JP4310248B2 - ポリカーボネート組成物及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は再生可能資源からも誘導されうる部分を含有するポリカーボネート組成物に関する。
一般にポリカーボネートは石油資源から得られる原料を用いて製造されるが、石油資源の枯渇が懸念されており、植物などの再生可能資源から得られる原料を用いたポリマーの製造が求められており、式(2)に示したエーテルジオールは、再生可能資源、たとえば糖類およびでんぷんなどから容易に作られ、3種の立体異性体が知られている。
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具体的には式(3)に示す、1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−ソルビトール(以下、「イソソルビド」と略記することがある。)、式(4)に示す、1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−マンニトール(以下、「イソマンニド」と略記することがある。)、式(5)に示す、1,4:3,6−ジアンヒドロ−L−イジトール(以下、「イソイディッド」と略記することがある。)であり、イソソルビド、イソマンニド、イソイディッドはそれぞれD−グルコース、D−マンノース、L−イドースから得られる。たとえばイソソルビドの場合、D−グルコースを水添した後、酸触媒を用いて脱水することにより得ることができる。
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また、ポリカーボネートとして脂肪族ポリカーボネートも知られているが、上記のエーテルジオールの中でも、特に、モノマーとしてイソソルビドを中心に用いてポリカーボネートに組み込むことが検討されてきた(特許文献1、非特許文献1、2、3等参照。)。
たとえば、イソソルビドとさまざまなジフェノールとのコポリカーボネートの製造方法が報告されている(たとえば、特許文献2、非特許文献4、5、6参照。)が、これらの原料は石油のみを原料とするという問題を抱えている。
一方、脂肪族ジオールより誘導されたポリカーボネートについてはエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオールから誘導されたポリカーボネートのガラス転移温度はそれぞれ0〜5℃、−35℃、−41℃、−50℃である(たとえば、非特許文献7、8参照。)。
これら脂肪族ジオールから誘導されるポリカーボネートはその柔軟な構造の為、通常室温下でオイル状または低融点の固体であり、汎用プラスチックとしての用途には適さない。
これらの問題を解消すべく、成型加工性および耐熱性に優れる、イソソルビドと脂肪族ジオールとからなるポリカーボネートの開発が進められている。
その1つが1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオールなどの脂肪族ジオールとイソソルビドとの共重合ポリカーボネートである(非特許文献9、10等参照。)。
しかし、これらは石油資源由来のポリカーボネートに比べて生分解しやすいため、生分解されやすい環境にさらされるような用途への適用には問題があった(非特許文献10参照)。
独国特許出願公開第2938464号(特許請求の範囲) 特開昭56−110723号公報(特許請求の範囲) 「ズルナールフュアプラクティシュヘミー」("Journal fuer praktische Chemie")、1992年、第334巻、p.298〜310 「マクロモレキュールズ」("Macromolecules"),1996年、第29巻、p.8077〜8082 「ジャーナルオブアプライドポリマーサイエンス」("Journal of Applied Polymer Science")、2002年、第86巻、p.872〜880 「マクロモレキュラーケミストリーアンドフィジックス」("Macromolecular Chemistry and Physics")1997年、第198巻、p.2197〜2210 「ジャーナルオブポリマーサイエンスパートエイ」("Journal of Polymer Science:Part A")、1997年、第35巻、p.1611〜1619 「ジャーナルオブポリマーサイエンスパートエイ」("Journal of Polymer Science:Part A")、1999年、第37巻、p.1125〜1133 「ジャーナルオブポリマーサイエンス;ポリマーレターズエディション」("Journal of Polymer Science: Polymer Letters Edition"),1980年、第18巻、p.599〜602 「マクロモレキュラーケミストリーアンドフィジックス」("Macromolecular Chemistry and Physics")1998年、第199巻、p.97〜102 岡田他、文部科学省科学研究費補助金特定領域研究(B)「環境低負荷高分子」再生可能資源からの環境低負荷プラスチックの生産に基づく持続型材料システムの構築第7回公開シンポジウム講演要旨集、2002年、p.26〜29 「ジャーナルオブポリマーサイエンスパートエイ」("Journal of Polymer Science:Part A")、2003年、第41巻、p.2312〜2321
本発明は、再生可能資源からも誘導されうる部分を含有し、現状の脂肪族ポリカーボネートよりも分解性の抑制された新規なポリカーボネートを提供することを目的とする。
本発明者らは上記従来技術に鑑み、鋭意検討を重ね、特にポリカーボネートの生分解性について検討した結果、イソソルビドに代表されるエーテルジオールと脂肪族ジオールとを共重合させたポリカーボネートに更にセルロースを含有させることにより、生分解性の抑制されたポリカーボネート組成物が得られることを見出し、さらに検討を重ね、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の目的は
セルロースと、下記一般式(a)で表される脂肪族アルキレングリコール残基および下記構造式(1)で表されるエーテルジオール残基を含んでなるポリカーボネートとからなるポリカーボネート組成物によって達成される。
Figure 0004310248
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本発明によれば、イソソルビドに代表されるエーテルジオールと脂肪族ジオールとを共重合させた上、セルロースを混練することにより、生分解性の抑制されたポリカーボネート組成物を得ることができる。
以下に、本発明を更に詳細に説明する。
本発明にかかわるポリカーボネートは下記一般式(a)で示される脂肪族アルキレングリコール残基および下記構造式(1)で表されるエーテルジオール残基を含んでなる。
Figure 0004310248
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すなわち、得られるポリカーボネートは、下記式(6)の繰り返し単位部分と下記式(7)の繰り返し単位部分とを有するものとなる。
Figure 0004310248
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ここで、前記構造式(1)で表されるエーテルジオール残基は全ジオール残基中、65〜98重量%を占めることが好ましく、更には全ジオール残基中、80−98重量%を占めることが好ましい。
該エーテルジオールの含有量がこの範囲よりも少なくなると、得られる樹脂の粘度が下がり、脆いポリマーになる。一方、エーテルジオールの含有量がこの範囲よりも多くなると、ガラス転移温度や溶融粘度が非常に高くなり、成型加工が困難になる。
本発明にかかわるポリカーボネートに用いるエーテルジオールは、下記構造式(2)の構造を有し、それぞれ構造式(3)、(4)及び(5)で表される、イソソルビド、イソマンニド、イソイディッド、などが知られている。これら糖質由来のエーテルジオールは、自然界のバイオマスからも得られる物質で、再生可能資源と呼ばれるものの1つである。
イソソルビドは、でんぷんから得られるD−グルコースに水添した後、脱水を受けさせることにより得られる。他の他のエーテルジオールについても、出発物質を除いて同様の反応により得られる。
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特にイソソルビドを原料の一つとして使用した、糖質由来のエーテルジオール残基としてイソソルビド残基を含んでなるポリカーボネートが好ましい。イソソルビドはでんぷんなどから簡単に作ることができるエーテルジオールであり資源として豊富に入手することができる上、イソマンニドやイソイディッドと比べても製造の容易さ、性質、用途の幅広さの全てにおいて優れている。
本発明に係わるポリカーボネートは、ガラス転移温度が少なくとも80℃以上であることが好ましい。ガラス転移温度は成形物の耐熱性や、溶融成形性にとって重要であり、実用的に十分な耐熱性と成形性を維持する為にはより好ましくは100℃以上160℃以下である。
本発明にかかわるポリカーボネートの製造方法に用いる炭酸ジエステルとしては、たとえばジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート等があげられ、なかでも反応性、コスト面からジフェニルカーボネートが好ましい。
本発明にかかわるポリカーボネート組成物は、例えば、ホスゲンなどカルボニルハライドを出発物質とする方法、炭酸エステルを出発物質とする方法、二酸化炭素や炭酸塩を出発物質とする方法などにより重合することができるが、環境問題という点などから溶融重合法が良い。
本発明にかかわる溶融重合法では、重合触媒の存在下、原料であるジオールと炭酸ジエステルとを常圧で加熱し、予備反応させた後、減圧下で280℃以下の温度で加熱しながら撹拌して、生成するフェノールを留出させる。原料であるジオールは少なくとも式(2)で表されるエーテルジオールとを含む。系は窒素などの原料、反応混合物、反応生成物に対し不活性なガスの雰囲気に保つことが好ましい。窒素以外の不活性ガスとしては、アルゴンなどを挙げることができる。
反応初期に常圧で反応させるのは、オリゴマー化反応を進行させ、反応後期に減圧してフェノールを留去する際、未反応のモノマーが留出してモルバランスが崩れ、重合度が低下することを防ぐためである。本発明にかかわる製造方法においてはフェノールを適宜系(反応器)から除去することにより反応を進めることができる。そのためには、減圧することが効果的であり、好ましい。
本発明に係わる重合法において、エーテルジオールの分解を抑え、着色が少なく高粘度の樹脂を得るために、できるだけ低温の条件を用いることが好ましいが、重合反応を適切に進める為には重合温度は180℃以上280℃以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは230℃以上260℃以下の範囲である。
本発明に係わる製造方法では触媒を用いることが好ましい。使用できる触媒は(i)含窒素塩基性化合物、(ii)アルカリ金属化合(iii)アルカリ土類金属化合物等である。これらは一種類を独立に使用しても、複数種使用してもよい。(i)と(ii)または(i)と(iii)または(i)と(ii)と(iii)の併用が好ましい場合が多い。
(i)については好ましくはテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、(ii)については、好ましくはナトリウム塩類であり、中でも2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン二ナトリウム塩を用いることが特に好ましい。
本発明にかかわるセルロースは結晶化度に関わらず用いることができるが、セルロースジアセテートやセルローストリアセテートなどのセルロース誘導体はあまり好ましくない。
本発明にかかわるセルロースはポリエチレングリコール共存下で粉砕処理してから用いることが好ましい。また、用いるポリエチレングリコールは分子量20−200万のものが特に好ましい。
本発明にかかわるセルロースの混練は溶融状態にある本発明に関わるポリカーボネートに対して少しずつ混ぜることが好ましい。
本発明により、再生可能資源からも誘導されうる部分を含有し、現状の脂肪族ポリカーボネートよりも分解性の抑制された新規なポリカーボネートを提供することが可能となる。
次に本発明に関わる実施例を詳述する。各種の評価項目は次のようにして求めた。物性についてはまとめて表1に示す。
(1)生分解試験
市販の腐葉土(サンヨーバーク(有)製樹皮堆肥)200gに、溜池の水1リットルを用いて加え、30分以上約30℃の湯浴中で曝気した。これをろ紙でろ過した液に、最適化試験培養用A液(リン酸二水素カリウム37.5g、リン酸水素二ナトリウム72.9g、塩化アンモニウム2.0gを1リットルのイオン交換水に溶解させたもの)を100ミリリットル加え、全量を2リットルとして調整し、コンポスト条件と近い50℃の恒温槽内に設置し、圧空を通気量200ミリリットル/分で流通させた。3−4日おきに培養液の半分を新規に調製したものと交換した。
均一な厚さに製膜したキャストフィルム(未延伸フィルム)を約200mg切り出した上、市販の不織布製袋に入れ、上記の容器中に投入し、1ヵ月後ごとに取り出し、重量変化を調べた。
[実施例1]
イソソルビド23.4gと1,6−ヘキサンジオール4.7gとジフェニルカーボネート42.8gを三口フラスコに入れ、重合触媒としてテトラメチルアンモニウムヒドロキシドおよび2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン二ナトリウム塩を仕込んで窒素雰囲気下180℃で溶融した。
撹拌下、反応槽内を13.3kPaに減圧し、生成するフェノールを留去しながら20分間反応させた。次に200℃に昇温した後、徐々に減圧し、フェノールを留去しながら4.00kPaで25分間反応させ、さらに、215℃に昇温して10分間反応させた。
ついで、徐々に減圧し、2.67kPaで10分間、1.33kPaで10分間反応を続行し、さらに減圧し、40Paに到達したら、徐々に230℃まで昇温し、230℃に到達してから10分間反応せしめた。
ついで、低結晶セルロース3gを少しずつ添加し、1時間混練した。このポリマーを用いて製膜したフィルムについて生分解試験を行った。
[実施例2]
イソソルビド23.4gと1,6−ヘキサンジオール4.7gとジフェニルカーボネート42.8gを三口フラスコに入れ、重合触媒としてテトラメチルアンモニウムヒドロキシドおよび2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン二ナトリウム塩を仕込んで窒素雰囲気下180℃で溶融した。
実施例1と同様に重合させて、230℃に到達してから10分間反応せしめた後、低結晶セルロース9gを少しずつ添加し、1時間混練した。このポリマーを用いて製膜したフィルムについて生分解試験を行った。
[実施例3]
イソソルビド23.4gと1,6−ヘキサンジオール4.7gとジフェニルカーボネート42.8gを三口フラスコに入れ、重合触媒としてテトラメチルアンモニウムヒドロキシドおよび2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン二ナトリウム塩を仕込んで窒素雰囲気下180℃で溶融した。
実施例1と同様に重合させて、230℃に到達してから10分間反応せしめた後、微結晶セルロース9gを少しずつ添加し、1時間混練した。このポリマーを用いて製膜したフィルムについて生分解試験を行った。
[実施例4]
24時間真空乾燥させた微結晶セルロース10gと分子量200万のポリエチレングリコール2gを株式会社伊藤製作所製実験用遊星回転ポットミルLA−PO.1の反応容器に入れ、400rpmにて1時間の粉砕処理を行った(これをセルロース粉砕物とする。)。
イソソルビド23.4gと1,6−ヘキサンジオール4.7gとジフェニルカーボネート42.8gを三口フラスコに入れ、重合触媒としてテトラメチルアンモニウムヒドロキシドおよび2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン二ナトリウム塩を仕込んで窒素雰囲気下180℃で溶融した。
実施例1と同様に重合させて、230℃に到達してから10分間反応せしめた後、上記セルロース粉砕物3gを少しずつ添加し、1時間混練した。このポリマーを用いて製膜したフィルムについて生分解試験を行った。
[比較例1]
イソソルビド23.4gと1,6−ヘキサンジオール4.7gとジフェニルカーボネート42.8gを三口フラスコに入れ、重合触媒としてテトラメチルアンモニウムヒドロキシドおよび2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン二ナトリウム塩を仕込んで窒素雰囲気下180℃で溶融した。
実施例1と同様に重合して230℃まで昇温し、最終的に250℃、66.6Paで1時間反応せしめた。このポリマーを用いて製膜したフィルムについて生分解試験を行った。
[比較例2]
イソソルビド23.4gと1,6−ヘキサンジオール4.7gとジフェニルカーボネート42.8gを三口フラスコに入れ、重合触媒としてテトラメチルアンモニウムヒドロキシドおよび2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン二ナトリウム塩を仕込んで窒素雰囲気下180℃で溶融した。
実施例1と同様に重合させて、230℃に到達してから10分間反応せしめた後、低結晶セルロースジアセテート3gを少しずつ添加し、1時間混練した。このポリマーを用いて製膜したフィルムについて生分解試験を行った。
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Claims (5)

  1. セルロースと、下記一般式(a)で表される脂肪族アルキレングリコール残基および下記構造式(1)で表されるエーテルジオール残基を含んでなるポリカーボネートとからなるポリカーボネート組成物。
    Figure 0004310248
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  2. 前記セルロースが、ポリエチレングリコールの存在下に粉砕処理を施したものである、請求項1に記載のポリカーボネート組成物。
  3. 前記構造式(1)で示されるエーテルジオール残基が、全ジオール残基中、65−98重量%を占める、請求項1に記載のポリカーボネート組成物。
  4. 前記セルロースが、ポリカーボネートを基準として0.5〜60重量%を占める、請求項1に記載のポリカーボネート組成物。
  5. 下記一般式(b)で表される脂肪族アルキレングリコール、下記構造式(2)で表されるエーテルジオールおよび炭酸ジエステルを溶融重合法によって重合して得られる溶融状態のポリカーボネートに、更にセルロースを加えてから溶融混練する、ポリカーボネート組成物の製造方法。
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