a.第1実施形態
以下、本発明の第1実施形態について図面を用いて説明すると、図1は同第1実施形態に係る車両のサスペンション装置の全体を表す概略図である。このサスペンション装置は、サスペンション機構SPと電気制御装置ELを備えている。
サスペンション機構SPは、ショックアブソーバ10とコイルスプリング20を備えている。ショックアブソーバ10は、車輪Wに接続されたロアアーム、ナックル等のばね下部材LAと、車体BD(ばね上部材)との間に介装されていて、シリンダ11の下端にてばね下部材LAに連結されるとともに、同シリンダ11に上下動可能に挿入されたピストンロッド12の上端にて車体BDに固定されている。コイルスプリング20はショックアブソーバ10と並列に設けられている。シリンダ11は、その内周面上を液密的に摺動するピストン13により上下室R1,R2に区画されている。
ピストン13には、可変絞り機構30が組み付けられている。可変絞り機構30は、その一部を構成するアクチュエータ31の作動により、シリンダ11の上下室R1,R2間を連通させる連通路の開度を複数段階に切り換える。この切り換え段階に応じて、連通路の開度が大きくなるとショックアブソーバ10の減衰力がソフト側に設定され、連通路の開度が小さくなると同ショックアブソーバ10の減衰力がハード側に設定されるようになっている。
電気制御装置ELは、アクチュエータ31の作動を制御するマイクロコンピュータ40を備えている。マイクロコンピュータ40は、イグニッションスイッチのオン後の所定時間ごとに図3の減衰力変更制御プログラムを繰り返し実行してアクチュエータ31の作動を制御する。このマイクロコンピュータ40には、ばね上加速度センサ41、ばね下加速度センサ42およびストロークセンサ43が接続されている。
ばね上加速度センサ41は、車体BDに組み付けられて車体BDの絶対空間に対する上下方向のばね上加速度G2を検出する。ばね下加速度センサ42は、ばね下部材LAに組み付けられてばね下部材LAの絶対空間に対する上下方向のばね下加速度G1を検出する。これらのばね上加速度G2およびばね下加速度G1は、ともに上方向が正で表されるとともに下方向が負で表される。ストロークセンサ43は、車体BDとばね下部材LAとの間に設けられて車体BDのばね下部材LAに対するストローク変位Sを検出する。このストロークセンサ43には微分器44が接続されており、同微分器44は前記ストローク変位Sを表す検出信号を微分することにより、同変位Sをばね下部材LAに対する車体BDの上下方向のストローク速度Vに変換する。なお、このストローク速度Vは、車体BDとばね下部材LAとの間隔が広がる方向、すなわち車体BDがばね下部材LAに対して上方に相対移動するときを正とし、車体BDとばね下部材LAとの間隔が狭まる方向、すなわち車体BDがばね下部材LAに対して下方に相対移動するときを負とする。
ここで、本発明の第1実施形態に係るサスペンション装置の作動を説明する前に、図2に示す車両単輪モデルを使ってサスペンション系の運動の概略を説明しておく。
この場合、車体BDおよびばね下部材LAの質量をそれぞれM,mとし、車体BDの絶対空間における上方向の変位量、速度および加速度をX2,V2,G2とし、ばね下部材LAの絶対空間における上方向の変位量、速度および加速度をX1,V1,G1とし、路面変位をX0とする。また、コイルスプリング20のばね定数、ショックアブソーバ10の減衰係数および車輪Wのばね定数をそれぞれKs,Cv,Ktとすれば、車体BDおよびばね下部材LAの運動方程式は、それぞれ下記式(1),(2)を用いて表される。
M・G2=−Ks・(X2−X1)−Cv・(V2−V1) …(1)
m・G1=Ks・(X2−X1)+Cv・(V2−V1)−Kt・(X1−X0) …(2)
ここで、車輪Wの接地荷重変動は、ばね作用を有する車輪Wが路面から受ける力を表す上記式(2)の右辺3項−Kt・(X1−X0)で表すことができる。また、上記式(1)および(2)の両辺をそれぞれ加算すると、下記式(3)となる。
M・G2+m・G1=−Kt・(X1−X0) …(3)
上記式(3)から理解できるように、接地荷重変動−Kt・(X1−X0)は、車体BDの慣性力すなわち質量Mと加速度G2の積と、ばね下部材LAの慣性力すなわちばね下部材LAの質量mと加速度G1の積との和で表される。したがって、接地荷重変動を低減するためには、車体BDの加速度G2およびばね下部材LAの加速度G1を抑制することが有効である。
次に、上記のように構成した第1実施形態の作動について説明する。乗員がイグニッションキーを操作してイグニッションスイッチがオンすると、マイクロコンピュータ40は、図3の減衰力変更制御プログラムを所定の短時間ごとに繰り返し実行し始める。
この減衰力変更制御プログラムの実行はステップ100にて開始され、ステップ102にて、ばね上加速度センサ41によって検出されたばね上加速度G2、ばね下加速度センサ42によって検出されたばね下加速度G1、ストロークセンサ43によって検出されたストローク変位Sから変換されたばね下部材LAに対する車体BDのストローク速度Vを入力する。次に、ステップ104にて、ストローク速度Vが0以上であるか否かを判定する。
まず、ストローク速度Vが0以上すなわち、車体BDがばね下部材LAに対して相対的に遠ざかる場合について説明する。この場合、ステップ104にて「Yes」と判定して、ステップ106以降の処理を実行する。この状態では、コイルスプリング20が伸長状態にあるので、その伸長を抑制するように、ショックアブソーバ10の減衰力はばね下部材LAに対してはその上方向に作用するとともに、車体BDに対してはその下方向に作用する(図4(A)〜(D)参照)。このような場合であって、ばね上加速度G2が上方向に発生し、かつばね下加速度G1が下方向に発生しているとき(図4(A))は、ステップ106,108にてそれぞれ「Yes」と判定し、ステップ110にて、ショックアブソーバ10の減衰力をハード側に設定する。これは、ばね下部材LAと車体BDとが互いに遠ざかる方向に振動している場合である。このようにショックアブソーバ10の減衰力がばね下加速度G1およびばね上加速度G2をそれぞれ抑制する方向に作用するときには、同減衰力をハード側に設定することにより、ばね下加速度G1およびばね上加速度G2がともに抑制されるので、接地荷重変動を低減することができる。ステップ110の処理後、ステップ120にてこの減衰力変更制御プログラムの実行を終了する。
一方、ばね上加速度G2が上方向に発生し、かつばね下加速度G1も上方向に発生しているとき(図4(B))は、ステップ106にて「Yes」、ステップ108にて「No」と判定し、ステップ112にて、ショックアブソーバ10の減衰力をソフト側に設定する。これは、車体BDがばね下部材LAを上方向に引くように振動している場合である。このようにショックアブソーバ10の減衰力がばね下加速度G1を助長する方向に作用するときには、同減衰力をソフト側に設定することにより、車体BDの運動に応じたばね下加速度G1の増大が緩和されるので、ばね下加速度G1が小さくなって、接地荷重変動を低減することができる。ステップ112の処理後、ステップ120にてこの減衰力変更制御プログラムの実行を終了する。
また、ばね上加速度G2が下方向に発生しているとき(図4(C),(D))は、ステップ106にて「No」と判定し、ステップ112にて、ショックアブソーバ10の減衰力をソフト側に設定する。これは、図4(A)に示す状態を経て車体BDが下方向に振動し始める直前の状態(図4(C))や、ばね下部材LAが車体BDを下方向に引くように振動している場合である(図4(D))。このようにショックアブソーバ10の減衰力がばね上加速度G2を助長する方向に作用するときには、同減衰力をソフト側に設定することにより、ばね下部材LAの運動に応じたばね上加速度G2の増大が緩和されるので、ばね上加速度G2が小さくなって、接地荷重変動を低減することができる。ステップ112の処理後、ステップ120にてこの減衰力変更制御プログラムの実行を終了する。
次に、ストローク速度Vが0未満すなわち、車体BDがばね下部材LAに対して相対的に近づく場合について説明する。この場合、ステップ104にて「No」と判定して、ステップ114以降の処理を実行する。この状態では、コイルスプリング20が収縮状態にあるので、その収縮を抑制するように、ショックアブソーバ10の減衰力はばね下部材LAに対してはその下方向に作用するとともに、車体BDに対してはその上方向に作用する(図4(E)〜(H)参照)。このような場合であって、ばね上加速度G2が下方向に発生し、かつばね下加速度G1が上方向に発生しているとき(図4(E))は、ステップ114,116にてそれぞれ「Yes」と判定し、ステップ118にて、ショックアブソーバ10の減衰力をハード側に設定する。これは、ばね下部材LAと車体BDとが互いに近づく方向に振動している場合である。このようにショックアブソーバ10の減衰力がばね下加速度G1およびばね上加速度G2をそれぞれ抑制する方向に作用するときには、同減衰力をハード側に設定することにより、ばね下加速度G1およびばね上加速度G2がともに抑制されるので、接地荷重変動を低減することができる。ステップ118の処理後、ステップ120にてこの減衰力変更制御プログラムの実行を終了する。
一方、ばね上加速度G2が下方向に発生し、かつばね下加速度G1も下方向に発生しているとき(図4(F))は、ステップ114にて「Yes」、ステップ116にて「No」と判定し、ステップ112にて、ショックアブソーバ10の減衰力をソフト側に設定する。これは、車体BDがばね下部材LAを下方向に押すように振動している場合である。このようにショックアブソーバ10の減衰力がばね下加速度G1を助長する方向に作用するときには、同減衰力をソフト側に設定することにより、車体BDの運動に応じたばね下加速度G1の増大が緩和されるので、ばね下加速度G1が小さくなって、接地荷重変動を低減することができる。ステップ112の処理後、ステップ120にてこの減衰力変更制御プログラムの実行を終了する。
また、ばね上加速度G2が上方向に発生しているとき(図4(G),(H))は、ステップ114にて「No」と判定し、ステップ112にて、ショックアブソーバ10の減衰力をソフト側に設定する。これは、図4(E)に示す状態を経て車体BDが上方向に振動し始める直前の状態(図4(G))や、ばね下部材LAが車体BDを上方向に押すように振動している場合である(図4(H))。このようにショックアブソーバ10の減衰力がばね上加速度G2を助長する方向に作用するときには、同減衰力をソフト側に設定することにより、ばね下部材LAの運動に応じたばね上加速度G2の増大が緩和されるので、ばね上加速度G2が小さくなって、接地荷重変動を低減することができる。ステップ112の処理後、ステップ120にてこの減衰力変更制御プログラムの実行を終了する。
b.第2実施形態
次に、本発明の第2実施形態について説明する。この第2実施形態は、上記第1実施形態と同じ構成とされているが、ショックアブソーバ10の減衰力は、アクチュエータ31の非制御状態にてソフト側に設定されている。また、この第2実施形態のマイクロコンピュータ40は、図3の減衰力変更制御プログラムに代えて、図5の減衰力変更制御プログラムを所定の短時間ごとに繰り返し実行する。
以下、第2実施形態の作動について説明する。イグニッションスイッチのオン動作に応答して、マイクロコンピュータ40は図5の減衰力変更制御プログラムを所定の短時間ごとに繰り返し実行し始める。
この減衰力変更制御プログラムの実行はステップ200にて開始され、ステップ202にて、上記第1実施形態のステップ102と同様に、ばね上加速度センサ41によって検出されたばね上加速度G2、ばね下加速度センサ42によって検出されたばね下加速度G1、ストロークセンサ43によって検出されたストローク変位Sから変換されたばね下部材LAに対する車体BDのストローク速度Vを入力する。
ステップ202の処理後、ステップ204にて、入力したばね上加速度G2およびばね下加速度G1をバンドパスフィルタ処理することによりばね上共振帯域およびばね下共振帯域のばね上加速度G2およびばね下加速度G1を導出する。次に、ステップ206,208にて、車両に発生した振動がばね下部材LAに影響を与えるものであるか、車体BDに影響を与えるものであるかをそれぞれ判定する。具体的には、ステップ206において、前記導出したばね下共振帯域におけるばね下加速度G1の絶対値が所定の閾値以上であるかを判定することにより、車両に発生した振動がばね下部材LAに影響を与える振動帯域か否かを判定する。また、ステップ208において、前記導出したばね上共振帯域におけるばね上加速度G2の絶対値が所定の閾値以上であるかを判定することにより、車両に発生した振動が車体BDに影響を与える振動帯域か否かを判定する。これは、ばね下共振帯域では、ばね下加速度G1の影響が大きいため、ばね上慣性力の影響が小さいものとして、ばね下慣性力を低減する一方、ばね上共振帯域では、ばね上加速度G2の影響が大きいため、ばね下慣性力の影響が小さいものとして、ばね上慣性力を低減するようにしたものである。いま、車両に振動が発生しておらず、ばね下加速度G1の絶対値が所定の閾値未満であり、かつばね上加速度G2の絶対値が所定の閾値未満であれば、ステップ206,208にてともに「No」と判定して、ステップ240にてこの減衰力変更制御プログラムの実行を終了する。これにより、ショックアブソーバ10の減衰力がソフト側に設定される。
次に、ばね下加速度G1の絶対値が閾値以上である場合について説明する。この場合、ステップ206にて「Yes」と判定し、ステップ210以降の処理を実行する。ステップ210においては、上記ステップ104と同様に、ストローク速度Vが0以上であるか否かを判定する。ストローク速度Vが0以上すなわち、車体BDがばね下部材LAに対して相対的に遠ざかる場合には、ショックアブソーバ10の減衰力はばね下部材LAに対してはその上方向に作用するとともに、車体BDに対してはその下方向に作用する(図6(A),(B)参照)。このような場合であって、ばね下加速度G1が下方向に発生しているとき(図6(A))は、ステップ212にて「Yes」と判定し、ステップ214にて、ショックアブソーバ10の減衰力をハード側に設定する。このようにショックアブソーバ10の減衰力がばね下加速度G1を抑制する方向に作用するときには、同減衰力をハード側に設定することにより、ばね下加速度G1が抑制されるので、接地荷重変動を低減することができる。ステップ214の処理後、ステップ240にてこの減衰力変更制御プログラムの実行を終了する。
一方、ばね下加速度G1が上方向に発生しているとき(図6(B))は、ステップ212にて「No」と判定し、ステップ216にて、ショックアブソーバ10の減衰力をソフト側に設定する。このようにショックアブソーバ10の減衰力がばね下加速度G1を助長する方向に作用するときには、同減衰力をソフト側に設定することにより、車体BDの運動に応じたばね下加速度G1の増大が緩和されるので、ばね下加速度G1が小さくなって、接地荷重変動を低減することができる。ステップ216の処理後、ステップ240にてこの減衰力変更制御プログラムの実行を終了する。
次に、ストローク速度Vが0未満すなわち、車体BDがばね下部材LAに対して相対的に近づく場合について説明する。この場合、ショックアブソーバ10の減衰力はばね下部材LAに対してはその下方向に作用するとともに、車体BDに対してはその上方向に作用する(図6(C),(D)参照)。このような場合であって、ばね下加速度G1が上方向に発生しているとき(図6(C))は、ステップ210にて「No」、ステップ218にて「Yes」と判定し、ステップ220にて、ショックアブソーバ10の減衰力をハード側に設定する。このようにショックアブソーバ10の減衰力がばね下加速度G1を抑制する方向に作用するときには、同減衰力をハード側に設定することにより、ばね下加速度G1が抑制されるので、接地荷重変動を低減することができる。ステップ220の処理後、ステップ240にてこの減衰力変更制御プログラムの実行を終了する。
一方、ばね下加速度G1が下方向に発生しているとき(図6(D))は、ステップ218にて「No」と判定し、ステップ216にて、ショックアブソーバ10の減衰力をソフト側に設定する。このようにショックアブソーバ10の減衰力がばね下加速度G1を助長する方向に作用するときには、同減衰力をソフト側に設定することにより、車体BDの運動に応じたばね下加速度G1の増大が緩和されるので、ばね下加速度G1が小さくなって、接地荷重変動を低減することができる。ステップ216の処理後、ステップ240にてこの減衰力変更制御プログラムの実行を終了する。
次に、ばね下加速度G1の絶対値が閾値未満であり、かつばね上加速度G2の絶対値が閾値以上である場合について説明する。この場合、ステップ206にて「No」、ステップ208にて「Yes」と判定し、ステップ222以降の処理を実行する。ステップ222においては、上記ステップ210と同様に、ストローク速度Vが0以上であるか否かを判定する。ストローク速度Vが0以上すなわち、車体BDがばね下部材LAに対して相対的に遠ざかる場合には、ショックアブソーバ10の減衰力はばね下部材LAに対してはその上方向に作用するとともに、車体BDに対してはその下方向に作用する(図6(E),(F)参照)。このような場合であって、ばね上加速度G2が上方向に発生しているとき(図6(E))は、ステップ224にて「Yes」と判定し、ステップ226にて、ショックアブソーバ10の減衰力をハード側に設定する。このようにショックアブソーバ10の減衰力がばね上加速度G2を抑制する方向に作用するときには、同減衰力をハード側に設定することにより、ばね上加速度G2が抑制されるので、接地荷重変動を低減することができる。ステップ226の処理後、ステップ240にてこの減衰力変更制御プログラムの実行を終了する。
一方、ばね上加速度G2が下方向に発生しているとき(図6(F))は、ステップ224にて「No」と判定し、ステップ228にて、ショックアブソーバ10の減衰力をソフト側に設定する。このようにショックアブソーバ10の減衰力がばね上加速度G2を助長する方向に作用するときには、同減衰力をソフト側に設定することにより、ばね下部材LAの運動に応じたばね上加速度G2の増大が緩和されるので、ばね上加速度G2が小さくなって、接地荷重変動を低減することができる。ステップ228の処理後、ステップ240にてこの減衰力変更制御プログラムの実行を終了する。
次に、ストローク速度Vが0未満すなわち、車体BDがばね下部材LAに対して相対的に近づく場合について説明する。この場合、ショックアブソーバ10の減衰力はばね下部材LAに対してはその下方向に作用するとともに、車体BDに対してはその上方向に作用する(図6(G),(H)参照)。このような場合であって、ばね上加速度G2が下方向に発生しているとき(図6(G))は、ステップ222にて「No」、ステップ230にて「Yes」と判定し、ステップ232にて、ショックアブソーバ10の減衰力をハード側に設定する。このようにショックアブソーバ10の減衰力がばね上加速度G2を抑制する方向に作用するときには、同減衰力をハード側に設定することにより、ばね上加速度G2が抑制されるので、接地荷重変動を低減することができる。ステップ232の処理後、ステップ240にてこの減衰力変更制御プログラムの実行を終了する。
一方、ばね上加速度G2が上方向に発生しているとき(図6(H))は、ステップ230にて「No」と判定し、ステップ228にて、ショックアブソーバ10の減衰力をソフト側に設定する。このようにショックアブソーバ10の減衰力がばね上加速度G2を助長する方向に作用するときには、同減衰力をソフト側に設定することにより、ばね下部材LAの運動に応じたばね上加速度G2の増大が緩和されるので、ばね上加速度G2が小さくなって、接地荷重変動を低減することができる。ステップ228の処理後、ステップ240にてこの減衰力変更制御プログラムの実行を終了する。
上記第2実施形態によれば、ステップ206の処理によりばね下部材LAに影響を与える振動帯域と判定されたときは、ばね上加速度G2を考慮しなくて済み、ステップ208の処理により車体BDに影響を与える振動帯域と判定されたときは、ばね下加速度G1を考慮しなくて済むので、簡易に接地荷重変動を低減することができた。しかし、ステップ206および208の処理のうちいずれか一方を省略してもよい。このようにしても、ストローク速度Vと、ばね下加速度G1またはばね上加速度G2との関係に応じて、減衰力をハード側に設定する場合以外は減衰力がソフト側に設定されるにすぎないので、ステップ206および208の処理による場合と実質的には同様な結果となるからである。
c.第3実施形態
次に、本発明の第3実施形態について説明する。この第3実施形態は、上記第1実施形態と同様に構成されているが、ショックアブソーバ10の減衰力は、アクチュエータ31の非制御状態すなわちアクチュエータ31に流す電流が「0」のときハード側に設定されており、アクチュエータ31に流す電流を増加させるに従ってハード側からソフト側に多段階に切り換えられるようになっている。また、この第3実施形態のマイクロコンピュータ40は、図3の減衰力変更制御プログラムに代えて、図9の減衰力変更制御プログラムを所定の短時間ごとに繰り返し実行する。
この第3実施形態に係るサスペンション装置は、図7(A)に示すように、ばね下部材LAの慣性力(ばね下慣性力)がΔFだけ変動したと仮定したときの仮想のサスペンション装置と、図7(B)に示すように、車体BDの慣性力(ばね上慣性力)がΔFだけ変動したと仮定したときの仮想のサスペンション装置とを制御モデルとしている。まず、図7(A)に示す仮想のサスペンション装置を制御モデルとした場合について説明する。この場合、ばね下部材LAの運動方程式は、下記式(4)を用いて表される。
m・G1+ΔF=Ks・(X2−X1)+Co・(V2−V1)−Kt・(X1−X0) …(4)
また、実際のサスペンション装置(図2参照)においては、上記第1実施形態で説明したように、ばね下部材LAの運動方程式は、下記式(2)を用いて表される。
m・G1=Ks・(X2−X1)+Cv・(V2−V1)−Kt・(X1−X0) …(2)
ここで、上記式(4)中のCoはショックアブソーバ10の固定減衰係数であり、上記式(2)中の減衰係数Cvを用いて下記式(5)のように表すことができる。
Cv=Co+ΔC …(5)
この固定減衰係数Coは、ある大きさに設定された所定の値であり、この第3実施形態においては、ショックアブソーバ10におけるハード側の減衰力(Fhard)に基づいて設定されている。これに対して、ΔCは減衰係数の変動分であり、本実施形態のように初期の減衰係数を固定減衰係数Coに設定している場合には、同変動分ΔCの大きさに応じてショックアブソーバ10の減衰力をハード側からソフト側に向けて制御すればよいことになる。上記式(2)と式(4)が等価であると仮定すると、下記式(6)が得られる。
ΔF=−ΔC・(V2−V1) …(6)
すなわち、ショックアブソーバ10の目標減衰力Fd(=Cv・(V2−V1))は、図8に示すように、固定減衰力Fo(=Co・(V2−V1))からばね下慣性力の変動分ΔFすなわち減衰力の変動分−ΔC・(V2−V1)を差し引いた値になる。また、上記式(6)は、ばね下加速度の時間経過に従ったばね下加速度変動量ΔG1を用いれば、下記式(7)のように表される。
ΔF=m・ΔG1=−ΔC・(V2−V1) …(7)
上記式(7)から理解できるように、ばね下加速度G1の時間経過に従ったばね下加速度変動量ΔG1とばね下部材LAの質量mとの積算値に応じてショックアブソーバ10の減衰力をソフト側に制御することにより、必要な目標減衰力Fdを得ることができる。
次に、図7(B)に示す仮想のサスペンション装置を制御モデルとした場合について説明する。この場合、車体BDの運動方程式は、下記式(8)を用いて表される。
M・G2+ΔF=−Ks・(X2−X1)−Co・(V2−V1) …(8)
また、実際のサスペンション装置(図2参照)においては、上記第1実施形態で説明したように、車体BDの運動方程式は、下記式(1)を用いて表される。
M・G2=−Ks・(X2−X1)−Cv・(V2−V1) …(1)
上記式(1)と式(8)が等価であると仮定すると、下記式(9)が得られる。
ΔF=ΔC・(V2−V1) …(9)
また、上記式(9)は、ばね上加速度G2の時間経過に従ったばね上加速度変動量ΔG2を用いれば、下記式(10)のように表される。
ΔF=M・ΔG2=ΔC・(V2−V1) …(10)
上記式(10)から理解できるように、ばね上加速度G2の時間経過に従ったばね上加速度変動量ΔG2と車体BDの質量Mとの積算値に応じてショックアブソーバ10の減衰力をソフト側に制御することにより、必要な目標減衰力Fdを得ることができる。
次に、第3実施形態の作動について説明する。イグニッションスイッチのオン動作に応答して、マイクロコンピュータ40は図9の減衰力変更制御プログラムを所定の短時間ごとに繰り返し実行し始める。
この減衰力変更制御プログラムの実行はステップ300にて開始され、上記第2実施形態のステップ202〜208と同様なステップ302〜308の処理により、ばね下共振帯域およびばね上共振帯域のばね下加速度およびばね上加速度を導出し、車両に発生した振動がばね下部材LAに影響を与えるものであるか、車体BDに影響を与えるものであるかをそれぞれ判定する。なお、本実施形態においては、バンドパスフィルタ処理後のばね下共振帯域のばね下加速度をGnew1で表し、同処理後のばね上共振帯域のばね上加速度をGnew2で表す。
まず、車両に振動が発生しておらず、ばね下加速度Gnew1の絶対値が所定の閾値未満であり、かつばね上加速度Gnew2の絶対値が所定の閾値未満であれば、ステップ306,308にてともに「No」と判定し、ステップ318にて目標電流I*を「0」に設定する。次に、ステップ320にて目標電流I*=0に応じてアクチュエータ31を作動制御する。これにより、ショックアブソーバ10の減衰力が固定減衰力Foすなわちハード側(Fhard)に設定される。ステップ320の処理後、ステップ350にてこの減衰力変更制御プログラムの実行を終了する。
次に、ばね下加速度Gnew1の絶対値が閾値以上であり、ストローク速度Vが0以上すなわち、車体BDがばね下部材LAに対して相対的に遠ざかる場合について説明する。この場合、ショックアブソーバ10の減衰力はばね下部材LAに対してはその上方向に作用するとともに、車体BDに対してはその下方向に作用する(図6(A),(B)参照)。このような場合であって、ばね下加速度Gnew1が下方向に発生しているとき(図6(A))は、ステップ306,310,312にて共に「Yes」と判定して、ステップ314以降の処理を実行する。
ステップ314においては、ショックアブソーバ10の目標減衰力Fdを固定減衰力Foに設定する。ステップ316においては、目標減衰力Fdが固定減衰力Foに設定されているか否かを判定する。いま、目標減衰力Fdが固定減衰力Foに設定されているので、ステップ316にて「Yes」と判定して、ステップ318にて目標電流I*を「0」に設定する。次に、ステップ320にて目標電流I*=0に応じてアクチュエータ31を作動制御する。これにより、ショックアブソーバ10の減衰力が固定減衰力Foに設定される。このようにショックアブソーバ10の減衰力がばね下加速度Gnew1を抑制する方向に作用するときには、同減衰力を固定減衰力Foに設定することにより、ばね下加速度Gnew1が抑制されるので、接地荷重変動を低減することができる。ステップ320の処理後、ステップ350にてこの減衰力変更制御プログラムの実行を終了する。
一方、ばね下加速度Gnew1が上方向に発生しているとき(図6(B))は、ステップ312にて「No」と判定して、ステップ322以降の処理を実行する。ステップ322においては、ショックアブソーバ10の目標減衰力Fdを、固定減衰力Foから減衰力の変動分ΔFを差し引いた値(=Fo−ΔF)に設定する。
ステップ324においては、ばね下加速度変動量計算ルーチンを実行する。このばね下加速度変動量計算ルーチンの実行は、図10に示すように、ステップ400にて開始され、ステップ402にてばね下加速度Gnew1(今回ばね下加速度)から前回のプログラムの実行時に入力したばね下加速度Gold1(前回ばね下加速度)を減算することにより、ばね下加速度変動量ΔG1を計算する。
前記ばね下加速度変動量ΔG1の計算後、ステップ404にて、次回のばね下加速度変動量ΔG1の計算のために、前回ばね下加速度Gold1を今回ばね下加速度Gnew1に更新しておく。次に、ステップ406にてストローク速度Vが0以上であるか否かを判定する。いま、ストローク速度Vは0以上であるので、ステップ406にて「Yes」と判定して、ステップ408以降の処理を実行する。
ステップ408,410においては、前記計算したばね下加速度変動量ΔG1が目標電流I*との関係において電流制御可能な領域内にあるか否かを判定する。すなわち、ステップ408においては、ばね下加速度変動量ΔG1が所定のばね下加速度変動量Gm1未満であるか否かを判定し、ステップ410においては、ばね下加速度変動量ΔG1が「0」よりも大きいか否かを判定する。ここで、ばね下加速度変動量Gm1は、詳しくは後述するが、ストローク速度Vが正であるときの、ばね下加速度変動量の最大値として設定された値であり、ショックアブソーバ10の減衰力をソフト側の減衰力(Fsoft)に設定したときアクチュエータ31に流す必要がある電流Iの最大値に対応している。
そして、ステップ408,410にて、それぞれ「Yes」すなわちばね下加速度変動量ΔG1がばね下加速度変動量Gm1未満であり、かつ「0」よりも大きければ、ステップ412にて前記計算したばね下加速度変動量ΔG1を目標ばね下加速度変動量ΔG1*に設定する。一方、ステップ408にて「No」すなわちばね下加速度変動量ΔG1がばね下加速度変動量Gm1以上であれば、ステップ414にてばね下加速度変動量Gm1を目標ばね下加速度変動量ΔG1*に設定する。また、ステップ410にて「No」すなわちばね下加速度変動量ΔG1が「0」以下であれば、ステップ416にて目標ばね下加速度変動量ΔG1*を「0」に設定する。ステップ412〜416のうちのいずれか一つの処理を実行した後、ステップ430にてこのばね下加速度変動量計算ルーチンの実行を終了する。
ステップ324の処理後、ステップ316にて目標減衰力Fdが固定減衰力Foに設定されているか否かを判定するが、いま目標減衰力FdはFo−ΔFに設定されているので、ステップ316にて「No」と判定して、ステップ326以降の処理を実行する。
ステップ326においては、目標減衰力Fd(=Fo−ΔF)に応じて目標電流I*を計算する。具体的には、前記目標電流I*は、マイクロコンピュータ40に内蔵されているばね下加速度変動量テーブルを参照して計算される。ばね下加速度変動量テーブルは、図12(C)に示すように、ストローク速度Vおよびばね下加速度変動量ΔG1の大きさに応じてアクチュエータ31に流す複数の電流値を記憶しており、減衰力テーブルを用いて作成される。ここで、ばね下加速度変動量テーブルについて説明する前に、まず減衰力テーブルについて説明しておく。
減衰力テーブルは、図12(A)に示すように、ストローク速度Vが「0」から正の所定値へ増加するにつれて増加するショックアブソーバ10の減衰力と、ストローク速度Vが「0」から負の所定値へ減少するにつれて減少するショックアブソーバ10の減衰力とを記憶している。ここで、ショックアブソーバ10の減衰力は、アクチュエータ31に流れる電流Iに応じて異なった値になり、これらのうち減衰力Fhardは、例えばストローク速度Vが正である場合、アクチュエータ31に流れる電流Iが「0」であるときにショックアブソーバ10により発生される最大の減衰力を示していて、上述したように本実施形態においては固定減衰力Foに対応している。一方、減衰力Fsoftは、アクチュエータ31に流れる電流Iが最大値Imであるときにショックアブソーバ10により発生される最小の減衰力を示している。これら減衰力Fhardと減衰力Fsoft間には、所定間隔の電流値に対応した複数の減衰力が設定されている。
前記減衰力テーブルにおいて、減衰力Fhardを基準にして、この減衰力Fhardから減衰力Fsoftまでにわたる各減衰力をストローク速度Vの全域に渡って差し引くことにより、減衰力差分テーブルを作成することができる。したがって、減衰力差分テーブルは、図12(B)に示すように、ストローク速度Vと所定間隔の電流値に対応付けられた減衰力の差分値ΔFとの関係を示したものとなる。この減衰力差分テーブルにおいて、減衰力Fhardから減衰力Fsoftを差し引いた値(=Fhard−Fsoft)は、ショックアブソーバ10における減衰力の最大変動量を表しており、この最大変動量を超えない範囲内でショックアブソーバ10の減衰力を可変させることができる。そして、この減衰力差分テーブルにおける各減衰力の差分値ΔFをばね下部材LAの質量mで除算することにより、ばね下加速度変動量テーブルを作成することができる。
したがって、ばね下加速度変動量テーブルは、図12(C)に示すように、ストローク速度Vと所定間隔の電流値に対応付けられたばね下加速度変動量ΔG1との関係を示したものとなる。この場合、ストローク速度Vが正であるとき、アクチュエータ31に流れる電流Iの最大値Imには、ばね下加速度変動量の最大値Gm1が対応し、電流Iの最小値「0」には、ばね下加速度変動量の最小値「0」が対応している。一方、ストローク速度Vが負であるとき、アクチュエータ31に流れる電流Iの最大値Inには、ばね下加速度変動量の最小値Gn1が対応し、電流Iの最小値「0」には、ばね下加速度変動量の最大値「0」が対応している。これは、ショックアブソーバ10が伸びる場合と縮む場合とでは減衰力が異なる値に設定されており、各場合における最大減衰力の大きさも異なっているからである(図12(A)参照)。これにより、ばね下加速度変動量ΔG1を抑制するためには、前記ばね下加速度変動量テーブルを参照して、ストローク速度Vおよびばね下加速度変動量ΔG1に対応付けられた電流をアクチュエータ31に供給すればよいことになる。この場合、ストローク速度Vおよびばね下加速度変動量ΔG1によって規定された座標が電流値間に位置するときは、補間計算によって同座標に応じた電流値が計算されるようになっている。
ステップ326の処理後、ステップ320にて、前記計算した目標電流I*をアクチュエータ31に供給する。これにより、路面からの入力に起因したばね下慣性力の変動分に応じてショックアブソーバ10の減衰力を減少させることができる。すなわち、ばね下加速度Gnew1がその変動分ΔG1に応じて抑制されるので、接地荷重変動をより適切に低減することができ、ショックアブソーバ10の減衰力をソフト側へ減少させても、車両の挙動に大きな影響を与えないようにすることができる。ステップ320の処理後、ステップ350にてこの減衰力変更制御プログラムの実行を終了する。
次に、ばね下加速度Gnew1の絶対値が閾値以上であり、ストローク速度Vが0未満すなわち、車体BDがばね下部材LAに対して相対的に近づく場合について説明する。この場合、ショックアブソーバ10の減衰力はばね下部材LAに対してはその下方向に作用するとともに、車体BDに対してはその上方向に作用する(図6(C),(D)参照)。このような場合であって、ばね下加速度Gnew1が上方向に発生しているとき(図6(C))は、ステップ306にて「Yes」、ステップ310にて「No」、ステップ328にて「Yes」と判定して、ステップ330以降の処理を実行する。ステップ330においては、ショックアブソーバ10の目標減衰力Fdを固定減衰力Foに設定する。ステップ330の処理後は、上記ステップ314の処理後の場合と同様に、ステップ316,326および320の処理を実行する。これにより、ショックアブソーバ10の減衰力が固定減衰力Foに設定される。このようにショックアブソーバ10の減衰力がばね下加速度Gnew1を抑制する方向に作用するときには、同減衰力を固定減衰力Foに設定することにより、ばね下加速度Gnew1が抑制されるので、接地荷重変動を低減することができる。ステップ320の処理後、ステップ350にてこの減衰力変更制御プログラムの実行を終了する。
一方、ばね下加速度Gnew1が下方向に発生しているとき(図6(D))は、ステップ328にて「No」と判定し、上記ステップ312の処理にて「No」と判定したときと同様、ステップ322にてショックアブソーバ10の目標減衰力FdをFo−ΔFに設定した後、ステップ324にてばね下加速度変動量計算ルーチン(図10参照)を実行する。ばね下加速度変動量計算ルーチンの実行においては、上記と同様にステップ402,404の処理を実行した後、ステップ406にて「No」すなわちストローク速度Vが負であると判定して、ステップ418以降の処理を実行する。
ステップ418,420においては、上記ステップ408,410の場合と同様に、ステップ402で計算したばね下加速度変動量ΔG1が目標電流I*との関係において電流制御可能な領域内にあるか否かを判定する。ただし、ステップ408,410の場合とは異なり、ステップ418においては、ばね下加速度変動量ΔG1が所定のばね下加速度変動量Gn1よりも大きいか否かを判定し、ステップ420においては、ばね下加速度変動量ΔG1が「0」未満であるか否かを判定する。ここで、ばね下加速度変動量Gn1は、上述したように、ストローク速度Vが負であるときの、ばね下加速度変動量ΔG1の最小値として設定された値であり、ショックアブソーバ10の減衰力をソフト側の減衰力(Fsoft)に設定したときアクチュエータ31に流す必要がある電流Iの最大値に対応している。
そして、ステップ418,420にて、それぞれ「Yes」すなわちばね下加速度変動量ΔG1がばね下加速度変動量Gn1よりも大きく、かつ「0」未満であれば、ステップ412にて前記計算したばね下加速度変動量ΔG1を目標ばね下加速度変動量ΔG1*に設定する。一方、ステップ418にて「No」すなわちばね下加速度変動量ΔG1がばね下加速度変動量Gn1よりも小さければ、ステップ422にてばね下加速度変動量Gn1を目標ばね下加速度変動量ΔG1*に設定する。また、ステップ420にて「No」すなわちばね下加速度変動量ΔG1が「0」以上であれば、ステップ416にて目標ばね下加速度変動量ΔG1*を「0」に設定する。ステップ412〜416のうちのいずれか一つの処理を実行した後、ステップ430にてこのばね下加速度変動量計算ルーチンの実行を終了する。
ステップ324の処理後は、ステップ312,322および324の処理後の場合と同様に、ステップ316にて「No」と判定し、ステップ326,320の処理を実行する。これにより、ばね下加速度Gnew1がその変動分ΔG1に応じて抑制されるので、接地荷重変動をより適切に低減することができ、ショックアブソーバ10の減衰力をソフト側へ減少させても、車両の挙動に大きな影響を与えないようにすることができる。
次に、ばね下加速度Gnew1の絶対値が閾値未満であり、ばね上加速度Gnew2の絶対値が閾値以上であり、かつストローク速度Vが0以上である場合について説明する。この場合、ショックアブソーバ10の減衰力はばね下部材LAに対してはその上方向に作用するとともに、車体BDに対してはその下方向に作用する(図6(E),(F)参照)。このような場合であって、ばね上加速度Gnew2が上方向に発生しているとき(図6(E))は、ステップ308,332,334にて共に「Yes」と判定して、ステップ336以降の処理を実行する。ステップ336においては、ショックアブソーバ10の目標減衰力Fdを固定減衰力Foに設定する。ステップ336の処理後は、上記ステップ314の処理後の場合と同様に、ステップ316〜320の処理を実行する。このようにショックアブソーバ10の減衰力がばね上加速度Gnew2を抑制する方向に作用するときには、同減衰力を固定減衰力Foに設定することにより、ばね上加速度Gnew2が抑制されるので、接地荷重変動を低減することができる。ステップ320の処理後、ステップ350にてこの減衰力変更制御プログラムの実行を終了する。
一方、ばね上加速度Gnew2が下方向に発生しているとき(図6(F))は、ステップ334にて「No」と判定して、ステップ338以降の処理を実行する。ステップ338においては、ショックアブソーバ10の目標減衰力FdをFo−ΔFに設定する。
ステップ340においては、ばね上加速度変動量計算ルーチンを実行する。このばね上加速度変動量計算ルーチンの実行は、図11に示すように、ステップ500にて開始され、ステップ502にてばね上加速度Gnew2(今回ばね上加速度)から前回のプログラムの実行時に入力したばね上加速度Gold2(前回ばね上加速度)を減算することにより、ばね上加速度変動量ΔG2を計算する。
前記ばね上加速度変動量ΔG2の計算後、ステップ504にて、次回のばね上加速度変動量ΔG2の計算のために、前回ばね上加速度Gold2を今回ばね上加速度Gnew2に更新しておく。次に、ステップ506にてストローク速度Vが0以上であるか否かを判定する。いま、ストローク速度Vは0以上であるので、ステップ506にて「Yes」と判定して、ステップ508以降の処理を実行する。
ステップ508,510においては、前記計算したばね上加速度変動量ΔG2が目標電流I*との関係において電流制御可能な領域内にあるか否かを判定する。すなわち、ステップ508においては、ばね上加速度変動量ΔG2が所定のばね上加速度変動量Gm2未満であるか否かを判定し、ステップ510においては、ばね上加速度変動量ΔG2が「0」よりも大きいか否かを判定する。ここで、ばね上加速度変動量Gm2は、上記ばね下加速度変動量Gm1と同様、ストローク速度Vが正であるときの、ばね上加速度変動量ΔG2の最大値として設定された値であり、ショックアブソーバ10の減衰力をソフト側の減衰力(Fsoft)に設定したときアクチュエータ31に流す必要がある電流Iの最大値に対応している。
そして、ステップ508,510にて、それぞれ「Yes」すなわちばね上加速度変動量ΔG2がばね上加速度変動量Gm2未満であり、かつ「0」よりも大きければ、ステップ512にて前記計算したばね上加速度変動量ΔG2を目標ばね上加速度変動量ΔG2*に設定する。一方、ステップ508にて「No」すなわちばね上加速度変動量ΔG2がばね上加速度変動量Gm2以上であれば、ステップ514にてばね上加速度変動量Gm2を目標ばね上加速度変動量ΔG2*に設定する。また、ステップ510にて「No」すなわちばね上加速度変動量ΔG2が「0」以下であれば、ステップ516にて目標ばね上加速度変動量ΔG2*を「0」に設定する。ステップ512〜516のうちのいずれか一つの処理を実行した後、ステップ530にてこのばね上加速度変動量計算ルーチンの実行を終了する。
ステップ340の処理後は、ステップ316にて「No」と判定して、ステップ326,320の処理を実行する。ステップ326においては、目標減衰力Fd(=Fo−ΔF)に応じて目標電流I*を計算する。具体的には、前記目標電流I*は、マイクロコンピュータ40に内蔵されているばね上加速度変動量テーブルを参照して計算される。ばね上加速度変動量テーブルは、図12(D)に示すように、ストローク速度Vおよびばね上加速度変動量ΔG2の大きさに応じてアクチュエータ31に流す複数の電流値を記憶しており、図12(C)に示したばね下加速度変動量テーブルにおける場合と同様、図12(A)に示した減衰力テーブルおよび図12(B)に示した減衰力差分テーブルに基づいて作成される。すなわち、減衰力差分テーブルにおける各減衰力の差分値ΔFを車体BDの質量Mで除算することにより、ばね上加速度変動量テーブルを作成することができる。
したがって、ばね上加速度変動量テーブルは、図12(D)に示すように、ストローク速度Vと所定間隔の電流値に対応付けられたばね上加速度変動量ΔG2との関係を示したものとなる。この場合、ストローク速度Vが正であるとき、アクチュエータ31に流れる電流の最大値Imには、ばね上加速度変動量の最大値Gm2が対応し、電流Iの最小値「0」には、ばね上加速度変動量の最小値「0」が対応している。一方、ストローク速度Vが負であるとき、アクチュエータ31に流れる電流Iの最大値Inには、ばね上加速度変動量の最小値Gn2が対応し、電流の最小値「0」には、ばね上加速度変動量の最大値「0」が対応している。これにより、ばね上加速度変動量ΔG2を抑制するためには、前記ばね上加速度変動量テーブルを参照して、ストローク速度Vおよびばね上加速度変動量ΔG2に対応付けられた電流をアクチュエータ31に供給すればよいことになる。そして、この場合にも、ストローク速度Vおよびばね上加速度変動量ΔG2によって規定された座標が電流値間に位置するときは、補間計算によって同座標に応じた電流値が計算されるようになっている。
ステップ326の処理後、ステップ320にて、前記計算した目標電流I*をアクチュエータ31に供給する。これにより、路面からの入力に起因したばね上慣性力の変動分に応じてショックアブソーバ10の減衰力を減少させることができる。すなわち、ばね上加速度G2がその変動分ΔG2に応じて抑制されるので、接地荷重変動をより適切に低減することができ、ショックアブソーバ10の減衰力をソフト側へ減少させても、車両の挙動に大きな影響を与えないようにすることができる。
次に、ばね下加速度Gnew1の絶対値が閾値未満であり、ばね上加速度Gnew2の絶対値が閾値以上であり、かつストローク速度Vが0未満である場合について説明する。この場合、ショックアブソーバ10の減衰力はばね下部材LAに対してはその下方向に作用するとともに、車体BDに対してはその上方向に作用する(図6(G),(H)参照)。このような場合であって、ばね上加速度Gnew2が下方向に発生しているとき(図6(G))は、ステップ308にて「Yes」、ステップ332にて「No」、ステップ342にて「Yes」と判定して、ステップ344以降の処理を実行する。ステップ344においては、ショックアブソーバ10の目標減衰力Fdを固定減衰力Foに設定する。ステップ344の処理後は、上記ステップ336の処理後の場合と同様に、ステップ316〜320の処理を実行する。これにより、ショックアブソーバ10の減衰力が固定減衰力Foに設定される。このようにショックアブソーバ10の減衰力がばね上加速度Gnew2を抑制する方向に作用するときには、同減衰力を固定減衰力Foに設定することにより、ばね上加速度Gnew2が抑制されるので、接地荷重変動を低減することができる。ステップ320の処理後、ステップ350にてこの減衰力変更制御プログラムの実行を終了する。
一方、ばね上加速度Gnew2が上方向に発生しているとき(図6(H))は、ステップ342にて「No」と判定し、ステップ338にてショックアブソーバ10の目標減衰力FdをFo−ΔFに設定した後、ステップ340にてばね上加速度変動量計算ルーチン(図11参照)を実行する。ばね上加速度変動量計算ルーチンの実行においては、上記と同様にステップ502,504の処理を実行した後、ステップ506にて「No」すなわちストローク速度Vが負であると判定して、ステップ518以降の処理を実行する。
ステップ518,520においては、上記ステップ508,510の場合と同様に、ステップ502で計算したばね上加速度変動量ΔG2が目標電流I*との関係において電流制御可能な領域内にあるか否かを判定する。ただし、ステップ508,510の場合とは異なり、ステップ518においては、ばね上加速度変動量ΔG2が所定のばね上加速度変動量Gn2よりも大きいか否かを判定し、ステップ520においては、ばね上加速度変動量ΔG2が「0」未満であるか否かを判定する。ここで、ばね上加速度変動量Gn2は、上記ばね下加速度変動量Gn1と同様、ストローク速度Vが負であるときの、ばね上加速度変動量ΔG2の最小値として設定された値であり、ショックアブソーバ10の減衰力をソフト側の減衰力(Fsoft)に設定したときアクチュエータ31に流す必要がある電流Iの最大値に対応している。
そして、ステップ518,520にて、それぞれ「Yes」すなわちばね上加速度変動量ΔG2がばね上加速度変動量Gn2よりも大きく、かつ「0」未満であれば、ステップ512にて前記計算したばね上加速度変動量ΔG2を目標ばね上加速度変動量ΔG2*に設定する。一方、ステップ518にて「No」すなわちばね上加速度変動量ΔG2がばね上加速度変動量Gn2よりも小さければ、ステップ522にてばね上加速度変動量Gn2を目標ばね上加速度変動量ΔG2*に設定する。また、ステップ520にて「No」すなわちばね上加速度変動量ΔG2が「0」以上であれば、ステップ516にて目標ばね上加速度変動量ΔG2*を「0」に設定する。ステップ512〜516のうちのいずれか一つの処理を実行した後、ステップ530にてこのばね上加速度変動量計算ルーチンの実行を終了する。
ステップ340の処理後は、上記ステップ334,338および340の処理後の場合と同様に、ステップ316にて「No」と判定し、図12(D)に示したばね上加速度変動テーブルを参照して、ステップ326,320の処理を実行する。これにより、ばね上加速度Gnew2がその変動分ΔG2に応じて抑制されるので、接地荷重変動をより適切に低減することができ、ショックアブソーバ10の減衰力をソフト側へ減少させても、車両の挙動に大きな影響を与えないようにすることができる。
上記第3実施形態によれば、ステップ306の処理によりばね下部材LAに影響を与える振動帯域と判定されたときは、ばね上加速度Gnew2を考慮しなくて済み、ステップ308の処理により車体BDに影響を与える振動帯域と判定されたときは、ばね下加速度Gnew1を考慮しなくて済むので、簡易に接地荷重変動を低減することができた。しかし、ステップ306および308の処理のうちいずれか一方を省略してもよい。このようにしても、ストローク速度Vと、ばね下加速度Gnew1またはばね上加速度Gnew2との関係に応じて、目標減衰力FdをFo−ΔFに設定する場合以外は目標減衰力Fdが固定減衰力Foすなわちハード側に設定されるにすぎないので、ステップ306および308の処理による場合と実質的には同様な結果となるからである。
d.第4実施形態
次に、本発明の第4実施形態について説明する。この第4実施形態は、上記第3実施形態と同様に構成されているが、この第4実施形態のマイクロコンピュータ40は、図9の減衰力変更制御プログラムに代えて、図13の減衰力変更制御プログラムを所定の短時間ごとに繰り返し実行する。
この減衰力変更制御プログラムの実行はステップ600にて開始され、ステップ602にて、上記第1実施形態のステップ102と同様に、ばね上加速度Gnew2、ばね下加速度Gnew1およびストローク速度Vを入力する。次に、ステップ604にて、ストローク速度Vが0以上であるか否かを判定する。
まず、ストローク速度Vが0以上である場合について説明する。この場合、ショックアブソーバ10の減衰力はばね下部材LAに対してはその上方向に作用するとともに、車体BDに対してはその下方向に作用する(図4(A)〜(D)参照)。このような場合であって、ばね上加速度Gnew2が上方向に発生し、かつばね下加速度Gnew1が下方向に発生しているとき(図4(A))は、ステップ604,606,608にて共に「Yes」と判定して、上記第3実施形態のステップ314以降の処理と同様なステップ610以降の処理を実行する。
ステップ610においては、ショックアブソーバ10の目標減衰力Fdを固定減衰力Foに設定する。ステップ612においては、目標減衰力Fdが固定減衰力Foに設定されているか否かを判定する。いま、目標減衰力Fdが固定減衰力Foに設定されているので、ステップ612にて「Yes」と判定して、ステップ614にて目標電流I*を「0」に設定する。次に、ステップ616にて目標電流I*=0に応じてアクチュエータ31を作動制御する。これにより、ショックアブソーバ10の減衰力が固定減衰力Foに設定される。このようにショックアブソーバ10の減衰力がばね下加速度Gnew1およびばね上加速度Gnew2を抑制する方向に作用するときには、同減衰力を固定減衰力Foに設定することにより、ばね下加速度Gnew1およびばね上加速度Gnew2が共に抑制されるので、接地荷重変動を低減することができる。ステップ616の処理後、ステップ640にてこの減衰力変更制御プログラムの実行を終了する。
一方、ばね上加速度Gnew2が上方向に発生し、かつばね下加速度Gnew1も上方向に発生しているとき(図4(B))は、ステップ606にて「Yes」、ステップ608にて「No」と判定して、ステップ618以降の処理を実行する。ステップ618においては、ショックアブソーバ10の目標減衰力FdをFo−ΔFtotalに設定する。ステップ620においては、上記第3実施形態のステップ324の場合と同様に、ばね下加速度変動量ルーチン(図10参照)を実行して、ばね下加速度変動量ΔG1を計算する。ステップ622においては、上記第3実施形態のステップ340の場合と同様に、ばね上加速度変動量ルーチン(図11参照)を実行して、ばね上加速度変動量ΔG2を計算する。ここで、前記ΔFtotalは、ばね下およびばね上慣性力の変動分の和算値であり、下記式(11)を用いて表される。
ΔFtotal=m・ΔG1+M・ΔG2 …(11)
ステップ622の処理後、ステップ612にて「No」すなわち目標減衰力Fdが固定減衰力Foに設定されていないと判定して、ステップ624以降の処理を実行する。ステップ624においては、目標減衰力Fd(=Fo−ΔFtotal)に応じて目標電流I*を計算する。具体的には、図12(C)に示したばね下加速度変動量テーブルを参照して、ステップ620にて計算したばね下加速度変動量ΔG1に応じて第1の目標電流I*を計算する。また、図12(D)に示したばね上加速度変動量テーブルを参照して、ステップ622にて計算したばね上加速度変動量ΔG2に応じて第2の目標電流I*を計算する。そして、これら目標電流I*の平均値を目標電流I*として設定する。なお、第1の目標電流I*および第2の目標電流I*のうちいずれか大きい方の電流を目標電流I*として設定するようにしてもよい。
ステップ624の処理後、ステップ616にて、前記設定した目標電流I*をアクチュエータ31に供給する。これにより、路面からの入力に起因したばね下およびばね上慣性力の変動分に応じてショックアブソーバ10の減衰力を減少させることができる。すなわち、ばね下加速度Gnew1およびばね上加速度Gnew2がそれらの変動分ΔG1およびΔG2に応じて抑制されるので、接地荷重変動をより適切に低減することができ、ショックアブソーバ10の減衰力をソフト側へ減少させても、車両の挙動に大きな影響を与えないようにすることができる。ステップ616の処理後、ステップ640にてこの減衰力変更制御プログラムの実行を終了する。
また、ばね上加速度Gnew2が下方向に発生しているとき(図4(C),(D))は、ステップ606にて「No」と判定して、ステップ608にて「No」と判定した場合と同様に、ステップ618〜622,612,624および616の処理を実行する。これによっても、ばね下加速度Gnew1およびばね上加速度Gnew2がそれらの変動分ΔG1およびΔG2に応じて抑制されるので、接地荷重変動をより適切に低減することができ、ショックアブソーバ10の減衰力をソフト側へ減少させても、車両の挙動に大きな影響を与えないようにすることができる。ステップ616の処理後、ステップ640にてこの減衰力変更制御プログラムの実行を終了する。
次に、ストローク速度Vが0未満である場合について説明する。この場合、ショックアブソーバ10の減衰力はばね下部材LAに対してはその下方向に作用するとともに、車体BDに対してはその上方向に作用する(図4(E)〜(H)参照)。このような場合であって、ばね上加速度Gnew2が下方向に発生し、かつばね下加速度Gnew1が上方向に発生しているとき(図4(E))は、ステップ604にて「No」、ステップ626,628にて共に「Yes」と判定し、ステップ630にてショックアブソーバ10の目標減衰力Fdを固定減衰力Foに設定した後、上記ステップ610処理後の場合と同様に、ステップ612〜616の処理を実行する。このようにショックアブソーバ10の減衰力がばね下加速度Gnew1およびばね上加速度Gnew2を抑制する方向に作用するときには、同減衰力を固定減衰力Foに設定することにより、ばね下加速度Gnew1およびばね上加速度Gnew2が共に抑制されるので、接地荷重変動を低減することができる。ステップ616の処理後、ステップ640にてこの減衰力変更制御プログラムの実行を終了する。
一方、ばね上加速度Gnew2が下方向に発生し、かつばね下加速度Gnew1も下方向に発生しているとき(図4(F))は、ステップ626にて「Yes」、ステップ628にて「No」と判定して、上記ステップ608にて「No」と判定した場合と同様に、ステップ618〜622,612,624および616の処理を実行する。これにより、ばね下加速度Gnew1およびばね上加速度Gnew2がそれらの変動分ΔG1およびΔG2に応じて抑制されるので、接地荷重変動をより適切に低減することができ、ショックアブソーバ10の減衰力をソフト側へ減少させても、車両の挙動に大きな影響を与えないようにすることができる。ステップ616の処理後、ステップ640にてこの減衰力変更制御プログラムの実行を終了する。
また、ばね上加速度Gnew2が上方向に発生しているとき(図4(G),(H))は、ステップ626にて「No」と判定して、上記ステップ606にて「No」と判定した場合と同様に、ステップ618〜622,612,624および616の処理を実行する。これによっても、ばね下加速度Gnew1およびばね上加速度Gnew2がそれらの変動分ΔG1およびΔG2に応じて抑制されるので、接地荷重変動をより適切に低減することができ、ショックアブソーバ10の減衰力をソフト側へ減少させても、車両の挙動に大きな影響を与えないようにすることができる。ステップ616の処理後、ステップ640にてこの減衰力変更制御プログラムの実行を終了する。
以上、本発明の第1〜第4実施形態について説明したが、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
例えば、上記第1〜第4実施形態においては、ストロークセンサ43により検出されたストローク変位Sを表す信号を微分器44が時間微分することによりストローク速度Vに変換するようにしたが、ストローク変位Sを表す信号を入力してマイクロコンピュータ40内にて微分演算することによりストローク速度Vを計算するようにしてもよい。
また、上記第1〜第4実施形態においては、ばね上加速度センサ41、ばね下加速度センサ42およびストロークセンサ43の3つのセンサを用いて、それぞればね上加速度G2(Gnew2)、ばね下加速度G1(Gnew1)を検出し、ストローク速度Vを算出するようにしたが、上記センサのうち少なくとも2つのセンサを用いて、ばね上加速度G2(Gnew2)、ばね下加速度G1(Gnew1)およびストローク速度Vを算出するようにしてもよい。具体的には、ばね上加速度センサ41およびばね下加速度センサ42によって検出された加速度をそれぞれ時間積分して、ストローク速度Vを計算するようにしたり、ばね上加速度G2(Gnew2)を検出するとともに、ストロークセンサ43により検出されたストローク変位Sを2階微分してばね上―ばね下相対加速度を計算し、ばね下加速度G1(Gnew1)を計算するようにしてもよい。
また、上記第3および第4実施形態においては、固定減衰力Foをハード側の減衰力に設定して、ばね下および/またはばね上慣性力の変動分に応じて減衰力を減少させるようにしたが、固定減衰力Foをソフト側の減衰力に設定して、ばね下および/またはばね上慣性力の変動分に応じて減衰力を増大させるようにしてもよいし、固定減衰力Foをハード側の減衰力とソフト側の減衰力間の任意の値に設定して、ばね下および/またはばね上慣性力の変動分に応じて減衰力を増大または減少させるようにしてもよい。
また、上記第3および第4実施形態においては、ばね下加速度変動量ΔG1および/またはばね上加速度変動量ΔG2に応じてアクチュエータ31に流す電流を計算するようにしたが、ばね下および/またはばね上慣性力の変動分をストローク速度で除算した値すなわち減衰係数の変動分ΔCに応じてアクチュエータ31に流す電流を計算するようにしてもよい。