JP4310350B2 - 磁石発電機の回転子 - Google Patents

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Description

この発明は、フライホイールの回転によって磁石と電機子巻線との電磁誘導作用により発電する磁石発電機の回転子に関するものである。
内燃機関においては、点火時期や、燃料の噴射時間などを制御する際に、機関のクランク角情報や機関の回転速度情報を必要とする。そのため、例えば、特開2003−274601号公報に示されるように、磁石発電機の回転子としてフライホイール磁石回転子が用いられる場合には、フライホイールの周壁部の外周に、突起からなる誘導子磁極部を設け、この誘導子磁極部を利用して、信号発電子によりクランク角情報や回転速度情報を含むパルスを発生させるようにしたものが知られている。また、同公報には、誘導子磁極部は、フライホイールの周壁部の一部を内側から外側に打ち出すことによって形成すること、および、誘導子磁極部を外側に突出させたことによる質量のアンバランスを補正するために、誘導子磁極部の内側に凹部を形成することや、質量アンバランス補正用ウエイトを設けることが開示されている。
図3、図4は、このようなフライホイールの周壁部に突起部(誘導子磁極部)を形成した他の従来例を示すもので、この発明の対象となる従来の磁石発電機を示すものである。まず、図3において、(a)は正面図、(b)は一部断面側面図、(c)は(b)の一部拡大図を示すもので、1は、椀状(カップ状)に形成されたフライホイール、2はフライホイール1の周壁部内周に周方向に配置された複数個の磁石、3は、環状に配置された磁石2の内周側に密着して嵌合された筒状の保護環である磁石カバーである。4は、磁石2の隙間部に充填され、磁石2、磁石カバー3をフライホイール1と一体に固定する樹脂もしくはモールド成形材である。
フライホイール1の外周面には等間隔に配置された複数個の突起(以下、トリガポールともいう。)5が形成されており、また、一部にトリガポール5が存在しない箇所である歯欠け部NTが形成されている。このトリガポールの抜けている箇所すなわち歯欠け部NTが基準位置となるものであって、フライホイール1はエンジンのクランクシャフトと直結されていることから、フライホイール1とエンジンの回転状態は同一であり、このため、この歯欠け部NTを信号センサSで検出することによって、フライホイール1すなわちエンジンの回転状態を確認することができる。
また、歯欠け部NTが存在するということは、フライホイールのバランスが悪くなることであり、このバランスを補正するために、歯欠け部NTの対称位置となるフライホイール1の外周面には、バランス補正穴が設けられている。
また、フライホイール1の側壁部における中心部には、回転軸に装着するボス部6が存在し、ボス部6にはキー溝7が形成されて、キー溝7とトリガポール5の基準位置となる歯欠け部NTとは、所定の角度になるように配置されている。
フライホイール1の内周側には、フライホイール1の回転によって磁石2との電磁誘導作用により発電するための電機子巻線有する固定子8が設けられている。固定子8は複数枚の薄板鋼板からなる積層鉄心に巻線された発電コイル(電機子巻線)8cを備えている。積層鉄心には発電コイル8cとの絶縁を確保するための絶縁材(例えば樹脂モールド、エポキシ系パウダ塗装)を施しており、発電コイル8cには剛性・絶縁品質を確保する為の外装処理(ワニスやエポキシ樹脂など)を施している。
なお、図4は、トリガポール5が磁石発電機の軸方向に打ち出された従来例を示すもの
である。
特開2003−274601号公報
このような従来のフライホイール形の磁石発電機においては、トリガポール5をフライホイール1の内周面から外周面にかけ1突起づつ打ち出して成形しているため、トリガポールの製造に多大の工程および時間を要していた。また、等間隔に配置された突起5に対し、1箇所突起が存在しない箇所(歯かけ部NT)が存在し、この歯かけ部NTとは対称となる箇所にバランス補正穴が形成されているが、このバランス補正穴の加工については、突起打ち出し行程とは別の行程が必要とされている。
また、このようなフライホイール1の内周面から外周面にかけ突起5を打ち出す方法では、フライホイール1の内周面の真円度を悪化させ、フライホイール1の内径精度を確保することが困難である。
なおまた、フライホイール1のトリガポール5の形成を、打ち出し方法とは別に、削り出し方法によって行うことも可能であるが、削り出しでは1突起毎に削り出す必要があることから、製造時間に更なる時間が必要となる。
さらに、トリガポール5が軸方向に打ち出された構造では、部品点数が多く、各部品の積上げ公差上、信号センサSとトリガポール5とのエアギャップgが不安定になり、信号のばらつきが懸念されるという欠点がある。
この発明は以上のような従来装置の問題点を解消するためになされたもので、トリガポールを製造する工程、時間を大幅に短縮すると共に、フライホイールの内径精度を確保し、固定部と回転部との安定したエアギャップを確保することのできる磁石発電機の回転子を提供することを目的とする。
この発明に係わる磁石発電機の回転子は、カップ状に形成されたフライホイールの周壁部の内周に永久磁石を取り付けるとともに、前記フライホイールの外周に複数のトリガポールを配設してなる磁石発電機の回転子において、前記フライホイールとは別の部材で形成され、前記複数のトリガポールをプレス加工によって同時に打ち抜いて形成した突起リングを備え、該突起リングを前記フライホイールに一体に組付けることによって回転子を構成するようにしたものである。
また、前記突起リングには、前記フライホイールの周方向に等間隔で前記トリガポールを形成すると共に、該トリガポールの基準位置を示す歯欠け部と、この歯欠け部によるアンバランスを補正するためのバランス補正穴が設けられ、且つ、該歯欠け部とバランス補正穴を、プレス加工により前記トリガポールと同時に形成したものである。
この発明の磁石発電機の回転子によれば、トリガポール(突起)を製造する工程および時間を大幅に短縮することができるとともに、フライホイールの内径精度を確保することができ、したがって、固定部と回転部との安定したエアギャップを確保することのできる磁石発電機の回転子を得ることができる。
また、トリガポールをプレス加工で打ち抜く際に、バランス補正穴も同時に打ち抜くこ
とで、従来必要とされていたバランス補正穴の製造工程を不要とすることができる。
上述した、またその他の、この発明の目的、特徴、効果は、以下の実施の形態における詳細な説明および図面の記載からより明らかとなるであろう。
実施の形態1.
以下、図1、図2を参照してこの発明の実施の形態1について説明する。
図1はこの発明の実施の形態1の磁石発電機の回転子の構成を示すもので、図1(a)は正面図、同(b)は一部断面側面図、同(c)は(b)の一部拡大図、図2はこの発明の主要部である突起リングの一例を示す斜視図である。図中、図3、図4との同一符号は、同一または相当部分を示すものとする。
図1において、1〜4および6、7は上述した従来装置と同様のもので、1は、椀状(カップ状)に形成されたフライホイール、2はフライホイール1の周壁部内周に周方向に配置された複数個の磁石、3は、環状に配置された磁石2の内周側に密着して嵌合された筒状の保護環である磁石カバー、4は、磁石2の隙間部に充填され、磁石2、磁石カバー3をフライホイール1と一体に固定する樹脂もしくはモールド成形材、6は回転軸に装着するボス部、7はキー溝である。なお、図1においては、積層鉄心とこの積層鉄心に巻線された電機子巻線有する固定子は省略している。
図2において、100は、この発明の主要部である突起リングであり、フライホイール1とは別部品として構成され、周方向に等間隔で複数の突起(以下、トリガポールともいう。)9が、プレス加工によって同時に打ち出されて形成されるとともに、L字形に折り曲げられて、突起部側とフライホイールへの取り付け部101とが形成されている。
そして、取り付け部101には、フライホイール1にリベットにより突起リングを組付けるためのリベット穴10が形成されている。また、突起部側には、トリガポール9が配置されていない箇所すなわち歯欠け部NTが設けられており、この歯欠け部NTと対称となる箇所に、バランス補正穴11が形成されている。なお、このバランス補正穴11は、フライホイール1のボス部6に形成されたキー溝7とトリガポール9とが正規の位置に配置されるよう、位置決め穴も兼ねている。また、このバランス補正穴11は、トリガポールを打ち抜くプレス工程の際に同時に抜き出すことによって、従来必要とされたバランス補正穴の加工工程をなくすことができる。
以上のように構成された突起リング100をフライホイール1の外周にリベットで組付けることにより、磁石発電機の回転子が製作されるものである。
なお、突起リング100とフライホイール1との組付けは、リベット構造に限らず、例えば、圧入によって組み込むことも可能なことは勿論である。
トリガポール(突起部)9の外周近傍には突起信号を読取るための信号センサ(以下、ピックアップともいう。)Sが配設され、トリガポール9とピックアップSの間にはエアギャップgが空いている。トリガポール9はフライホール1と共に回転するが、ピックアップSは固定されおり、回転せずにトリガポール9の信号を読み取る。
なお、上記実施の形態1の説明においては、トリガポールが打ち抜かれた突起リングを、最初からリング形状に打ち抜いて製作するものについて説明したが、これに限られることはなく、例えば、帯状の部材を用いてトリガポールを打ち抜いた後、リング状に成形してもよい。
以上のようにこの発明の実施の形態1の磁石発電機の回転子によれば、従来はフライホイールと一体に成形されていたトリガポールとバランス補正穴を、フライホイールとは別
部品として製造した後、フライホイールと結合するようにしたので、製造工程および時間を大幅に短縮することができ、大幅なコスト低減を図ることができる。
また、フライホイールの内径精度が確保され、固定部と回転部との安定したエアギャップを確保することができるので、磁石発電機としての信頼性を高めることができる。
この発明の実施の形態1における磁石発電機の回転子を示すもので、(a)は正面図、(b)は一部断面側面図、(c)は(b)の一部拡大図である。 この発明の実施の形態1の主要部である突起リングの一例を示す斜視図である。 従来の磁石発電機の回転子を示すもので、(a)は正面図、(b)は一部断面側面図、(c)は(b)の一部拡大図である。 他の従来例を示すもので、(a)は正面図、(b)は一部断面側面図、(c)は(b)の一部拡大図である。
符号の説明
1 フライホイール、2 磁石、3 磁石カバー、4 樹脂もしくはモールド成形材、
6 ボス部、 7 キー溝、9 トリガポール(突起)、10 リベット穴、
11 バランス補正穴、NT 歯欠け部、100 突起リング、101 取り付け部、
S 信号センサ、g エアギャップ。

Claims (4)

  1. カップ状に形成されたフライホイールの周壁部の内周に永久磁石を取り付けるとともに、前記フライホイールの外周に複数のトリガポールを配設してなる磁石発電機の回転子において、前記フライホイールとは別の部材で形成され、前記複数のトリガポールをプレス加工によって同時に打ち抜いて形成した突起リングを備え、前記突起リングには、前記フライホイールの周方向に等間隔で前記トリガポールを形成すると共に、該トリガポールの基準位置を示す歯欠け部と、この歯欠け部によるアンバランスを補正するためのバランス補正穴が設けられ、且つ、該歯欠け部とバランス補正穴は、プレス加工により前記トリガポールと同時に形成されており、該突起リングを前記フライホイールに一体に組付けることによって前記回転子を構成するようにしたことを特徴とする磁石発電機の回転子。
  2. 前記フライホイールのボス部に形成されたキー形状と前記突起リングとの角度位置を決めるための位置決め穴を、前記突起リングに形成したことを特徴とする請求項に記載の磁石発電機の回転子。
  3. 前記突起リングの位置決め用穴と、前記バランス補正穴とを共用するようにしたことを特徴とする請求項に記載の磁石発電機の回転子。
  4. 前記トリガポールの磁石発電機の信号センサとの対向面が、前記フライホイールの径方向に向いて対向するようにし、径方向の信号検出構造としたことを特徴とする請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の磁石発電機の回転子。
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