JP4305025B2 - 無アルカリガラス - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、無アルカリガラス、特にディスプレイ等の透明ガラス基板として使用されている無アルカリガラスとその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、液晶ディスプレイ等の透明ガラス基板として、無アルカリガラスが使用されている。ディスプレイ用途の無アルカリガラスには、耐熱性、耐薬品性等の特性の他に、表示欠陥となる泡がないことが要求される。
【0003】
このような無アルカリガラスとして、従来より種々のガラスが提案されており、例えば、特許文献1には、SiO2−Al23−B23−CaO−SrO−BaO系の無アルカリガラスが開示されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平6−263473号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで泡のないガラスを得るためには、固相反応、固相−液相反応によるガラス化反応過程と、ガラス融液の脱泡化が起こる清澄過程で清澄ガスを発生する清澄剤を選択することが重要である。これは原料がガラス化反応を起こす時に発生するガスを清澄ガスによってガラス融液から追い出し、さらに清澄過程において再び発生させた清澄ガスによって残りの微少な泡を大きくして浮上させて除去するためである。
【0006】
液晶ディスプレイ用ガラス基板に使用されるような無アルカリガラスは、ガラス融液の粘度が高く、アルカリ成分を含有するガラスに比べて、より高温で溶融が行われる。この種の無アルカリガラスでは、通常1200〜1300℃でガラス化反応が起こり、1400℃以上の高温で脱泡、均質化が行われる。このような高温条件下でのガラス化反応過程と清澄過程において清澄ガスを発生させることができる清澄剤としてAs23が知られており、特許文献1でも、清澄剤としてAs23を使用することが開示されている。
【0007】
しかしながらAs23は、毒性が非常に強い物質であり、ガラスの製造工程や廃ガラスの処理時等に環境を汚染する可能性があり、近年では、その使用が制限されつつある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、清澄剤としてAs23を使用せず、しかもディスプレイ用ガラス基板として使用しても、表示欠陥となるような泡が存在しない無アルカリガラスを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、種々の実験を繰り返した結果、無アルカリガラスの清澄剤としてAs23の代わりに、硫酸塩と酸化錫を併用することによって上記目的を達成できることを見いだし、本発明として提案するものである。
【0010】
すなわち本発明の無アルカリガラスは、質量%で、SiO 40〜70%、Al 6〜25%、B 5〜20%、MgO 0〜10%、CaO 0〜15%、BaO 0〜30%、SrO 0〜10%、ZnO 0〜10%、SO 0.0001〜0.001%、SnO 0.05〜2%を含有し、本質的にアルカリ金属酸化物を含まないことを特徴とする。
【0011】
また本発明の無アルカリガラスの製造方法は、質量%で、SiO2 40〜70%、Al23 6〜25%、B23 5〜20%、MgO 0〜10%、CaO 0〜15%、BaO 0〜30%、SrO 0〜10%、ZnO 0〜10%を含有し、本質的にアルカリ金属酸化物を含まないガラスとなるように調合したガラス原料調合物を溶融した後、成形する無アルカリガラスの製造方法において、ガラス原料調合物に清澄剤として硫酸塩をSO3換算で0.005〜1%及びSnO2を0.05〜2%添加することを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明において使用する硫酸塩は、1200〜1500℃程度の温度域で分解し、分解により多量の清澄ガス(二酸化硫黄、酸素ガス)を発生する。SO3は1400℃の高温でも分解するため、無アルカリガラスのようなガラス化反応過程が高温となるガラスには最適である。つまりSO3は102.5dPa・sの粘度に相当する温度が1500℃以上のガラスを溶融する時に、清澄剤として有効に作用する。しかしながら、一般にSO3のガラスへの溶解度はアルカリ含有量が少なくなるほど低くなるので、無アルカリガラスの場合、SO3の溶解度は非常に低い。つまりSO3は、ガラス化反応過程において大量のガスを放出するが、ガラス化した後の清澄過程においては、残存するSO3が少ないために、その清澄効果は小さくなる。
【0013】
ところがSnO2は、1400℃以上、特に1500℃以上の温度域で起こるSnイオンの価数変化による化学反応により多量の清澄ガス(酸素ガス)を放出する。すなわちSnO2(4価)は、温度を上昇させることでSnO(2価)に変化し、その際に多量の清澄ガスを放出する。
【0014】
従って、SO3に加え、分解ではなく、価数変化によって清澄ガスを発生し、その価数変化が無アルカリガラスを溶融する温度域で起こるSnO2を使用することで、比較的低温で起こるガラス化反応過程から高温の清澄過程にかけての広い温度域で高い清澄効果が得られることになり、泡の少ない無アルカリガラスを製造することができる。
【0015】
次に本発明の無アルカリガラスの製造方法を述べる。
【0016】
まず質量%で、SiO2 40〜70%、Al23 6〜25%、B23 5〜20%、MgO 0〜10%、CaO 0〜15%、BaO 0〜30%、SrO 0〜10%、ZnO 0〜10%の組成を含有するガラスとなるようにガラス原料調合物を用意する。
【0017】
次に、このガラス原料調合物に、硫酸塩とSnO2を添加する。硫酸塩としては、BaSO4、CaSO4等が使用できる。硫酸塩の添加量は、ガラス原料調合物100質量%に対し、SO3換算で0.005〜1質量%であり、この添加量でガラス中のSO3は0.0001〜0.03%となる。硫酸塩が0.005%より少ないと、ガラス化過程で発生したガスを追い出し難くなり、1%より多いと、再発泡しやすくなり、却ってガラス中に泡が残存しやすくなる。硫酸塩の好ましい添加量は、SO3換算で0.01〜1%、より好ましくは0.05〜1%である。SO3の好ましい含有量は、0.001〜0.03%、より好ましくは0.005〜0.03%である。またSnO2の添加量は、ガラス原料調合物100質量%に対し、0.05〜2質量%である。SnO2が0.05%より少ないと清澄過程でガラス融液中に残った泡を除去し難くなり、2%より多いとガラスが失透しやすくなる。SnO2の好ましい添加量は、0.05〜1%、好ましくは0.1〜0.5%である。
【0018】
本発明では、硫酸塩とSnO2以外にも、清澄剤として、Sb23を3%まで、塩化物(Cl2換算)を1%まで添加できる。ただしフッ化物は、As23ほどではないが、毒性があるため添加しないことが好ましい。またFe23も清澄作用を有する成分であるが、多量に含有させると、ガラスの可視光透過率が低下し、ディスプレイ用途には不向きとなるため、800ppm以下、好ましくは500ppm以下に抑えることが好ましい。
【0019】
次いで調合したガラス原料調合物を溶融する。ガラス原料を加熱していくと、まずガラス化反応が起こるが、この時、硫酸塩の分解によって二酸化硫黄、酸素ガスが発生し、ガラス化反応過程で発生したガスが融液中から追い出される。その後、清澄過程において温度上昇すると、SnO2の価数変化が起こり、酸素ガスが発生してガラス融液中に残存する微少な泡が除去される。
【0020】
その後、溶融ガラスを所望の形状に成形する。ディスプレイ用途に使用する場合、オーバーフローダウンドロー法、スロットダウンドロー法、フロート法、ロールアウト法等の方法を用いて薄板状に成形する。特にオーバーフローダウンドロー法とスロットダウンドロー法によって成形すると、非常に表面品位に優れたガラス板が得られるため好ましい。
【0021】
こうして、質量%で、SiO 40〜70%、Al 6〜25%、B 5〜20%、MgO 0〜10%、CaO 0〜15%、BaO 0〜30%、SrO 0〜10%、ZnO 0〜10%、SO 0.0001〜0.001%、SnO 0.05〜2%を含有し、本質的にアルカリ金属酸化物を含まない無アルカリガラスが得られる。因みに、本質的にアルカリ金属酸化物を含まないとは、ガラス原料としてアルカリ金属酸化物(LiO、NaO、KO)を添加しないことを意味しており、不純物として0.2質量%以下混入しても、本発明が妨げられることはない。
【0022】
このように無アルカリガラスの組成を限定した理由は、次のとおりである。
【0023】
SiO2は、ガラスのネットワークとなる成分であり、その含有量は40〜70%である。SiO2が40%より少ないと耐薬品性が悪化すると共に、歪点が低下して耐熱性が悪くなる。70%より多くなると、高温粘度が高くなって溶融性が悪くなると共にクリストバライトの失透物が析出しやすくなる。SiO2の好ましい含有量は、45〜65%である。
【0024】
Al23は、ガラスの耐熱性、耐失透性を高める成分であり、その含有量は6〜25%である。Al23が6%より少ないと失透温度が著しく上昇してガラス中に失透が生じやすくなり、25%より多いと耐酸性、特に耐バッファードフッ酸性が低下してガラス表面に白濁が生じやすくなる。Al23の好ましい含有量は、10〜20%である。
【0025】
23は融剤として働き、粘性を下げて溶融を容易にする成分であり、その含有量は5〜20%である。B23が5%より少ないと融剤としての効果が不十分となり、20%より多いと耐塩酸性が低下すると共に、歪点が低下して耐熱性が悪化する。B23の好ましい含有量は、7.5〜15%、より好ましい含有量は8.5〜15%である。
【0026】
MgOは、歪点を下げずに高温粘性を下げてガラスの溶融を容易にする成分であり、その含有量は0〜10%である。MgOが10%より多いと、ガラスの耐バッファードフッ酸性が著しく低下する。MgOの好ましい含有量は、0〜3.5%、より好ましい含有量は0〜3%である。
【0027】
CaOも、MgOと同様の働きをする成分であり、その含有量は0〜15%である。CaOが15%より多いと、耐バッファードフッ酸性が著しく低下する。CaOの好ましい含有量は、0〜10%、より好ましい含有量は6〜10%である。
【0028】
BaOは、ガラスの耐薬品性を向上させると共に失透性を改善する成分であり、その含有量は0〜30%である。BaOが30%より多いと、歪点が低下して耐熱性が悪くなる。BaOの好ましい含有量は、0〜20%である。
【0029】
SrOも、BaOと同様の働きをする成分であり、その含有量は0〜10%である。SrOが10%より多いと失透性が増すため好ましくない。SrOの好ましい含有量は、0〜7%である。
【0030】
ところで携帯電話やノート型パソコンといった携帯型デバイスには、携帯時の利便性から機器の軽量化が要求されており、それに使用されるガラス基板にも軽量化を図るため、低密度化が要求されている。また、この種のガラス基板は、薄膜トランジスタ(TFT)材料との熱膨張係数が大きくなると、反りが発生するため、TFT材料の熱膨張係数(約30〜33×10-7/℃)に近似するような低膨張、具体的には28〜35×10-7/℃の熱膨張係数を有することが望ましい。BaOとSrOは、ガラスの密度と熱膨張係数にも影響を与える成分であり、低密度、低膨張のガラスを得るためには、これらを合量で6%以下、好ましくは4%以下に抑えるべきである。
【0031】
ZnOは、耐バッファードフッ酸性と失透性を改善する成分であり、その含有量は0〜10%である。しかしながらZnOが10%より多いと、逆にガラスが失透しやすくなり、また歪点が低下して耐熱性が悪くなる。ZnOの好ましい含有量は、0〜7%である。
【0032】
また本発明では、上記成分の他に、ZrO2、TiO2、Fe23、P25、Y23、Nb23、La23等を合量で5%まで含有することができる。
【0033】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。
【0034】
表1は、無アルカリガラスに対するSO3とSnO2の効果を示すものである。表中、試料aのガラスは、清澄剤としてAs23を添加した従来の無アルカリガラス、試料bのガラスは、試料aからAs23を除いて作製した無アルカリガラス、試料cのガラスは、硫酸塩(BaSO4)のみを添加した無アルカリガラス、試料dのガラスは、SnO2のみを添加した無アルカリガラス、試料e、fのガラスは、硫酸塩とSnO2を併用した無アルカリガラスである。
【0035】
【表1】
Figure 0004305025
【0036】
表中の各試料ガラスは、次のようにして作製した。
【0037】
まず表1のSiO2、Al23、B23、CaO、SrO、BaO、ZnOの合計100質量%となるようにガラス原料を調製し、清澄剤(SO3、SnO2、As23)は、これに添加(外挿)する形で加え混合した後、電気炉で溶融した。ガラス化反応過程での清澄性を評価するために、1600℃で4時間と、1600℃で8時間溶融し、また清澄過程での清澄性を評価するために1600℃で4時間溶融した後、さらに1650℃で4時間溶融した。尚、SO3は溶融時に分解するため、試料c、e、fのガラス中のSO3の残存量は、いずれの溶融条件でも0.001質量%であった。
【0038】
次いで溶融ガラスをカーボン板上に流し出し、徐冷した。流し出した板状ガラスの大きさは、長さ10cm、幅6cm、高さ1cm程度であり、このガラスの流し始め1.5〜7cmの部分について、ガラス中の泡数を顕微鏡を用いて目視で観察し、表に示した。この泡数は、最大径が20μm以上の大きさの泡を求めたものであり、ガラス100g中の泡が10000個を超える場合は×、1001〜10000個の場合は△、101〜1000個の場合は○、100個以下の場合は◎で示した。
【0039】
また表中の歪点はASTM C336−71の方法に基づいて測定した。粘度102.5dPa・sの温度は、白金球引き上げ法で測定した高温粘度から、Fulcherの式を用いて計算した。耐塩酸性は、各試料ガラスを80℃に保持された10質量%塩酸水溶液に24時間浸漬した後、ガラスの表面状態を観察した。耐バッファードフッ酸性は、各試料ガラスを20℃に保持された38.7質量%フッ化アンモニウムと1.6%質量%フッ酸からなるバッファードフッ酸に30分間浸漬した後、ガラスの表面状態を観察した。耐塩酸性と耐バッファードフッ酸性は、外観変化が無かったものを◎、外観変化が起きたものを×として示した。
【0040】
表から明らかなように、As23を添加した試料aのガラスは、良好な清澄性を有していたが、清澄剤を添加しない試料bのガラスは清澄性が著しく悪かった。また硫酸塩(SO3)のみを添加した試料cのガラスは、ガラス化過程で多量の清澄ガスが発生したものの、清澄過程では十分な清澄ガスが発生せず、結果として清澄性が悪かった。さらにSnO2のみを添加した試料dのガラスは、清澄過程で多量のガスが発生したものの、ガラス化過程で十分な清澄ガスが発生せず、結果として清澄性が悪かった。
【0041】
一方、硫酸塩とSnO2を添加した試料e、fのガラスは、As23を添加した試料aのガラスと略同等の良好な清澄性を有していた。また試料e、fのガラスは、いずれも歪点が665℃であるため耐熱性に優れ、塩酸やバッファードフッ酸処理しても外観変化が認められず、耐薬品性にも優れていた。
【0042】
【発明の効果】
以上のように、本発明の方法によれば、清澄剤として所定量の硫酸塩とSnO2を添加するため、As23を使用することなく、清澄性に優れ、泡の少ない無アルカリガラスを製造することが可能である。
【0043】
また本発明の無アルカリガラスは、清澄性に優れ、泡が少なく、優れた耐熱性、耐薬品性を有しているため、特にディスプレイ用ガラス基板として好適である。

Claims (3)

  1. 質量%で、SiO 40〜70%、Al 6〜25%、B 5〜20%、MgO 0〜10%、CaO 0〜15%、BaO 0〜30%、SrO 0〜10%、ZnO 0〜10%、SO 0.0001〜0.001%、SnO 0.05〜2%を含有し、本質的にアルカリ金属酸化物を含まないことを特徴とする無アルカリガラス。
  2. 28〜35×10 −7 /℃の熱膨張係数を有することを特徴とする請求項1記載の無アルカリガラス。
  3. BaOとSrOの合量が6%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の無アルカリガラス。
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