JP4300456B2 - ボールシート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、ボールジョイントにおいてボールスタッドの球頭部を摺動可能に保持するボールシートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば自動車のステアリング装置などのボールジョイントにおいて、ボールスタッドの球頭部を摺動可能に保持するために、樹脂製のボールシートが用いられる(例えば特許文献1、2参照)。
またボールシートを形成する基材樹脂としては、耐摩耗性や耐熱性などを考慮してポリアセタール(POM)が広く用いられている。
【0003】
【特許文献1】
特開平5−231421号公報(請求項1、第0010欄)
【特許文献2】
特開平11−108046号公報(請求項1、請求項4、第0008欄)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし近時、下記の観点から、さらに耐性にすぐれたボールシートの開発が求められている。
(1) 自動車を停止した状態でハンドルを切るいわゆる据え切りなどの、部品に負荷を及ぼすような強い操作(強操)によってグリース切れが生じ、ボールシートが無潤滑、高面圧の状態となっても、ボールジョイント内に混入した微小粒子によってボールシートが摩耗されるいわゆるアブレッシブ摩耗を生じたり、あるいはボールシートが溶融したりせずに問題なく使用できること。
【0005】
(2) 安全性等を考慮して、ステアリング装置等の部品に課せられる使用可能な環境が厳しくなり、樹脂については110〜120℃程度の連続使用温度が必要とされつつあること(POMの連続使用温度は90℃であって上記の要求に対応できない)。
この発明は、これらの要求を満足する、これまでよりも耐性にすぐれた新規なボールシートを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
この発明のボールシートは、ボールジョイントのハウジングの底部に挿入されて、前記ボールジョイントの、ボールスタッドの球頭部の先端部付近を受ける第1部材と、ハウジングの内周壁を覆って球頭部21の側部付近を受ける第2部材とを含むボールジョイント用のボールシートであって、前記第1部材および第2部材のうち少なくとも一方を、数平均分子量Mnが8000〜10000である直鎖型ポリフェニレンスルフィドと、充てん率が2〜30重量%の酸化亜鉛系ウィスカーと、充てん率が25〜35重量%のフッ素系樹脂粉末とを含む樹脂組成物によって形成したことを特徴とするものである。
この発明によれば、耐摩耗性、耐熱性にすぐれる上、強操時にアブレッシブ摩耗を生じたり溶融したりせず、しかも連続使用温度がこれまでよりも高い、耐性にすぐれたボールシートを得ることができる。
【0007】
またこの発明の他のボールシートは、ボールジョイントのハウジングの底部に挿入されて、前記ボールジョイントの、ボールスタッドの球頭部の先端部付近を受ける第1部材と、ハウジングの内周壁を覆って球頭部21の側部付近を受ける第2部材とを含むボールジョイント用のボールシートであって、前記第1部材および第2部材のうち少なくとも一方を、数平均分子量Mnが8000〜10000である直鎖型ポリフェニレンスルフィドと、充てん率が2〜30重量%の酸化亜鉛系ウィスカーと、充てん率が15〜25重量%のフッ素系樹脂粉末と、充てん率が3〜10重量%のエラストマーとを含む樹脂組成物によって形成したことを特徴とするものである。
この発明によれば、上記と同様に耐摩耗性、耐熱性にすぐれる上、強操時にアブレッシブ摩耗を生じたり溶融したりせず、しかも連続使用温度がこれまでよりも高い、耐性にすぐれたボールシートを得ることができる。
【0008】
しかもボールシートの靭性を向上して、
・ ボールスタッドの球頭部を挿入したボールシートを、アンダーカットに抗しながらボールジョイントのハウジングに圧入したのち、ハウジングをかしめるボールジョイントの組み立て時に割れたり、
・ タイロッドによる引っ張り力が加わった際に座屈したり割れたり、あるいは・ 強操時にアブレッシブ摩耗したり破損したりする
のを、さらに確実に防止することもできる。
【0009】
また、この発明のさらに他のボールシートは、ボールジョイントのハウジングの底部に挿入されて、前記ボールジョイントの、ボールスタッドの球頭部の先端部付近を受ける第1部材と、ハウジングの内周壁を覆って球頭部21の側部付近を受ける第2部材とを含むボールジョイント用のボールシートであって、前記第1部材および第2部材のうち少なくとも一方を、数平均分子量Mnが8000〜11000である直鎖型ポリフェニレンスルフィドと、充てん率が10〜30重量%の酸化亜鉛系ウィスカーと、合計の充てん率が25〜35重量%のフッ素系樹脂粉末および炭素系粉末とを含む樹脂組成物によって形成したことを特徴とするものである。
この発明によれば、上記と同様に耐摩耗性、耐熱性にすぐれる上、強操時にアブレッシブ摩耗を生じたり溶融したりせず、しかも連続使用温度がこれまでよりも高い、耐性にすぐれたボールシートを得ることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
〔ボールシート〕
図1は、この発明のボールシートの、実施の形態の一例をボールジョイントに組み込んだ状態を示す断面図である。図において1はボールシート、2はボールスタッド、21はボールスタッド2の球頭部、3は球頭部21とボールシート1とを収容するハウジングである。
【0011】
また図の例ではボールシート1を、ハウジング3の底部に挿入されて球頭部21の先端部付近を受ける第1部材11と、ハウジング3の内周壁を覆って球頭部21の側部付近を受ける第2部材12とで形成している。
このうち第1部材11は、図2(a)〜(c)に示すようにその全体を浅い椀型に形成したもので、その底部には、球頭部21から押圧力を受けた際に第1部材11の変形を促して衝撃を緩和するための通孔11aを設けるとともに、球頭部21と接するべく、当該球頭部21の外面に沿う湾曲形状に形成した内周面11bには、球頭部21に潤滑剤を供給するための溝11cを設けている。また第1部材11の外側面には、ハウジング3の底部との間に隙間を形成しておき、球頭部21から押圧力を受けた際に第1部材11の変形を促して衝撃を緩和するための凸条11dを設けている。
【0012】
一方、第2部材12は、図3(a)(b)に示すようにその全体を筒型に形成したもので、その内周面のうち球頭部21と接するべく、当該球頭部21の外面に沿う湾曲形状に形成した内周面12aには、やはり球頭部21に潤滑剤を供給するための溝12bを設けている。
図の例では、上記ボールシート1を形成する第1部材11と第2部材12のうちの少なくとも一方、好ましくは第1部材11、より好ましくは第1部材11と第2部材12の両方を、先に述べた、直鎖型ポリフェニレンスルフィド(以下「直鎖型PPS」とする)を基材樹脂として含む、下記の樹脂組成物I〜IIIのいずれかによって形成する。これにより、前述したように耐性にすぐれた新規なボールシートが得られる。
【0013】
〔樹脂組成物I〕
樹脂組成物Iは、前記のように直鎖型PPSと、充てん率が2〜30重量%の酸化亜鉛系ウィスカーと、充てん率が25〜35重量%のフッ素系樹脂粉末とを含むものである。
なお充てん率(重量%)とは、特定成分(フッ素系樹脂粉末、酸化亜鉛系ウィスカーなど)の重量W1(g)の、樹脂組成物全体の重量W2(g)に対する重量百分率で求められる、特定成分の含有割合を表す数値である。
【0014】
充てん率(重量%)=W1/W2×100
基材樹脂である直鎖型PPSとしては、式(1):
【0015】
【化1】
【0016】
で表される繰り返し単位を有し、なおかつ重合時に高分子量化された直鎖型の、射出成形可能な種々のグレードのPPSの中から、前記のように数平均分子量Mnが8000〜10000であるものが選択的に使用される。
かかる直鎖型PPSは、下記の特性を有している。
(a) 射出成形可能で、しかもボールジョイントの組み立て時に割れたり、タイロッドによる引っ張り力が加わった際に座屈したり割れたり、あるいは強操時にアブレッシブ摩耗したり破損したりしにくい靭性を有する。
【0017】
(b) POMの3倍以上の限界PV値を有している。限界PV値とは、強操によって、ボールシートが無潤滑、高面圧の状態で摺動を受けた際に樹脂が溶融しない、面圧×摺動速度の限界値である。ちなみにPOMの限界PV値は0.38〜0.58MPa・m/secであるのに対し、直鎖型PPSの限界PV値は1.83MPa・m/sec以上である。
(c) POMのように吸水して物性の低下が発生しない上、寸法安定性やクリープ特性にもすぐれている。
【0018】
直鎖型PPSの数平均分子量Mnが8000〜10000の範囲に限定されるのは、下記の理由による。
すなわち数平均分子量Mnが10000を超える場合には、樹脂組成物の、加熱時の流動性が低下して射出成形が困難になる。
一方、数平均分子量Mnが8000未満では、ボールシートに高い靭性を付与する効果が得られず、脆くなって、前述したようにボールジョイントの組み立て時に割れたり、タイロッドによる引っ張り力が加わった際に座屈したり割れたり、あるいは強操時にアブレッシブ摩耗したり破損したりしやすくなるという問題を生じる。
【0019】
これに対し、基材樹脂としての直鎖型PPSの数平均分子量Mnが8000〜10000の範囲内であれば、樹脂組成物の良好な成形性を維持しつつ、ボールシートに高い靭性を付与することが可能となる。
酸化亜鉛系ウィスカーは、樹脂のクリープ特性をさらに向上する効果を有するとともに、アブレッシブ摩耗の原因となる微小粒子を逆に摩耗して無力化する、いわゆる相手攻撃性をボールシートに付与する機能を有する。
【0020】
かかる酸化亜鉛系ウィスカーとしては、例えば金属亜鉛を酸素などの酸化性の雰囲気中で加熱酸化するなどして製造される、単純な針状結晶を有するものから複雑な立体形状を有するものまで種々の形状、構造を有するものが何れも使用可能である。
中でも正四面体の中心に位置する微小な核部と、そこから正四面体の各頂点の方向に伸びる4つの針状部とを備えた、いわゆるテトラポッドのような立体形状を有する酸化亜鉛系ウィスカーが好適に使用される。かかる立体形状を有する酸化亜鉛系ウィスカーは、単純な針状のものなどに比べて形状の異方性が小さいため、直鎖型PPS中に分散された際に当該ウィスカーが発揮しうる前述した効果を、異方性のない均一なものとすることができる。立体形状を有する酸化亜鉛系ウィスカーは、嵩比重が0.02〜0.1g/cm3であるのが好ましい。
【0021】
かかる立体形状を有するものなどの、各種の酸化亜鉛系ウィスカーは、その全体を酸化亜鉛によって形成した単一の構造を有していてもよいし、結晶成長の核となる芯の部分を他の物質によって形成し、その表面を、結晶成長させた酸化亜鉛によって覆った複合構造を有していてもよい。また、酸化亜鉛系ウィスカーの表面をカップリング剤などで表面処理しても良い。
酸化亜鉛系ウィスカーの充てん率が2〜30重量%に限定されるのは、下記の理由による。
【0022】
すなわち充てん率が2重量%未満では、酸化亜鉛系ウィスカーを配合したことによる前述した効果が得られず、クリープ特性が低下して、ボールシートが、使用時にクリープ変形したりクリープ破断したりする。また微小粒子に対する相手攻撃性が不十分になる結果、強操時のボールシートがアブレッシブ摩耗する。
一方、充てん率が30重量%を超える場合には、樹脂組成物が硬く、かつ脆いものとなって、却って強操時のボールシートがアブレッシブ摩耗しやすくなる。
【0023】
これに対し、酸化亜鉛系ウィスカーの充てん率が2〜30重量%の範囲内であれば、クリープ特性を向上するとともに、強操時のボールシートがアブレッシブ摩耗するのをより確実に防止することが可能となる。
なおクリープ特性を高いレベルに維持しつつ、強操時のボールシートがアブレッシブ摩耗するのをさらに確実に防止することを考慮すると、酸化亜鉛系ウィスカーの充てん率は、上記の範囲内でも特に5〜15重量%であるのが好ましい。
【0024】
フッ素系樹脂粉末は、摩擦係数を小さくすることで、強操時のボールシートの潤滑性を維持してアブレッシブ摩耗や溶融などを防止する機能を有する。
かかるフッ素系樹脂粉末としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)等の、従来公知の種々のフッ素系樹脂にて形成した粉末があげられる。特に摩擦低減の効果や耐熱性、汎用性等を考慮するとPTFEの粉末が好適に使用される。
【0025】
フッ素系樹脂粉末の充てん率が25〜35重量%に限定されるのは、下記の理由による。
すなわち充てん率が25重量%未満では、フッ素系樹脂粉末を配合したことによる、摩擦係数を低下させる効果が得られず、強操時のボールシートがアブレッシブ摩耗したり溶融したりする。
一方、充てん率が35重量%を超える場合には、ボールシートの機械的強度が低下して強操時に破損してしまう。
【0026】
これに対し、フッ素系樹脂粉末の充てん率が25〜35重量%の範囲内であれば、ボールシートの機械的強度を維持しつつ、摩擦係数を低いレベルに維持できる上、発明者の検討によると、面圧が増加するほど摩擦係数を低くできるため、強操時のボールシートがアブレッシブ摩耗したり溶融したりするのをより確実に防止することが可能となる。
なおボールシートの機械的強度を維持しつつ、摩擦係数をより低くすることを考慮すると、フッ素系樹脂粉末の充てん率は、上記の範囲内でも特に28〜33重量%であるのが好ましい。
【0027】
樹脂組成物Iには、上記各成分に加えて、さらに必要に応じて紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、難燃剤等の種々の添加剤を含有させてもよい。
〔樹脂組成物II〕
樹脂組成物IIは、前記のように直鎖型PPSと、充てん率が2〜30重量%の酸化亜鉛系ウィスカーと、充てん率が15〜25重量%のフッ素系樹脂粉末と、充てん率が3〜10重量%のエラストマーとを含むものである。
【0028】
このうち直鎖型PPS、酸化亜鉛系ウィスカー、およびフッ素系樹脂粉末としては、それぞれ前記樹脂組成物Iで例示したのと同じものを用いることができる。
またエラストマーは、自身の持つ弾性によって樹脂組成物を改質してボールシートの靭性を高め、それによってボールジョイントの組み立て時に割れたり、タイロッドによる引っ張り力が加わった際に座屈したり割れたり、あるいは強操時にアブレッシブ摩耗したり破損したりするのを防止するために機能する。
【0029】
かかるエラストマーとしては、上述した機能を有し、なおかつ直鎖型PPSを基材樹脂とする樹脂組成物に対して良好な相溶性を有する種々のエラストマーを使用することができるが、特にポリオレフィンを主鎖とし、ビニル系ポリマーを側鎖とするグラフトコポリマーが好ましい。
かかるグラフトコポリマーのうち主鎖であるポリオレフィンとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体(EGMA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−エチルアクリレート−無水マレイン酸共重合体(E/EA/MAH)などを挙げることができる。
【0030】
また側鎖であるビニル系ポリマーとしては、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)などを挙げることができる。
上記グラフトコポリマー中でも特に、EGMA系のグラフトコポリマーが好ましい。
樹脂組成物IIにおいて、酸化亜鉛系ウィスカーの充てん率が2〜30重量%に限定されるのは、前記と同じ理由による。
【0031】
またフッ素系樹脂粉末の充てん率が15〜25重量%に限定されるのは、下記の理由による。
すなわち充てん率が15重量%未満では、フッ素系樹脂粉末を配合したことによる、摩擦係数を低下させる効果が得られず、強操時のボールシートがアブレッシブ摩耗したり溶融したりする。
一方、充てん率が25重量%を超える場合には、ボールシートの機械的強度が低下して強操時に破損してしまう。
【0032】
これに対し、フッ素系樹脂粉末の充てん率が15〜25重量%の範囲内であれば、ボールシートの機械的強度を維持しつつ、摩擦係数を低いレベルに維持できる上、前記のように面圧が増加するほど摩擦係数を低くできるため、強操時のボールシートがアブレッシブ摩耗したり溶融したりするのをより確実に防止することが可能となる。
なおフッ素系樹脂粉末の充てん率の範囲が、先の樹脂組成物Iと比べて上下限とも10ポイントずつ少ない方にシフトしているのは、エラストマーが、前記のようにボールシートの靭性を向上して、特に強操時にアブレッシブ摩耗したり破損したりするのを防止する効果の一部を担うためである。
【0033】
また、フッ素系樹脂粉末とエラストマーとを併用したことによって、直鎖型PPSや酸化亜鉛系ウィスカーの充てん率が相対的に少なくなって、当該両成分によってボールシートに付与される、靭性やクリープ特性、機械的強度、相手攻撃性などの特性が低下するのを防止するためでもある。
さらにエラストマーの充てん率が3〜10重量%に限定されるのは、下記の理由による。
【0034】
すなわち充てん率が3重量%未満では、エラストマーを配合したことによる、上述した、ボールシートの靭性を向上して、ボールジョイントの組み立て時に割れたり、タイロッドによる引っ張り力が加わった際に座屈したり割れたり、あるいは強操時にアブレッシブ摩耗したり破損したりするのを防止する効果が得られない。
一方、充てん率が10重量%を超える場合には、ボールシートの摩擦係数が上昇するとともに機械的強度が低下して、却って強操時に破損してしまう。
【0035】
これに対し、エラストマーの充てん率が3〜10重量%の範囲内であれば、ボールシートの機械的強度を維持しつつ、その靭性を向上して、ボールジョイントの組み立て時に割れたり、タイロッドによる引っ張り力が加わった際に座屈したり割れたり、あるいは強操時にアブレッシブ摩耗したり破損したりするのをさらに確実に防止することが可能となる。
樹脂組成物IIにも、上記各成分に加えて、さらに必要に応じて紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、難燃剤等の種々の添加剤を含有させてもよい。
【0036】
〔樹脂組成物III〕
樹脂組成物IIIは、前記のように直鎖型PPSと、充てん率が10〜30重量%の酸化亜鉛系ウィスカーと、合計の充てん率が25〜35重量%のフッ素系樹脂粉末および炭素系粉末とを含むものである。
このうち基材樹脂である直鎖型PPSとしては、前記式(1)で表される繰り返し単位を有し、なおかつ重合時に高分子量化された直鎖型の、射出成形可能な種々のグレードのPPSの中から、数平均分子量Mnが8000〜11000であるものが選択的に使用される。
【0037】
かかる直鎖型PPSは、前記と同じく下記(a)〜(c)の特性を有している。
(a) 射出成形可能で、しかもボールジョイントの組み立て時に割れたり、タイロッドによる引っ張り力が加わった際に座屈したり割れたり、あるいは強操時にアブレッシブ摩耗したり破損したりしにくい靭性を有する。
(b) POMの3倍以上の限界PV値を有している。
(c) POMのように吸水して物性の低下が発生しない上、寸法安定性やクリープ特性にもすぐれている。
【0038】
直鎖型PPSの数平均分子量Mnが8000〜11000の範囲に限定されるのは、下記の理由による。
すなわち数平均分子量Mnが11000を超える場合には、樹脂組成物の、加熱時の流動性が低下して射出成形が困難になる。
また直鎖型PPSの数平均分子量Mnが8000未満では、ボールシートに高い靭性を付与する効果が得られず、脆くなって、ボールジョイントの組み立て時に割れたり、タイロッドによる引っ張り力が加わった際に座屈したり割れたり、あるいは強操時にアブレッシブ摩耗したり破損したりしやすくなるという問題を生じる。
【0039】
これに対し、基材樹脂としての直鎖型PPSの数平均分子量Mnが8000〜11000の範囲内であれば、樹脂組成物の良好な成形性を維持しつつ、ボールシートに高い靭性を付与することが可能となる。
なお直鎖型PPSの数平均分子量Mnの上限が、先の樹脂組成物I、IIの場合と比べて11000まで拡張されているのは、炭素系粉末が、樹脂組成物の、加熱時の流動性を改善する機能を有するためである。
【0040】
酸化亜鉛系ウィスカー、およびフッ素系樹脂粉末としては、それぞれ前記樹脂組成物I、IIで例示したのと同じものを用いることができる。
また炭素系粉末は、フッ素系樹脂粉末とともに、摩擦係数を小さくして強操時のボールシートの潤滑性を維持する機能を有する。
かかる炭素系粉末としては、炭素にて形成される、従来公知の種々の形状、構造を有するものが何れも使用可能である。
【0041】
中でもグラファイト粉末が、特にボールシートの摩擦係数を低下させる効果にすぐれるため好適に使用される。
樹脂組成物IIIにおいて、酸化亜鉛系ウィスカーの充てん率が10〜30重量%に限定されるのは、下記の理由による。
すなわち充てん率が10重量%未満では、酸化亜鉛系ウィスカーを配合したことによる前述した効果が得られず、クリープ特性が低下して、ボールシートが、使用時にクリープ変形したりクリープ破断したりする。また微小粒子に対する相手攻撃性が不十分になる結果、強操時のボールシートがアブレッシブ摩耗する。
【0042】
一方、充てん率が30重量%を超える場合には、樹脂組成物が硬く、かつ脆いものとなって、却って、強操時のボールシートがアブレッシブ摩耗しやすくなる。
これに対し、酸化亜鉛系ウィスカーの充てん率が10〜30重量%の範囲内であれば、クリープ特性を向上するとともに、強操時のボールシートがアブレッシブ摩耗するのをより確実に防止することが可能となる。
【0043】
またフッ素系樹脂粉末と炭素系粉末との合計の充てん率が25〜35重量%に限定されるのは、下記の理由による。
すなわち、合計の充てん率が25重量%未満では、フッ素系樹脂粉末と炭素系粉末による、摩擦係数を小さくして強操時のボールシートの潤滑性を維持する機能が不十分になって、強操時のボールシートがアブレッシブ摩耗したり溶融したりする。
【0044】
一方、合計の充てん率が35重量%を超える場合には、相対的に、直鎖型PPSや酸化亜鉛系ウィスカーの充てん率が少なくなるため、当該両成分によってボールシートに付与される、靭性やクリープ特性、機械的強度、相手攻撃性などの特性が低下する。
これに対し、フッ素系樹脂粉末と炭素系粉末との合計の充てん率が25〜35重量%の範囲内であれば、ボールシートの靭性や機械的強度、相手攻撃性などの特性を維持しつつ、摩擦係数を低いレベルに維持して、強操時のボールシートがアブレッシブ摩耗したり溶融したりするのを確実に防止することが可能となる。
【0045】
フッ素系樹脂粉末の充てん率は、20〜30重量%であるのが好ましい。
充てん率が20重量%未満では、フッ素系樹脂粉末を配合したことによる、摩擦係数を低下させる効果が不十分となって、強操時のボールシートがアブレッシブ摩耗したり溶融したりするおそれがある。
一方、充てん率が30重量%を超える場合には、ボールシートの機械的強度が低下して、強操時に破損してしまうおそれがある。
【0046】
なおフッ素系樹脂粉末の充てん率の好適な範囲が、先の樹脂組成物Iの場合と比べて上下限とも5ポイントずつ少ない方にシフトしているのは、炭素系粉末が、ボールシートの摩擦係数を低下させる効果の一部を担うためである。
また、フッ素系樹脂粉末と炭素系粉末とを併用したことによって、直鎖型PPSや酸化亜鉛系ウィスカーの充てん率が相対的に少なくなって、当該両成分によってボールシートに付与される、靭性やクリープ特性、機械的強度、相手攻撃性などの特性が低下するのを防止するためでもある。
【0047】
炭素系粉末の充てん率は、2〜7重量%であるのが好ましい。
充てん率が2重量%未満では、炭素系粉末を配合したことによる、摩擦係数を低下させる効果が不十分となって、強操時のボールシートがアブレッシブ摩耗したり溶融したりするおそれがある。
一方、充てん率が7重量%を超える場合には、ボールシートの機械的強度が低下して、強操時に破損してしまうおそれがある。
【0048】
樹脂組成物IIIにも、上記各成分に加えて、さらに必要に応じて紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、難燃剤等の種々の添加剤を含有させてもよい。
〔ボールシートの製造〕
本発明のボールシートは、従来同様に、上記の各成分を含む樹脂組成物I〜IIIのいずれかで形成したペレットなどを用いて、射出成形により製造される。すなわち、第1部材11と第2部材12とからなるボールシート1は、それぞれの部材の形状に対応した型窩を有する射出成形用の金型を射出成形機にセットするとともに、上記ペレットなどを射出成形機に供給し、加熱、溶融させて上記型窩内に注入、充てんしたのち冷却して取り出すことで製造される。
【0049】
かくして製造される本発明のボールシートは、前述した樹脂組成物I〜IIIのいずれかの組成を有することによって、先に述べたように耐摩耗性、耐熱性に優れる上、強操時にアブレッシブ摩耗を生じたり溶融したりせず、しかも連続使用温度がこれまでよりも高い、耐性に優れたものとなる。
その具体的な物性については特に限定されないが、ヤング率は、2000MPa以上であるのが好ましい。ヤング率が2000MPa未満ではボールシートの靭性が不足して、引張、圧縮の繰り返しによってクリープ変形したり、あるいは座屈したりするおそれがある。
【0050】
またボールシートの引張強度は、40MPa以上であるのが好ましい。引張強度が40MPa未満では、特にタイロッドによる引っ張り力が加わった際に割れたり欠けたりするおそれがある。
さらにボールシートの動摩擦係数は、0.15以下であるのが好ましい。動摩擦係数が0.15を超える場合には、特に強操によって無潤滑、高面圧となった際に、発熱による溶融や摩耗を発生するおそれがある。
【0051】
なおボールシートのヤング率、および引張強度の上限は、直鎖型ポリフェニレンスルフィドを基材樹脂とする樹脂組成物から形成したボールシートの、理論的な上限値まで大きくすることが可能である。またボールシートの動摩擦係数の下限は、上記樹脂組成物から形成したボールシートの、理論的な下限値まで小さくすることが可能である。
【0052】
【実施例】
以下に本発明を、実施例、比較例に基づいて説明する。
〔樹脂組成物I〕
(フッ素系樹脂粉末の充てん率検討)
樹脂組成物Iにおけるフッ素系樹脂粉末の充てん率を検討するために、基材樹脂として、数平均分子量が9000である直鎖型PPSを用い、この基材樹脂に、フッ素系樹脂粉末としてのPTFE粉末をドライブレンドし、溶融混練して樹脂組成物を作製したのち、この樹脂組成物をペレット化した。なおペレットは、PTFE粉末の充てん率を0重量%、15重量%、30重量%および40重量%とした4種を作製した。
【0053】
引張強度試験
上記4種のペレットを用いて、それぞれISO(国際標準化機構)推奨規格R527:1966「プラスチック−引張諸性質の測定」に規定された1号引張試験片を作製した。
そして4種の試験片を用いて、上記規格に則って、引張速度5mm/min、つかみ具間隔115mmの条件で引張試験を行って引張強度を求めた。
【0054】
摩擦摩耗試験
上記4種のペレットを用いて、日本工業規格JIS K7218-1986「プラスチックの滑り摩耗試験方法」所載のA法用の試験片を作製した。そして4種の試験片を使用して、上記A法により比摩耗量を測定した。なお測定条件は下記のとおりとした。
試験荷重:2646N
試験速度(周速):0.115m/sec
滑り距離:0.83km
状態:無潤滑
雰囲気温度:23℃±1℃
試料温度:摩擦による温度上昇のまま
相手材料:金属製
結果を図4に示す。
【0055】
図4より、フッ素系樹脂粉末の充てん率を25〜35重量%の範囲内とした場合に、25重量%未満としたものと比べて比摩耗量が小さい上、35重量%を超えるものと比べて引張強度が大きく、両特性のバランスに優れた状態にできることが確認された。
(酸化亜鉛系ウィスカーの充てん率検討)
次に、上記の結果に基づいてフッ素系樹脂粉末の充てん率を30重量%に固定して、樹脂組成物Iにおける酸化亜鉛系ウィスカーの充てん率を検討すべく、以下の各実施例、比較例を製造した。
【0056】
実施例1、2、比較例1、2
基材樹脂として、数平均分子量が9000である直鎖型PPSを用い、この基材樹脂に、フッ素系樹脂粉末としてのPTFE粉末と、テトラポッド状の酸化亜鉛系ウィスカー〔嵩比重0.1g/cm3、表面未処理、松下アムテック(株)製の商品名パナテトラ〕とをドライブレンドし、溶融混練して樹脂組成物を作製したのち、この樹脂組成物をペレット化した。PTFE粉末の充てん率は30重量%、酸化亜鉛系ウィスカーの充てん率は0重量%(比較例1)、5重量%(実施例1)、30重量%(実施例2)、および40重量%(比較例2)とした。
【0057】
そしてこれらのペレットを用いて、射出成形により、図2(a)〜(c)に示す第1部材11と、図3(a)(b)に示す第2部材12とからなるボールシート1を製造した。
上記実施例、比較例のボールシートの原料であるペレットを用いて試験片を作製して、前記と同様にして摩擦摩耗試験を行った。また下記のクリープ試験を行った。
【0058】
クリープ試験
実施例、比較例のボールシートの原料であるペレットを用いて、日本工業規格JIS K7116-1999「プラスチック−クリープ特性の試験方法−第2部:3点負荷による曲げクリープ」において規定されたクリープ試験片を作製した。そしてこの試験片を使用して、下記の条件で、クリープ量を測定した。
試験荷重:2646N
時間:120分間
雰囲気温度:23℃±1℃
以上の結果を図5に示す。
【0059】
また上記実施例、比較例のボールシートの原料であるペレットを用いて試験片を作製して、前記と同様にして引張強度試験を行った。また、この引張強度試験においてヤング率(引張弾性率)をも測定した。さらに、前述した摩擦摩耗試験のA法に準拠した摩擦摩耗試験機を用いて、摩擦摩耗試験と同条件で、動摩擦係数を測定した。
結果を表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
図5より、酸化亜鉛系ウィスカーの充てん率を2〜30重量%の範囲内とした実施例1、2は、2重量%未満とした比較例1と比べてクリープ量、および比摩耗量が小さいことがわかった。
また表1より、実施例1、2はともに、ヤング率、引張強度、および動摩擦係数の各物性が全て前記の範囲に入っており、しかも比較例1、2と比べて引張強度が大きい上、動摩擦係数が小さいことから、これらの特性にも優れたものであることが確認された。
【0062】
そして以上のことから実施例1、2は強度、耐摩耗性、および耐熱性に優れる上、強操時にアブレッシブ摩耗を生じたり溶融したりしにくく、しかも連続使用温度がこれまでよりも高い、耐性に優れたものであることが確認された。
〔樹脂組成物II〕
(エラストマーの充てん率検討)
次に、樹脂組成物IIにおけるエラストマーの充てん率を検討すべく、以下の各実施例、比較例を製造した。
【0063】
実施例3〜5、比較例3〜5
基材樹脂として、数平均分子量が9000である直鎖型PPSを用い、この基材樹脂に、フッ素系樹脂粉末としてのPTFE粉末と、テトラポッド状の酸化亜鉛系ウィスカー〔嵩比重0.1g/cm3、表面未処理、松下アムテック(株)製の商品名パナテトラ〕と、エラストマーとしてのEGMA系のグラフトコポリマーとをドライブレンドし、溶融混練して樹脂組成物を作製したのち、この樹脂組成物をペレット化した。PTFE粉末の充てん率は20重量%、酸化亜鉛系ウィスカーの充てん率は5重量%とした。またエラストマーの充てん率は0重量%(比較例3)、1重量%(比較例4)、3重量%(実施例3)、5重量%(実施例4)、10重量%(実施例5)、および15重量%(比較例5)とした。
【0064】
そしてこれらのペレットを用いて、射出成形により、図2(a)〜(c)に示す第1部材11と、図3(a)(b)に示す第2部材12とからなるボールシート1を製造した。
上記実施例、比較例のボールシートの原料であるペレットを用いて試験片を作製して、前記と同様にして引張強度、ヤング率、および動摩擦係数を測定した。また上記実施例、比較例のボールシートについて、下記の組み立て試験、および強操試験を行った。
【0065】
組み立て試験
実施例、比較例で製造した第1部材11と第2部材12とからなるボールシート1に、図1に示すボールスタッド2の球頭部21を圧入し、次いでこのボールシート1をハウジング3に圧入したのちハウジング3をかしめた後、マイクロカッターで切断して両部材11、12を目視にて観察した。そして下記の基準で、ボールシート1の組み立て性を評価した。
【0066】
○:ボールシート1には、割れやヒビ、変形などは全く見られなかった。組み立て性良好。
×:割れやヒビ、変形などが見られた。組み立て性不良。
強操試験
上記組み立て試験で組み立てたボールジョイントを、無潤滑の状態で、2646N以上の応力をかけて強操した後、マイクロカッターで切断して両部材11、12を目視にて観察した。そして下記の基準で、ボールシート1の強操時の耐性を評価した。
【0067】
○:ボールシート1は、アブレッシブ摩耗したり破損したりしていなかった。耐性良好。
×:完全に摩滅したり、大きく破損したりしているのが確認された。耐性不良。
以上の結果を表2に示す。
【0068】
【表2】
【0069】
表2より、エラストマーの充てん率が3重量%未満である比較例3、4はともに、組み立て時に割れてしまって組み立て性が不良(×)である上、強操試験によって破損してしまって耐性が不良(×)であることから、靭性が不十分であることがわかった。
またエラストマーの充てん率が10重量%を超える比較例5は動摩擦係数が前記の範囲を外れている上、強操試験によって摩滅してしまって耐性が不良(×)であったことから、強操時の耐性が低いことがわかった。
【0070】
これに対し、エラストマーの充てん率を3〜10重量%とした実施例3〜5はいずれも、ヤング率、引張強度、および動摩擦係数の各物性が全て前記の範囲に入っている上、組み立て性および強操時の耐性が良好(○)であったことから、耐摩耗性、耐熱性に優れる上、強操時にアブレッシブ摩耗を生じたり溶融したりしにくく、しかも連続使用温度がこれまでよりも高い、耐性に優れたものであることが確認された。
【0071】
〔樹脂組成物III〕
(フッ素系樹脂粉末および炭素系粉末の充てん率検討)
次に、樹脂組成物IIIにおけるフッ素系樹脂粉末と炭素系粉末の合計の充てん率を検討すべく、以下の各実施例、比較例を製造した。
実施例6、7、比較例6、7
基材樹脂として、数平均分子量が9000である直鎖型PPSを用い、この基材樹脂に、フッ素系樹脂粉末としてのPTFE粉末と、テトラポッド状の酸化亜鉛系ウィスカー〔嵩比重0.1g/cm3、表面未処理、松下アムテック(株)製の商品名パナテトラ〕と、炭素系粉末としてのグラファイト粉末とをドライブレンドし、溶融混練して樹脂組成物を作製したのち、この樹脂組成物をペレット化した。PTFE粉末の充てん率は0重量%(比較例6)、10重量%(比較例7)、20重量(実施例6)、および30重量%(実施例7)、酸化亜鉛系ウィスカーの充てん率は15重量%、グラファイト粉末の充てん率は0重量%(比較例6)、および5重量%(実施例6、7、比較例7)とした。
【0072】
そしてこれらのペレットを用いて、射出成形により、図2(a)〜(c)に示す第1部材11と、図3(a)(b)に示す第2部材12とからなるボールシート1を製造した。
上記実施例、比較例のボールシートの原料であるペレットを用いて試験片を作製して、前記と同様にして摩擦摩耗試験を行った。
結果を図6に示す。
【0073】
図6より、フッ素系樹脂粉末と炭素系粉末との合計の充てん率を25〜35重量%とした実施例6、7は、25重量%未満とした比較例6、7と比べて比摩耗量が小さく、耐磨耗性に優れたものであることが確認された。
また上記実施例、比較例のボールシートの原料であるペレットを用いて試験片を作製して、前記と同様にして引張強度、ヤング率、および動摩擦係数を測定した。
【0074】
結果を表3に示す。
【0075】
【表3】
【0076】
表3より、比較例6、7は動摩擦係数が前記の範囲を外れることから、フッ素系樹脂粉末と炭素系粉末による、摩擦係数を低下させる効果が不十分であることがわかった。そしてその結果として耐磨耗性が悪くなり、前記図6のように比摩耗量が大きくなることが確認された。
これに対し実施例6、7は、ヤング率、引張強度、および動摩擦係数の各物性が全て前記の範囲に入っており、耐摩耗性、耐熱性に優れる上、強操時にアブレッシブ摩耗を生じたり溶融したりしにくく、しかも連続使用温度がこれまでよりも高い、耐性に優れたものであることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のボールシートの、実施の形態の一例を、ボールジョイントに組み込んだ状態を示す断面図である。
【図2】上記例のボールシートを構成する第1部材を示す図であって、同図(a)は平面図、同図(b)は半裁側面図、同図(c)は底面図である。
【図3】第1部材とともに上記例のボールシートを構成する第2部材を示す図であって、同図(a)は半裁側面図、同図(b)は底面図である。
【図4】本発明の実施例において、フッ素系樹脂粉末の充てん率と、引張強度および比摩耗量との関係を検討した結果を示すグラフである。
【図5】本発明の実施例において、酸化亜鉛系ウィスカーの充てん率と、クリープ量および比摩耗量との関係を検討した結果を示すグラフである。
【図6】本発明の実施例において、フッ素系樹脂粉末と炭素系粉末との合計の充てん率と、比摩耗量との関係を検討した結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1 ボールシート
2 ボールジョイント
Claims (3)
- ボールジョイントのハウジングの底部に挿入されて、前記ボールジョイントの、ボールスタッドの球頭部の先端部付近を受ける第1部材と、ハウジングの内周壁を覆って球頭部21の側部付近を受ける第2部材とを含むボールジョイント用のボールシートであって、前記第1部材および第2部材のうち少なくとも一方を、数平均分子量Mnが8000〜10000である直鎖型ポリフェニレンスルフィドと、充てん率が2〜30重量%の酸化亜鉛系ウィスカーと、充てん率が25〜35重量%のフッ素系樹脂粉末とを含む樹脂組成物によって形成したことを特徴とするボールジョイント用のボールシート。
- ボールジョイントのハウジングの底部に挿入されて、前記ボールジョイントの、ボールスタッドの球頭部の先端部付近を受ける第1部材と、ハウジングの内周壁を覆って球頭部21の側部付近を受ける第2部材とを含むボールジョイント用のボールシートであって、前記第1部材および第2部材のうち少なくとも一方を、数平均分子量Mnが8000〜10000である直鎖型ポリフェニレンスルフィドと、充てん率が2〜30重量%の酸化亜鉛系ウィスカーと、充てん率が15〜25重量%のフッ素系樹脂粉末と、充てん率が3〜10重量%のエラストマーとを含む樹脂組成物によって形成したことを特徴とするボールジョイント用のボールシート。
- ボールジョイントのハウジングの底部に挿入されて、前記ボールジョイントの、ボールスタッドの球頭部の先端部付近を受ける第1部材と、ハウジングの内周壁を覆って球頭部21の側部付近を受ける第2部材とを含むボールジョイント用のボールシートであって、前記第1部材および第2部材のうち少なくとも一方を、数平均分子量Mnが8000〜11000である直鎖型ポリフェニレンスルフィドと、充てん率が10〜30重量%の酸化亜鉛系ウィスカーと、合計の充てん率が25〜35重量%のフッ素系樹脂粉末および炭素系粉末とを含む樹脂組成物によって形成したことを特徴とするボールシート。
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