JP4308945B2 - ポリプロピレン系フィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリプロピレン系フィルムに関するものである。さらに詳しくは、プロピレン単独重合体又はプロピレン−エチレン共重合体からなる基材層(中間層)に特定の組成物からなるシール層、さらにはラミネート層を設けたポリプロピレン系フィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
プロピレン単独重合体からなるフィルムは、剛性、透明性及び防湿性等に優れるものの、ヒートシール温度が高いことから、製袋を高速で行うことができず、生産性が向上しないという問題があった。そのため、製袋用として用いる場合には、通常、その片面又は両面に低温シール層を積層させたラミネートフィルムとして用いることが行われている。例えば、特開平7−68723号公報に開示されているように、シール層としてブテン−1とプロピレンとを共重合させたものを積層させ、ヒートシール温度を低下させる方法である。
【0003】
しかしながら、シール層としてブテン−1−プロピレン共重合体を用いた場合、ヒートシール温度は低下させることができるものの、ヒートシール性の経時変化が大きいという問題が指摘されていた。
また、プロピレン単独重合体からなるフィルムは、他の樹脂フィルムをラミネートする場合、そのままではラミネートすることができず、接着剤を用いたり、或いは表面にコロナ処理等によりアンカーを形成したりすることが不可欠であり、工程上、煩雑になったり、コストアップにつながるという問題があった。そのため、ラミネートする場合におけるアンカー形成を不要とする技術の出現も望まれていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような上記観点からなされたものであって、ヒートシール温度が低く、また許容されるヒートシール温度範囲も広く、かつヒートシール強度の経時変化の少ないシール層を有し、さらには、他の樹脂フィルムとのラミネート性にも優れたポリプロピレン系フィルムの提供を目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題につき鋭意検討した結果、プロピレン単独重合体又はプロピレン−エチレン共重合体からなる基材層(中間層)に特定の組成物からなるシール層、さらにはラミネート層を設けることにより、上記の目的を達成できることを見出し、発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明は、以下のポリプロピレン系フィルムを提供するものである。
1.プロピレン単独重合体及び/又はプロピレン−エチレン共重合体からなる基材層及び下記(A),(B)及び(C)からなるシール層を設けたポリプロピレン系フィルム。
(A)プロピレン−エチレン共重合体: 30〜60重量%
(A-1) 共重合体中のエチレン単位の含有量が0.2〜10重量%であり、かつ、
(A-2) 共重合体のMIが1〜20g/10分である。
(B)ブテン−1−プロピレン共重合体: 30〜60重量%
(B-1) 共重合体中のプロピレン単位の含有量が10〜30重量%であり、かつ、
(B-2) 共重合体のMIが1〜10g/10分である。
(C)エチレン−α−オレフィン共重合体: 5〜25重量%
(C-1) 共重合体の密度が、0.86〜0.91g/cm3 であり、
(C-2) 共重合体のMIが1〜50g/10分であり、
(C-3) 共重合体のMw/Mnが1.8〜3.0であり、
(C-4) α−オレフィンの炭素数が6以上であり、かつ、
(C-5) 共重合体の直鎖中の炭素数1000個当たりの分岐数が20個以上である。
2.下記(I)〜(III)の層からなるポリプロピレン系フィルム。
(I)エチレン含有量0.2〜10重量%のプロピレン−エチレン共重合体5〜80重量%と、密度0.900〜0.950g/cm3 のエチレン−α−オレフィン共重合体95〜20重量%からなるラミネート層、
(II)プロピレン単独重合体及び/又はプロピレン−エチレン共重合体からなる中間層、
(III)下記(A),(B)及び(C)からなるシール層
(A)プロピレン−エチレン共重合体: 30〜60重量%
(A-1) 共重合体中のエチレン単位の含有量が0.2〜10重量%であり、かつ、
(A-2) 共重合体のMIが1〜20g/10分である。
(B)ブテン−1−プロピレン共重合体: 30〜60重量%
(B-1) 共重合体中のプロピレン単位の含有量が10〜30重量%であり、かつ、
(B-2) 共重合体のMIが1〜10g/10分である。
(C)エチレン−α−オレフィン共重合体: 5〜25重量%
(C-1) 共重合体の密度が、0.86〜0.91g/cm3 であり、
(C-2) 共重合体のMIが1〜50g/10分であり、
(C-3) 共重合体のMw/Mnが1.8〜3.0であり、
(C-4) α−オレフィンの炭素数が6以上であり、かつ、
(C-5) 共重合体の直鎖中の炭素数1000個当たりの分岐数が20個以上である。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
1.本発明にかかるポリプロピレン系フィルムの各層の内容
(1)基材層
いわゆる基材をなす層であり、プロピレン単独重合体及び/又はプロピレン−エチレン共重合体からなるものである。後述するラミネート層をさらに設けた多層フィルムにあっては中間層となるものである。
【0008】
▲1▼プロピレン単独重合体
特に問わないが、MI(メルトインデックスを示す。)が1〜20g/10分であるものが好ましい。なお、MIはJIS K−7210(測定条件:荷重2160g、温度:230℃)に準拠して測定した値である。
▲2▼プロピレン−エチレン共重合体
エチレン単位の含有量は0.2〜10重量%が好ましく、0.2〜5重量%がより好ましい。10重量%を超えると、剛性が低下し、その影響により、製袋適性も低下する傾向がある。このエチレン単位の含有量は、赤外吸収スペクトル法により測定したものである。
【0009】
また、MIは1〜20g/分が好ましく、5〜10g/10分がより好ましい。1g/分未満では、透明性、フィルムインパクトが低下する場合がある。一方、20g/10分を超えると、成形不良が起こりやすくなる。なお、MIの測定は上記と同じである。
▲3▼該プロピレン単独重合体又はプロピレン−エチレン共重合体の製造方法ついては、特に制限はなく、公知の方法で製造されたものでよい。例えば、所謂チーグラー−ナッタ触媒や均一系触媒を用いた製造方法によるものである。均一系触媒としては、従来から知られているバナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒、あるいは近年見いだされたシングルサイト触媒等の均一系触媒系も挙げることができる。
【0010】
▲4▼前記プロピレン単独重合体又はプロピレン−エチレン共重合体は必ずしも一つの重合体に限らず、別々に重合された二種以上の重合体であってもよい。即ち、二種以上のプロピレン単独重合体を混合したもの、二種以上のプロピレン−エチレン共重合体を混合したもの、或いは一種以上のプロピレン単独重合体及び一種以上のプロピレン−エチレン共重合体を混合したものであってもよい。
(2)シール層
本発明のポリプロピレン系フィルムのシール層は、下記(A)のプロピレン−エチレン共重合体30〜60重量%、下記(B)のブテン−1−プロピレン共重合体30〜60重量%、及び下記(C)のエチレン−α−オレフィン共重合体5〜25重量%の組成物からなるものである。好ましくは、プロピレン−エチレン共重合体35〜55重量%、ブテン−1−プロピレン共重合体30〜50重量%及びエチレン−α−オレフィン共重合体5〜20重量%であり、より好ましくは、プロピレン−エチレン共重合体40〜50重量%、ブテン−1−プロピレン共重合体35〜45重量%及びエチレン−α−オレフィン共重合体10〜15重量%である。
(A)のプロピレン−エチレン共重合体が30重量%未満では、剛性が不足し、耐ブロッキング性に劣り、60重量%を超えると、低温シール性やホットタック性に劣る。
(B)のブテン−1−プロピレン共重合体が30重量%未満では、低温シール性やホットタック性に劣り、60重量%を超えると、耐ブロッキング性に劣る。
(C)のエチレン−α−オレフィン共重合体が5重量%未満では、低温シール性が得られない。また、シール性の経時変化を少なくできない。一方、25重量%を超えると、(A)、(B)との相溶性が悪くなり、生産性が低下する。
【0011】
また、シール層には、本発明の目的を損なわない範囲で所望に応じて直鎖状低密度ポリエチレンを配合してもよい。
(A)のプロピレン−エチレン共重合体は、下記の(A-1) 及び (A-2)を満足するものである。
(A-1) 共重合体中のエチレン単位の含有量が0.2〜10重量%である。好ましくは、0.2〜5重量%である。10重量%を超えると、剛性が低下し、その影響により、製袋適性も低下する。このエチレン単位の含有量は、赤外吸収スペクトル法により測定したものである。
【0012】
(A-2) 共重合体のMIが1〜20g/10分、好ましくは、5〜10g/10分である。1g/10分未満では、透明性、フィルムインパクトが低下する場合がある。一方、20g/10分を超えると、成形不良が起こりやすくなる。なお、MIはJIS K−7210(測定条件:荷重2160g、温度:230℃)に準拠して測定する。
(B)のブテン−1−プロピレン共重合体は、下記の(B-1) 及び (B-2)を満足するものである。
【0013】
(B-1) 共重合体中のプロピレン単位の含有量が10〜30重量%である。このプロピレン単位の含有量は、NMRにより測定したものである。
(B-2) 共重合体のMIが1〜10g/10分、好ましくは、1〜5g/10分である。1g/10分未満でも、20g/10分を超えても、成形不良が起こりやすくなる。なお、MIはASTM D1238 Eに準拠して測定する。
(C)のエチレン−α−オレフィン共重合体は、下記の(C-1) 〜(C-5) を満足するものである。
【0014】
(C-1) 共重合体の密度が、0.86〜0.91g/cm3 、好ましくは0.86〜0.88g/cm3 である。0.91g/cm3 を超えるとヒートシール性が低下する場合がある。なお、密度はJIS K−7112に準拠して測定する。
(C-2) 共重合体のMIが1〜50g/10分、好ましくは1〜10g/10分である。MIが1g/10分未満でも、50g/10分を超えてもプロピレン−エチレン共重合体との相溶性が悪くなる。なお、MIはJIS K−7210(測定条件:荷重2160g、温度:190℃)に準拠して測定する。
【0015】
(C-3) 共重合体のMw/Mn(重量平均分子量/数平均分子量を示す。)は1.8〜3.0であり、好ましくは、1.8〜2.5のものである。なお、Mw/Mnは、GPC法により測定する。
(C-4) α−オレフィンの炭素数は6個以上であり、好ましくは、8〜18個の範囲のものである。炭素数が6未満では、適切なシール性が得られない場合がある。このα−オレフィンとしては、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン等の直鎖状モノオレフィン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、2,2,4−トリメチルペンテン等の分岐状モノオレフィン等を挙げることができる。これらのα−オレフィンは、それぞれ単独で用いてもよく、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
(C-5) 共重合体の直鎖の炭素数1000個当たりの分岐数が20個以上、好ましくは35個上、さらに好ましくは50個以上である。α−オレフィンにもよるが、20個以上ないと低密度とならない。また、分岐数が多いものは、プロピレン−エチレン共重合体との相溶性が高くなる傾向がある。この値は、1,2,3−トリクロロベンゼン/重ベンゼン(90/10(体積比))混合溶媒に溶解した試料を用いて、13C−NMRスペクトル(測定装置は日本電子社製EX−400を使用)から求める。スクトルの帰属及びα−オレフィンの定量方法は、Pooter M.D.,J. Appl. Polym. Sci.,42,399 (1991)等による。
【0017】
上記(A)のプロピレン−エチレン共重合体の製造方法としては、基材層に用いられるプロピレン−エチレン共重合体と同様な製造方法でよい。また、この重合体は必ずしも一つの重合体に限らず、別々に重合された二種以上の重合体であってもよい。
上記(B)のブテン−1−プロピレン共重合体の製造方法としては、特に制限はなく、公知の方法で製造されたものでよい。例えば、所謂チーグラー−ナッタ触媒を用いた製造方法によるものである。具体的には、チタン含有化合物自体又はチタン含有化合物をマグエネシウム化合物等の担体に担持させたものを主触媒とし、有機アルミニウム化合物を助触媒とした触媒系で、ブテン−1に所望のプロピレンを添加して重合を行う方法を挙げることができる。この重合は、スラリー重合法、溶液重合法、気相重合法等のいずれのプロセスでもよい。
【0018】
また、均一系触媒を用いてもよく、近年見いだされたシングルサイト触媒等の均一系触媒系も挙げることができる。シングルサイト触媒は、溶媒下の均一系重合の他、スラリー重合法、気相重合法等のいずれのプロセスでもよい。
上記の重合体は必ずしも一つの重合体に限らず、別々に重合された二種以上の重合体であってもよい。
【0019】
上記(C)のエチレン−α−オレフィン共重合体は、次に示すようなシングルサイト系触媒を用いて製造したものを好ましく用いることができる。
シングルサイト系触媒は、特開昭58−19309号公報、特開昭61−130314号公報、特開平3−163088号公報、特開平4−300887号公報、特開平4−211694号公報、特表平1−502036号公報等に記載されるようなシクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基、インデニル基、置換インデニル基等を1又は2個配位子とする遷移金属化合物、及び該配位子が幾何学的に制御された遷移金属化合物が挙げられ、活性点の性質が均一であることを特徴とするものである。これらの遷移金属化合物中の遷移金属としては、ジルコニウム、チタン、ハフニウムを好ましく挙げることができる。
【0020】
具体的なシングルサイト系触媒としては、シクロペンタジエニルジルコニウムトリクロリド、ペンタメチルシクロペンタジエニルジルコニウムトリクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジアルキル、インデニルジルコニウムトリクロリド、ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン−ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、(ジメチルシリレン)(ジメチルシリレン)−ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、(ジメチルシリレン)−ビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(ジメチルシリレン)−ビス(ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン−ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、(エチレン)(エチレン)−ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、(エチレン)(エチレン)−ビス(3−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(エチレン)(エチレン)−ビス(4,7−ジメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(第3級ブチルアミド)(テトラメチル−η5-シクロペンタジエニル)−1,2−エタンジイルジルコニウムジクロリド、(第3級ブチルアミド)ジメチル(テトラメチル−η5-シクロペンタジエニル)シランジルコニウムジクロリド、(メチルアミド)(テトラメチル−η5-シクロペンタジエニル)−1,2−エタンジイルジルコニウムジクロリド等及びこれらの化合物におけるジルコニウムをハフニウム、又はチタンに置換したものを挙げることができる。特に(第3級ブチルアミド)(テトラメチル−η5-シクロペンタジエニル)−1,2−エタンジイルジルコニウムジクロリド、(第3級ブチルアミド)ジメチル(テトラメチル−η5-シクロペンタジエニル)シランジルコニウムジクロリド、(メチルアミド)(テトラメチル−η5-シクロペンタジエニル)−1,2−エタンジイルジルコニウムジクロリド等及びこれらの化合物におけるジルコニウムをハフニウム、又はチタンに置換したものが好適である。
【0021】
また、同時に用いられる助触媒としては、上記の公報に記載されているものを用いることができる。好ましい助触媒として、鎖状又は環状アルミノキサン(例えば、メチルアルミノキサン)、イオン性化合物(例えば、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸N,N−ジメチルアンモニウム、テトラフェニル硼酸トリエチルアンモニウム)、ルイス酸(例えば、トリフェニル硼酸、トリス(ペンタフルオロフェニル)硼酸等の硼素化合物)、アルキルアルミニウム(例えば、トリエチルアルミニウム、イソブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム)等を挙げることができる。
【0022】
また、重合方法としては、気相法、溶液法等いずれの方法でもよい。
このシール層においても、本発明の目的を損なわない範囲で、所望に応じて、常用される添加剤、具体的には酸化防止剤、中和剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤又は耐電防止剤の他、直鎖状低密度ポリエチレンなどを必要に応じて配合することができる。
(3)ラミネート層
上記、基材層及びシール層に、さらにラミネート層を設けてもよい。この場合、ラミネート層は基材層側に積層される。
【0023】
ラミネート層は、(i)エチレン含有量0.2〜10重量%のプロピレン−エチレン共重合体5〜80重量%と、(ii)密度0.900〜0.950g/cm3のエチレン−α−オレフィン共重合体95〜20重量%の組成物からなるものである。
(i)プロピレン−エチレン共重合体
いわゆるプロピレン−エチレンランダム共重合体である。エチレン含有量が0.2〜10重量%、好ましくは0.2〜5重量%である。10重量%を超えると、剛性が低下し、その影響により、製袋適性も低下する傾向がある。
【0024】
配合量は5〜80重量%、好ましくは10〜60重量%であり、5%未満であると、ラミネート層と中間層との間の層間剥離が起こりやすくなりやすいという問題があり、80重量%を超えるとポリサンドラミネートを行った場合、十分な接着強度が得られないという問題がある。
プロピレン−エチレン共重合体の製造方法ついては、特に制限はなく、公知の方法で製造されたものでよい。例えば、所謂チーグラー・ナッタ触媒や均一系触媒を用いた製造方法によるものである。均一系触媒としては、従来から知られているバナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒、あるいは近年見いだされたシングルサイト触媒等の均一系触媒系も挙げることができる。
【0025】
(ii)エチレン−α−オレフィン共重合体
具体的には、直鎖状低密度ポリエチレンが該当するが、α−オレフィンとしては、好ましくは炭素数3〜12のものであり、更に好ましくは炭素数6〜8のものである。密度は、0.900〜0.950g/cm3、好ましくは0.900〜0.930g/cm3、さらに好ましくは0.905〜0.925g/cm3である。0.900未満であると、耐熱性に欠け、ブロッキング等を生じやすいという問題があり、0.950を超えると剛性が高くなりすぎて、ピンホールが発生しやすく、また風合いが悪くなるおそれがある。
【0026】
(iii)前記プロピレン−エチレン共重合体及びエチレン−α−オレフィン共重合体は各々必ずしも一つの重合体に限らず、二種以上の重合体であってもよい。即ち、一種以上のプロピレン−エチレン共重合体及び一種以上のエチレン−α−オレフィン共重合体を混合したものであってもよい。
2.各層の層の厚み及びその比
本発明にかかるポリプロピレン系フィルムの全体の厚みは、10〜70μmの範囲であり、OPP、PET等のフィルムへのラミネート用等には、特に15〜50μmの範囲のものがよい。
(1)基材層とシール層からなる場合
基材層とシール層の厚み比(基材層:シール層)は、1:(0.1〜0.5)の範囲にある。1:(0.1〜0.3)の範囲にあるものがさらに好ましい。
(2)ラミネート層、中間層及びシール層からなる場合
構成する各層の厚み比としては、ラミネート層:中間層:シール層が、(0.1〜0.5):1:(0.1〜0.5)であり、好ましくは(0.2〜0.3):1:(0.2〜0.3)である。シール層が0.1未満のときは十分なシール性が得られないおそれがあり、0.5を超えると、剛性が低下するおそれがある。
3.本発明にかかるポリプロピレン系フィルムの製造方法等
(1)本発明にかかるポリプロピレン系フィルムの製造方法については特に制限はなく、ラミネート層,中間層及びシール層をそれぞれ別に製膜した後、公知のドライラミネート法により積層してもよいし、公知の共押出法により同時に成形してもよい。
(2)本発明にかかる、基材層及びシール層からなるポリプロピレン系フィルムを共押出法で製造する場合、基材層を異なる添加剤処方にして複数層設け、そこにシール層を積層させるという構成にしてもよい。
(3)本発明にかかるポリプロピレン系フィルムは、前記の各層からなるもののみならず、該層にさらに必要に応じて、他の樹脂、紙等が積層されたものであってもよい。
【0027】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明する。
〔実施例1〕
(1)各層の内容
(I)基材層
以下の基材層I及びIIからなるものである。
【0028】
▲1▼基材層I
・プロピレン単独重合体
出光石油化学製「F−704NP」
密度:0.9g/cm3 、MI:7g/10分
・滑剤、アンチブロッキング剤としてシリカ系化合物を添加した。
【0029】
▲2▼基材層II
・プロピレン単独重合体
出光石油化学製「F−704NP」
密度:0.9g/cm3 、MI:7g/10分
・滑剤を添加した。
(II)シール層
以下の(A)〜(C)の他に、酸化防止剤、滑剤を、アンチブロッキング剤としてシリカ系化合物を添加した。
【0030】
(A)プロピレン−エチレンランダム共重合体 45重量%
・出光石油化学製「F−744NP」
・密度: 0.9g/cm3
・エチレン単位の含有量: 4重量%
・MI: 7g/10分
(B)ブテン−1−プロピレン共重合体 40重量%
・三井化学製「BL2481」
・密度: 0.9g/cm3
・プロピレン含量: 16重量%
・MI: 4g/10分
(C)エチレン−α−オレフィン共重合体 15重量%
・ダウケミカル製「エンゲージ KC−8852」
・密度: 0.874g/cm3
・MI: 3g/10分
・Mw/Mn: 2.0
・α−オレフィン : 1−オクテン
・分岐数 : 64.5
(2)フィルムの成形方法
上記の重合体のペレットを上記に示すように配合して、3層Tダイ共押出キャスト成形機により、フィルム全体厚みが20μmとなるように成形した。
【0031】
フィルムの層比は、基材層I/基材層II/シール層=1/5/1.2とした。
成形機は、基材層I/基材層II/シール層に対応して、それぞれ50mmφ/65mmφ/40mmφの押出機が設けてあり、スクリュー回転数は、基材層I/基材層II/シール層がそれぞれ 25/55/31(rpm)とした。
ダイス出口樹脂温度はそれぞれ230℃、チルロール温度は25℃、濡れ指数は38dyn/cmとした。
【0032】
また、全吐出量は46kg/hr、引取速度は68m/minとした。
(3)ヒートシール性評価方法
上記(2)で得たフィルムに、OPPフィルム(延伸ポリプロピレンフィルム:二村化学製、グレード:FOR、厚み:20μm)にエーテル系接着剤(大日精化製、C−88)でラミネートした。
【0033】
ラミネートは、中島精機エンジニアリング製(NADIC−L)ラミネート機により、OPPと上記のフィルムをそれぞれ供給し、OPPと上記のフィルムのラミネート層側とをドライラミネーションした。
また、フィルムのシール性の経時変化を調べるために、▲1▼ドライラミネート直後のフィルム(保管日数0日)、▲2▼ドライラミネート後、50℃に設定したオーブンに7日間保管したフィルム(保管日数7日)、▲3▼さらに引き続き50℃に設定したオーブンに7日間保管したフィルム(保管日数14日)、の3種のフィルムについて、以下に示すヒートシール性評価を行った。
【0034】
ヒートシール性評価は、上記で得られたフィルムをシール部が15mm幅となるように短冊状にサンプリングし、下記のシール条件でシール後、温度23±2 ℃、湿度50±10 %で、 16 時間以上状態調節した後、同じ温度、湿度条件下にて、T型剥離法で、シール強度の測定を行い評価した。この評価は、JIS Z−1707に準拠したもので、剥離速度は200mm/minとした。
【0035】
各シール温度でのヒートシール強度の値を表1に示す。
<シール条件>
・シール温度:表1に示すように、90℃〜140℃にわたって10℃刻みの各温度で行った。
・シール時間:1秒
・シール面積:15×10mm
・シール圧力:2kg/cm2
(4)ヒートシール性評価結果
結果を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
〔比較例1〕
実施例1において、そのシール層として、(C)エチレン−α−オレフィン共重合体(ダウケミカル製「エンゲージ KC−8852」)を用いることなく、(A)プロピレン−エチレンランダム共重合体(出光石油化学製「F−744NP」)50重量%と(B)ブテン−1−プロピレン共重合体(三井化学製「BL2481」)50重量%にした以外は実施例1と同様に行った。
【0038】
結果を表1に示す。
〔実施例2〕
(1)各層の内容
(I)ラミネート層
以下の▲1▼,▲2▼の他に、滑剤、アンチブロッキング剤としてシリカ系化合物を添加した。
【0039】
▲1▼プロピレン−エチレンランダム共重合体 41重量%
・出光石油化学製「F−744NP」
・密度: 0.9g/cm3
・エチレン単位の含有量: 4重量%
・MI: 7g/10分
▲2▼エチレン−α−オレフィン共重合体 59重量%
・出光石油化学製「0438CL」
・密度: 0.916g/cm3
・α−オレフィンの種類:1−オクテン
(II)中間層
以下の▲1▼の他に、滑剤を添加した。
【0040】
▲1▼プロピレン単独重合体
・出光石油化学製「F−704NP」
・密度: 0.9g/cm3
・MI: 7g/10分
(III)シール層
以下の(A)〜(C)の他に、酸化防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤としてシリカ系化合物を添加した。
【0041】
(A)プロピレン−エチレンランダム共重合体 45重量%
・出光石油化学製「F−744NP」
・密度: 0.9g/cm3
・エチレン単位の含有量: 4重量%
・MI: 7g/10分
(B)ブテン−1−プロピレン共重合体 40重量%
・三井化学製「BL2481」
・密度: 0.9g/cm3
・プロピレン含量: 16重量%
・MI: 4g/10分
(C)エチレン−α−オレフィン共重合体 15重量%
・ダウケミカル製「エンゲージ KC−8852」
・密度: 0.874g/cm3
・MI: 3g/10分
・Mw/Mn: 2.0
・α−オレフィン : 1−オクテン
・分岐数 : 64.5
(2)フィルムの成形方法及び(3)ヒートシール性評価方法
実施例1と同様に行った。
(4)ヒートシール性評価結果
結果を表2に示す。
〔比較例2〕
実施例2において、そのシール層として、(C)エチレン−α−オレフィン共重合体(ダウケミカル製「エンゲージ KC−8852」)を用いることなく、(A)プロピレン−エチレンランダム共重合体(出光石油化学製「F−744NP」)50重量%と(B)ブテン−1−プロピレン共重合体(三井化学製「BL2481」)50重量%にした以外は実施例2と同様に行った。
【0042】
結果を表2に示す。
【0043】
【表2】
【0044】
【発明の効果】
本発明により、ヒートシール温度が低く、またヒートシール強度の経時変化の少ないシール層を有し、さらには、他の樹脂フィルムとのラミネート性にも優れたポリプロピレン系多層フィルムを得ることができた。
Claims (4)
- プロピレン単独重合体及び/又はプロピレン−エチレン共重合体からなる基材層及び下記(A),(B)及び(C)からなるシール層を設けたポリプロピレン系フィルム。
(A)プロピレン−エチレン共重合体:30〜60重量%
(A-1) 共重合体中のエチレン単位の含有量が0.2〜10重量%であり、かつ、(A-2) 共重合体のMIが1〜20g/10分である。
(B)ブテン−1−プロピレン共重合体:30〜60重量%
(B-1) 共重合体中のプロピレン単位の含有量が10〜30重量%であり、かつ、(B-2) 共重合体のMIが1〜10g/10分である。
(C)エチレン−α−オレフィン共重合体:5〜25重量%
(C-1) 共重合体の密度が、0.86〜0.91g/cm3であり、(C-2) 共重合体のMIが1〜50g/10分であり、(C-3) 共重合体のMw/Mnが1.8〜3.0であり、(C-4) α−オレフィンの炭素数が6以上であり、かつ、(C-5) 共重合体の直鎖中の炭素数1000個当たりの分岐数が20個以上である。 - 下記(I)〜(III)の層からなるポリプロピレン系フィルム。
(I)エチレン含有量0.2〜10重量%のプロピレン−エチレン共重合体5〜80重量%と、密度0.900〜0.950g/cm3のエチレン−α−オレフィン共重合体95〜20重量%からなるラミネート層、(II)プロピレン単独重合体及び/又はプロピレン−エチレン共重合体からなる中間層、(III)下記(A),(B)及び(C)からなるシール層
(A)プロピレン−エチレン共重合体:30〜60重量%
(A-1) 共重合体中のエチレン単位の含有量が0.2〜10重量%であり、かつ、(A-2) 共重合体のMIが1〜20g/10分である。
(B)ブテン−1−プロピレン共重合体:30〜60重量%
(B-1) 共重合体中のプロピレン単位の含有量が10〜30重量%であり、かつ、(B-2) 共重合体のMIが1〜10g/10分である。
(C)エチレン−α−オレフィン共重合体:5〜25重量%
(C-1) 共重合体の密度が、0.86〜0.91g/cm3であり、(C-2) 共重合体のMIが1〜50g/10分であり、(C-3) 共重合体のMw/Mnが1.8〜3.0であり、(C-4) α−オレフィンの炭素数が6以上であり、かつ、(C-5) 共重合体の直鎖中の炭素数1000個当たりの分岐数が20個以上である。 - 請求項1に記載のポリプロピレン系フィルムにおいて、
前記ポリプロピレン系フィルム全体の厚みが10μm以上70μm以下であり、
前記基材層と前記シール層の厚み比が、1:(0.1〜0.5)の範囲にある
ことを特徴としたポリプロピレン系フィルム。 - 請求項2に記載のポリプロピレン系フィルムにおいて、
前記ポリプロピレン系フィルム全体の厚みが10μm以上70μm以下であり、
前記ラミネート層、前記中間層および前記シール層の厚み比が、(0.1〜0.5):1:(0.1〜0.5)の範囲にある
ことを特徴としたポリプロピレン系フィルム。
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