JP3547930B2 - 薄膜磁気ヘッド - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、パーソナルコンピュータ、或るいはワークステーション等の情報処理装置に用いられるハ−ドディスク、或るいはフロッピーディスク等の磁気記録媒体(以下「記録媒体」と称する。)上を相対的に移動して情報を読み出したり、或るいは書き込んだりする磁気抵抗効果素子部を有する薄膜磁気ヘッドに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、薄膜磁気ヘッドは記録媒体への情報の高密度記録に際して用いられている。斯かる薄膜磁気ヘッドとしては、特開平6−223331号公報に開示されたものがあり、図7はそのヘッドの概略断面図である。
【0003】
従来の薄膜磁気ヘッドは、図7に示すように、基板1の上部にダイヤモンドライクカーボン(以下「DLC」と称する。)からなる絶縁層20、シールド層3、DLCからなる絶縁層21、磁気抵抗効果素子部(以下「MR素子層」と称する。)5、リード層6−A、6−B、DLCからなる絶縁層22、及びシールド層8を順次積層した構成となっている。
【0004】
更に、図8は、MR素子層5、リード層6−A及びリード層6−Bの部分拡大図である。
【0005】
図8によれば、短冊状のMR素子層5の両端にリード層6−A、及びリード層6−Bが接続されている。MR素子層5は基板1側から、軟磁性体層10、非磁性の中間層11、及び磁性抵抗層12が順次積層形成されており、軟磁性体層10は磁気抵抗層12にバイアス磁界を印加するための膜であり、また非磁性の中間層11は軟磁性体層10と磁気抵抗層12を磁気的に分離するための膜であり、更に磁気抵抗層12は磁束の変化を信号に変換するための膜である。
【0006】
ここで、上述の薄膜磁気ヘッドを用いて記録媒体に情報を記録するに際しては、MRヘッドのリード層6−A、6−Bに定格電流を流すことによって、電流はリード層6−A、MR素子層5、及びリード層6−Bを順次流れた後、電源に戻る。このときMR素子層5に流れる電流により、電流方向とは直角方向に磁界が発生し、磁気抵抗層12と軟磁性体層10に磁界が誘起され、カップリングの効果により磁気抵抗層12が通電方向とは直角方向にバイアスされる。
【0007】
このバイアスされた状態で、外部から磁界を受けると、磁気抵抗層12の抵抗が磁界の変化に伴って変化し、この抵抗の変化を信号として処理することにより出力を得ることが可能となる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
然し乍ら、一般的にDLCは内部応力、特に圧縮応力が大きく、この圧縮応力の作用によりDLCに密着している物体には、引張力が作用する。
【0009】
従って、上述のような薄膜磁気ヘッドにあっては、リード層6−A、リード層6−B、及びMR素子層5は、特に絶縁層22によって挟持されているため、MR素子層5は絶縁層21、絶縁層22の圧縮応力によって変形されて、所望の電気的特性を得ることができなくなってしまい、信頼性の上で問題があった。
【0010】
更に、上述のように高い圧縮応力を持つ絶縁層をシールド層上に直接形成したのでは、絶縁層の圧縮応力の作用より、経年変化して当該絶縁層を含むその上層部が基板から剥離する可能性があった。
【0011】
そこで、本発明は、MR素子層が水素を含む被膜、特に水素化非晶質炭素系被膜からなる絶縁層で挟持されていても、そのMR素子層の変形を伴うことなく、所望の電気的特性を得ることが可能であるとともに、絶縁層を含むその上層部が基板から剥離することがなく、信頼性が高い薄膜磁気ヘッドを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の薄膜磁気ヘッドは、磁気記録媒体上を相対的に移動して情報を書き込む磁気抵抗効果素子部を備える薄膜磁気ヘッドであって、該素子部は水素化非晶質炭素系被膜から構成された、下部ギャップ絶縁層、及び上部ギャップ絶縁層にて挟持され、前記上部ギャップ絶縁層の膜中水素濃度が、前記下部ギャップ絶縁層の膜中水素濃度より高いことを特徴とする。
【0015】
本発明の薄膜磁気ヘッドは、磁気記録媒体上を相対的に移動して情報を書き込む磁気抵抗効果素子部を備える薄膜磁気ヘッドであって、該素子部は基板上に形成され、水素化非晶質炭素系被膜から構成された、下部ギャップ絶縁層、及び上部ギャップ絶縁層にて挟持され、前記上部ギャップ絶縁層の圧縮応力が、前記下部ギャップ絶縁層の圧縮応力より低いことを特徴とする。
【0017】
また、前記下部ギャップ絶縁層は、中間体を介して前記基板上に形成されることを特徴とする。
【0018】
更に、前記上部ギャップ絶縁層は、中間体を介して前記下部ギャップ絶縁層上に形成されることを特徴とする。
【0019】
また、前記中間体の膜厚が200Å以下、又は前記下部ギャップ絶縁層、或るいは上部ギャップ絶縁層の膜厚の1/5以下であることを特徴とする。
【0020】
前記上部ギャップ絶縁層は、前記磁気抵抗効果素子部上に直接形成された、前記中間体を介して形成されることを特徴とする。
【0021】
また、前記中間体は、Si、Ru、Mo、C、Ge、Zr、或るいはTi、又はこれらの元素と窒素、酸素のうち少なくとも1種の元素との混合物であることを特徴とする。
【0022】
前記下部ギャップ絶縁層、又は上部ギャップ絶縁層は、C、H又はこれらの元素とSi、B、N、Oのうち少なくとも1種の元素からなることを特徴とする。
【0023】
前記下部ギャップ絶縁層、又は上部ギャップ絶縁層の水素濃度が5〜65原子%であることを特徴とする。
【0024】
また、前記下部ギャップ絶縁層、又は上部ギャップ絶縁層の炭素原子間の結合のうち、25%以上がsp3結合であることを特徴とする。
【0025】
前記下部ギャップ絶縁層、又は上部ギャップ絶縁層を形成する被膜の内部応力が、0.5〜9.0GPaであること特徴とする。
【0026】
更に、前記下部ギャップ絶縁層、又は上部ギャップ絶縁層を形成する被膜の比抵抗が、10〜1012Ωcmであること特徴とする。
【0027】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図1〜図6を用いて説明する。
【0028】
本発明の薄膜磁気ヘッドは、次に示す第1ステップ〜第9ステップに従って作成される。図1を参照し乍ら、そのステップを説明すると、
(1)Al−TiC基板51上に絶縁層52(例えばAl)、及びシールド層53(例えばパーマロイ等のNi系合金)を形成したウエハ(以下、単に「ウエハ」という。)を基板ホルダーに設置する。
【0029】
(2)スパッタリング法によって、例えばSiからなる第1中間体54をウエハ上に形成する。
【0030】
(3)高応力膜からなる下部ギャップ絶縁層55を第1中間体54上に形成する。
【0031】
(4)スパッタリング法によって、例えばNi系合金からなるMR素子層56を下部ギャップ絶縁層55上の所定個所に形成する。
【0032】
(5)スパッタリング法によって、例えばAuからなる電極層57をMR素子層56の所定個所に形成する。
【0033】
(6)スパッタリング法によって、例えばSiからなる第2中間体58を、少なくとも電極層57、及びMR素子層56上に形成する。
【0034】
(7)低応力膜からなる上部ギャップ絶縁層59を、少なくとも第2中間体58上に形成する。
【0035】
(8)スパッタリング法によって、上部ギャップ絶縁層59上に、例えばパーマロイ等のNi系合金からなるシールド層60を形成する。
【0036】
(9)シールド層60上に誘電型磁気ヘッド部61を形成する。
【0037】
上述のステップのうち、第2ステップ、第3ステップ、第6ステップ、及び第7ステップは図5に示すECRプラズマ発生装置によって形成される。従って、図5に示すECRプラズマ発生装置において第2ステップ、及び第3ステップの処理工程が終了すると、一旦別のスパッタリング等の成膜手段において第4ステップ、及び第5ステップを処理した後、再びウエハは図5に示すプラズマ発生装置に戻され、その後の工程処理を行うことになる。
【0038】
図5は、本発明の薄膜磁気ヘッドの上に、第1中間体(第2ステップで形成)、第2中間層(第3ステップで形成)、下部ギャップ絶縁層(第6ステップで形成)、及び上部ギャップ絶縁層(第7ステップで形成)を形成するための装置の一例を示す概略断面図である。
【0039】
図5において、真空チャンバ28には、プラズマ発生室24が設けられている。プラズマ発生室24には、導波管22の一端が取り付けられている。導波管22の他方端には、マイクロ波供給手段21が設けられている。マイクロ波供給手段21で発生したマイクロ波は、導波管22、及びマイクロ波導入窓23を通ってプラズマ発生室24に導かれる。
【0040】
プラズマ発生室24には、プラズマ発生室24内にアルゴン(Ar)ガスなどの放電ガスを導入させるための放電ガス導入管25が設けられている。プラズマ発生室24の周囲には、プラズマ磁界発生装置26が設けられている。マイクロ波による高周波磁界と、プラズマ磁界発生装置26からの磁界を作用させることにより、プラズマ発生室24内に高密度のプラズマが形成される。
【0041】
真空チャンバ28内には筒状の基板ホルダー32が設けられている。この基板ホルダー32は、真空チャンバ28の壁面に対し垂直に設けられた軸(軸は図面に対して垂直方向に配されている。)の周りに回転自在に設けられている。
【0042】
基板ホルダー32の周面には、複数のウエハ33が等しい間隔で装着されており、その基板ホルダー32には、高周波電源30が接続されている。
【0043】
基板ホルダー32の周囲には、金属製の筒状のシールドカバー34が所定の距離隔てて設けられており、このシールドカバー34は、接地電極に接続されている。このシールドカバー34は、被膜を形成するときに、基板ホルダー32に印加されるRF電圧によって被膜形成箇所以外の基板ホルダー32と真空チャンバ28との間で放電が発生するのを防止するため設けられている。
【0044】
シールドカバー34には、第1の開口部35が形成されている。この第1の開口部35を通って、プラズマ発生室24から引き出されたプラズマが基板ホルダー32に装着されたウエハ33に放射される。真空チャンバ28内には、反応ガス導入管36が設けられている。この反応ガス導入管36の先端は、第1の開口部35の上方に位置する。
【0045】
図6は、この反応ガス導入管36の先端部分近傍を示す平面図である。
【0046】
図6において、反応ガス導入管36は、外部から真空チャンバ内にCHガス などの原料ガスを導入するためのガス導入部36aと、このガス導入部36aと垂直に接続されたガス放出部36bとから構成されている。
【0047】
ガス放出部36bは、基板ホルダー32の回転方向Aに対して垂直方向に配置され、第1の開口部35の上方の回転方向の上流側に位置するように設けられている。ガス放出部36bには、下方に向けて約45度の方向に複数の孔41が形成されている。本実施例では、8個の孔41が形成されている。
【0048】
図5を再び参照して、第1の開口部35の反対側には、第2の開口部43が形成されている。第2の開口部43の下方には、第1中間体54、第2中間体58を構成する材料原子からなるターゲット46が設けられている。ターゲット46の近傍には、ターゲット46をスパッタするため、不活性ガスのイオンをターゲット46に放射するイオンガン47が設けられている。
【0049】
本実施の形態では、不活性ガスとしてArガスを用いている。ターゲット46及びイオンガン47により、第2の開口部43を通り、ウエハ33上に第1中間体54、或るいは第2中間体58を構成する材料原子を放射することができる。<実施例1、実施例2>
図5に示す装置を用いて、ウエハ上に第1中間体54、第2中間体58としてのSi層と下部ギャップ絶縁層55、及び上部ギャップ絶縁層59からなる水素化非晶質炭素系被膜を形成する。
【0050】
まず、真空チャンバ28内を10−5〜10−7Torrに排気して、基板ホルダー32を約10rpmの速度で回転させる。次に、イオンガン47にArガスを供給して、Arイオンを取り出し、これをSiからなるターゲット46の表面に放射する。このときのArイオンの加速電圧は900eV、イオン電流密度は0.4mA/cmに設定した。
【0051】
以上の工程を約1分間行い、シールド層53の表面に膜厚20ÅのSiからなる第1中間体54を形成する。
【0052】
次に、イオンガン47からのArイオンの放射を止めたのち、ECRプラズマ発生装置の放電ガス導入管25からArガスを5.7×10−4Torrで供給するとともに、マイクロ波供給手段21から2.45GHz、200Wのマイクロ波を供給して、プラズマ発生室24内にArプラズマを形成し、形成されたArプラズマを第1の開口部35を通して、第1中間体54の表面に放射する。
【0053】
これと同時に、ウエハ33に自己バイアスを発生させるために高周波電源30から13.56MHzのRF電圧を基板ホルダー32に印加し、反応ガス導入管36からCHガスを1.0×10−3Torrで供給する。
【0054】
以上の工程により、第1中間体54上に膜厚1000Åの下部ギャップ絶縁層55を形成し、更に第2中間体58上に膜厚1000Åの上部ギャップ絶縁層59を形成したもの(実施例1)を作製し、更に第1中間体54上に膜厚400Åの下部ギャップ絶縁層55を形成し、更に第2中間体58上に膜厚400Åの上部ギャップ絶縁層59を形成したもの(実施例2)を作製した。
【0055】
次に、図2は、図1の薄膜磁気ヘッドの変形例であり、図1の薄膜磁気ヘッドとの相違点は、第2中間体58を、MR素子層56、及び電極層57にのみ形成したことである。
【0056】
斯かる薄膜磁気ヘッドは、第2中間体58を下部ギャップ絶縁層55を含むMR素子層56、及び電極層57上に形成した後、エッチング処理工程により、下部ギャップ絶縁層55上に形成された第2中間体58を除去することにより、図1の薄膜磁気ヘッドと同様な工程処理によって作製することができる。
【0057】
図3は、自己バイアス電圧と、下部ギャップ絶縁層55、及び上部ギャップ絶縁層59の膜厚1000Åにおける水素化非晶質炭素系被膜の膜中水素濃度、内部応力との関係図を示したものである。
【0058】
図3によると、自己バイアス電圧を変化させることにより、水素化非晶質炭素系被膜の膜中水素濃度、内部応力が制御されることが分かる。即ち、自己バイアス電圧を大きくすることにより、水素化非晶質炭素系被膜の膜中水素濃度は減少し、これと共に内部応力は増大し、膜中水素濃度を測定することにより、内部応力を推定することが可能となる。
【0059】
図4は自己バイアス電圧と、水素化非晶質炭素系被膜の膜内炭素原子間のsp3結合との関係図を示したものである。
【0060】
図4によると、自己バイアス電圧を変化させることにより、膜内炭素原子間のsp3結合の割合が変化することが分かる。即ち、自己バイアス電圧を変化させることにより、sp3結合の割合を制御することが可能である。また、図4に示した条件で形成した非晶質炭素系被膜の比抵抗測定を行った結果、10〜1012Ωcmであることを確認した。
【0061】
ここで、上述の実施例1、実施例2、及び比較例3(Al膜)として、下部ギャップ絶縁層55、及び上部ギャップ絶縁層59を高応力膜、低応力膜、及びAl膜から構成した場合のそれらの各膜を形成する際の自己バイアス電圧、膜の内部応力、及び硬度を比較したものを表1に示す。
【0062】
【表1】
Figure 0003547930
【0063】
この表1より、高応力膜、及び低応力膜の硬度、及び内部応力は、比較例3(Al膜)のそれより大きいことが分かる。
【0064】
尚、被膜の内部応力は、一般に基板の変形量から測定することができる。具体的には、薄い基板の上に応力の掛かった状態で被膜を形成すると、基板はその形と弾性定数によって決まるたわみを示すので、このたわみ量を検出することによって内部応力を評価することができる。この手法は「たわみ法」と呼ばれており(応力物理,第66巻,第7号(1987),第923頁〜第924頁)、表1に示 す被膜の内部応力はたわみ法で測定したものである。
【0065】
次に、表2では、本発明に係かる実施例1、実施例2、及び比較例3、比較例4で作製した薄膜磁気ヘッドにおいて、MR素子層56からシールド層53へリークする電流の相対比較を行った結果を示したものである。
【0066】
【表2】
Figure 0003547930
【0067】
この表2によると、比較例3との相対比較をすると、実施例1、実施例2のリーク電流割合は、極端に減少しているのに対して、比較例4のリーク電流割合は膜厚を400Åと薄膜化することにより、3.74倍に増加している。
【0068】
即ち、このことから、下部ギャップ絶縁層55、及び上部ギャップ絶縁層59に水素化非晶質炭素系被膜を用いることで、リーク電流を増加させることなく、薄膜化が可能となることが分かる。
【0069】
次に、下部ギャップ絶縁層55、上部ギャップ絶縁層59について、内部応力の異なる被膜を種々形成して、実施例1、実施例2、及び比較例1〜比較例3の5種類の薄膜磁気ヘッドを作製し、通電寿命試験を行うと共に、記録媒体との一定時間の摺動試験後のMR素子層56の摩耗量を測定し、その結果を表3に示す。
【0070】
【表3】
Figure 0003547930
【0071】
尚、通電寿命試験は、MR素子層56に所定電流を通電し、その電流値が規定値以下に減少するまでの寿命を測定した。
【0072】
表3によると、比較例1の通電寿命は、比較例3に比較して劣るが、実施例1、実施例2、及び比較例2は比較例3に比較して同等以上の結果となった。
【0073】
この原因は、比較例1では、上部ギャップ絶縁層59の高い内部応力が、MR素子層56に悪影響を及ぼしたものと考えられる。
【0074】
次に、実施例1、2の摺動試験によるMR素子層56の摩耗量は、比較例3に比較して1/4以下に減少しており、また比較例2よりも少なくなっている。
【0075】
この原因は、下部ギャップ絶縁層55が高硬度であるため、耐摩耗性が高く、この結果、非常に薄いMR素子層56を保護しているものと考えられる。
【0076】
尚、上述の実施の形態では、下部ギャップ絶縁層55、及び上部ギャップ絶縁層59の組成は、特に限定されるものではなく、摺動特性改善等の点で、不純物、例えばSi、B、Oが適量添加されたものも含まれる。
【0077】
また、第1中間体54、第2中間体58は、下地材料と下部ギャップ絶縁層55、及び上部ギャップ絶縁層59との密着性を改善するものであれば、Siに限定されるものではない。
【0078】
また、上述の実施の形態では、第1中間体54、及び第2中間体58として、Siを用いたが、これには限られず、Ru、Mo、C、Ge、Zr、或るいはTi、又はこれらの元素と窒素、酸素のうち少なくとも1種の元素との混合物を用いても、Siと同様な結果となることを実験により確認した。
【0079】
また、上述の形成条件における下部ギャップ絶縁層、及び上部ギャップ絶縁層を形成する被膜の形成温度は100℃以下であることを実験により確認した。
【0080】
更に、上述の実施の形態では、内部応力を制御する手法として、自己バイアス電圧を変化させているが、これに限られるものではなく、例えば膜中に窒素を添加することによって内部応力を制御してもよい。
【0081】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、MR素子層を下部ギャップ絶縁層、及び上部ギャップ絶縁層にて挟持した構成の薄膜磁気ヘッドにおいて、上部ギャップ絶縁層の内部応力が、下部ギャップ絶縁層の内部応力より小さく形成しているため、MR素子層に対して悪影響を及ぼすことがなくなり、薄膜磁気ヘッドの素子寿命と共に、耐摩耗性が向上する結果、信頼性が増す効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の薄膜磁気ヘッドの断面図である。
【図2】本発明の薄膜磁気ヘッドの断面図である。
【図3】本発明において、自己バイアス電圧と、下部ギャップ絶縁層、及び上部ギャップ絶縁層の膜厚1000Åにおける水素化非晶質炭素系被膜の膜中水素濃度、内部応力との関係図を示したものである。
【図4】本発明において、自己バイアス電圧と、水素化非晶質炭素系被膜の膜内炭素原子間のsp3結合比との関係図を示したものである。
【図5】本発明の実施の形態において第1中間体、第2中間層、下部ギャップ絶縁層、及び上部ギャップ絶縁層を形成する装置の一例を示す概略断面図である。
【図6】図5に示す装置の第1の開口部近傍を示す平面図である。
【図7】従来の薄膜磁気ヘッドの概略断面図である。
【図8】従来の薄膜磁気ヘッドにおけるMR素子層5、リード層6−A及びリード層6−Bの部分拡大図である。
【符号の説明】
51・・・基板
52・・・絶縁層
53、60・・・シールド層
54・・・第1中間体
55・・・下部ギャップ絶縁層
56・・・MR素子層
57・・・電極層
58・・・第2中間体
59・・・上部ギャップ絶縁層

Claims (12)

  1. 磁気記録媒体上を相対的に移動して情報を書き込む磁気抵抗効果素子部を備える薄膜磁気ヘッドであって、該素子部は水素化非晶質炭素系被膜から構成された、下部ギャップ絶縁層、及び上部ギャップ絶縁層にて挟持され、前記上部ギャップ絶縁層の膜中水素濃度が、前記下部ギャップ絶縁層の膜中水素濃度より高いことを特徴とする薄膜磁気ヘッド。
  2. 磁気記録媒体上を相対的に移動して情報を書き込む磁気抵抗効果素子部を備える薄膜磁気ヘッドであって、該素子部は基板上に形成され、水素化非晶質炭素系被膜から構成された、下部ギャップ絶縁層、及び上部ギャップ絶縁層にて挟持され、前記上部ギャップ絶縁層の圧縮応力が、前記下部ギャップ絶縁層の圧縮応力より低いことを特徴とする薄膜磁気ヘッド。
  3. 前記下部ギャップ絶縁層は、中間体を介して前記基板上に形成されることを特徴とする、請求項1または2に記載の薄膜磁気ヘッド。
  4. 前記上部ギャップ絶縁層は、中間体を介して前記下部ギャップ絶縁層上に形成されることを特徴とする、請求項1〜3のうちいずれかに記載の薄膜磁気ヘッド。
  5. 前記中間体の膜厚が200Å以下、又は前記下部ギャップ絶縁層、或るいは上部ギャップ絶縁層の膜厚の1/5以下であることを特徴とする、請求項1〜4のうちいずれかに記載の薄膜磁気ヘッド。
  6. 前記上部ギャップ絶縁層は、前記磁気抵抗効果素子部上に直接形成された、前記中間体を介して形成されることを特徴とする、請求項1〜5のうちいずれかに記載の薄膜磁気ヘッド。
  7. 前記中間体は、Si、Ru、Mo、C、Ge、Zr、或るいはTi、又はこれらの元素と窒素、酸素のうち少なくとも1種の元素との混合物であることを特徴とする、請求項1〜6のうちいずれかに記載の薄膜磁気ヘッド。
  8. 前記下部ギャップ絶縁層、又は上部ギャップ絶縁層は、C、H又はこれらの元素とSi、B、N、Oのうち少なくとも1種の元素からなることを特徴とする、請求項1〜7のうちいずれかに記載の薄膜磁気ヘッド。
  9. 前記下部ギャップ絶縁層、又は上部ギャップ絶縁層の水素濃度が5〜65原子%であることを特徴とする、請求項1〜9のうちいずれかに記載の薄膜磁気ヘッド。
  10. 前記下部ギャップ絶縁層、又は上部ギャップ絶縁層の炭素原子間の結合のうち、25%以上がsp3結合であることを特徴とする、請求項1〜9のうちいずれかに記載の薄膜磁気ヘッド。
  11. 前記下部ギャップ絶縁層、又は上部ギャップ絶縁層を形成する被膜の内部応力が、0.5〜9.0GPaであること特徴とする、請求項1〜10のうちいずれかに記載の薄膜磁気ヘッド。
  12. 前記下部ギャップ絶縁層、又は上部ギャップ絶縁層を形成する被膜の比抵抗が、10 9 〜10 12 Ωcmであること特徴とする、請求項1〜11のうちいずれかに記載の薄膜磁気ヘッド。
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