JP4306357B2 - 正孔輸送性高分子及びそれを用いた有機電界発光素子 - Google Patents
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Description
これら素子の発光は、電極の一方から電子が注入され、もう一方の電極から正孔が注入されることにより、素子中の発光材料が高いエネルギー準位に励起され、励起された発光体が基底状態に戻る際の余分なエネルギーを光として放出する現象である。しかしながら、駆動電圧が30Vと未だ高く、また、膜中における電子・正孔キャリアの密度が低く、キャリアの再結合によるフォトンの生成確率が低いため十分な輝度が得られず、実用化には至らなかった。
しかし、これら、積層構造の電界発光素子では、有機発光体として8−キノリノールアルミニウム錯体やクマリン化合物など蛍光を発する低分子化合物を蒸着して用いられるため、低分子化合物を用いることによる欠点は解消されない。また、高分子化合物を塗布あるいは印刷法等のウエットプロセスで簡易に設けることができたとしても、ついで蒸着のための高真空を得る必要があるために、製造コスト等の点では不利となる可能性がある。
また、前記正孔輸送性高分子を用い、発光強度が大きく、発光効率が高く、且つ製造が容易な有機電界発光素子を提供することにある。
<1> 正孔輸送性を有する単量体の繰り返し構造を含む正孔輸送性高分子であって、前記単量体は、塩化メチレン中において360nmよりも長波長側に光吸収の極大値を有し、かつ、前記単量体のカチオンラジカルを形成するのに必要なイオン化エネルギーの絶対値と、前記単量体のカチオンラジカルが中性分子になる際に発生する電子親和力の絶対値との差の絶対値は、0.6eV以下であり、下記一般式(II)で表される繰り返し構造を含むポリエステル樹脂であることを特徴とする正孔輸送性高分子である。
<正孔輸送性高分子>
本発明の正孔輸送性高分子は、正孔輸送性を有する単量体の繰り返し構造を含む正孔輸送性高分子であって、前記単量体は、塩化メチレン中において360nmよりも長波長側に光吸収の極大値を有し、かつ、前記単量体のカチオンラジカルを形成するのに必要なイオン化エネルギーの絶対値と、前記単量体のカチオンラジカルが中性分子になる際に発生する電子親和力の絶対値との差の絶対値は、0.6eV以下であることを特徴とする。
本発明の正孔輸送性高分子を有機電界発光素子の有機化合物層の少なくとも一層に用いることにより、正孔輸送能に優れた機能層が得られる。さらに、本発明の正孔輸送性高分子を用いた有機電界発光素子は、発光強度が大きく、発光効率が高く、素子寿命が長く、且つ製造が容易である。
よって、本発明においては、前記単量体の塩化メチレン中における光吸収の極大値は、360nmよりも長波長側であることが必要である。前記単量体の塩化メチレン中における光吸収の極大値が360nmよりも長波長側であると、色素ドーピングによる可視域での発光効率が向上し、また、単独で用いた場合では紫から青緑色の発光を効率よく得ることが可能となる。
本発明者らの検討によれば、再配向エネルギーの絶対値が0.6eVを越える場合には必要な正孔輸送能を得ることができなくなるため、本発明においては再配向エネルギーの絶対値は0.6eV以下である必要がある。より良好な正孔輸送能を得るには0.4eV以下であることが好ましく、0.3eV以下であることがより好ましい。
また、再配向エネルギーの絶対値の最小値は、定義によれば0.0eVである。
−イオン化エネルギー−
イオン化エネルギーは、富士通社製のWinMOPACを用い、AM1法により求めた計算値を、J. Phys. Chem. A, Vol. 105, No. 21, 2001,5208頁のTable 1に掲載された8種類の三級芳香族アミン類のイオン化エネルギーの値を基に作製した下記の式を用いて補正することにより得た。
UAM1法でカチオン状態での構造を最適化してROAM1法で生成熱をもとめ、次にその構造での中性状態での生成熱をRAM1法で求めて各々の値の差をとり、カチオンラジカルが中性分子となる時に発生する電子親和力を求めた。
本発明の正孔輸送性高分子に繰り返し構造として含まれる正孔輸送性を有する単量体は、特に限定されるものではないが、具体的には、パラフェニレンビニレン類、ビニルカルバゾール類、三級芳香族アミン類等が挙げられる。
これら単量体の中でも、三級芳香族アミン類が好ましい。単量体として三級芳香族アミン類を用いた、三級芳香族アミン構造を主鎖骨格に有する正孔輸送性高分子は、成膜時の塗布、印刷適性、正孔輸送能が高い等の利点を有する。
一般式(I)中、Xとしては、例えば、下記構造(1)〜(3)等の構造が正孔輸送能の点で優れているが、360nmよりも長波長側に光吸収の極大値を有するためには後述するArの構造に制約を受ける。
Arとしては、構造(10)〜(12)が好ましく、さらに好ましくは構造(11)及び(12)である。
ここで、縮合芳香族環(複素環)構造とは、二つ又はそれ以上の芳香族環(複素環)を有する構造であって、各々の環が二個又はそれ以上の原子を共有する構造をいう。また、多核芳香族環(複素環)構造とは、二つ又はそれ以上の芳香族環(複素環)を有する構造であって、各々の環が別々になっている構造をいう。
すなわち、例えば、下記一般式(III)で表される正孔輸送性を有する単量体に、HO−(Y−O)−Hで示される2価アルコール類を過剰に加え、硫酸、リン酸等の無機酸、チタンアルコキシド、カルシウムおよびコバルト等の酢酸塩或いは炭酸塩、亜鉛や鉛の酸化物を触媒に用いて加熱し、エステル交換反応により下記一般式(IV)を生成し、それを重合することにより合成できる。
エステル交換反応に用いられる2価アルコール類は正孔輸送性を有する単量体1当量に対して、2〜100当量、好ましくは3〜50当量の範囲で用いられる。触媒は正孔輸送性を有する単量体1質量部に対して、1/10,000〜1質量部、好ましくは1/1,000〜1/2質量部の範囲で用いられる。反応は、反応温度200〜300℃で行い、基−O−CH3から基−O−(Y−O)−Hへのエステル交換終了後は、HO−(Y−O)−Hの脱離による重合を促進するため、減圧下で反応させることが好ましい。また、HO−(Y−O)−Hと共沸可能な1−クロロナフタレン等の高沸点溶剤を用いて、常圧下でHO−(Y−O)−Hを共沸で除きながら反応させることもできる。
本発明の有機EL素子は、少なくとも一方が透明または半透明である一対の電極と、それら電極間に挾持された一つ又は複数の有機化合物層より構成され、前記有機化合物層の少なくとも一層は、本発明の正孔輸送性高分子を含有することを特徴とする。
本発明の有機EL素子においては、有機化合物層が1つの場合は、有機化合物層は正孔輸送能を持つ発光層を意味し、前記発光層が本発明の正孔輸送性高分子を含有する。キャリアの注入効率、正孔が対向電極に到達するのを防止するための正孔注入阻止層または正孔注入阻止能を有する電子輸送層を設けることも好ましい。また、有機化合物層が複数の場合は、その一つが正孔輸送能を持っていても持たなくてもよい発光層であり、他の有機化合物層は、少なくともキャリア輸送層、すなわち、正孔輸送層、電子輸送層、或いは正孔輸送層と電子輸送層より構成されるものを意味する。有機化合物層が複数の場合、正孔輸送層に本発明の正孔輸送性高分子が含有される。
図1及び2は、本発明の有機EL素子の層構成を説明するための模式的断面図であって、図1は、有機化合物層が1つの場合の例を示し、図2は、さらに正孔注入阻止層を備えた場合の例を示す。
図中、1は透明絶縁体基板、2は透明電極、3は正孔輸送能を持つ発光層、4は正孔注入阻止層、5は背面電極を表す。
正孔輸送能を持つ発光層3は、塗布法(スピンコート法、浸漬塗布法、ブレードコート法など)または印刷法(インクジェット法、スクリーン印刷法など)によって設けられる。印刷法によれば、正孔輸送能を持つ発光層3を所望の発光パターンで基板上に設けることが可能となるため、以下に示すような電子輸送化合物をパターニングすることなく蒸着して電子輸送層を設けても有機EL素子を得ることができため、製造コストの大幅な低減が期待できる。
以上、本発明の有機EL素子について、図を用いて説明したが、本発明を適用し得る有機EL素子としては上記構造、形式に限定されるものではなく、本発明の構成を適用し得るものであれば、如何なる構造、形式であっても問題ない。
[再配向エネルギー]
上述の方法により、再配向エネルギー(ΔH)を得た。得られた再配向エネルギーの絶対値(ABS(ΔH))を表1に示す。
また、計算に用いた単量体の構造式は、各実施例及び比較例中に記した。
単量体を塩化メチレンに溶解し、光路長1cmの石英セルを用いて日立製作所社製の磁気式分光光度計(U−4000型)を用いて測定した。得られた結果を表1に示す。
ITOガラス上にソルベントキャスト法で厚さが6〜10μmの高分子膜を設けて加熱乾燥した後、金電極をスパッタ法で設けたサンプルを用い、窒素レーザーを電荷発生用光源とした自作の過渡電流波形測定装置を用いて過渡電流波形を測定した。得られた過渡電流波形に基づいて正孔移動度を得た。なお、電界によって移動度の値が変化するため、30V/μmの値を基準とした。得られた結果を表1に示す。
下記単量体(A)2.0g、エチレングリコール8.0gおよびテトラブトキシチタン0.1gを50mlのフラスコに入れ、窒素気流下、200℃で3時間加熱攪拌した。単量体(A)が消費されたことを確認した後、0.5mmHgに減圧してエチレングリコールを留去しながら200℃に加熱し、4時間反応を続けた。その後、室温まで冷却し、トルエン50mlに溶解して不溶物を0.1μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターにて濾過し、その濾液をメタノール250mlを撹拌している中に滴下して高分子を析出させた。
得られた高分子を濾過し、十分にメタノールで洗浄した後、乾燥させ、1.8gの正孔輸送性ポリエステル(化合物1)を得た。分子量はGPCにて測定した。化合物1は、Mw=1.49×105(スチレン換算)であり、単量体の分子量から求めた繰り返し数は約173であった。
前記合成例で得られた化合物1について、前記の方法で光吸収の極大値を与える波長と正孔移動度を測定した。ついで、化合物1をクロロベンゼンに2質量%溶解せしめた溶液をオゾン処理したITOガラス(ITOは2mm幅にエッチング済み)へスピンコートして厚さ50μmの層を設け、大気中で135℃90分間乾燥して正孔輸送層を作製した。この試料上に幅が2mmに調整されたステンレス製のマスクを、ITO層に垂直になるように載せてMg−Ag電極を蒸着で設け、発光素子を作製し、10Vの電圧を印加して発光の様子を目視で観察したところ、蛍光灯による照明下、青色の発光を確認することができた。これらの結果を、表1及び図3に示した。
単量体(A)に替えて下記単量体(B)を用いて前記合成例と同様にして化合物2を得、実施例1と同様にして評価した。結果を表1及び図3に示す。
単量体(A)に替えて下記単量体(C)を用いて前記合成例と同様にして化合物3を得、実施例1と同様にして評価した。結果を表1及び図3に示す。
単量体(A)に替えて下記単量体(D)を用いて前記合成例と同様にして化合物4を得、実施例1と同様にして評価した。結果を表1及び図3に示す。
単量体(A)に替えて下記単量体(E)を用いて前記合成例と同様にして化合物5を得、実施例1と同様にして評価した。結果を表1及び図3に示す。
単量体(A)に替えて下記単量体(F)を用いて前記合成例と同様にして化合物6を得、実施例1と同様にして評価した。結果を表1及び図3に示す。
単量体(A)に替えて下記単量体(G)を用いて前記合成例と同様にして化合物7を得、実施例1と同様にして評価した。結果を表1及び図3に示す。
単量体(A)に替えて下記単量体(H)を用いて前記合成例と同様にして化合物8を得、実施例1と同様にして評価した。結果を表1及び図3に示す。
単量体(A)に替えて下記単量体(I)を用いて前記合成例と同様にして化合物9を得、実施例1と同様にして評価した。結果を表1及び図3に示す。
単量体(A)に替えて下記単量体(J)を用いて前記合成例と同様にして化合物10を得、実施例1と同様にして評価した。結果を表1及び図3に示す。
単量体(A)に替えて下記単量体(K)を用いて前記合成例と同様にして化合物11を得、実施例1と同様にして評価した。結果を表1及び図3に示す。
単量体(A)に替えて下記単量体(L)を用いて前記合成例と同様にして化合物12を得、実施例1と同様にして評価した。結果を表1及び図3に示す。
単量体(A)に替えて下記単量体(M)を用いて前記合成例と同様にして化合物13を得、実施例1と同様にして評価した。結果を表1及び図3に示す。
単量体(A)に替えて下記単量体(N)を用いて前記合成例と同様にして化合物14を得、実施例1と同様にして評価した。結果を表1及び図3に示す。
また、再配向エネルギーの絶対値と正孔移動度の関係を図3に示したが、図3から下記のことがわかる。
すなわち、マーカス理論における同一化合物間における電子移動反応の活性化エネルギー項である再配向エネルギーとしては、電子数変化による分子構造変化に伴うエネルギー変化と、分子が置かれている媒質の静電分極による安定化によるエネルギー変化が考えられるが、類似した化学構造を有する媒体中では電子数変化による分子構造変化に伴うエネルギー変化が支配的であり、電子数変化による分子構造変化に伴うエネルギー変化が小さいことで電子移動反応の活性化エネルギーが小さくなり、良好な正孔輸送能を発現しているのである。
本発明の正孔輸送性高分子によれば、良好な正孔輸送能を有し、かつ、可視域の発光能を有する有機EL素子を提供することが可能である。
2 : 透明電極
3 : 正孔輸送能を持つ発光層
4 : 正孔注入阻止層
5 : 背面電極
Claims (2)
- 正孔輸送性を有する単量体の繰り返し構造を含む正孔輸送性高分子であって、
前記単量体は、塩化メチレン中において360nmよりも長波長側に光吸収の極大値を有し、かつ、前記単量体のカチオンラジカルを形成するのに必要なイオン化エネルギーの絶対値と、前記単量体のカチオンラジカルが中性分子になる際に発生する電子親和力の絶対値との差の絶対値は、0.6eV以下であり、下記一般式(II)で表される繰り返し構造を含むポリエステル樹脂であることを特徴とする正孔輸送性高分子。
一般式(II)中、Zは、式(A)、(B)、(D)又は(G)を表し、Tは、−CH 2 CH 2 −を表し、Yは、炭素数1〜6の鎖状の飽和若しくは不飽和のアルキル基又はシクロヘキシル基を表す。 - 少なくとも一方が透明又は半透明である一対の電極間に挾持された一つ又は複数の有機化合物層より構成される有機電界発光素子であって、
前記有機化合物層の少なくとも一層は、請求項1に記載の正孔輸送性高分子を含有することを特徴とする有機電界発光素子。
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