JP4124941B2 - 異方性多孔質繊維成型体およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は不定形のセル状空隙を有する新規な多孔質繊維成型体に関し、さらに詳しくは該不定形のセル状空隙が方向性をもって配置された構造を有する新規な多孔質繊維成型体に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、プラスチックスの発泡体や、セルローズ系樹脂を湿式成型した多孔質成型体は公知であるが、いずれも樹脂状の液体に発泡剤を添加して形成されたものであるため、セル状空隙部の存在は認められるが、繊維状の構造は見出せない。
セル状空隙部を有する多孔質繊維成型体は従来知られていなかった。本出願人は、新規なセル状空隙部を有する多孔質繊維成型体に関して発明を行ない、特願平11−293679号および特願平11−316483号を出願している。これらの発明では、セル状空隙部は繊維成型体にランダムに配置され、その大きさと配置に特別の規則性はない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、多数の不定形のセル状空隙が方向性をもって配置された異方性多孔質繊維成型体とその製造方法を提供することである。その他の目的は以下の記載から理解される。
【0004】
【課題を解決するための手段】
即ち第1の発明は、湿熱接着性繊維を10〜100重量%含有し、該湿熱接着性繊維が熱融着してなる多孔質繊維成型体であり、繊維が密に配置される部分から方向性を持って漸次拡大する多数の不定形セル状空隙部を有する異方性多孔質繊維成型体である。
また第2の発明は、上記の繊維が密に配置される部分が繊維成型体の中心部で、不定形セル状空隙部がほぼ放射状に漸次拡大して形成される球状の異方性多孔質繊維成型体である。
【0005】
第3の発明は、上記の繊維が密に配置される部分が繊維成型体の中心線部で、不定形セル状空隙部がほぼ断面円周方向へ漸次拡大して形成される円柱状の異方性多孔質繊維成型体である。
第4の発明は、上記の繊維が密に配置される部分が繊維成型体の1平面部で、不定形セル状空隙部がほぼ線状に漸次拡大して形成されるシート状の異方性多孔質繊維成型体である。
第5の発明は、上記の多孔質繊維成型体の表面に多数のセル状空隙部が開口して形成される球形、円柱状またはシート状の海綿様多孔質繊維成型体である。
また第6の発明は、湿熱接着性繊維を10〜100重量%含有する繊維束をその任意の部位で拘束し、該繊維束に水を含浸し、次いで該繊維束内に気泡を生じつつ湿熱処理を施した後、該繊維束を冷却することを特徴とする異方性多孔質繊維成型体の製造方法である。
【0006】
【発明の実施の態様】
本発明で使用する多孔質繊維成型体は、湿熱接着性繊維を含有する。本発明でいう湿熱接着性繊維とは約95〜100℃の熱水で軟化して、自己接着または他の繊維に接着するポリマー成分を含有する繊維である。 この様なポリマーの一例として、エチレンビニルアルコール系共重合体を挙げることができる。エチレンビニルアルコール系共重合体とは、ポリビニルアルコールにエチレン残基が10モル%以上、60モル%以下共重合されたものを示す。とくにエチレン残基が30モル%以上、50モル%以下共重合されたものが、湿熱接着性の点で好ましい。またビニルアルコール部分は95モル%以上の鹸化度を持ものである。エチレン残基が多いことにより、湿熱接着性を有するが熱水溶解性はないという、特異な性質が得られる。重合度は必要に応じて選択できるが、通常は400から1500程度である。目的とする自立性多孔性繊維成型体とした後、染色性付与または繊維改質などの後加工のために、エチレンビニルアルコ−ル系共重合体を部分架橋処理することもできる。
他のポリマーとしては、アクリルアミドを1成分とする共重合体、ポリ乳酸などを挙げることができる。
【0007】
本発明の湿熱接着性繊維としては、該共重合体からなる繊維でもよいし、他の熱可塑性重合体との複合繊維や、他の熱可塑性重合体へ該共重合体をコートした繊維でもよい。該熱可塑性重合体としては耐熱性、寸法安定性等の点で融点がエチレンビニルアルコール系共重合体より高いものが必要であり、例えば150℃以上の結晶性熱可塑性重合体が好ましく、具体的にはポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン等を挙げることができる。
【0008】
ポリエステルとしてはテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンー2、6ージカルボン酸、フタル酸、α,βー(4ーカルボキシフェノキシ)エタン、4,4ージカルボキシジフェニル、5ーナトリウムスルホイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;アゼライン酸、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3ープロパンジオール、1,4ーブタンジオール、1,6ーヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンー1,4ージメタノール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のジオールからなる繊維形成性のポリエステルを挙げることができ、構成単位の80モル%以上がエチレンテレフタレート単位であることが好ましい。
ポリアミドとしてはナイロン6、ナイロン66、ナイロン12を主成分とする脂肪族ポリアミド、半芳香族ポリアミドを挙げることができ、少量の第3成分を含有するポリアミドでもよい。
【0009】
エチレンビニルアルコール系共重合体と他の熱可塑性重合体からなる複合繊維において、複合比は前者:後者(重量比)=10:90〜90:10、とくに30:70〜70:30であることが、紡糸性の点で好ましい。また、複合形態は従来公知の複合形態であれば特に限定はなく、芯鞘型、偏心心鞘型、多層貼合型、サイドバイサイド型、ランダム複合型、放射状貼合型、微細繊維分割型等を挙げることができる。これらの繊維の断面形状は中実断面形状である丸断面や異型断面形状に限らず、中空断面形状等、種々の断面形状とすることができる。
微細繊維分割型繊維を用いた多孔質繊維成型体は、0.1デニール以下より好ましくは0.01デニール以下の単繊維からなる繊維成型体となるので、その風合いは特に優れており、人体の清掃材、化粧用材、精密機械や貴金属製品の清掃材などに有用である。 また他の熱可塑性繊維にエチレンビニルアルコール系共重合体をコーテイングした繊維においては、該共重合体が他の繊維の表面の1/4以上、好ましくは1/3以上を被覆した繊維である。
【0010】
本発明の異方性多孔質繊維成型体は上記の湿熱接着性繊維を10〜100重量%含むことが必要であり、好ましくは50〜100重量%である。湿熱接着性繊維が10重量%を下回ると繊維の接着が不十分となり、またセル状空隙部の形成が不十分となる。
本発明の異方性多孔質繊維成型体は任意の形状にすることができ、その具体例は、球状、円柱状、シート状などである。本発明はその内部構造に特徴を有するもので、外観形状には制限されない。以下代表的な形状の成型体の製造方法について説明する。
【0011】
球状の成型体は、5cm程の長さの紐状に収束させた湿熱接着性繊維を含む繊維束を、長さ方向に2分する位置に湿熱接着性繊維または別の糸を巻き付けて拘束した後、これを水を満たした容器に浸漬して高周電磁波を照射し、該繊維束の内部から気泡が生じる状態で加熱することにより球状の異方性多孔質繊維成型体が得られる。
【0012】
また円柱状の成型体は、湿熱接着性繊維を含む長さ5cm程の繊維束を多数用意し、各繊維束のほぼ中点を湿熱接着性繊維または別の繊維により拘束した連続繊維束条を作成する(通称モ−ル糸またはシュニ−ル糸と呼ばれることがある。)。この繊維束条を上記と同様に高周電磁波を照射して該収束体の内部から気泡が生じる状態で加熱することにより、円柱状の異方性多孔質繊維成型体が得られる。
【0013】
さらにシート状の成型体は、湿熱接着性繊維を含む繊維糸状をカットパイルとし、別の糸条を地糸としてボアニット地を編立てる。得られた編地を前記と同様に高周電磁波を照射して該編地の内部から気泡が生じつつ加熱することにより、シ−ト状の異方性多孔質繊維成型体を得ることができる。
さらに、上記円柱状成型体に使用したモ−ル糸状の連続繊維束条を数本または数十本並列して、これらを糸で固定化してシ−ト状にした後、同様に高周電磁波で湿熱処理してもシ−ト状の成型物を得ることができる。
【0014】
さらに、モ−ル糸状の連続繊維束条を渦巻き状にして高周電磁波で湿熱処理してもシート状の異方性多孔質繊維成型体が得られる。
また、拘束された単位繊維束または連続繊維束条を適当な型枠に吹き込むかまたは詰め込んで、高周電磁波で湿熱処理することにより、型枠に対応した任意の3次元的形状の異方性多孔質繊維成型体を得ることも可能である。
上記のいづれの形状の異方性多孔質繊維成型体の構造においても、繊維が密に配置される部分から方向性を持って漸次拡大する多数の不定形セル状空隙部を有している。
【0015】
本発明のセル状空隙部は、多孔質繊維層の内部に構成される空隙部で、その形状は球形から雲型などの各種の不定形を含み、その大きさも長径約1mmから約30mmにわたり、より好適には約2mmから約10mmの広い分布を有する。該セル状空隙部は独立または連続した形状であり、試料またはその拡大写真を目視して得られる形状であり、微視的に見れば、数十センチにわたり連続するセル状空隙部もあり得る。成型体の空隙率は湿熱接着性繊維量、繊維の集積密度、湿熱処理条件などにより任意に設定できる。水銀圧入法による空隙率で約70%以上とすることができ、必要により約80%以上とすることもできる。
【0016】
本発明の成型体は微細に観察すると、海綿の形状に類似している。即ち、セル状空隙部の一部は成型体の表面に開口し、内部構造は融着した繊維の網状構造を有している。これを天然の海綿と比較すると、表面の開口と内部のセル状空隙部および繊維の網状構造が、海綿のそれらと類似している。 得られた球状、円柱状およびシ−ト状の異方性多孔質繊維成型体は、そのままでも外観的に天然の海綿に類似しており、それを海綿代替品として使用できる。また必要によりこれを適当にカットして製品としても良い。
【0017】
以下、図によって本発明の異方性多孔質繊維成型体の前駆体および最終製品の構造について詳細に説明する。
図1は本発明の球状の異方性多孔質繊維成型体の前駆体の一例を示したモデル図である。長さを揃えた湿熱接着性繊維1の繊維束2が湿熱接着性繊維1を等分する位置3で別の繊維4で拘束された前駆体を示す。
図2は、図1に示した前駆体から得られた、球状
の異方性多孔質繊維成型体の部分切断面図である。繊維は、拘束された中心5に緻密な部分を有し、そこから放射状にセル状空隙部6が、表面に向かって漸次拡大しながら形成されている。セル状空隙部の一部は、表面で開口している。成型体の他の部分は繊維が融着した繊維網状構造である。繊維は捲縮糸の方が嵩高となり球形を形成しやすく、また繊維量が少ないと、球形でなく円盤状になり易い。繊維束が長くなると、より多くの繊維が必要となる。
【0018】
図3は本発明の円柱状の異方性多孔質繊維成型体の前駆体の1例を示す模式図である。この例はモップやはたきのパイルの形成方法として公知のフレンジ法で作成したもので、複数の繊維束2を別の糸7で編んで拘束した繊維束条である。
図4は、図3の繊維束条から得られる円柱状の異方性多孔質繊維成型体の部分切断面図である。
繊維成型体の内部構造は、中心に繊維束の拘束により形成される繊維の緻密部分が線状に配置され、その中心線に対して直角に切った円形断面において、不定形セル状空隙部6がほぼ円周方向へ漸次拡大して形成される。この構造は、単位繊維束の内部でセル状空隙部が形成されるためと考えられる。成型体の他の部分は、図2と同様な繊維網状の構造である。
【0019】
図5は本発明のシート状の異方性多孔質繊維成型体の前駆体の1例を示す断面模式図である。湿熱接着性繊維の繊維束2が地糸8で拘束されたカットパイルシート地の断面構造を示す。図6は、図5のシート地から得られるシート状の異方性多孔質繊維成型体の断面モデル図である。繊維は底部の平面に密に配置され、セル状空隙部はその密な部分から多孔質繊維層の表面に向いてほぼ線状に漸次拡大しながら形成されている。これは底面に多数立設された繊維束において、拘束部が底面に位置し、表面に向いて立設した繊維束内にセル状空隙部6が形成されるためと考えられる。
【0020】
図7は天然海綿の網状構造を示す部分拡大図である。海綿は繊維状骨格9から構成され、海綿内部にセル状空隙部を有する。繊維状骨格の多くは五角形の網状構造を示している。
図8は本発明の異方性多孔質繊維成型体の構造を示す拡大モデル図である。即ちセル状空隙部以外の繊維融着部は、湿熱接着性繊維10が多数の接点および交点で相互に融着接合している状態を示す。図7および図8を比較すると、本発明の成型体は明確な五角形の構造を有さないが、それに類似した繊維状骨格を有しており、この構造と方向性を持って配置されるセル状空隙部を併有することから、海綿様の形態を示すと考えられる。
【0021】
さらに、本発明の異方性多孔質繊維成型体は短繊維をランダムに吹き込みまたは詰め込んで成型されたものではなく、単位繊維束で拘束される部分を有するから短繊維の一部が表面または内部から脱落することがないか極めて少ないことも、特徴の1つである。
本発明の異方性多孔質繊維成型体と海綿を性状面で比較すると、海綿の比重は0.01から0.04g/cm3であるのに対して、本発明の異方性多孔質繊維成型体は0.06〜0.15g/cm3であり、10倍程度高めではあるが、これは本発明の異方性多孔質繊維成型体には繊維の高密度な部分が存在するためであり、セル状空隙部含有層を比較すれば海綿の比重に近いものである。
【0022】
以下、本発明の異方性多孔質繊維成型体の製造方法を詳細に説明する。
本発明は上述した前駆体を、以下の処理により繊維成型物とする。
湿熱接着性繊維を含有する前記前駆体に水を含浸させ、該含水前駆体を加熱し、前駆体内で気泡を生ずる状態で湿熱処理することにより、前駆体内およびその表面に不定形のセル状空隙部を多数形成させることができる。該処理では、加熱下で気泡を発生するに十分な量の水の存在が必要である。気泡により前駆体にセル状空隙部が形成される。ところで前駆体内で気泡が発生し、構成繊維が移動しても、その構造が前駆体内で固定されなければ、セル状空隙部は形成されない。前駆体内にセル状空隙部を形成させるために、湿熱接着性繊維が必要である。即ち、気泡を含んだ状態で、湿熱接着性繊維が加熱融着され、セル状空隙部が形成され固定される。
【0023】
本発明の方法では、湿熱接着性繊維は繊維束に整束され、繊維束の1個所で拘束されるから、繊維束内の気泡は自由に成長できず、拘束される部分では小さな気泡が小さいセル状空隙部を形成し、繊維束の自由端に向けて漸次大きな気泡が生じて大きいセル状空隙部を形成する。その結果、繊維が密に配置される部分から方向性をもって漸次拡大する多数の不定形セル状空隙部をもつ構造が形成される。
この基本的構成を利用して、単位繊維束の集積を、単独、線状配列、面状配列などにして、球形、円柱状、シート状の多孔質繊維成型体を製造することができる。またこれらの構成を複合したり、他の繊維布帛、不織布、糸状体、フィルムなどと複合した成型体を製造することもできる。
【0024】
前記前駆体内に気泡が発生するために要する加熱は、加熱雰囲気の気圧に依存し、通常1気圧であれば約100℃である。加熱を減圧下または加圧下で行なえば、該気圧に応じて沸騰温度が変動する。セル状空隙部の形成のためには、前駆体が充分な気泡存在下で加熱されることが重要である。含水した前駆体の加熱は、スチーム吹き込みか、高周電磁波または減圧加熱機(真空セット機)による加熱が好ましい。
加熱温度はまた湿熱接着性繊維の融着温度と関連する。加熱温度が湿熱接着性繊維の融着温度またはそれ以上10℃未満の温度となることが好ましい。湿熱処理時間は該前駆体の量、繊維の融着の程度等により調整することが出来る。
【0025】
湿熱接着性繊維が融着した後に、周知の方法で繊維成型体を冷却し、多孔質繊維成型体の構造を固定する。湿熱処理後の繊維成型体は熱水を含有しているから、冷水中に浸漬するか、冷水シャワーによる冷却が好ましく、冷風による冷却は効率が低い。充分に冷却する前に繊維成型体を圧縮すると、セル状空隙部の変形が生ずる恐れがある。一方、圧縮処理を利用して、セル状空隙部の調整を行なうことも可能である。かかる簡単な方法で、繊維成型体の多孔質構造を調整できるのも、本発明の利点の一つである。
本発明は、セル状空隙部を形成するのに、有機溶媒や発泡性樹脂を一切必要としない特長を有する。従って、環境および作業者への負荷や負担が極めて少なく、製造コストを低減することもできる。該利点は実用上大きな効果である。
【0026】
本発明の多孔質繊維成型体は、食器、身体、車輌、自動車、窓ガラス等の清掃材用繊維成型物、止血用綿、生理用具等の衛生材用または医療用繊維成型物、化粧用材、さらには工業用途のドレン材、ワイパー、エアーフィルター、液体フィルター、液体収蔵体、吸音材、緩衝材、断熱材などに使用することができる。
【0027】
【実施例】
以下実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。また、実施例ではすべて湿熱接着性繊維を100%使用した例についてのみ記載してあるが、異素材を混入させても良いことはもちろん、湿熱接着性繊維のデニ−ル、捲縮形状、断面形状を違えて混入させてもよいことはもちろんである。
【0028】
実施例1
微粒子シリカを3重量%含有したポリエチレンテレフタレ−ト[フェノ−ル/テトラクロロエタン等重量混合溶媒中、30℃で測定した固有粘度=0.68]を芯成分とし、鞘成分として、エチレン含有量40モル%、MI=10のエチレン−ビニルアルコ−ル系重合体を用い、芯鞘複合繊維を得た。(芯/鞘比率=50/50、150デニ−ル/48フィラメント)。
この繊維を用いて仮撚数2350T/M、1段ヒ−タ−温度120℃、2段ヒ−タ−温度135℃により仮撚加工を施して仮撚加工糸を得た。
上記の仮撚糸を収束させて1万デニ−ルの収束体とし、これを長さ5cmにカットする。カットした繊維束の長さを等分する位置を前記の湿熱接着性の仮撚加工糸で強く縛り、両端がカットされた梵天状の繊維束を得る。
液体を収容できる円筒の容器に前記の繊維束とこれが十分に浸る常温の水を入れ、2450MHz、1KWの高周電磁波を照射し気泡発生状態で約1分間熱処理した後、冷水を用いて成型物を冷却し、ついで遠心脱水して球形の異方性多孔質繊維成型体を得た。得られた異方性多孔質繊維成型体の比重は0.11g/cm3で、表面状態から多孔性構造体であることが確認出来、さらに断面を見ると、中心部に密度の高い硬い部分を有し、表面へ向かって、セル状空隙が放射状に配列しており、さらにそのサイズも表面にいくほど大きくなっていることが確認出来た。
【0029】
実施例2
実施例1で使用した湿熱接着性繊維150デニ−ルの仮撚糸を100本合糸して15000デニ−ルとした後、カット長3cmとなるようフレンジ加工を施した。液体を収容できる直方体の容器に、前記のフレンジ加工した前駆体と水を入れ、実施例1と同様に高周電磁波を照射し加熱すると、繊維束から気泡が激しく生じるとともに、糸の捲縮が発現して、海綿様の円柱状の異方性多孔質繊維成型体が得られた。
得られた異方性多孔質繊維成型体の比重は0.15g/cm3であり、表面に向けて漸次拡大するセル状空隙部を有する内部構造であった。手持ちの感じはソフトで、洗剤をつけると泡立ち性は非常に良好であった。
【0030】
実施例3
実施例1で使用した湿熱接着性繊維150デニールの仮撚糸を2本合糸して300デニールの繊維束(カットパイル)とし、これとポリエステル150デニール仮撚糸を地糸として丸編ボアに編立した。
前記編地を直径10cmの円形に裁断し、これを円筒容器に入れ、次いでこれが充分に浸る水を入れて高周電磁波を照射した。
高周電磁波の照射加熱により、編地のカットパイル部から気泡が激しく生じると共にカットパイル糸の捲縮が発現し、異方性多孔質の構造体が形成された。
これを冷水に浸して形態を固定化した後、遠心脱水してシ−ト状の異方性多孔質繊維形成体を得た。得られたシ−ト状の異方性多孔質繊維形成体について、地糸部をカットパイル部から切断分離して、カットパイル部の比重を測定すると、0.09g/cm3であり、セル状空隙部のサイズは地糸部から表面に向かって大きくなっていた。
【0031】
比較例1
実施例1で使用した湿熱接着性繊維150デニ−ルの仮撚糸を7%とレギュラ−ポリエステル150デニ−ルの仮撚糸を93%の比率で収束させて1万デニ−ルの繊維束とし、これを長さ5cmにカットする。カット品の長さを等分する位置を前記の湿熱接着性の仮撚加工糸で強く縛り、両端がカットされた梵天状の繊維束を得る。
液体を収容できる円筒容器に前記の繊維束とこれが十分に浸る常温の水を入れ、高周電磁波を照射し加熱処理した後、冷水を用いて成型物を冷却したが、単に仮撚糸の捲縮発現が生じただけで、セル状空隙部を有する成型体は得られなかった。
【0032】
比較例2
実施例1で使用した湿熱接着性繊維150デニ−ルの仮撚糸を収束させて40万デニ−ルとした後、スタッフィングボックスで弱い捲縮を付与した後、64mmにカットして湿熱接着性繊維のカットファイバ−を得た。
上記の湿熱接着性繊維のカットファイバ−にカ−ディングを施して得られたカ−ドスライバ−を円筒形の型枠に詰め込み、これが浸るのに十分な水を入れて同様に高周電磁波照射し、発泡状態で1分間熱処理した後、冷水を用いて成型物を冷却固化し、ついで遠心脱水して繊維成型体を得た。
得られた繊維成型体はセル状空隙部を有するが、そのサイズ配列に異方性はなく、層状にランダムに配列しており、成型体の表面に海綿のような孔構造は認められなかった。得られた繊維成型体の比重は小さく、0.06g/cm3であった。
【0033】
比較例3
実施例1で使用した湿熱接着性繊維150デニ−ルの仮撚糸をエアサッカ−を用いて糸を吸引しながら、吐出口から円筒型の型枠に充填し、次いでこれが浸る十分な水を注入した。
これに高周電磁波を照射して気泡が生じるまで照射し続け、次いで冷水に浸して形態を固定化した後、遠心脱水して繊維成型体を得た。
得られた繊維成型体は糸の絡まりによる凸凹のある表面を有し、内部にセル状空隙部を有する。しかしセル状空隙部のサイズと配列に異方向性はなく、不規則に存在しており、また特に高密度の部分もない点で、本発明の異方性多孔質繊維成型体とは異なる。
【0034】
【発明の効果】
本発明により、ワイパー、エアーフィルター、液体フィルター、液体収蔵体、吸音材、緩衝材、断熱材などに適した、多数の不定形のセル状空隙が方向性をもって配置された異方性多孔質繊維成型体が提供できる。特に高級な天然の海綿様の構造を有する繊維成型体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の球状の異方性多孔質繊維積層体を製造するための前駆体の1例を示す模式図。
【図2】本発明による球状の異方性多孔質繊維積層体の1例の構造を示す部分切断模式図。
【図3】本発明の円柱状の異方性多孔質繊維成型体を製造するための前駆体の1例を示す模式図。
【図4】本発明による円柱状の異方性多孔質繊維積層体の1例の構造を示す部分切断模式図。
【図5】本発明のシート状の異方性多孔質繊維成型体を製造するための前駆体の1例を示す断面の模式図。
【図6】本発明によるシート状の異方性多孔質繊維積層体の1例の構造を示す断面模式図。
【図7】天然の海綿の網状構造を示す模式図。
【図8】本発明による異方性多孔質繊維成型体の融着繊維構造を示す模式図。
【符号の説明】
1:湿熱接着性繊維、2:湿熱接着性繊維の繊維束、3:繊維束が拘束される位置、4:繊維束を拘束するための繊維、5:緻密な中心、6:セル状空隙部、7:繊維束を拘束するための糸、8:繊維束を拘束する地糸、9:繊維状骨格、10:湿熱接着性繊維、
Claims (6)
- 湿熱接着性繊維を10〜100重量%含有し、該湿熱接着性繊維が熱融着してなる多孔質繊維成型体であり、繊維が密に配置される部分から方向性を持って漸次拡大する多数の不定形セル状空隙部を有することを特徴とする異方性多孔質繊維成型体。
- 該繊維が密に配置される部分が繊維成型体の中心部で、不定形セル状空隙部がほぼ放射状に漸次拡大して形成される請求項1に記載される球状の異方性多孔質繊維成型体。
- 該繊維が密に配置される部分が繊維成型体の中心線部で、不定形セル状空隙部がほぼ断面円周方向へ漸次拡大して形成される請求項1に記載される円柱状の異方性多孔質繊維成型体。
- 該繊維が密に配置される部分が繊維成型体の1平面部で、不定形セル状空隙部がほぼ線状に漸次拡大して形成される請求項1に記載されるシート状の異方性多孔質繊維成型体。
- 該多孔質繊維成型体の表面に多数のセル状空隙部が開口して形成される請求項1ないし請求項4のいずれかに記載される海綿様多孔質繊維成型体。
- 湿熱接着性繊維を10〜100重量%含有する繊維束をその任意の部位で拘束し、該繊維束に水を含浸し、次いで該繊維束内に気泡を生じつつ湿熱処理を施した後、該繊維束を冷却することを特徴とする異方性多孔質繊維成型体の製造方法。
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JP2000040812A JP4124941B2 (ja) | 1999-12-24 | 2000-02-18 | 異方性多孔質繊維成型体およびその製造方法 |
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