JP4302934B2 - ミカエル型付加物の分解方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アクリル酸および/またはアクリル酸エステルのミカエル型付加物分解方法であり、より詳細にはアクリル酸および/またはアクリル酸エステルの製造時に、熱または触媒等の作用により副生するミカエル型付加物を、銅塩化化合物とアルカリ金属塩化合物もしくはアルカリ土類金属塩化合物の存在下で、アクリル酸および/またはアクリル酸エステルおよび/またはアルコールに分解することを特徴とするミカエル型付加物の分解方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般にアクリル酸及びそのエステルの製造時には、熱や触媒等の作用によって、アクリル酸やアクリル酸エステルの炭素−炭素二重結合にカルボン酸やアルコールが付加したミカエル型付加物が副生する場合がある。このようなミカエル型付加物としては、アクリル酸の2〜5程度の多量体やそのエステル、アルコキシプロピオン酸、アルコキシプロピオン酸エステル等がある。
【0003】
ミカエル型付加物の副生量が増大すると、アクリル酸の製造プロセスにおける原料効率が低下し、製造コストが高くなるという好ましくない状況になる。また、プロセス内にミカエル型付加物が蓄積されると精製工程や製造工程にも大きな支障を与え、温度の上昇や副生物の発生によって製品の品質を劣化させる場合もある。このため、ミカエル型付加物は精製工程で濃縮してプロセス系外に排出し焼却することが通常であるが、このような焼却は環境保全上も好ましくない。アクリル酸などの製造工程では、このようなミカエル型付加物を分解し、再利用する努力を行ってきた。
【0004】
例えば、このようなミカエル型付加物の分解方法として、アクリル酸またはアクリル酸エステルのオリゴマー、アルコキシプロピオン酸、アルコキシプロピオン酸エステル等が、熱的な分解や触媒によって分解されることは公知である。具体的には、特開昭49−55614号公報にはアクリル酸をアルコールでエステル化する際に副生するミカエル型付加物を180℃以上で加熱してモノマーに分解する方法が開示されている。また、特公昭45−19281号公報には、アクリル酸の仕上げ工程で生じる残渣を、触媒である第1級もしくは第3級アミノ基を有する化合物または第3級フォスフィンの存在下で加熱してアクリル酸を製造する方法が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの方法はかなりの高温を要する一方、アクリル酸としての回収率が低い。また、高い回収率を得ようとすると副反応が進み、アクリル酸やアクリル酸エステルの品質を低下させる高沸点物質や軽沸点物質等の副生物が多量に生成し、結果的にアクリル酸を高収率で回収することは困難である。
【0006】
更に、特開平3−178949号公報には、アクリル酸及びそのエステル製造時に副生するミカエル型付加物を固体酸の存在下で200℃以上の高温で接触分解させるモノマーの回収方法が記載されている。この方法ではミカエル型付加物の分解率は高いものの、やはり高温で反応するために軽沸点物質などの副生物の生成率が高く、製品の品質上好ましくない。また、固液反応であるため、被毒による触媒活性の低下も著しい。加えて、上記いずれの方法も高温反応のために残渣が高粘度となり、長期滞留によって最終的に固化するためその処理が極めて困難になるという欠点がある。
【0007】
加えて、中国特許1046324Aでは、アクリル酸とアクリル酸二量体を含む廃液を加温し、プロセスウォーターを加えて分解蒸留してアクリル酸を回収する方法が開示されている。プロセスウォーターの添加によって廃液の粘度を低下させ、アクリル酸二量体とアクリル酸との蒸留を容易するものである。しかしながら、中国特許CN1046324Aの方法では、水存在下での高温熱経過によってアクリル酸等の重合体が発生し、液の増粘化やゲル化などの性状悪化の問題があり、さらに使用したプロセスウォーターを系から分離する必要があり、工程が煩雑となる。
【0008】
また、特開昭57−62229号公報には、アクリル酸エステル製造時に副生する重質物をアルカリ水溶液で処理する方法が開示されている。しかし、この方法では、アルカリ水溶液で処理するため析出物が発生し、また中和熱によってアクリル酸等の重合物が発生し、やはり液の増粘化やゲル化などの性状悪化の問題があり、エネルギー的にも不利である。加えて、β−ヒドロキシプロピオン酸などが副生するため製品品質にも問題が生じる。
【0009】
このような状況下、ミカエル型付加物を有用なアクリル酸、そのエステル、またはアルコールの少なくとも1種に変換して、これを効率よく回収し、または利用することが望まれる。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、アクリル酸やそのエステルの製造工程で発生するミカエル型付加物の分解方法について検討した結果、該化合物がアクリル酸等の製造工程の条件下で、ジアルキルジチオカルバミン酸銅およびアクリル酸のアルカリ金属塩化合物の存在によって、液の増粘化・ゲル化を生じさせず、副生成物の発生などの問題を防止しつつ、ミカエル型付加物を有用成分に分解することを見出し、本発明を完成させた。従前には、アクリル酸等の製造工程における銅塩化物とアルカリ金属塩化合物またはアルカリ土類金属塩化合物によるミカエル型付加物の分解活性は、全く知られていなかった。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の第一は、下記式[I]または[II]で示されるアクリル酸および/またはアクリル酸エステルのミカエル型付加物を、アルカリ金属塩化合物およびアルカリ土類金属塩化合物よりなる群から選択される1種以上の金属塩化合物と銅塩化合物との存在下で反応させ、アクリル酸および/またはアクリル酸エステル、および/またはアルコールに分解することを特徴とするアクリル酸および/またはアクリル酸エステルのミカエル型付加物の分解方法である。
【0012】
【化3】
【0013】
(但し、式中、nは1〜5の整数を表し、R1は、水素原子またはアルキル基を表し、−X−は−CH2CH2−または−CH(CH3)−を表す。但し、nが2以上の場合は、複数の−X−は同一であっても異なっていてもよい。)
【0014】
【化4】
【0015】
(但し、式中、mは1〜5の整数を表し、R2、R3は、それぞれ独立して水素原子またはアルキル基を表し、−X−は−CH2CH2−または−CH(CH3)−を表す。但し、mが2以上の場合は、複数の−X−は同一であっても異なっていてもよい。)
式[I]、[II]中のR1、R2、R3で示すアルキル基は、アクリル酸エステルを製造する際の原料アルコールに由来するものである。具体的には、直鎖状または分岐状のアルキル基、アルキル基の水素原子に芳香族基が置換したアルキル基や、アルキル基の水素原子にシクロアルキル基が置換したシクロ環含有アルキル基等が例示できる。R1、R2およびR3で示すアルキル基としては、炭素数1〜8のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n−ブチル基、t−ブチル基、プロピル基、2−エチルへキシル基や、メチル基にフェニル基が結合したベンジル基、メチル基にシクロペンタンが結合した2−シクロペンチルメチル基等がある。本発明では、R1、R2、R3としては、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基、エチル基、n−ブチル基、t−ブチル基もしくは2−エチルへキシル基であることが好ましい。これらが、アクリル酸やそのエステルの製造工程で副生する化合物だからである。
【0016】
また、−X−は、−CH2CH2−または−CH(CH3)−であり、nは1〜5の整数、より好ましくは1〜2である。アクリル酸やアクリル酸エステルの製造工程では、これらの二量体、三量体の副生率が高いからである。また、式[I]のnは1〜5の整数、より好ましくは1〜2である。アクリル酸やアクリル酸エステルの製造工程では、これらの二量体、三量体の副生率が高いからである。また、式[II]中のmは1〜5の整数であり、より好ましくは1〜2である。アクリル酸エステルの製造工程では、アルコシキプロピオン酸、およびエステル等の副生率が高いからである。このようなミカエル型付加物は、アクリル酸やアクリル酸エステルの製造工程で副生するが、本発明によればこれらを有用なアクリル酸類、すなわちアクリル酸、アクリル酸エステルまたはアルコールの少なくとも1種として効率よく回収することができるため、アクリル酸やそのエステル類の製造プロセスにおける実質的な収率を向上させることができる。
【0017】
本発明は、上記ミカエル型付加物を、銅塩化合物と、アルカリ金属塩化合物および/またはアルカリ土類金属塩化合物の存在下に分解するものであるが、このような銅塩化合物としては特に制限されず、無機塩、有機塩のいずれであってもよく、様々なものを用いることができる。例えばジアルキルジチオカルバミン酸銅、酢酸銅、ナフテン酸銅、アクリル酸銅、硫酸銅、硝酸銅、塩化銅などが挙げられる。これらの銅塩は一価、二価のいずれも用いることができる。上記銅塩の中では、効果などの点からジアルキルジチオカルバミン酸銅が好ましい。
【0018】
ジアルキルジチオカルバミン酸銅としては、例えば、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジエチルジチオカルバミン酸銅、ジプロピルジチオカルバミン酸銅、ジブチルジチオカルバミン酸銅、ジペンチルジチオカルバミン酸銅、ジヘキシルジチオカルバミン酸銅、ジフェニルジチオカルバミン酸銅、メチルエチルジチオカルバミン酸銅、メチルプロピルジチオカルバミン酸銅、メチルブチルジチオカルバミン酸銅、メチルペンチルジチオカルバミン酸銅、メチルヘキシルジチオカルバミン酸銅、メチルフェニルジチオカルバミン酸銅、エチルプロピルジチオカルバミン酸銅、エチルブチルジチオカルバミン酸銅、エチルペンチルジチオカルバミン酸銅、エチルヘキシルジチオカルバミン酸銅、エチルフェニルジチオカルバミン酸銅、プロピルブチルジチオカルバミン酸銅、プロピルペンチルジチオカルバミン酸銅、プロピルヘキシルジチオカルバミン酸銅、プロピルフェニルジチオカルバミン酸銅、ブチルペンチルジチオカルバミン酸銅、ブチルヘキシルジチオカルバミン酸銅、ブチルフェニルジチオカルバミン酸銅、ペンチルヘキシルジチオカルバミン酸銅、ペンチルフェニルジチオカルバミン酸銅、ヘキシルフェニルジチオカルバミン酸銅などが挙げられる。これらのジアルキルジチオカルバミン酸銅は、一価の銅塩であってもよく、二価の銅塩であってもよい。これらの中で、効果及び入手しやすいなどの点からジメチルジチオカルバミン酸銅、ジエチルジチオカルバミン酸銅及びジブチルジチオカルバミン酸銅が好ましく、特にジブチルジチオカルバミン酸銅が好適である。
【0019】
また、アルカリ金属塩化合物としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウムの塩化合物があり、優れたアクリル酸のミカエル型付加物の分解性を有する点で、リチウム、ナトリウム、カリウムの塩化合物を使用することが好ましい。具体的には、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸カリウム、アクリル酸リチウムなどのアクリル酸塩;水酸化ナトリム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどの水酸化物;水素化ホウ素ナトリウム、水素化ナトリウムなどの水素化物;フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭素化ナトリウム、ヨウ化ナトリウムなどのハロゲン化物;過酸化ナトリウム、超酸化ナトリウムなどの酸素化合物;硫化ナトリウム等の硫化物;ナトリウムアミド、アジ化ナトリウムなどの窒素化合物;次塩素酸ナトリウム等の酸素酸塩;Rを炭素数1〜5のアルキル基とした場合にRONaで表されるアルコキシド、その他アルカリ金属の硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、炭酸塩、ケイ酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩などのいずれであってもよい。
【0020】
また、アルカリ土類金属塩化合物としては、べリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウムの塩化合物があり、優れたアクリル酸のミカエル型付加物の分解性を有する点でマグネシウム、カルシウム、バリウムの塩化合物を使用することが好ましい。具体的には、アクリル酸カルシウム、アクリル酸マグネシウム、アクリル酸バリウムなどのアクリル酸塩;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウムなどの水酸化物;水素化カルシウムなどの水素化物;フッ化カルシウム、塩化カルシウム等の塩化物その他、アルカリ土類金属の硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、炭酸塩、ケイ酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩などのいずれであってもよい。本発明では、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のアクリル酸塩を使用することが好ましい。イオン解離後のアクリル酸を製造目的化合物として使用することができるからである。
【0021】
本発明では、銅塩化物とアルカリ金属塩塩化合物および/またはアルカリ土類金属塩化合物の添加方法としては特に制限はなく、上記銅塩化物と、アルカリ金属塩化合物および/またはアルカリ土類金属塩化合物を含む化合物の1種または2種以上を併用して、アクリル酸やアクリル酸二量体などのアクリル酸のミカエル型付加物を含む廃液に固化した状態でそのまま添加してもよく、また上記化合物を溶媒に溶解させて供給してもよい。また、投入個所は、これを直接アクリル酸のミカエル型付加物の分解槽に供給してもよいが、最終的に銅塩化物と、アルカリ金属塩化合物および/またはアルカリ土類金属塩化合物が含まれていればよく、該分解槽に循環する配管などから銅塩化物と、アルカリ金属塩化合物および/またはアルカリ土類金属塩化合物またはこれの溶解溶液を導入してもよい。
【0022】
例えば、溶解した状態で作用させる方法としては、適当な溶剤に銅塩化物と、アルカリ金属塩化合物および/またはアルカリ土類金属塩化合物を溶かして液状にして供給する。この液状にしたものは、噴霧する形態で投与してもよい。なお、銅塩化合物、アルカリ金属塩化合物および/またはアルカリ土類金属塩化合物を含む上記化合物を溶解できる溶剤としては、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタノール、エタノールなどのアルコール、水、ベンゼン、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等、これらの混合物を使用することもできる。
【0023】
この際の添加量は、銅塩化物は、廃液に対して0.01〜10質量%、好ましくは0.05〜5質量%、特に好ましくは0.1〜2質量%である。0.01質量%を下回ると効率が低下し、目的とするアクリル酸類への転化効率が十分得られなくなり、その一方、10質量%を越えると高粘度残渣を生じ、工業的に好ましくない状況を生じるおそれがあるからである。
【0024】
また、アルカリ金属塩化合物および/またはアルカリ土類金属塩化合物の合計量としては、廃液に対して0.01〜10質量%、好ましくは0.05〜5質量%、特に好ましくは0.1〜2質量%である。0.01質量%を下回ると効率が低下し、目的とするアクリル酸類への転化効率が十分得られなくなり、その一方、10質量%を越えると高粘度残渣を生じ、工業的に好ましくない状況を生じるおそれがあるからである。
【0025】
本発明では、更に、アルカリ金属塩化合物およびアルカリ土類金属塩化合物よりなる群から選択される1種以上の金属塩化合物と銅塩化合物に加え、N−オキシル化合物を併用してもよい。このようなN−オキシル化合物としては、上記ミカエル型付加物を分解する触媒活性を有するものを広く使用することができ、一般に知られているN−オキシル化合物を用いることができる。これらのなかでも、4,4’,4”−トリス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシル)フォスファイトならびに下記式(1)で表される2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシル類:
【0026】
【化5】
【0027】
(ただし、式(1)中、R1はCH2、CHOH、CHCH2OH、CHCH2CH2OH、CHOCH2OH、CHOCH2CH2OH、CHCOOH、またはC=Oを示し、R2は水素原子またはCH2OHを示す)で示す化合物の1種または2種以上を用いることが好ましい。
【0028】
本発明においては、N−オキシル化合物に加え、N−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン化合物、例えば、1,4−ジヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン化合物、例えば、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等の1種以上を併用することができる。なお、N−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン化合物や2,2,6,6−テトラメチルピペリジン化合物は、市販されるN−オキシル化合物製品中に不純物として含有される場合があるが、このような場合には市販のN−オキシル化合物の使用によって、併せてN−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン化合物や2,2,6,6−テトラメチルピペリジン化合物を併用したことになる。
【0029】
ミカエル型付加物をN−オキシル化合物の存在下に、アクリル酸および/またはアクリル酸エステル、および/またはアルコールに分解すると、特に分解によって生成したアルコールが分子内脱水反応や分子間脱水反応によってアルケンやエーテルなどの副生物を生じにくいという利点がある。
【0030】
N−オキシル化合物の好ましい使用量は、転化効率及びコスト面より、式[I]または[II]で示すミカエル型付加物の合計量に対して0.01〜20質量%、好ましくは0.1〜10質量%、特に好ましくは0.5〜6質量%が適当である。この際、N−オキシル化合物の添加方法としては特に制限はなく、これを溶媒に溶解させて供給するほか、固化した状態で、または気化した状態で該分解槽に供給してもよく、また、これを直接該分解槽に供給、あるいは前段のいずれかの工程で添加することも可能である。例えば、溶解した状態で作用させる方法としては、適当な溶剤にN−オキシル化合物を溶かして液状にして供給する。また、気化した状態で作用させる方法としては、N−オキシル化合物を気化または昇華したものを、該分解槽に連通する配管経路内に供給して混合させてもよい。また、上記N−オキシル化合物を溶解できる溶剤としては、アクリル酸、アクリル酸エステル、アルコールや水、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、n−ヘキサン、ヘプタン等、これらの混合物を使用することもできる。
【0031】
ミカエル型付加物をアルカリ金属塩化合物および/またはアルカリ土類金属塩化合物、必要に応じて添加してもよいN−オキシル化合物を併用して反応させる際の温度は、対象となるミカエル型付加物の種類や反応圧力によって異るものの、通常100〜250℃、より好ましくは120〜200℃、特に好ましくは130〜180℃の範囲である。該温度が250℃を越えると副反応が非常に増大する場合があり、収率の低下や軽沸点物質などの不純物が増加して製品品質を低下させる場合がある。さらに、高温での熱滞留によって高粘度の残渣が生じる場合があり、最終的に容器内で固化するという工業的に好ましくない状況を生じるおそれがある。特に、従来は、180℃以上の温度で分解する必要があったが、本発明によればこれよりも低い温度で効率的に有効成分に分解できるため、熱効率にも優れる。一方、該温度が100℃を下回ると反応速度が遅くなるため効率が低下し、目的とするアクリル酸類への転化効率が十分得られないことがある。なお、該反応時の圧力については特に制限はなく、0.01〜1000kPa、より好ましくは0.1〜500kPa、特に好ましくは1〜200kPaが適当である。
【0032】
本発明では、銅塩化合物とアルカリ金属塩化合物および/またはアルカリ土類金属塩化合物との存在下でミカエル型付加物を分解する反応で生成するアクリル酸の重合を防止するために、重合防止剤を使用することが好ましい。使用される重合防止剤としてはアクリル酸類の製造工程で一般的に広く使われているものを用いる事ができる。具体的には、例えば、ハイドロキノン、メトキシハイドロキノン、フェノチアジン、ヒドロキシアミンなどが挙げられる。また、分子状酸素の存在下で分解反応を行うと重合禁止効果を高めることが可能である。このような重合防止剤の量は特に限定はされないが、用いられる重合防止剤の総量をアクリル酸およびそのエステルの蒸発蒸気量に対して0.01〜15%(質量基準)とするのが好ましい。
【0033】
本発明の分解方法は、回分式、半連続式、連続式のいずれでも行うことができる。ここに連続式とは、上記塩化合物の存在下にミカエル型付加物の回収が連続的に行われ、かつ該ミカエル型付加物が分解される態様を意味する。このような連続式では、ミカエル型付加物の供給速度とその分解速度とが釣り合う事が望ましい。このような均衡を確保するには、反応蒸留という方法がある。また、連続法における分解槽滞留時間は、ミカエル型付加物の転化率の面から通常0.1〜60時間、より好ましくは、5〜50時間、特に好ましくは15〜30時間が適当である。滞留時間が60時間を超えると副生成物の割合が高くなり性状が悪化する場合があり、分解槽を大きくする場合には設備コスト面で不利になる。一方、滞留時間が0.1時間未満であれば、十分な分解率が得られない場合がある。
【0034】
上記ミカエル型付加物は、アクリル酸の製造工程において副生する成分であり、これらの分解物はアクリル酸の原料化合物や目的物そのものである。従って、本発明の分解方法を、アクリル酸の製造工程に組み込むことで、生産効率に優れ、かつ品質に優れるアクリル酸を製造することができる。すなわち、本発明の第二は、アクリル酸の製造工程で発生するアクリル酸のミカエル型付加物を回収する工程、該回収したミカエル型付加物を本発明の第一の分解方法で分解する工程とを含むことを特徴とするアクリル酸の製造方法であり、更に、該ミカエル型付加物を分解する工程についで、ミカエル型付加物を分解して得たアクリル酸を、該アクリル酸に戻す工程を含んでもよい。このようにミカエル型付加物を一旦系外に回収する工程を設けることで、アクリル酸の製造工程で弊害となる副生物を除去でき、該副生物による製造工程での温度上昇や製品の品質劣化などを回避することができる。その一方、この得られた分解物をアクリル酸の製造工程の系内に戻すことで、原料効率を向上させることができる。
【0035】
このようなミカエル型付加物を回収する工程と分解する工程とを含むアクリル酸の製造方法の一例として、図1を用いてプロピレンおよび/またはアクロレインを気相接触酸化してアクリル酸含有ガスを得た後に精製する方法を説明する。なお、ミカエル型付加物はアクリル酸よりも高沸点であるため、ミカエル型付加物はアクリル酸製造工程の高沸点物質含有画分に回収される。
【0036】
まず、プロピレン(190)と分子状酸素含有ガスとを反応器を上下のチャンバーに区切る中間管板を備えた接触気相反応器(110)に供給して接触気相酸化させアクリル酸含有ガスを得る。該反応ガスをアクリル酸捕集塔(120)に導入し、水と接触させてアクリル酸を水溶液中に捕集する。このアクリル酸含有溶液にはアクロレインが不純物として含まれているため、これをアクロレイン放散塔(130)に導入し、アクロレインを放散させ、水30質量%、酢酸3.0質量%を含むアクリル酸水溶液を得る。次いで、アクロレイン放散塔(130)の塔底液を共沸脱水塔(140)に導入し、共沸溶剤を供給して脱水蒸留し、共沸脱水塔(140)の塔頂から水やアクリル酸の一部を留出させる。これによって、アクリル酸97.5質量%、酢酸0.03質量%、水0.02質量%、その他2.45質量%を含む塔底液を得る。次いで、この塔底液を、精製塔(150)に導入し、塔頂から製品アクリル酸(200)を得る。該精製塔(150)の塔底液に、アクリル酸二量体等のミカエル型付加物を含む液で、アクリル酸二量体、アクリル酸三量体、アクリル酸、マレイン酸、その他の、安定剤、高沸点物質等が含まれている。
【0037】
本発明では、このミカエル型付加物を含む塔底液を、薄膜蒸発器(170)を備えた高沸分離塔(160)の中段に導入する。高沸分離塔(160)の塔底温度は、薄膜蒸発器(170)の操作温度によって制御しつつ、ミカエル型付加物を含む薄膜蒸発器(170)の缶液を熱分解槽(180)に導入する。この熱分解槽(180)に、銅塩化合物と、アルカリ金属塩化合物および/またはアルカリ土類金属塩化合物として、例えば、ジアルキルジチオカルバミン酸銅と、アクリル酸ナトリウムとを分解槽(180)から得た廃液(300)に添加する。該分解槽内の温度は、120〜150℃であることが好ましく、分解槽(180)には保温または加温のために図示しない熱源を設けてもよい。また、分解液にはアクリル酸などが含まれるため、その一部を薄膜蒸発器(170)に循環し、高沸分離塔(160)の塔頂からアクリル酸を留出させ共沸脱水塔(140)に循環させる。なお、分解液の一部は、廃液(300)として系外に抜き出す。
【0038】
また、アクリル酸エステルの製造方法としては、接触気相酸化反応によってアクリル酸を製造し、次いでこれをエステル化するアクリル酸エステルの製造を一例として図2を用いて具体的に説明すると次のようになる。
【0039】
触媒として強酸性陽イオン樹脂を充填させたエステル化物生成器(1)に、ライン(L11)からアクリル酸(11)を供給し、ライン(L10)からアルコール(10)を供給して、該触媒を介してエステル化物を生成する。エステル化物生成器(1)内には、エステル化物製造原料であるアクリル酸、アルコールおよび反応生成物であるアクリル酸エステルおよび副生する水が含まれる。次いで、該反応液をライン(L13)から酸分離塔(2)に導入し、高沸物質を含む塔底液を高沸分離塔(6)に導入し、塔頂からアクリル酸エステル、未反応アルコール、水などの軽沸点物質を留出させる。次いで、該留出物をライン(L14)から油水分離器(7)に導入させると、アクリル酸エステルを含む油相と水やアルコール等を主成分とする水相とに分離される。そこで、該水相をアルコール回収塔(3)に移送すると共に、該油相をライン(L16)によって軽沸物分離塔(4)に供給する。この際該油相の一部は、酸分離塔(2)に還流してもよい。一方、軽沸物分離塔(4)では、塔底からはアクリル酸エステルを抜き出し、ライン(L18)を経て精製塔(5)へ供給し、塔頂からアクリル酸エステル製品(12)を留出させる。なお、アルコール回収塔(3)の塔頂から留出させたアルコールは、ライン(L22)から油水分離器(7)の油相に循環させる。また、軽沸物分離塔(4)の塔頂から留出した水、アルコールその他の軽沸点物質は、エステル化物生成器(1)の上部に備えた蒸留塔を介してエステル化物生成器(1)に循環させる。
【0040】
このようなアクリル酸エステルの製造工程において、高沸分離塔(6)に導入された酸分離塔(2)の塔底液にはアクリル酸等の原料成分と共に、アクリル酸二量体やそのエステル、アルコキシプロピオン酸及びアルコキシプロピオン酸エステル等のミカエル型付加物が含まれている。そこで、ミカエル型付加物を含む該塔底液を薄膜蒸発器(8)を備えた高沸分離塔(6)に導入して蒸留し、塔頂からアクリル酸を留出させて回収するとともに、該ミカエル型付加物を含む塔底液を薄膜蒸発器(8)に導入し、更に蒸留処理を行なって缶出液を得る。該缶出液をライン(L20)から熱分解槽(9)に導入し、銅塩化合物として、ジアルキルジチオカルバミン酸銅とアルカリ金属塩化合物としてアクリル酸ナトリウムを添加して加熱すると、ミカエル型付加物がアクリル酸やアルコールなどの原料成分や、アクリル酸エステルなどに分解される。該分解物を、薄膜蒸発器(8)に導入するとアルコール、アクリル酸、アクリル酸エステルが高沸分離塔(6)を経てその塔頂から留出するため、これをライン(L19)、ライン(L11)を経てエステル化物生成器(1)に循環する。特に、分解物の混合物をエステル化反応や酸分離の工程に戻すと、次工程以降で他成分が分離できるため好ましい。なお、蒸留、抽出等の方法でこれらの成分を分離して使用することもできる。
【0041】
本発明において「ミカエル型付加物を回収する工程」とは、ミカエル型付加物を含む分画を得る工程をいい、その後に該分画に含まれるミカエル型付加物が、銅塩化合物とアルカリ金属塩化合物および/またはアルカリ土類金属塩化合物の存在下でアクリル酸に分解できればよく、ミカエル型付加物を含む分画を分解槽などに導入する工程が広く含まれる。
【0042】
本発明は、ミカエル型付加物を分解する方法であるが、該ミカエル型付加物は上記のようにアクリル酸の製造工程で発生するものであるため、これらの製造工程に上記銅塩化合物、アルカリ金属塩化合物および/またはアルカリ土類金属塩化合物を添加することで、本発明の分解方法によってミカエル型付加物を分解しつつ、アクリル酸やそのエステルを製造することができる。
【0043】
なお、アクリル酸エステルの製造方法としては、アクリル酸とアルコールとを脱水反応させてエステルを得る方法であって、好ましいアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、シクロペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、シクロヘキサノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、1−オクタノール、イソオクタノール、2−エチルヘキサノール、イソノニルアルコール、ラウリルアルコールなどの各種アルコールを挙げることができ、これらは直鎖状のものであっても分岐を有するものであってもよい。また、これらは1種を単独で使用する場合に限られず、2種以上を併用する場合であってもよい。
【0044】
なお、本発明で分解の対象とするミカエル型付加物は、アクリル酸の製造工程で副生したミカエル型付加物に限られない。従って、バッチ式にミカエル型付加物を銅塩化合物とアルカリ金属塩化合物および/またはアルカリ土類金属塩化合物との存在下で反応させて、アクリル酸に分解してもよい。いずれの方法においても、上記反応温度や反応圧力内で分解させることができる。
【0045】
【実施例】
以下、本発明の実施例により具体的に説明する。
【0046】
(実施例1)
バッチ反応によってアクリル酸のミカエル型付加物を分解した。まず、冷却管付きの500mlの丸底フラスコに触媒として、1.5gのアクリル酸ナトリウムと1.5gのジブチルジチオカルバミン酸銅塩(以下CBと略記する)と297gのミカエル型付加物(アクリル酸二量体(以下DAAと略記する):質量60%、アクリル酸:質量4%、ハイドロキノン:質量2%、その他高沸点不純物:質量34%)を仕込み、攪拌しながら温度140℃で反応した。
【0047】
反応開始後、4時間後に分解液をガスクロマトグラフィーにて分析した。その結果を表1に示す。なお、表1において転化率と選択率は下記式によって算出した。
【0048】
【数1】
【0049】
(実施例2)
バッチ反応によってミカエル型付加物を分解した。実施例1において触媒としてさらに1.5gの4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシル(以下4H−TEMPOと略記する)を加えること以外は実施例1と同様にミカエル型付加物の分解を行なった。その結果を表1に示す。なお、ミカエル型付加物の組成は、実施例1と同様である。
【0050】
(比較例1)
バッチ反応によってミカエル型付加物を分解した。実施例1において触媒としてアクリル酸ナトリウムを使用しない以外は実施例1と同様にミカエル型付加物の分解を行なった。その結果を表1に示す。なお、ミカエル型付加物の組成は、実施例1と同様である。
【0051】
(比較例2)
バッチ反応によってミカエル型付加物を分解した。実施例1において触媒としてジブチルジチオカルバミン酸銅塩を使用しない以外は実施例1と同様にミカエル型付加物の分解を行なった。その結果を表1に示す。なお、ミカエル型付加物の組成は、実施例1と同様である。
【0052】
(比較例3)
バッチ反応によってミカエル型付加物を分解した。実施例1において触媒としてアクリル酸ナトリウムとジブチルジチオカルバミン酸銅塩を使用しない以外は実施例1と同様にミカエル型付加物の分解を行なった。その結果を表1に示す。なお、ミカエル型付加物の組成は、実施例1と同様である。
【0053】
(実施例3)
分解蒸留によってアクリル酸のミカエル型付加物を分解した。まず、上部に20段の蒸留塔を設置した攪拌器付きの分解槽(1000mlフラスコ)にミカエル型付加物(DAA:60質量%、アクリル酸:4質量%、ハイドロキノン:2質量%、その他高沸点不純物:34質量%)500gを仕込み、操作圧力35hPa、分解温度が140℃になるように制御し、塔底に該ミカエル型付加物を245g/h、アクリル酸ナトリウム1.2g/h、ジブチルジチオカルバミン酸銅塩を1.2g/hr(ミカエル付加物に溶解させた形で)で連続的に投入した。同時に蒸留塔上部より分解により生成したアクリル酸を留出させ、還流比1の条件になった時点で留出液及び分解槽抜き出し液をガスクロマトグラフィーにより分析した。その結果を表1に示す。
【0054】
(比較例4)
分解蒸留によってミカエル型付加物を分解した。実施例2においてアクリル酸ナトリウムとジブチルジチオカルバミン酸銅塩を使用しない以外は実施例2と同様にミカエル型付加物の分解を行なった。その結果を表1に示す。なお、ミカエル型付加物の組成は、実施例1と同様である。
【0055】
【表1】
【0056】
(実施例4)
図1に示すアクリル酸製造フローに従って、アクリル酸を製造した。
【0057】
このミカエル付加物を含む塔底液を薄膜蒸発器(170)を備えた段数15段ステンレス製シーブトレーの高沸分離塔(160)の中段に0.8トン/hで導入し、高沸分離塔(160)では、塔底温度が90℃になるように、薄膜蒸発器(170)を制御し、操作圧35hPa、還流比1条件で運転した。さらにミカエル型付加物を含む薄膜蒸発器(170)の缶液を、熱分解槽(180)に導入した。この分解槽の液の一部をL190から薄膜蒸発器(170)に再び導入した。このL190にアクリル酸ナトリウム水溶液(質量37%)とジブチルジチオカルバミン酸銅(質量2%溶媒:アクリル酸)を共に分解槽(180)のボトムから抜き出される該ミカエル型付加物を含む廃液(300)に対して1.5質量%となるように添加して、分解槽に導入し、該分解槽内の温度を150℃、圧力常圧とし、ミカエル型付加物をアクリル酸に分解した。
【0058】
この分解したアクリル酸は、高沸分離塔(160)の塔頂より回収し、共沸脱水塔(140)の供給液に回収した。一部は、廃液(200)として系外に抜き出した。
【0059】
【発明の効果】
本発明によれば、ミカエル型付加物を銅塩化合物とアルカリ金属塩化合物および/またはアルカリ土類金属塩化合物の存在下に反応させることで、アクリル酸に分解することができる。このため該分解方法をアクリル酸の製造工程に組み込むことで、液の増粘化やゲル化などを防止しつつ原料の利用効率を向上させて、収率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、アクリル酸の製造工程を示す概略フロー図である。
【図2】 図2は、アクリル酸エステルの製造プロセスを示す概略図である。
【符号の説明】
1・・・エステル化反応器、
2・・・酸分離塔、
3・・・アルコール回収塔、
4・・・軽沸物分離塔、
5・・・精製塔、
6・・・高沸分離塔、
7・・・油水分離器、
8・・・薄膜蒸発器、
9・・・熱分解槽、
10・・・アルコール、
11・・・アクリル酸、
12・・・製品、
13・・・重合防止剤含有液、
14・・・廃油、
L10、L11、L13、L14、L15、L16、L17、L18、L19、L20、L21、L22・・・各ライン、
110・・・接触気相反応器、
120・・・アクリル酸捕集塔、
130・・・アクロレイン放散塔、
140・・・共沸脱水塔、
150・・・精製塔、
160・・・高沸分離塔、
170・・・薄膜蒸発器、
180・・・熱分解槽、
190・・・プロピレン、
200・・・アクリル酸、
300・・・廃油。
Claims (4)
- 下記式[I]または[II]で示されるアクリル酸および/またはアクリル酸エステルのミカエル型付加物を、アクリル酸のアルカリ金属塩化合物とジアルキルジチオカルバミン酸銅との存在下で反応させ、アクリル酸、アクリル酸エステル、およびアルコールから選ばれる少なくとも1種に分解することを特徴とするアクリル酸および/またはアクリル酸エステルのミカエル型付加物の分解方法。
- 前記アクリル酸のアルカリ金属塩化合物およびジアルキルジチオカルバミン酸銅に加え、さらにN−オキシル化合物が存在する条件下で、前記ミカエル型付加物を反応させることを特徴とする、請求項1記載のアクリル酸および/またはアクリル酸エステルのミカエル型付加物分解方法。
- アクリル酸またはアクリル酸エステルの製造工程で発生するアクリル酸および/またはアクリル酸エステルのミカエル型付加物を回収する工程および、該回収したアクリル酸および/またはアクリル酸エステルのミカエル型付加物を請求項1または2に記載の分解方法で分解する工程を含むことを特徴とする、アクリル酸および/またはアクリル酸エステルの製造方法。
- 該アクリル酸および/またはアクリル酸エステルのミカエル型付加物を分解する工程に次いで、該アクリル酸および/またはアクリル酸エステルのミカエル型付加物を分解して得たアクリル酸、アクリル酸エステルおよびアルコールから選ばれる少なくとも1種を、アクリル酸およびアクリル酸エステル製造工程のいずれかに戻す工程を含むことを特徴とする、請求項3記載のアクリル酸および/またはアクリル酸エステルの製造方法。
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