JP4299233B2 - シールド機 - Google Patents

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Description

本発明は、道路トンネルにおける合流部・分岐部などのトンネル断面に部分拡幅部を備えるトンネルを構築するために用いるシールド機に関する。
シールドトンネルは、発進立坑から到達まで同じ断面で掘削するのが一般的である。そして、道路トンネルの非常駐車帯のように途中でトンネル断面拡幅が必要な場合には、例えば初めから全線にわたって拡幅部の断面を包括する断面が大断面で掘削するのが従来一般的であった。
しかし、当該拡幅区間はトンネル全線において極かぎられた1区間でありながらトンネル全線の断面が大きくなることから、掘削土量が多く、環境への負荷が大きくなり、覆工及びシールド機も大きくなり、不経済であるなどの問題があった。
このため、部分的にトンネルを拡幅する工法として、例えばES−Tube工法、クレセント工法等がある。
ES−Tube工法は、カッタビットの径を伸縮させる伸縮カッタ機構と、シールド機胴体の両側部を一時的に張出すシールド断面拡大機構とを備えるシールド機を使って、道路トンネルの非常駐車帯などを施工する技術である(非特許文献1参照)。
クレセント工法は、シールド機胴体に組み込んだ球体に内蔵したカッタ装置により非常駐車帯などを掘削していき、本体セグメント外側に三日月形セグメントを組み立て、本線部と拡幅部を結合する技術である(非特許文献2参照)。
シールドの掘削断面を自在に拡大・縮小できる「ES−Tube(イー・エス チューブ)」工法を開発〜大深度地下に建設する電力・ガス用などの長距離シールド工事で威力を発揮〜「2000年8月3日掲載」<http://www.shimz.co.jp/news_release2000/364.html> 非常駐車帯と本線トンネルを1台のシールド機で構築−拡幅分岐シールド「クレセント」工法の開発−「2003年5月22日掲載」<http://www.taisei.co.jp/release/2003/may/may04.html>
しかし、ES−Tube工法では、カッタビットの径を伸縮させる伸縮カッタ機構を備えることから、シールド機前面のカッタ部分が複雑で高価なものとなってしまう問題がある。
また、クレセント工法では、球体に内蔵したカッタ装置を前胴に対し回転可能に組み込むことから、複雑で高価なものとなってしまう問題がある。
本発明の課題は、トンネルの拡幅部を含む部分拡幅部を掘削するシールド機であって、部分拡幅用カッタを突出動作させるための構成を簡単で安価なものにすることである。
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、例えば図1から図3、図5から図7に示すように、本体前面にカッタ4を備えたシールド機であって、本体周面の開口にカッタ面を前方へ向けて格納可能で、後側を支点に前側が回動して本体周面(スキンプレート)1から外側に突出可能な部分拡幅用カッタ20と、この部分拡幅用カッタ20の前側部と本体内部との間に設けられ、部分拡幅用カッタ20を本体周面(スキンプレート)1から外側に突出動作させ且つ本体内に格納動作させるカッタ突出動作機構31と、例えば図1、図5から図8に示すように、前部に形成されるチャンバ22に設けるカッタ支持面板軸受23に支持されるカッタ支持面板21の前面に前記部分拡幅用カッタ20を設けるとともに、当該部分拡幅用カッタ20を駆動するカッタ駆動機構25を内蔵する回動ケース30と、前記本体周面の開口に設けられ、前記回動ケース30及び前記カッタ突出動作機構31を格納する格納ケース40とを備え、格納動作時は、前記格納ケースの後部で前記本体外面側に設けられた回動軸32を支点として前記回動ケースが回動して、前記格納ケースに前記回動ケース及び前記カッタ突出動作機構を格納するとともに、前記部分拡幅用カッタを前方へ向けて格納することを特徴とする。
このように、本体周面から突出する部分拡幅用カッタとその突出格納動作を行うカッタ突出動作機構を備えるシールド機なので、前面カッタ部分の変更が不要で、球体に内蔵したカッタ装置を前胴部分に組み込む必要もなく、前面カッタにより掘進しながら、本体周面から部分拡幅用カッタを突出させて部分的に部分拡幅部を掘削できる。また、所定の部分拡幅部掘削後は、カッタ突出動作機構により部分拡幅用カッタを本体内に格納できる。
そして、本体内にカッタ面を前方へ向けて格納状態の部分拡幅用カッタを、その前側と本体内部との間に設けたカッタ突出動作機構の駆動で後側の支点回りに前側を回動させることにより本体周面から外側に突出させる動作方式のため、前面カッタによる掘進中での部分拡幅用カッタの突出動作が容易に行えて、シールド掘進中に部分拡幅部を確実に掘削できる。
しかも、部分拡幅用カッタを本体に対し後側の支点回りに前側が回動して本体周面から外側に突出するように組み付け、その部分拡幅用カッタの前側と本体内部との間にカッタ突出動作機構を設けるため、構成が簡単にして安価なものとなる。
また、部分拡幅用カッタの突出・格納が繰り返し行えることにより、複数の拡幅部を施工することができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のシールド機であって、例えば図1及び図5に示すように、前記カッタ突出動作機構31は、前記部分拡幅用カッタ20の前側部と前記本体内部との間に架設された複動ジャッキであることを特徴とする。
このように、部分拡幅用カッタの前側部と本体内部との間に架設した複動ジャッキの駆動により、前面カッタによる掘進中に部分拡幅用カッタが前側から確実に突出動作する。また、掘削中に部分拡幅用カッタが地山から受ける外力は複動ジャッキにより受け止められる。
請求項に記載の発明は、請求項に記載のシールド機であって、例えば図5に示すように、前記回動ケース30の回動動作時に前記格納ケース40の内周面と前記回動ケース30の外周面とに当接して案内するスクレーパ35・43を備えることを特徴とする。
このように、前面に部分拡幅用カッタを支持してカッタ駆動機構を内蔵した回動ケースの回動動作時に、その回動ケース及びカッタ突出動作機構の格納ケースの内周面と回動ケースの外周面とにスクレーパが当接して案内するので、回動ケース外周面及び格納ケース内周面に付着する土砂をスクレーパにより引き剥がして、土砂が本体内部へ入り込むのを防止できる。
請求項に記載の発明は、請求項1からのいずれか一項に記載のシールド機であって、例えば図9に示すように、前記部分拡幅用カッタ20の前記本体に対する回動支点部に止水シール構造(回動軸32・軸受42・軸受メタル46・止水シール47)を備えることを特徴とする。
このように、部分拡幅用カッタの本体に対する回動支点部において、止水シール構造により泥水が本体内部へ入り込むのを防止できる。
本発明によれば、特に前面カッタによる掘進中での部分拡幅用カッタの突出動作が容易に行えて、シールド掘進中に部分拡幅部を確実に掘削できる上、部分拡幅用カッタを本体周面から外側に突出させるための構成を簡単で安価にできるといった利点が得られる。
以下、図を参照して本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。
実施形態において、シールド機は、図1に示すように、スキンプレート1、隔壁2、前面のカッタ支持面板3、カッタ4、コピーカッタ5、チャンバ6、アジテータ7、カッタ支持面板軸受8、カッタ駆動用電動モータ9、土砂シール10、テールシール11、シールドジャッキ12、エレクタ装置13、送泥管14、排泥管15、後方作業台16、セグメント形状保持装置17、上部用連結セグメント押込装置18、下部用連結セグメント押込装置19、部分拡幅用カッタ20等を備える。
部分拡幅用カッタ20は、シールド機本体内に組み込まれたもので、図3に示すように、スキンプレート1の前部の上部と下部に突出・格納動作可能に備えられている。
すなわち、部分拡幅用カッタ20は、図5に拡大して示すように、カッタ支持面板21の前面に設けられている。カッタ支持面板21は、回動ケース30の前部に形成されるチャンバ22に設けたカッタ支持面板軸受23に支持されており、回動ケース30内にギヤ機構24及びカッタ駆動機構25が組み込まれている。カッタ駆動機構25は実施形態ではカッタ駆動用油圧モータである。
回動ケース30は、図6から図8にも示すように、シールド機本体のスキンプレート1に開口する格納ケース40に組み込まれており、回動ケース30と格納ケース40との間にカッタ突出動作機構31が設けられている。カッタ突出動作機構31は実施形態では油圧式の複動ジャッキである。
回動ケース30は、図示例では後上部において、左右両側の回動軸32を格納ケース40に設けた軸受41により前側が上下方向に首振りするよう回動自在に支持されている。回動軸32には複数の通孔が設けられ、部分拡幅用カッタ20が回転するに必要な油圧源の供給、送排泥水の流通孔として使用される。図5中、26は送泥管・排泥管、27は油圧配管である。
図5において、回動ケース30の後上部が回動軸32を中心とする円弧面33となっていて、格納ケース40内の開口部側には、円弧面33に当接するスクレーパ43が設けられている。
そして、複動ジャッキ31は、格納ケース40内の底部の後部に設けたブラケット44と、回動ケース30の下面の前側に設けたブラケット34との間に架設されている。複動ジャッキ1は、図8に示すように、横方向に3本並べて配置されており、格納時は、実線で示したように収縮状態となっており、これにより回動ケース30及び部分拡幅用カッタ20が格納ケース40内に格納状態にある。
また、格納ケース40の前面は回動軸32の軸受42を中心とする円弧面45となっていて、ブラケット34の前部には、円弧面45に当接するスクレーパ35が設けられている。
ここで、回動ケース30のカッタ突出・格納時における格納ケース40と摺動することによる配管類の保護として、管のホース化や回転継手の採用によりフレキシブル対応としている。図8中、28は送泥管・排泥管26のホース、29は回転継手であり、図示は送排泥水管の対応であるが、油圧配管も同様の機構で対応できる。
図9は図8に矢印Aで示される軸受部の止水シール構造を拡大して断面で示したもので、回動軸32の軸受42の内周において、軸受メタル46の両側にOリングやパッキングによる止水シール47が設けられている。
以上のようにして部分拡幅用カッタ20を備えるシールド機に装備される後方作業台16には、図1に示したように、上部用連結セグメント押込装置18及び下部用連結セグメント押込装置19が備えられている。上部用連結セグメント押込装置18は後方作業台16上に固定式のもので、下部用連結セグメント押込装置19は後方作業台16の下方に配置される可動式のものであり、図4にも示すように、前後方向及び左右方向いずれも複数の油圧ジャッキにより構成されている。
次に、以上のシールド機によるトンネルの合流部・分流部構築手順を説明する。
まず、通常は前面のカッタ4によりトンネルを掘進していくとともに、後側のエレクタ装置13によりセグメントを組立ててセグメントリング101を覆工していく。
そして、合流部・分流部を施工する開始時点に達すると、前面のカッタ4による掘進は継続するとともに、複動ジャッキ31を伸張動作させて、スキンプレート1前部の部分拡幅用カッタ20を上下に同期して突出動作させて地山に張出すとともに、カッタ駆動用油圧モータ25の駆動でギヤ機構24を介して回転駆動されるカッタ支持面板21の部分拡幅用カッタ20により上下の部分拡幅部掘削を開始する。
部分拡幅部掘削は、図1及び図5に仮想線で示したように、複動ジャッキ31の伸張動作により回動ケース30が回動軸32を支点とし上方に回動して、部分拡幅用カッタ20が回転しながらスキンプレート1から上下に突出し始める。この時、部分拡幅用カッタ20が地山から受ける推進方向に対する外力は横並び3本の複動ジャッキ31と両側の回動軸32及び軸受42により受け止められる。なお、部分拡幅用カッタ20の突出を容易にするため、カッタ支持面板21にはコピーカッタを備えても良い。
そして、部分拡幅用カッタ20による上下の部分拡幅部掘削施工に対応する区間において、エレクタ装置13により上下に鋼製セグメント102をセグメントリング101と同形体を覆工していく。鋼製セグメント102は連結セグメント103を上下方向にスライド動作可能に組み込んだものである。
続いて、後方作業台16において、シールド機が進行するに伴いシールドテール(シール)11から放出された(地山に残置された)時点で、即時に上部用連結セグメント押込装置18及び下部用連結セグメント押込装置19の油圧ジャッキの伸張動作によって、上下の鋼製セグメント102内から連結セグメント103を掘削部分拡幅部に押し込んでいく。
以上の部分拡幅部掘削を伴う掘進及び覆工は所定区間、すなわち、合流部・分流部の設計長に到達するまで継続して行われる。
そして、合流部・分流部の設計長に到達した時点で、部分拡幅用カッタ20を複動ジャッキ31の収縮動作によりスキンプレート1内に格納して、通常の掘進を行うとともに、鋼製セグメント102を用いない通常のセグメントだけを組立ててセグメントリング101を覆工していく。
以上の部分拡幅部掘削を伴う掘進及び覆工は、同様構成で例えばサイズが大小異なるシールド機を用いて、本線トンネルの隣にランプトンネルを並べて施工する。
図10はトンネル合流部・分流部の施工例を示すもので、Tは本線トンネル、Rはランプトンネルである。
まず、覆工の完了した当該拡幅区間において、覆工トンネル内部より、本線トンネルTとランプトンネルRの間において、上下の地山に対して薬液注入工111を施す。
次に、上下の薬液注入工111において、本線トンネルT及びランプトンネルRの連結セグメント103の間に長尺鋼管フォアパイリングによるアーチ状の支保工112を施工する。
そして、本線トンネルT及びランプトンネルRの間において、上下の支保工112間の地山を掘削する。
次に、本線トンネルT及びランプトンネルRの連結セグメント103にわたって鋼殻113を設置するとともに、その鋼殻113内へのコンクリート打設工を施工する。
その後、本線トンネルT及びランプトンネルRのセグメントリング101の互いに隣接するセグメントを撤去して、図示のように、本線トンネルTとランプトンネルRを横方向に連続させる。
こうしてシールドトンネルの合流部・分流部の施工を終える。
なお、以上の実施形態においては、本線トンネルトランプトンネルの合流部・分流部の施工用としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、非常駐車帯等の拡幅部の施工であっても良い。
また、実施形態では、泥水式シールドとしたが、土圧式シールドであっても良く、その他、シールド機の具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
本発明を適用した一実施形態の構成を示すもので、シールド機の縦断側面図である。 図1の前面カッタの正面図である。 図1の部分拡幅用カッタが組み込まれた部分の縦断正面図である。 図1のセグメント押込装置が組み込まれた部分の縦断正面図である。 図1の部分拡幅用カッタが組み込まれた部分の拡大図である。 図5の部分拡幅用カッタが組み込まれた部分の平面図である。 図5の部分拡幅用カッタが組み込まれた部分の正面図である。 図5の部分拡幅用カッタが組み込まれた部分の背面図である。 図8に矢印Aで示される軸受部の止水シール構造を示した拡大断面図である。 トンネル合流部・分流部の施工例を示す縦断正面図である。
符号の説明
1 スキンプレート
4 前面カッタ
18・19 連結セグメント押込装置
20 部分拡幅用カッタ
21 カッタ支持面板
22 チャンバ
23 カッタ支持面板軸受
24 ギヤ機構
25 カッタ駆動機構(カッタ駆動用油圧モータ)
26 送泥管・排泥管
27 油圧配管
28 ホース
29 回転継手
30 回動ケース
31 カッタ突出動作機構(複動ジャッキ)
32 回動軸
33 円弧面
34 ブラケット
35 スクレーパ
40 格納ケース
42 軸受
43 スクレーパ
44 ブラケット
45 円弧面
46 軸受メタル
47 止水シール
101 セグメントリング
102 鋼製セグメント
103 連結セグメント
113 鋼殻
T 本線トンネル
R ランプトンネル

Claims (4)

  1. 本体前面にカッタを備えたシールド機であって、
    本体周面の開口にカッタ面を前方へ向けて格納可能で、後側を支点に前側が回動して本体周面から外側に突出可能な部分拡幅用カッタと、
    この部分拡幅用カッタの前側部と本体内部との間に設けられ、部分拡幅用カッタを本体周面から外側に突出動作させ且つ本体内に格納動作させるカッタ突出動作機構と、
    前部に形成されるチャンバに設けるカッタ支持面板軸受に支持されるカッタ支持面板の前面に前記部分拡幅用カッタを設けるとともに、当該部分拡幅用カッタを駆動するカッタ駆動機構を内蔵する回動ケースと、
    前記本体周面の開口に設けられ、前記回動ケース及び前記カッタ突出動作機構を格納する格納ケースとを備え、
    格納動作時は、前記格納ケースの後部で前記本体外面側に設けられた回動軸を支点として前記回動ケースが回動して、前記格納ケースに前記回動ケース及び前記カッタ突出動作機構を格納するとともに、前記部分拡幅用カッタを前方へ向けて格納することを特徴とするシールド機。
  2. 前記カッタ突出動作機構は、前記部分拡幅用カッタの前側部と前記本体内部との間に架設された複動ジャッキであることを特徴とする請求項1に記載のシールド機。
  3. 前記回動ケースの回動動作時に前記格納ケースの内周面と前記回動ケースの外周面とに当接して案内するスクレーパを備えることを特徴とする請求項1に記載のシールド機。
  4. 前記部分拡幅用カッタの前記本体に対する回動支点部に止水シール構造を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のシールド機。
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