JP4304651B2 - 押出成形用ダイス - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は押出成形用ダイスに関するもので、更に詳細には、再生可能な押出成形用ダイスに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、アルミニウム合金の押出加工において、例えばJIS5000系、あるいはJIS7000系のような高強度を有する高力アルミニウム合金等を押し出す場合、ベアリングの摩耗が激しく、ダイスの寿命が短いという問題がある。
【0003】
そのため、従来では、ベアリング部を例えばタングステン(W)にコバルト(Co)を混合した超硬合金(WC−Co系)やセラミックス等の超硬材料で構成するダイスを用いている(特開平6−15348号参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記超硬材料は靱性が低いため、押出力によるダイスの変形によってダイスが破損するおそれがあり、特に、コーナー部においてクラックを生じて破損するという問題があった。また、超硬材料は高価な上、加工が面倒であるという問題もあった。
【0005】
この発明は上記事情に鑑みなされたもので、加工が容易であり、かつ、摩耗したベアリング部の再生が容易な押出成形用ダイスを提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、この発明の押出成形用ダイスは、ホルダーにて着脱可能に保持されるダイを、切削等により再生可能なベアリング部を有する少なくとも3個以上に分割されたベアリング部材にて形成してなる押出成形用ダイスを前提とする。この発明において、上記ベアリング部材としては、高力アルミニウム合金等を押出成形可能なある程度の硬質を有し、切削等により再生可能な材料、例えば熱間工具鋼やWC−Co系材料等を使用することができる。
【0007】
請求項1記載の発明は、上記押出成形用ダイスにおいて、隣接する上記ベアリング部材の一方のベアリング部材の側端角部に段部を設け、この段部に他方のベアリング部材の側端角部を当接係合してなることを特徴とする。また、請求項2記載の発明は、上記押出成形用ダイスにおいて、ホルダーに設けられた取付凹部内にベアリング部材を嵌挿し、ベアリング部材を遊嵌する固定部材によってベアリング部材とホルダーとを固定してなることを特徴とする。この場合、固定部材で直接ベアリング部材とホルダーとを固定してもよく、ホルダーの取付凹部内にベアリング部材を挿入した状態で、ベアリング部材の表面を押え板で押さえ、押え板及びベアリング部材を貫通する固定部材をホルダーに固定することによってベアリング部材とホルダーとを固定するようにしてもよく、あるいは、押え板に代えてバッフルプレートを用いてもよい。この発明において、上記ホルダーの外周から内方に挿入される押圧部材にてベアリング部材を押圧固定する方が好ましい(請求項3)。
【0008】
上記のように構成されるこの発明の押出成形用ダイスによれば、ホルダーにて着脱可能に保持されるダイを、切削等により再生可能なベアリング部を有する少なくとも3個以上に分割されたベアリング部材にて形成することにより、ダイを一体に加工する場合に比べて加工を容易にすることができ、ベアリング部材の摩耗部分を切削して容易に再生することができる。したがって、ダイスの寿命の増大及びコストの低廉を図ることができると共に、押出形材(成形品)の寸法、形状等の品質の維持が図れ、製品歩留まりの向上を図ることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下にこの発明の実施例を図面に基いて詳細に説明する。
【0010】
◎第一実施形態
図1は、この発明の押出成形用ダイスの第一実施形態の使用状態を示す断面図、図2は、ベアリング部を示す断面図、図3は、第一実施形態のダイスの分解断面図、図4は、第一実施形態のダイスの分解斜視図である。
【0011】
上記押出成形用ダイスは、表面側に開口する矩形の角部が切欠枯れた略十字状の取付凹部2を有するホルダー1と、このホルダー1の取付凹部2内に着脱可能に嵌挿されて保持されるダイ10と、ダイ10の内方に配設され、ダイ10と協働して押出孔3を形成するマンドレル4と、ダイ10をホルダー1に固定する押え板5及び固定部材である固定ボルト7を具備している。
【0012】
この場合、ダイ10は、それぞれベアリング部21,22を有する複数例えば4個に分割された第1ないし第4のベアリング部材11〜14にて形成されている。これらベアリング部材11〜14は、高力アルミニウム合金等を押出成形可能なある程度の硬質を有し、切削等により再生可能な材料、例えば熱間工具鋼等にて形成されている。このうち、第1,3のベアリング部材11,13は、図5に示すように、略四角柱状の基体30の長手方向に沿う一側端部に平面視がコ字状のベアリング部21が設けられており、このベアリング部21を有する側面には、ベアリング部21から他側端角部に向かって拡開する逃げ面31が形成されている。また、基体30の中間部には貫通孔32が穿設されている。
【0013】
また、第2,4のベアリング部材12,14は、図6に示すように、第1,3のベアリング部材11,13と同様に、略四角柱状の基体40を具備しており、この基体30の長手方向に沿う一側端部に直状のベアリング部22が設けられている。また、第2,4のベアリング部材12,14の長手方向の両側端角部には、隣接する第1,3のベアリング部材11,13の側端角部が当接係合するL形の段部41が設けられている。
【0014】
上記のように構成される第1〜第4のベアリング部材11〜14は、隣接するベアリング部材11,12,13,14同士が段部41に嵌め合いによって当接係合されるように、ホルダー1に設けられた取付凹部2内に嵌挿された状態で、ホルダー1の周面部から内方に向かって貫通する押圧部材である押圧ボルト8の先側端角部にて押圧されて、固定されると共に、各ベアリング部21,22によって所定寸法の四角形状の外側押出孔3aを形成している。また、ホルダー1の取付凹部2の開口端部側には取付凹部2より大径の円形状の凹部9が設けられており、この円形凹部9内に、中心部に四角形状のメタル流通路6を有する円盤状の押え板5が嵌挿され、押え板5の対向する2箇所に設けられた透孔5aを貫通する固定ボルト7を第1,第3のベアリング部材11,13に穿設された固定ボルト7のねじ部の外径より大径の貫通孔32を貫通(遊嵌)させて、ホルダー1の取付凹部2の底部の2箇所に設けられたねじ孔1aに固定ボルト7を螺合して、ダイ10を構成するベアリング部材11〜14をホルダー1と押え板5とで挟持固定している。ここで、固定ボルト7を第1,3のベアリング部材11,13の貫通孔32内に遊嵌させた理由は、押圧ボルト8の押圧によって第1,3のベアリング部材11,13を移動して、第2,4のベアリング部材12,14の段部41に当接係合させるためである。
【0015】
上記のようにしてホルダー1の取付凹部2内に第1〜第4のベアリング部材11〜14を固定した後、第1〜第4のベアリング部材11〜14にて形成される外側押出孔3a内に断面矩形状の内側押出孔3bを有するマンドレル4を挿入して、中空矩形状(中空四角形状)の押出孔3を形成している。
【0016】
上記のようにして組み立てられた押出成形用ダイスの押出孔3に、図示しないコンテナのビレットをステムにて押し出すことで、中空矩形状のアルミニウム合金製の押出形材を形成することができる。
【0017】
また、使用によりベアリング部材11〜14のベアリング部21,22が摩耗した場合は、固定ボルト7をホルダー1から取り外した後、押圧ボルト8の押圧を解除して、各ベアリング部材11〜14をホルダー1から取り出し、摩耗したベアリング部21,22を再生して、再度使用することができる。この場合、図7に実線で示すように、各ベアリング部材11〜14のベアリング部21,22を所定の寸法より少な目に切削して、ホルダー1に押圧ボルト8をもってセットした状態で、例えばワイヤーカット加工によって、図7に一点鎖線で示すように、仕上げ加工してベアリング部21,22を所定寸法に仕上げる。このようにして、再生されたベアリング部材11〜14を上述と同様に、ホルダー1に固定して再度、押出形材の成形に供することができる。
【0018】
したがって、上記ダイスによれば、例えばJIS5000系、あるいはJIS7000系のような高強度を有する高力アルミニウム合金製の押出形材を成形することができる他、その他のアルミニウム合金,その他金属材料,プラスチック等の押出成形にも使用することができる。
【0019】
◎第二実施形態
図8は、この発明の押出成形用ダイスの第二実施形態のベアリング部材の組立状態を示す概略正面図である。
【0020】
第二実施形態は、ダイ10を構成する4個分割されたベアリング部材15〜18のベアリング部22を同一の直状に形成した場合である。すなわち、第1〜第4のベアリング部材15〜18のベアリング部22をそれぞれ直状に形成し、第2及び第4のベアリング部材16,18の側端角部にL形の段部41を設け、この段部41に第1及び第3のベアリング部材15,17の側端角部を当接係合(嵌め合い係合)させた場合である。
【0021】
なお、第二実施形態において、その他の部分は、第一実施形態と同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明は省略する。
【0022】
第二実施形態において、ベアリング部22が摩耗した場合は、ベアリング部材15〜18をホルダー1から取り出して、図9に示すように、摩耗したベアリング部21,22を切削(図9においてハッチングで示す)して再生することができる。
【0023】
◎第三実施形態
図10は、この発明の押出成形用ダイスの第三実施形態の使用状態の断面図、図11は、第三実施形態におけるベアリング部を示す断面図である。
【0024】
第三実施形態は、中実の押出形材を成形するフラットタイプの押出成形用ダイスにこの発明のダイスを適用した場合である。すなわち、第三実施形態のダイスは、第一実施形態における第1〜第4のベアリング部材11〜14のみによって押出孔3を形成した場合である。この場合、ホルダー1の取付凹部2内にベアリング部材11〜14を嵌挿し、押圧ボルト8によってベアリング部材11〜14を押圧保持し、押え板5でベアリング部材11〜14の表面を押さえた状態で、固定ボルト7にて固定した後、ホルダー1とバッフルプレート50とを図示しない連結ボルトで連結してダイスが組み立てられている。
【0025】
第三実施形態のダイスを用いて、押出孔3に、図示しないコンテナのビレットイをステムにて押し出すことで、中実矩形状のアルミニウム合金製の押出形材を形成することができる。
【0026】
第三実施形態のダイスを再生する場合は、第一実施形態の場合と同様に、各ベアリング部材11〜14のベアリング部21,22を所定の寸法より少な目に切削して、ホルダー1に押圧ボルト8をもってセットした状態で、例えばワイヤーカット加工によって、図7に一点鎖線で示すように、仕上げ加工してベアリング部21,22を所定寸法に仕上げればよい。
【0027】
◎第四実施形態
図12は、この発明の押出成形用ダイスの第四実施形態の使用状態の断面図である。
【0028】
第四実施形態は、断面チャンネル状の押出形材を成形するフラットタイプのダイスにこの発明のダイスを適用した場合である。この場合、ダイ10を構成する第1のベアリング部材61は、第一実施形態における第1のベアリング部材11と同様に、長手方向に沿う一側端部に平面視がコ字状のベアリング部21が設けられている。また、ダイ10を構成する第2及び第4のベアリング部材62,64は、第一実施形態における第2及び第4のベアリング部材12,14と同様に、長手方向に沿う一側端部に直状のベアリング部22が設けられており、また、長手方向の両側側端角部には、隣接する第1,3のベアリング部材61,63の側端角部が当接係合するL形の段部41が設けられている。一方、第3のベアリング部材63は、第1、第2及び第4のベアリング部材61のベアリング部21,22と対向して押出孔3を形成する大コ字状の第1のベアリング部23と、この第1のベアリング部23の両端に連なる小コ字状の2つの第2のベアリング部24とを具備している。
【0029】
このように構成される第1〜第4のベアリング部材61〜64は、隣接するベアリング部材61,62,63,64同士が段部41に嵌め合いによって当接係合されるように、ホルダー1に設けられた取付凹部2内に嵌挿された状態で、ホルダー1の周面部から内方に向かって貫通する押圧ボルト8の先側端角部にて押圧されて、固定されると共に、各ベアリング部21,22,23,24によって所定寸法の断面コ字状の押出孔3Aを形成している。また、ホルダー1の取付凹部2の開口端部側には取付凹部2より大径の円形状の凹部(図示せず)が設けられており、この円形凹部内に、中心部にチャンネル状のメタル流通路6Aを有する円盤状の押え板5A(図13参照)が嵌挿され、押え板5Aの対向する2箇所に設けられた透孔5aを貫通する固定ボルト7を第1,第3のベアリング部材61,63に穿設された固定ボルト7のねじ部の外径より大径の貫通孔32を貫通(遊嵌)させて、ホルダー1の取付凹部2の底部の2箇所に設けられたねじ孔1aに固定ボルト7を螺合して、ダイ10を構成するベアリング部材61〜64をホルダー1と押え板5Aとで挟持固定している。
【0030】
上記のようにして組み立てられた押出成形用ダイスの押出孔3に、図示しないコンテナのビレットをステムにて押し出すことで、チャンネル状のアルミニウム合金製の押出形材を形成することができる。
【0031】
また、使用によりベアリング部材61〜64が摩耗した場合は、固定ボルト7をホルダー1から取り外した後、押圧ボルト8の押圧を解除して、各ベアリング部材61〜64をホルダー1から取り出し、摩耗したベアリング部21,22を再生して、再度使用することができる。この場合、図14に実線で示すように、ベアリング部材61,62,64のベアリング部21,22を所定の寸法より少な目に切削して、ホルダー1に押圧ボルト8をもってセットした状態で、例えばワイヤーカット加工によって、図14に一点鎖線で示すように、仕上げ加工してベアリング部21,22を所定寸法に仕上げる。但し、第3のベアリング部材63の第1及び第2のベアリング部23,24については、再生ができないので、第3のベアリング部材63の第1及び第2のベアリング部23,24を肉盛りするか、あるいは、第3のベアリング部材63をそっくり作り直して交換する。但し、第3のベアリング部材63の第1及び第2のベアリング部23,24は、製品の内側になる面であるので、品質上許されるのであれば、再生せずにそのまま使用することができる。
【0032】
上記のようにして、再生されたベアリング部材61〜64を上述と同様に、ホルダー1に固定して再度、押出形材の成形に供することができる。
【0033】
◎その他の実施形態
上記第一ないし第三実施形態では、断面が四角形の押出形材を成形する場合について説明したが、押出形材の断面形状は四角以外の多角形、例えば、三角形、六角形あるいは八角形等の多角形においても同様にこの発明のダイスを適用することができる。
【0034】
【発明の効果】
以上に説明したように、この発明の押出成形用ダイスは、上記のように構成されているので、以下のような効果が得られる。
【0035】
上記のように構成されるこの発明の押出成形用ダイスによれば、ホルダーにて着脱可能に保持されるダイを、切削等により再生可能なベアリング部を有する少なくとも3個以上に分割されたベアリング部材にて形成することにより、ダイを一体に加工する場合に比べて加工を容易にすることができ、ベアリング部材の摩耗部分を切削して容易に再生することができる。したがって、ダイスの寿命の増大及びコストの低廉を図ることができると共に、押出形材(成形品)の寸法、形状等の品質の維持が図れ、製品歩留まりの向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の押出成形用ダイスの第一実施形態の使用状態を示す断面図である。
【図2】第一実施形態におけるベアリング部を示す断面図である。
【図3】第一実施形態のダイスの分解断面図である。
【図4】第一実施形態のダイスの分解斜視図である。
【図5】この発明におけるベアリング部材の一例を示す正面図(a)及び(a)のI−I線に沿う断面図(b)である。
【図6】この発明におけるベアリング部材の別の形態を示す正面図(a)及び(a)のII−II線に沿う断面図(b)である。
【図7】第一実施形態のダイスの再生方法を説明する概略正面図である。
【図8】この発明の押出成形用ダイスの第二実施形態のベアリング部を示す断面図である。
【図9】第二実施形態のダイスの再生方法を説明する概略分解正面図である。
【図10】この発明の押出成形用ダイスの第三実施形態の使用状態を示す断面図である。
【図11】第三実施形態におけるベアリング部を示す断面図である。
【図12】この発明の押出成形用ダイスの第四実施形態の使用状態を示す断面図である。
【図13】第四実施形態における押え板を示す正面図である。
【図14】第四実施形態のダイスの再生方法を説明する概略正面図である。
【符号の説明】
1 ホルダー
2 取付凹部
3,3A 押出孔
3a 外側ベアリング
3b 内側ベアリング
5,5A 押え板
7 固定ボルト(固定部材)
8 押圧ボルト(押圧部材)
10 ダイ
11〜14,15〜18,61〜64 ベアリング部材
21,22,23,24 ベアリング部
41 段部
Claims (3)
- ホルダーにて着脱可能に保持されるダイを、切削等により再生可能なベアリング部を有する少なくとも3個以上に分割されたベアリング部材にて形成してなる押出成形用ダイスにおいて、
隣接する上記ベアリング部材の一方のベアリング部材の側端角部に段部を設け、この段部に他方のベアリング部材の側端角部を当接係合してなることを特徴とする押出成形用ダイス。 - ホルダーにて着脱可能に保持されるダイを、切削等により再生可能なベアリング部を有する少なくとも3個以上に分割されたベアリング部材にて形成してなる押出成形用ダイスにおいて、
上記ホルダーに設けられた取付凹部内にベアリング部材を嵌挿し、ベアリング部材を遊嵌する固定部材によってベアリング部材とホルダーとを固定してなることを特徴とする押出成形用ダイス。 - 請求項1又は2記載の押出成形用ダイスにおいて、
上記ホルダーの外周から内方に挿入される押圧部材にてベアリング部材を押圧固定してなることを特徴とする押出成形用ダイス。
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