JP4308711B2 - 鉄骨部材とコンクリート部材との接合構造 - Google Patents
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Description
本発明では、フランジ端辺にフランジ面外方向へ延びる板体が設けられているため、地震などの外力が鉄骨部材に作用した場合であっても、この外力は、フランジ端辺の板体から支圧としてコンクリートに伝達され、主筋にはその付着力によりコンクリートからの力が伝達される。ここで、板体の貫通孔は主筋外径よりも若干大きく形成されており、主筋は貫通孔に若干の隙間をおいて緩やかに挿通され、特にナットなどにより板体や鉄骨に固定される必要が無いものである。
更に詳細に記載すれば、鉄骨部材のウェブの一部を低降伏点鋼板から形成した制震ダンパーをコンクリート柱梁架構内に設置する場合、上下のコンクリート梁から鉄骨根巻部としてコンクリート突出部を設け、これら鉄骨根巻部において延びる主筋をフランジ端辺の板体の貫通孔に挿通させれば、上記鉄骨部材とコンクリート部材との接合構造が構成される。
前記コンクリート壁と鉄骨梁との接合部においては、コンクリート壁から鉄骨根巻部を突出させ、鉄骨根巻部において延びる主筋をフランジ端辺の板体の貫通孔に挿通させれば、上記鉄骨部材とコンクリート部材との接合構造が構成される。
またフランジ端辺板体の貫通孔に挿通した主筋は、コンクリートの付着により鉄骨に定着されるものであるため、ナット、熔接などによる定着作業が不要で施工の簡略化が可能になり、材料などのコストダウンもできる。引張側の鉄筋と圧縮側のフランジ端辺板体の支圧で過半のモーメントを伝達するため、コンクリートに作用する梃子作用による反力が小さいため、高強度のせん断補強筋を使用する必要が無くなり、この点からもコストダウンが可能になった。
本発明は、図1(a)(b)に示したように、制震ダンパー10とコンクリート梁20との接合部にも適用可能なものである。図1では理解を容易にするために、制震ダンパー10以外の構成を一点鎖線又は点線で示し、且つ、せん断補強筋などの他の鉄筋を省略した。鉄骨部材としての制震ダンパー10は、普通鋼板からなるウェブプレート11及び低降伏点鋼板からなるウェブプレート14の両側全長にフランジプレート12が設けられたものであり、フランジプレート12の両端辺12aには、鋼板からなるアンカープレート13が、図1(b)のように固定されており、このアンカープレート13はウェブプレート11にも熔接されている。アンカープレート13には貫通孔13aが穿設されている。またウェブプレート11,14には補剛部材としての横リブ14aと縦リブ14bとが設けられている。
以上の主筋22に加えて、図示しないせん断補強筋などの他の鉄筋が配筋され、コンクリートが打設されて鉄骨根巻部21A,21Bは形成されている。また主筋22の先端には、必要に応じて、主筋定着用金物25を取り付けても良く、これは下記の図2〜4においても同様である。
図5(a)〜(c)は実験に使用した構造モデルの図であって、せん断補強筋は図示を省略した。図5(a)(b)は従来例、図5(c)は本発明の接合構造である。
図5(a)の制震ダンパー70は、ウェブプレート71の両側全長にフランジプレート72を有し、補剛部材としての縦リブ73と横リブ74を中間に備えたものである。この制震ダンパー70は、その上下端が上下コンクリート梁75A,75Bの腰壁76A,76Bに埋設され、腰壁76A,76Bには複数の主筋77が配筋されているが、これら主筋77と制震ダンパー70とは、コンクリート以外の如何なる固定手段によっても定着されていない。
図5(b)の制震ダンパー80は、ウェブプレート81の両側全長にフランジプレート82を有し、フランジプレート82の端部外側に縦リブ83と横リブ84とが突出し、横リブ84には貫通孔が設けられ、フランジプレートの中間内側に補剛部材としての横リブ85と縦リブ86が設けられたものである。この制震ダンパー80は、その上下端が上下コンクリート梁75A,75Bの腰壁76A,76Bに埋設され、腰壁76A,76Bには複数の主筋77が配筋され、このうちの所定の主筋77がフランジプレート82の横リブ84の貫通孔に挿通されてナット87で固定されている。
図5(c)は図1と同じ制震ダンパー10を上下コンクリート梁75A,75Bの腰壁76A,76Bに同様に埋設したものである。
実験では、図5(a)〜(c)の構造モデルに対応する試験体を形成し、鉄骨部材に油圧ジャッキでせん断力を加えて鉄骨部材の部材角を測定し、その結果をグラフにして図6に示した。図6のグラフ(a)〜(c)は、それぞれ図5(a)〜(c)に対応する。
図5(a)の従来例では、グラフ(a)に示したように、せん断力を所定値まで上昇させた時点で、それ以上にせん断力を上げることができず、鉄骨部材の変位のみが増加した。これは、コンクリートにひび割れが発生し、剛性が大きく低下し、鉄骨部材がコンクリートから抜け出したからであり、せん断耐力は(b)(c)と比較して50%程度であった。
図5(b)の従来例では、グラフ(b)に示したように、せん断力がグラフ(a)の最大値のほぼ2倍程度まで上昇した時点で、それ以上にせん断力が上がらず、部材角のみが増加した。これは、せん断力が所定値に達した時点で、横リブに固定されている主筋が降伏し、剛性が大きく低下し、さらに最大せん断耐力に達した後に、鉄筋コンクリート部分が破壊した。
図5(c)の本発明の実施例では、グラフ(c)に示したように、せん断力がグラフ(a)の最大値のほぼ2倍程度まで上昇し、加力実験を終了している。これは、油圧ジャッキの性能限界まで試験体にせん断力を加えたものの、鉄骨は降伏せず、コンクリートも破壊しなかったからである。
各試験体に関する上記結果から、本発明の接合構造は剛性が高く且つ変形がし難いという点で、図5(a)(b)の従来例よりも構造性能が優れていることが判った。
各試験体において、コンクリート中に埋設される鉄骨フランジに複数のひずみ計を設け、これにより得られたひずみ測定値から、コンクリート埋め込み部の応力伝達状況を検討した。すなわち、鉄骨フランジのひずみ測定値から平面保持を仮定して鉄骨断面に作用するモーメントを求め、鉄筋コンクリート部分の曲げモーメントで無次元化した値を求めた。図5(a)に対応する試験体では、てこ作用の反力により、埋め込み深さが浅い箇所でモーメントが最大になった。図5(b)に対応する試験体では、鉄筋コンクリート表面付近でモーメントが最大になり、埋め込まれた箇所では、ほとんどモーメントを負担していなかった。図5(c)に対応する試験体では、埋め込み深さが最も深い箇所付近、すなわち、アンカープレート付近でモーメントが最大になった。
以上の各試験体の応力伝達状況から、本発明では、曲げモーメントのほとんどをアンカープレートの支圧によりコンクリートに伝達するため、コンクリートには大きな力が作用しないことが判る。
11 ウェブ
12 フランジ
13 アンカープレート(フランジ端辺に設けられた板体)
13a 貫通孔
20 コンクリート梁
21A,21B 鉄骨根巻き部(コンクリート突出部)
22 主筋
40 鉄骨梁(鉄骨部材)
41 ウェブプレート
42 フランジプレート
43 アンカープレート(フランジ端辺に設けられた板体)
50 コンクリート柱
51 鉄骨根巻き部(コンクリート突出部)
52 主筋
60 コンクリート耐震壁
61 コンクリート耐震壁
62 鉄骨根巻き部(コンクリート突出部)
Claims (3)
- 鉄骨部材とコンクリート部材との接合構造であって、
鉄骨部材はウェブの両側全長にフランジを有し、鉄骨部材の両端においてフランジ面外方向に延びる板体が前記ウェブの両端にあるフランジ端辺のそれぞれに設けられ、該板体に複数の貫通孔が穿設されたものであり、
前記鉄骨部材がコンクリート部材内に埋設され、鉄骨部材の前記板体の貫通孔にコンクリート部材の主筋がナット,熔接などの定着によらず挿通されたものである接合構造。 - 前記鉄骨部材は柱梁架構における鉄骨梁であり、前記コンクリート部材はコンクリート柱から突出する鉄骨根巻部であり、前記主筋が鉄骨根巻部に配筋されたものである請求項1に記載の接合構造。
- 前記鉄骨部材は壁と接合する境界梁における鉄骨梁であり、前記コンクリート部材はコンクリート壁から突出する鉄骨根巻部であり、前記主筋が鉄骨根巻部に配筋されたものである請求項1に記載の接合構造。
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