且つその選択した市販Oリング(第一Oリング16)の内径d1及び断面径d2に応じてOリング保持体14の外径及び第一Oリング溝15aの形状を設定することにより、バランス径D3及びシール面幅W1を、被密封流体圧力(機内領域Hの流体圧力)に最適するものに設定することができ、機内領域Hが高圧である条件下においても安定且つ良好な軸封機能(メカニカルシール機能)を発揮させることができる。
ところで、上記二次シール手段として単一の市販Oリング12Aを使用した場合、図4(A)に示す如く、当該Oリング12Aとしては回転軸2の外径D4に応じた内径(第二Oリング17の内径d4に相当する)の市販Oリングを使用することになる。したがって、Oリング12Aとして、このような内径を有する市販Oリングのうち断面径(太さ)が最大のものを使用したとしても、つまり外径が最大のものを使用したとしても、図4(A)に示す如く、Oリング12Aの外径によって設定される第一シール面13の径つまりバランス径D5は、本発明の環状シール部材12を使用した場合のバランス径D3に比して極めて小さく、バランス径D5によって決定されるシール面幅W2も、当該環状シール部材12を使用した場合のシール面幅W1に比して極めて小さい。したがって、単一の市販Oリング12Aを使用した場合には、高圧条件下で好適に使用できるメカニカルシールを提供することができない。例えば、メカニカルシールの設計上、単一のOリング12Aを使用した場合、F.V.〜0.2MPaGの低圧域で使用できるにすぎないが、これと同一構造のメカニカルシールにおいて環状シール部材12を使用した場合には1MPaG程度の高圧域での使用も可能となる。なお、高低圧域の何れの圧力条件で使用する場合にも、シール機能上、バランス比が一定範囲となるように設計しておくことが好ましいが、本発明の環状シール部材12を使用すれば、上記した如く、第一Oリング16として使用する市販Oリングの選択次第でバランス径D3及びシール面幅W1を自由に設定することができるから、単一の市販Oリングを使用した低圧域用メカニカルシールにおけると同等のバランス比を得ることが可能となり、1MPaG程度の高圧域においても当該低圧域用メカニカルシールを低圧域(F.V.〜0.2MPaG)で使用する場合と同等の良好なシール機能を発揮しうるメカニカルシールを提供することができる。
また、上記二次シール手段として単一のOリングを使用する場合にも、図4(B)に示す如く、当該Oリングとして環状シール部材12の径方向厚さd0と同等の断面径(太さ)を有する特殊Oリング12Bを使用することによって、環状シール部材12を使用した場合と同一のバランス径D6(=D3),シール面幅W3(=W1)を得ることが可能である。しかし、このような特殊Oリング12Bの使用は、冒頭で述べた如く、シール機能上及びコスト上から実用的ではない。本発明の環状シール部材12は、このような特殊Oリング12Bを使用せざるを得ない場合にも、市販Oリング16,17を使用することができるから、Oリング保持体15が切削加工等に安価且つ容易に製作できるものとなしうることとも相俟って、特殊Oリング12Bを使用する場合のようなシール機能上及びコスト上の問題は生じない。
なお、本発明は上記した実施の形態に限定されるものでなく、本発明の基本原理を逸脱しない範囲において適宜に変更,改良することができる。例えば、環状シール部材12は、上記した静圧形ノンコンタクトガスシール1における回転密封環5の二次シール手段として使用する他、動圧形の非接触形メカニカルシールや端面接触形のメカニカルシールにおける回転密封環の二次シール手段としても上記した場合と同様に設計の自由度を確保しつつ好適に使用することができる
本発明に係るメカニカルシールの一例を示す縦断側面図である。 図1の要部を拡大して示す詳細図である。 当該メカニカルシールの要部(環状シール部材)を取り出して示す縦断側面図である。 一般的なメカニカルシールにおけるOリングの使用形態を示す図2相当の縦断側面図であり、(A)は市販Oリングを使用した例を、また(B)は特殊Oリングを使用した例を、夫々示している。
符号の説明
1 メカニカルシール(静圧形ノンコンタクトガスシール)
2 回転軸
3 シールケース
4 静止密封環
4a 静止密封環の密封端面
5 回転密封環
5a 回転密封環の密封端面
6 スプリングリテーナ
7 スプリング部材
8 シールガス
9 シールガス通路
12 環状シール部材
13 第一シール面(回転密封環の内周面)
14 第二シール面(回転軸の外周面)
15 Oリング保持体
15a 第一Oリング溝
15b 第二Oリング溝
16 第一Oリング
16a 第一Oリングの外周部
16b 第一Oリングの内周部
17 第二Oリング
17a 第二Oリングの内周部
17b 第二Oリングの外周部
D3 バランス径
H 被密封流体領域(機内領域)
L 非密封流体領域(機外領域)
W1 シール面幅

Claims (2)

  1. 回転軸にこれとの対向周面間に装填した環状シール部材を介して軸線方向移動可能に保持された回転密封環と回転軸が洞貫するシールケースに固定された静止密封環とを具備して、両密封環の対向端面たる密封端面の相対回転部分において、当該相対回転部分の内径側領域たる被密封流体領域とその外径側領域たる非密封流体領域とを遮蔽シールするように構成されたメカニカルシールにおいて、
    前記環状シール部材が、環状をなすOリング保持体と、Oリング保持体の外周部に形成した断面円弧状の第一Oリング溝に、内周部を係合保持された第一Oリングと、Oリング保持体の内周部に形成した断面円弧状の第二Oリング溝に、外周部を係合保持された第二Oリングとからなり、前記対向周面間に第一Oリングの外周部が回転密封環の内周面に圧接すると共に第二Oリングの内周部が回転軸の外周面に圧接し且つOリング保持体が前記対向周面に干渉しない状態で装填されており、
    回転軸と回転密封環との対向周面間を前記環状シール部材により二次シールして、当該対向周面間を第一Oリング又は第二Oリングと同一断面径のOリングにより二次シールした場合に比して、バランス径及びシール面幅を大きく設定しうるように構成したことを特徴とするメカニカルシール
  2. シールケース及び静止密封環に、密封端面間にシールガスを供給する一連のシールガス通路を形成して、密封端面間に噴出させたシールガスにより発生された静圧によって当該密封端面間を非接触状態に保持するように構成された静圧形ノンコンタクトガスシールであることを特徴とする、請求項1に記載するメカニカルシール。
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