JP4301826B2 - 移植機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、乗用田植機などの移植機の技術分野に属するものである。
【0002】
【従来の技術】
移植作業部の底部に上下揺動自在なフロートを設けるとともに、該フロートの上下揺動姿勢が基準姿勢となるように移植作業部を自動的に昇降制御する移植機が知られている(例えば、特許文献1、2参照。)。この種の移植機によれば、移植作業部の対地高さが一定に保たれるため、苗を所定の植付深さで植え付けることが可能になる。
【0003】
ところで、上記のような移植機では、走行機体の前後傾斜、圃場の硬軟、エンジンの回転数、走行機体の車速などに応じて、前記昇降制御の精度や感度が変動するという問題がある。
このような問題に対処するために、上記特許文献1では、走行機体の前後傾斜角及び手動調節具の調節値に応じて、前記昇降制御の基準値を自動的に補正することが提案されている。
また、特許文献2では、エンジンの回転数に応じて、フロートの基準姿勢を自動的に調節すると共に、走行機体の車速に応じて、フロートの感知荷重を自動的に調節することが提案されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平8−331939号公報(第4−5頁、第5図)
【特許文献2】
特開2002−186316号公報(第5頁、第2図)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に示されるものでは、エンジン回転数や車速に応じた基準値の補正が行われないため、エンジン回転数や車速の変化により、前記昇降制御の精度や感度が変動するという問題がある。
また、特許文献2に示されるものでは、走行機体の前後傾斜角に応じた補正が行われないため、走行機体の前後傾斜角変化により、前記昇降制御の精度や感度が変動するという問題がある。
そこで、特許文献1のものが有する補正機能を、特許文献2のものに追加することが提案されるが、特許文献2のものでは、フロートと昇降制御バルブを機械的に連繋させているため、昇降制御の基準値補正機能を単純に追加することはできず、また、このような機能を機械的に追加した場合には、機構が複雑になるという問題がある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、走行機体の後部に昇降自在に連結される移植作業部と、該移植作業部を昇降動作させる油圧シリンダと、エンジン動力で駆動され、前記油圧シリンダに作動油を圧送する油圧ポンプと、前記移植作業部の底部に上下揺動自在に設けられるフロートと、該フロートの上下揺動姿勢が基準姿勢となるように前記移植作業部を自動的に昇降制御する昇降制御手段とを備える移植機であって、該移植機に、前記フロートの基準姿勢を調節するアクチュエータを設けると共に、該アクチュエータの油圧感知目標値を、前記走行機体の前後傾斜角、エンジンの回転数及び手動調節具の調節値に基づいて算出するにあたり、昇降制御手段は、選択設定される油圧感知目標値設定ルーチンにおいて、移植作業部が上昇状態である場合に感度が鈍い油圧感知規制用の目標値計算を行い、移植作業部を下降させた場合に、前記移植作業部を上昇したときセットされた感知規制タイマ時間のあいだ前記計算された感度が鈍い油圧感知規制用の目標値を目標値としてセットし、感知規制タイマ時間に達した場合には、目標値計算ルーチンでそれぞれ計算されたエンジン回転数に基づく目標値と走行機体が前上がりのときのみ機体前後傾斜角に基づく目標値とが読み込まれる油圧感知目標値計算ルーチンで前記油圧感知目標値を算出し、該算出された油圧感知目標値を目標値にセットして基準姿勢調節アクチュエータの駆動をするように設定されていることを特徴とする移植機である。
つまり、フロートの基準姿勢を、走行機体の前後傾斜角、エンジンの回転数及び手動調節具の調節値に基づいて調節することにより、昇降制御における精度や感度の変動を抑制して、植付精度を向上させることができる。しかも、3つの補正機能を1つのアクチュエータで実現するため、構造の複雑化も回避することができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態の一つを図面に基づいて説明する。図面において、1は乗用田植機の走行機体であって、該走行機体1の前部には、図示しないエンジンが搭載され、その発生動力が、油圧式無段変速装置(HST)2及び油圧ポンプ3に入力される。油圧式無段変速装置2によって無段変速された動力は、トランスミッション4に入力され、ここで走行系と作業系に分配される。
【0008】
走行機体1の後部には、昇降リンク機構5を介して、移植作業部6が連結されている。走行機体1と昇降リンク機構5との間には、昇降用油圧シリンダ7が介設されており、その油圧伸縮動作に応じて移植作業部6が昇降される。また、前記油圧ポンプ3から昇降用油圧シリンダ7に至る油圧経路には、昇降用油圧バルブ8が介設されており、その切換操作に応じて昇降用油圧シリンダ7が伸縮動作される。
【0009】
昇降用油圧バルブ8は、移植作業部昇降操作具及び植付クラッチ操作具に兼用されるリフトレバー(油圧・植付レバー)9に連繋されており、その操作に応じて切換動作される。昇降用油圧バルブ8の下降領域には、自動昇降制御領域があり、この領域ではアーム10の回動角に応じて、移植作業部6が昇降動作される。
【0010】
移植作業部6は、昇降リンク機構5に対して左右傾斜自在に連結される作業部フレーム11、該作業部フレーム11から後方に延出する複数の植付伝動ケース12、該植付伝動ケース12の後端部に設けられる植付機構13、植付伝動ケース12の上方に設けられる苗載台14、植付伝動ケース12の下方に設けられる複数のフロート15などを備える。
【0011】
植付伝動ケース12の下部には、後下方に延出するフロート支持アーム16が設けられ、その先端部でフロート15が上下揺動自在に支持されている。フロート支持アーム16には、パイプ軸17を介して植付深さ調節レバー18が連結されており、その前後操作に応じてフロート支持アーム16が上下回動される。これにより、フロート15の揺動支点が上下方向に変位し、植付深さが調節される。
【0012】
フロート15としては、中央のセンターフロート15Aと、左右両側のサイドフロート15Bとがある。センターフロート15Aは、その前端位置が移植作業部6の対地高さに応じて上下に変位することを利用し、移植作業部6の対地高さを感知する感知フロートに兼用される。
【0013】
センターフロート15Aの前端部は、連繋機構19を介して前記昇降用油圧バルブ8のアーム10に連繋されている。連繋機構19は、センターフロート15Aの前端部に連繋される感知プレート20と、該感知プレート20に揺動アーム21を介して連繋される後側連繋ロッド22と、該後側連繋ロッド22の前端部に連繋アーム23を介して連繋される前側連繋ロッド24とを備えて構成される。前側連繋ロッド24の前端部は、前記昇降用油圧バルブ8のアーム10に連繋されると共に、感知荷重スプリング25によって前方に引張り付勢されている。
【0014】
上記のように構成された連繋機構19は、センターフロート15Aの前端部が上昇すると、昇降用油圧バルブ8のアーム10を後方へ引くように作用し、それに伴って移植作業部6が上昇側へ動作される。一方、センターフロート15Aの前端部が下降すると、昇降用油圧バルブ8のアーム10を前方へ押すように作用し、それに伴って移植作業部6が下降側へ動作される。これにより、センターフロート15Aが基準姿勢を保つように移植作業部6を自動的に昇降制御する昇降制御手段が構成される。
【0015】
感知荷重スプリング25は、連繋機構19を介して、センターフロート15Aの先端部を下方へ付勢しており、この付勢力がセンターフロート15Aの感知荷重となる。また、感知荷重スプリング25には、前側連繋ロッド24の前端部を前方に引っ張る感知荷重調節スプリング26が並設されている。この感知荷重調節スプリング26には、感知荷重調節ワイヤ27が連繋され、その押し引きで感知荷重調節スプリング26の付勢力を変化させることにより、センターフロート15Aの感知荷重が調節される。
【0016】
走行機体1の運転席前方には、前後操作可能な主変速レバー28が設けられている。主変速レバー28の基端部は、連結ロッド29を介して、油圧式無段変速装置2の変速操作軸に連繋されている。これにより、主変速レバー28の前後操作に応じて、油圧式無段変速装置2の変速操作軸が回動し、走行機体1の車速が無段階状に調節される。
【0017】
さらに、主変速レバー28の基端部には、レバー操作に応動する揺動アーム30が設けられており、ここに前記感知荷重調節ワイヤ27の他端部が連結されている。つまり、主変速レバー28を高速側に操作すると、揺動アーム30によって感知荷重調節ワイヤ27が前方に引っ張られ、感知荷重調節スプリング26の付勢力が増す。これにより、高速走行時は、センターフロート15Aの感知荷重が増加し、土圧や水圧によるセンターフロート15Aの浮き上りを防止することが可能になる。
【0018】
前記連繋機構19を構成する揺動アーム21の一端側は、ピン21aを介して感知プレート20に連結されている。感知プレート20側の連結孔20aは、上下方向を向く長孔であり、この長孔に沿ってピン21aが上下移動自在となる。換言すると、感知プレート20がピン21aに案内されて上下移動自在となっている。ピン21aには、上方側から基準姿勢調節ワイヤ31が連結されており、そのアウタチューブ31aが感知プレート20の上端部に固定されている。また、ピン21aと感知プレート20の下端部との間には、戻しスプリング32が張設されている。
【0019】
上記のような構成によれば、基準姿勢調節ワイヤ31を引き操作すると、ピン21aに対して感知プレート20が下方へ移動する一方、基準姿勢調節ワイヤ31を押し操作すると、ピン21aに対して感知プレート20が上方へ移動することになる。これにより、センターフロート15Aの前端部を上げ下げし、センターフロート15Aの基準姿勢を調節することが可能になる。
【0020】
走行機体1には、基準姿勢調節ワイヤ31を押し引き操作するための基準姿勢調節モータ(アクチュエータ)33が設けられている。基準姿勢調節モータ33の近傍には、扇状のプレートギヤ34が回動自在に設けられており、ここに基準姿勢調節ワイヤ31の他端部が連結されている。プレートギヤ34は、基準姿勢調節モータ33の出力ギヤ33aに噛み合い、基準姿勢調節モータ33の駆動に応じて回動される。これにより、基準姿勢調節ワイヤ31を押し引きし、センターフロート15Aの基準姿勢を調節することが可能になる。
【0021】
前述した昇降制御では、圃場の硬軟、エンジン回転数、走行機体1の前後傾斜など作業条件に応じて精度や感度が変化するという問題がある。特に、走行機体1の前後傾斜変化は、苗や肥料の積載荷重変化、耕盤の凹凸、圃場への出入り、発進時のヘッドアップなどに起因して発生するものであり、その多くはオペレータが予測できず、手動調節による対応が不可能なものである。本発明では、これらの作業条件に応じて、センターフロート15Aの基準姿勢を調節することにより、上記の問題を解決する。
【0022】
つまり、軟らかい圃場では、センターフロート15Aが沈下するため、センターフロート15Aの基準姿勢を前下がり側に調節し、センターフロート15Aの前側が土圧を受けやすくする。これにより、昇降制御が上昇側に作用し、移植作業部6が適正な高さに保たれる。一方、硬い圃場では、センターフロート15Aが浮き気味になるため、センターフロート15Aの基準姿勢を前上り側に調節し、センターフロート15Aの後側が土圧を受けやすくする。これにより、昇降制御が下降側に作用し、移植作業部6が適正な高さに保たれる。本実施形態では、このような調節が、手動調節具(油圧感度調節ダイヤル)を介して行われる。
【0023】
また、エンジン回転数が低い場合は、油圧ポンプ3の吐出圧低下に起因し、昇降制御の動作速度が遅くなるため、センターフロート15Aの基準姿勢を前下がり側に調節し、センターフロート15Aの前側が土圧を受けやすくする。これにより、昇降制御の速度(遅い)と感度(鋭い)がバランスされる。一方、エンジン回転数が高い場合は、油圧ポンプ3の吐出圧上昇に起因し、昇降制御の動作速度が速くなるため、センターフロート15Aの基準姿勢を前上り側に調節し、センターフロート15Aの前側が土圧を受けにくくする。これにより、昇降制御の速度(速い)と感度(鈍い)がバランスされる。本実施形態では、このような調節が、エンジン回転数に応じて自動的に行われる。
【0024】
また、走行機体1が前上がり姿勢になると、背反的にセンターフロート15Aが沈下するため、センターフロート15Aの基準姿勢を前下がり側に調節し、センターフロート15Aの前側が土圧を受けやすくする。これにより、昇降制御が上昇側に作用し、移植作業部6が適正な高さに保たれる。また、走行機体1が前上がり姿勢になると、センターフロート15Aの田面に対する姿勢が変化するが、これもセンターフロート15Aの基準姿勢を前下がり側に調節することで、修正される。本実施形態では、このような調節が、走行機体1の前後傾斜に応じて自動的に行われる。以下、作業条件に応じてセンターフロート15Aの基準姿勢を調節する制御部35について説明する。
【0025】
制御部35は、マイコン(CPU、ROM、RAMなどを含む)を用いて構成されるもので、走行機体1に搭載されている。制御部35の入力側には、リフトレバー9の操作位置(またはレバー操作に応動するカムの位置)を検出するリフトレバーセンサ36、移植作業部6の高さを検出するリフト角センサ37、エンジン回転数を検出するエンジン回転センサ38、走行機体1の前後傾斜角を検出するピッチングセンサ39、プレートギヤ34の回動位置を検出するワイヤセンサ40、移植作業部6の左右傾斜角を検出する傾斜センサ41、移植作業部6の左右傾斜における角速度を検出する角速度センサ42、走行機体1に対する移植作業部6の左右傾斜角を検出する水平ポジションセンサ43、センターフロート15Aの基準姿勢を手動調節する油圧感度調節ダイヤル(手動調節具)44などが接続される一方、制御部35の出力側には、前述した基準姿勢調節モータ33のほか、移植作業部6の左右傾斜姿勢を調節する水平制御モータ45などが接続されている。
【0026】
また、制御部35のROMには、センターフロート15Aの基準姿勢を制御する油圧感知制御、移植作業部6を水平に保つ水平制御、上昇した移植作業部6を走行機体1に対して平行な姿勢に復帰させる平行復帰制御などの制御プログラムが書き込まれている。以下、上記各制御の処理内容をフローチャートに沿って説明する。但し、水平制御及び平行復帰制御は、本発明に直接関係しないため、フローチャートのみを示し、詳細な説明は省略する。
【0027】
まず、本発明に係る油圧感知制御の概念(概略)を図7に沿って説明する。尚、図7に示す油圧感知制御は、2つの仕様(第1仕様、第2仕様)に兼用されるものであり、実装時には、何れかの仕様が選択されるものとする。図7に示すように、油圧感知制御は、仕様の判断を行った後、各仕様における制御実行条件を判断する。第1仕様の場合は、リフトレバー9の操作位置が下げ位置または植付位置であり、かつ、移植作業部6が下降停止状態のとき、油圧感知目標値を算出セットして基準姿勢の駆動制御を実行し、その他のときは、油圧感知規制用の目標位置を算出セットし、センターフロート15Aを油圧感知規制姿勢の駆動制御とする。第2仕様の場合は、移植作業部6の高さが規制高さよりも低く、かつ、移植作業部6が下降停止状態のとき、油圧感知目標値を算出セットして基準姿勢の駆動制御を実行する。その他のときは、第1仕様と同様に、油圧感知規制用の目標位置をセットし、センターフロート15Aを油圧感知規制姿勢の駆動制御とする。
【0028】
制御実行条件を満たす場合は、いずれの仕様においても、図7に示すように、3つの目標値A、B、Cを算出する。目標値Aは、エンジン回転数に基づいて算出されるものであり、例えば、エンジン回転数が高くなるほど、センターフロート15Aの基準姿勢を前上がりにするような値が算出される。目標値Bは、走行機体1の前後傾斜に基づいて算出されるものであり、例えば、走行機体1が前上がりになるほど、センターフロート15Aの基準姿勢を前下がりにするような値が算出される。目標値Cは、油圧感度調節ダイヤル44の調節値に基づいて算出されるものであり、例えば、油圧感度調節ダイヤル44が軟らかい側(感度鋭い)に調節されるほど、センターフロート15Aの基準姿勢を前下がりにし、油圧感度調節ダイヤル44が硬い側(感度鈍い)に調節されるほど、センターフロート15Aの基準姿勢を前上がりにするような値が算出される。そして、目標値A、B、Cを算出した後は、これらの目標値A、B、Cに基づいて油圧感知目標値(ワイヤセンサ40の目標値)を算出すると共に、この値を目標としてセットして基準姿勢調節モータ33を駆動し、センターフロート15Aの基準姿勢を調節する。
【0029】
上記のような制御によれば、センターフロート15Aの基準姿勢を調節する基準姿勢調節モータ33の目標調節位置が、走行機体1の前後傾斜角、エンジン回転数及び油圧感度調節ダイヤル44の調節値に基づいて算出されるため、昇降制御における精度や感度の変動を抑制して、植付精度を向上させることができ、しかも、3つの補正機能を1つのアクチュエータで実現することにより、構造の複雑化も回避することができる。
【0030】
つぎに、油圧感知制御の具体的な処理内容を図8〜図12に沿って説明する。本実施形態の油圧感知制御は、目標値A計算ルーチン、目標値B計算ルーチン及び後述するように前記目標値Cの算出が加味された油圧感知目標値計算ルーチンを用いて油圧感知目標値を設定する油圧感知目標値設定ルーチンと、該油圧感知目標値設定ルーチンが設定した油圧感知目標値に基づいて基準姿勢調節モータ33に駆動信号を出力する油圧感知制御ルーチンとにより実行される。
【0031】
図8に示すように、油圧感知目標値設定ルーチンは、エンジン回転センサ値及びピッチングセンサ値を入力し、これらの平均化処理を行う。その後、リフトレバーセンサ値に基づいて移植作業部6の状態を判断し、移植作業部6が上昇状態である場合は、感知規制タイマをセットすると共に、油圧感知規制用の目標値計算を行う。また、移植作業部6が下降又は植付状態であっても、感知規制タイマが0以外である場合は、油圧感知規制用の目標値計算を行い、図7に示すように該計算された油圧感知規制用目標値を目標値としてセットし、該セットされた目標値に基づいて基準姿勢調節モータ33を駆動する。つまり、移植作業部6を下降させても、接地直後はフロート姿勢が不安定であるため、センターフロート15Aを感度が鈍い姿勢(油圧感度規制用目標位置)とし、移植作業部6の下降操作(又は接地)から所定時間経過した後に、センターフロート15Aの基準姿勢調節を開始する。これにより、接地時のハンチングを防止することが可能になる。
【0032】
移植作業部6が下降又は植付状態であり、かつ、感知規制タイマが0の場合は、目標値A計算ルーチン、目標値B計算ルーチン及び油圧感知目標値計算ルーチンを用いて油圧感知目標値を計算する。その際、ピッチングセンサ値を参照し、図8に示すように、走行機体1の前後傾斜が前下がりであると判断した場合は、目標値B計算ルーチンの実行がスキップされる。つまり、植付走行中の走行機体1は、ヘッドアップ気味となるため、走行機体1の前後傾斜領域のうち、昇降制御に対する影響が大きい前上がり傾斜領域のみ目標値Bの計算を行い、制御部35の処理負担を軽減している。
【0033】
図9に示すように、目標値A計算ルーチンは、エンジン回転センサ値と既定値とを比較し、エンジン回転センサ値が既定値以下のときは、エンジン回転センサ値に比例する目標値Aを計算する一方、エンジン回転センサ値が既定値を越えている場合は、固定値である既定の目標値を目標値Aとする。これにより、予期しないエンジン回転センサ値の急激な変化に応じて、センターフロート15Aの基準姿勢が大きく変更されてしまう不都合を回避できる。
【0034】
また、図10に示すように、目標値B計算ルーチンでも、ピッチングセンサ値(絶対値)と既定値とを比較し、ピッチングセンサ値が既定値以下のときは、ピッチングセンサ値に比例する目標値Bを計算する一方、ピッチングセンサ値が既定値を越えている場合は、固定値である既定の目標値を目標値とする。これにより、急停車などに伴うピッチングセンサ値の急激な変化に応じて、センターフロート15Aの基準姿勢が大きく変更されてしまう不都合を回避できる。
【0035】
油圧感知目標値計算ルーチンは、前述したように油圧感度調節ダイヤル値に基づく目標値Cの算出を加味して油圧感知目標値を算出するものであるが、このものでは、図11に示すように、目標値A及び目標値Bを読み込み、暫定的な目標値を計算する。その後、油圧感度調節ダイヤル値を参照し、これが標準調節値である場合は、暫定目標値をそのまま油圧感度目標値にセットする。一方、油圧感度調節ダイヤル値が標準調節値以外である場合は、目標値A、目標値B及び油圧感度調節ダイヤル値に基づいて暫定目標値を再計算する。その後、暫定目標値と既定値とを比較し、暫定目標値が既定値以下のときは、暫定目標値を油圧感度目標値にセットする一方、暫定目標値が既定値を越えている場合は、固定値である既定の目標値を油圧感度目標値にセットする。
【0036】
図12に示すように、油圧感度制御ルーチンは、各センサ値を入力した後、制御フラグを参照し、これが比較処理状態であるときは、油圧感知目標値とワイヤセンサ値との偏差を計算する。この偏差が不感帯から外れている場合は、偏差の絶対値に所定の係数を掛けた値を出力ON時間にセットし、偏差が不感帯に含まれるときは、出力停止処理を実行し、基準姿勢調節モータ33の駆動を停止させる。上記出力ON時間(デューティ)は、基準姿勢調節モータ33の駆動速度を決定するものである。したがって、センターフロート15Aの基準姿勢調節動作は、上記偏差が大きいほど速くなり、偏差が小さくなるほど遅くなる。これにより、応答性に優れた基準姿勢調節を行うことが可能になる。尚、基準姿勢調節モータ33に対する出力は、制御フラグが出力処理状態となり、かつ、水平制御が停止状態のときに実行される。
【0037】
叙述の如く構成されたものにおいて、走行機体1の後部に昇降自在に連結される移植作業部6と、該移植作業部6を昇降動作させる昇降用油圧シリンダ7と、エンジン動力で駆動され、昇降用油圧シリンダ7に作動油を圧送する油圧ポンプ3と、移植作業部6の底部に上下揺動自在に設けられるセンターフロート15Aと、該センターフロート15Aの上下揺動姿勢が基準姿勢となるように移植作業部6を自動的に昇降制御する昇降制御手段とを備える乗用田植機であって、該乗用田植機の走行機体1に、センターフロート15Aの基準姿勢を調節する基準姿勢調節モータ33を設けると共に、該基準姿勢調節モータ33の目標調節位置を、走行機体1の前後傾斜角、エンジン回転数及び油圧感度調節ダイヤル値に基づいて算出するようにしたため、走行機体1の前後傾斜角、エンジン回転数、圃場の硬軟などに起因し、昇降制御の精度や感度が変動することを抑制し、その結果、昇降制御の精度や安定性を高めて植付精度を向上させることができる。しかも、3つの補正機能を1つのアクチュエータで実現するため、構造の複雑化も回避することができる。
【0038】
ところで、植付走行中の走行機体1は、通常、ヘッドアップ気味となるため、走行機体1の前後傾斜領域のうち、前下がり傾斜領域は、昇降制御に対する影響が小さい。本実施形態では、この点に着目し、走行機体1の前後傾斜が前下がりのとき、走行機体1の前後傾斜に基づく計算処理をスキップする。つまり、昇降制御に対する影響が大きい前上がり傾斜領域のみ、走行機体1の前後傾斜に基づく計算処理を実行することにより、制御部35の処理負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】乗用田植機の側面図である。
【図2】同上平面図である。
【図3】昇降制御手段及びフロート基準姿勢調節手段を示す側面図である。
【図4】図3の走行機体側を拡大した側面図である。
【図5】図3の移植作業部側を拡大した側面図である。
【図6】制御部の入出力を示すブロック図である。
【図7】油圧感知制御の概念を示すフローチャートである。
【図8】油圧感度目標値設定ルーチンを示すフローチャートであう。
【図9】目標値A計算ルーチンを示すフローチャートである。
【図10】目標値B計算ルーチンを示すフローチャートである。
【図11】油圧感度目標値計算ルーチンを示すフローチャートである。
【図12】油圧感度制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図13】水平制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図14】平行復帰制御ルーチンを示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 走行機体
3 油圧ポンプ
6 移植作業部
7 昇降用油圧シリンダ
8 昇降用油圧バルブ
15A センターフロート
19 連繋機構
25 感知荷重スプリング
26 感知荷重調節スプリング
27 感知荷重調節ワイヤ
28 主変速レバー
31 基準姿勢調節ワイヤ
33 基準姿勢調節モータ
35 制御部
38 エンジン回転センサ
39 ピッチングセンサ
40 ワイヤセンサ
44 油圧感度調節ダイヤル

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  1. 走行機体の後部に昇降自在に連結される移植作業部と、該移植作業部を昇降動作させる油圧シリンダと、エンジン動力で駆動され、前記油圧シリンダに作動油を圧送する油圧ポンプと、前記移植作業部の底部に上下揺動自在に設けられるフロートと、該フロートの上下揺動姿勢が基準姿勢となるように前記移植作業部を自動的に昇降制御する昇降制御手段とを備える移植機であって、該移植機に、前記フロートの基準姿勢を調節するアクチュエータを設けると共に、該アクチュエータの油圧感知目標値を、前記走行機体の前後傾斜角、エンジンの回転数及び手動調節具の調節値に基づいて算出するにあたり、昇降制御手段は、選択設定される油圧感知目標値設定ルーチンにおいて、移植作業部が上昇状態である場合に感度が鈍い油圧感知規制用の目標値計算を行い、移植作業部を下降させた場合に、前記移植作業部を上昇したときセットされた感知規制タイマ時間のあいだ前記計算された感度が鈍い油圧感知規制用の目標値を目標値としてセットし、感知規制タイマ時間に達した場合には、目標値計算ルーチンでそれぞれ計算されたエンジン回転数に基づく目標値と走行機体が前上がりのときのみ機体前後傾斜角に基づく目標値とが読み込まれる油圧感知目標値計算ルーチンで前記油圧感知目標値を算出し、該算出された油圧感知目標値を目標値にセットして基準姿勢調節アクチュエータの駆動をするように設定されていることを特徴とする移植機。
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