JP2003262213A - ボールシート - Google Patents
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Abstract
レッシブ摩耗を生じたり溶融したりせず、しかも連続使
用温度がこれまでよりも高い、耐性に優れた新規な、ボ
ールジョイント用のボールシートを提供する。 【解決手段】 下記(I)〜(III)のいずれかの樹脂組成物
を用いてボールシート1を形成した。 (I) 数平均分子量Mnが8000〜10000である
直鎖型PPSに、酸化亜鉛系ウィスカーを2〜30重量
%、フッ素系樹脂粉末を25〜35重量%の充てん率で
配合した樹脂組成物。 (II) 上記の直鎖型PPSに、酸化亜鉛系ウィスカーを
2〜30重量%、フッ素系樹脂粉末を15〜25重量
%、エラストマーを3〜10重量%の充てん率で配合し
た樹脂組成物。 (III) 数平均分子量Mnが8000〜11000であ
る直鎖型PPSに、酸化亜鉛系ウィスカーを10〜30
重量%、フッ素系樹脂粉末と炭素系粉末とを合計で25
〜35重量%の充てん率で配合した樹脂組成物。
Description
トにおいてボールスタッドの球頭部を摺動可能に保持す
るボールシートに関するものである。
ボールジョイントにおいて、ボールスタッドの球頭部を
摺動可能に保持するために、樹脂製のボールシートが用
いられる(例えば特許文献1、2参照)。またボールシ
ートを形成する基材樹脂としては、耐摩耗性や耐熱性な
どを考慮してポリアセタール(POM)が広く用いられ
ている。
1、第0010欄)
項1、請求項4、第0008欄)
点から、さらに耐性にすぐれたボールシートの開発が求
められている。 (1) 自動車を停止した状態でハンドルを切るいわゆる
据え切りなどの、部品に負荷を及ぼすような強い操作
(強操)によってグリース切れが生じ、ボールシートが
無潤滑、高面圧の状態となっても、ボールジョイント内
に混入した微小粒子によってボールシートが摩耗される
いわゆるアブレッシブ摩耗を生じたり、あるいはボール
シートが溶融したりせずに問題なく使用できること。
装置等の部品に課せられる使用可能な環境が厳しくな
り、樹脂については110〜120℃程度の連続使用温
度が必要とされつつあること(POMの連続使用温度は
90℃であって上記の要求に対応できない)。この発明
は、これらの要求を満足する、これまでよりも耐性にす
ぐれた新規なボールシートを提供することを目的とす
る。
明のボールシートは、数平均分子量Mnが8000〜1
0000である直鎖型ポリフェニレンスルフィドと、充
てん率が2〜30重量%の酸化亜鉛系ウィスカーと、充
てん率が25〜35重量%のフッ素系樹脂粉末とを含む
ことを特徴とするものである。この発明によれば、耐摩
耗性、耐熱性にすぐれる上、強操時にアブレッシブ摩耗
を生じたり溶融したりせず、しかも連続使用温度がこれ
までよりも高い、耐性にすぐれたボールシートを得るこ
とができる。
均分子量Mnが8000〜10000である直鎖型ポリ
フェニレンスルフィドと、充てん率が2〜30重量%の
酸化亜鉛系ウィスカーと、充てん率が15〜25重量%
のフッ素系樹脂粉末と、充てん率が3〜10重量%のエ
ラストマーとを含むことを特徴とするものである。この
発明によれば、上記と同様に耐摩耗性、耐熱性にすぐれ
る上、強操時にアブレッシブ摩耗を生じたり溶融したり
せず、しかも連続使用温度がこれまでよりも高い、耐性
にすぐれたボールシートを得ることができる。
を、アンダーカットに抗しながらボールジョイントのハ
ウジングに圧入したのち、ハウジングをかしめるボール
ジョイントの組み立て時に割れたり、 ・ タイロッドによる引っ張り力が加わった際に座屈し
たり割れたり、あるいは ・ 強操時にアブレッシブ摩耗したり破損したりする のを、さらに確実に防止することもできる。
は、数平均分子量Mnが8000〜11000である直
鎖型ポリフェニレンスルフィドと、充てん率が10〜3
0重量%の酸化亜鉛系ウィスカーと、合計の充てん率が
25〜35重量%のフッ素系樹脂粉末および炭素系粉末
とを含むことを特徴とするものである。この発明によれ
ば、上記と同様に耐摩耗性、耐熱性にすぐれる上、強操
時にアブレッシブ摩耗を生じたり溶融したりせず、しか
も連続使用温度がこれまでよりも高い、耐性にすぐれた
ボールシートを得ることができる。
明のボールシートの、実施の形態の一例をボールジョイ
ントに組み込んだ状態を示す断面図である。図において
1はボールシート、2はボールスタッド、21はボール
スタッド2の球頭部、3は球頭部21とボールシート1
とを収容するハウジングである。
ング3の底部に挿入されて球頭部21の先端部付近を受
ける第1部材11と、ハウジング3の内周壁を覆って球
頭部21の側部付近を受ける第2部材12とで形成して
いる。このうち第1部材11は、図2(a)〜(c)に示すよ
うにその全体を浅い椀型に形成したもので、その底部に
は、球頭部21から押圧力を受けた際に第1部材11の
変形を促して衝撃を緩和するための通孔11aを設ける
とともに、球頭部21と接するべく、当該球頭部21の
外面に沿う湾曲形状に形成した内周面11bには、球頭
部21に潤滑剤を供給するための溝11cを設けてい
る。また第1部材11の外側面には、ハウジング3の底
部との間に隙間を形成しておき、球頭部21から押圧力
を受けた際に第1部材11の変形を促して衝撃を緩和す
るための凸条11dを設けている。
ようにその全体を筒型に形成したもので、その内周面の
うち球頭部21と接するべく、当該球頭部21の外面に
沿う湾曲形状に形成した内周面12aには、やはり球頭
部21に潤滑剤を供給するための溝12bを設けてい
る。図の例では、上記ボールシート1を形成する第1部
材11と第2部材12のうちの少なくとも一方、好まし
くは第1部材11、より好ましくは第1部材11と第2
部材12の両方を、先に述べた、直鎖型ポリフェニレン
スルフィド(以下「直鎖型PPS」とする)を基材樹脂
として含む、下記の樹脂組成物I〜IIIのいずれかによ
って形成する。これにより、前述したように耐性にすぐ
れた新規なボールシートが得られる。
ように直鎖型PPSと、充てん率が2〜30重量%の酸
化亜鉛系ウィスカーと、充てん率が25〜35重量%の
フッ素系樹脂粉末とを含むものである。なお充てん率
(重量%)とは、特定成分(フッ素系樹脂粉末、酸化亜
鉛系ウィスカーなど)の重量W1(g)の、樹脂組成物
全体の重量W2(g)に対する重量百分率で求められ
る、特定成分の含有割合を表す数値である。
重合時に高分子量化された直鎖型の、射出成形可能な種
々のグレードのPPSの中から、前記のように数平均分
子量Mnが8000〜10000であるものが選択的に
使用される。かかる直鎖型PPSは、下記の特性を有し
ている。 (a) 射出成形可能で、しかもボールジョイントの組み
立て時に割れたり、タイロッドによる引っ張り力が加わ
った際に座屈したり割れたり、あるいは強操時にアブレ
ッシブ摩耗したり破損したりしにくい靭性を有する。
している。限界PV値とは、強操によって、ボールシー
トが無潤滑、高面圧の状態で摺動を受けた際に樹脂が溶
融しない、面圧×摺動速度の限界値である。ちなみにP
OMの限界PV値は0.38〜0.58MPa・m/s
ecであるのに対し、直鎖型PPSの限界PV値は1.
83MPa・m/sec以上である。 (c) POMのように吸水して物性の低下が発生しない
上、寸法安定性やクリープ特性にもすぐれている。
0〜10000の範囲に限定されるのは、下記の理由に
よる。すなわち数平均分子量Mnが10000を超える
場合には、樹脂組成物の、加熱時の流動性が低下して射
出成形が困難になる。一方、数平均分子量Mnが800
0未満では、ボールシートに高い靭性を付与する効果が
得られず、脆くなって、前述したようにボールジョイン
トの組み立て時に割れたり、タイロッドによる引っ張り
力が加わった際に座屈したり割れたり、あるいは強操時
にアブレッシブ摩耗したり破損したりしやすくなるとい
う問題を生じる。
Sの数平均分子量Mnが8000〜10000の範囲内
であれば、樹脂組成物の良好な成形性を維持しつつ、ボ
ールシートに高い靭性を付与することが可能となる。酸
化亜鉛系ウィスカーは、樹脂のクリープ特性をさらに向
上する効果を有するとともに、アブレッシブ摩耗の原因
となる微小粒子を逆に摩耗して無力化する、いわゆる相
手攻撃性をボールシートに付与する機能を有する。
えば金属亜鉛を酸素などの酸化性の雰囲気中で加熱酸化
するなどして製造される、単純な針状結晶を有するもの
から複雑な立体形状を有するものまで種々の形状、構造
を有するものが何れも使用可能である。中でも正四面体
の中心に位置する微小な核部と、そこから正四面体の各
頂点の方向に伸びる4つの針状部とを備えた、いわゆる
テトラポッドのような立体形状を有する酸化亜鉛系ウィ
スカーが好適に使用される。かかる立体形状を有する酸
化亜鉛系ウィスカーは、単純な針状のものなどに比べて
形状の異方性が小さいため、直鎖型PPS中に分散され
た際に当該ウィスカーが発揮しうる前述した効果を、異
方性のない均一なものとすることができる。立体形状を
有する酸化亜鉛系ウィスカーは、嵩比重が0.02〜
0.1g/cm3であるのが好ましい。
の酸化亜鉛系ウィスカーは、その全体を酸化亜鉛によっ
て形成した単一の構造を有していてもよいし、結晶成長
の核となる芯の部分を他の物質によって形成し、その表
面を、結晶成長させた酸化亜鉛によって覆った複合構造
を有していてもよい。また、酸化亜鉛系ウィスカーの表
面をカップリング剤などで表面処理しても良い。酸化亜
鉛系ウィスカーの充てん率が2〜30重量%に限定され
るのは、下記の理由による。
化亜鉛系ウィスカーを配合したことによる前述した効果
が得られず、クリープ特性が低下して、ボールシート
が、使用時にクリープ変形したりクリープ破断したりす
る。また微小粒子に対する相手攻撃性が不十分になる結
果、強操時のボールシートがアブレッシブ摩耗する。一
方、充てん率が30重量%を超える場合には、樹脂組成
物が硬く、かつ脆いものとなって、却って強操時のボー
ルシートがアブレッシブ摩耗しやすくなる。
ん率が2〜30重量%の範囲内であれば、クリープ特性
を向上するとともに、強操時のボールシートがアブレッ
シブ摩耗するのをより確実に防止することが可能とな
る。なおクリープ特性を高いレベルに維持しつつ、強操
時のボールシートがアブレッシブ摩耗するのをさらに確
実に防止することを考慮すると、酸化亜鉛系ウィスカー
の充てん率は、上記の範囲内でも特に5〜15重量%で
あるのが好ましい。
ることで、強操時のボールシートの潤滑性を維持してア
ブレッシブ摩耗や溶融などを防止する機能を有する。か
かるフッ素系樹脂粉末としては、例えばポリテトラフル
オロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン/
ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラ
フルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテ
ル共重合体(PFA)、エチレン/テトラフルオロエチ
レン共重合体(ETFE)、エチレン/クロロトリフル
オロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニ
リデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)等
の、従来公知の種々のフッ素系樹脂にて形成した粉末が
あげられる。特に摩擦低減の効果や耐熱性、汎用性等を
考慮するとPTFEの粉末が好適に使用される。
重量%に限定されるのは、下記の理由による。すなわち
充てん率が25重量%未満では、フッ素系樹脂粉末を配
合したことによる、摩擦係数を低下させる効果が得られ
ず、強操時のボールシートがアブレッシブ摩耗したり溶
融したりする。一方、充てん率が35重量%を超える場
合には、ボールシートの機械的強度が低下して強操時に
破損してしまう。
が25〜35重量%の範囲内であれば、ボールシートの
機械的強度を維持しつつ、摩擦係数を低いレベルに維持
できる上、発明者の検討によると、面圧が増加するほど
摩擦係数を低くできるため、強操時のボールシートがア
ブレッシブ摩耗したり溶融したりするのをより確実に防
止することが可能となる。なおボールシートの機械的強
度を維持しつつ、摩擦係数をより低くすることを考慮す
ると、フッ素系樹脂粉末の充てん率は、上記の範囲内で
も特に28〜33重量%であるのが好ましい。
さらに必要に応じて紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色
剤、難燃剤等の種々の添加剤を含有させてもよい。 〔樹脂組成物II〕樹脂組成物IIは、前記のように直鎖型
PPSと、充てん率が2〜30重量%の酸化亜鉛系ウィ
スカーと、充てん率が15〜25重量%のフッ素系樹脂
粉末と、充てん率が3〜10重量%のエラストマーとを
含むものである。
カー、およびフッ素系樹脂粉末としては、それぞれ前記
樹脂組成物Iで例示したのと同じものを用いることがで
きる。またエラストマーは、自身の持つ弾性によって樹
脂組成物を改質してボールシートの靭性を高め、それに
よってボールジョイントの組み立て時に割れたり、タイ
ロッドによる引っ張り力が加わった際に座屈したり割れ
たり、あるいは強操時にアブレッシブ摩耗したり破損し
たりするのを防止するために機能する。
能を有し、なおかつ直鎖型PPSを基材樹脂とする樹脂
組成物に対して良好な相溶性を有する種々のエラストマ
ーを使用することができるが、特にポリオレフィンを主
鎖とし、ビニル系ポリマーを側鎖とするグラフトコポリ
マーが好ましい。かかるグラフトコポリマーのうち主鎖
であるポリオレフィンとしては、低密度ポリエチレン
(LDPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−グ
リシジルメタクリレート共重合体(EGMA)、エチレ
ン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン
−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−エチルア
クリレート−無水マレイン酸共重合体(E/EA/MA
H)などを挙げることができる。
は、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレート
(PMMA)、アクリロニトリル−スチレン共重合体
(AS)などを挙げることができる。上記グラフトコポ
リマー中でも特に、EGMA系のグラフトコポリマーが
好ましい。樹脂組成物IIにおいて、酸化亜鉛系ウィスカ
ーの充てん率が2〜30重量%に限定されるのは、前記
と同じ理由による。
25重量%に限定されるのは、下記の理由による。すな
わち充てん率が15重量%未満では、フッ素系樹脂粉末
を配合したことによる、摩擦係数を低下させる効果が得
られず、強操時のボールシートがアブレッシブ摩耗した
り溶融したりする。一方、充てん率が25重量%を超え
る場合には、ボールシートの機械的強度が低下して強操
時に破損してしまう。
が15〜25重量%の範囲内であれば、ボールシートの
機械的強度を維持しつつ、摩擦係数を低いレベルに維持
できる上、前記のように面圧が増加するほど摩擦係数を
低くできるため、強操時のボールシートがアブレッシブ
摩耗したり溶融したりするのをより確実に防止すること
が可能となる。なおフッ素系樹脂粉末の充てん率の範囲
が、先の樹脂組成物Iと比べて上下限とも10ポイント
ずつ少ない方にシフトしているのは、エラストマーが、
前記のようにボールシートの靭性を向上して、特に強操
時にアブレッシブ摩耗したり破損したりするのを防止す
る効果の一部を担うためである。
を併用したことによって、直鎖型PPSや酸化亜鉛系ウ
ィスカーの充てん率が相対的に少なくなって、当該両成
分によってボールシートに付与される、靭性やクリープ
特性、機械的強度、相手攻撃性などの特性が低下するの
を防止するためでもある。さらにエラストマーの充てん
率が3〜10重量%に限定されるのは、下記の理由によ
る。
ラストマーを配合したことによる、上述した、ボールシ
ートの靭性を向上して、ボールジョイントの組み立て時
に割れたり、タイロッドによる引っ張り力が加わった際
に座屈したり割れたり、あるいは強操時にアブレッシブ
摩耗したり破損したりするのを防止する効果が得られな
い。一方、充てん率が10重量%を超える場合には、ボ
ールシートの摩擦係数が上昇するとともに機械的強度が
低下して、却って強操時に破損してしまう。
〜10重量%の範囲内であれば、ボールシートの機械的
強度を維持しつつ、その靭性を向上して、ボールジョイ
ントの組み立て時に割れたり、タイロッドによる引っ張
り力が加わった際に座屈したり割れたり、あるいは強操
時にアブレッシブ摩耗したり破損したりするのをさらに
確実に防止することが可能となる。樹脂組成物IIにも、
上記各成分に加えて、さらに必要に応じて紫外線吸収
剤、酸化防止剤、着色剤、難燃剤等の種々の添加剤を含
有させてもよい。
のように直鎖型PPSと、充てん率が10〜30重量%
の酸化亜鉛系ウィスカーと、合計の充てん率が25〜3
5重量%のフッ素系樹脂粉末および炭素系粉末とを含む
ものである。このうち基材樹脂である直鎖型PPSとし
ては、前記式(1)で表される繰り返し単位を有し、なお
かつ重合時に高分子量化された直鎖型の、射出成形可能
な種々のグレードのPPSの中から、数平均分子量Mn
が8000〜11000であるものが選択的に使用され
る。
(a)〜(c)の特性を有している。 (a) 射出成形可能で、しかもボールジョイントの組み
立て時に割れたり、タイロッドによる引っ張り力が加わ
った際に座屈したり割れたり、あるいは強操時にアブレ
ッシブ摩耗したり破損したりしにくい靭性を有する。 (b) POMの3倍以上の限界PV値を有している。 (c) POMのように吸水して物性の低下が発生しない
上、寸法安定性やクリープ特性にもすぐれている。
0〜11000の範囲に限定されるのは、下記の理由に
よる。すなわち数平均分子量Mnが11000を超える
場合には、樹脂組成物の、加熱時の流動性が低下して射
出成形が困難になる。また直鎖型PPSの数平均分子量
Mnが8000未満では、ボールシートに高い靭性を付
与する効果が得られず、脆くなって、ボールジョイント
の組み立て時に割れたり、タイロッドによる引っ張り力
が加わった際に座屈したり割れたり、あるいは強操時に
アブレッシブ摩耗したり破損したりしやすくなるという
問題を生じる。
Sの数平均分子量Mnが8000〜11000の範囲内
であれば、樹脂組成物の良好な成形性を維持しつつ、ボ
ールシートに高い靭性を付与することが可能となる。な
お直鎖型PPSの数平均分子量Mnの上限が、先の樹脂
組成物I、IIの場合と比べて11000まで拡張されて
いるのは、炭素系粉末が、樹脂組成物の、加熱時の流動
性を改善する機能を有するためである。
脂粉末としては、それぞれ前記樹脂組成物I、IIで例示
したのと同じものを用いることができる。また炭素系粉
末は、フッ素系樹脂粉末とともに、摩擦係数を小さくし
て強操時のボールシートの潤滑性を維持する機能を有す
る。かかる炭素系粉末としては、炭素にて形成される、
従来公知の種々の形状、構造を有するものが何れも使用
可能である。
ートの摩擦係数を低下させる効果にすぐれるため好適に
使用される。樹脂組成物IIIにおいて、酸化亜鉛系ウィ
スカーの充てん率が10〜30重量%に限定されるの
は、下記の理由による。すなわち充てん率が10重量%
未満では、酸化亜鉛系ウィスカーを配合したことによる
前述した効果が得られず、クリープ特性が低下して、ボ
ールシートが、使用時にクリープ変形したりクリープ破
断したりする。また微小粒子に対する相手攻撃性が不十
分になる結果、強操時のボールシートがアブレッシブ摩
耗する。
には、樹脂組成物が硬く、かつ脆いものとなって、却っ
て、強操時のボールシートがアブレッシブ摩耗しやすく
なる。これに対し、酸化亜鉛系ウィスカーの充てん率が
10〜30重量%の範囲内であれば、クリープ特性を向
上するとともに、強操時のボールシートがアブレッシブ
摩耗するのをより確実に防止することが可能となる。
計の充てん率が25〜35重量%に限定されるのは、下
記の理由による。すなわち、合計の充てん率が25重量
%未満では、フッ素系樹脂粉末と炭素系粉末による、摩
擦係数を小さくして強操時のボールシートの潤滑性を維
持する機能が不十分になって、強操時のボールシートが
アブレッシブ摩耗したり溶融したりする。
る場合には、相対的に、直鎖型PPSや酸化亜鉛系ウィ
スカーの充てん率が少なくなるため、当該両成分によっ
てボールシートに付与される、靭性やクリープ特性、機
械的強度、相手攻撃性などの特性が低下する。これに対
し、フッ素系樹脂粉末と炭素系粉末との合計の充てん率
が25〜35重量%の範囲内であれば、ボールシートの
靭性や機械的強度、相手攻撃性などの特性を維持しつ
つ、摩擦係数を低いレベルに維持して、強操時のボール
シートがアブレッシブ摩耗したり溶融したりするのを確
実に防止することが可能となる。
0重量%であるのが好ましい。充てん率が20重量%未
満では、フッ素系樹脂粉末を配合したことによる、摩擦
係数を低下させる効果が不十分となって、強操時のボー
ルシートがアブレッシブ摩耗したり溶融したりするおそ
れがある。一方、充てん率が30重量%を超える場合に
は、ボールシートの機械的強度が低下して、強操時に破
損してしまうおそれがある。
範囲が、先の樹脂組成物Iの場合と比べて上下限とも5
ポイントずつ少ない方にシフトしているのは、炭素系粉
末が、ボールシートの摩擦係数を低下させる効果の一部
を担うためである。また、フッ素系樹脂粉末と炭素系粉
末とを併用したことによって、直鎖型PPSや酸化亜鉛
系ウィスカーの充てん率が相対的に少なくなって、当該
両成分によってボールシートに付与される、靭性やクリ
ープ特性、機械的強度、相手攻撃性などの特性が低下す
るのを防止するためでもある。
あるのが好ましい。充てん率が2重量%未満では、炭素
系粉末を配合したことによる、摩擦係数を低下させる効
果が不十分となって、強操時のボールシートがアブレッ
シブ摩耗したり溶融したりするおそれがある。一方、充
てん率が7重量%を超える場合には、ボールシートの機
械的強度が低下して、強操時に破損してしまうおそれが
ある。
て、さらに必要に応じて紫外線吸収剤、酸化防止剤、着
色剤、難燃剤等の種々の添加剤を含有させてもよい。 〔ボールシートの製造〕本発明のボールシートは、従来
同様に、上記の各成分を含む樹脂組成物I〜IIIのいず
れかで形成したペレットなどを用いて、射出成形により
製造される。例えば前記図の例の、第1部材11と第2
部材12とからなるボールシート1は、それぞれの部材
の形状に対応した型窩を有する射出成形用の金型を射出
成形機にセットするとともに、上記ペレットなどを射出
成形機に供給し、加熱、溶融させて上記型窩内に注入、
充てんしたのち冷却して取り出すことで製造される。
は、前述した樹脂組成物I〜IIIのいずれかの組成を有
することによって、先に述べたように耐摩耗性、耐熱性
に優れる上、強操時にアブレッシブ摩耗を生じたり溶融
したりせず、しかも連続使用温度がこれまでよりも高
い、耐性に優れたものとなる。その具体的な物性につい
ては特に限定されないが、ヤング率は、2000MPa
以上であるのが好ましい。ヤング率が2000MPa未
満ではボールシートの靭性が不足して、引張、圧縮の繰
り返しによってクリープ変形したり、あるいは座屈した
りするおそれがある。
a以上であるのが好ましい。引張強度が40MPa未満
では、特にタイロッドによる引っ張り力が加わった際に
割れたり欠けたりするおそれがある。さらにボールシー
トの動摩擦係数は、0.15以下であるのが好ましい。
動摩擦係数が0.15を超える場合には、特に強操によ
って無潤滑、高面圧となった際に、発熱による溶融や摩
耗を発生するおそれがある。
強度の上限は、直鎖型ポリフェニレンスルフィドを基材
樹脂とする樹脂組成物から形成したボールシートの、理
論的な上限値まで大きくすることが可能である。またボ
ールシートの動摩擦係数の下限は、上記樹脂組成物から
形成したボールシートの、理論的な下限値まで小さくす
ることが可能である。
けるフッ素系樹脂粉末の充てん率を検討するために、基
材樹脂として、数平均分子量が9000である直鎖型P
PSを用い、この基材樹脂に、フッ素系樹脂粉末として
のPTFE粉末をドライブレンドし、溶融混練して樹脂
組成物を作製したのち、この樹脂組成物をペレット化し
た。なおペレットは、PTFE粉末の充てん率を0重量
%、15重量%、30重量%および40重量%とした4
種を作製した。
準化機構)推奨規格R527:1966「プラスチック
−引張諸性質の測定」に規定された1号引張試験片を作
製した。そして4種の試験片を用いて、上記規格に則っ
て、引張速度5mm/min、つかみ具間隔115mm
の条件で引張試験を行って引張強度を求めた。
7218-1986「プラスチックの滑り摩耗試験方法」所
載のA法用の試験片を作製した。そして4種の試験片を
使用して、上記A法により比摩耗量を測定した。なお測
定条件は下記のとおりとした。 試験荷重:2646N 試験速度(周速):0.115m/sec 滑り距離:0.83km 状態:無潤滑 雰囲気温度:23℃±1℃ 試料温度:摩擦による温度上昇のまま 相手材料:金属製 結果を図4に示す。
25〜35重量%の範囲内とした場合に、25重量%未
満としたものと比べて比摩耗量が小さい上、35重量%
を超えるものと比べて引張強度が大きく、両特性のバラ
ンスに優れた状態にできることが確認された。 (酸化亜鉛系ウィスカーの充てん率検討)次に、上記の
結果に基づいてフッ素系樹脂粉末の充てん率を30重量
%に固定して、樹脂組成物Iにおける酸化亜鉛系ウィス
カーの充てん率を検討すべく、以下の各実施例、比較例
を製造した。
PPSを用い、この基材樹脂に、フッ素系樹脂粉末とし
てのPTFE粉末と、テトラポッド状の酸化亜鉛系ウィ
スカー〔嵩比重0.1g/cm3、表面未処理、松下ア
ムテック(株)製の商品名パナテトラ〕とをドライブレン
ドし、溶融混練して樹脂組成物を作製したのち、この樹
脂組成物をペレット化した。PTFE粉末の充てん率は
30重量%、酸化亜鉛系ウィスカーの充てん率は0重量
%(比較例1)、5重量%(実施例1)、30重量%
(実施例2)、および40重量%(比較例2)とした。
形により、図2(a)〜(c)に示す第1部材11と、図3
(a)(b)に示す第2部材12とからなるボールシート1を
製造した。上記実施例、比較例のボールシートの原料で
あるペレットを用いて試験片を作製して、前記と同様に
して摩擦摩耗試験を行った。また下記のクリープ試験を
行った。
用いて、日本工業規格JIS K7116-1999「プラ
スチック−クリープ特性の試験方法−第2部:3点負荷
による曲げクリープ」において規定されたクリープ試験
片を作製した。そしてこの試験片を使用して、下記の条
件で、クリープ量を測定した。 試験荷重:2646N 時間:120分間 雰囲気温度:23℃±1℃ 以上の結果を図5に示す。
原料であるペレットを用いて試験片を作製して、前記と
同様にして引張強度試験を行った。また、この引張強度
試験においてヤング率(引張弾性率)をも測定した。さ
らに、前述した摩擦摩耗試験のA法に準拠した摩擦摩耗
試験機を用いて、摩擦摩耗試験と同条件で、動摩擦係数
を測定した。結果を表1に示す。
率を2〜30重量%の範囲内とした実施例1、2は、2
重量%未満とした比較例1と比べてクリープ量、および
比摩耗量が小さいことがわかった。また表1より、実施
例1、2はともに、ヤング率、引張強度、および動摩擦
係数の各物性が全て前記の範囲に入っており、しかも比
較例1、2と比べて引張強度が大きい上、動摩擦係数が
小さいことから、これらの特性にも優れたものであるこ
とが確認された。
度、耐摩耗性、および耐熱性に優れる上、強操時にアブ
レッシブ摩耗を生じたり溶融したりしにくく、しかも連
続使用温度がこれまでよりも高い、耐性に優れたもので
あることが確認された。 〔樹脂組成物II〕 (エラストマーの充てん率検討)次に、樹脂組成物IIに
おけるエラストマーの充てん率を検討すべく、以下の各
実施例、比較例を製造した。
PPSを用い、この基材樹脂に、フッ素系樹脂粉末とし
てのPTFE粉末と、テトラポッド状の酸化亜鉛系ウィ
スカー〔嵩比重0.1g/cm3、表面未処理、松下ア
ムテック(株)製の商品名パナテトラ〕と、エラストマー
としてのEGMA系のグラフトコポリマーとをドライブ
レンドし、溶融混練して樹脂組成物を作製したのち、こ
の樹脂組成物をペレット化した。PTFE粉末の充てん
率は20重量%、酸化亜鉛系ウィスカーの充てん率は5
重量%とした。またエラストマーの充てん率は0重量%
(比較例3)、1重量%(比較例4)、3重量%(実施
例3)、5重量%(実施例4)、10重量%(実施例
5)、および15重量%(比較例5)とした。
形により、図2(a)〜(c)に示す第1部材11と、図3
(a)(b)に示す第2部材12とからなるボールシート1を
製造した。上記実施例、比較例のボールシートの原料で
あるペレットを用いて試験片を作製して、前記と同様に
して引張強度、ヤング率、および動摩擦係数を測定し
た。また上記実施例、比較例のボールシートについて、
下記の組み立て試験、および強操試験を行った。
とからなるボールシート1に、図1に示すボールスタッ
ド2の球頭部21を圧入し、次いでこのボールシート1
をハウジング3に圧入したのちハウジング3をかしめた
後、マイクロカッターで切断して両部材11、12を目
視にて観察した。そして下記の基準で、ボールシート1
の組み立て性を評価した。
見られなかった。組み立て性良好。 ×:割れやヒビ、変形などが見られた。組み立て性不
良。 強操試験 上記組み立て試験で組み立てたボールジョイントを、無
潤滑の状態で、2646N以上の応力をかけて強操した
後、マイクロカッターで切断して両部材11、12を目
視にて観察した。そして下記の基準で、ボールシート1
の強操時の耐性を評価した。
たりしていなかった。耐性良好。 ×:完全に摩滅したり、大きく破損したりしているのが
確認された。耐性不良。 以上の結果を表2に示す。
量%未満である比較例3、4はともに、組み立て時に割
れてしまって組み立て性が不良(×)である上、強操試
験によって破損してしまって耐性が不良(×)であるこ
とから、靭性が不十分であることがわかった。またエラ
ストマーの充てん率が10重量%を超える比較例5は動
摩擦係数が前記の範囲を外れている上、強操試験によっ
て摩滅してしまって耐性が不良(×)であったことか
ら、強操時の耐性が低いことがわかった。
〜10重量%とした実施例3〜5はいずれも、ヤング
率、引張強度、および動摩擦係数の各物性が全て前記の
範囲に入っている上、組み立て性および強操時の耐性が
良好(○)であったことから、耐摩耗性、耐熱性に優れ
る上、強操時にアブレッシブ摩耗を生じたり溶融したり
しにくく、しかも連続使用温度がこれまでよりも高い、
耐性に優れたものであることが確認された。
次に、樹脂組成物IIIにおけるフッ素系樹脂粉末と炭素
系粉末の合計の充てん率を検討すべく、以下の各実施
例、比較例を製造した。 実施例6、7、比較例6、7 基材樹脂として、数平均分子量が9000である直鎖型
PPSを用い、この基材樹脂に、フッ素系樹脂粉末とし
てのPTFE粉末と、テトラポッド状の酸化亜鉛系ウィ
スカー〔嵩比重0.1g/cm3、表面未処理、松下ア
ムテック(株)製の商品名パナテトラ〕と、炭素系粉末と
してのグラファイト粉末とをドライブレンドし、溶融混
練して樹脂組成物を作製したのち、この樹脂組成物をペ
レット化した。PTFE粉末の充てん率は0重量%(比
較例6)、10重量%(比較例7)、20重量(実施例
6)、および30重量%(実施例7)、酸化亜鉛系ウィ
スカーの充てん率は15重量%、グラファイト粉末の充
てん率は0重量%(比較例6)、および5重量%(実施
例6、7、比較例7)とした。
形により、図2(a)〜(c)に示す第1部材11と、図3
(a)(b)に示す第2部材12とからなるボールシート1を
製造した。上記実施例、比較例のボールシートの原料で
あるペレットを用いて試験片を作製して、前記と同様に
して摩擦摩耗試験を行った。結果を図6に示す。
との合計の充てん率を25〜35重量%とした実施例
6、7は、25重量%未満とした比較例6、7と比べて
比摩耗量が小さく、耐磨耗性に優れたものであることが
確認された。また上記実施例、比較例のボールシートの
原料であるペレットを用いて試験片を作製して、前記と
同様にして引張強度、ヤング率、および動摩擦係数を測
定した。
記の範囲を外れることから、フッ素系樹脂粉末と炭素系
粉末による、摩擦係数を低下させる効果が不十分である
ことがわかった。そしてその結果として耐磨耗性が悪く
なり、前記図6のように比摩耗量が大きくなることが確
認された。これに対し実施例6、7は、ヤング率、引張
強度、および動摩擦係数の各物性が全て前記の範囲に入
っており、耐摩耗性、耐熱性に優れる上、強操時にアブ
レッシブ摩耗を生じたり溶融したりしにくく、しかも連
続使用温度がこれまでよりも高い、耐性に優れたもので
あることが確認された。
を、ボールジョイントに組み込んだ状態を示す断面図で
ある。
す図であって、同図(a)は平面図、同図(b)は半裁側面
図、同図(c)は底面図である。
する第2部材を示す図であって、同図(a)は半裁側面
図、同図(b)は底面図である。
充てん率と、引張強度および比摩耗量との関係を検討し
た結果を示すグラフである。
ーの充てん率と、クリープ量および比摩耗量との関係を
検討した結果を示すグラフである。
炭素系粉末との合計の充てん率と、比摩耗量との関係を
検討した結果を示すグラフである。
Claims (3)
- 【請求項1】数平均分子量Mnが8000〜10000
である直鎖型ポリフェニレンスルフィドと、充てん率が
2〜30重量%の酸化亜鉛系ウィスカーと、充てん率が
25〜35重量%のフッ素系樹脂粉末とを含むことを特
徴とするボールジョイント用のボールシート。 - 【請求項2】数平均分子量Mnが8000〜10000
である直鎖型ポリフェニレンスルフィドと、充てん率が
2〜30重量%の酸化亜鉛系ウィスカーと、充てん率が
15〜25重量%のフッ素系樹脂粉末と、充てん率が3
〜10重量%のエラストマーとを含むことを特徴とする
ボールジョイント用のボールシート。 - 【請求項3】数平均分子量Mnが8000〜11000
である直鎖型ポリフェニレンスルフィドと、充てん率が
10〜30重量%の酸化亜鉛系ウィスカーと、合計の充
てん率が25〜35重量%のフッ素系樹脂粉末および炭
素系粉末とを含むことを特徴とするボールシート。
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-
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