JP4312515B2 - 柄一体型塗布具およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は柄一体型塗布具に関し、さらに詳しくは柄部とこれを連結する塗布部が同一組成により一体化されてなり、塗布部が特定の多孔性構造を有し、液体塗布に好適な柄一体型塗布具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、柄付き塗布具として、スライバーを柄の少なくとも一端に巻きつけた綿棒がよく知られている。また、成型されたウレタン製スポンジ、ポリビニルアルコール(PVA)製スポンジの一部に切れ目を入れて、その切れ目に柄となる棒状体を挿入して固定した柄付きパッドもよく知られている。さらに、静電植毛が施された基布を棒の一端に被覆された化粧用具も知られている。
【0003】
しかしながら、綿棒はリントが発生するといった欠点があり、ウレタン製スポンジは使用後の液切れが悪く、またPVAスポンジは乾燥すると硬化するため、再度使用するときに水で予め再膨潤させる必要があるといった欠点が指摘されていた。また、静電植毛された基布は液体を含みにくいといった欠点があった。
【0004】
一方、化粧料、消毒薬の塗布や、払拭に用いる拭浄具として、吸液性が相対的に異なる材料、例えば相対的に吸液性の低い合成繊維製綿またはポリウレタン製塊状物に相対的に吸液性の高い布帛や不織布を被覆することによって必要以上の吸液を防止した拭浄具が提案されている(特許文献1参照)。
しかしながら、前記拭浄具は依然として液体の含みが不十分であり、また製造するための工程も煩雑であり実用性に欠けるものであった。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−85448号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、液体の含みと吐き出し性が良好な液体塗布具として優れた性能を有する柄付き塗布具を簡便な製造方法により提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、柄部の少なくとも一端に塗布部を備えてなる柄一体型塗布具であって、該塗布部および柄部は接着性捲縮繊維を10質量%以上含むキノコ状多孔質繊維構造体からなり、該キノコ状多孔質繊維構造体は、接着性捲縮繊維相互の絡合と融着により形成され、塗布部には見掛密度が0.15g/cm3以下の網状構造領域が存在し、柄部には見掛密度が0.25g/cm3以上の繊維束融着領域が存在することを特徴とする柄一体型塗布具である。
【0008】
また本発明は、接着性捲縮繊維を10質量%以上含む繊維束を、その少なくとも一端が筒状体から突出するよう挿入し、次いで水に含浸し、昇温させながら繊維束における接着性捲縮繊維の捲縮を発現させるとともに繊維相互を絡合させ、該接着性捲縮繊維の接着成分同士を部分融着させ、塗布部を形成させると同時に該筒状体により拘束された繊維束を融着硬化して柄部を形成させる柄一体型塗布具の製造方法であって、該筒状体の開口断面積S、繊維束の総繊度Dおよび繊維束の突出長さLが下記式(1)および(2)を満たすことを特徴とする柄一体型塗布具の製造方法である。
0.9×10/1000×(D)1/2 ≦ 2(S/π)1/2 ≦ 1.4×10/1000×(D)1/2・・・(1)
4(S/π)1/2 ≦ L ≦ 24(S/π)1/2・・・(2)
S:筒状体の開口断面積(mm2)
D:繊維束の総繊度(dtex)
L:繊維束の突出長さ(mm)
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の柄一体型塗布具は、柄部とその少なくとも一端に存在する塗布部とが一体化されたキノコ状多孔質繊維構造体から形成されてなる点に特徴を有する。
すなわち、本発明の一体型塗布具は塗布部の一部が長く伸びて柄部を形成した塗布具であり、該塗布具を構成するキノコ状多孔質繊維構造体の塗布部の保液性と柄部の有する弾力性により液体塗布具として優れた性能を発揮する。
【0010】
次に、本発明の柄一体型塗布具を構成するキノコ状多孔質繊維構造体について説明する。
ここで本発明にいうキノコ状とは、半球状の曲面体の底面中央付近に軸となる柄部がつながっている形状を指すものである。
該キノコ状多孔質繊維構造体は、接着性捲縮繊維を含むものであるが、本発明において接着性捲縮繊維とは、約95〜100℃の熱水で軟化して、自己接着性または他の繊維に接着するポリマー成分を含有する捲縮繊維である。また、該捲縮繊維の捲縮形態は、平面的なジグザグ状の捲縮や、仮撚による立体捲縮、サイドバイサイド型複合繊維、偏心芯鞘型複合繊維、非対称冷却繊維などによって発現するコイル状の立体捲縮等、特に限定されるものではないが、多孔質繊維構造体の嵩高性、柔軟性の観点から立体捲縮を有している繊維であることが好ましく、特に仮撚捲縮繊維が好ましく用いられる。
一方、生糸のようなストレートヤーンでは上記の三次元捲縮の発現は得られず、接着部が点ではなくて塊状となり、風合も硬くなる。また、接着性を有していても、熱処理で捲縮が消失するような接着性捲縮繊維は、本発明の効果が得られない結果となり好ましくない。
【0011】
該接着性捲縮繊維は、5%以上の捲縮率を有していることが望ましく、さらに好ましくは10〜30%の捲縮率を有する繊維である。捲縮率が5%未満であると、本発明の目的である嵩高であって、液体の含みと吐き出しが良好な多孔質繊維構造体が得られない場合がある。
【0012】
熱接着性捲縮繊維を構成する接着性ポリマーとしては、例えば、ナイロン12またはアクリルアミドを一成分とする共重合体、ポリ乳酸、エチレン−ビニルアルコール系共重合体などを挙げることができるが、中でもエチレン−ビニルアルコール系共重合体が好ましく用いられる。エチレン−ビニルアルコール系共重合体としては、ポリビニルアルコールにエチレン残基が10〜60モル%共重合されたものが好ましく、特にエチレン残基が30〜50モル%共重合されたものが、接着性の点で好ましい。また、ビニルアルコール部分は95モル%以上の鹸化度を有するものが好ましい。エチレン残基が多いことにより、湿熱接着性を有するが熱水には溶解しにくいという、特異な性質を有する。重合度は特に限定されないが、400〜1500程度が好ましい。
本発明においては、目的とする多孔質繊維構造体とした後に、繊維改質等の後加工のため、エチレン−ビニルアルコール系共重合体を部分架橋処理してもよい。
【0013】
本発明に用いる接着性捲縮繊維は、他の熱可塑性重合体との複合繊維や、他の熱可塑性重合体からなる繊維の表面に該ポリマーを被覆した繊維でもよい。他の熱可塑性重合体としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン等を挙げることができるが、耐熱性、寸法安定性等の点でエチレン−ビニルアルコール系共重合体より高い融点を有するポリエステル、ポリアミド等が好ましく用いられる。
【0014】
ポリエステルとしてはテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、フタル酸、α,β−(4−カルボキシフェノキシ)エタン、4,4’−ジカルボキシジフェニル、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、アゼライン酸、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のジオールからなる繊維形成性のポリエステルを挙げることができ、構成単位の80モル%以上がエチレンテレフタレート単位であることが好ましい。
【0015】
また、ポリアミドとしてはナイロン6、ナイロン66、ナイロン12を主成分とする脂肪族ポリアミド、半芳香族ポリアミドなどを挙げることができ、少量の第3成分を含有するポリアミドでもよい。
【0016】
本発明において、多孔質繊維構造体を構成する繊維として、エチレン−ビニルアルコール系共重合体と他の熱可塑性重合体からなる複合繊維を用いる場合は、複合比は前者:後者(質量比)=10:90〜90:10、特に30:70〜70:30であることが紡糸性の点から好ましい。また、複合形態については特に限定されず、従来公知の複合形態を採用することができるが、エチレン−ビニルアルコール系共重合体が繊維表面の少なくとも一部に存在していることが望ましく、50%以上露出していることがより好ましい。具体的な複合形態としては、例えば、芯鞘型、偏心芯鞘型、多層貼合型、サイドバイサイド型、ランダム複合型、放射状貼合型、極細繊維発生型等を挙げることができる。これらの繊維の断面形状は中実断面形状である丸断面や異型断面形状に限らず、中空断面形状等、種々の断面形状とすることができる。
特に、極細繊維発生型の複合繊維を用いる場合は、単繊維繊度が0.05〜0.5dtexの極細繊維を含む多孔質繊維構造体とすることが、風合の点で好ましい。
【0017】
本発明の柄一体型塗布具を構成するキノコ状多孔質繊維構造体は、接着性捲縮繊維を10質量%以上含むことが必要であり、30〜90質量%含むことがさらに好ましい。該接着性捲縮繊維が10質量%を下回るとキノコ状構造が得られる場合があるが、繊維の接着が不十分となり、液体を保持しても、液体の表面張力により構造体に体積収縮が起こるため、充分な液体量が確保できなくなる。また、使用者にとっては塗布する操作における塗布感も重要であり、作業者は塗布量を調節しながら塗布を行うものである。したがって、10質量%を下回ると前記の塗布感が得られない点で好ましくない。
【0018】
一方、キノコ状多孔質繊維構造体を構成する接着性捲縮繊維以外の繊維は特に限定されず、天然繊維、半合成繊維、合成繊維を使用することができ、目的によって選定することができるが、合成繊維を用いることが好ましく、特にポリエステル繊維を用いることが好ましい。また、これら繊維も接着性捲縮繊維と同等の捲縮を有することが望ましく、特に接着性捲縮繊維以外の捲縮繊維を10質量%以上含むことが嵩高性、液体の吐き出し性の点で好ましく、特に好ましくは、10〜70質量%である。
【0019】
本発明の柄一体型塗布具を構成するキノコ状多孔質繊維構造体は、繊維相互の絡合と融着により形成されてなる点に特徴を有する。また、該多孔質繊維構造体は下記に示すとおり、塗布部となる網状構造領域と柄部となる繊維束融着領域が存在することも特徴である。
該多孔質繊維構造体を構成する網状構造領域の見掛密度は、接着性捲縮繊維の使用量、繊維の集積密度、熱処理条件などにより任意に設定できるが、0.15g/cm3以下であることが重要である。
網状構造領域における見掛密度が0.15g/cm3を超えると弾力性が低く、液体塗布時に液体が飛散したり、風合いが硬くなってしまう。さらに、良好な塗布感が得られなくなる。好ましくは、0.1g/cm3以下である。また、該塗布部の表面には凹部となって存在する開口部の形成も見られ、塗布具とした際に優れた吸液性を発揮する。
また、該多孔質繊維構造体の柄部となる部分は、繊維束が拘束、融着された繊維束融着領域が存在し、見掛密度は0.25g/cm3以上であり、好ましくは0.27〜0.31g/cm3である。繊維束融着領域における見掛密度が0.25g/cm3未満であると、本発明を実施する上で、拘束度合が低いということであって、好ましい柄部を形成することができない。
【0020】
以下、図面を用いて本発明の柄付き塗布具を構成するキノコ状多孔質繊維構造体の構造を具体的に説明する。
図1に、本発明のキノコ状多孔質繊維構造体の一例を示す断面模式図を示す。柄部1の先端に半球状の塗布部2が備え付けられている。該塗布具を構成するキノコ状多孔質繊維構造体の柄部1には繊維束融着領域3が存在し、該繊維束融着領域の先端の塗布部2には網状構造領域4が存在している。
図2は、接着性ポリマーを鞘成分とする芯鞘型の接着性捲縮繊維を100質量%用いた場合における網状構造領域4の拡大模式図である。接着性捲縮繊維5が複雑に絡合しており、さらに融着部6で繊維同士が接触して融着しており、接着性捲縮繊維5の芯成分7が存在する。
【0021】
以下に、本発明の柄付き塗布具の製造方法を説明する。
本発明の柄一体型塗布具は、まず支持体となる筒状体を準備し、該筒状体に接着性捲縮繊維を含む繊維束を該筒状体よりも所定の長さ突出するよう挿入し、次いでこれを水に含浸し、昇温させながら接着性捲縮繊維の捲縮を発現させるとともに繊維相互を絡合させ、該接着性捲縮繊維の接着成分同士を部分融着させることで塗布部を形成させ、同時に筒状体で被覆され拘束された繊維束の近傍部分は密に集束しているため該接着性捲縮繊維により融着硬化され、柄部を形成する。
すなわち、接着性捲縮繊維を含有する繊維束を筒状体に挿入し、全体を水に含浸させ、温度を上昇させていくと、約70℃付近で捲縮の発現が開始し、繊維束は球状塊を形成し始める。さらに温度が上昇して95℃くらいから気泡の発生が始まり、その気泡圧によって繊維塊中の繊維が移動することで交絡し、同時に熱により接着性捲縮繊維の接着成分が融解融着して、他の部分の繊維は繊維同士が接着し、多孔質繊維構造体が形成される。
【0022】
繊維束周辺または内部に気泡が発生するために要する加熱は、通常1気圧であれば約100℃である。加熱温度は接着性繊維の湿熱条件下での融着温度と相関する。加熱温度は、接着性繊維の融着温度または、融着温度〜融着温度+10℃の温度とすることが好ましい。湿熱処理時間は繊維束の量、繊維の融着の程度等により調整することができる。
【0023】
接着性繊維が融着した後に、周知の方法で該繊維構造体を冷却し、多孔質繊維構造体の構造を固定する。湿熱処理後の繊維構造体は熱水を含有しているため冷水中に浸漬するか、冷水シャワーによる冷却が好ましく、冷風による冷却は効率が低い場合がある。
【0024】
上記したように本発明においては、支持体となる筒状体は柄一体型塗布具の柄部を補助的に形成する役割と塗布部を形成させるため繊維束を拘束する役割を有し、筒状体の開口断面積と接着性捲縮繊維を含む繊維束の繊度および突出長さは相互に関連する。
【0025】
本発明を製造する際に用いる筒状体を構成する素材としては、各種合成樹脂等が使用でき、例えばポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン等が挙げられるが、熱水の影響を受けない樹脂が好ましい。また、本発明に用いる筒状体は、目的とする柄一体型塗布具を形成させた後に該塗布具から剥離(取り外し)してもよいし、例えば図3に示すように筒状体が装着されたままの状態で使用してもよい。
該筒状体の断面形状は、特に限定するものではないが、円、楕円形または正多角形が好ましい。
また、筒状体の開口断面の大きさは拘束する繊維束の太さとも関係する。すなわち、筒状体に繊維束を拘束させるため、繊維束を最密に集束した時の断面積と筒状体の断面積が関係することになる。
さらに、突出した繊維束の長さも塗布部の構造発現後の形状に影響する。すなわち、かかる長さが長すぎると熱処理を施しても目的とするキノコ形状が発現しない。
したがって、塗布部および柄部の構造発現には筒状体の開口断面の大きさ、繊維束の繊度および繊維束の突出長さが相互に関係するため、単に繊維束を挿入するだけでは目的とする柄一体型塗布具の構造は得ることはできない。
【0026】
以下、図面を用いて本発明の柄一体型塗布具の製造方法をさらに具体的に説明する。
図4は、本発明に使用する筒状体の一例を示す模式図である。図4においては、筒状体8の開口断面9が真円形状となっているが、該断面は、真円形状に限定されず楕円形または正六角形等の正多角形であっても構わない。
【0027】
図5は、筒状体に接着性捲縮繊維を含む繊維束を挿入した状態を示す模式図であり、該繊維束10が筒状体に挿入され、繊維束が特定の長さL突出し、把持、拘束された状態となっている。
【0028】
また、本発明においては筒状体に挿入する繊維束の総繊度Dと筒状体の開口断面の面積Sが、下記式(1)を満足することが重要である。
0.9×10/1000×(D)1/2 ≦ 2(S/π)1/2 ≦ 1.4×10/1000×(D)1/2・・・(1)
すなわち、筒状体の開口断面積Sを円面積換算した際における直径2(S/π)1/2(mm)が、10/1000×(D)1/2の90〜140%の範囲内であることが必要である。なお、上記式における10/1000×(D)1/2はポリエステル繊維の比重を1.38g/cm3として算出したとき、繊維径(mm)にほぼ相当する。本発明においては、異なる比重の繊維の混合物であっても上記式(1)を満たすことにより、優れた性能を有するキノコ状多孔質繊維構造体が得られる。
筒状体の開口断面積の円換算直径が、10/1000×(D)1/2の140%を超えると該筒状体による繊維束の把持力が弱くなるため、キノコ状の構造が形成されない。一方、筒状体の開口断面積の円換算直径が10/1000×(D)1/2の90%未満であると繊維束そのものが挿入され難いといった工程通過性の問題が生じる。
【0029】
さらに、本発明において筒状体の開口断面積Sと筒状体に挿入する繊維束の突出長さLが下記式(2)を満足することが必要である。
4(S/π)1/2 ≦ L ≦ 24(S/π)1/2・・・(2)
すなわちLが、筒状態の開口断面積の円換算直径の4倍から24倍の範囲内とすることである。
Lが筒状体の開口断面積の円換算直径の4倍を下回ると球状のものは得られず、また24倍を上回っても球状のものが得られない。すなわち、図6に見られるように繊維束がキノコ状にならず、本発明の目的とするキノコ状多孔質繊維構造体が得られない。
【0030】
本発明の柄一体型塗布具は、その多孔性を利用して、化粧用液体、消毒用薬液の塗布具として使用できる。また、本発明の塗布具は、液体に限らず粉体塗布具として用いてもよい。
【0031】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の各物性値は以下の方法により求めた。
【0032】
(1)塗布部体積
300ccビーカーにイソブチレン−マレイン酸系共重合体(クラレ社製「KIゲル」:平均粒径1mm)と、質量Wの塗布部を混合した状態で体積V1(cm3)を測定し、次いで塗布部をビーカーより取り出したときの体積V0を測定して下記式により体積Vを算出した。
V=V1−V0
【0033】
(2)繊維束融着領域の見掛密度
柄一体型塗布具より塗布部を切断し、キノコ状多孔質繊維構造体の繊維束融着領域のみを切り出して質量W1(g)と体積V2(cm3)を測定し、重量W1を体積V2で除して算出した。
繊維束融着領域の見掛密度=W1/V2
【0034】
(3)網状構造領域の見掛密度
上記(2)に準じ、下記式により算出した。
網状構造領域の見掛密度=(W−W1)/(V−V2)
【0035】
(4)捲縮率
カセ取機で5500dtexのカセとなるまで糸条を巻き取った後、カセの下端中央に10gの荷重を吊るし、上部でこのカセを固定し、0.009cN/dtexの荷重がかかった状態で90℃にて30分間熱水処理を行った。次いで、無荷重状態で室温に放置して乾燥した後、再び10gの荷重をかけて5分間放置後の糸長を測定し、これをL1(mm)とする。次に1kgの荷重をかけ、30秒間放置後の糸長を測定し、これをL2(mm)とするとき、下記式により算出した。
捲縮率(%)={(L2−L1)/L2}×100
【0036】
(5)繊維束繊度(D)
繊維束の総繊度(dtex)を算出した。
【0037】
(6)筒状体の開口断面積(S)
筒状態の開口部における断面形状を転写した紙の質量W1と基準面積S0(1cm2)を転写した紙の質量W0との比により面積Sを下記式により算出した。
S=S0×W1/W0
【0038】
(7)繊維束突出長さ(L)
メジャーを用いて弛緩状態で計測し、筒状体から突出している部分の長さを求めた。
【0039】
(8)保液量
塗布部のみの重量W2を測定した後、水(密度1g/cm3)に30秒間浸漬させて取り出した時の重量W3として、保液量を下記式により算出した。
保液量(%)={(W3−W2)/V}×100
【0040】
実施例1
接着性捲縮繊維として、芯成分にポリエチレンテレフタレート、鞘成分にエチレン−ビニルアルコール系共重合体を配した芯鞘型複合繊維(クラレ社製「ソフィスタ」、165dtex/48フィラメント)の仮撚加工糸(捲縮率14.0%)6本とポリエチレンテレフタレートとナイロン6との剥離分割型複合繊維(クラレ社製「WRAMP」、165dtex/48フィラメント)の仮撚加工糸3本を引き揃えて99000dtexの繊維束(直径3.0mm)を準備し、開口部の直径が3.3mm、高さ50mmのポリプロピレン製筒状体(S=8.5mm2)に挿入して筒状体から突出する長さLが25mmとなるように繊維束の片端を切断し、これを50℃の水中に浸漬し、沸騰状態になるまで加熱して、沸騰状態で2分間処理した。次いで、これを取り出して室温の水に浸漬して形態を固定した。
これによって、長径が37mmであるキノコ状の塗布部と柄部とが一体化して形成された。該塗布部の表面には空孔部が多数形成されている状態が観察され、良好な風合いであった。
なお、得られたキノコ状多孔質繊維構造体には、見掛密度は0.266g/cm3の繊維束融着領域と見掛密度0.039g/cm3の網状構造領域が存在していた。
また、得られた柄一体型塗布具の保液量は91%であった。
【0041】
実施例2
接着性捲縮繊維として実施例1で用いた芯鞘型複合繊維(クラレ社製「ソフィスタ」、165dtex/48フィラメント)の仮撚加工糸を99000dtexの繊維束(直径3.0mm)とし、開口部の直径3.3mmの筒状体に挿入し、突出長さLが25mmとなるように繊維束の両端を切断して、これを50℃の水中に浸漬し、沸騰状態になるまで加熱し、沸騰状態で2分間処理した。次いで、これを取り出して室温の水に浸漬して形態を固定した。
これによって、長径が40mmであるキノコ状の塗布部が形成された。該塗布部の表面には空孔部が多数形成されている状態が観察され、良好な風合いであった。
なお、得られた球状繊維構造体には、見掛密度0.263g/cm3の繊維束融着領域と見掛密度0.082g/cm3の網状構造領域が存在していた。
また、得られた塗布具の保液量は91%であった。
【0042】
比較例1
ポリエチレンテレフタレート未捲縮糸(165dtex/48フィラメント)を11本と実施例1で用いた接着性捲縮繊維1本とを引き揃えながらカセ繰りして98670dtexの繊維束とした以外は実施例1と同様にして加工したが、キノコ状多孔質繊維構造体は形成されず、本発明の柄一体型塗布具は得られなかった。
【0043】
比較例2
接着性捲縮繊維のかわりにポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸(165dtex/48フィラメント)に変更し、総繊度99000dtexの繊維束を用いたこと以外は実施例2と同様の操作をして処理した。
この操作によって、見掛密度0.266g/cm3の繊維束融着領域と見掛密度0.057g/cm3の網状構造領域を有するキノコ状の構造体は得られたが、保液量が68%であり、満足できる性能のものではなかった。
【0044】
比較例3
ポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸(165dtex/48フィラメント)11本と実施例1で用いた接着性捲縮繊維(クラレ社製「ソフィスタ」、165dtex/48フィラメント)1本を引き揃えてカセ繰りし、98670dtexの繊維束とした以外は実施例1と同様にして加工した。
見掛密度は0.264g/cm3の繊維束融着領域と見掛密度0.061g/cm3のキノコ状多孔質繊維構造体の形は形成されているが、保液量が得られた体積の77%であった。
【0045】
比較例4
実施例1において、開口部直径が4.5mmである円筒体(S=15.9mm2)を用いたこと以外は全く同様の操作をして処理した。
この操作によって、繊維束は膨らんだまま融着するのみで、本発明の目的とするキノコ状多孔質繊維構造体は得られなかった。
なお、繊維束融着領域の見掛密度は0.184g/cm3、網状構造領域の見掛密度は0.055g/cm3であり、保液量は71%であった。
【0046】
比較例5
実施例1において、開口部直径が2.6mmである円筒体(S=5.3mm2)を用いたこと以外は全く同様の操作をして処理しようとしたが、繊維束を中空部に挿入することができなかった。
【0047】
比較例6
実施例1において、筒状体に繊維束を挿入後、突出長さLを6mmとしたこと以外は全く同様の操作をして処理した。
この操作では本発明が目的とするキノコ状多孔質繊維構造体は得られなかった。
繊維束融着領域の見掛密度は0.275g/cm3となり、硬化した構造体となった。
【0048】
比較例7
実施例1において、筒状体に繊維束を挿入後、突出長さLが40mmとなるように切断したこと以外は、全く同様の操作をして処理したが、図5に示した構造のものが得られ、本発明が目的とするキノコ状多孔質繊維構造体は得られなかった。
【0049】
【発明の効果】
本発明により、液体の含みと吐き出し性が良好な液体塗布具として、塗布部と柄部とが一体化した多孔質繊維構造体からなる柄一体型塗布具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の柄一体型塗布具の一例を示す断面模式図
【図2】 網状構造領域の拡大模式図
【図3】 本発明の柄一体型塗布具の他の一例を示す模式図
【図4】 本発明に使用する筒状体の一例を示す模式図
【図5】 筒状体に接着性捲縮繊維を含む繊維束を挿入した状態を示す模式図
【図6】 繊維束の突出長さが本発明の範囲に対して長すぎる場合に得られる構造体を示す模式図
【符号の説明】
1:柄部
2:塗布部
3:繊維束融着領域
4:網状構造領域
5:接着性捲縮繊維
6:融着部
7:芯成分
8:筒状体
9:開口断面
10:繊維束
Claims (7)
- 柄部の少なくとも一端に塗布部を備えてなる柄一体型塗布具であって、該塗布部および柄部は接着性捲縮繊維を10質量%以上含むキノコ状多孔質繊維構造体からなり、該キノコ状多孔質繊維構造体は、接着性捲縮繊維相互の絡合と融着により形成され、塗布部には見掛密度が0.15g/cm3以下の網状構造領域が存在し、柄部には見掛密度が0.25g/cm3以上の繊維束融着領域が存在することを特徴とする柄一体型塗布具。
- 該キノコ状多孔質繊維構造体が、接着性捲縮繊維を10質量%以上および捲縮繊維を10質量%以上含むことを特徴とする請求項1記載の柄一体型塗布具。
- 接着性捲縮繊維が、繊維表面の少なくとも一部にエチレン−ビニルアルコール系共重合体が存在する繊維である請求項1または2に記載の柄一体型塗布具。
- 接着性捲縮繊維が単繊維繊度0.05〜0.5dtexの極細繊維を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の柄一体型塗布具。
- 該キノコ状多孔質繊維構造体の保液量が80%以上である請求項1〜4のいずれか1項に記載の柄一体型塗布具。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の柄一体型塗布具を用いてなる液体塗布用パッド。
- 接着性捲縮繊維を10質量%以上含む繊維束を、その少なくとも一端が筒状体から突出するよう挿入し、次いで水に含浸し、昇温させながら繊維束における接着性捲縮繊維の捲縮を発現させるとともに繊維相互を絡合させ、該接着性捲縮繊維の接着成分同士を部分融着させ、塗布部を形成させると同時に該筒状体により拘束された繊維束を融着硬化して柄部を形成させる柄一体型塗布具の製造方法であって、該筒状体の開口断面積S、繊維束の総繊度Dおよび繊維束の突出長さLが下記式(1)および(2)を満たすことを特徴とする柄一体型塗布具の製造方法。
0.9×10/1000×(D)1/2 ≦ 2(S/π)1/2 ≦ 1.4×10/1000×(D)1/2・・・(1)
4(S/π)1/2 ≦ L ≦ 24(S/π)1/2・・・(2)
S:筒状体の開口断面積(mm2)
D:繊維束の総繊度(dtex)
L:繊維束の突出長さ(mm)
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