JP4522592B2 - 球状繊維構造体およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は球状繊維構造体に関し、さらに詳しくは、機能化された表面構造を有する球状繊維構造体およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、医療分野、生活資材分野等の各種分野で球状の繊維構造体が利用されている。例えば布団の中綿として、主体となるポリエステル短繊維とポリエステル系バインダー短繊維とを併用して高速気流下で攪拌して玉状綿前駆体とすると同時に乾熱処理してポリエステル短繊維とポリエステル系バインダー短繊維とが点接着したポリエステル玉状綿が提案されている。(特開昭61−125377号公報)
また建築分野では、粉体粒子とアラミド繊維のような高強力繊維とを含む材料を攪拌しながらアルコールミストを噴霧することにより立毛状となった基材粒子を形成して配合剤として使用することが提案されている。(特開2000−153145号公報)
しかしながら、用途分野によっては、上述のような繊維構造体が使用できない場合があり、多様な用途に応用できる球状繊維構造体が期待されていた。
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述の問題を解決するものであり、繊維の交絡構造とセル状空隙部を併有する新規な球状繊維構造体を提供することにある。
【0003】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、湿熱接着性捲縮ステープル繊維を60〜100質量%と熱可塑性捲縮ステープル繊維を0〜40質量%含む球状繊維構造体であって、該球状繊維構造体内部に、多数のセル状空隙部が単独でまたは複数個が部分的に連なった状態で存在しており、さらに該球状繊維構造体を構成する繊維の少なくとも一部が湿熱接着性捲縮ステープル繊維によって熱接着されていることを特徴とする球状繊維構造体である。
【0004】
さらに本発明は、単繊維繊度が5dtex以下、カット長が0.5〜20mmである湿熱接着性捲縮ステープル繊維を60〜100質量%とカット長が0.5〜20mmの熱可塑性捲縮ステープル繊維を0〜40質量%含む混合ステープル繊維を金網上に展開して、水をミスト状に噴霧しながら金網上で転動、回転させることにより造粒した後、該造粒物を水に含浸し、さらに該含水造粒物内に沸騰による気泡を生じさせ、該造粒物内部に多数のセル状空隙部を形成せしめると同時に湿熱接着性繊維によって該造粒物を構成する繊維の少なくとも一部を熱接着することを特徴とする球状繊維構造体の製造方法である。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の球状繊維構造体に含まれる湿熱接着捲縮ステープル繊維とは、約95〜100℃の熱水で軟化して、自己接着性または他の繊維に接着するポリマー成分を含有する捲縮ステープル繊維である。
該捲縮ステープル繊維の捲縮形態は、平面的なジグザグ状の捲縮や、仮撚による立体捲縮、サイドバイサイド型複合繊維、偏心芯鞘型複合繊維、非対称冷却繊維などによって発現するコイル状の立体捲縮等、特に限定されるものではないが、球状繊維構造体の嵩高性、柔軟性、通気性の観点から立体捲縮を有している繊維であることが好ましく、さらにこれらは一本一本の繊維が熱処理により収縮することと丸みをおびた変形を実現する点で特に仮撚捲縮繊維が好ましく用いられる。
一方、生糸のようなストレートヤーンでは上記の三次元ランダムコイルの発現は得られず、接着部が点ではなくて塊状となり、風合も硬くなる。また、湿熱接着性を有していても、熱処理で捲縮が消失するような湿熱接着性捲縮ステープル繊維は、本発明の効果が得られない結果となり好ましくない。また、湿熱接着性捲縮ステープル繊維が接着成分100質量%からなる単独糸(いわゆるホモフィラメント)をレギュラー捲縮加工糸と混合しても目標とする構造体を得ることは困難である。
【0006】
本発明に用いる湿熱接着性捲縮ステープル繊維は、カットする前の捲縮率が5%以上であることが好ましい。捲縮率が5%未満であると、本発明の球状繊維構造体とする際、造粒工程において繊維間での絡まりが弱くなるため造粒が不十分となるばかりか、後述するセル状空隙部の形成による空隙率が不十分になる場合がある。
すなわち、捲縮を有しないまたは捲縮が発現しない湿熱接着性のステープル繊維では、前者においては後述する造粒方法において造粒が不十分であり、後者においては空隙を有する繊維構造体が得られない。
なお、捲縮率の上限は特に限定されないが、捲縮率が高すぎるとカット工程でのカット長の均一性が悪くなるため捲縮率は30%以下が好ましく、さらに好ましくは10〜30%である。
【0007】
該湿熱接着性繊維を構成する湿熱接着性ポリマーとしては、例えば、ナイロン12またはアクリルアミドを一成分とする共重合体、ポリ乳酸、エチレン−ビニルアルコール系共重合体などを挙げることができるが、中でもエチレン−ビニルアルコール系共重合体が好ましく用いられる。エチレン−ビニルアルコール系共重合体としては、ポリビニルアルコールにエチレン残基が10〜60モル%共重合されたものが好ましく、特にエチレン残基が30〜50モル%共重合されたものが、湿熱接着性の点で好ましい。また、ビニルアルコール部分は95モル%以上の鹸化度をもつものが好ましい。エチレン残基が多いことにより、湿熱接着性を有するが熱水には溶解しにくいという、特異な性質を有する。重合度は特に限定されないが、400〜1500程度が好ましい。
本発明においては、目的とする球状繊維構造体とした後に、染色性付与または繊維改質などの後加工のため、エチレン−ビニルアルコール系共重合体を部分架橋処理することができる。
【0008】
湿熱接着性捲縮ステープル繊維としては、上記の共重合体単独からなる繊維でもよいし、他の熱可塑性重合体との複合繊維や、他の熱可塑性重合体からなる繊維に該共重合体をコートした繊維でもよい。他の熱可塑性重合体としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン等を挙げることができるが、耐熱性、寸法安定性等の点で融点がエチレン−ビニルアルコール系共重合体より高いポリエステル、ポリアミド等が好ましく用いられる。
【0009】
ポリエステルとしてはテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、フタル酸、α,β−(4−カルボキシフェノキシ)エタン、4,4’−ジカルボキシジフェニル、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、アゼライン酸、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のジオールからなる繊維形成性のポリエステルを挙げることができ、構成単位の80モル%以上がエチレンテレフタレート単位であることが好ましい。
【0010】
ポリアミドとしてはナイロン6、ナイロン66、ナイロン12を主成分とする脂肪族ポリアミド、半芳香族ポリアミドなどを挙げることができ、少量の第三成分を含有するポリアミドでもよい。
【0011】
本発明において、球状繊維構造体を構成する繊維として、エチレン−ビニルアルコール系共重合体と他の熱可塑性重合体からなる複合繊維を用いる場合は、複合比は前者:後者(質量比)=10:90〜90:10、特に30:70〜70:30であることが紡糸性の点から好ましい。また、複合形態については特に限定されず、従来公知の複合形態を採用することができるが、エチレン−ビニルアルコール系共重合体が繊維表面の少なくとも一部に存在していることが必要であり、50%以上露出していることが好ましい。具体的な複合形態としては、例えば、芯鞘型、偏心芯鞘型、多層貼合型、サイドバイサイド型、ランダム複合型、放射状貼合型、微細繊維発生型等を挙げることができる。これらの繊維の断面形状は中実断面形状である丸断面や異型断面形状に限らず、中空断面形状等、種々の断面形状とすることができる。
【0012】
また、他の繊維の表面にエチレン−ビニルアルコール系共重合体を被覆した繊維においては、該共重合体が他の繊維の表面を1/3以上被覆していることが好ましく、さらに好ましくは1/2以上である。
【0013】
本発明に用いる湿熱接着性捲縮ステープル繊維のカット長は、0.5〜20mmである。カット長が20mmを超えると後述する造粒工程において、緻密な球状体が得られない。一方、カット長が0.5mmを下回ると球状体が得られない。造粒をコントロールするための好ましいカット長は0.5〜5mmである。
なお、カット長は揃えて混合することが造粒性の点から好ましいが、混合されたステープル繊維のカット長が異なることがあっても構わない。より好ましくは、カット長の差は5mm以下である。
カット長の差が5mmよりも超えると造粒した際に、長いカット長が該造粒物に含まれないことがあり、また粒径の分級の際に不純物として交じることがあり、製品品質の低下を招く場合がある。
【0014】
また、本発明に用いる湿熱接着性捲縮ステープル繊維の単繊維繊度は5dtex以下である。5dtexを超えると綿の絡まりが強くなり、後述する造粒時の歩留まりが悪くなる。
特に、洗浄体用に使用する場合には、3dtex以下が好ましく、さらに好ましくは1dtex以下である。また、下限値は0.1dtex以上が好ましい。
【0015】
一方、球状繊維構造体を構成する湿熱接着性捲縮ステープル繊維以外の繊維は熱可塑性捲縮ステープルであれば特に限定されず、目的に応じて選定することができる。これらの繊維は、捲縮が付与されていることが必要である。捲縮を有しない湿熱接着性捲縮ステープル繊維繊維の場合には後述する造粒工程において排除される結果となる。かかる捲縮ステープル繊維の捲縮率は、湿熱接着性捲縮ステープル繊維と同等の捲縮率を有することが好ましい。また、熱可塑性捲縮ステープル繊維の単繊維繊度は、5dtex以下が好ましく、さらに好ましくは、0.1〜3dtexである。
【0016】
また、該熱可塑性捲縮ステープルのカット長は、0.5〜20mmであり、好ましくは、0.5〜10mmである。カット長が0.5mm未満であると後述する造粒工程において緻密な球状体が得られない。一方、カット長が0.5mmを下回ると球状体が得られない。
【0017】
本発明の球状繊維構造体は、上記の湿熱接着性捲縮ステープル繊維を60〜100質量%含むことが必要であり、好ましくは90〜100質量%であり、さらに好ましくは100質量%である。湿熱接着性捲縮ステープル繊維が60質量%を下回ると繊維間の接着性が不十分となり、また後述するセル状空隙部の形成が不十分となる。
【0018】
また、該球状構造体は、熱可塑性捲縮ステープル繊維を0〜40質量%含むことが必要であり、好ましくは0〜10質量%である。熱可塑性捲縮ステープル繊維が40質量%を超えると繊維感の接着性が不十分となり、目的とする繊維構造体が得られない。
【0019】
本発明の球状繊維構造体は、該構造体を構成する繊維の少なくとも一部が湿熱接着性捲縮ステープル繊維によって熱接着されている点に特徴を有する。本発明にいう球状とは、真球、楕円球いずれでもよく、用途に応じて選定することができる。本発明の構造体のサイズは、目的に応じて設定すればよいが、特に、ろ過用平膜表面、チューブ内面の洗浄材に用いる場合は、その長径を0.5〜30mmにするのが好ましい。なお、本発明の球状繊維構造体とした後に、目的に応じて該球状繊維構造体を適当なふるいを用いて分級することができる。
【0020】
該球状繊維構造体は、前記湿熱接着性捲縮ステープル繊維を含む混合綿を所定のサイズの造粒物(以下、前駆体と称する場合がある。)に形成させる。次いで、湿熱接着性捲縮ステープル繊維の湿熱接着性を利用して該前駆体内の繊維間を接着固定化させ、次いで冷却することにより球状繊維構造体が得られる。
【0021】
本発明では湿熱接着性捲縮ステープル繊維と水による加熱を組合せることにより、熱水による繊維の熱接着を起こし、球状繊維構造体を形成するのである。
該前駆体の加熱は、スチーム吹き込み、高周電磁波などにより加熱することもできる。
【0022】
また、本発明の球状繊維構造体は、加熱における沸騰水気泡により湿熱接着性捲縮ステープル繊維の接着と同時にセル状空隙部を有する均質な多孔質繊維構造体とすることも可能である。本発明にいうセル状空隙部とは、球状繊維構造体を構成する繊維の繊維間空隙とは明確に区別できる大きさをもつ空洞状の空間であり、その大きさは長径約0.3mm〜3mmにわたり広い分布を有する。セル状空隙部は球状繊維構造体内において、単独でまたは複数個が部分的に連なった状態で存在し、該セル状空隙部の独立または連続の形状は厳密なものではなく、試料またはその拡大写真を目視して見られる形状であり、微視的に見れば、数ミリに亘り連続するセル状空隙部もあり得る。
【0023】
該繊維構造体の空隙率は湿熱接着性捲縮ステープル繊維の量、繊維の集積密度、湿熱処理条件などにより任意に設定できるが、嵩比重と使用繊維比重から求められる空隙率は約80%以上が好ましく、さらに好ましくは90%以上である。該空隙部は発泡剤等を全く使用せずに形成されるものであり、従来の繊維構造体にはない構造である。
【0024】
また、セル状空隙部は、該構造体中に多数分布するとともに該集積体の表面にも存在する場合がある。表面上のセル状空隙部は、表面に凹部となって存在し開口部を形成する。
【0025】
本発明は、セル状空隙部を形成するのに、有機溶媒や発泡性樹脂を一切必要としない点にも特徴を有する。従って、環境および作業者への負荷や負担が極めて少なく、製造コストを低減することもできる。該利点は実用上大きな効果である。
【0026】
次に、本発明の球状繊維構造体の製造方法について説明する。
まず、湿熱接着性捲縮ステープル繊維と他の熱可塑性捲縮ステープル繊維を含む混合ステープル糸を金網上に展開して、水をミスト状に噴射しながら金網を回転運動させながら振動を与えることで、金網上で該混合ステープルを転動させ、造粒し、前駆体を得ることができる。得られた前駆体を水に含浸し、該含水前駆体を加熱することで目的とする球状繊維構造体を得ることができる。前駆体の加熱は、上述したようなスチーム吹き込み、高周電磁波、例えば2450MHzのマイクロ波等により加熱することもできるが、該前駆体内での気泡発生が容易な点から、高周電磁波加熱が好ましい。
【0027】
なお、該前駆体を得る際、公知の転動造粒機を用いてもよい。かかる造粒機としては、ドラム型造粒機、皿型造粒機等などが挙げられ、目的に応じて選定すればよい。
【0028】
また本発明では、得られた前駆体を熱水に含浸させることにより、表面が湿熱接着性捲縮ステープル繊維により接着された球状繊維構造体とすることができる。熱水に直接含浸することで、該前駆体の表面に存在する湿熱接着性ステープル繊維が瞬時に熱接着される。そのため得られた構造体は、主に表面が熱接着されることで、該構造体の表面に存在する繊維が強固に熱接着固定され、該構造体からの毛羽の脱落を少なくすることができる。
【0029】
以下、図によって本発明のセル状空隙部を有する球状繊維構造体の構造をさらに詳細に説明する。図1は、一例として、湿熱接着性捲縮ステープル繊維を100質量%使用して得られる本発明の球状繊維構造体の断面模式図である。
多数の湿熱接着性捲縮ステープル繊維1がランダムに絡合して、球状繊維構造体を構成し、その内部に単独のセル状空隙部2および複数の空隙部が部分的に連なったセル状空隙部3を有する。単独のセル状空隙部2は、まとまった1つの空間を構成する空隙部であり、部分的に連なったセル状空隙部3は、空隙部に狭い部分や内壁に孔があり、隣接する次の空隙部に連絡している形状の空隙部である。湿熱接着性捲縮ステープル繊維1は繊維同士が交差する融着点で接合しており、球状繊維構造体自体で充分な形態保持性、強度を有している。
【0030】
また、図2は同様に湿熱接着性捲縮ステープル繊維を100質量%使用して得られる本発明の球状繊維構造体の他の一例を示す断面模式図である。多数の湿熱接着性捲縮ステープル繊維1が主に該構造体の表面で接着しており、毛羽の脱落が生じにくい構造となっている。
【0031】
図3は、図2に示される球状繊維構造体の表面拡大模式図である。多数の湿熱接着性捲縮ステープル繊維1が融着部4で相互に融着して複雑に絡合している。すなわち、湿熱接着性捲縮ステープル繊維1は表面にて接着固定されており、毛羽の脱落がほとんど生じない形態を発現している。
【0032】
本発明の球状繊維構造体は、その多孔性を利用して、吸音材、液体の収蔵と吐出性、断熱性、クッション性および濾過を目的とする用途、医療機器や精密機器等の洗浄材、医療用の綿球、衛材、布団の中綿、梱包の詰物材、微生物支持体等の用途に用いることができる。
また、抗菌剤固定化繊維、アナターゼ型酸化チタン半導体固定化繊維、pH指示薬固定化繊維、酵素固定化繊維、遠赤外線放射セラミックス含有繊維等の捲縮ステープルを含有させることにより、繊維構造体に機能性を付与して利用することも可能である。さらに、本発明の繊維構造体表面をグラフト重合等の操作により改質することによる機能性付与も可能である。
【0033】
また、本発明により得られた球状繊維構造体を平面二次元的な形状、矩形、円筒、球、人形動物などの不定形の鋳型に充填して熱風処理することにより任意の三次元形状の成形物とすることも可能である。
【0034】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。なお、実施例中の各物性は以下の方法により求めた。
(1)捲縮率
カセ取機で5500dtexのカセとなるまで糸条を巻き取った後、カセの下端中央に10gの荷重を吊るし、上部でこのカセを固定し、0.009cN/dtexの荷重が掛かった状態で90℃にて30分間熱水処理を行なった。ついで、無荷重状態で室温に放置して乾燥した後、再び10gの荷重をかけて5分間放置後の糸長を測定し、これをL1(mm)とした。次に1kgの荷重を掛け、30秒間放置後の糸長を測定し、これをL2(mm)とするとき、下記式により算出した。
捲縮率(%)={(L2−L1)/L2}×100
【0035】
実施例1
・繊維製造方法
微粒子シリカを3質量%含有したポリエチレンテレフタレート[フェノール/テトラクロロエタン等重量混合溶媒中、30℃で測定した固有粘度=0.68]を芯成分とし、鞘成分として、エチレン含有量40モル%、MI=10のエチレン−ビニルアルコール共重合体を用いて紡糸温度260℃で紡糸し、芯鞘型複合繊維を得た。(芯/鞘比率=50/50、167dtex/48フィラメント)この繊維を用いて仮撚数2350T/M、1段ヒーター温度120℃、2段ヒーター温度135℃により仮撚加工を施して、捲縮率が17%の仮撚加工糸を得た。得られた仮撚加工糸を110万dtexのトウに収束してカット長さを1mmとしてカットし、単繊維繊度3.3dtexの芯鞘型複合ステープル繊維を得た。
同様にして捲縮率が23%のポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸(165dtex/48フィラメント)を1mmにカットし、ステープル繊維を得た。
得られた芯鞘型複合ステープル繊維80質量%とポリエチレンテレフタレート仮撚ステープル繊維20質量%を混合し、該混合物5gを混合機にて十分混綿した後、経緯密度がそれぞれ13本/インチのステンレス製金網上に展開して、さらに水をミスト状に噴霧しながら該金網を60rpmの回転速度で回転させて球状の前駆体を得た。
【0036】
・球状繊維構造体の製造
前記の球状の前駆体を常温の水に十分に含浸させ、2450MHz、1kWのマイクロ波を照射して、該前駆体の内部から気泡が発生するまで熱処理を施し、次いで、該熱処理品を常温の水中に浸漬させ冷却固化して長径7mmの球状繊維構造体を得た。得られた球状繊維構造体の断面には不定形のセル状空隙部が存在し、単独で存在する空隙部や部分的に連なったセル状空隙部も確認できた。
【0037】
実施例2
前駆体の製造までは実施例1と同一の工程を経て、該前駆体を熱水中に浸漬して長径7mmの球状繊維構造体を得た。得られた構造体は、表面に存在するステープル繊維が接着固定されており、毛羽が脱落しにくく、風合も柔らかいものであった。
【0038】
比較例1
実施例1の芯鞘型複合繊維に延伸のみを施し、捲縮を有しない糸を1mmにカットしたものを100質量%用いて造粒工程を実施例1と同様に実施した。
しかしながら、前駆体として球状の造粒物は得られず、繊維はばらばらの状態であった。
【0039】
比較例2
実施例1の繊維製造方法において紡糸の吐出量を変更して、330dtex/48フィラメントの芯鞘型複合繊維を得た。
この繊維を用いて仮撚数1770T/M、1段ヒーター温度120℃、2段ヒーター温度135℃により仮撚加工を施して、捲縮率が13%の仮撚加工糸を得た。
得られた仮撚加工糸を110万dtexのトウに収束してカット長さを1mmとしてカットし、単繊維繊度6.9dtexの芯鞘型複合ステープル繊維を得た。
得られた芯鞘型複合ステープル繊維100質量%5gを経緯密度がそれぞれ11本/インチのステンレス製金網上に展開して、さらに水をミスト状に噴霧しながら該金網を60rpmの回転速度で回転させたが、大きな綿の固まりができるのみで、実施例1で得られた多数の球状の前駆体の造粒物は得られなかった。
【0040】
比較例3
実施例1で使用した芯鞘複合繊維(167dtex/48フィラメント)を30mmにカットしたこと以外は実施例1と同様の操作にて造粒を行い前駆体を得た。
しかしながら、得られた前駆体は球状に近い軟らかい綿の固まりで、実施例2と同様に沸騰水中に浸漬すると、該綿の固まりは収縮を起こし、球状とは言い難い変形した固まりとなった。
【0041】
比較例4
実施例1で使用した湿熱接着性捲縮ステープル繊維の比率を30質量%に変更して同様の造粒工程を実施した。
前駆体としては実施例1と同様の球状物は得られたが、沸騰水中に浸漬して、同様の冷却固化を行なって球状物を得たが、表面に融着されていないステープル糸が多数存在し、毛羽となって脱落するものであった。
【0042】
比較例5
比較例4の前駆体を実施例1と同様にマイクロ波処理したところ、ステープル糸の一部が水中へ分離し、前駆体との形状差は著しいものであり、また、空隙は一部見られたが、全体の形状は球状と言えるものではなかった。
【0043】
【発明の効果】
本発明により、繊維の交絡構造とセル状空隙部を併有する新規な球状繊維構造体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の球状繊維構造体の断面模式図。
【図2】 本発明の球状繊維構造体の他の一例を示す模式図。
【図3】 図2に示した球状繊維構造体の表面拡大模式図。
【符号の説明】
1:湿熱接着性捲縮ステープル繊維
2:単独のセル状空隙部
3:部分的に連なったセル状空隙部
4:融着部
Claims (9)
- 湿熱接着性捲縮ステープル繊維を60〜100質量%と熱可塑性捲縮ステープル繊維を0〜40質量%含む球状繊維構造体であって、該球状繊維構造体内部に、多数のセル状空隙部が単独でまたは複数個が部分的に連なった状態で存在しており、さらに該球状繊維構造体を構成する繊維の少なくとも一部が湿熱接着性捲縮ステープル繊維によって熱接着されていることを特徴とする球状繊維構造体。
- 該球状繊維構造体の表面が湿熱接着性捲縮ステープル繊維により熱接着されていることを特徴とする請求項1に記載の球状繊維構造体。
- 該球状繊維構造体の長径が0.5〜30mmである請求項1または2に記載の球状繊維構造体。
- 捲縮が立体捲縮である請求項1〜3のいずれか1項に記載の球状繊維構造体。
- 捲縮が仮撚捲縮である請求項4に記載の球状繊維構造体。
- 湿熱接着性捲縮ステープル繊維が、繊維表面の少なくとも一部にエチレンービニルアルコール系共重合体が存在する繊維である請求項1〜5のいずれか1項に記載の球状繊維構造体。
- 単繊維繊度が5dtex以下、カット長が0.5〜20mmである湿熱接着性捲縮ステープル繊維を60〜100質量%とカット長が0.5〜20mmの熱可塑性捲縮ステープル繊維を0〜40質量%含む混合ステープル繊維を金網上に展開し、水をミスト状に噴霧しながら金網上で転動、回転させることにより造粒した後、該造粒物を水に含浸し、さらに該含水造粒物内に沸騰による気泡を生じさせ、該造粒物内部に多数のセル状空隙部を形成せしめると同時に湿熱接着性捲縮ステープル繊維によって該造粒物を構成する繊維の少なくとも一部を熱接着することを特徴とする球状繊維構造体の製造方法。
- 該含水造粒物に高周電磁波を照射して加熱する請求項7に記載の製造方法。
- 単繊維繊度が5dtex以下、カット長が0.5〜20mmである湿熱接着性捲縮ステープル繊維を60〜100質量%とカット長が0.5〜20mmの熱可塑性捲縮ステープル繊維を0〜40質量%含む混合ステープル繊維を金網上に展開して、水をミスト状に噴霧しながら金網上で転動、回転させることにより造粒した後、該造粒物を熱水に浸漬して造粒物の表面を融着せしめることを特徴とする球状繊維構造体の製造方法。
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