次に、発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は定置式エンジン発電装置の全体構成を示す正面図である。
図2は同じく背面図である。
図3は同じく平面図である。
図4は定置式エンジン発電装置の設置例を示す図である。
図5は同じく別設置例を示す図である。
図6は排気消音器を取り外した状態の排気消音器室を示す平面図である。
図7はピストン抜出し作業の説明図である。
図8は潤滑油系を示すフロー図である。
図9は冷却系を示すフロー図である。
図10は空気始動系、潤滑油系及び冷却水系を構成する機器類の配置を示す平面図である。
図11は潤滑油タンクの配置を示す右側面図である。
図12は空気始動系ユニットの一例を示す斜視図である。
図13は燃料供給系を示すフロー図である。
図14は燃料タンクとフィードポンプとの位置関係を示す正面図である。
なお、以下の説明においては、図1に示す正面側を本発明の定置式エンジン発電装置における操縦側とし、図2に示す背面側を同じく非操縦側とし、左右方向は正面視におけるものとする。
また、図1における左右方向を幅方向とし、同じく紙面に対して垂直方向を奥行き方向とする。
まず、本発明の定置式エンジン発電装置1(以下、単に「エンジン発電装置1」とする。)の全体構成について、図1〜図3を用いて説明する。
エンジン発電装置1は、ベース3とともに直方体状となるパッケージ2内に各種機器類を収納するパッケージ型に構成されている。
パッケージ2内は、水平方向に設けられる隔壁4によって上下二室に区画されており、下側は機関室5とされている。一方上側は隔壁6によって左右二室に区画されており、左側は排気消音器室7とされ、右側は換気室8とされている。
前記機関室5内においては、6気筒水冷式エンジン9(以下、「エンジン9」とする。)と、このエンジン9のクランク軸C(中心線のみ図示)に結合されて回転駆動する発電機10とが設置されている。これらエンジン9及び発電機10は、ベース3上に載置される共通台床11上に防振ゴム等を介して防振支持される。エンジン9の排気口には、隔壁4を上下方向に貫通する排気管20の一端が接続されており、この排気管20の他端は排気消音器室7内に収納される排気消音器30に接続されている。
また、同じく機関室5内には、発電機盤12及び補機盤13から構成されエンジン発電装置1の運転を制御する制御ユニット14、エンジン9の燃料タンク15、エンジン9の潤滑油系及び冷却水系を構成する各種機器類がそれぞれ配設され、パッケージ2内に収納されている。また、隔壁4における機関室5と換気室8とを区画する部分には、空気導入口が形成されるとともに、この空気導入口を覆うように換気ファン81・81が固定されている。この換気ファン81・81が駆動されると、パッケージ2の正面側及び背面側に形成される吸気口に取り付けられる吸気ダクト2aを介して換気室8内に空気(外気)が取り込まれ、機関室5内に導かれる。また、換気室8内には、防音スプリット82が隔壁4上に取り付けられ収納されている。
本発明のエンジン発電装置1においては、前記エンジン9を空気始動式としている。空気始動式のエンジン9に対しては、エアコンプレッサ16と、エアドライヤ17と、エアタンク18とを含む空気始動系が具備される。この空気始動系においては、エアコンプレッサ16にて圧縮される圧縮空気が、エアドライヤ17にて除湿され、エアタンク18内に送り込まれ充填される。このエアタンク18内の圧縮空気が、エンジン9のエアモータ(エアスタータ)を駆動する。そして、本構成においては、エアコンプレッサ16、エアドライヤ17、エアタンク18を含む空気始動系を前記パッケージ2内に収納している。
このように、エンジン9の空気始動系をパッケージ2内に収納することにより、この空気始動系が別ユニット化されてパッケージ2外にて設置されることなく、パッケージ型のエンジン発電装置において空気始動式エンジンを採用する場合にもワンユニット化を実現することができる。これにより、エンジン発電装置1の設置現場における現地施工の簡略化や省スペース化を図ることができる。
また、前述したように、パッケージ2内にエンジン9、発電機10、制御ユニット14、燃料タンク15、エンジン9の潤滑油系及び冷却水系を構成する各種機器類がそれぞれ配設されて収納されることによりワンユニット化が図られているが、さらに、本発明のエンジン発電装置1においては、エンジン9冷却用のラジエータ55及びラジエータファン56を備える冷却装置が、パッケージ2外にて別ユニット化されている。すなわち、パッケージ2外においてベース53とともに直方体状となるパッケージ52内に、ラジエータ55及びラジエータファン56等が収納されることにより、これらにより構成される冷却装置がパッケージ型に構成されるとともに別ユニット化されている。具体的には、図1における矢印Xの位置で、パッケージ2とパッケージ52とが幅方向に分離可能となっている。
ラジエータ55は、パッケージ52内において正面側及び背面側の側面に沿ってそれぞれ配設され、これら正面側のラジエータ55と背面側のラジエータ55との間にパッケージ2内から延設される冷却水回路に連通するとともに各ラジエータ55に連通する冷却水回路57が配管されている。そして、これらラジエータ55の上方にラジエータファン56が配設されている。
また、冷却装置を構成するパッケージ52は、その奥行き方向の寸法をパッケージ2の奥行き寸法と略同一に構成されており、図1〜図3に示すように、パッケージ52がパッケージ2に対して隣接配置される場合は、パッケージ2とパッケージ52とにより外観上一体の直方体状が形成される。言い換えると、冷却装置を構成するパッケージ52は、パッケージ2に対して一体的に配置される必要はなく、パッケージ2とは分離して設置することが可能となっている。
このように、エンジン9冷却用の冷却装置を、パッケージ2外にて別ユニット化することにより、冷却装置を構成するラジエータ55及びラジエータファン56が一つのパッケージ2内に収納されることによるパッケージ2(及びベース3)の幅方向(長手方向)の寸法の拡大を回避することができる。これにより、エンジン発電装置1設置時の自由度が向上し、該エンジン発電装置1を設置するために最低限必要なスペースが縮小され、スペース確保についての柔軟な対応が可能になるとともに、エンジン発電装置1の搬送性を向上することができる。
このような構成のエンジン発電装置1の具体的な設置の態様としては、例えば図4及び図5に示すような場合が考えられる。なお、以下の説明においては、パッケージ2内に収納されるユニット構成をパワーユニットPとして「パッケージ2」を「パワーユニットパッケージ2」とし、パッケージ52内に収納されるユニット構成の冷却装置をラジエータユニットRとして「パッケージ52」を「ラジエータユニットパッケージ52」とする。
図4及び図5は、それぞれ二組のエンジン発電装置1を設置する場合であるが、まず、図4においては、パワーユニットPとラジエータユニットRとが隣接配置された状態の二組のエンジン発電装置1が、その幅方向に平行に配置される場合を示している。この場合、図1〜図3に示すように、パワーユニットPとラジエータユニットRとにより外観上一体の直方体状が形成される。このような設置パターンは、長方形状に区画される設置スペースの場合に適している。
また、図5においては、パワーユニットPとラジエータユニットRとが、分離して設置される場合を示している。この場合、ラジエータユニットRは、パワーユニットPに対してその幅方向が直角方向に配置されている。このような設置パターンは、正方形状に区画され、エンジン発電装置1に対して幅方向及び奥行き方向に余裕のある設置スペースの場合に適している。なお、図4及び図5中において、24は排ガスボイラを示しており、排気管23を介して導かれるエンジン9から排出される排気ガスが、排ガスボイラ24により蒸気として熱が回収され暖房などに利用される。また、25は二組のエンジン発電装置1を接続して制御する接続盤を示している。
このように、分離して設置可能なパワーユニットPとラジエータユニットRとから構成されるエンジン発電装置1における各機器類の配置構成について以下において説明する。
パワーユニットパッケージ2内において、エンジン9の上方空間である前記排気消音器室7には、例えば吸音膨張減衰式の排気消音器30が収納されている。排気消音器30は、断面形状が円形となる筒状の二つの消音室(一次消音室31a・二次消音室31b)を有する二段構成とされており、各消音室31a・31bが、その長手方向がエンジン9のクランク軸Cの軸方向に対して平行となるように配置されている。そして、各消音室31a・31bのうち、一次消音室31aが非操縦側に配置され、二次消音室31bが操縦側に配置される(図3参照)。
非操縦側に配置される一次消音室31aの一端側に形成される排気入口には、エンジン9から延設される前記排気管20が接続されており、一次消音室31aの他端側には連通管32が接続され、この連通管32を介して一次消音室31aが操縦側に配置される二次消音室31bと連通されている。二次消音室31bには、排気消音器30の排気出口を構成する排気管33が接続されており、この排気管33には、例えば、前述したように図4及び図5に示す排ガスボイラ24等と連通する排気管23が接続される。エンジン9の駆動により発生する排気ガスは、排気管20を介して排気消音器30内に導かれ、一次消音室31a・二次消音室31bを通過して消音され、排気管33を介してエンジン発電装置1の外部へ排出される。
このように、排気消音器30を一次消音室31a及び二次消音室31bを有する二段構成とすることにより、エンジン9の排気音が二段階で減衰されることとなるので、より高い消音効果を得ることができ、パワーユニットパッケージ2の外部に漏れるエンジン9の排気音の低騒音化を実現することができる。さらに、各消音室31a・31bにおいてそれぞれ所定の減衰量を設定することも可能となる。
また、排気消音器室7内に収納される排気消音器30を構成する二つの消音室31a・31bのうち、一方を操縦側、他方を非操縦側に振り分けて配置することにより、パワーユニットパッケージ2内のスペースを有効に利用することができ、パワーユニットパッケージ2の全体的な高さを抑えることができる。
ところで、エンジン発電装置1のような定置式の装置においては、エンジン9についての現地整備やメンテナンスが定期的に行われるが、この際、エンジン9内のピストンを抜き出し、このピストンの掃除や交換、これにともなうシリンダライナやピストンリングの掃除や交換などが行われる。そこで、前述したように、操縦側と非操縦側に振り分けて配置される排気消音器30の各消音室31a・31bが、エンジン9のクランク軸Cに対して略対称に配置され、各消音室31a・31bの間にエンジン9のピストン抜出し用のチェーンブロック(巻上機)取付バー34(以下、単に「取付バー34」とする。)がクランク軸Cの軸方向に対して平行に配置して設けられる(図6参照)。
機関室5内におけるエンジン9は、そのクランク軸Cの位置がパワーユニットパッケージ2内における奥行き方向に対して略中央位置となるように配置されており、排気消音器30の各消音室31a・31bは、クランク軸Cに対して対称に配置されている。そして、排気消音器室7内にて平行に互いに近接配置される両消音室31a・31bの間において、断面形状が円形である筒状の外周面の互いに近接する側の下部に形成される空間に、取付バー34が架設される。この両消音室31a・31b間の下部の空間は、各消音室31a・31bがクランク軸Cに対して略対称に配置されることから、クランク軸Cの上方に形成されることとなる。つまり、取付バー34は、エンジン発電装置1において幅方向に連設されるエンジン9の各気筒内に収納されるピストンを抜き出すためのチェーンブロック(巻上機)35を取り付けるためのものであるため、前述したようにクランク軸Cの略真上に配置される必要がある(図7参照)。
エンジン9のピストンを抜き出す際の具体的な態様としては、図7に示すようになる。すなわち、チェーンブロック35の本体36に固設される上フック37が取付バー34に係止されることにより、チェーンブロック35が取付バー34に取り付けられる。本体36にはロードチェーン(図示略)の一端が固定されており、このロードチェーンの他端にはピストン39が係止される下フック38が取り付けられる。また、ピストン39のピストンヘッド39aの上面にはアイボルト等の係止具40が取り付けられ、この係止具40に前記下フック38が係止される。この状態で、本体36から垂下するハンドチェーン(図示略)を操作することにより(電動式の場合はボタン操作等することにより)、ロードチェーンを巻き上げ、エンジン9の各気筒内からピストン39を上方へ抜き出す。
従来においては、例えば、排気消音器の消音室は、その断面形状が楕円などで構成されていたので、排気消音器の下側に十分なスペースが得られなかったが、本構成のように、排気消音器30の二つの消音室31a・31bを筒状に構成するとともにこれらの間に取付バー34を設けることにより、エンジン9のクランク軸Cの上方であって排気消音器30の下側に十分な作業スペースを確保することができるので、エンジン9のピストン39の抜出し作業の際の作業性の向上が図れる。
また、前述したようなピストン39の抜出し作業を行う際は、少なくともエンジン9のクランク軸Cの上方部分において、機関室5と排気消音器室7とが連通される必要がある。このため、図6に示すように、機関室5と排気消音器室7とを区画する隔壁4には、そのエンジン9の上方に位置する部分に、エンジン9の上方空間を区画する天板44が取外し可能に設けられている。具体的に本実施形態においては、天板44は、隔壁4におけるエンジン9の上方位置となる奥行き方向の略中央部に設けられており、幅方向に略三等分され、それぞれが隔壁4に対して取外し可能に設けられている。なお、隔壁4に設けられる天板44は、該天板44を取り外した状態で、エンジン9のピストン39の抜出し作業の際に十分な作業スペースが確保できるような形状や面積を有していればよく、その形状や分割方法は本実施形態に限定されるものではない。
このように、隔壁4に天板44を取外し可能に設けることにより、エンジン9のピストン39を抜き出すためのスペースを機関室5内に確保する必要がなくなるので、パワーユニットパッケージ2の全体としての高さを抑制することができる。
また、取外し可能に設けられる天板44は、下方に取り外すことができるように構成されている。つまり、天板44は、機関室5側から取り外すことができる。具体的には、天板44を隔壁4に固定するための固定部などが機関室5側から操作することができるように設けられ、天板44を機関室5の内側に落とし込むようにして取り外す構成とされている。
このように、天板44を下方に取り外すことができるように構成することにより、エンジン9のピストン39の抜出し作業を行う際、天板44を取り外すために排気消音器室7内の排気消音器30を取り外す必要がなくなり、作業性の向上が図れる。
また、エンジン9についての現地整備やメンテナンスに関しては、前述したピストン39の抜出し作業にともない、または個別の作業として、クランク軸Cのクランクジャーナルを支持する主軸受メタル(ジャーナルメタル)や、クランク軸Cとピストンとを連結するコンロッドの軸受部に用いられるクランクピンメタル(コンロッドベアリング)の点検・交換などのメンテナンスが定期的に行われる(以下、主軸受メタル及びクランクピンメタルをまとめて「メタル軸受」という。)。そのため、メタル軸受のメンテナンススペースが、パワーユニットパッケージ2内におけるエンジン9に対して操縦側または非操縦側の少なくとも一側に確保されている。
エンジン9のシリンダブロックの両側面(操縦側及び非操縦側)には、それぞれシリンダブロック内と外部とを連通させる開口部が気筒ごとに設けられており、この開口部を覆うための点検窓9bがシリンダブロックにボルト等の締結具により取り付けられている。そして、前記メタル軸受のメンテナンスを行う際には、これら点検窓9bを取り外してエンジン9の側面側から作業を行う。そこで、メタル軸受のメンテナンススペースとして、パワーユニットパッケージ2内におけるエンジン9の操縦側に、機器類が配設されてない空間としてのメンテナンススペースSが確保されている(図10参照)。
具体的には、エンジン9の各気筒全ての点検窓9bに対して、その前側には機器類が配設されず、点検窓9bを着脱するための作業や、エンジン9のシリンダブロック内のメタル軸受の点検・交換などを行うための作業がスムーズに行われるに十分な作業スペースが確保される。そして、このパワーユニットパッケージ2内におけるメタル軸受のメンテナンススペースには、例えば、作業を行う際に利用される作業台43などが載置される。なお、点検窓9bはエンジン9の非操縦側の側面にも設けられており、メタル軸受のメンテナンスはエンジン9の両側から行うことが可能であるため、パワーユニットパッケージ2内におけるエンジン9の非操縦側において、前述したような機器類が配設されない空間としてのメンテナンススペースが確保されてもよい。
このように、パワーユニットパッケージ2内にエンジンのメタル軸受のメンテナンススペースを確保することにより、設置現場にてメタル軸受のメンテナンスが行われる際に、他の機器類が邪魔になったり、他の機器類を取り外したりする必要がなく、作業性の向上を図ることができる。
また、エンジン発電装置1においては、パワーユニットパッケージ2内に収納されるエンジン9の空気始動系と、潤滑油系及び冷却水系とが、パワーユニットパッケージ2内における操縦側と非操縦側とに振り分けられて配設されている。本形態においては、空気始動系が操縦側に、潤滑油系及び冷却水系が非操縦側にそれぞれ配設されている。
ここで、エンジン発電装置1における潤滑油系及び冷却水系について説明する。まず、潤滑油系について図8を用いて説明する。エンジン9のオイルパン9c内に貯溜されている潤滑油は、供給ポンプ45により汲み上げられ、潤滑油フィルタ46を介してエンジン9の各部へと供給される。また、オイルパン9cには、その潤滑油量を補うための補助タンク(循環タンク)50が接続されており、この補助タンク50内の潤滑油もエンジン9の各部へ供給される潤滑油として循環されている。すなわち、オイルパン9c内の潤滑油は、モータポンプ48によりバイパスフィルタ49を介して補助タンク50へと導かれる。ここで、潤滑油がバイパスフィルタ49を介することにより、オイルパン9cからの潤滑油内の不純物などが除去され潤滑油の劣化が抑制されている。そして、この補助タンク50内の潤滑油が再びオイルパン9c内へと戻される。このように、オイルパン9c内の潤滑油量と補助タンク50内の潤滑油量との合計が、エンジン9を循環する潤滑油の総量となる。さらに、この潤滑油系においては、長期使用などにより消費される潤滑油を補給するための補給タンク51が備えられている。この補給タンク51は、オイルパン9cに接続されており、オイルパン9c内の潤滑油の液面を自動補給装置51aにより検知して自動的にオイルパン9c内へと潤滑油を補給する構成となっている。また、この潤滑油系においては、エンジン9の起動前やエンジン9が長時間停止される場合などに、摺動部の焼付き等を防止するため、潤滑油を強制的に循環させてエンジン9の各部へと供給するためのプライミングポンプ(潤滑油ポンプ)60が備えられている(図2参照)。
次に、冷却水系について図9を用いて説明する。冷却水系においては、エンジン9のウォータジャケット9a、エアクーラ(インタークーラ)41、潤滑油クーラ42に前記ラジエータ55によって冷却される冷却水が前記冷却水回路57を構成する一連のメイン配管65a及び65bにより循環供給されるようになっている。この冷却水系においては、ラジエータユニットRにおける各ラジエータ55は、ウォータジャケット9aに循環供給される冷却水用のラジエータ55a(以下、「ジャケット用ラジエータ55a」とする。)と、エアクーラ41及び潤滑油クーラ42に循環供給される冷却水用のラジエータ55b(以下、「クーラ用ラジエータ55b」とする。)とに割り当てられており、これにともない冷却水回路57も各ラジエータ55a・55bそれぞれについて循環する構成となっている。
つまり、ジャケット用ラジエータ55aに対しては、ウォータジャケット9aを冷却した冷却水がメイン配管65aを介して供給され、クーラ用ラジエータ55bに対しては、エアクーラ41及び潤滑油クーラ42を冷却した冷却水がメイン配管65bを介して供給される。ここで、メイン配管65aには、ジャケット用冷却水ポンプ58aが介装されるとともにウォータジャケット9aの熱回収用のジャケット用熱交換器59aが接続され、メイン配管65bには、クーラ用冷却水ポンプ58bが介装されるとともにエアクーラ41及び潤滑油クーラ42の熱回収用のクーラ用熱交換器59bが接続される。これら各熱交換器59a・59bにおいては、冷却水側から吸熱することにより温水などが形成される。なお、この冷却水系におけるジャケット用ラジエータ55aとクーラ用ラジエータ55bとに割り当てられる台数は、要求される冷却能力などに応じて変更可能に構成される(図9においてはそれぞれ同数(6台)のラジエータを割り当てた状態を示している。)。ここで、冷却効率向上などの観点から、ラジエータユニットパッケージ52における外側のラジエータが優先的にクーラ用ラジエータ55bに割り当てられることが好ましい。
このような潤滑油系、冷却水系及び前述した空気始動系それぞれを構成する機器類については、図10などに示すように、パワーユニットパッケージ2内において次のように配設されている。空気始動系に関しては、その構成要素であるエアコンプレッサ16、エアドライヤ17及びエアタンク18が、それぞれパワーユニットパッケージ2内における操縦側に重点的に配設されている。特に、本形態においては、エンジン9の左側(発電機10の非連結側)に配設されている。また、潤滑油系に関しては、その構成要素であるバイパスフィルタ49、プライミングポンプ60、補助タンク50及び補給タンク51が、パワーユニットパッケージ2内における非操縦側に重点的に配設されている。特に、本形態においては、補助タンク50及び補給タンク51は、パワーユニットパッケージ2内における右側端に配設されている。そして、冷却水系に関しては、その構成要素であるジャケット用冷却水ポンプ58a、クーラ用冷却水ポンプ58b、ジャケット用熱交換器59a及びクーラ用熱交換器59bが、パワーユニットパッケージ2内における非操縦側に重点的に配設されている。特に、本形態においては、パワーユニットPに対してラジエータユニットRが設けられる側、即ちパワーユニットパッケージ2内における左側に配設されている。
このように、エンジン発電装置1における各系をパワーユニットパッケージ2内の操縦側と非操縦側とに振り分けて配設することにより、各系のメンテナンス作業を行う際に、パワーユニットパッケージ2の両側を往来する必要がなくなり、作業性を向上することができる。
さらにここで、潤滑油系における補助タンク50及び補給タンク51(以下、まとめて「潤滑油タンク」ともいう。)は、エンジン9に対して発電機10を隔てるとともに、パワーユニットパッケージ2内の端部に配置されている。すなわち、本形態においては、潤滑油タンクがパワーユニットパッケージ2の右側面に沿うようにして配置されている。具体的には、図11に示すように、ベース3上に載置される補助タンク50の上に補給タンク51が載置される。このように、潤滑油系の潤滑油タンクを配置することにより、パワーユニットパッケージ2内における換気性の向上が図られている。
すなわち、パワーユニットパッケージ2内においては、その右上部に設けられる換気室8の換気ファン81・81によって空気(外気)が取り込まれ、機関室5内の右側から左側へ向けて外気が導かれる。そして、図1〜図3等に示すようにパワーユニットPとラジエータユニットRが隣接配置される場合は、機関室5からの外気はパワーユニットパッケージ2の左側面に設けられる排気口2bを介してラジエータユニットパッケージ52内のラジエータファン56により排風ダクト2cを介して外部に排出される。また、図5等に示すようにパワーユニットPとラジエータユニットRとが分離して設置される場合は、換気ファン81・81によって取り込まれる外気は、機関室5内から前記排気口2bまたはパワーユニットパッケージ2の上面の左側に設けられる排気口2dに設けられる排風ダクト等を介して外部へと排出される。
つまり、一般的に直方体状の通風抵抗となる潤滑油タンクを、パワーユニットパッケージ2内で換気ファン81・81よりも端部側で吸気または排気口と反対側に配置することにより、換気ファン81・81によりパワーユニットパッケージ2内に取り込まれる外気の通路が妨げられることがなく、パワーユニットパッケージ2内の換気性の向上を図ることができる。さらに、エンジン9に対して発電機10を隔てた位置に配置することで、エンジン9からの輻射熱の影響を受けにくくなり、潤滑油タンク内の潤滑油の温度上昇を抑制することができる。
また、前述したように、エンジン発電装置1は、例えば図4及び図5に示すように二台以上複数台設置される場合がある。このような場合、互いのエンジン9の空気始動系を連通するため、パワーユニットパッケージ2のベース3には、空気始動系に連通する連通口62が設けられる。この連通口62には、空気始動系のエアコンプレッサ16とエアタンク18との間の配管から分岐され配管が接続される。つまり、この連通口62を介して空気始動系が外部と連通することができるように構成される。
例えば、エンジン発電装置1においてパワーユニットP及びラジエータユニットRが図4に示すように配置される場合は、それぞれの連通口62が配管63によって連通されることにより、互いの空気始動系が連通される。この場合、具体的には、一方のエンジン発電装置1における連通口62は、ベース3の正面側の側面に(図1中62a参照)、他方のエンジン発電装置1における連通口62は、ベース3の背面側の側面に(図2中62b参照)それぞれ設けられる。つまり、それぞれのエンジン発電装置1における空気始動系から連通口62までの内部配管を短くするという観点からは、ベース3に設けられる連通口62はそれぞれにおける空気始動系(特にエアタンク18)の近傍であることが好ましく、また、互いの連通口62を接続する外部配管を短くするという観点からは、例えば図4に示すようにエンジン発電装置1が互いに平行に配置される場合は、ベース3の互いに対抗する位置に設けられることが好ましい。なお、図5に示すようにパワーユニットPとラジエータユニットRとを分離して配置する場合は、連通口62をそれぞれのベース3の右側の側面に設けることもできる(図7中62c参照)。
すなわち、ベース3に設けられる連通口62は、エンジン発電装置1の設置時における配置によって、配管63の長さや排ガスボイラ24の位置などが考慮され、その設ける位置や個数などが決められる。また、この連通口62は、使用されない場合やエンジン発電装置1が一台のみ設置される場合は、外部との連通が断たれるようにプラグ等により塞ぐことができるように構成され、それぞれの空気始動系における気密が保持される。
このように、空気始動系と連通する連通口62を設けることにより、例えば二台のエンジン発電装置1を設置する場合、一方の空気始動系のエアコンプレッサ16が何らかの原因で機能しなくなった場合など、他方のエアコンプレッサ16によりエアタンク18への空気の充填が可能となる。すなわち、互いのエアコンプレッサ16の併用が可能となる。これにより、それぞれの空気始動系において予備のエアコンプレッサ等を備える必要がなくなり、空気始動系の相互バックアップが可能となる。
また、パワーユニットパッケージ2内においては、空気始動系のエアコンプレッサ16及び潤滑油系のプライミングポンプ60が、パワーユニットパッケージ2内における制御ユニット14に対して幅方向に少なくとも発電機10を隔てた位置に配置されている。制御ユニット14を構成する発電機盤12及び補機盤13は、図1などに示すように、パワーユニットパッケージ2内において右側の端部に配置される。つまり、機関室5内において左右方向略中央位置に配置されるエンジン9の右側に発電機10が配置され、この発電機10のさらに右側に制御ユニット14が配置される。そして、この制御ユニット14に対して、エアコンプレッサ16は幅方向に発電機10及びエンジン9を隔てた位置(エンジン9の左側位置)に配置され、プライミングポンプ60は幅方向に発電機10を隔てた位置(エンジン9の操縦側位置)に配置されている。
このように、エアコンプレッサ16及びプライミングポンプ60を、パワーユニットパッケージ2内において制御ユニット14から離間した位置に配置することにより、電動モータ等によって駆動されるエアコンプレッサ16及びプライミングポンプ60から発生する電磁ノイズの制御ユニット14への影響を低減することができる。これにより、制御ユニット14によるエンジン発電装置1の安定した制御が可能となる。
また、前述したように、空気始動系は、パワーユニットパッケージ2内における操縦側、特にエンジン9の左側に重点的に配設される。そのため、空気始動系を構成するエアコンプレッサ16と、エアドライヤ17と、エアタンク18とはユニット化されることが好ましい。例えば、図12に示すように、一つの取付台64上にエアコンプレッサ16と、エアドライヤ17と、エアタンク18とを載置固定し、これを空気始動系ユニット70として予めパワーユニットパッケージ2外にて構成する。そして、パワーユニットパッケージ2内に機器類を配設する際、取付台64をベース3に載置固定することにより、空気始動系ユニット70をパワーユニットパッケージ2内に組み付け、エアタンク18からの配管18aを前記エアモータへ導かれる配管に接続する。
このように、空気始動系をユニット化することにより、パワーユニットパッケージ2内に空気始動系をコンパクトに収納できるとともに、空気始動系を組み付ける際の作業性を向上することができる。
ところで、前記燃料タンク15は、図14に示すように、該燃料タンク15からエンジン9へ燃料を供給するフィードポンプ71の近傍かつ該フィードポンプ71の上方に配置されている。ここで、燃料タンク15を含むエンジン9の燃料供給系について図13を用いて説明する。エンジン9へ供給される燃料は、いわゆる燃料小出し槽である燃料タンク15内に貯溜されている。この燃料タンク15内の燃料は、フィードポンプ71により吸入されエンジン9内へと供給される。この際、燃料タンク15からの燃料は、油水分離器72を介することにより燃料内に混入した水分が分離され、さらに燃料フィルタ73を介することにより細かい不純物などが除去される。フィードポンプ71により供給される燃料は、エンジン9に付設される燃料噴射ポンプ74に導入され、この燃料噴射ポンプ74により燃料噴射弁を介して燃焼室へと噴射される。燃料噴射ポンプ74からの余剰燃料は燃料タンク15へと戻される。また、燃料タンク15は、例えば地下に埋設される大容量の燃料主タンク(図示略)と接続されており、燃料タンク15内の燃料量が少なくなれば燃料主タンクより補給され、一定量より多くなると燃料主タンクへと戻される。このような燃料タンク15内の燃料量は、燃料タンク15に設けられるレベルスイッチ15aにより発電機盤12によって検知され制御される構成となっている。
こうしてエンジン9に供給される燃料を貯溜する燃料タンク15が、フィードポンプ71の近傍かつ該フィードポンプ71の上方に配置されている。具体的には、図14に示すように、フィードポンプ71は、エンジン9の左側面に付設されており、このフィードポンプ71の左上方に燃料タンク15が配置されている。なお、前記油水分離機72及び燃料フィルタ73の配置は図14に示すごとくである。
このように、フィードポンプ71の近傍かつ上方に燃料タンク15を配置することにより、燃料タンク15からその下方に配置されるフィードポンプ71へ導かれる燃料に重力(自重)による圧力が加わるので、燃料タンク15からフィードポンプ71への配管圧損を低減することができ、フィードポンプ71による燃料タンク15からの燃料の吸引を補助することができる。