JP4309979B2 - 窒化アルミニウム膜の製造方法および磁気ヘッドの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、放熱性・耐薬品性に優れた窒化アルミニウム膜及び同窒化アルミニウム膜を使用した磁気ヘッドの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、高密度情報の記録及び再生に図1に斜視図が示された磁気抵抗効果薄膜磁気ヘッドが用いられている。この磁気抵抗効果薄膜磁気ヘッドは、スライダ基板10、保護層11、下シールド12、絶縁膜からなる再生下ギャップ13、バイアス磁石膜14a,14b及び電気導電膜15a,15bからなる一対のリード16a,16bを積層していて、同一対のリード16a,16b間にMR素子17を積層している。更に、同磁気抵抗効果薄膜磁気ヘッドは、MR素子17、リード16a,16b、及びその周囲に露出している再生下ギャップ13の上に、絶縁膜からなる再生上ギャップ18を成膜し、再生上ギャップ18の上には上シールド兼下コア19を設けている。以上に説明した下シールド12から上シールド兼下コア19までが再生ヘッドを構成するものである。
【0003】
上記の再生ヘッドにおいては、記録密度を向上するためにMR素子17の微細化が進められるとともに、出力を増大するためにMR素子17に流すセンス電流が増大される傾向にある。このため、MR素子17中の電流密度が大きくなってMR素子17の発熱量が増大し、MR素子17の通電寿命が低下するという問題が生じている。
【0004】
かかる問題に鑑み、特開平5−205224号公報又は特開平6−274830号公報には、再生下ギャップ13及び再生上ギャップ18を従来から採用されてきたアルミナ(Al2O3)よりも熱伝導度が大きく放熱性に優れた窒化アルミニウム(AlN)により形成し、放熱を促進してMR素子17の通電寿命の低下を防止する提案がなされている。この窒化アルミニウムの膜は、一般的にはアルミニウム(Al)をターゲットとし、スパッタガスとして窒素ガス(N2)を使用した反応性スパッタにより形成される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、スパッタによる窒化アルミニウムの成膜時にチャンバ内に残留ガス(特にH2O)が多いと、窒化アルミニウムの結晶が乱れて熱伝導度が期待したようには上昇しないことが判明した。また、窒化アルミニウムの熱伝導度は、反応性ガスのガス圧が大きすぎると低下することも判明した。従って、本発明の目的は、最適なスパッタ条件にてスパッタを行うことにより、良好な熱伝導性を有する窒化アルミニウム膜を製造する方法及び同窒化アルミニウム膜を使用した磁気ヘッドの製造方法を提供することにある。
【0007】
【発明の概要】
本発明の特徴は、チャンバ内においてアルミニウムをターゲットとしたスパッタリングにより基板上に窒化アルミニウムを成膜する窒化アルミニウム膜の製造方法において、チャンバ内の圧力を1×10 -6 Torr以下とした後に、0.02mTorrから0.3mTorrの範囲内のガス圧を有する酸素と窒素の混合ガスを用いてイオンビームスパッタ法にてスパッタリングを行うことにある。
【0008】
図4は、スパッタ装置のチャンバ内を所定の圧力(到達真空度)とした後に、0.2mTorrのガス圧を有する酸素と窒素の混合ガスを使用してスパッタリングを行うことにより生成された窒化アルミニウム膜の熱伝導度を、チャンバ内の到達真空度に対してグラフ化したものである。同図から明らかなように、到達真空度が1×10-6Torrとなるまでの範囲(真空度が低い範囲=圧力が大きい範囲)では熱伝導度はチャンバ内が真空に近づくほど増大するが、1×10-6Torrよりも真空度が高い範囲(圧力が小さい範囲)ではチャンバ内がより真空に近づいても殆ど変化しない。これは、チャンバ内の残留ガス(特にH2O)が少なくなることにより窒化アルミニウムの結晶性が促進され、1×10-6Torrよりも真空に近い領域においては同結晶性が安定化するためと考えられる。この特性は、スパッタリングに使用するガスが窒素単体からなるガスであるか、窒素と酸素の混合ガスであるかに拘らない。従って、上記二つの特徴の製造方法により窒化アルミニウムを成膜すると、熱伝導性の優れた窒化アルミニウム膜が得られる。尚、何れの特徴においても、スパッタリング中におけるチャンバ内のガス圧は「スパッタリングに必要な放電が可能であるガス圧=0.02mTorr」以上であって、且つ「窒化アルミニウム膜の緻密性を悪化させない(絶縁性を低下させない)ガス圧=0.3mTorr」以下の範囲内とすることが望ましい。
【0009】
ところで、窒化アルミニウム膜は磁気抵抗効果薄膜磁気ヘッド等の絶縁層に使用されるものであるが、かかるヘッド等の製造工程においてはレジストマスクを製作するためにKOH等を主成分とするアルカリの現像液(例えば、AZ400等)を使用したエッチングを行うことが多い。しかしながら、スパッタリングに窒素ガスのみを用いて成膜した窒化アルミニウム膜は、現像液エッチングレート(現像液に浸漬した場合の単位時間あたりの膜厚変化量)が大きいため、上記エッチング量のコントロール(適切な制御)が難しいという問題がある。これに対し、スパッタリングに窒素と酸素の混合ガスを使用すると、現像液エッチングレートが低下することが判明した。
【0010】
図5は、所定の分圧比を有する窒素と酸素の混合ガスをスパッタリングに使用して得られた窒化アルミニウム膜の現像液(AZ400)エッチングレートを示している。同図から明らかなように、混合ガスにおける酸素の分圧比(O2/N2)が0.2%に到るまではエッチングレートが大きく、しかも分圧比の増大に伴い急激に低下するが、同分圧比が0.2%以上となるとエッチングレートは殆ど変化(低下)しない。従って、酸素の分圧比を0.2%以上とすれば、低エッチングレートを有する窒化アルミニウム膜が得られる。
【0011】
一方、スパッタリングに使用するガス中に酸素が存在すると、窒化アルミニウム膜の熱伝導度が低下する。図6は、酸素と窒素の混合ガスをスパッタリングに使用した場合において、混合ガス中の窒素に対する酸素の分圧比(O2/N2)に対して窒化アルミニウム膜の熱伝導度がどのように変化するかをグラフ化したものである。同図から明らかなように、酸素の分圧比が増大するに従って熱伝導度が低下し、酸素の分圧比が5.0%となるとAl2O3膜の熱伝導度(=2W/(m・k))と同等にまで低下する。従来のAl2O3膜に代えて窒化アルミニウム膜を使用するのは、熱伝導度を高めて放熱性を良好にするためであるので、窒化アルミニウムの熱伝導度がAl2O3の熱伝導度以下となったのでは、窒化アルミニウムを使用する意義が薄れる。従って、酸素の分圧比は5.0%以下とする必要がある。
【0012】
以上より、本発明の他の特徴においては、スパッタリングに窒素と酸素の混合ガスを用いる窒化アルミニウムに製造方法において、その混合ガスにおける窒素に対する酸素の分圧比(O2/N2)を0.2%から5.0%の範囲内とした。かかる製造方法によれば、現像液エッチングレートが小さく、且つ熱伝導度がAl2O3よりも良好な窒化アルミニウム膜を得ることができる。
【0013】
本発明の他の特徴は、チャンバ内においてアルミニウムをターゲットとしたスパッタリングにより基板上に窒化アルミニウムを成膜する窒化アルミニウム膜の製造方法において、前記チャンバ内の圧力を1×10-6Torr以下とし、次いで窒素ガスのみによりスパッタリング放電を開始した後に、0.02mTorrから0.3mTorrの範囲内のガス圧を有する窒素と酸素の混合ガスを用いてイオンビームスパッタ法にてスパッタリングを行うことにある。このときの前記混合ガスの窒素に対する酸素の分圧比(O2/N2)を0.2%から5.0%の範囲内とすることが好適である。
【0014】
上記方法とするのは、スパッタリングの放電を窒素及び酸素の混合ガスにて開始すると、ターゲットであるアルミニウムの表面に酸化膜が生成されて異常放電が発生するため、膜形成速度に影響が大きいスパッタ率に変動が生じ、生産上の管理が困難になるからである。なお、上記方法によれば、スパッタリングの放電開始初期において酸化膜が生成されないので、スパッタリングの放電開始後のターゲットの表面は純粋なアルミニウムのままであり、後に窒素及び酸素の混合ガスを導入してもターゲット表面に酸化膜が生成されることはない。
【0015】
本発明の他の特徴は、基板上に下部絶縁膜を形成する工程、前記下部絶縁膜上に薄膜の磁気抵抗効果素子を形成する工程、及び前記磁気抵抗効果素子の上に上部絶縁膜を形成する工程を含む磁気ヘッドの製造方法において、前記下部絶縁膜を形成する工程及び前記上部絶縁膜を形成する工程のうちの少なくとも一の工程が上記した窒化アルミニウム膜の製造方法に関する特徴の一を含んだことにある。係る方法によれば、放熱性に優れて通電寿命が長く、且つ耐薬品性に優れる等の上記各特徴がもたらす利点を備えた磁気ヘッドを得ることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態について以下に図面を参酌して説明すると、図1には本発明の窒化アルミニウム膜の製造方法が製造工程の一工程にて採用される磁気抵抗効果薄膜磁気ヘッドの斜視図が示されている。
【0017】
この磁気抵抗効果薄膜磁気ヘッドにおいては、アルチック(Al2O3―TiC)等のセラミック材料で構成されたウエハであって後にカットされてスライダを構成するスライダ基板10上にアルミナ(Al2O3)等の非磁性絶縁膜の保護層11、パーマロイ等の軟磁性膜である下シールド12が積層される。
【0018】
下シールド12の上には、本発明の製造方法が使用されて成膜される窒化アルミニウムの絶縁膜からなる再生下ギャップ13が形成される。再生下ギャップ13の上にはCoCrPt等からなる左右一対のバイアス磁石膜14a,14b及びW,Ta,Nb等からなる電気導電膜15a,15bが形成され、バイアス磁石膜14a,14b及び電気導電膜15a,15bが一対のリード16a,16bを構成している。
【0019】
MR素子17は、CoZrM(Nb,Mo等)の軟磁性膜であるSAL、Ti等からなるスペーサ、及びNiFe等から形成されるMR膜からなる積層体であって、一対のリード16a,16bが作る台形状の溝の傾斜面および同台形状の溝の底面部分に露出している再生下ギャップ13の上面に成膜される。
【0020】
MR素子17、リード16a,16b、及びその周囲に露出している再生下ギャップ13の上には窒化アルミニウムの絶縁膜からなる再生上ギャップ18が再生下ギャップ13と同様に本発明の製造方法が使用されて成膜され、再生上ギャップ18の上にはNiFe等の軟磁性体からなる上シールド兼下コア19が形成される。以上に説明した下シールド12から上シールド兼下コア19までが再生ヘッドを構成している。
【0021】
上シールド兼下コア19の上面であってMR素子17直上方向には書込み下ポールと呼ばれる断面が矩形の突起部20が設けられる。書込み下ポール20の上には、アルミナ等の絶縁膜からなる書込みギャップ21及びニッケル−鉄合金(パーマロイ)等の高透磁率材料からなる書込み上ポール22が形成され、同書込み上ポール22の上には上コア23が形成される。上コア23と上シールド兼下コア19間には絶縁層24に埋設されたコイル25が貫通して配置される。以上に説明した上シールド兼下コア19から上コア23までが、記録用ヘッドを構成している。
【0022】
上述したように、この磁気抵抗効果薄膜磁気ヘッドにおいては、MR素子17の下面及び上面に接触して配置される再生下ギャップ13及び再生上ギャップ18が、従来のアルミナ(Al2O3)の膜に代わる窒化アルミニウム(AlN)の膜からなっている。
【0023】
次に、上記窒化アルミニウム膜の製造に使用されるイオンビームスパッタ装置(IBS)について図2を参酌しつつ説明する。このイオンビームスパッタ装置30は、スパッタリングを行う真空チャンバ31と、同チャンバ31内に設けられ試料Sを保持するとともに図示を省略した回転機構により回転される基板ホルダー32、及び基板ホルダー32直上に設けられたシャッター33を備えている。尚、本実施形態においては、試料Sは下シールド12までが形成され、次に再生下ギャップ13を形成する段階にある磁気抵抗効果薄膜磁気ヘッドのウエハ、又は、MR素子17までが形成されて次に再生上ギャプ18を形成する段階にある磁気抵抗効果薄膜磁気ヘッドのウエハである。
【0024】
イオンビームスパッタ装置30は、更にチャンバ31の側壁に設けられ基板ホルダー32に向けて傾斜されたターゲット34、ターゲット34に対しイオン化したガスを照射するスパッタ用ガン35、及び基板ホルダー32の直上であって基板ホルダー32に対向して設けられたプレ・クリーニング用ガン36等を備えている。
【0025】
スパッタ用ガン35は、ターゲット34となるアルミニウムに窒素ガスのイオンを照射するものである。スパッタ用ガン35の概要を図3を参酌して説明すると、スパッタ用ガン35は放電用のチャンバ35aを有している。放電用チャンバ35aは略直方体形状をなし、その一面にはスクリーングリッド35bが備えられるとともに、他の側壁には同放電チャンバ35a内にガスを導入するためのガス導入口35cが設けられていて、同ガス導入口35cには流量を制御する第1流量コントローラー37を介して窒素ガス供給源38が接続されている(図2参照)。
【0026】
放電チャンバ35a内には、アノード(正極)35dとカソード(負極)35eが距離を隔てて配置されている。アノード35dは、直流電圧源であるビーム電源35fにより所定の正電圧(ビーム電圧)が印加されるようになっている。カソード35eは、アノード35dと接続された直流電圧源である放電用電源35g及び所定の高周波を発するカソード用電源35hにより、アノード35dに対して所定の負電位(放電電圧)を中心として僅かな振幅をもって振動する電圧が印加されるようになっている。
【0027】
加速器グリッド35iは、スクリーングリッド35bと僅かな距離を隔て、同スクリーングリッド35bに対向するように設けられていて、直流電圧源である加速器電源35jにより所定の負電圧(加速器電圧)が印加されている。また、ビーム電源35fに流れる電流(ビーム電流)がビーム電流計35kによって計測されるようになっている。上記のビーム電源35f、放電用電源35g、カソード用電源35h、加速器電源35j等はその出力電圧が外部から調整され得るように構成されている。
【0028】
以上の構成により、スパッタ用ガン35は、カソード35eとアノード35d間に所定の電位差が与えられ、且つ所定の圧力の希ガス(ここでは、窒素ガス)が所定の真空状態とされた放電チャンバ35a内に供給されると、カソード35eとアノード35d間でグロー放電を発生させ、このグロー放電により生成された希ガスイオンの一部を加速器グリッド35iにより加速して、イオンビームIBとして所定方向(ターゲット方向)に射出する。
【0029】
図2に示したプレ・クリーニング用ガン36は、スパッタ用ガン35と同じ構成を有していて、同プレ・クリーニング用ガン36には流量が制御されたアルゴンガスが供給されるように第2流量コントローラー39を介してアルゴンガス供給源40が接続されている。プレ・クリーニング用ガン36は、試料Sに対するスパッタ膜の密着性を向上するために、スパッタリングに先だってアルゴンガスをイオン化して試料Sに照射するためのものである。
【0030】
チャンバ31には、窒素ガスと酸素ガスの混合ガスを所定の流量にて供給するために、第3流量コントローラー41を介して混合ガス供給源42が接続されている。また、チャンバ31には、同チャンバ31内を所定の真空状態にするために、メインバルブ43、ターボポンプ44及びロータリポンプ45を順に介装した排出管46が接続されている。
【0031】
次に、上記のイオンビームスパッタ装置30を用いて、試料S上に膜厚が1000Å(100nm)の窒化アルミニウム膜(AlN膜)を形成するスパッタ工程について説明する。
<ステップ1>
先ず、試料Sを基板ホルダー32上に載置し固定する。
<ステップ2>
次に、ターボポンプ44及びロータリポンプ45を駆動してチャンバ31内が1×10-6Torr(1.33322×10-4Pa)の圧力となるまで真空引きを行う(到達真空度を1×10-6Torrとする)。
【0032】
<ステップ3>
次いで、イオン化されたアルゴンガスを試料Sに照射するプレ・クリーニングを以下の条件に従って実施する。
(1)プレ・クリーニング用ガン36のビーム電圧を300V、ビーム電流を100mA、加速器電圧を100V、及び放電電圧を40Vとする。
(2)第2流量コントローラー39を制御してアルゴンガスの流量を16sccm(sccm=standard cubic cm/min.即ち、0℃,1気圧の標準状態における毎分の流量を立方センチで表したもの)とする。チャンバ31内におけるアルゴンガスのガス圧は1.5×10-4Torr(1.99983×10-2Pa)となる。
(3)シャッター33を開状態に保つ。
(4)基板ホルダー32の回転数を10rpmとする。
(5)40秒間だけ実施する。
【0033】
<ステップ4>
続いて、プレ・スパッタを以下の条件に従って実施する。
(1)スパッタ用ガン35のビーム電圧を1350V、ビーム電流を300mA、加速器電圧を100V、及び放電電圧を60Vとする。
(2)第1流量コントローラー37を制御して窒素ガスの流量を17sccmとする。チャンバ31内における窒素ガスのガス圧は0.8×10-4Torr(1.066576×10-2Pa)となる。
(3)シャッター33を閉状態に保つ。
(4)基板ホルダー32の回転数を10rpmとする。
(5)2分間だけ実施する。
尚、プレ・スパッタ中に第3流量コントローラ41により窒素ガスと酸素ガスの混合ガスをチャンバ31内に導入し始めるようにしておく。
【0034】
<ステップ5>
その後、スパッタを以下の条件に従って実施する。
(1)スパッタ用ガン35のビーム電圧を1350V、ビーム電流を300mA、加速器電圧を100V、及び放電電圧60Vとする。これは、プレ・スパッタと同じ条件である。
(2)第1流量コントローラー37を制御して窒素ガスの流量を17sccmとする。
(3)第3流量コントローラー41を制御して、窒素ガスに対する酸素ガスの分圧比(O2/N2)が2.0%(2×10-2)である窒素ガスと酸素ガスの混合ガスをチャンバ31内に供給する。この混合ガスの流量は16sccmとする。このとき、チャンバ31内におけるガス圧は1.6×10-4Torr(2.133152×10-2Pa)となる。
(4)シャッター33を開状態に保つ。
(5)基板ホルダー32の回転数を10rpmとする。
(6)30分間だけ実施する。
<ステップ6>
チャンバを大気開放して試料Sを取出す。
以上により、窒化アルミニウム膜が成膜される。
【0035】
次に、上記のスパッタ条件について検討した結果について図4から図6を参酌しつつ説明すると、図4は上記スパッタ工程のステップ2におけるチャンバ31内の圧力(到達真空度)を変更して窒化アルミニウム膜を形成した場合の同窒化アルミニウム膜の熱伝導度を示している。
【0036】
同図から明らかなように、チャンバ31内を絶対真空に近づけると熱伝導度も上昇する。これは、チャンバ31内の残留ガス(特にH2O)が少なくなることにより窒化アルミニウム膜の結晶性が促進されるためであると考えられる。しかし、到達真空度度が1×10-6Torrに到るまで(チャンバ31内の圧力>1×10-6Torrの領域)はチャンバ31内を絶対真空に近づけるほ窒化アルミニウム膜の熱伝導度も上昇するが、それ以上の高真空領域では熱伝導度は殆ど上昇しない。以上より、スパッタ条件としての到達真空度は、1×10-6Torrよりも高真空(チャンバ31内の圧力≦1×10-6Torr)とすると良いことが解る。
【0037】
本実施形態において試料Sとされる磁気抵抗効果薄膜磁気ヘッドにおいては、上記したスパッタにより窒化アルミニウムからなる再生上ギャップ18を形成した後に、MR素子17の近傍以外の部位での絶縁不良をなくすため、MR素子17の近傍以外の部分をアルミナ膜で覆う工程が必要となる。これは、MR素子17の近傍のみをレジストでマスクした後にアルミナをスパッタする方法(リフトオフ法)にて達成されるが、このレジストのマスクを形成する際にアルカリ性(例えば水酸化カリウム等)の現像液に2分間ほど浸漬する工程が必要とされる。かかる現像液等の薬品は磁気抵抗効果薄膜磁気ヘッドに限らず他の機能素子の製造工程においても使用される。
【0038】
しかし、窒素ガスのみで窒化アルミニウム膜を成膜すると耐薬品性(耐現像液性)が良好でないので、例えば上記した例ではMR素子17上部の再生上ギャップ18が薄くなる等、上記現像工程等において支障が生ずる。そこで、かかる点につき検討したところ、窒化アルミニウム膜の成膜中にチャンバ31内に酸素ガスを加えると耐薬品性が向上することが判明した。
【0039】
図5は、スパッタ中にチャンバ31に供給される窒素ガスと酸素ガスの混合ガスにおける窒素ガスに対する酸素ガスの分圧比(O2/N2=O2分圧)を種々の値として窒化アルミニウム膜を成膜し、同窒化アルミニウム膜を現像液(AZ400)に2分間だけ浸漬した場合における前記分圧比に対する前記窒化アルミニウム膜のエッチングレート(Å/分)を示している。
【0040】
図5から明らかなように、エッチングレートは、酸素ガスの分圧比が0.2%までは大きく、しかも分圧比の増大に伴い急激に低下するが、同分圧比が0.2%以上では殆ど変化(低下)しない。従って、酸素の分圧比を0.2%以上とすれば、低エッチングレートを有する窒化アルミニウム膜が得られることが解る。
【0041】
一方、酸素ガスの分圧比が大きくなると生成される窒化アルミニウム膜中にAl2O3が生成されて次第に熱伝導度(放熱性)が低下する。この様子が図6に示されている。Al2O3の熱伝導度は1.5〜2.0W/(m・K)であるので、Al2O3より熱伝導度が良好な窒化アルミニウム膜を得るには、その熱伝導度を2.0W/(m・K)とする必要があり、よって図6から酸素ガスの分圧比を5.0%以下とする必要があることが解る。
【0042】
また、スパッタ放電に用いる窒素ガス(又は窒素と酸素の混合ガス)のチャンバ31内の圧力は0.02mTorrから0.30mTorrの間が好適である。これは、0.02mTorr以下ではスパッタ放電の発生が困難なためであり、一方0.30mTorr以上では成膜されるAlN膜の緻密性が悪化して、その絶縁性が悪化するからである。以上から、到達真空度、供給ガスの酸素の分圧比、及び供給ガス圧の最適範囲が得られる。
【0043】
更に、本実施形態においては上記工程のステップ4にてプレ・スパッタを行うが、プレ・スパッタの当初は窒素ガスのみを供給することとしている。これは、窒素ガスと酸素ガスを混合した混合ガスによりスパッタ放電を開始させると、ターゲットであるアルミニウムの表面に酸化膜が生成され易くなるために膜形成速度に相関の強いスパッタ率の変動が生じて生産上不都合となるためである。但し、生産上の不都合を除けば、上記条件に従うところの0.2%〜5.0%の酸素分圧比を有する窒素ガスと酸素ガスの混合ガスにて放電を開始させることも可能である。
【0044】
以上説明したように、本実施形態においては、スパッタ条件を最適に保ちつつ窒化アルミニウムを成膜するので、熱伝導度、耐薬品性等に優れた窒化アルミニウム及び同窒化アルミニウムを有する磁気ヘッドを得ることが可能となる。
【0045】
尚、上記実施形態においては、イオンビーム方式のスパッタリング装置を用いて窒化アルミニウム膜を形成したが、本発明は、例えば、チャンバ内に基板とスパッタリングターゲットとを対向して配置するとともに、チャンバ内に窒素ガス、或は窒素と酸素の混合ガスを導入しつつ同チャンバ内を真空ポンプ等の排気手段によって所定の圧力に維持し、前記基板が載置されたアノードと前記スパッタリングターゲットを保持するカソードとの間に所定の電圧を印加することによりスパッタを行う反応性スパッタ装置等の他のスパッタ装置によっても達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のAlN膜の製造方法が適用される磁気抵抗効果薄膜磁気ヘッドの斜視図である。
【図2】 本発明のAlN膜の製造方法を達成するためのイオンビームスパッタ装置の一実施形態である。
【図3】 図2に示したスパッタ用ガンの概念図である。
【図4】 本発明のAlN膜製造方法におけるチャンバ内の到達真空度と生成されたAlN膜の熱伝導度の関係を示す図である。
【図5】 本発明のAlN膜製造方法における混合ガスの酸素ガスの分圧比に対するAlN膜の現像液エッチングレートの変化を示す図である。
【図6】 本発明のAlN膜製造方法における混合ガスの酸素ガスの分圧比に対するAlN膜の熱伝導度の変化を示す図である。
【符号の説明】
30…イオンビームスパッタ装置、31…チャンバ、32…基板ホルダー、33…シャッター、34…ターゲット(Al)、35…スパッタ用ガン、36…プレ・クリーニング用ガン、38…窒素ガス供給源、40…アルゴンガス供給源、42…混合ガス供給源、S…試料(製造途中の磁気抵抗効果薄膜磁気ヘッドのウエハ)。
Claims (4)
- チャンバ内においてアルミニウムをターゲットとしたスパッタリングにより基板上に窒化アルミニウムを成膜する窒化アルミニウム膜の製造方法において、前記チャンバ内の圧力を1×10-6Torr以下とした後に、0.02mTorrから0.3mTorrの範囲内のガス圧を有する窒素と酸素の混合ガスを用いてイオンビームスパッタ法にてスパッタリングを行うことを特徴とする窒化アルミニウム膜の製造方法。
- チャンバ内においてアルミニウムをターゲットとしたスパッタリングにより基板上に窒化アルミニウムを成膜する窒化アルミニウム膜の製造方法において、前記チャンバ内の圧力を1×10-6Torr以下とし、次いで窒素ガスのみによりスパッタリング放電を開始した後に、0.02mTorrから0.3mTorrの範囲内のガス圧を有する窒素と酸素の混合ガスを用いてイオンビームスパッタ法にてスパッタリングを行うことを特徴とする窒化アルミニウム膜の製造方法。
- 前記混合ガスの窒素に対する酸素の分圧比(O2/N2)を0.2%から5.0%の範囲内とした請求項1又は2に記載の窒化アルミニウム膜の製造方法。
- 基板上に下部絶縁膜を形成する工程、前記下部絶縁膜上に薄膜の磁気抵抗効果素子を形成する工程、及び前記磁気抵抗効果素子の上に上部絶縁膜を形成する工程を含む磁気ヘッドの製造方法において、前記下部絶縁膜を形成する工程及び前記上部絶縁膜を形成する工程のうちの少なくとも一の工程が請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の製造方法のうちの一を含む磁気ヘッドの製造方法。
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