JP4302361B2 - 水圧転写方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として凹凸のある立体面や曲面を有する成形体の表面に印刷層を形成するのに好適な水圧転写用フィルムに関し、特に印刷層との親和性が良好で欠点のない印刷層の形成が可能となる工程通過性に優れた水圧転写用フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
凹凸のある立体面や曲面を有する成形体の表面に対して、意匠性を付与したり表面物性を向上させたりする目的で印刷層を形成する手段としては、フィルム面に転写用の印刷層を形成した水膨潤性または水溶性のフィルムからなる水圧転写シートを用いる方法が従来知られている(例えば、特開昭54−33115号公報など)。この方法では、水圧転写シートを印刷面を上にして水面に浮かべた後、被転写体である各種の成形体をその上方から押し入れることにより、水圧を利用して被転写体の表面に印刷層が転写・形成され、次いで転写用フィルムが被転写体表面から除去される。
【0003】
しかしながら、上記従来の方法においては、オフセット印刷、凸版印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷等によって水圧転写用フィルム上に鮮明で微細な印刷層が設けられるが、フィルム基材と印刷層との親和性が低く、鮮明で微細な印刷層や欠点のない印刷層を形成しにくいという問題点があった。また、印刷層が設けられた水圧転写シートの保管時又は水圧転写するまでの各工程において、特に印刷層を設けた水圧転写シートを巻き取りロールで保管する間に、印刷層の剥離が発生しやすいという問題点もあった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の目的とするところは、主として凹凸のある立体面や曲面を有する成形体の表面に印刷層を形成するのに好適な水圧転写用フィルム、特に印刷層との親和性が良好で欠点のない印刷層の形成が可能となる工程通過性に優れた水圧転写用フィルムを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を進めた結果、特定のケン化度と重合度を有するポリビニルアルコールと特定の溶解度パラメータを有する樹脂微粒子を主体とするフィルムが印刷層と親和性が良好で工程通過性に優れていることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば上記目的は、ケン化度80〜90モル%、重合度500〜3000のポリビニルアルコールからなるフィルムに、溶解度パラメータが7〜11の樹脂からなる微粒子が分散されている水圧転写用フィルム、およびケン化度80〜90モル%、重合度500〜3000のポリビニルアルコールフィルムからなるフィルムの少なくとも一方の面に、溶解度パラメータが7〜11の樹脂からなる微粒子を含有する層を配してなる水圧転写用フィルムによって達成される。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の水圧転写用フィルムに使用されるポリビニルアルコールは、ケン化度および重合度が本発明の範囲内であるものであれば特に制限されず使用することが可能であり、例えば主鎖中にエチレン、プロピレンなどのオレフィン類、アクリル酸およびアクリル酸エステル類、メタクリル酸およびメタクリル酸エステル類、アクリルアミド誘導体、メタクリルアミド誘導体、ビニルエーテル類、ハロゲン化ビニル、アリル化合物、マレイン酸およびその塩またはそのエステル、ビニルシリル化合物などから選ばれるモノマーが1種または2種以上共重合されていても差し支えない。これらの共重合モノマーによる変性量は通常25モル%以下、好ましくは5モル%以下である。
【0007】
本発明に用いられるポリビニルアルコールのケン化度は80〜90モル%の範囲にあることが必要であり、好ましくは85〜90モル%の範囲である。ケン化度が80〜90モル%の範囲外となる場合には、フィルムの水に溶解する速度が低下したり、あるいは水に不溶化したりなどして、水圧転写の工程通過性が悪化することがあり好ましくない。
【0008】
また、ポリビニルアルコールの重合度は500〜3000の範囲にあることが必要であり、好ましくは700〜2500、より好ましくは1000〜2000の範囲である。重合度が500未満の場合には、基材フィルムとしての機械強度が不足する場合があり好ましくない。一方、重合度が3000を超える場合には、生産効率が低下したり、水溶性が低下したりするなどして、経済的な水圧転写速度が得られ難くなり好ましくない。
【0009】
本発明の水圧転写用フィルムのもう一つの主成分である樹脂の微粒子としては、溶解度パラメータが7〜11の樹脂からなることが必要であり、好ましくは7.5〜10.5の範囲の樹脂からなるものである。溶解度パラメータが上記範囲外の樹脂からなる微粒子を用いる場合には、印刷層と基材フィルムとの密着性が低くなり、印刷層が剥離しやすいなどの問題が発生するため好ましくない。溶解度パラメータについては、POLYMER HANDBOOK(THIRD EDITION VII/551〜555、WILEY INTERSCIENCE)に記載の公知の数値が好適に用いられる。測定法により溶解度パラメータの数値が異なる場合があり、同じ樹脂に対して複数の数値が記載されていることがあるが、その場合には最小の溶解度パラメータを示す数値が本願発明の数値として採用される。また、溶解度パラメータがPOLYMER HANDBOOKに記載されていない場合には、接着ハンドブック(日刊工業新聞社発行、日本接着学会編、第3版、330〜335頁)に記載の方法により求めた値が採用できる。なお、本発明における溶解度パラメータの単位は「(cal/cm3)1/2」であるが、本明細書では単位の記載を省略している。
【0010】
本願発明に用いられる樹脂微粒子としては、上記溶解度パラメータを満足する樹脂からなる微粒子であれば特に制限されないが、例えば当該溶解度パラメータを満足する樹脂からなる微粒子を含有する樹脂エマルジョンが好適に用いられる。好適な樹脂エマルジョンとしては、例えばエチレン系樹脂、プロピレン系樹脂、ポリスチレンあるいはスチレンを主成分としたスチレン系樹脂、アクリル酸あるいはアクリル酸エステルを主成分としたアクリル酸エステル系樹脂、メタクリル酸あるいはメタクリル酸エステルを主成分としたメタクリル酸エステル系樹脂、スチレンとアクリル酸エステルとの共重合体、スチレンとメタクリル酸エステルとの共重合体、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、エチレン酢酸ビニル系共重合体などの樹脂からなり、本願発明の溶解度パラメータを満足する樹脂の微粒子を含有する樹脂エマルジョンを挙げることができ、これらから選択された少なくとも1種が使用される。これらの内、水圧転写用フィルムに添加した後のブロッキング性または転写性の問題などの点からは、スチレン系樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、メタクリル酸エステル系樹脂、スチレンとアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルとの共重合体などの樹脂微粒子を含有する樹脂エマルジョンから選択された少なくとも1種が特に好ましく用いられる。また、樹脂エマルジョンとポリビニルアルコールとの親和性などの点からは、ポリビニルアルコールを分散剤として使用している樹脂エマルジョンが好ましく用いられる。これらの樹脂エマルジョンを用いる場合には、ポリビニルアルコールと樹脂エマルジョンを混合して水圧転写用フィルムを製造してもよいし、またポリビニルアルコールからなるフィルムの表面に樹脂エマルジョンを塗布ないしは成膜して、水圧転写用フィルムを製造してもよい。これらいずれの方法で水圧転写用フィルムを製造してもよいが、本発明の目的とする効果をより有効に発現させ、かつ簡便に製造するためにはコート法がより好ましい。ポリビニルアルコールと樹脂エマルジョンを用いて水圧転写用フィルムを形成する際の樹脂エマルジョンの使用量としては、ポリビニルアルコール100重量部に対して固形分換算で通常5〜50重量部、好ましくは10〜45重量部、より好ましくは15〜30重量部である。
【0011】
樹脂の微粒子の平均粒子径としては、特に限定されないが、通常0.05〜10μm、好ましくは0.1〜5μm、より好ましくは0.5〜3μmである。樹脂微粒子の平均粒子径が0.05μmより小さい場合には、印刷層と充分な親和性を持たすため添加量を増やす必要のあることがあり、一方その平均粒子径が10μmより大きい場合には、ポリビニルアルコールと樹脂微粒子とから水圧転写用フィルムを製造するとフィルムの耐衝撃性が低下して工程通過性が悪くなったり、あるいはポリビニルアルコールを主体とするフィルム表面にコートすると樹脂微粒子の脱落が起きやすいことがあるので、適宜状況により適切な平均粒子径のものを選択することが好ましい。
【0012】
本発明の水圧転写用フィルムは、前記ケン化度80〜90モル%、重合度500〜3000のポリビニルアルコールからなるフィルムに、溶解度パラメータが7〜11の樹脂からなる微粒子が分散されてなるフィルムまたはこれらを主成分とするフィルムであってもよく、これらを主体としてなるフィルムであれば差し支えない。また本発明の水圧転写用フィルムは、前記ケン化度80〜90モル%、重合度500〜3000のポリビニルアルコールからなるフィルムの少なくとも一方の面に溶解度パラメータが7〜11の樹脂からなる微粒子を含有する層を配してなるフィルムであってもよい。これらの水圧転写用フィルムの製造方法としては特に制限されないが、例えばポリビニルアルコールからなる基材フィルム上に樹脂微粒子を含有する層を配する方法が好適であり、この場合、例えば樹脂エマルジョンをフィルムに塗布ないしはコートする方法が採用でき、従来公知のコーティング方法を用いることができる。従来公知の方法としては、例えばグラビアロールコーティング、マイヤーバーコーティング、リバースロールコーティング、エアーナイフコーティング、スプレーコーティング等が挙げられるが、樹脂微粒子を含有する層が均一に構成できるのであれば、これらの方法に何ら限定されるものではない。
【0013】
また、ポリビニルアルコールフィルムの片面あるいは両面に樹脂微粒子を含有する層を形成することができ、印刷層と水圧転写用フィルムとの親和性の観点からは片面に樹脂微粒子を含有する層を設けることで充分であるが、フィルムのカール性やブロッキング防止性などに起因する工程通過性の点を考慮した場合には両面に樹脂微粒子を含有する層を設けることが好ましい。
上記コーティング方法を採用する際、使用する塗布液ないしコート液として、目的に合わせて水溶性高分子などのバインダーや、オクチルアルコール等の消泡剤、防錆剤、防かび剤、粘度安定剤、界面活性剤、スリップ剤などを添加しても、本発明の所期の効果が得られる範囲であれば差し支えない。例えば水溶性高分子などのバインダーを添加することは、水溶性を向上させて印刷層とフィルム基材との分離を促進させて生産性を向上できる点で好ましく、例えばケン化度が80〜90モル%、好ましくは85〜90モル%で重合度が300以上、好ましくは500〜2500のポリビニルアルコールを用いることが好適である。またシリカなどの無機フィラー等のスリップ剤を添加することは、鮮明性など印刷性を向上させることができることから好ましい。
【0014】
本発明の水圧転写用フィルムの厚みは、水溶性と工程通過性の兼ね合いで適宜選択すればよいが、通常10〜100μm、好ましくは20〜80μm、より好ましくは30〜50μmである。またポリビニルアルコールフィルム上に樹脂微粒子を含有する層を配する際の該樹脂微粒子含有層の厚みは、通常0.05〜20μm、好ましくは0.1〜10μm、より好ましくは0.1〜5μmである。樹脂微粒子を含有する層の厚みの下限は、例えば樹脂エマルジョンに含まれる樹脂微粒子の粒径に依存する場合があり、得られる効果をみながら適宜調整することができる。
【0015】
本発明の水圧転写用フィルムには柔軟性を付与する目的で、さらに可塑剤を添加しても差し支えない。使用する可塑剤の種類としては、主としてポリビニルアルコールに可塑性を付与する物質であれば特に限定されることはないが、例えばグリセリン、ジグリセリン、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール等の多価アルコール系可塑剤が好適であり、特にグリセリンが好ましく用いられる。添加する可塑剤量としては、ブロッキング防止のため、ポリビニルアルコール100重量部に対して通常20重量部以下であり、15重量部以下が好ましい。
【0016】
また、本発明の目的を阻害しない範囲で、水圧転写用フィルムに印刷層を形成する際に必要な機械的強度、取扱中の耐湿性、水面に浮かべてからの吸水による柔軟化性、水面での延展性および拡散性等を調節することを目的として、澱粉や前記ポリビニルアルコール以外の水溶性高分子などの添加剤を加えることもできる。
【0017】
添加できる澱粉としては、特に制限はなく、例えばコーンスターチ、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、コムギ澱粉、コメ澱粉、タピオカ澱粉、サゴ澱粉等の天然澱粉類;エーテル化加工、エステル化加工、酸化加工などがされた加工澱粉類などを挙げることができ、これらの中で加工澱粉類が好ましく用いられる。添加する澱粉の量としては、ポリビニルアルコール100重量部に対して通常15重量部以下、好ましくは10重量部以下である。
【0018】
上記水溶性高分子としては、例えばデキストリン、ゼラチン、にかわ、カゼイン、シェラック、アラビアゴム、ポリアクリル酸アミド、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルメチルエーテル、ビニルメチルエーテルと無水マレイン酸の共重合体、酢酸ビニルとイタコン酸の共重合体、ポリビニルピロリドン、セルロース、アセチルセルロース、アセチルブチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸ソーダなどが挙げられる。添加する水溶性高分子の量は、ポリビニルアルコール100重量部に対して通常15重量部以下、好ましくは10重量部以下である。
【0019】
また、本発明の水圧転写用フィルムには、水面に浮かべてからの吸水による柔軟化の速度、水面での延展性、水中での拡散に要する時間を調節する目的で、無機塩類や界面活性剤などの添加剤を添加することができる。
上記無機塩類としては、ホウ酸、硼砂などが挙げられるが、その添加量はポリビニルアルコール100重量部に対して通常5重量部以下、好ましくは1重量部以下である。
また上記界面活性剤としては、特に制限なく使用することができるが、フィルムの水面での延展性および印刷面の寸法安定性の観点からノニオン性界面活性剤が好適である。界面活性剤の添加量は、印刷層のフィルムへの密着性などの点から、ポリビニルアルコール100重量部に対して通常5重量部以下であり、好ましくは1重量部以下である。
【0020】
さらに、本発明の水圧転写用フィルムには、本発明の目的を達成する上で支障を与えない範囲内において、上記の可塑剤や添加剤の他に熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、フィラー等を添加することもできる。これらの添加量は、耐衝撃性などの点で、ポリビニルアルコール100重量部に対して通常10重量部以下、好ましくは5重量部以下である。
【0021】
本発明の水圧転写用フィルム、あるいはそれを製造する際に用いるポリビニルアルコールからなるフィルムなどは、従来知られている流延法、押出法、溶融法、インフレーション法等により製膜される。これらのフィルムは無延伸でもよいし、用途に合わせて機械特性を改善する目的で、1軸延伸または2軸延伸などの延伸処理を施すことも可能である。
【0022】
また、印刷層を水圧転写用フィルムに印刷する工程での印刷適性を向上させる目的で、特にフィルム表面のスリップ防止性を向上する目的で水圧転写用フィルムの表面をマット状あるいはエンボス状にすることが好ましい。フィルム表面をマット状などに処理する方法としては特に限定されず、例えば製膜時にロールあるいはベルトのマット面やエンボス面をフィルムに転写させるオンラインマット処理法、平滑面を有するフィルムを一旦ロールに巻き取った後にマット処理やエンボス処理を施す方法などが挙げられる。マット状表面の表面粗さとしては、ブロッキング防止性の点からRaで通常0.5μm以上、好ましくは1μm以上であり、印刷層の形成の点からは1〜5μmの範囲が好適であり、またエンボス状表面の表面粗さとしては通常1μm以上、好ましくは3μm以上であり、印刷層の形成の点からは3〜20μmの範囲が好適である。
【0023】
本発明の水圧転写用フィルムの長さ及び幅には特に制限はなく、1〜3000m程度の長さで、0.5〜4m程度の幅のものが通常用いられる。
【0024】
本発明の水圧転写用フィルムに印刷層を設けた水圧転写シートは、従来公知の水圧転写の用途に用いることができ、その際従来公知の方法を使用することができる。従来採用されている水圧転写方法としては、例えば水圧転写シートにおける印刷層を活性化させると共に該水圧転写シートを水面に浮かべる第1工程と、水面に浮いている水圧転写シートの上方から所定の成形体からなる被転写体を被転写面が下方になるようにして降下させる第2工程と、水圧転写シートにおける印刷層が被転写体の表面に充分に固着した後に該水圧転写シートにおける基材フィルムを除去する第3工程と、印刷層を転写させた被転写体を充分に乾燥させて目的製品を得る第4工程などからなり、これらの工程を経て目的とする製品が製造される。
【0025】
本発明の水圧転写用フィルムに印刷層を設けた水圧転写シートは、木板、合板、パーティクルボード等の木質基材;各種プラスチック成形品類;パルプセメント板、スレート板、石綿セメント板、GRC(ガラス繊維補強セメント)成形品、コンクリート板などの繊維セメント製品;石膏ボード、珪酸カルシウム板、珪酸マグネシウム板などの無機質板状物;鉄、銅、アルミニウム等からなる金属板またはこれらの合金板等の製品;およびこれらの複合物などに使用できる。これらの製品等の表面の形状は平坦であっても、粗面であっても、凹凸形状を有していても良いが、主として凹凸のある立体面や曲面を有する成形体の表面に印刷層を形成するのに水圧転写シートは好適に用いられる。
【0026】
水圧転写用フィルム上に印刷層を設ける方法としては、通常公知の印刷インクおよび印刷方式によって形成することができ、グラビア印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、ロールコート等が採用される。また印刷層は水圧転写用フィルムに直接に印刷しても構わないし、他のフィルムに一旦形成した後で水圧転写用フィルムに再度転写しても構わないが、印刷インクの組成や乾燥工程の問題、多色印刷の際の色ずれの問題などの点から、他のフィルムに一旦印刷層を形成した後で水圧転写用フィルムに再転写する方法が好ましく採用される。
【0027】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定を受けるものではない。なお、溶解度パラメータおよび表面粗さは次の方法により求めた。
(溶解度パラメータ(SP値)の算出方法)
溶解度パラメータの値は、樹脂の構造(原子基)を基に、次の式(1)から求めた。
SP値(δ)=ΣΔF/ΣΔν ・・・(1)
(式中、ΔFおよびΔνの数値は、接着ハンドブック(日刊工業新聞社発行、日本接着学会編、第3版)の第332頁、表4.3に記載された数値を用いる。)
【0028】
(表面粗さ)
表面粗さは、触針式表面粗さ測定器を用いて、JIS−B0601およびJIS−B0651に記載の方法に準拠して測定した。
【0029】
参考例1
基材フィルムとして、ケン化度88モル%、重合度1750のポリビニルアルコールを15重量%含有する水溶液を90℃の金属ロール上に流延して、120℃の温風を吹き付けて乾燥し、40μmのフィルムを得た。そして、コート溶液として、平均粒子径0.8μmのスチレン−メタクリル酸メチル共重合体(50/50重量%、溶解度パラメータ9.3)を分散質とする樹脂エマルジョンを固形分で1重量%含有し、且つバインダーとしてケン化度88モル%、重合度1750のポリビニルアルコールを1重量%含有する固形分濃度2%の水溶液を作成した。基材フィルム上にコート溶液をダイレクト・グラビアロールコーターを用いて速度75m/minで塗布し150℃乾燥機で乾燥を行い、41μmの水圧転写用フィルムを得た。
【0030】
得られた水圧転写用フィルムに、ニトロセルロース100重量部とアルキッド樹脂25重量部との混合樹脂からなるビヒクル使用の印刷インクを用いて、木目柄をグラビア印刷で印刷した。印刷抜けは認められなかった。
印刷したフィルムをロール状に巻き取り、20℃、65%RHの雰囲気下で1週間保管したが、印刷層の剥離は認められなかった。
【0031】
上記印刷層面に、接着活性剤(ブチルセロソルブアセテート26重量部、ブチルカルビトールアセテート26重量部、ブチルメタクリレート重合体8重量部、ジブチルフタレート20重量部および硫酸バリウム20重量部の混合物)をスプレー塗工法で13g/m2塗布した。そして、水温30℃の水面に、前記活性剤を塗布してある転写用の印刷面が上面になるようにして浮かべ、1分後にABS樹脂製の平板成形体を上方から押し入れ、該成形体の表面に転写用シートを延展密着させた。
次いで、表面に水圧転写シートが延展、密着しているABS樹脂成形体を水中から引き出し、40℃の温水で30分間シャワーした後、さらに蒸留水でシャワーし、水圧転写シートにおける水圧転写用フィルム基材を除去し、続いて乾燥工程を経ることによって、水圧転写による転写層を有するABS樹脂成形体を得た。
水圧転写用フィルム基材の除去性は良好で、印刷層の成形体への転写性も良好であり印刷抜けは認められなかった。
【0032】
参考例2
ベースフィルムとして、ケン化度88%、重合度1750のポリビニルアルコール100重量部、グリセリン5重量部、エーテル化澱粉5重量部およびホウ酸0.5重量部を含有するポリビニルアルコール濃度15重量%水溶液を90℃でマット面を有する金属上に流延製膜して40μmのフィルムを作成した。そして、コート溶液として、分散安定剤としてポリビニルアルコール(ケン化度88モル%、重合度1750)を用いた平均粒子径1μmのスチレン−メタクリル酸メチル共重合体(50/50重量%、溶解パラメータ9.1)を分散質とする樹脂エマルジョンを固形分で1重量%含有し、且つバインダーとしてケン化度88モル%、重合度1750のポリビニルアルコールを1重量%含有する固形分濃度2%のコート水溶液を作成した。ベースフィルムの上に、コート溶液をダイレクト・グラビアロールコーターを用いて速度75m/minで塗布し150℃乾燥機で乾燥を行い、それを繰り返し両面にコートした。その際のフィルムの厚みは42μmであった。さらにエンボスロール温度120℃、線圧35kg/cmでエンボス加工を行い、表面粗さ5μmの水圧転写用フィルムを得た。
【0033】
得られた水圧転写用フィルムに、ニトロセルロース100重量部とアルキッド樹脂25重量部との混合樹脂からなるビヒクル使用の印刷インクを用いて、木目柄をグラビア印刷で印刷した。印刷抜けは認められなかった。
印刷したフィルムをロール状に巻き取り、20℃、65%RHの雰囲気下で1週間保管したが、印刷層の剥離は認められなかった。
【0034】
その印刷面に、接着活性剤(ブチルセロソルブアセテート26重量部、ブチルカルビトールアセテート26重量部、ブチルメタクリレート重合体8重量部、ジブチルフタレート20重量部および硫酸バリウム20重量部の混合物)をスプレー塗工法で13g/m2塗布した。そして、水温30℃の水面に、前記活性剤を塗布してある転写用の印刷面が上面になるようにして浮かべ、1分後にABS樹脂製の平板成形体を上方から押し入れ、該成形体の表面に転写用シートを延展密着させた。
次いで、表面に水圧転写シートが延展、密着しているABS樹脂成形体を水中から引き出し、40℃の温水で30分間シャワーした後、さらに蒸留水でシャワーし、水圧転写シートにおける水圧転写用フィルム基材を除去し、続いて乾燥工程を経ることによって、水圧転写による転写層を有するABS樹脂成形体を得た。
水圧転写用フィルム基材の除去性は良好で、印刷層の成形体への転写性も良好であり印刷抜けは認められなかった。
【0035】
実施例1
基材フィルムとして、ケン化度88モル%、重合度1750のポリビニルアルコール100重量部と、平均粒子径1μmのポリメタクリル酸メチル(溶解度パラメータ9.0)微粒子を含む樹脂エマルジョン20重量部(固形分)を含有するポリビニルアルコール濃度15重量%水溶液を90℃の金属ロール上に流延して、120℃の温風を吹き付けて乾燥し、40μmのフィルムを得た。
参考例1と同様に基材フィルムに印刷層を形成した。印刷層を形成したフィルムをロール状に巻き取り、20℃、65%RHの雰囲気下で1週間保管したが、印刷層の剥離は認められなかった。
また、参考例1と同様に成形体への水圧転写性を調べたところ、印刷模様の多少の乱れはあったが良好に転写可能であり印刷抜けは認められなかった。
【0036】
実施例2
ベースフィルムとして、ケン化度88%、重合度1750のポリビニルアルコール100重量部、分散安定剤としてポリビニルアルコール(ケン化度88モル%、重合度1750)を用いた平均粒子径2μmのメタクリル酸メチル系樹脂(溶解パラメータ9.3)微粒子を含む樹脂エマルジョン20重量部(固形分)、グリセリン5重量部、エーテル化澱粉5重量部およびホウ酸0.5重量部を含有するポリビニルアルコール濃度15重量%水溶液を、90℃でマット面を有する金属上に流延製膜して40μmの水圧転写用フィルムを作成した。
【0037】
参考例2と同様に水圧転写用フィルムのマット面側に印刷層を形成した。印刷層を形成したフィルムをロール状に巻き取り、20℃、65%RHの雰囲気下で1週間保管したが、印刷層の剥離は認められなかった。
また、参考例2と同様に成形体への水圧転写性を調べたところ、良好に転写可能であり、印刷抜けは認められなかった。
【0038】
比較例1
参考例2で作成したベースフィルムを、樹脂エマルジョンをコートすることなくそのまま単独で使用した。参考例2と同様に印刷層のグラビア印刷を行なった後、印刷層を形成したフィルムをロール状に巻き取り、20℃、65%RHの雰囲気下で1週間保管したところ、印刷層の剥離が部分的に認められた。その後、参考例2と同様に印刷層を水圧転写した際にも成形体表面に印刷抜けが認められた。
【0039】
実施例2のアクリル樹脂エマルジョンの代わりに、溶解パラメータが15.7であるセルロース分散体を添加して、実施例2と同様にして水圧転写用フィルムを作成した。参考例2と同様に印刷層のグラビア印刷を行った後、印刷層を形成したフィルムをロール状に巻き取り、20℃、65%RHの雰囲気下で1週間保管したところ、印刷層の剥離が部分的に認められた。その後、参考例2と同様に印刷層を水圧転写した際にも成形体表面に印刷抜けが認められた。
【0040】
比較例3
実施例2のアクリル樹脂エマルジョンの代わりに、溶解度パラメータが6.2のポリテトラフルオロエチレンの分散体を添加する以外は実施例2と同様に評価を行った。基材フィルムにグラビア印刷を行った際に印刷抜けが認められ、また20℃、65%RHの雰囲気下で1週間保管後にも剥離が認められた。さらに、印刷層を水圧転写した成形体にも印刷抜けが認められた。
【0041】
【発明の効果】
本発明の水圧転写用フィルムは、適度の強度と柔軟性を有し、絵柄層との親和性も高いので、表面に凹凸を有する立体面や曲面を有する成形体の表面に印刷層を形成する際、作業時にフィルムがたるむことがなく、印刷ずれや印刷抜けのない意匠性の高い絵柄を転写することができる。また、カールもしにくいので、転写工程における転写シートの通過性もよく、転写性にも優れている。
Claims (4)
- 水圧転写用フィルム上に印刷層が形成された水圧転写シートを、印刷層を上にして水溶液の液面上に浮かべてから、成形体を液面に向けて押しつけることにより印刷層を成形体に転写する水圧転写方法であって、この水圧転写方法に用いられる水圧転写用フィルムが、ケン化度80〜90モル%、重合度500〜3000のポリビニルアルコールからなるフィルムに、溶解度パラメータが9.0〜9.3のメタクリル酸メチル系樹脂からなる微粒子が分散されている水圧転写用フィルムである水圧転写方法。
- 水圧転写シートに形成された印刷層に活性剤を塗布するとともに該水圧転写シートを水溶液の液面上に浮かべる請求項1に記載の水圧転写方法。
- 微粒子の平均粒子径が0.05〜10μmである請求項1または2に記載の水圧転写方法。
- 水圧転写用フィルムの表面がマット状またはエンボス状である請求項1〜3のいずれか1項に記載の水圧転写方法。
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